説明

周期性パターンのムラ検査方法及び検査装置

【課題】周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのような被検査体に対し、数nmオーダーの寸法ズレや位置ズレによって生じるムラ欠陥を精度良く検出するための検査方法及び検査装置を提供する。
【解決手段】周期性パターンが形成された被検査基板60に照明光を最適角度で斜め照射し、周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査方法において、撮像部60にて原撮像画像を取得し、この原撮像画像から周期性パターン領域を切り出す工程と、切り出された矩形計算領域内で積算値及びその比較基準値を求め、コントラスト比を求める工程と、コントラスト比分布画像を作成し、2値化処理・ラベリング処理を実施した後ムラ部面積、ムラ部評価値を算出する工程と、検査結果の判定を行う工程とを含む構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期性パターンを有する被検査体において、前記パターンのムラを検査するためのムラ検査方法及び検査装置に関する。
ここで、周期性パターンとは、一定の間隔を有するパターンの集合体を称し、例えば、パターンが所定のピッチで配列したストライプ状の周期性パターン、または開口部のパターンが所定の周期で2次元的に配列したマトリクス状のパターン等に該当する。また、周期性パターンを有する被検査体としては、特に、半導体装置、撮像デバイス及び表示デバイス等を製造する際にフォトリソグラフィー処理の露光工程で用いられるフォトマスクが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、撮像デバイス及び表示デバイス等の製造工程で用いられるフォトマスクとしては、ガラス等の透明基板上にクロム等の遮光膜が一定のパターンに部分的に除去されて構成されたものが知られている。
フォトマスクのような周期性パターンにおけるムラ欠陥は、通常微細なピッチズレや位置ズレが規則的に配列していることが原因であることが多いため、個々のパターン検査では発見することが困難であるが、周期性パターンを広い領域において観察した時に初めて認識される欠陥である。
【0003】
従来の周期性パターンにおけるムラ検査では、同軸の透過照明や平面照明、あるいは反射照明を用いて撮像を行い、各々の画像での光強度を比較することによって正常部とムラ部の視認を行っている。しかし、正常部とムラ部における光の強度差は決して大きいわけではなく、得られる画像のコントラストは低い。そのため、コントラストの低い画像に対しその強度差の処理方法を工夫することでコントラストアップを図り、これによりムラ部を抽出して検査を行っている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記従来技術においては、格子状周期性パターンのブラックマトリクスのムラ、特に開口部の大きいブラックマトリクスのムラの撮像において、正常部とムラ部でのコントラスト向上が期待されず、強度差の処理を工夫したとしても原画像のコントラストが低い画像の場合の検査では、目視での官能検査方法より低い検査能力しか達成できないという問題がある。
一方、半導体の微細化や、微細な表示と明るい画面の電子部品の増加に伴い、上述した周期性パターンの微細化、または開口部比率の増大傾向が進んでいる。そして、将来的には、より開口部の大きい、より微細形状の周期性パターンのムラ検査装置及びその方法が必要となる。すなわち、従来の光の振幅による光の強度(明るさ)の強弱のみの出力では限界がある。
【0005】
そこで、周期性のあるパターン、例えばブラックマトリクスムラを安定的かつ高精度に撮像し、検出できる周期性パターンムラ検査装置を提供することを目的として、照明光を被検査体に照射し、周期性パターンによって生じる透過回折光を画像検査する検査装置としては、例えば特許文献2のような検査装置が提案されている。
かかる検査装置は、周期性パターンの正常部では開口部の形状・ピッチが一定となるため互いに干渉し一定の方向に回折光を生じる。それに対し、ムラ部では開口部の形状、ピッチが不規則になるため、形状、ピッチに応じて種々の方向に、種々の強さで回折光が生じる。
このような検査装置では、正常部とムラ部における回折光強度コントラストの違いから、ムラ部を検出する方式をとっている。しかし、この手法において得られる原撮像画像での回折光強度コントラストは微弱なものであり、実際のムラ検査・判定処理を行うためには原撮像画像に対して何らかの画像処理を適用し、ムラ部を強調させた上での抽出が必要となる。
