説明

吸着ヘッド、球状体搭載装置および球状体吸着方法

【課題】搭載対象体に対する微小な球状体の過剰な搭載を確実に防止し得る吸着ヘッドを提供する。
【解決手段】ヘッド本体21の吸着面32aに形成された吸気口33aの縁部に半田ボール300を吸着可能に構成され、底壁42を有する箱状に形成されてその開口面45と吸着面32aとが対向するようにヘッド本体21に装着されると共に、装着状態において吸着面32aと相俟って形成される内部空間41に対する気体の供給によって内部空間41が加圧される加圧容器22を備え、加圧容器22は、半田ボール300を1つだけ通過可能な大きさの貫通孔43が底壁42に形成されて、貫通孔43を通過した1つの半田ボール300をヘッド本体21に吸着させると共にその1つを除く他の半田ボール300の通過を貫通孔43の縁部で規制し、かつ内部空間41への加圧に伴って気体を貫通孔43から噴出可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド本体の吸着面に形成された吸気口の縁部に球状体を吸着する吸着ヘッド、その吸着ヘッドを備えた球状体搭載装置、および吸着ヘッドに球状体を吸着させる球状体吸着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の球状体搭載装置として、特開2003−100789号公報に開示された半田(はんだ)ボール搭載装置が知られている。この半田ボール搭載装置は、複数の吸着穴が吸着面に形成された整列マスク、および整列マスクを移動させる移動部を備えて、整列マスクで吸着した半田ボールをパッケージの接続端子に搭載可能に構成されている。また、この半田ボール搭載装置は、半田ボールよりも大きい複数の貫通穴が整列マスクの吸着穴と同じ配列で形成されて、整列マスクに対して相対的に移動可能な離脱プレートを備えている。この半田ボール搭載装置を用いてパッケージの接続端子に半田ボールを搭載する際には、離脱プレートを整列マスクの吸着面に接触させた状態で、半田ボールが収容されている半田ボール容器内に離脱プレートおよび整列マスクを移動させる。この際に、離脱プレートの貫通穴を通って1つの半田ボールが整列マスクの吸着穴に吸着されると共に、その半田ボールと吸着穴との隙間から吸引される気流によってその半田ボール以外の不要な半田ボールが吸着される。次いで、離脱プレートを下方に移動させて整列マスクの吸着面から離反させる。この際に、上記した不要な半田ボールが、離脱プレートの移動に伴って整列マスクから引き離されて、半田ボール容器内に落下する。このため、この半田ボール搭載装置では、接続端子への不要な半田ボールの搭載を防止することが可能となっている。
【特許文献1】特開2003−100789号公報(第3−4頁、第1−6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の半田ボール搭載装置には、以下の問題点がある。すなわち、この半田ボール搭載装置では、離脱プレートを下方に移動させて整列マスクの吸着面から離反させることで、不要な半田ボールを整列マスクから除去している(落下させている)。一方、近年のパッケージの高密度化に伴い、半田ボールの微小化が進んでいる。この場合、半田ボールが微小なほど、半田ボール間の静電気や分子間力に起因する半田ボール同士が互いに引き合う力が、半田ボールの重量に対して相対的に大きくなる。このため、図11〜図13に示すように、微小な半田ボールを整列マスク531に吸着させたときに、半田ボール同士が互いに引き合う力が半田ボールの重量に対して相対的に大きいことに起因して、離脱プレート550を下方に移動させただけでは、全ての不要な半田ボールを整列マスク531から除去できないことがある。したがって、上記の半田ボール搭載装置には、半田ボールが微小なときには、接続端子への不要な半田ボールの搭載(つまり、接続端子に対する半田ボールの過剰な搭載)を防止するのが困難となるという問題点が存在する。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、搭載対象体に対する微小な球状体の過剰な搭載を確実に防止し得る吸着ヘッド、球状体搭載装置および球状体吸着方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の吸着ヘッドは、ヘッド本体の吸着面に形成された吸気口の縁部に球状体を吸着可能に構成された吸着ヘッドであって、底壁を有する箱状に形成されてその開口面と前記ヘッド本体の前記吸着面とが対向するように当該ヘッド本体に装着されると共に、装着状態において前記吸着面と相俟って形成される内部空間に対する気体の供給によって当該内部空間が加圧される加圧容器を備え、前記加圧容器は、前記球状体を1つだけ通過可能な大きさの貫通孔が前記底壁に形成されて、前記貫通孔を通過した1つの前記球状体を前記ヘッド本体に吸着させると共に当該1つを除く他の前記球状体の当該貫通孔の通過を当該貫通孔の縁部で規制し、かつ前記内部空間への加圧に伴って前記気体を前記貫通孔から噴出可能に構成されている。
