周期的に異なる局所複屈折を有する二軸性フィルム
本発明は、変形したらせんねじれ構造および局所で変化する複屈折を伴う異方性材料を含む光学的二軸性フィルム、その調製のための方法および材料、液晶ディスプレイなどの光学デバイスでの位相差フィルムまたは補償フィルムとしてのその使用、および該二軸性フィルムを含む補償器および液晶ディスプレイに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、光学的二軸性フィルム、その調製のための方法および材料、補償器(compensator)および液晶ディスプレイなどの光学デバイスでのその使用、および該二軸性フィルムを含む補償器および液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
背景および従来技術
光学補償器は、従来技術において、広視野角でのコントラスト比およびグレースケール表示などの、液晶ディスプレイ(LCD)の光学的な特性を改善するために用いられている。例えば、TNまたはSTN型の非補償型のディスプレイでは、広視野角においてしばしば、グレーレベルの変化、さらにはグレースケールの反転(grey scale inversion)、ならびにコントラストの消失および色域の望ましくない変化が観察される。
【0003】
LCD技術の概説およびLCDの光学補償の原理および方法はUS 5,619,352で与えられており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。US 5,619,352で述べられているように、広視野角のディスプレイのコントラストを改善するために負の複屈折のCプレート補償器を用いることができるが、しかしながら、かかる補償器はディスプレイのグレースケール表示を改善しない。一方、グレースケールの反転を抑制さらには解消し、かつグレースケールの安定性を改善するために、US 5,619,352は複屈折Oプレート補償器を用いることを提案している。US 5,619,352で記述されるOプレート補償器はOプレートを含み、付加的に1つまたは2つ以上のAプレートおよび/またはネガティブCプレートを含むことができる。
【0004】
US 5,619,352およびこの発明を通して用いられる「Oプレート」、「Aプレート」および「Cプレート」という用語は、以下の意味を有する。「Oプレート」は、層の平面に関して傾斜した(oblique)角度に配向された主光軸を有する、正の複屈折の(例えば、液晶)材料の層を利用した光学位相差板(optical retarder)である。「Aプレート」は、層の平面に平行に配向された異常軸(extraordinary axis)と、層の平面に垂直、すなわち、法線入射光の方向に平行に配向された通常軸(ordinary axis)(「a軸」とも呼ばれる)を有する、一軸性の複屈折の材料の層を利用した光学位相差板である。「Cプレート」は、層の平面に垂直な、すなわち、法線入射光の方向に平行な異常軸(「c軸」とも呼ばれる)を有する一軸性の複屈折の材料の層を利用した光学位相差板である。
【0005】
従来技術において、負の複屈折のCプレート位相差板は、例えばUS 5,196,953で記述されているように、例えば等方性ポリマーの一軸性の圧縮されたフィルムから、無機薄膜の蒸着により、または負の複屈折の液晶材料から調製されてきた。しかしながら、延伸したまたは圧縮したポリマーフィルムはしばしば中程度の複屈折しか示さず、高程度のフィルム厚を必要とし、蒸着は複雑な製造工程を必要とし、および負の複屈折の液晶材料はしばしば容易に入手できず、正の複屈折の材料よりも高価である。
【0006】
前記の不利益を回避するために、例えばWO 01/20393およびWO 01/20394において、典型的には電磁スペクトルのUV領域でのブラッグ反射バンドを有する、短ピッチのコレステリック液晶フィルムを用いることが最近提案されている。かかるフィルムは、その最大反射よりも大きな波長で負の複屈折を有するCタイプの位相差(retardation)を示す。このタイプのフィルムの屈折率楕円体は、負の複屈折を有する垂直に配向した液晶のものと類似する。かかる位相差フィルムは、例えば、TN−LCDのホメオトロピックに駆動された(homeotropically driven)暗状態における軸外の(off-axis)位相差を解消するのに用いることができる。