【0006】
上記従来技術における原撮像画像に対する処理手法は、対象となる基板上の周期性パターンエリア全体を切り出して計算領域と定義し、その計算領域内の各画素における輝度値を縦、横方向に別個に積算し、積算値データを得るものである。
ところで、周期性パターン、例えばフォトマスクにおいては、描画パターンの微細化が急速に進んでおり、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクにおいてはウエハへのパターン転写時におけるセルピッチが1μmに迫るほどの勢いで世代が進んでいる。
【0007】
周期性パターンにおけるパターン描画には、電子ビーム(EB)描画装置やレーザービーム描画装置が一般的に用いられる。これらのパターン描画装置では、ビームの走査領域や、描画対象物を載置するステージ移動領域を細かい矩形領域に分割し、描画面と電子銃との位置関係を変更しながら、ステップアンドリピート方式でビームを走査してパターンを描画する。
周期性パターン、例えばフォトマスクにおいては、前述したような矩形領域の境界部分において、数nmオーダーで、描画パターンの連続したピッチズレ、寸法ズレ及び位置ズレといったパターン変動が生じることが知られている。ムラ欠陥は、まさにこれらのパターン変動が原因となって生じるものであり、周期性パターン領域におけるムラ欠陥の発生様式、面内分布は、矩形領域形状に依存するといってもよい。従って、こうした矩形領域サイズや形状に着目したムラ欠陥の検出方法が要求されることになる。また、本検査の適用工程においてはプロセス起因の不定形状のムラ検出にも着目する必要もある。
【特許文献1】特開2002−148210号公報
【特許文献2】特開2006−208084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのような被検査体に対し、数nmオーダーの寸法ズレや位置ズレによって生じるムラ欠陥を精度良く検出するためのムラ検査方法及びムラ検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、周期性パターンを有する被検査体に照明光を照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光で得られる2次元濃淡画像を解析し、該2次元濃淡画像の部分的に濃度が高い領域あるいは低い領域をムラ領域として特定することで周期性パターンのムラを検査する方法であって、前記被検査体の前記2次元濃淡画像を撮像手段にて撮像し原撮像画像を作成する画像作成工程と、前記原撮像画像上において前記原撮像画像よりも面積が小さい矩形計算領域を定義し、該矩形計算領域内における各画素の輝度値を縦、横方向に別個に積算し積算値を算出する積算値算出工程と、前記積算値の比較基準値を計算し、該比較基準値と前記積算値との比を計算してコントラスト比データを求めるコントラスト比算出工程と、前記積算値算出工程で定義した計算領域を前記原撮像画像上で走査することにより前記原撮像画像の全ての画素における輝度値に対して前記積算値算出工程及びコントラスト比算出工程の処理を行うことで2次元コントラスト比分布画像を作成するコントラスト比分布画像作成工程と、前記2次元コントラスト比分布画像に対し別途設定したコントラスト比閾値との比較演算処理を行い、該比較演算処理により閾値範囲外のコントラスト比データを有する2次元コントラスト比分布画像を構成するドットにオブジェクト(例えば白ドットとして0)を割当て、それ以外のドットに背景(例えば黒ドットとして1)を割当てて2値画像を作成する2値画像作成工程と、前記2値画像に対してラベリング処理を行い、互いに連結した図部分を連結画素部として抽出し、前記各々の連結画素部の面積値を計算し、さらに前記被検査体に対して定義される座標軸上において前記各々の連結画素部が位置する座標値を導出する座標値導出工程と、コントラスト比分布画像作成工程で作成された2次元コントラスト比分布画像において前記座標値導出工程で導出された連結画素部位置と2次元コントラスト比分布画像を照合し前記連結画素部における最大のコントラスト比データを前記各々の連結画素部について求め、当該求められた各々の連結画素部における最大コントラスト比データと面積値との積を計算することにより前記各連結画素部についての評価値を計算する評価値計算工程と、前記評価値に対し別途設定した閾値との比較演算処理を行い、該比較演算処