説明

吹込み用無機繊維質断熱材

【課題】 天井裏に吹き込んで断熱層を形成した時に断熱層内の空隙を小さくして密度の低下を抑制すると共に密度のばらつきを小さくすることの可能な吹込み用無機繊維質断熱材を提供する。
【解決手段】 吹込み用無機繊維質断熱材を構成する多数の小塊状綿のサイズ分布を、JIS Z8801−1に規定される公称目開きがそれぞれ、31.5mm、11.2mm、6.7mmの金属製網ふるいでふるい分けして測定した際に、公称目開きが31.5mmのふるい上に残る前記小塊状綿の比率が5重量%以下、31.5mmのふるいを通り抜け、11.2mmのふるい上に残る前記小塊状綿の比率が45〜60重量%、11.2mmのふるいを通り抜け、6.7mmのふるい上に残る前記小塊状綿の比率が15〜30重量%となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の天井裏に吹き込んで断熱材を形成するために使用する吹込み用無機繊維質断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地においては、天井裏にも断熱層を設けることが多く、その断熱層は、無機繊維マット等の断熱材料を破砕して形成した多数の小さい塊状の断熱材(小塊状綿という)からなる吹込み用断熱材を空気流によって天井裏に吹き込み、一定厚さに堆積させて形成することが多い。また、近年一層の省エネが求められており、これに伴って断熱性の向上が求められている。
【0003】
従来、吹込み用断熱材は、グラスウール、ロックウール等の無機繊維マットを多数の小塊状綿に破砕することで製造され、その後、ビニル袋などに圧縮梱包して供給されている。そして、無機繊維マットの破砕は次の方法で行われていた。
1.無機繊維マットを、ハンマーミルによって破砕して小塊状綿とする方法。
2.無機繊維マットを回転刃で破砕する方法(例えば、特開昭59−217689号公報参照)。
3.無機繊維マットを、長手方向及び横方向に切断して小塊状綿とする方法(例えば、特開昭55−23098号公報、特開平8−193370号公報参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−217689号公報
【特許文献2】特開昭55−23098号公報
【特許文献3】特開平8−193370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吹込み用断熱材は、天井裏に吹き込んで断熱層を形成した時に空隙が多くなりがちで、破砕前の無機繊維マットよりも密度が低くなっているとか、密度のばらつきが大きくなり易いといった問題があった。繊維製の断熱材の場合、熱伝導率が密度に比例するため、密度が低いと熱伝導率が大きくなって、断熱性能が低下する。また、密度むらが大きいと熱伝導率のばらつきも大きくなり、低密度の部分は熱的な欠点となる。この欠点を補うためには、吹込み厚を厚くしなければならないので、天井裏などの限られた空間では問題が生じる。
【0006】
更に、上記した各方法で製造した吹込み用断熱材にはそれぞれ次のような問題点もあった。
(1) 無機繊維マットをハンマーミルや回転刃で破砕する方法で製造した小塊状綿は、無機繊維マットを引きちぎるようにして破砕しているため、全体的には扁平であるが形状が不定形で、しかも繊維不規則に延び出して多数の長さの異なるひげが延び出したような形態をしている。このため、小塊状綿同志が絡み合いやすく、また小塊状綿が天井裏面などの他の部材に対しても引っ掛かりやすい。従って、破砕して製造した小塊状綿を圧縮梱包して供給する際、小塊状綿同志が絡み合って大きい塊になることが多く、吹込みに当たって、吹込み用断熱材を攪拌機を備えたホッパーに供給し、個々の小塊状綿に分離しながら空気輸送用の搬送ホースに送りこんでも、確実には個々の小塊状綿に分解できず、かなり大きい塊のままで搬送ホースに送り込まれるものがあり、詰りが起きやすい。また、小塊状綿同志が絡み合いやすく、また小塊状綿が天井裏面などの他の部材に対しても引っ掛かりやすいので、天井裏に吹き込んだ際にも、不均一に堆積しがちであり、形成した断熱層の密度のばらつきが大きくなりやすく、また、堆積した小塊状綿同志の間に大きい隙間が生じ、密度が上がらない。
【0007】
