説明

吸湿性積層体

【課題】製造後初期における吸湿を抑制、遅延する機能を有し、かつ、必要に応じて本来の吸湿性能を発揮することが可能な吸湿性積層体を提供する。
【解決手段】吸湿フィルム1と、吸湿フィルム1を挟持する一対の剥離フィルム2とからなる吸湿性積層体10である。吸湿フィルム1が、バインダ樹脂と水分吸着性物質とからなる吸湿層3と、その片面または両面に設けられた粘着層4とからなり、剥離フィルム2が、基材5と、その少なくとも一方の面に設けられた珪素酸化物の連続薄膜よりなる離型層6とからなり、連続薄膜が、炭素、水素、珪素および酸素からなる群から選択される1種または2種以上の元素からなる化合物の少なくとも1種以上を含有し、連続薄膜の炭素原子含有量が5原子%以上であり、かつ、吸湿フィルム1と剥離フィルム2とが、吸湿層3または粘着層4と離型層6との間で、擬似接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸湿性積層体に関し、詳しくは、吸湿性を有する無機化合物を含む樹脂組成物からなる積層材料を用いた吸湿性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子等の有機デバイスの分野においては、製造工程内で空気中の水蒸気やガスとの接触を嫌う場合が数多くある。そのため、近年、水蒸気やガスを吸着する機能を有する材料に対する需要が高まっており、かかる機能を付与したフィルムが種々提案されている。例えば、特許文献1には、有機EL素子上に、バインダ樹脂と乾燥成分と粒子状樹脂を含むシート状乾燥剤が配備された有機ELパネルが開示されている。
【0003】
ところで、水蒸気またはガスの吸着機能を有するフィルムに関しては、実際の使用時における吸着機能を担保するために、製造や流通、保管、販売等の各段階におけるフィルムの吸湿等をどのように制御するかが重要な課題となる。この課題を解決するための手段としては、例えば、フィルムの製造工程を行う空間を低湿度下にする方法が考えられる。
【0004】
また、特許文献2には、凹凸型のヒートシールバーを用い、ヒートシールした際に吸湿機能が発現するようコントロールされた吸湿性・バリア性積層包装材料、および、それを用いた包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−26648号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2004−331079号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フィルムの製造雰囲気を低湿度化する方法では、特殊な設備が必要になる上、より厳密な管理が必要となるため、簡便でないという問題があった。また、上記特許文献2に記載された技術においても、実施に際して特殊な装置を準備しなくてはならないという問題があり、負担の増大は避けられなかった。したがって、従来のような特殊な装置や設備などを要することなく、製造後初期における吸湿を抑制ないし遅延することができる技術の確立が求められていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、製造後初期における吸湿を抑制ないし遅延する機能を有し、かつ、必要に応じて本来の吸湿性能を発揮することが可能な吸湿性積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、吸湿性能を発揮する吸湿フィルムを、珪素酸化物の連続薄膜よりなる離型層を含む剥離フィルムにて挟持した構成とすることで、上記問題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、吸湿フィルムと、該吸湿フィルムを挟持する一対の剥離フィルムとからなる吸湿性積層体であって、
前記吸湿フィルムが、バインダ樹脂と水分吸着性物質とからなる吸湿層と、該吸湿層の片面または両面に設けられた粘着層とからなり、前記剥離フィルムが、基材と、該基材の少なくとも一方の面に設けられた珪素酸化物の連続薄膜よりなる離型層とからなり、該連続薄膜が、炭素、水素、珪素および酸素からなる群から選択される1種または2種以上の元素からなる化合物の少なくとも1種以上を含有し、該連続薄膜の炭素原子含有量が5原子%以上であり、かつ、前記吸湿フィルムと前記剥離フィルムとが、前記吸湿層または前記粘着層と前記離型層との間で、擬似接着されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記剥離フィルムの前記基材が、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムまたは2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムからなることが好ましい。また、前記剥離フィルムの前記離型層の膜厚は、好適には50〜2000Åである。さらに、前記吸湿フィルムの前記吸湿層のバインダ樹脂が、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRが5〜40g/10minであるアクリル系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0011】