【0007】
WO 01/20393は、平面Aプレート、OプレートおよびネガティブCプレートを組み合わせた補償器を開示し、ここで、ネガティブCプレートは短ピッチのコレステリックLCフィルムを含む。例えばTN−LCDで使用されるとき、この組み合わせは、水平な視野角での優れたコントラストを提供し、色域の望ましくない変化を低減する。しかしながら、垂直な視野角でのその性能は限定されている。さらに、複数の位相差フィルムの使用は高価であり、製造上の問題および耐及性の問題をもたらす。
【0008】
本発明の1つの目的は、LCDの補償器として改善された性能を有し、製造が、特に大量生産のために容易であり、上述の従来技術の補償器の欠点を有しない光学補償器を提供することである。本発明のもう1つの目的は、その調製のための改善された方法を提供することである。本発明の他の目的は、以下の詳細な説明から当業者に直ちに明らかである。
【0009】
本発明者らは、複数のフィルムを単一の層に組み合わせ、二軸性Cプレート位相差板を用いることにより、上述の問題を解決することができ、より優れた性能を有する光学補償器を得ることができることを見出した。二軸性ネガティブCプレート位相差板は、光学的性質において平面AプレートおよびネガティブCプレートの組み合わせに類似するが、かかる組み合わせよりもより良好な光学的性能を示すことが見出された。二軸性ネガティブCプレート位相差板(Δnxy)の面内異方性はAプレートに類似し、面外異方性(ΔnxzおよびΔnyz)はネガティブCプレートに類似する。シミュレーションにより、二軸性ネガティブCプレート位相差板の光学的性能は、AプレートおよびネガティブCプレートを順に重ねたものの性能より驚異的に優れており、液晶ディスプレイのための格別に良好な視野角性能を示すことが明らかとなった。さらに、2つの重ねたフィルムではなく、単一の二軸性フィルムの使用は、費用と製造の問題を低減する。
【0010】
さらに本発明者らは、感光性化合物および二色性光開始剤を含む重合性キラル液晶材料を用い、前記材料を偏光UV光で照射することにより、フィルムのある部分の感光性化合物の形状または構造の変化させ、そしてしたがって、複屈折の変化をもたらし、その後、これを重合によって凍結させることによる、該フィルムの新規かつ改善された調製方法を見出した。
【0011】
WO 03/01544は、楕円屈折率の変形したらせん構造を有するコレステリック二軸性フィルム、および二色性光開始剤を含む重合性コレステリック液晶材料からのかかるフィルムの調製方法を開示している。しかしながら、本特許請求の範囲に記載された方法および感光性化合物を含む材料から得られる、異なる複屈折の二軸性フィルムは開示していない。
【0012】
US 6,685,998は、透明な基材(substrate)と棒状液晶分子から形成されるフィルムとを含む補償器を開示し、ここにおいて、該フィルムは3つの異なる主屈折率を有し、液晶分子がコレステリック配向で配向されている。しかしながら、本特許請求の範囲に記載された方法および材料から得られる、UV領域で反射し、周期的に変化する複屈折を有する二軸性コレステリックフィルムを開示していない。
【0013】
用語の定義
「光反応性」、「感光性」および「光反応」という用語は、限定せずに、光異性化、光誘発性2+2付加環化、光フリース転位(photo-fries arrangement)、または類似の光崩壊過程を含む反応により、光照射に際してその構造または形状が変化する化合物を指す。光重合反応はこれらの意味に含まれない。しかしながら、本発明において解説する光反応性または感光性化合物は、加えて、重合性または光重合性であることもできる。
【0014】
「フィルム」という用語は、堅いまたは柔軟な、機械的安定性を有する自己支持性または自立性のフィルム、ならびに支持基材上のまたは2つの基材の間の被覆または層を含む。
「液晶またはメソゲン材料」または「液晶またはメソゲン化合物」という用語は、1つまたは2つ以上の棒状、板状、または円盤状のメソゲン基、つまり液晶(LC)相挙動を誘導する能力を有する基を含む材料または化合物を意味する。棒状または板状の基を伴うLC化合物は、当該技術分野で「カラミティック」液晶としても知られている。円盤状の基を伴うLC化合物は、当該技術分野で「ディスコティック」液晶としても知られている。メソゲン基を含む化合物または材料は、必ずしもそれ自体が液晶相を示す必要はない。他の化合物との混合物であるとき、またはメソゲン化合物または材料、あるいはその混合物が重合されているときのみにLC相挙動を示すことも可能である。