(2) 無機繊維マットを長手方向及び横方向に切断して小塊状綿とする方法で製造した小塊状綿は、空気輸送中に層間剥離が発生しやすく、その層間剥離が不均一に発生するため、吹き込んで形成した断熱層の密度のばらつきが大きくなりやすい。また、無機繊維マットを切断して小塊状綿としているため、小塊状綿自体の密度は切断前の無機繊維マットと変わらず、このため、無機繊維マット内の密度のばらつきが個々の小塊状綿の密度のばらつきとなり、小塊状綿を吹き込んで形成した断熱層の密度のばらつきが大きくなる原因の一つとなる。更に、小塊状綿を吹き込んで形成した断熱層の密度は、元の無機繊維マットの密度よりも小さくなるため、所望の高い密度の断熱層を形成するためには、かなり密度の高い無機繊維マットを製造しなければならない。従来より、連続的に無機繊維マットを形成し、それを所定サイズに裁断して断熱板を製造することが行われており、その製造過程で多くの裁断屑マット(例えば、コンベア上に連続的に形成した無機繊維マットの両耳を切り離して生じる裁断屑マット等)が生じている。この裁断屑マットを有効利用するため、吹込み用断熱材の原料として使用することもあるが、この場合には、吹込みで形成した断熱層の密度は、製品として製造した断熱板の密度よりもかなり低くなっており、断熱層の密度を所望のように高くすることはできない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、天井裏に吹き込んで断熱層を形成した時に断熱層内の空隙を小さくして密度の低下を抑制すると共に密度のばらつきを小さくすることの可能な吹込み用無機繊維質断熱材を提供することを第一の課題とする。
【0009】
また、本発明は、空気輸送の際に詰りや層間剥離が生じにくく、天井裏に吹き込んで均一な密度の断熱層を形成しやすく、更に、元の無機繊維マットよりも高密度で且つばらつきの小さい多数の小塊状綿からなる吹込み用無機繊維質断熱材を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の第一の課題を解決すべく鋭意検討の結果、吹込み用無機繊維質断熱材を構成する多数の小塊状綿のサイズの分布を適切に設定することでこの課題を解決できることを見出した。すなわち、従来の吹込み用断熱材は、サイズの分布が極力小さくなるように(一定サイズのものがほとんどとなるように)製造されており、例えば、サイズの分布を、JIS Z8801−1に規定される公称目開きがそれぞれ、31.5mm、11.2mm、9.5mm、6.7mm、4.0mmの金属製網ふるいでふるい分けして測定した際に、従来のハンマーミルで破砕して製造した製品では、図5に示す比較例1のグラフに見られるように、サイズ11.2〜31.7mm(公称目開き31.7mmのふるいは通り抜けるが、11.2mmのふるいは通り抜けず、その上に残るサイズ)のものが71.4重量%を占めており、また、立方体状に切断して製造した製品では、図6に示す比較例2のグラフに見られるように、サイズ11.2〜31.7mmのものが89.5重量%を占めている。このような一定サイズの小塊状綿がほとんどの場合、小塊状綿を吹き込んで堆積させる際に小塊状綿間にかなりの大きさの隙間が生じてしまうが、その隙間内にも進入可能な小サイズの小塊状綿を適当量、含有させておくと、大小の小塊状綿が適当に入り交じって堆積し、これによって密度を大きくすることができ、また、密度のばらつきを小さくすることもできることを見出した。
【0011】
かかる知見に基づいてなされた本願請求項1に係る発明は、吹込み用無機繊維質断熱材を構成する多数の小塊状綿のサイズ分布を、JIS Z8801−1に規定される公称目開きがそれぞれ、31.5mm、11.2mm、6.7mmの金属製網ふるいでふるい分けして測定した際に、公称目開きが31.5mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が5重量%以下、31.5mmのふるいを通り抜け、11.2mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が45〜60重量%、11.2mmのふるいを通り抜け、6.7mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が15〜30重量%、残りが6.7mmのふるいを通り抜けるものとなるようにしたものである。
【0012】
本願請求項2に係る発明は、更に上記の第二の課題も解決するため、上記の請求項1に係る発明の吹込み用無機繊維質断熱材において、前記小塊状綿を、無機繊維マットを剪断破砕機で剪断破砕して形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1に係る発明は、サイズの異なる小塊状綿を適切な割合で混合しているので、これを空気流に乗せて天井裏に吹き込み、堆積させて断熱層を形成することで、断熱層内で小塊状綿間に生じている空隙を小さくして密度の低下を抑制することができると共に密度のばらつきも小さくでき、断熱性能の良い且つばらつきの小さい断熱層を形成できる。