さらにまた、前記吸湿フィルムの前記吸湿層の水分吸着性物質としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸および有機物からなる群から選択される少なくとも1種からなる化学的水分吸着性物質が好適である。さらにまた、前記吸湿フィルムの前記吸湿層におけるバインダ樹脂と水分吸着性物質との重量比率は、バインダ樹脂20〜60質量部に対し、水分吸着性物質80〜40質量部であることが好ましい。
【0012】
さらにまた、前記吸湿フィルムの前記粘着層は、アクリル系熱可塑性エラストマーからなることが好ましく、より好ましくは、アクリル系熱可塑性エラストマーを主成分とし、かつ、ロジン系タッキファイヤーを含むものとする。さらにまた、前記吸湿フィルムの前記粘着層の厚みは、好適には5〜20μmである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、製造後初期における吸湿を抑制ないし遅延する機能を有し、かつ、必要に応じて本来の吸湿性能を発揮することが可能な吸湿性積層体を実現することが可能となった。したがって、本発明の吸湿性積層体においては、製造や流通、保管、販売等の各段階におけるフィルムの吸湿を抑制することができるとともに、吸湿を開始する時期を制御するためのトリガー機能を備えることで、実際の使用時における吸着性能を常に良好に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の吸湿性積層体の一構成例を示す模式的断面図である。
【図2】プラズマ化学気相成長装置の概要を示す概略的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明において、下記の記載は、その実施の形態の一例を示すものであり、これによって本発明が限定されるものではないことは言うまでもない。
図1に、本発明の吸湿性積層体の一構成例を示す模式的断面図を示す。図示するように、本発明の吸湿性積層体10は、吸湿フィルム1と、これを挟持する一対の剥離フィルム2とからなる。
【0016】
本発明において、吸湿フィルム1は、バインダ樹脂と水分吸着性物質とからなる吸湿層3と、その片面または両面、図示例では片面に設けられた粘着層4とからなり、剥離フィルム2は、基材5と、その少なくとも一方の面、図示例では一方の面に設けられた珪素酸化物の連続薄膜よりなる離型層6とからなる。本発明においては、かかる構成にて、吸湿性能を有する吸湿フィルム1を一対の剥離フィルム2により挟持させるとともに、吸湿フィルム1と剥離フィルム2とを、吸湿層3または粘着層4と離型層6との間で、擬似接着したことで、初期状態において、剥離フィルム2により吸湿フィルム1の吸湿性能を抑制することが可能となった。なお、この擬似接着の手段としては、熱や圧力による公知のラミネーション方法を適宜用いることができる。
【0017】
また、本発明においては、剥離フィルム2の離型層6を、炭素、水素、珪素および酸素からなる群から選択される1種または2種以上からなる化合物の少なくとも1種以上を含有し、かつ、炭素原子含有量が5原子%以上である珪素酸化物の連続薄膜からなるものとする点が重要である。かかる連続薄膜からなる離型層6は、基材5との密着性に優れるとともに、擬似接着される吸湿フィルム1との間の離型性に優れるものであり、これにより、初期状態での吸湿性能を確実に保持し、かつ、隔離フィルム2の剥離により吸湿を開始できる吸湿性積層体10を実現することが可能となった。なお、離型層6は、基材5の少なくとも一方の面に設けることが必要であるが、両面に設けることもでき、この場合、離型層6による水蒸気バリア効果をより高めて、吸湿開始前の状態をより長期に維持できるメリットが得られる。
【0018】
以下に、本発明の吸湿性積層体10の各層の構成について、詳細に説明する。
剥離フィルム2に用いる基材5としては、これが剥離フィルム2を構成する基本素材となること、および、これに離型層6を構成する珪素酸化物の連続薄膜を設けることから、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有し、強度が高く強靱であって、かつ、耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートを使用することが好ましい。具体的には例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコ−ン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシートを挙げることができる。中でも特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂のフィルムないしシートを使用することが好ましく、より好ましくは、吸湿フィルム1と擬似接着させることを考慮して、耐熱性の高い、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムまたは2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0019】
本発明において、上記基材5に用いる各種樹脂のフィルムないしシートとしては、例えば、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、または、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、さらには、2種以上の樹脂を使用し、製膜する前に混合して製膜する方法等により、各種の樹脂のフィルムないしシートを製造して、さらに、所望に応じ、例えば、テンター方式またはチューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。本発明において、上記樹脂のフィルムないしシートの膜厚としては、好適には6〜100μm、より好適には9〜50μmとする。