【0006】
また、請求項2記載の吸着ヘッドは、請求項1記載の吸着ヘッドにおいて、前記加圧容器は、前記貫通孔の直径が前記球状体の直径よりも長くかつ当該球状体の直径の2倍よりも短く形成されている。
【0007】
また、請求項3記載の吸着ヘッドは、請求項1または2記載の吸着ヘッドにおいて、前記加圧容器は、前記開口面から前記底壁の内面までの長さが前記球状体の直径よりも短く形成されている。
【0008】
また、請求項4記載の吸着ヘッドは、請求項1から3のいずれかに記載の吸着ヘッドにおいて、前記加圧容器は、前記装着状態における前記開口面から前記底壁の外面までの長さが前記球状体の直径よりも短く形成されている。
【0009】
また、請求項5記載の球状体搭載装置は、請求項1から4のいずれかに記載の吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを移動させる移動機構と、前記吸気口からの吸気を行う吸気機構と、前記気体を供給する給気機構と、当該移動機構を制御して前記吸着ヘッドを前記球状体の吸着位置に移動させる処理、前記吸気機構を制御して前記吸気口からの吸気を行わせる処理、前記給気機構を制御して前記加圧容器の前記内部空間に対して前記気体を供給させる処理、および前記移動機構を制御して前記球状体を吸着している前記吸着ヘッドを目標位置まで移動させる処理を実行する制御部とを備えている。
【0010】
また、請求項6記載の球状体吸着方法は、吸着ヘッドにおけるヘッド本体の吸着面に形成された吸気口の縁部に球状体を吸着させる球状体吸着方法であって、底壁を有する箱状に形成された加圧容器をその開口面と前記ヘッド本体の前記吸着面とが対向するようにして当該ヘッド本体に装着した状態において、前記加圧容器の前記底壁に形成されている貫通孔を通過した1つの前記球状体を前記ヘッド本体に吸着させると共に当該1つを除く他の前記球状体の当該貫通孔の通過を当該貫通孔の縁部で規制し、前記吸着面と相俟って形成される前記加圧容器の内部空間に対する気体の供給によって当該内部空間を加圧し、当該内部空間への当該加圧に伴う前記貫通孔からの前記気体の噴出によって前記他の球状体を前記吸着ヘッドから除去する。
【0011】
また、請求項7記載の球状体吸着方法は、請求項6記載の球状体吸着方法において、前記貫通孔の直径が前記球状体の直径よりも長くかつ当該球状体の直径の2倍よりも短く形成された前記加圧容器を用いる。
【0012】
また、請求項8記載の球状体吸着方法は、請求項6または7記載の球状体吸着方法において、前記開口面から前記底壁の内面までの長さが前記球状体の直径よりも短く形成された前記加圧容器を用いる。
【0013】
また、請求項9記載の球状体吸着方法は、請求項6から8のいずれかに記載の球状体吸着方法において、前記装着状態における前記開口面から前記底壁の外面までの長さが前記球状体の直径よりも短く形成された前記加圧容器を用いる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の吸着ヘッド、請求項5記載の球状体搭載装置、および請求項6記載の球状体吸着方法では、底壁を有する箱状に形成された加圧容器をその開口面とヘッド本体の吸着面とが対向するようにヘッド本体に装着し、底壁に形成されている貫通孔を通過した1つの球状体(搭載対象の球状体)をヘッド本体に吸着させると共にその1つを除く他の球状体(不要な球状体)の貫通孔の通過を貫通孔の縁部で規制し、その状態で加圧容器の内部空間に対する気体の供給によって内部空間を加圧してその加圧に伴って貫通孔から気体を噴出させる。このため、この吸着ヘッド、球状体搭載装置および球状体吸着方法では、搭載対象の球状体だけを吸着ヘッドに吸着させ、その搭載対象の球状体に付着している不要な球状体や、その不要な球状体にさらに付着している他の不要な球状体に対して、貫通孔から噴出させた気体を吹き当てて、これらの不要な球状体を搭載対象の球状体から強制的に引き離して吸着ヘッドから確実に除去することができる。したがって、この吸着ヘッド、球状体搭載装置および球状体吸着方法によれば、搭載対象の球状体だけを吸着ヘッドに吸着させることができるため、不要な球状体の搭載対象体への搭載、つまり搭載対象体に対する球状体の過剰な搭載を確実に防止することができる。