【0014】
請求項2に係る発明は、無機繊維マットを剪断破砕機で剪断破砕して小塊状綿を形成する構成としたことで、無機繊維マットが圧縮されながら切断されることとなり、得られた小塊状綿は、密度が元の無機繊維マットよりも大きくなると共に密度のばらつきも小さく抑制され、また、層間剥離が生じにくくなる。更に、小塊状綿はハンマーミルで破砕する場合のように引きちぎられることはなく、主として回転刃と固定刃との剪断力によって破砕されて形成されるため、表面から多数のひげが不規則に延びだしたような形態とはならず、全体が丸みを帯びた立方体状あるいは直方体状となっており、このため、小塊状綿同志が絡み合うことがあまりなく、また、他の部材に対して引っかかるということも生じにくい。かくして、この発明の吹込み用断熱材は、天井裏への空気吹込みに用いた場合、空気輸送の際に詰りや層間剥離が生じにくく、天井裏に吹き込んで均一な密度の且つ高い密度の断熱層、従って、断熱性能の高い断熱層を形成することができ、しかも、無機繊維マット製の断熱板を製造する際に発生する裁断屑マットを原料として有効に使用できる等の効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を説明する。本発明の吹込み用無機繊維質断熱材を構成する無機繊維としては、グラスウール、ロックウール等を用いることができる。無機繊維の平均繊維径は、4〜8μm程度とすることが、断熱性能、コスト面等から好ましい。
【0016】
吹込み用無機繊維質断熱材を構成する多数の小塊状綿のサイズ分布は、JIS Z8801−1に規定される公称目開きがそれぞれ、31.5mm、11.2mm、6.7mmの金属製網ふるいでふるい分けして測定した際に、公称目開きが31.5mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が5重量%以下、31.5mmのふるいを通り抜けて11.2mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が45〜60重量%、11.2mmのふるいを通り抜け、6.7mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が15〜30重量%、残りが6.7mmのふるいを通り抜けるものとする。このように断熱材を構成する多数の小塊状綿に適切なサイズ分布を持たせたことで、この小塊状綿を天井裏に吹き込んで堆積させ、断熱層を形成した時に、大きいサイズの小塊状綿間に小さいサイズの小塊状綿が入り込み、隙間の小さい、従って密度の高い、且つ、密度のばらつきの小さい断熱層を形成できる。ここで、公称目開きが31.5mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が5重量%を越えると、サイズの大きい小塊状綿の含有率が増加するため吹き込んで形成した断熱層における空隙が大きくなって密度が低下し、断熱性能が低下する。公称目開きが31.5mmのふるいを通り抜け、11.2mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が60重量%を越えると、やはりサイズの大きい小塊状綿の含有率が増加し、吹き込んで形成した断熱層における空隙が大きくなって密度が低下し、断熱性能が低下する。一方、45重量%よりも少ないとサイズの小さい小塊状綿の含有率が増加するため、断熱層形成時の吹込みの効率が低下し、施工工期が長くなる。また、密度が高くなるため所定の厚さの断熱層を形成するための使用量が多くなって経済的に不利である。公称目開きが11.2mmのふるいを通り抜け、6.7mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が30重量%を越えると、サイズの小さい小塊状綿の含有率が増加し、断熱層形成時の吹込みの効率が低下し、施工工期が長くなり、且つ、所定の厚さの断熱層を形成するための使用量が多くなって経済的に不利である。一方、15重量%よりも少ないとサイズの小さい小塊状綿の含有率が少なくなるため、吹き込んで形成した断熱層における空隙が大きくなって密度が低下し、断熱性能が低下する。かくして、吹込み用無機繊維質断熱材を構成する多数の小塊状綿に上記した数値範囲のサイズ分布を採用することで、施工時の吹込み効率を低下させることなく、多数の小塊状綿を天井裏に吹き込んで均一に堆積させることができ、堆積した小塊状綿間の隙間が小さく、従って密度の大きい且つ密度のばらつきの小さい、すなわち、断熱性能の良い且つばらつきの小さい断熱層を形成できる。