【0020】
なお、上記各種樹脂の1種ないしそれ以上を使用した製膜化に際しては、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他性能を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。その添加量としては、ごく微量から数十質量%まで、その目的に応じて、任意の量とすることができる。この際の一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤等を使用することができ、さらには、改質用樹脂等も使用することができる。
【0021】
また、本発明において、上記各種樹脂のフィルムないしシートの表面には、離型層を構成する珪素酸化物の連続薄膜との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、あらかじめ所望の表面処理層を設けることができる。かかる表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスまたは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理などの前処理を任意に施して、例えば、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層等を設けることができる。上記表面前処理は、各種樹脂のフィルムないしシートと離型層6を構成する珪素酸化物の連続薄膜との密接着性等を改善するための方法として実施するものであるが、かかる密接着性を改善する方法としては、その他、例えば、各種樹脂のフィルムないしシートの表面に、あらかじめプライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層または蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。上記前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂などをビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0022】
次に、剥離フィルム2に用いる離型層6は、基材5上に、例えば、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法,CVD法)等を用いて、珪素酸化物の連続薄膜として形成する。本発明において、かかる珪素酸化物の連続薄膜は、珪素酸化物の連続薄膜の1層からなる単層膜に限られず、その2層またはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用することができ、さらに、異種の材質で混合した珪素酸化物の連続薄膜を構成することもできる。
【0023】
具体的には例えば、有機珪素化合物等の蒸気からなる蒸着用モノマーガスを原料として含み、キャリヤーガスとしてアルゴンガスやヘリウムガス等の不活性ガスを含み、さらに、酸素供給ガスとして酸素ガス等を含むガス組成物を調製し、これを用いて、低温プラズマ発生装置等を利用した低温プラズマ化学気相成長法により、基材の一方の面に、珪素酸化物の連続薄膜を形成する手法を用いる。ここで、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマやパルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。なお、本発明において、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。また、本発明においては、例えば、巻き取り式のプラズマ化学気相成長方式等を使用して、連続的に剥離フィルム2を製造することもできるものである。
【0024】
ここで、上記の低温プラズマ化学気相成長法による珪素酸化物の連続薄膜の形成法について、その一例を示して説明する。図2は、上記プラズマ化学気相成長法による珪素酸化物の連続薄膜の形成法に係る低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。図示する装置においては、プラズマ化学気相成長装置11の真空チャンバー12内に配置された巻き出しロール13から繰り出した基材5を、補助ロール14を介して、所定の速度で冷却・電極ドラム15の周面上に搬送する。また、ガス供給装置16,17および原料揮発供給装置18等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガス等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調製して、真空チャンバー12内に、原料供給ノズル19を通してこの蒸着用混合ガス組成物を導入する。そして、上記冷却・電極ドラム15の周面上に搬送された基材5上に、グロー放電プラズマ20によって発生させたプラズマを照射して、珪素酸化物の連続薄膜を製膜する。この際、冷却・電極ドラム15には、真空チャンバー12外に配置されている電源21から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム15の近傍には、マグネット22が配置されてプラズマの発生が促進されている。次いで、珪素酸化物の連続薄膜が形成された基材5は、補助ロール23を介して巻き取りロール24に巻き取られる。これにより、本発明に係るプラズマ化学気相成長法による珪素酸化物の連続薄膜を形成することができる。なお、図中、符号25は真空ポンプを表す。