【0015】
また、請求項2記載の吸着ヘッド、請求項5記載の球状体搭載装置、および請求項7記載の球状体吸着方法では、貫通孔の直径が球状体の直径よりも長くかつ球状体の直径の2倍よりも短く形成された加圧容器を用いている。したがって、この吸着ヘッド、球状体搭載装置および球状体吸着方法によれば、不要な球状体の貫通孔の通過を確実に防止することができるため、不要な球状体の搭載対象体への搭載をより確実に防止することができる。
【0016】
また、請求項3記載の吸着ヘッド、請求項5記載の球状体搭載装置、および請求項8記載の球状体吸着方法では、開口面から底壁の内面までの長さが球状体の直径よりも短く形成された加圧容器を用いる。したがって、この吸着ヘッド、球状体搭載装置および球状体吸着方法によれば、球状体を吸着する際に、貫通孔を通過した球状体がヘッド本体の吸着面と底壁との間の隙間に入り込む事態を確実に防止することができるため、この隙間に入り込んだ不要な球状体の搭載対象体への搭載を防止することができる。
【0017】
また、請求項4記載の吸着ヘッド、請求項5記載の球状体搭載装置、および請求項9記載の球状体吸着方法では、装着状態における開口面から底壁の外面までの長さが球状体の直径よりも短く形成された加圧容器を用いている。したがって、この吸着ヘッド、球状体搭載装置および球状体吸着方法によれば、ヘッド本体に吸着された球状体の下側の端部を加圧容器の底壁の外部に突出させることができるため、加圧容器をヘッド本体に装着した状態の吸着ヘッドを搭載対象体の配置位置に移動させて、そのまま球状体を搭載対象体に搭載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る吸着ヘッド、球状体搭載装置および球状体吸着方法の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、図1に示す半田ボール搭載装置1の構成について説明する。半田ボール搭載装置1は、本発明に係る球状体搭載装置の一例であって、同図に示すように、吸着ヘッド11、移動機構12、吸気機構13、給気機構14、供給機構15および制御部16を備えて、本発明における球状体の一例としての微小な球状粒体である半田ボール(マイクロボール)300(図2参照)を搭載対象体としての基板400の端子401(図7参照)に搭載(載置)可能に構成されている。この場合、半田ボール300は、直径L1(図3参照)が70μm程度の球状に構成されている。また、半田ボール300は、半田ボール搭載装置1によって基板400の端子401に搭載された後に加熱溶融されることにより、基板400上にボールグリッドアレイ(BGA)を構成する。
【0020】
吸着ヘッド11は、本発明に係る吸着ヘッドの一例であって、図2に示すように、ヘッド本体21および加圧容器22を備えて、本発明に係る球状体吸着方法に従って半田ボール300を吸着可能に構成されている。ヘッド本体21は、一例として、同図に示すように、内部に空隙31が形成された箱状に構成されている。また、ヘッド本体21における底壁32には、底壁32の外面(本発明における吸着面として機能する面であって、以下「吸着面32a」ともいう)に開口すると共に空隙31と連通する吸気孔33が、底壁32の厚み方向に沿って複数(同図では、そのうちの2個のみを図示している)形成されている。なお、吸着面32aにおける吸気孔33の開口部が本発明における吸気口(以下、「吸気口33a」ともいう)に相当する。この場合、図3に示すように、吸気孔33(つまり、吸気口33a)の直径L2は、半田ボール300の直径L1(この例では、70μm)よりも短い40μm程度に規定されている。また、図2に示すように、ヘッド本体21には、空隙31内の空気を排気するための排気孔34が形成されている。このヘッド本体21では、空隙31内の空気の排気によって空隙31内が負圧状態となり、それに伴って吸気口33aから吸気が行われることにより、ヘッド本体21の吸着面32aにおける吸気口33aの縁部に半田ボール300を吸着することが可能となっている(図4参照)。
【0021】
加圧容器22は、図2に示すように、底壁42を有して一方が開口する箱状(皿状)に形成されて、その開口面45とヘッド本体21の吸着面32aとが対向し、かつ吸着面32aと底壁42の上面(本発明における内面)42aとが所定の距離だけ離間する状態でヘッド本体21に装着可能に構成されている。また、加圧容器22の底壁42には、ヘッド本体21に装着された状態(装着状態)において、ヘッド本体21の各吸気孔33に対向する位置に複数(同図では、そのうちの2個のみを図示している)の貫通孔43が形成されている。