理により閾値を上回る連結画素部をムラ部分と判定するムラ判定工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載のムラ検査方法において、前記原撮像画像に対してデジタルフィルタにより膨張・収縮等のノイズ除去処理を行った後、前記画像作成工程以下の処理を実施することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1記載のムラ検査方法において、前記積算値に対して包絡幅を定義し、前記包絡幅内で積算値の最大値と最小値を求めるとともに前記包絡幅をシフトさせながら積算値の最大値と最小値をサーチし、前記サーチされた最大値を結ぶ曲線を上側包絡データSaとし、最小値を結ぶ曲線を下側包絡データSbとして導出し、この上側包絡データSaと下側包絡データSbとから前記比較基準値を求めることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、周期性パターンを有する被検査体に照明光を照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光で得られる2次元濃淡画像を解析し、該2次元濃淡画像の部分的に濃度が高い領域あるいは低い領域をムラ領域として特定することで周期性パターンのムラを検査するムラ検査装置であって、前記被検査体が載置され、X軸、Y軸及びθ軸方向に駆動する機構を具備する搬送手段と、前記被検査体の所定領域に光を照射し当該所定領域を撮像して得られた画像に画像処理を行うとともに前記被検査体の被検査面内方向における位置決めを行う位置決め手段と、前記照明光として可視光を発生する光源を具備する照明光源手段と、前記照明光源手段からの照明光を導光し前記所定領域に照明光を照射するための照明ヘッド部と、前記照明ヘッド部を支持し、かつ前記搬送手段に載置された前記被検査体上の一定領域に照明光を照射しつつ前記被検査体の被検査面に対する照明光の照射角度を前記被検査面と鉛直な方向に対する照明光照射角度を制御する照明ヘッド駆動手段と、前記照明ヘッド部によって照明光が前記周期性パターンに照射されることにより生じる回折光を撮像する撮像手段と、前記位置決め手段からの映像出力と前記撮像手段からの映像出力を画像情報とする画像入力手段と、前記画像入力手段により得られた前記原撮像画像上において前記原撮像画像よりも面積が小さい矩形計算領域を定義し、該矩形計算領域内における各画素の輝度値を縦、横方向に別個に積算し積算値を算出する処理と、前記積算値の比較基準値を計算し、該比較基準値と前記積算値との比を計算してコントラスト比データを求める処理と、前記積算値算出処理で定義した計算領域を前記原撮像画像上で走査することにより前記原撮像画像の全ての画素における輝度値に対して前記積算値の算出処理と前記コントラスト比の算出処理を行うことで2次元コントラスト比分布画像を作成する処理と、前記2次元コントラスト比分布画像に対し別途設定したコントラスト比閾値との比較演算処理を行い、該比較演算処理により閾値範囲外のコントラスト比データを有する2次元コントラスト比分布画像を構成するドットにオブジェクト(例えば白ドットとして0)を割当て、それ以外のドットに背景(例えば黒ドットとして1)を割当てて2値画像を作成する処理と、前記2値画像に対してラベリング処理を行い、互いに連結した図部分を連結画素部として抽出し、前記各々の連結画素部の面積値を計算し、さらに前記被検査体に対して定義される座標軸上において前記各々の連結画素部が位置する座標値を導出する処理と、前記コントラスト比分布画像の作成処理で作成された2次元コントラスト比分布画像において前記座標値の導出処理で導出された連結画素部位置と2次元コントラスト比分布画像を照合し前記連結画素部における最大のコントラスト比データを前記各々の連結画素部について求め、当該求められた各々の連結画素部における最大コントラスト比データと面積値との積を計算することにより前記各連結画素部についての評価値を計算する処理と、前記評価値に対し別途設定した閾値との比較演算処理を行い、該比較演算処理により閾値を上回る連結画素部をムラ部分と判定する処理と行い、かつ前記搬送手段、前記位置決め手段、前記照明光源手段、前記照明ヘッド部、前記照明ヘッド駆動手段及び前記撮像手段を制御する処理・制御手段と、前記位置決め手段及び前記撮像手段で撮像した画像及び前記制御手段による処理結果を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の周期性パターンのムラ検査方法及び装置によれば、周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのような被検査体に対し、数nmオーダーの寸法ズレや位置ズレによって生じるムラ欠陥を精度良く検出し、ムラ欠陥の識別や合否判定を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下に、本発明の適用する周期性パターンのムラ検査方法及び検査装置の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るムラ検査方法を適用したムラ検査装置の一例を示す構成図である。この図1では透過回折光を得るためのムラ検査装置の構成例を示すもので、本装置は外乱光や迷光を極力低減させた暗環境及び被検査基板への異物付着を防止するクリーン環境で稼動されることが望ましい。
【0015】
本ムラ検査装置は、図1に示すように、透過照明部10と、被検査体である被検査基板60の位置決め動作及び基板搬送動作が可能なX軸−Y軸及びθ軸方向に駆動されるX−Y−θステージ部(特許請求の範囲に記載した搬送手段に相当する)20と、被検査基板60の位置決めを実施するためのアライメント用撮像部30と、検査画像を取得するための撮像部40と、処理・制御部100から構成されている。
ここで、被検査基板60の基板面には周期性パターンが形成されている。ここでいう基板面とは、被検査基板60の厚さ方向の一方に位置する面である。
【0016】
処理・制御部100は、透過照明部10、X−Y−θステージ部20、アライメント用撮像部30、撮像部40を構成する機器類の動作制御を行い、かつアライメント用撮像部30及び撮像部40からの出力を画像情報あるいは信号情報として取り込み、演算処理を行う。さらに、その処理結果や処理画像を表示手段104に表示する。
【0017】
透過照明部10では、円弧レール11が設置されており、この円弧レール11には照明ヘッド12が設けられており、この照明ヘッド12には、光源13の光がライトガイド14を介して導光されるように構成されている。円弧レール11上で照明ヘッド12を円弧レール11に沿い移動することによって被検査基板60の基板面に垂直な法線Lに対する照明ヘッド12の照射角度φを調整できるようになっている(なお、この駆動軸をφ軸と定義する)。したがって、円弧レール11上のどの位置にあっても照明ヘッド12は、X−Y−θステージ部20上の所定位置に照明光を照射することができるように調整されており、これによって、X−Y−θステージ部20上の被検査基板60の基板面に対して、様々な照射角度からの透過照明が可能となっている。
【0018】
なお、照明ヘッド12には平行光学系が設けられている。また、光源13にはフィルターチェンジャー機構が設けられており、複数の波長選択フィルタを用いることが可能となっている。また、本実施の形態では、光源13にはメタルハライドランプを用いており、動作時間に対する光量変動幅が1%以下で光量安定度が高いものを選定していることが特徴である。
【0019】
被検査基板60は、X−Y−θステージ部20の所定の位置に載置される。被検査基板60が載置されるX−Y−θステージ部20の載置部は、中空であることが特徴である。X−Y−θステージ部20は、被検査基板60を図2のX軸方向及びY軸方向に平行移動する機能と、被検査基板60をその基板面と直交する基板面の法線Lを中心とする軸周りに360°回転させる機能を有している(この回転中心の軸をθ軸とする。)。これによって、予め設定した動作手順に従って被検査基板60をX軸及びY軸方向に駆動する。また、θ軸を中心として被検査基板60を面内回転させることにより、被検査基板60の基板面内への照明照射方向の調整が可能である。
【0020】
アライメント用撮像部30は、被検査基板60の上方で基板面に向けて配置されたカメラ31及びレンズ32と、照明33及びその照明制御装置34とから構成される。
被検査基板60上のアライメントマークを含む領域には、同軸落射形式で照明33の照明光が照射され、その観察画像がカメラ31により撮像される。
なお、照明制御装置34により、照明33の点灯/消灯制御及び照明光強度の調節ができるようになっており、実際の制御動作は処理・制御部100により実施される。また、本実施の形態ではカメラ31にはエリアCCDカメラが用いられ、レンズ32には同軸落射形式の固定倍率テレセントリックレンズが用いられ、そして照明33には高輝度スポット型の白色LEDが用いられている。
【0021】