【0025】
ここで、上記原料揮発供給装置18において原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置16,17から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させて調製する蒸着用混合ガス組成物において、その組成中の有機珪素化合物、酸素ガスおよび不活性ガス等の含有量は、任意に変更することが可能である。また、上記装置においては、冷却・電極ドラム15には電源21から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー12内の原料供給ノズル19の開口部と冷却・電極ドラム15との近傍でグロー放電プラズマ20が生成される。このグロー放電プラズマ20は、混合ガス中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、基材5を一定速度で搬送することで、グロー放電プラズマ20によって、冷却・電極ドラム15周面上の基材5上に、珪素酸化物の連続薄膜を形成することができる。なお、このときの真空チャンバー内の真空度は、真空ポンプ25により減圧することで、好適には1×10−1〜1×10−4Torr、より好適には真空度1×10−1〜1×10−2Torrに調整する。また、基材5の搬送速度は、好適には10〜500m/分、より好適には50〜350m/分に調整することができる。
【0026】
また、上記プラズマ化学気相成長装置11において、珪素酸化物の連続薄膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が基材5の一方の面に密接着して形成されるものであり、通常、一般式SiO(但し、Xは0〜2の数を表す)で表される珪素酸化物を主体とする連続状の薄膜である。したがって、上記により得られる珪素酸化物の連続薄膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性、柔軟性に富む連続層となり、基材との密接着性に優れ、膜厚の均一性が高いことに加え、透明性や離型性等にも優れ、真空中で成膜されることからその表面に塵埃等が付着することがなく、均一な離型性を有する優れた特性を有するものである。また、上記においては、プラズマにより基材5の表面が清浄化され、基材5の表面に極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される珪素酸化物の連続薄膜と基材5との密接着性がより高いものとなるという利点もある。さらに、上述したように、珪素酸化物の連続薄膜の形成時の真空度は、好適には1×10−1〜1×10−4Torr、より好適には1×10−1〜1×10−2Torrに調整されることから、従来の真空蒸着法により酸化珪素の蒸着膜を形成する際の真空度である1×10−4〜1×10−5Torrと比較して低真空度であるので、基材5の原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度を安定しやすく、製膜プロセスが安定するものである。
【0027】
上記珪素酸化物の連続薄膜は、珪素酸化物を主体とし、さらに、炭素、水素、珪素および酸素からなる群から選択される1種または2種以上の元素からなる化合物の少なくとも1種以上を化学結合等により含有する。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、Si−C結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、さらには、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合が含まれる。具体例としては、CH部位を持つハイドロカーボン、SiHシリル、SiHシリレン等のハイドロシリカ、SiHOHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、珪素酸化物の連続薄膜中に含有される化合物の種類や量等を変化させることができる。本発明において、珪素酸化物の連続薄膜中における上記化合物の含有量としては、好適には0.1〜80質量%、より好適には5〜60質量%である。この含有量が0.1質量%未満であると、珪素酸化物の連続薄膜の離型性が低下したり、その耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となって、曲げ等により、擦り傷、クラック等が発生し易く、その安定性を維持することが困難になる。また、この含有量が80%を超えると、離型性等が低下し、また、膜の密着性も低下するため好ましくない。また、本発明においては、珪素酸化物の連続薄膜において、上記化合物の含有量が、珪素酸化物の連続薄膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、珪素酸化物の連続薄膜の表面においては、上記の化合物等により耐衝撃性等を高めることができ、一方で、基材5との界面においては、上記化合物の含有量が少ないために、基材5と珪素酸化物の連続薄膜との密接着性が強固なものとなる。さらに、本発明においては、離型層6を構成する珪素酸化物の連続薄膜中に上記化合物を含有させることで、上記珪素酸化物の連続薄膜の炭素原子含有量を、5原子%以上、例えば、5原子%〜70原子%、好適には10原子%〜50原子%の範囲とすることができる。この炭素原子含有量が5原子%未満であると、撥水基であるメチル基(CH)の存在が少なすぎて、十分な剥離性が得られず、本発明の所期の効果が得られない。また、この炭素原子含有量が、50原子%、さらには70原子%を超えると、膜の硬度や強度等が低下する傾向があり、膜が剥がれ落ちる現象が生ずるおそれがあり、好ましくない。
