説明

吸音パネル

【課題】備えた太陽電池パネルの温度上昇が抑制される吸音パネルを提供する。
【解決手段】多数の開孔21を有する前面板2と、背面側に設けられた太陽電池パネル3との間の中空内に吸音材7を内装させ、前記吸音材7と前記太陽電池パネル3との間には空隙部11を設け、この空隙部11と前記開孔21との間には空気が流通可能な通気部12を設ける。外部の空気が開孔21と通気部12を通じて空隙部11に流入し、太陽電池パネル3を吸音パネルの内側から冷却させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車両等の走行に伴う騒音を遮音、吸音するために、高速道路や鉄道の沿線等に沿って設置される防音壁として、また橋梁や高架道路橋、堀割、半地下道路等の構造体の桁下、下面部や壁面、天井面等に壁体として取付けられ防音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両などの走行に伴う騒音を遮音、吸音するために用いられる吸音パネルとして、多数の開孔を有する前面板と背面板とにより形成された中空内に吸音材が内装されたものがある。
【0003】
近年、環境問題への対応のために、太陽光による発電機能をこのような道路付帯設備に備える取り組みが進められている。例えば特許文献1には、矩形枠状のフレームと、前記フレームの一方の面に取着され多数のスリットあるいは孔が形成された金属板と、前記金属板の背面に配置された吸音材と、前記フレームの他方の面に受光面を外側に向けて取着された矩形で薄板状の太陽電池パネルと、を備えることを特徴とする太陽電池パネル一体型遮音パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−199512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き太陽電池パネル一体型遮音パネルは、太陽光の受光によって温度が上昇し、この熱によって備えた太陽電池パネルの発電効率が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、太陽電池パネルの温度上昇が抑制される吸音パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る吸音パネルは、多数の開孔を有する前面板と、背面側に設けられた太陽電池パネルとが相対向されて形成された中空内に吸音材が内装され、
前記吸音材と前記太陽電池パネルとの間には空隙部が設けられると共に、
該空隙部と前記開孔との間に空気が流通可能な通気部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る吸音パネルによれば、前記吸音材と前記太陽電池パネルとの間に空隙部を設けると共に、この空隙部と前記開孔との間に空気が流通可能な通気部を設けるので、外部の空気が吸音パネルの開孔と通気部を通じて空隙部に流入し、受光によって昇温された太陽電池パネルを吸音パネルの内側から冷却してその温度を低下させ、太陽電池パネルの発電効率の低下を抑制させる。
【0009】
また、前記吸音パネルを略直方体状に形成し、前記開孔を前記吸音パネルの長手方向に長いスリット形状に形成させ、この開孔を前記吸音パネルの上下方向に複数個並設させて開孔列を形成させ、この開孔列を前記吸音パネルの長手方向に複数列配設させて設けるとともに、
前記吸音材の端を前記吸音パネルの端に設けられた前記開孔列より中央寄りに設けて前記吸音材の端より外方に通気部を形成させれば、内装させる吸音材に孔や切り欠きを形成するなどの加工を施すことなく容易に通気部を形成できるので好ましい。
【0010】
また、前記通気部を前記吸音材の両端の外方にそれぞれ設ければ、一方の通気部を空気の入り口とし、他方を出口として空気の流れが形成され、より効率よく太陽電池パネル全体が冷却されるので好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸音パネルによれば、備えた太陽電池パネルの温度上昇が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る吸音パネルの実施の一形態を示す(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図であり、(ニ)は背面図である。
【図2】図1のA−A断面の概要を示す図である。
【図3】図1のB−B断面の概要を示す図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】図1のD−D断面の概要を示す図である。