撮像部40は、被検査基板60の上方で基板面に向けて配置されたカメラ41と、平行光学系42から構成される。カメラ41としては、可視光域に分光感度特性を有する光電変換素子を具備していることが望ましい。
処理・制御部100では、情報処理手段101により透過照明部10、X−Y−θステージ部20、アライメント用撮像部30および撮像部40の動作管理及び制御を行う。また、アライメント用撮像部30のカメラ31は信号入力装置103を介して情報処理手段101に接続され、撮像部40のカメラ41は信号入力装置102を介して情報処理手段101に接続されている。
【0022】
上述した上記構成要素を活用して、アライメント用撮像部30による位置決め終了後、被検査基板60を撮像部40にて撮像し、原撮像画像を取得し、ムラ欠陥検出・判定処理を実施する。なお、透過照明部10における照明ヘッド12の照射角度φ等の検査条件については、例えば本出願人が特願2008−248753において既に提案している「周期性パターンのムラ検査装置における検査条件設定方法」を適用することにより、自動で設定することが可能である。
【0023】
図2は、本発明に係る実施の形態1によるムラ検査方法の検査手順を示すフローチャート図である。
本発明に係る実施の形態1によるムラ検査方法は、図2に示すS1〜S10という一連のステップにより実施される。以下、各ステップの内容をステップ順に図2〜図9を参照して説明する。なお、被検査基板60の着脱等のオペレーション操作については、図1に示すフローから割愛する。
【0024】
撮像部40により被検査基板60を撮像し、原撮像画像を取得する。さらに、図3に示すように周期性パターンが含まれる領域部分を原撮像画像から切り出す処理を実施する(ステップS1)。なお、本実施の形態では、撮像部40におけるカメラ41として4096画素のラインセンサカメラを用いているが、カメラ露光時間調整機能を用いても一定の輝度値を確保できない場合には、TDI(Time Delay and Integration)ラインセンサカメラを使用しても良い。また、複数台の性能の異なるカメラとカメラ切替機構を具備することにより、使用カメラの切替で測定毎に最適なものを選択できるようにしてもよい。また、照明ヘッド12は、ライン型照明ヘッドであってもよい。
【0025】
ステップS1において切り出された画像(以下、切り出し画像と呼ぶ)において、切り出し画像よりも面積が小さい矩形計算領域を定義し、この矩形計算領域内の各画素における輝度値を縦及び横方向に別個に積算し、積算値を計算する(ステップS2)。この積算値は、図4に示すように、積算した画素数で割った平均値とする。
なお、矩形計算領域の指定方法について、切り出し画像横方向に対して積算を行う場合の例を図3に模式的に示す。切り出し画像に対して横方向に積算を行う場合には、切り出し画像の縦方向サイズと、矩形計算領域の縦方向サイズとを一致させる。縦方向に積算を行う場合でも同様である。また、図3に示すように、矩形計算領域中央部を注目画素ラインとし、これを矩形計算領域の基準位置とする。この矩形計算領域幅は、前述した描画装置における矩形領域サイズに合わせて設定するが、周期性パターンの描画に使用した描画装置毎に矩形積算領域幅を変えることができるように、検査レシピ等でその都度値を設定できるようにしてもよい。
【0026】
ステップS2で計算した積算値に対する比較基準値を計算する(ステップS3)。積算値からの比較基準値導出について図4に模式的に示す。本実施の形態では比較基準値の導出手法として包絡線処理を利用するが、場合によっては移動平均処理を利用しても良い。
なお、包絡線処理及び移動平均処理の実施目的は、画像上の濃淡グラデーション傾向に追従した比較基準値を導出することにある。以下、包絡線処理について、図5を参照して簡単に説明する。
【0027】
包絡線処理のフローを図5に示す。
まず、ステップS31において、積算値に対して包絡幅を定義し、包絡幅内にて積算値の最大値と最小値を求める。包絡幅は、図6に示すように、積算値曲線の左端部からを基点として定義し、曲線の右方向へ順次シフトさせながら、その都度、最大値及び最小値をサーチし求めていく。そして、次のステップS32において、サーチされた最大値を結ぶ曲線と最小値を結ぶ曲線を求め、最大値を結ぶ曲線を上側包絡データSaとし、最小値を結ぶ曲線を下側包絡データSbとして生成し、それぞれを導出する。次のステップS33では、上側包絡データSaと下側包絡データSbから、比較基準値So=(Sa+Sb)/2を計算する。
【0028】