【0028】
本発明においては、上記珪素酸化物の連続薄膜について、例えば、X線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy,XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy,SIMS)等の表面分析装置を用いて、深さ方向にイオンエッチングする等して分析する方法を利用して元素分析を行うことより、上記のような物性を確認することができる。また、本発明において、上記珪素酸化物の連続薄膜の膜厚は、50〜2000Åとすることが好ましい。この膜厚が2000Åより厚くなると、膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、一方、50Å未満であると、離型性の効果を十分得ることが困難になるので好ましくない。この珪素酸化物の連続薄膜の膜厚は、例えば、(株)理学製の蛍光X線分析装置(機種名 RIX2000型)を用いて、測定することができる。また、上記珪素酸化物の連続薄膜の膜厚を変更する手段としては、連続薄膜の体積速度を大きくすること、すなわち、モノマ−ガスおよび酸素ガス量を多くする方法や、蒸着する速度を遅くする方法等が挙げられる。
【0029】
本発明において、上記珪素酸化物の連続薄膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を使用することができる。中でも、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンまたはヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性や、形成された連続膜の特性等の点から、特に好ましい。また、本発明において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガスやヘリウムガス等を使用することができる。
【0030】
次に、吸湿フィルム1を構成する吸湿層3は、バインダ樹脂と水分吸着性物質とからなる。吸湿層3に用いるバインダ樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。特には、水分吸着性物質を高充填可能であることや、耐ピンホール性や突刺強度、コシ(柔軟性)等の吸湿フィルム1全体での物理特性の維持、剥離フィルム2との良好な剥離性、粘着層4との間で層間剥離が生じないこと等の点から、アクリル系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。また、バインダ樹脂としてスチレン系熱可塑性エラストマーを用いる場合には、アクリル系粘着剤との密着性を高めるために、粘着剤の塗布前にコロナ処理等の前処理を行うことが好ましい。なお、剥離フィルム2の剥離後初期の吸湿性を高める観点からは、バインダ樹脂の透湿性が高いことが好ましく、かかる点からもアクリル系熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。また、水分吸着性物質を混練すると溶融粘度が高くなることを考慮して、かかるバインダ樹脂の、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRが5〜40g/10minであることが好ましく、より好ましくは15〜 35g/10minである。上記MFRの値が上記範囲より小さいと、水分吸着性物質を混練した際の溶融粘度の上昇により、樹脂の押出が困難になる。また、上記MFRの値が上記範囲を超えると、吸湿層の溶融粘度が低くなり、製膜性が低下する。
【0031】
また、吸湿層3に用いる水分吸着性物質としては、再放湿性がなく、かつ、吸湿しても固体の形状を維持する化学的吸着性物質を好適に用いることができる。具体的には例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸、有機物等が挙げられる。
【0032】
上記のうちアルカリ金属酸化物としては、酸化ナトリウム(NaO)や酸化カリウム(KO)等を挙げることができ、アルカリ土類金属酸化物としては、酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)等を挙げることができる。また、硫酸塩としては、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)等を挙げることができ、特には無水塩が好適である。
【0033】
さらに、金属ハロゲン化物としては、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化イットリウム(YCl)、塩化銅(CuCl)、臭化カルシウム(CaBr)、臭化セリウム(CeBr)、臭化セレン(SeBr)、臭化バナジウム(VBr)、臭化マグネシウム(MgBr)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF)、フッ化ニオブ(NbF)、ヨウ化バリウム(BaI)、ヨウ化マグネシウム(MgI)等を挙げることができ、特には無水塩が好適である。さらにまた、過塩素酸塩としては、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO)等を挙げることができ、特には無水塩が好適である。なお、化学的吸着性物質として有機物を用いる場合においても、化学的に水分を吸着するとともに、吸湿しても固体状態を維持するものであることが必要である。
【0034】
吸湿層3における上記バインダ樹脂と水分吸着性物質との重量比率としては、吸湿層3の高い吸湿性能を確保するために、バインダ樹脂20〜60質量部に対し、水分吸着性物質を80〜40質量部にて混合することが好ましい。より好ましくは、バインダ樹脂30〜50質量部に対し、水分吸着性物質70〜50質量部の重量比率とする。上記範囲よりバインダ樹脂の重量比率が高く、水分吸着性物質の重量比率が低い場合、十分な吸湿性能が得られないおそれがある。一方、上記範囲よりバインダ樹脂の重量比率が低く、水分吸着性物質の重量比率が高い場合、水分吸着性物質の割合が高くなることから、溶融粘度が過剰に高くなり、成形性が低下してしまう。なお、吸湿層3の厚みについては、特に限定されるものではなく、25〜300μmの範囲で、用途により決定することができる。
【0035】
吸湿フィルム1においては、上記吸湿層3の片面または両面に、粘着層4を設ける。かかる粘着層4の形成材料としては、公知の粘着剤を用いることができ、特に制限されるものではない。具体的には例えば、ゴム系やシリコーン系、アクリル系等の粘着剤を挙げることができる。特に、粘着性の維持や、吸湿層3との間で層間剥離が生じないこと、剥離フィルム2との間の剥離性が良好であること、共押出による製膜性等の観点からは、アクリル系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。中でも、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRが5〜40g/10minであるアクリル系熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましい。
【0036】
また、使用する状況に応じ、より強度の高い粘着性が必要な場合には、上記粘着層4の形成材料として、アクリル系熱可塑性エラストマーを主成分とし、副成分として、粘着性付与剤としてのタッキファイヤーを添加したものを用いてもよい。かかるタッキファイヤーとしては、アクリル系樹脂との相溶性の観点からは、ロジン系のタッキファイヤーが好適である。
【0037】
粘着層4の厚みとしては、粘着性の維持の観点からは、5〜20μmであることが好ましく、より好ましくは5〜15μmである。厚みが上記範囲よりも薄いと、粘着層4の形成が困難で、十分な粘着性が得られないおそれがあり、上記範囲を超えると、コスト高となる。
【0038】
本発明に係る吸湿フィルム1は、上記バインダ樹脂と水分吸着性物質との混合材料を用いて、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の各種製膜法により製造することができる。特には、層構成の異なる種々の積層フィルムを迅速に製造することができる共押出による積層方法を用いて製造することが好ましい。
【0039】
また、本発明の吸湿性積層体10は、上記のようにして得られた吸湿フィルム1と剥離フィルム2とを積層して、上記公知の手法により擬似接着することで、従来のような特殊な装置や設備などを要することなく、容易に製造することが可能である。本発明の吸湿性積層体は、例えば、有機EL素子等の有機デバイスや、電子ブック、液晶表示装置、有機系太陽電池等において、吸湿材として好適に使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明について、実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
<実施例1>
下記に従い、図1に示す層構成の吸湿性積層体を作製した。
まず、基材5として、厚さ25μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着した。次に、下記に示す蒸着条件に従い、上記2軸延伸PETフィルムの片側のコロナ処理面に、厚み500Åの珪素酸化物の連続薄膜からなる離型層6を形成して、剥離フィルム2を製造した。
【0041】
(蒸着条件)
蒸着面;コロナ処理面,
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=10:1:10(単位:slm),
パワ−;3kW,
成膜速度;300m/min,
成膜圧力;2×10−2torr
【0042】
次に、バインダ樹脂としてのアクリル系熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製,LAポリマー LA2250,MFR=25(190℃,2.16kg))40質量部と、水分吸着性物質としての酸化カルシウム(CaO)60質量部とを混合して、単軸押出機を用いて溶融混練し、造粒装置を用いて吸湿層3形成用の樹脂ペレットを作製した。一方で、粘着層4形成用のアクリル系熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製,LAポリマー LA2140e,MFR=31(190℃,2.16kg))100質量部を、真空乾燥機を用いて、60℃5時間で事前乾燥した。