【0022】
この場合、加圧容器22は、図3に示すように、開口面45から底壁42の上面42aまでの長さL3(装着状態におけるヘッド本体21の吸着面32aと上面42aとの間の長さ)が、半田ボール300の直径L1(この例では、70μm)よりも短い40μm程度となるように形成されている。また、加圧容器22は、底壁42の厚みL4が、半田ボール300の直径L1(この例では、70μm)よりも薄い20μm程度となるように形成されている。この結果、加圧容器22の開口面45から底壁42の下面(本発明における外面)42bまでの長さ(L3+L4)は、半田ボール300の直径L1(この例では、70μm)よりも短い60μm程度となっている。また、加圧容器22は、同図に示すように、貫通孔43の直径L5が、半田ボール300の直径L1(この例では、70μm)よりも長く、かつ直径L1の2倍よりも短い90μm程度となるように形成されている。
【0023】
この加圧容器22では、貫通孔43の直径L5を上記の長さとしたことで、半田ボール300が一時に1つだけ貫通孔43を通過して、その1つの半田ボール300をヘッド本体21(吸気口33aの縁部)に吸着させると共に、ヘッド本体21に吸着させたその半田ボール300(以下、この半田ボール300を「搭載対象の半田ボール300」ともいう)を除く他の半田ボール300(以下、この半田ボール300を「不要な半田ボール300」ともいう)の貫通孔43の通過を貫通孔43の縁部で規制することが可能となっている(図4参照)。
【0024】
また、この加圧容器22では、装着状態においてヘッド本体21の吸着面32aと相俟って形成される内部空間41に対して側壁に形成された給気孔44(図2参照)から空気(本発明における気体の一例)が供給されることによって内部空間41が加圧され、それに伴って貫通孔43から加圧容器22の外部への空気の噴出(排出)が行われることにより、ヘッド本体21に吸着されている搭載対象の半田ボール300に付着している不要な半田ボール300を除去することが可能となっている(図5,6参照)。
【0025】
また、この加圧容器22では、加圧容器22における開口面45から底壁42の上面42aまでの長さL3を上記の長さとしたことで、貫通孔43を通過した半田ボール300が吸着面32aと底壁42との間の隙間に入り込む事態が確実に防止されている。さらに、この加圧容器22では、開口面45から底壁42の上面42aまでの長さL3、および底壁42の厚みL4(開口面45から底壁42の下面42bまでの長さ(L3+L4))を上記の長さとしたことで、図3に示すように、ヘッド本体21に吸着されている半田ボール300の下側の端部が、底壁42の下面42bから加圧容器22の外部に突出する(この例では、その突出長L6が5μm程度となっている)。
【0026】
移動機構12は、制御部16の制御に従い、供給機構15の配置位置(本発明における吸着位置)と基板400の配置位置(本発明における目標位置)との間で吸着ヘッド11を移動させる。吸気機構13は、例えば、配管20(図1参照)を介して吸着ヘッド11におけるヘッド本体21の排気孔34に連結された真空ポンプ(図示せず)を備えて構成されて、制御部16の制御に従い、ヘッド本体21の空隙31内を負圧状態とすることによって吸気口33aからの吸気を行う。給気機構14は、配管20(同図参照)を介して吸着ヘッド11における加圧容器22の給気孔44に連結されたコンプレッサ(図示せず)を備えて構成されて、制御部16の制御に従い、加圧容器22の内部空間41に空気を供給して内部空間41を加圧する。また、給気機構14のコンプレッサは、供給機構15の容器51(図2参照)にも配管20(図1参照)を介して連結されており、容器51の内部空間52にも空気を供給する。
【0027】
供給機構15は、吸着ヘッド11に半田ボール300を供給する。この場合、供給機構15は、図2に示すように、上部が開口すると共に半田ボール300をその内部空間52に収容可能に構成された容器51を備えて構成されている。また、容器51を構成する底壁および側壁は、半田ボール300の直径L1よりも小径の孔が多数形成された通気性を有する材料で形成されている。この供給機構15では、給気機構14による内部空間52に対する空気の供給によって内部空間52に収容している半田ボール300を内部空間52で浮遊させることが可能となっている。