次に、図2に示すステップS4に移行して、図7に示すようなコントラスト比データを計算する。このコントラスト比は次の式(1)により求められる。
(コントラスト比)=(積算値/比較基準値)−1・・・・・・・・・・・(1)
【0029】
次に、ステップS5において、画像全範囲に対して積算値計算、すなわち上記ステップS2〜S4の処理が行われたかを判定する。ここで、画像全範囲に対する積算値計算がなされていないと判定された時はステップS6に移行し、図4に示した注目画素ラインを基準として矩形計算領域を1画素ずつ積算方向へシフトさせていき、画像全範囲に対して上記ステップS2〜S5の処理を繰り返し実行する。そして、X方向への積算が終了したならば、Y方向への積算も同様に行う。その後、ステップS7において、画像のX,Y方向に対して積算値計算が終了したかを判定する。積算値計算が終了していない場合は、積算値計算が終了するまでステップS2〜S7の処理を繰り返し実行する。
【0030】
ステップS7において、画像のX,Y方向に対して積算値計算が終了したと判定された場合は、ステップS8に移行し、図8に模式的に示すようなコントラスト比分布画像を作成する。
本実施の形態では8ビット画像による計算を実施し、コントラスト比=0となる画素における部分、つまりムラ欠陥が存在しないベース部分に対して輝度値128を割当てるようにしてから以降の処理を実施する。
【0031】
まず、ステップS8で作成されたコントラスト比分布画像において、別途設定した閾値との比較演算処理からの2値化処理を実施する(ステップS9)。このとき、ベース部分に比べて輝度値が高い部分、すなわち白ムラ部分を抽出したい場合には、白ムラ検出用閾値としてベース部分よりも大きな値の輝度値を設定しておき、白ムラ検出用閾値よりも大きな輝度値を持つ画素には白ドットとして0を、それ以外の部分には黒ドットとして1を割当てて2値画像を作成する。同様に、ベース部分に比べて輝度値が低い部分、すなわち黒ムラ部分を抽出したい場合には、黒ムラ検出用閾値としてベース部分よりも小さな値の輝度値を設定しておき、黒ムラ検出用閾値よりも小さな輝度値を持つ画素には黒ドットとして1を、それ以外の部分には白ドットとして0を割当てて2値画像を作成する。本実施の形態では8ビット画像による計算を実施しているので、白ドットとしては輝度値255を、黒ドットとしては輝度値0をそれぞれ割当てている。この場合の白ムラ2値画像及び黒ムラ2値画像の作成例を図9に示す。
【0032】
次に、ステップS9で処理した2値画像に対し、ラベリング処理を行い、互いに連結した画素部分を連結画素部として抽出し、それらの面積値と、被検査基板60上における座標値を算出する(ステップ10)。なお、白ムラ、黒ムラ両方を検出したい場合には、ステップ10で白ムラ2値画像と黒ムラ2値画像の両方を作成してそれぞれバッファしておき、それぞれの2値画像に対してラベリング処理を行った後、白ムラ、黒ムラの面積値と座標値を一枚の画像情報へ統合するようにしてもよい。
ステップS8で作成されたコントラスト比分布画像において、ステップS9における2値化処理結果を基にしてムラ部分の座標値とムラ領域を特定する。さらに、次のステップS11において、ムラ領域におけるコントラスト比の最大値と、ムラ領域の面積値との積を評価値と定義し、これを計算する。
【0033】
ステップS11で算出された評価値に対し別途設定した閾値との比較演算処理を実施し、閾値を上回るムラ部分をNGと判断する(ステップS12)。このとき、OK/GRAY/NGの三段階の判定基準を設け、判定用としてTh_Gr、Th_NGという2つの閾値を定義しておき、
(評価値)<Th_GRであれば、OKと判定し、
Th_GR≦(評価値)<Th_NGであれば、GRAYと判定し、
Th_NG≦(評価値)であれば、NGと判定する。
【0034】
以上説明したように、本実施に形態に示すムラ検査方法によれば、フォトマスクやブラックマトリックス等の周期性パターンを有する製品における検査装置において、周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのような被検査体に対し、描画装置特有の描画領域に対応した矩形領域を活用する計算方法を盛り込むことにより、数nmオーダーの寸法ズレや位置ズレによって生じるムラ欠陥を精度良く検出し、ムラ欠陥の識別や合否判定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るムラ検査方法を適用したムラ検査装