【0043】
上記吸湿層3の形成用材料および粘着層4の形成用材料を使用し、多層Tダイ押出機を用いて共押出しすることにより吸湿フィルム1を得、この吸湿フィルム1に、上記剥離フィルム2を熱ラミネーションにより擬似接着させて、実施例1の吸湿性積層体を作製した。この吸湿性積層体の層構成は、基材(25μm)/離型層(500Å)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/離型層(500Å)/基材(25μm)であった。
【0044】
<実施例2>
層構成を、基材(25μm)/離型層(500Å)/粘着層(10μm)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/離型層(500Å)/基材(25μm)とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の吸湿性積層体を作製した。
【0045】
<実施例3>
吸湿フィルム1の粘着層4形成用の材料として、アクリル系熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製,LAポリマー LA2140e,MFR=31(190℃,2.16kg))95質量部と、ロジン系タッキファイヤー(荒川化学工業(株)製,スーパーエステルA100,軟化温度100℃)5質量部とを混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の吸湿性積層体を作製した。この吸湿性積層体の層構成は、基材(25μm)/離型層(500Å)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/離型層(500Å)/基材(25μm)であった。
【0046】
<実施例4>
基材5として、厚さ15μmの2軸延伸ナイロン6(ONy)フィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着した。次に、下記に示す蒸着条件に従い、上記2軸延伸ナイロン6フィルムの片面に、厚さ500Åの珪素酸化物の連続薄膜からなる離型層6を形成して、剥離フィルム2を製造した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例4の吸湿性積層体を作製した。この吸湿性積層体の層構成は、基材(12μm)/離型層(500Å)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/離型層(500Å)/基材(12μm)であった。
【0047】
(蒸着条件)
蒸着面;コロナ処理面,
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=10:1:10(単位:slm),
パワ−;3kW,
成膜速度;300m/min,
成膜圧力;2×10−2torr
【0048】
<実施例5>
層構成を、基材(12μm)/離型層(500Å)/粘着層(10μm)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/離型層(500Å)/基材(12μm)とした以外は実施例4と同様にして、実施例5の吸湿性積層体を作製した。
【0049】
<比較例1>
剥離フィルム2に離型層6を設けない以外は実施例1と同様にして、比較例1の吸湿性積層体を作製した。この吸湿性積層体の層構成は、基材(25μm)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/基材(25μm)であった。
【0050】
<比較例2>
剥離フィルム2に離型層6を設けない以外は実施例4と同様にして、比較例2の吸湿性積層体を作製した。この吸湿性積層体の層構成は、基材(12μm)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/基材(12μm)であった。
【0051】
<比較例3>
吸湿層3におけるバインダ樹脂と水分吸着性物質との重量比率を、バインダ樹脂:水分吸着性物質=100:0とした以外は実施例1と同様にして、比較例3の吸湿性積層体を作製した。この吸湿性積層体の層構成は、基材(25μm)/離型層(500Å)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/離型層(500Å)/基材(25μm)であった。
【0052】
<比較例4>
剥離フィルム2の炭素原子含有量を2原子%とした以外は実施例1と同様にして、比較例4の吸湿性積層体を作製した。この吸湿性積層体の層構成は、基材(25μm)/離型層(500Å)/吸湿層(30μm)/粘着層(10μm)/離型層(500Å)/基材(25μm)であった。
【0053】
下記表1中に、上記各実施例および比較例における吸湿性積層体の条件を示す。なお、表中の炭素原子含有率は、下記に従い測定した値である。
【0054】