【図6】本発明に係る吸音パネルの実施の他の一形態を示す(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図であり、(ニ)は背面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のB−B断面の概要を示す図である。
【図9】本発明に係る吸音パネルの実施の他の一形態を示す断面図である。
【図10】図9の吸音パネルの断面の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態をまず図面の図1〜5に基づき具体的に説明する。
図面において、1は吸音パネルであって、前面板2、太陽電池パネル3、背面横カバー35、上枠材4、下枠材5、側面板6をそれぞれ固定させた略直方体状に形成されている。吸音パネル1は、アルミニウム板からなる多数の開孔21を有する前面板2と、その背後の太陽電池パネル3とによって形成された中空内に、グラスウールなどに吸音材7が内装され、前面板2の開孔21より中空内に入射された騒音は吸音材7によって吸音される。
【0014】
前面板2は、吸音パネル1の上下の端から中央に至るほど吸音パネル1の内側へ向かうように若干傾斜して設けられており、前面板2の上下方向中央で折り曲げられて形成されたり、上下二枚の前面板2により形成するなどして設けられている。
【0015】
前面板2には、吸音パネル1の長手方向に向かう細長いスリット形状の開孔21が上下方向に23個並設させて開孔列22を形成されている。本実施形態の開孔列22は、前記の前面板2の中央の折れ曲がり部分を挟んで上下方向に2個並べて形成されており、これを前面板2の長手方向に16列並設させて形成させている。
【0016】
前記開孔21は細長いスリット形状に形成してもよく、パンチング孔を穿設させて形成してもよく、その他の形状に形成してもよいが、本実施形態は前面板2の長手方向に細長い切れ込みを形成し、後述する図2に示すようにその上部を外側にひさし状に張り出すように折り曲げてスリット形状に形成させている。このように形成させることで、開孔21を容易に形成できるとともに、外側に張り出した開孔21の上部分が屋根のように機能し、開孔21を通じて雨水等が吸音パネル1内へ入り込みにくいものとしている。
【0017】
図1(ハ)に示すように、吸音パネル1の背面には、太陽電池パネル3が設けられている。本実施形態の太陽電池パネル3は、太陽電池セルを複数並設させた板状の太陽電池パネルの四辺を、アルミニウム押出形材からなる背面枠体31で囲って形成されており、太陽電池パネル3は吸音パネル1の長手方向中央寄りに2枚並べて取り付けている。
また、前記2枚並設させた太陽電池パネル3の横側には背面横カバー35を、下側には背面下カバー36をそれぞれ取りつけ、吸音パネル1の背面側の隙間を塞いでいる。前記背面横カバー35と背面下カバー36とは、亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成させている。
【0018】
図2は図1の太陽電池パネル3を備えた箇所のA−A断面の概要を示す図であり、図3は図1の太陽電池パネル3を備えていない箇所のB−B断面の概要を示す図である。図2は各部材の形状や配置を分かりやすく示すために簡略に描いている。
吸音パネル1の上面、下面、左右側面を構成する、上枠材4、下枠材5、側面板6は、それぞれ亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成させており、溶接やリベットなどを用いて互いに固定されている。
この前面側と背面側にそれぞれ前面板2と太陽電池パネル3とを固定させ、吸音パネル1を中空の略直方体形状に形成させている。
尚、本実施形態では後述する図4に示すように、吸音パネル1の長手方向中央付近の中空内において、亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成した補強材16を上枠材4と下枠材5との間に架け渡して固定させており、吸音パネル1の強度を向上させている。
【0019】
吸音パネル1の中空内には吸音材7を内装させており、本実施形態の吸音材7は、図2に示すようにその厚みを吸音パネル1の厚みの半分以下に形成させている。
吸音材7は上枠材4と下枠材5との間に架け渡して設けられた帯状の支持金具15に支持されて、吸音パネル1の中空内の前面板2側寄りに取り付けられている。このように取り付けられることで、吸音材7と太陽電池パネル3との間には空隙部11が形成される。
尚、本実施形態の吸音材7は板状に形成させたグラスウールの表面をガラス繊維性のシートで被覆して形成させているが、これに限るものではなく、グラスウールを樹脂フィルムなど他の部材で被覆してもよく、グラスウール以外の材質のものを用いても良い。
【0020】
図4は図1のC−C断面図であり、図5は図1のD−D断面の概要を示す図である。図5は各部材の形状や配置を分かりやすく示すために簡略に描いている。