【0015】
単純化のために、「液晶材料」という用語は、以降、メソゲン材料およびLC材料の両方について用いる。
1つの重合性基を伴う重合性化合物はまた「単反応性(monoreactive)」化合物とも称し、2つの重合性基を伴う化合物はまた「二反応性(direactive)」化合物とも称し、2つより多い重合性基を伴う化合物はまた「多反応性(multireactive)」とも称する。重合性基を伴わない化合物はまた、「非反応性(non-reactive)」化合物とも称する。
【0016】
「反応性メソゲン(reactive mesogen)」(RM)という用語は、重合性のメソゲンまたは液晶化合物を意味する。
「ダイレクター(director)」という用語は従来技術において知られており、LC材料における、メソゲン基の分子長軸(カラミティック化合物の場合)または分子短軸(ディスコティック化合物の場合)の好ましい配向方向を意味する。
一軸性の正の複屈折のLC材料を含むフィルムにおいて、光軸はダイレクターによって与えられる。
【0017】
「コレステリック構造」または「ねじれらせん構造」という用語は、LC分子を含むフィルムであって、ダイレクターがフィルム平面に平行であり、フィルム平面に垂直な軸のまわりでらせん状にねじれているものを指す。
「ホメオトロピック構造」または「ホメオトロピック配向」という用語は、光軸がフィルム平面に実質的に垂直であるフィルムを指す。
「平面構造」または「平面配向」という用語は、光軸が実質的にフィルム平面と平行であるフィルムを指す。
【0018】
「傾斜構造」または「傾斜配向」という用語は、光軸がフィルム平面に対して0〜90°の間の角度θで傾斜しているフィルムを指す。
「スプレイ(splayed)構造」または「スプレイ配向」という用語は、チルト角がフィルム平面に対して垂直な方向で、好ましくは最小値から最大値まで変化する、上記で定義した傾斜配向を意味する。
【0019】
平均チルト角θaveは以下のように定義する。
【数1】
式中、θ’(d’)はフィルム中の厚さd’での局所チルト角(local tilt angle)であり、dはフィルムの合計の厚さである。
以降、スプレイフィルム(splayed film)のチルト角は、他に記載がなければ、平均チルト角θaveとして与えられる。
【0020】
単純化のために、ねじれ、平面、ホメオトロピック、傾斜もしくはスプレイ配向または構造を有する光学フィルムはまた、以降それぞれ、「ねじれフィルム」「平面フィルム」、「ホメオトロピックフィルム」、「傾斜フィルム」または「スプレイフィルム」とも呼ぶ。
傾斜およびスプレイフィルムはまた、「Oプレート」とも呼ぶ。平面フィルムはまた、「Aプレート」または「平面Aプレート」とも呼ぶ。
【0021】
「Eモード」は、ディスプレイセルに入るときに、入力偏光方向がLC分子のダイレクターと実質的に平行な、つまり異常(E、extraordinary)屈折率の、ねじれネマチック液晶ディスプレイ(TN−LCD)を指す。「Oモード」は、ディスプレイセルに入るときに、入力偏光がダイレクターに実質的に垂直な、つまり正常(O、ordinary)屈折率の、TN−LCDを指す。
【発明の開示】
【0022】
発明の概要
本発明は、変形した(または歪んだ)らせんと、らせん軸の方向で周期的に変化する局所複屈折とを有する、らせん状にねじれた構造を伴う異方性材料を含む、光学的二軸性フィルムに関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の二軸性フィルムの調製方法に関する。
【0023】
本発明はさらに、本明細書に記載の二軸性フィルムの、例えば液晶ディスプレイなどの光学デバイスでの位相差または補償フィルムとしての使用に関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の二軸性フィルムを含む補償器に関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の補償器または二軸性フィルムを含む液晶ディスプレイに関する。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明による二軸性フィルムを含む補償器をLCDに用いると、ディスプレイの広視野角でのコントラストおよびグレーレベルの表示が大幅に改善され、グレースケールの反転が抑制される。カラーディスプレイの場合、色の安定性は大幅に改善され、色域の変化は抑制される。さらに、本発明による補償器は特に大量生産に適している。