【0028】
制御部16は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、移動機構12、吸気機構13および給気機構14を制御する。具体的には、制御部16は、移動機構12を制御して吸着ヘッド11を供給機構15の配置位置に移動させる処理(以下、「第1移動処理」ともいう)、吸気機構13を制御して吸着ヘッド11のヘッド本体21における吸気口33aからの吸気を行わせる処理(以下、「吸気処理」ともいう)、給気機構14を制御して供給機構15における容器51の内部空間52に対して空気を供給させる処理(以下、「第1給気処理」ともいう)、給気機構14を制御して加圧容器22の内部空間41に対して空気を供給させる処理(以下、「第2給気処理」ともいう)、移動機構12を制御して半田ボール300を吸着している吸着ヘッド11を基板400の配置位置まで移動させる処理(以下、「第2移動処理」ともいう)、および基板400の配置位置において吸気機構13を制御して吸気を停止させる処理(以下、「吸気停止処理」ともいう)を実行する。
【0029】
次に、半田ボール搭載装置1を用いて、本発明に係る球状体吸着方法に従って吸着ヘッド11に半田ボール300を吸着させ、その半田ボール300を基板400の端子401に搭載する工程、およびその際の半田ボール搭載装置1の動作について、図面を参照して説明する。なお、この例では、ヘッド本体21の吸着面32aを下向きにした状態で吸着ヘッド11が半田ボール300を吸着して吸着するものとする。また、供給機構15の容器51には、半田ボール300が多数収容されているものとする。
【0030】
この半田ボール搭載装置1では、開始操作がされたときに、制御部16が、第1移動処理を実行する。この第1移動処理では、制御部16は、移動機構12を制御して、吸着ヘッド11を供給機構15(容器51)の配置位置の上方に移動させ、次いで、図2に示すように、加圧容器22の底壁42の下面42bが容器51の側壁の上端部に当接するように吸着ヘッド11を降下させる。続いて、制御部16は、吸気処理を実行する。この吸気処理では、制御部16は、吸気機構13を制御して、吸着ヘッド11のヘッド本体21における空隙31内の空気を排気させて空隙31内を負圧状態とさせることにより、吸気口33aからの吸気を行わせる。
【0031】
次いで、制御部16は、第1給気処理を実行する。この第1給気処理では、制御部16は、給気機構14を制御して、供給機構15における容器51の内部空間52に対して空気を供給させる。この際に、内部空間52に対する空気の供給により、収容されている半田ボール300が内部空間52において浮遊させられる。また、図4に示すように、上記した吸気処理による吸気口33aからの吸気に伴う吸引力により、内部空間52において浮遊している半田ボール300が、吸着ヘッド11におけるヘッド本体21の吸気口33aに向けて引き寄せられる。続いて、同図に示すように、吸気口33aに向けて引き寄せられた半田ボール300が、吸着ヘッド11における加圧容器22の底壁42に形成されている貫通孔43を通ってヘッド本体21の吸着面32aにおける吸気口33aの縁部に吸着される。
【0032】
また、上記したように、微小な半田ボール300同士が互いに引き合う力がその重量に対して相対的に大きいため、図4に示すように、ヘッド本体21(吸気口33aの縁部)に吸着された搭載対象の半田ボール300には、不要な半田ボール300が付着する。この場合、上記したように、不要な半田ボール300の貫通孔43の通過が規制されるため、不要な半田ボール300は、加圧容器22(底壁42)の外側に位置した状態に維持される。次いで、制御部16は、第1給気処理を終了(停止)する。この際に、図5に示すように、ヘッド本体21に吸着されている搭載対象の半田ボール300および搭載対象の半田ボール300に付着している不要な半田ボール300を除く他の半田ボール300が容器51の底部に向けて自重によって落下する。
【0033】
続いて、制御部16は、第2給気処理を実行する。この第2給気処理では、制御部16は、給気機構14を制御して加圧容器22の内部空間41に対して空気を供給させる。この際に、図5,6に示すように、空気の供給によって内部空間41が加圧され、その加圧に伴って貫通孔43から空気が噴出する。また、貫通孔43から噴出した空気が、搭載対象の半田ボール300に付着している不要な半田ボール300に吹き当てられる。このため、搭載対象の半田ボール300と不要な半田ボール300とが強く引き合っていたとしても、不要な半田ボール300が搭載対象の半田ボール300から強制的に引き離されて吸着ヘッド11から確実に除去される。なお、この状態では、図6に示すように、搭載対象の半田ボール300の下側の端部が、底壁42の下面42bから突出している。