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明方法によるムラ検査の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における矩形計算領域の設定方法を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態における積算値からの比較基準値の算出方法を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態における包絡線処理の手順をしたフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態における包絡線処理を用いて上側包絡線、下側包絡線、比較基準値を求めた例を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるコントラスト比の算出方法を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるコントラスト比分布画像を模式的に示した図である。
【図9】本発明の実施形態における白ムラ2値画像及び黒ムラ2値画像の作成例を示した図である。
【符号の説明】
【0036】
10……透過照明部、11……円弧レール、12……照明ヘッド、13……光源、14……ライトガイド、20……X−Y−θステージ部、30……アライメント用撮像部、31……カメラ、32……レンズ、33……照明、34……照明制御装置、40……撮像部、41……カメラ、42……平行光学系、60……被検査基板、100……処理・制御部、101……情報処理手段、102……信号入力装置、103……信号入力装置、104……表示手段、105……対人操作手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期性パターンを有する被検査体に照明光を照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光で得られる2次元濃淡画像を解析し、該2次元濃淡画像の部分的に濃度が高い領域あるいは低い領域をムラ領域として特定することで周期性パターンのムラを検査する方法であって、
前記被検査体の前記2次元濃淡画像を撮像手段にて撮像し原撮像画像を作成する画像作成工程と、
前記原撮像画像上において前記原撮像画像よりも面積が小さい矩形計算領域を定義し、該矩形計算領域内における各画素の輝度値を縦、横方向に別個に積算し積算値を算出する積算値算出工程と、
前記積算値の比較基準値を計算し、該比較基準値と前記積算値との比を計算してコントラスト比データを求めるコントラスト比算出工程と、
前記積算値算出工程で定義した計算領域を前記原撮像画像上で走査することにより前記原撮像画像の全ての画素における輝度値に対して前記積算値算出工程及びコントラスト比算出工程の処理を行うことで2次元コントラスト比分布画像を作成するコントラスト比分布画像作成工程と、
前記2次元コントラスト比分布画像に対し別途設定したコントラスト比閾値との比較演算処理を行い、該比較演算処理により閾値範囲外のコントラスト比データを有する2次元コントラスト比分布画像を構成するドットにオブジェクト(例えば白ドットとして0)を割当て、それ以外のドットに背景(例えば黒ドットとして1)を割当てて2値画像を作成する2値画像作成工程と、
前記2値画像に対してラベリング処理を行い、互いに連結した図部分を連結画素部として抽出し、前記各々の連結画素部の面積値を計算し、さらに前記被検査体に対して定義される座標軸上において前記各々の連結画素部が位置する座標値を導出する座標値導出工程と、
コントラスト比分布画像作成工程で作成された2次元コントラスト比分布画像において前記座標値導出工程で導出された連結画素部位置と2次元コントラスト比分布画像を照合し前記連結画素部における最大のコントラスト比データを前記各々の連結画素部について求め、当該求められた各々の連結画素部における最大コントラスト比データと面積値との積を計算することにより前記各連結画素部についての評価値を計算する評価値計算工程と、
前記評価値に対し別途設定した閾値との比較演算処理を行い、該比較演算処理により閾値を上回る連結画素部をムラ部分と判定するムラ判定工程と、
を備えることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項2】
前記原撮像画像に対してデジタルフィルタにより膨張・収縮等のノイズ除去処理を行った後、前記画像作成工程以下の処理を実施することを特徴とする請求項1記載のムラ検査方法。