【0025】
特に好ましいのは、nx≠ny≠nzおよびnx,ny>nzである光学的二軸性の負のC対称を有する位相差フィルムであり、式中nxおよびnyはフィルム平面における直角方向の主屈折率であり、nzはフィルム平面に垂直な主屈折率である。
【0026】
本発明による二軸性フィルムは、好ましくは400nm未満の波長の円偏光光を反射する。特に好ましいのは、UV領域またはUV領域より下の光、好ましくは380nmより下の波長の光を反射する二軸性フィルムである。さらに好ましいのは、400nmまたはこれより高い波長の光に対して、好ましくは380nmまたはこれより高い光に対して実質的に透明な二軸性フィルムである。非常に好ましくは、二軸性フィルムは380〜少なくとも780nmの波長の可視光に対して実質的に透明である。
【0027】
二軸性フィルムの厚さは、好ましくは0.5〜5μmであり、非常に好ましくは1〜3μmである。
本発明による二軸性フィルムの軸上の(on axis)位相差(すなわち0°の視野角での)は、好ましくは60nm〜400nmであり、特に好ましくは100nm〜350nmである。他の好ましい態様において、二軸性フィルムは好ましくは10〜200nm、非常に好ましくは20〜150nmの位相差を有する。
【0028】
一部のLCD用途のためには、二軸性フィルムは入射光の波長の約0.25倍の位相差を示すことが好ましく、従来技術において四分の一波長位相差フィルム(QWF)またはλ/4プレートとしても知られている。かかる用途のために特に好ましいのは、90〜200nm、好ましくは100〜175nmの位相差値である。
他のLCD用途のためには、二軸性フィルムは入射光の波長の約0.5倍の位相差を示すのが好ましく、従来技術において半波長位相差フィルム(HWF)またはλ/2プレートとしても知られている。かかる用途のために特に好ましいのは、180〜400nm、好ましくは200〜350nmの位相差値である。
【0029】
好ましくは、二軸性フィルムは(変形した)コレステリック構造を示す。可視光より下の、380nmよりも好ましくは小さい反射波長を達成するために、かかる二軸性フィルムのコレステリックらせんのらせんピッチは、好ましくは225nmより下から選択する。
フィルムは、好ましくはキラル重合性メソゲンまたは液晶(LC)材料、特に好ましくはコレステリック相の重合性LC材料から調製される。
【0030】
重合性LC材料は、好ましくは基材上に薄いフィルムとして被覆され、そこでコレステリックらせんがフィルムの平面に実質的に垂直な平面配向をとる。任意に、重合性LC材料の平面配向への配向は、付加的な手段または技術により、例えば界面活性剤などの配向剤を添加すること、または配向膜で基材を処理することおよび/または基材または配向膜をラビングすることなどにより補助する。適する手段および技術は、当業者に既知である。キラル化合物の量およびらせんねじれ力(HTP)は、好ましくはコレステリック材料が短いピッチおよび<380nmの反射波長を有するように選択される。
【0031】
前記材料は、好ましくは一官能性、二官能性または多官能性の重合性化合物および非重合性化合物から選択されるモノマー化合物の混合物である。1つまたは2つ以上の前記化合物は、らせんねじれコレステリック構造を誘発するキラル化合物である。また、前記化合物の1つまたは2つ以上は、好ましくは5〜100重量%までの量であり、例えばケイ皮酸エステル(cinnamate)ベースのLCまたはRMにおけるものなどのような、光反応性または感光性化合物である。前記感光性化合物は、例えばUV光で照射されると、図1で例示的に描かれているような、形状および/または屈折率の変化を示す。これは、コレステリックらせんの選択された部位で局所的に複屈折の変化を導く。
【0032】
配向したコレステリック材料の光照射に際して、感光性化合物(1種または2種以上)は、上記のように、異なる複屈折を有する形態へと変換される。材料が偏光光で照射されると、LCダイレクターが偏光光の方向に沿っているらせんの領域のみが光反応を起こし、このようにしてこれらの範囲のみで複屈折が低減する。