【0034】
次いで、制御部16は、第2移動処理を実行する。この第2移動処理では、制御部16は、移動機構12を制御して、図7に示すように、搭載対象の半田ボール300を吸着している吸着ヘッド11を基板400の上方に移動させ、続いて、搭載対象の半田ボール300の先端部が基板400の端子401に近接する位置(基板400の配置位置)に吸着ヘッド11を降下させる。次いで、制御部16は、吸気停止処理を実行する。この吸気停止処理では、制御部16は、吸気機構13を制御して、吸着ヘッド11のヘッド本体21における空隙31内の空気の排気を停止させることにより、吸気口33aからの吸気を停止させる。この際に、同図に示すように、吸気口33aからの吸気による吸着が解除されて、半田ボール300が基板400の端子401上(端子401の表面に塗布された半田フラックス上)に載置される。続いて、制御部16は、移動機構12を制御して、図8に示すように、吸着ヘッド11を上方に移動させた後に初期位置に移動させる。以上により、基板400の端子401への半田ボール300の搭載が完了する。この場合、この吸着ヘッド11では、上記したように、第2給気処理を実行して加圧容器22の内部空間41を加圧し、その加圧によって貫通孔43から空気を噴出させることで不要な半田ボール300を確実に除去している。このため、不要な半田ボール300の端子401への搭載(つまり、端子401に対する半田ボール300の過剰な搭載)が確実に防止される。
【0035】
このように、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法では、底壁42を有する箱状に形成された加圧容器22をその開口面45とヘッド本体21の吸着面32aとが対向する状態でヘッド本体21に装着し、底壁42に形成されている貫通孔43を通過した1つの半田ボール300(搭載対象の半田ボール300)をヘッド本体21に吸着させると共にその1つを除く他の半田ボール300(不要な半田ボール300)の貫通孔43の通過を貫通孔43の縁部で規制し、その状態で加圧容器22の内部空間41に対する空気の供給によって内部空間41を加圧してその加圧に伴って貫通孔43から空気を噴出させる。このため、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法では、搭載対象の半田ボール300だけを吸着ヘッド11に吸着させ、その搭載対象の半田ボール300に付着している不要な半田ボール300や、その不要な半田ボール300にさらに付着している他の不要な半田ボール300に貫通孔43から噴出させた空気を吹き当てて、これらの不要な半田ボール300を搭載対象の半田ボール300から強制的に引き離して吸着ヘッド11から確実に除去することができる。したがって、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法によれば、搭載対象の半田ボール300だけを吸着ヘッド11に吸着させることができるため、不要な半田ボール300の端子401への搭載、つまり端子401に対する半田ボール300の過剰な搭載を確実に防止することができる。
【0036】
また、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法では、貫通孔43の直径L5が半田ボール300の直径L1よりも長くかつ直径L5の2倍よりも短い90μm程度に形成された加圧容器22を用いている。したがって、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法によれば、不要な半田ボール300の貫通孔43の通過を確実に防止することができるため、不要な半田ボール300の端子401への搭載をより確実に防止することができる。
【0037】
また、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法では、開口面45から底壁42の上面42aまでの長さL3が半田ボール300の直径L1よりも短い40μm程度に形成された加圧容器を用いている。したがって、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法によれば、半田ボール300を吸着する際に、貫通孔43を通過した半田ボール300が吸着面32aと底壁42との間の隙間に入り込む事態を確実に防止することができるため、この隙間に入り込んだ不要な半田ボール300の端子401への搭載を防止することができる。