【0017】
次に、本発明の吹込み用無機繊維質断熱材の製造方法を説明する。まず、無機繊維マットを製造する。この無機繊維マットの製造には公知の技法を用いることができる。例えば、遠心法又は火炎法によって無機繊維を形成し、コンベア上に堆積させ、堆積前又は後にバインダーを付与し、熱風炉内を通過させてバインダーを硬化させ、無機繊維マットを形成する。バインダーとしては、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とするものを用いるのが好ましく、その付与量は、無機繊維に対して、固形分として1〜10重量%とするのが好ましい。無機繊維マットの密度は、10〜40kg/m3 程度とするのが、断熱性能の点から好ましい。
【0018】
次に、得られた無機繊維マットを剪断破砕機で小塊状綿に剪断破砕する。図1はこの剪断破砕に用いる剪断破砕機の概略断面図、図2(a)、(b)はその剪断破砕機のローターの概略側面図及び概略正面図、図3はその剪断破砕機の回転刃、固定刃等を拡大して示す概略側面図である。全体を参照符号1で示す剪断破砕機は、挿入コンベア2で送り込まれる無機繊維マット3を受け入れる投入ホッパー4と、その投入ホッパー4の下端に開口する破砕室5とその下方の集積排出室6を備えた本体フレーム7と、破砕室5内に軸線Oを中心として回転するように設けられた主軸シャフト8及びそれに固定されたローター9と、そのローター9に取り付けられた回転刃10と、本体フレーム7に、破砕室5内面に刃先を露出させて取り付けられた固定刃11と、ローター9の下方に回転刃10の刃先の通過位置に近接して設けられたスクリーン12等を備えている。回転刃10と固定刃11は互いに協働して無機繊維マットを剪断するためのものであり、図3に示す刃クリアランスは、良好な剪断を行うことができるよう0.1〜3mm程度に、好ましくは0.2〜0.6mm程度に設定される。また、回転刃10の刃先角度αは30〜60°に、固定刃11の刃先角度βは60〜90°に設定されている。破砕室5の内面5aは、回転刃10の刃先の移動軌跡に沿った円筒状をなしており、これにより回転刃10が回転した時に無機繊維マットを固定刃11の位置に良好に案内し、回転刃10と固定刃11とによる良好な剪断を可能としている。回転刃10はローター9の円周方向には均等なピッチで3個配列されており、また、軸線方向には2個が位相を少し(約10°程度)ずらせて取り付けられている。固定刃11はローター9の両側にそれぞれ2個ずつ設けられている。なお、回転刃10及び固定刃11の個数はこれらに限らず、適宜変更可能である。スクリーン12は、多数の独立した孔12aを備えている。この孔の形状は、円形、正方形、長方形等任意であるが、好ましくは円形とする。また、孔12aの配列も任意であるが千鳥配列とすることが好ましい。
【0019】
次に、上記構成の剪断破砕機1による剪断破砕動作を説明する。投入ホッパー4から供給された無機繊維マット3はローター9の回転によって固定刃11の位置に送られ、回転刃10と固定刃11との間に生じる剪断力を主破砕力として破砕され、スクリーン12の孔12aを通って下方に排出される。ここで、スクリーン12の孔12aを通り抜けることができなかった大きい破砕物は、回転刃10によって持ち上げられ、再度、固定刃11との剪断力による破砕を受け、スクリーン12の孔12aから下方に排出される。以上のようにして、無機繊維マット3が剪断破砕され、多数の無機繊維の小塊状綿15が製造される。製造された小塊状綿15はビニル袋等に圧縮梱包されて、施工現場に供給される。
【0020】
以上の剪断破砕動作によって形成された小塊状綿は、全体的には丸みを帯びているが立方体に近い直方体のような形状をなしている。例えば、縦、横、高さの比率は、縦:横:高さ=5:6:8、5:3:7、あるいは3:5:4といった比率となっており、ほとんどのものは、最小辺:最大辺=1:1〜3の範囲に入っている。この形状は、多数の小塊状綿を天井裏に吹き込んで堆積させる際に、小塊状綿が均一に且つ密に堆積しやすいという利点を備えている。剪断破砕によって形成される多数の小塊状綿は、そのサイズにかなりの分布を持っている。また、小塊状綿のサイズは、ローター9の回転数及びスクリーン12の孔径によって調整可能である。そして、後述する実施例に示すように、ローター9の回転数及びスクリーン12の孔径を適切に設定して、所望サイズの小塊状綿(公称目開きが31.5mmのふるいを通り抜け、11.2mmのふるい上に残るもの)が最も多くなるようにすることで、図4に示すサイズ分布を得ることができた。このサイズ分布は、本発明の数値範囲に入るものである。従って、単に、無機繊維マットを剪断破砕機で剪断破砕するのみで、本発明のサイズ分布にかなった多数の小塊状綿からなる断熱材を形成できる。なお、必要に応じ、得られた多数の小塊状綿をふるい分けして過大な小塊状綿を除去するとか、過少な小塊状綿を除去するとか、別途作成した所望サイズの小塊状綿を加入する等の操作を加えてサイズ分布の調整を行っても良い。