【0033】
同時に、(UV)光開始剤(1種または2種以上)が重合過程を開始し、これによりらせん構造を「固定化する」一方、感光性材料を、らせん中での部位に応じて、高いまたは低い複屈折の状態に「閉じ込める」。このようにして、らせん構造は一様のままであるが、複屈折はらせんを通して局所的に異なり、二軸性の光学フィルムとなる。
【0034】
重合性LC材料は、さらに、1つまたは2つ以上の二色性または液晶光開始剤、好ましくはUV光開始剤を含むことを特徴とする。二色性光開始剤は、液晶ダイレクターと平行なUV吸収軸で局所的に配向する。偏光UV光で照らされると、図2に示すとおり、局所のダイレクターが偏光の方向(E)と平行に位置する部位で、重合開始フリーラジカルを産生する。
【0035】
不均一なフリーラジカル産生により、主に二官能性または多官能性の重合性化合物などの高反応性成分の、局所的な重合が結果として起こる。このことにより、図3Bで示すように、らせんの半回転の中に、高反応性成分および低反応性成分の間の濃度勾配が結果として生じる。
高度に反応性の成分は、ダイレクターがEフィールド(E-field)(フリーラジカルの最大濃度)と平行に位置する場所で濃縮されるようになり、一官能性の重合性化合物または非重合性化合物などのより反応性の低い成分は、ダイレクターがEフィールドに垂直である場所で濃縮されるようになる。キラル成分の局所的な変化のため、正弦らせん(sinusoidal helix)の歪みが結果として起こる(本明細書中では、「歪んだ」または「変形した」らせんともいう)。
【0036】
光照射量、例えば照射強度および/または暴露時間、を変化させることにより、異性化の程度およびしたがって二軸性フィルムの最終的な位相差を変化させることができる。
【0037】
直線偏光された光照射の偏光方向を変化させることにより、二軸性フィルムの遅軸の方向を制御することが可能である。「遅軸」は最も高い屈折率の方向に対応し、例えばnx>ny>nzであるフィルムにおいて、遅軸の方向はnxの方向である(フィルム平面において)。例えば、直線偏光UV光による照射は、直線偏光子(例えば、市販の色素ドープ吸収偏光子(dye-doped absorption polarizer))を通してUV光を通過させることにより達成することができる。結果物の二軸性フィルムにおける遅軸の方向は、したがって、偏光子の透過軸(transmission axis)の方向に一致する。偏光子を回転させることにより、遅軸の方向をこのようにして制御することできる。
【0038】
長ピッチCLCポリマーにおいて歪んだらせんを達成する方法が、D. J. Broer et al., Adv. Mater. 1999, 11(7), 573-77に開示されている。しかしながら、Broer et al.は、UV領域の反射波長を有するコレステリックフィルムを開示していない。
【0039】
図4は、本発明の二軸性コレステリックフィルムにおけるらせん構造(C)を、WO 03/054111に記載された従来技術の二軸性コレステリックフィルムにおけるらせん構造(A)、および従来技術の一軸性コレステリックフィルムにおけるらせん構造(B)と比較して、図式的に表している。
図4Aの二軸性フィルムは、二色性光開始剤を含む重合性コレステリック材料から、WO 03/054111に記載のとおりに、直線偏光光での照射により得る。この処理の結果として、二軸性フィルムは変形したらせん構造を有するが、複屈折の局所的な変化を示さない。
【0040】
重合性コレステリック材料の非偏光光での照射により、フィルムにおける複屈折の全体的な低減、そしてしたがって図4Bに表すような光学的一軸性フィルムがもたらされる。
これに対して、本発明による処理により得られる図4Cのフィルムは、変形したらせん、および高複屈折領域(1)および低複屈折領域(2)で周期的に変化する複屈折率を有する。
【0041】
本発明による二軸性フィルムにおいて、らせんピッチは可視波長より十分下の値に縮小し、そのために平均的な方向性の屈折率(average directional refractive indice)のみが経験される。結果として、ブラッグ反射バンドが光のUV領域で起こり、そのため、フィルムは光の可視波長に対して透明であり、これらの可視波長に対して純粋に位相差板として機能する。二軸性フィルムにおけるらせんの歪みは、図5Bに示すような楕円形で円盤状の屈折率楕円体をもたらし、これに対し、従来技術のフィルムにおける歪んでいないらせんでは、図5Aに示すように円形で円盤状の楕円体となる。対照的に、従来技術、例えばBroer et al., Adv. Mater. 1999, 11(7), 573-77で報告されたような、より長いピッチのフィルムは、可視波長に関しては、偏光反射体またはカラーフィルターとして機能する。