【0038】
また、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法では、開口面45から底壁42の下面42bまでの長さ(L3+L4)が半田ボール300の直径L1よりも短い60μm程度に形成された加圧容器22を用いている。したがって、この吸着ヘッド11、半田ボール搭載装置1および球状体吸着方法によれば、ヘッド本体21に吸着された半田ボール300の下側の端部を底壁42の外部に突出させることができるため、加圧容器22をヘッド本体21に装着した状態の吸着ヘッド11を基板400の配置位置に移動させて、そのまま半田ボール300を端子401に搭載することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、ヘッド本体21の吸着面32aを下向きにした状態で吸着ヘッド11に半田ボール300を吸着させる構成および方法について上記したが、吸着面32aを上向き、または横向きにした状態で吸着ヘッド11に半田ボール300を吸着させる構成および方法を採用することもできる。
【0040】
また、加圧容器22をヘッド本体21に装着した状態の吸着ヘッド11を移動機構12が移動させる構成および方法について上記したが、図9に示す吸着ヘッド111のように、ヘッド本体21と加圧容器22とを分離可能(着脱可能)に構成して、移動機構12がヘッド本体21のみを移動させる構成および方法を採用することもできる。この場合、この構成および方法では、吸着ヘッド11に吸着されている半田ボール300の下側の端部を装着状態の加圧容器22における底壁42から突出させる必要がないため、底壁42の厚みを厚く構成することができる。
【0041】
また、図10に示す吸着ヘッド211のように、吸着面32aにおける吸気口33aの縁部を面取りすることによって形成した凹部33bを設けて、半田ボール300を吸着させる際に、この凹部33bに半田ボール300を嵌め込む構成および方法を採用することもできる。この構成および方法によれば、搭載対象の半田ボール300を吸気口33aの縁部に吸着させる際に、その半田ボール300の外面と凹部33bの内面とを密着させることができるため、搭載対象の半田ボール300を確実に吸着させることができる。このため、貫通孔43から噴出する空気を吹き当てて不要な半田ボール300を除去する際に、搭載対象の半田ボール300が吸着ヘッド11から引き離される事態を確実に防止することができる。
【0042】
さらに、基板400における端子401の表面に塗布した半田フラックス上に半田ボール300を載置する構成に代えて、吸着ヘッド11によって吸着された半田ボール300の先端部をトレイに収容した半田フラックスに浸してその先端部に半田フラックスを付着させた後に、半田フラックスが塗布されていない端子401上にその半田ボール300を載置する構成を採用することもできる。また、イオナイザ等の除電装置(イオン化装置)によってイオン化させた空気を内部空間41に供給して加圧し、そのイオン化させた空気を貫通孔43から噴出させて不要な半田ボール300に吹き当てる構成および方法を採用することもできる。この構成および方法によれば、静電気によって搭載対象の半田ボール300に強く付着している不要な半田ボール300を搭載対象の半田ボール300から容易に引き離して除去することができる。また、空気に代えて、他の気体を用いる構成および方法を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】半田ボール搭載装置1の構成を示す構成図である。
【図2】吸着ヘッド11および供給機構15の断面図である。
【図3】ヘッド本体21の底壁32および加圧容器22の底壁42の構成を示す吸着ヘッド11の拡大断面図である。
【図4】半田ボール300を基板400の端子401に搭載する工程を説明する第1の説明図である。
【図5】半田ボール300を基板400の端子401に搭載する工程を説明する第2の説明図である。
【図6】半田ボール300を基板400の端子401に搭載する工程を説明する第3の説明図である。
【図7】半田ボール300を基板400の端子401に搭載する工程を説明する第4の説明図である。
【図8】半田ボール300を基板400の端子401に搭載する工程を説明する第5の説明図である。
【図9】吸着ヘッド111の構成を示す断面図である。