【0021】
次に、得られた小塊状綿の表面を見ると、この小塊状綿は主として回転刃10と固定刃11による剪断力によって破砕されて小塊状綿となったものであるので、従来のハンマーミルによって引きちぎるようにして破砕されたものとは異なり、表面に多数の繊維がひげのように不規則に延びだすということはあまりない。このため、この小塊状綿は、小塊状綿同志が絡み合うことがあまりなく、また、他の部材に対して引っかかるということも生じにくい。更に、得られた小塊状綿は、剪断破砕の際に圧縮されるため、密度が元の無機繊維マットよりも大きくなると共に密度のばらつきも小さく抑制され、また、層間剥離が生じにくくなっている。
【0022】
以上のようにして製造した多数の小塊状綿からなる断熱材は、ビニル袋等に圧縮梱包されて施工現場に供給される。施工現場では、この断熱材を攪拌機を備えたホッパーに供給し、個々の小塊状綿に分離しながら空気輸送用の搬送ホースに送り込み、搬送ホースによって天井裏の所望位置に吹込み、所望厚さに堆積させて断熱層を形成する。ここで、この小塊状綿は互いに絡み合いにくいので、ホッパーの攪拌機で容易に分離でき、また、輸送中に絡み合って大きい塊になるということもなく、このため、搬送ホースの入口や途中で詰まるということがほとんど生じない。また、空気輸送中に層間剥離を生じて、小サイズのものが多数発生するということもない。更に、小塊状綿は互いに絡み合いにくく且つ他の部材に対しても引っ掛かりにくいので、天井裏に吹き込まれた小塊状綿は均一に堆積されることとなり、また、大サイズのものと小サイズのものが適切な割合で入っているので、密に堆積される。かくして、小塊状綿自体の密度が高いことと相まって、密度の高い且つ均一な密度の断熱層を、従って断熱性能の高い且つ均一な断熱性能の断熱層を形成できる。
【0023】
なお、上記した実施の形態では、小塊状綿を形成するための原料として、専用の無機繊維マットを製造し、それを剪断破砕して吹込み用無機繊維質断熱材を製造しているが、小塊状綿を形成するための原料はこれに限らず、無機繊維マット製の断熱板を製造する際に発生する裁断屑マット(コンベア上に連続的に形成した無機繊維マットの両耳を切り離して生じる裁断屑マット等)を用いてもよい。この場合においても、裁断屑マットを剪断破砕した際に圧縮作用が加わるため、得られた小塊状綿は元の屑マットの密度よりもかなり高くなっており、そのため、その小塊状綿を天井裏に吹き込み、堆積させて形成した断熱層を形成した際に、小塊状綿間に隙間が生じていても、断熱層の密度を、元の裁断屑マットの密度と同等若しくはそれ以上とすることができ、無機繊維マット製の断熱板と同等若しくはそれ以上の断熱性能を持った断熱層を形成できる。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
遠心法により製造したグラスウール(平均繊維径5μm、密度16kg/m3 、厚さ100mm)を図1に示す剪断破砕機1によって剪断破砕し、多数の小塊状綿からなる吹込み用無機繊維質断熱材を製造した。
使用した剪断破砕機1の回転刃10の刃先角度αは44°、固定刃11の刃先角度βは74°、刃クリアランスは0.4mm、スクリーン12の孔12aは円形で内径は15mm、回転刃10の刃先の描く円の直径は50cm、ローター9の回転数は1460rpmとした。
得られた多数の小塊状綿のサイズの分布を、JIS Z8801−1に規定される公称目開きがそれぞれ、31.5mm、11.2mm、9.5mm、6.7mm、4.0mmの金属製網ふるいでふるい分けして測定し、図4に示す結果を得た。図4のグラフから明らかなように、この小塊状綿は広いサイズ分布を持っていた。