本実施形態の吸音材7は、その上下方向の大きさが吸音パネル1の中空部分と略同じに形成されており、2枚の吸音材7を前記の補強材16を間にして吸音パネルの長手方向に並べて内装させている。
また、吸音パネル1の両端に近い各吸音材7の端は、前面板1に設けられた最も端の開孔列22より中央寄りに位置するように形成されており、各吸音材7と各側面板6との間には少なくとも開孔列22一列分の隙間が形成されるように構成されている。
また、各吸音材7と補強材16の間にも、それぞれ少なくとも開孔列22一列分の隙間が形成されるように各吸音材7が形成されており、各吸音材7の間に開孔列22二列分の隙間が形成されるように構成されている。
吸音材7を上記のように配置することで、吸音パネル1の中空内において、開孔列22の開孔21から空隙部11へ通じる空気が流通可能な通気部12が形成される。
【0021】
吸音パネルに用いられる吸音材は、本実施形態の吸音材7のグラスウールのように、その内部に空気を含む綿状の構造を有しているものが多く、高い断熱性能を有している。このため、吸音パネル1の背面に太陽電池パネル3を設けた場合、太陽電池パネル3が受光して温度が上昇しても、その熱が吸音材7に断熱されて前面板2側に逃げにくく、この熱によって太陽電池パネル3の発電効率が低下したり、太陽電池パネルが劣化、破損するなどの問題が生じる恐れがあるが、前記の通気部12を設けることで、太陽電池パネル3の熱が通気部12と空隙部11を流れる空気によって排熱され、温度上昇が抑制される。
【0022】
本実施形態のような直方体形状の吸音パネル1は、主に道路に沿って複数立設させた支柱間に、長手方向を横に向け上下に複数個段積みして取りつけて防音壁として用いる。このため、吸音パネルの前面側には、付近を走行する車両によって、長手方向に沿って車両通行風が吹き付けられることがよくある。本実施形態の吸音パネル1においては、長手方向両端の開孔列22が通気部12に通じているので、車両通行風が上流側の開孔列22から吸音パネル1内に流入し、通気部12と空隙部11とを流れて太陽電池パネル3を冷却させ、下流側の通気部12を通じて開孔列22から流出する図5のWに示すような空気の流れが生じやすく、効果的に太陽電池パネル3の温度を低下させることができる。
【0023】
次に図6は本発明に係る吸音パネルの実施の他の一形態を示す(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図であり、(ニ)は背面図であり、図7は図6のA−A断面図であり、図8は図6のB−B断面の概要を示す図である。図8は各部材の形状や配置を分かりやすく示すために簡略して描いている。
本実施形態の吸音パネル1は、図1に示した実施形態よりも長手方向の大きさが小さく形成されており、太陽電池パネル3が1枚取りつけられ、中空内に補強材16が取り付けられていない。また、吸音パネル1内には吸音材7が2枚内装されており、その形状と配置とが図1に示した実施形態と異なる主な事項である。
【0024】
本実施形態の吸音材7は、その長手方向の大きさが吸音パネル1の中空部分と略同じ大きさに形成されており、上下に並べて吸音パネル内に2枚内装されている。また、各吸音材7の上下方向の大きさは、吸音パネル1の中空部分の大きさの半分以下に形成されており、それぞれ上枠材4、下枠材5に寄せて支持金具15に支持されて取り付けられている。このため、各吸音材7の間に、前面板2の開孔21から空隙部11へ通じる通気部12が、吸音パネル1の長手方向に沿って上下方向中央に形成されている。
本実施形態の通気部12は、吸音パネル1の長手方向に沿って長く形成されるので、これを通じて図8のWに示すように流れ込む空気によって太陽電池パネル3がより均一的に冷却される。
【0025】
図9は本発明に係る吸音パネルの実施の他の一形態を示す断面図であり、図10は図9の吸音パネルの断面の概要を示す図である。図10は各部材の形状や配置を分かりやすく示すために簡略して描いている。
本実施形態の吸音パネル1の外観は図6に示す実施形態と同じであり、図9と図10はそれぞれ図6のA−A断面とB−B断面に該当する本実施形態の吸音パネル1の断面図である。
本実施形態の吸音パネル1内には吸音材7が1枚内装されている点が図6に示した実施形態と異なる主な事項である。
【0026】
本実施形態の吸音材7は、その長手方向の大きさが吸音パネル1の中空部分と略同じ大きさに形成されており、上下方向の大きさは、吸音パネル1の中空部分の大きさより小さく形成されいる。そして、吸音材7は吸音パネル1の上下方向中央に寄せて支持金具15に支持されて取り付けられており、上枠材4及び下枠材5と、吸音材7との間に、前面板2の開孔21から空隙部11へ通じる通気部12が、吸音パネル1の長手方向に沿って上下方向両端側に形成される。