上記各実施例および比較例にて製造した剥離フィルムについて、離型層を構成する珪素酸化物の連続薄膜層中の炭素原子含有量を、X線光電子分析装置(島津製作所(株)製,機種名 ESCA3400)を使用して、深さ方向にイオンエッチングする等して分析する方法を用いて、上記連続薄膜層の元素分析を行うことより測定した。
【0055】
【表1】

*1)バインダ樹脂:アクリルエラストマー
*2)水分吸着性物質:CaO
【0056】
<評価試験>
(1)製造直後からの重量変化
上記実施例1〜5および比較例1〜4において作製した吸湿性積層体の寸法10×10cmのサンプルについて、製造直後および25℃75%RHの恒温恒湿槽に1日放置した後の重量を測定し、重量の差異を変化量として記載した。
(2)室温下で3日間放置後の重量変化
上記実施例1〜5および比較例1〜4において作製した吸湿性積層体の寸法10×10cmのサンプルについて、室温下で3日間放置後、剥離層を剥離し、剥離直後および25℃75%RHの恒温恒湿槽に10日放置後の重量変化を測定し、重量の差異を変化量として記載した。
上記の測定結果を、室温下で3日間放置後における剥離層剥離後の吸湿の状況と併せて、下記表2中に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
上記表2中の結果から明らかなように、実施例1〜5の吸湿性積層体は、剥離フィルムが未剥離の状態では重量変化量が極めて少なく、剥離フィルムを剥離した後には、良好な吸湿性を示した。これに対し、比較例1,2の吸湿性積層体では、剥離フィルムが未剥離の状態で既に吸湿を開始してしまい、剥離フィルムのトリガー効果が機能していなかった。また、比較例3の吸湿性積層体では、吸湿層が水分吸着物質を含有しておらず、吸湿能力が十分でなかった。さらに、比較例4の吸湿性積層体では、剥離フィルムの剥離力が低く、ラミネート後の剥離が困難であった。
【符号の説明】
【0059】
1 吸湿フィルム
2 剥離フィルム
3 吸湿層
4 粘着層
5 基材
6 離型層
10 吸湿性積層体
11 プラズマ化学気相成長装置
12 真空チャンバー
13 巻き出しロール
14 補助ロール
15 冷却・電極ドラム
16,17 ガス供給装置
18 原料揮発供給装置
19 原料供給ノズル
20 グロー放電プラズマ
21 電源
22 マグネット
23 補助ロール
24 巻き取りロール
25 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿フィルムと、該吸湿フィルムを挟持する一対の剥離フィルムとからなる吸湿性積層体であって、
前記吸湿フィルムが、バインダ樹脂と水分吸着性物質とからなる吸湿層と、該吸湿層の片面または両面に設けられた粘着層とからなり、前記剥離フィルムが、基材と、該基材の少なくとも一方の面に設けられた珪素酸化物の連続薄膜よりなる離型層とからなり、該連続薄膜が、炭素、水素、珪素および酸素からなる群から選択される1種または2種以上の元素からなる化合物の少なくとも1種以上を含有し、該連続薄膜の炭素原子含有量が5原子%以上であり、かつ、前記吸湿フィルムと前記剥離フィルムとが、前記吸湿層または前記粘着層と前記離型層との間で、擬似接着されていることを特徴とする吸湿性積層体。
【請求項2】
前記剥離フィルムの前記基材が、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムまたは2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムからなる請求項1記載の吸湿性積層体。
【請求項3】
前記剥離フィルムの前記離型層の膜厚が、50〜2000Åである請求項1または2記載の吸湿性積層体。
【請求項4】
前記吸湿フィルムの前記吸湿層のバインダ樹脂が、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRが5〜40g/10minであるアクリル系熱可塑性エラストマーである請求項1〜3のうちいずれか一項記載の吸湿性積層体。
【請求項5】
前記吸湿フィルムの前記吸湿層の水分吸着性物質が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸および有機物からなる群から選択される少なくとも1種からなる化学的水分吸着性物質である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の吸湿性積層体。
【請求項6】
前記吸湿フィルムの前記吸湿層におけるバインダ樹脂と水分吸着性物質との重量比率が、バインダ樹脂20〜60質量部に対し、水分吸着性物質80〜40質量部である請求項1〜5のうちいずれか一項記載の吸湿性積層体。
【請求項7】
前記吸湿フィルムの前記粘着層が、アクリル系熱可塑性エラストマーからなる請求項1〜6のうちいずれか一項記載の吸湿性積層体。
【請求項8】
前記吸湿フィルムの前記粘着層が、アクリル系熱可塑性エラストマーを主成分とし、かつ、ロジン系タッキファイヤーを含む請求項1〜7のうちいずれか一項記載の吸湿性積層体。
【請求項9】
前記吸湿フィルムの前記粘着層の厚みが、5〜20μmである請求項1〜8のうちいずれか一項記載の吸湿性積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−143690(P2011−143690A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8548(P2010−8548)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】