この小塊状綿を、JIS A9523「吹込み用繊維質断熱材」の熱抵抗測定方法に準じ、内のり寸法910mm×910mm、高さ100mmの枠に、吹き込み装置で解繊しながら吹き込んで試験体を得、吹き込んだ重量と前記枠の寸法から、密度を求めた。また、JIS A1412−2「熱絶縁体の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法)」に準じ、熱伝導率を測定した。得られた値は、密度=18kg/m3 、熱伝導率=0.044W/(m・K)であった。従って、この小塊状綿を吹き込み、堆積させることで、元のグラスウールよりも高密度の断熱層を形成できることを確認できた。
【0025】
[比較例1]
グラスウールをハンマーミルで破砕して製造した無機繊維質断熱材製品(商品名「サンブロードライ」、ニットーボー東岩株式会社製)を用意し、それを構成する小塊状綿のサイズの分布を、JIS Z8801−1に規定される公称目開きがそれぞれ、31.5mm、11.2mm、9.5mm、6.7mm、4.0mmの金属製網ふるいでふるい分けして測定して、図5に示す結果を得た。この小塊状綿は、狭いサイズ領域に集中した分布を持っていた。
この小塊状綿を、実施例1と同様にして枠に吹き込んで試験体を得、その密度及び熱伝導率を測定したところ、密度=13kg/m3 、熱伝導率=0.052W/(m・K)であった。
【0026】
[比較例2]
グラスウールを多数の立方体又は直方体を形成するように切断して製造した無機繊維質断熱材製品(商品名「キュービックブローエース天井用」、旭ファイバーグラス株式会社製)を入手し、それを構成する小塊状綿のサイズの分布を、JIS Z8801−1に規定される公称目開きがそれぞれ、31.5mm、11.2mm、9.5mm、6.7mm、4.0mmの金属製網ふるいでふるい分けして測定して、図6に示す結果を得た。この小塊状綿は、狭いサイズ領域に集中した分布を持っていた。
【0027】
実施例1及び比較例1の結果から明らかなように、実施例1の小塊状綿は、比較例1のものに比べて、密に堆積することができ、密度の高い、断熱性能に優れた断熱層を形成することができた。
【0028】
以上に本発明の好適な実施の形態及び実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の吹込み用無機繊維質断熱材の製造に用いる剪断破砕機の概略断面図
【図2】(a)、(b)は図1に示す剪断破砕機のローターの概略側面図及び概略正面図
【図3】図1に示す剪断破砕機の回転刃、固定刃等を拡大して示す概略側面図
【図4】実施例1の小塊状綿のサイズの分布を示すグラフ
【図5】比較例1の小塊状綿のサイズの分布を示すグラフ
【図6】比較例2の小塊状綿のサイズの分布を示すグラフ
【符号の説明】
【0030】
1 剪断破砕機
2 挿入コンベア
3 無機繊維マット
4 投入ホッパー
5 破砕室
6 集積排出室
7 本体フレーム
8 主軸シャフト
9 ローター
10 回転刃
11 固定刃
12 スクリーン
12a 孔
15 小塊状綿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅の天井裏に吹き込まれる吹込み用の、多数の小塊状綿からなる無機繊維質断熱材であって、前記多数の小塊状綿のサイズ分布を、JIS Z8801−1に規定される公称目開きがそれぞれ、31.5mm、11.2mm、6.7mmの金属製網ふるいでふるい分けして測定した際に、公称目開きが31.5mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が5重量%以下、31.5mmのふるいを通り抜け、11.2mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が45〜60重量%、11.2mmのふるいを通り抜け、6.7mmのふるい上に残る小塊状綿の比率が15〜30重量%、残りが6.7mmのふるいを通り抜けるものであるとしたことを特徴とする吹込み用無機繊維質断熱材。
【請求項2】
前記小塊状綿が、無機繊維マットを剪断破砕機で剪断破砕して形成したものであることを特徴とする請求項1記載の吹込み用無機繊維質断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−228284(P2009−228284A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74299(P2008−74299)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(591258738)ニットーボー東岩株式会社 (3)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】