【0027】
本実施形態の通気部12は、図6の実施形態と同様に、吸音パネル1の長手方向に沿って長く形成されることで、太陽電池パネル3がより均一的に冷却できる。また、前記のように、吸音パネル1は長手方向を横方向に向けて段積みされて取り付けられるので、本実施形態の各通気部12は前面板2の上部及び下部に形成された開孔21に通じるように形成される。このため、太陽電池パネル3にて熱せられた空隙部11の空気が膨張して軽くなり、上側の通気部12を通じて吸音パネル1から流出し、外部の空気が下側の通気部12を通じて流入する図10のWに示すような空気の流れが形成されやすくなり、太陽電池パネル3がより効率的に冷却される。
【0028】
図1、図6及び図9に示した実施形態においては、通気部12をそれぞれ吸音パネル1の長手方向の端側及び中央、上下方向の中央、上下方向の端側に設ける構成を示しているが、これに限るものではなく、これらを組み合わせて形成させてもよい。また、前記の実施形態においては、吸音材7の上下方向や長手方向の大きさを、吸音パネル1内の中空部分の大きさより小さく形成させて、特別な加工を施すことなく開孔21に通じる通気部12を形成させているが、これに限るものではなく、吸音材7に切り欠きや穴を設けて通気部12を形成させてもよい。
【0029】
前記に記した実施形態の吸音パネル1は、太陽電池パネル3と吸音材7との間に他の部材が取り付けられずに空隙部11を形成させているが、これに限るものではなく、他の部材を取り付けても良い。一例として、吸音材7と太陽電池パネル3との間に板材を設けてもよく、補強用の梁を上枠材4と下枠材5とに架け渡して設けても良く、上枠材4の背面側の端部を下方に延設して下枠材5と一体に形成させて設けても良い。吸音材7と太陽電池パネル3との間に板状部材を設ける場合は、空隙部11からの空気が太陽電池パネル3に直接接触できるように、前記の板状部材に通気可能な孔や隙間を設けるのが好ましい。
【0030】
また、前記に記した実施形態の吸音パネル1は、主に上下方向に複数段積みして道路等に沿う防音壁として設置される。このような防音壁は上下方向に垂直に設けられるものや、道路上に覆い被さるように湾曲して設けられるものがある。垂直に設けられる防音壁と異なり、前記のように湾曲して設けられる防音壁を構成する吸音パネルは、その背面を水平方向ではなく斜め上方向に向けて傾けて取り付けられる。このため、本発明の吸音パネル1のように背面側に太陽電池パネル3を備えた場合、受光面がより太陽に向けて設けられ、より効率良く発電するようになされる。
【0031】
また、前記の実施形態に示した吸音パネル1のように、前面板2を吸音パネル1の上下方向中央ほど吸音パネル1の内側へ向かうようにくの字形状に設けて吸音パネル1を形成させることで、湾曲して設けられる防音壁を構成させたときに前面板2が構成する面がより曲面に近い滑らかな形状に形成される。
【符号の説明】
【0032】
1 吸音パネル
11 空隙部
12 通気部
15 支持金具
16 補強材
2 前面板
21 開孔
22 開孔列
3 太陽電池パネル
31 背面枠体
35 背面横カバー
36 背面下カバー
4 上枠材
5 下枠材
6 側面板
7 吸音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の開孔を有する前面板と、背面側に設けられた太陽電池パネルとが相対向されて形成された中空内に吸音材が内装され、
前記吸音材と前記太陽電池パネルとの間には空隙部が設けられると共に、
該空隙部と前記開孔との間に空気が流通可能な通気部が設けられていることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
前記吸音パネルは略直方体状に形成され、
前記開孔は前記吸音パネルの長手方向に長いスリット形状に形成され、
該開孔は前記吸音パネルの上下方向に複数個並設された開孔列が形成され、
該開孔列は前記吸音パネルの長手方向に複数列配設されて設けられるとともに、
前記吸音材の端は前記吸音パネルの端に設けられた前記開孔列より中央寄りに設けられて前記吸音材の端より外方に前記通気部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記通気部が前記吸音材の両端の外方にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−149185(P2011−149185A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10548(P2010−10548)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】