【図10】吸着ヘッド211の構成を示す断面図である。
【図11】従来の半田ボール搭載装置の動作を説明する第1の説明図である。
【図12】従来の半田ボール搭載装置の動作を説明する第2の説明図である。
【図13】従来の半田ボール搭載装置の動作を説明する第3の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 半田ボール搭載装置
11,111,211 吸着ヘッド
12 移動機構
13 吸気機構
14 給気機構
15 供給機構
16 制御部
21 ヘッド本体
22 加圧容器
32a 吸着面
33a 吸気口
41 内部空間
42 底壁
42a 上面
42b 下面
43 貫通孔
45 開口面
300 半田ボール
L1,L5 直径
L3 長さ
L4 厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体の吸着面に形成された吸気口の縁部に球状体を吸着可能に構成された吸着ヘッドであって、
底壁を有する箱状に形成されてその開口面と前記ヘッド本体の前記吸着面とが対向するように当該ヘッド本体に装着されると共に、装着状態において前記吸着面と相俟って形成される内部空間に対する気体の供給によって当該内部空間が加圧される加圧容器を備え、
前記加圧容器は、前記球状体を1つだけ通過可能な大きさの貫通孔が前記底壁に形成されて、前記貫通孔を通過した1つの前記球状体を前記ヘッド本体に吸着させると共に当該1つを除く他の前記球状体の当該貫通孔の通過を当該貫通孔の縁部で規制し、かつ前記内部空間への加圧に伴って前記気体を前記貫通孔から噴出可能に構成されている吸着ヘッド。
【請求項2】
前記加圧容器は、前記貫通孔の直径が前記球状体の直径よりも長くかつ当該球状体の直径の2倍よりも短く形成されている請求項1記載の吸着ヘッド。
【請求項3】
前記加圧容器は、前記開口面から前記底壁の内面までの長さが前記球状体の直径よりも短く形成されている請求項1または2記載の吸着ヘッド。
【請求項4】
前記加圧容器は、前記装着状態における前記開口面から前記底壁の外面までの長さが前記球状体の直径よりも短く形成されている請求項1から3のいずれかに記載の吸着ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の吸着ヘッドと、
前記吸着ヘッドを移動させる移動機構と、
前記吸気口からの吸気を行う吸気機構と、
前記気体を供給する給気機構と、
当該移動機構を制御して前記吸着ヘッドを前記球状体の吸着位置に移動させる処理、前記吸気機構を制御して前記吸気口からの吸気を行わせる処理、前記給気機構を制御して前記加圧容器の前記内部空間に対して前記気体を供給させる処理、および前記移動機構を制御して前記球状体を吸着している前記吸着ヘッドを目標位置まで移動させる処理を実行する制御部とを備えている球状体搭載装置。
【請求項6】
吸着ヘッドにおけるヘッド本体の吸着面に形成された吸気口の縁部に球状体を吸着させる球状体吸着方法であって、
底壁を有する箱状に形成された加圧容器をその開口面と前記ヘッド本体の前記吸着面とが対向するように当該ヘッド本体に装着した状態において、前記加圧容器の前記底壁に形成されている貫通孔を通過した1つの前記球状体を前記ヘッド本体に吸着させると共に当該1つを除く他の前記球状体の当該貫通孔の通過を当該貫通孔の縁部で規制し、前記吸着面と相俟って形成される前記加圧容器の内部空間に対する気体の供給によって当該内部空間を加圧し、当該内部空間への当該加圧に伴う前記貫通孔からの前記気体の噴出によって前記他の球状体を前記吸着ヘッドから除去する球状体吸着方法。
【請求項7】
前記貫通孔の直径が前記球状体の直径よりも長くかつ当該球状体の直径の2倍よりも短く形成された前記加圧容器を用いる請求項6記載の球状体吸着方法。
【請求項8】
前記開口面から前記底壁の内面までの長さが前記球状体の直径よりも短く形成された前記加圧容器を用いる請求項6または7記載の球状体吸着方法。
【請求項9】
前記開口面から前記底壁の外面までの長さが前記球状体の直径よりも短く形成された前記加圧容器を用いる請求項6から8のいずれかに記載の球状体吸着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−140918(P2010−140918A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312807(P2008−312807)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】