【請求項3】
前記積算値に対して包絡幅を定義し、前記包絡幅内で積算値の最大値と最小値を求めるとともに前記包絡幅をシフトさせながら積算値の最大値と最小値をサーチし、前記サーチされた最大値を結ぶ曲線を上側包絡データSaとし、最小値を結ぶ曲線を下側包絡データSbとして導出し、この上側包絡データSaと下側包絡データSbとから前記比較基準値を求めることを特徴とする請求項1記載のムラ検査方法。
【請求項4】
周期性パターンを有する被検査体に照明光を照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光で得られる2次元濃淡画像を解析し、該2次元濃淡画像の部分的に濃度が高い領域あるいは低い領域をムラ領域として特定することで周期性パターンのムラを検査するムラ検査装置であって、
前記被検査体が載置され、X軸、Y軸及びθ軸方向に駆動する機構を具備する搬送手段と、
前記被検査体の所定領域に光を照射し当該所定領域を撮像して得られた画像に画像処理を行うとともに前記被検査体の被検査面内方向における位置決めを行う位置決め手段と、
前記照明光として可視光を発生する光源を具備する照明光源手段と、
前記照明光源手段からの照明光を導光し前記所定領域に照明光を照射するための照明ヘッド部と、
前記照明ヘッド部を支持し、かつ前記搬送手段に載置された前記被検査体上の一定領域に照明光を照射しつつ前記被検査体の被検査面に対する照明光の照射角度を前記被検査面と鉛直な方向に対する照明光照射角度を制御する照明ヘッド駆動手段と、
前記照明ヘッド部によって照明光が前記周期性パターンに照射されることにより生じる回折光を撮像する撮像手段と、
前記位置決め手段からの映像出力と前記撮像手段からの映像出力を画像情報とする画像入力手段と、
前記画像入力手段により得られた前記原撮像画像上において前記原撮像画像よりも面積が小さい矩形計算領域を定義し、該矩形計算領域内における各画素の輝度値を縦、横方向に別個に積算し積算値を算出する処理と、
前記積算値の比較基準値を計算し、該比較基準値と前記積算値との比を計算してコントラスト比データを求める処理と、
前記積算値算出処理で定義した計算領域を前記原撮像画像上で走査することにより前記原撮像画像の全ての画素における輝度値に対して前記積算値の算出処理と前記コントラスト比の算出処理を行うことで2次元コントラスト比分布画像を作成する処理と、
前記2次元コントラスト比分布画像に対し別途設定したコントラスト比閾値との比較演算処理を行い、該比較演算処理により閾値範囲外のコントラスト比データを有する2次元コントラスト比分布画像を構成するドットにオブジェクト(例えば白ドットとして0)を割当て、それ以外のドットに背景(例えば黒ドットとして1)を割当てて2値画像を作成する処理と、
前記2値画像に対してラベリング処理を行い、互いに連結した図部分を連結画素部として抽出し、前記各々の連結画素部の面積値を計算し、さらに前記被検査体に対して定義される座標軸上において前記各々の連結画素部が位置する座標値を導出する処理と、
前記コントラスト比分布画像の作成処理で作成された2次元コントラスト比分布画像において前記座標値の導出処理で導出された連結画素部位置と2次元コントラスト比分布画像を照合し前記連結画素部における最大のコントラスト比データを前記各々の連結画素部について求め、当該求められた各々の連結画素部における最大コントラスト比データと面積値との積を計算することにより前記各連結画素部についての評価値を計算する処理と、
前記評価値に対し別途設定した閾値との比較演算処理を行い、該比較演算処理により閾値を上回る連結画素部をムラ部分と判定する処理と、
を行い、かつ前記搬送手段、前記位置決め手段、前記照明光源手段、前記照明ヘッド部、前記照明ヘッド駆動手段及び前記撮像手段を制御する処理・制御手段と、
前記位置決め手段及び前記撮像手段で撮像した画像及び前記制御手段による処理結果を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするムラ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−151478(P2010−151478A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327366(P2008−327366)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】