【0042】
従来技術のコレステリックフィルムにおける短ピッチの正弦(つまり、歪んでいない)らせんは、図5Aの円盤状の屈折率楕円体によって示されるように、負の有効複屈折(effective birefringence)(Δnz−xy)をもたらす。面内の屈折率は等しく(nx=ny)、面外の率(nz)よりも大きい。これは光学的一軸性の、負のCタイプ構造をもたらす。対照的に、本発明による短ピッチコレステリックフィルムにおいては、らせんの歪みのために、負のCタイプ構造において付加的な面内異方性(Δnx−y)が生じ、結果として、nx≠ny≠nzでnxおよびnyがnzよりも大きい、二軸性の負のCタイプの対称性を有する、図5Bに示される屈折率楕円体を生じる。
【0043】
このようにして、可視スペクトルの波長の直線偏光光に対する位相差板として作用し得る、光学的二軸性の負のCタイプの対称性を有するコレステリックフィルムを作製することができる。
代替的に、本発明による製法は、第一の工程で、重合を、非偏光光、好ましくは非偏光UV光での照射によりポリマーらせんを固定化して成し遂げ、第二の工程で、らせん構造の選択された部位の複屈折を、偏光光、好ましくは偏光UV光での照射により成し遂げるようにして実行することができる。
【0044】
光反応および光重合を同時に実行することもまた可能である。
本明細書に記載した光重合の代わりに、重合性キラルメソゲン材料は、例えば既知の方法によるまたは既知の方法に類似した熱重合などの他の技法によっても重合することができる。
【0045】
本発明の別の目的は、本明細書に記載した二軸性位相差フィルムの製造方法、好ましくは下記の工程を含む製法である:
A)少なくとも1つの感光性化合物、少なくとも1つのキラル化合物および少なくとも1つの重合性化合物(ここで、これらの化合物は同一であってもまたは異なっていてもよい)、および少なくとも1つの二色性光開始剤を含む、キラルな重合性メソゲン材料の層を基材上に提供する工程であって、基材上で、前記層が平面配向に配向するか、またはこれを任意に平面配向に配向させる工程、
B)材料を、直線偏光光、好ましくは直線偏光UV光で照射し、材料の選択された領域で感光性化合物(1種または2種以上)の光反応を誘発する工程、
C)キラルなメソゲン材料を重合する工程、
D)任意に基材から重合した材料を取り外す工程。
【0046】
本発明はさらに、工程C)を工程B)の前または同時に実行する、上記の製法に関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の製法により得ることができるまたはこれにより得られたコレステリック構造の二軸性フィルムに関する。
【0047】
パターン化二軸性フィルム
本発明はさらに、変形したらせん構造を有し、かつ、異なる複屈折の少なくとも2つの領域を含むか、または異なる複屈折を有する2つまたは3つ以上の領域のパターンを含む、光学的二軸性フィルムに関する。複屈折の変化は、フィルムの異なる領域で位相差の変化をもたらす。
【0048】
かかるフィルムは、重合性混合物の選択した部位だけを、例えばフォトマスクを用いることにより、光照射に暴露する、または重合性混合物の異なる部位を、例えば異なる領域が異なる光照射透過性を有する遮光フォトマスク(shaded photomask)を用いることにより、または可変強度の照射源を用いることにより、異なる強度の光照射に暴露する、上記の方法により製造することができる。
【0049】
特に好ましいのは、異なる位相差値を有する、1つまたは2つ以上の、好ましくは1つ、2つまたは3つの異なる領域のパターンを含む本発明による二軸性フィルムであり、前記値の各々は、直線偏光光を、円偏光光に変換する能力が、赤、緑および青(R、G、B)の原色の1つの光について最適化されるように調節されている。特に、前記位相差値は以下のとおりである:
【0050】
600nmの波長の赤色光に対しては、位相差は、140〜190nm、好ましくは145〜180nm、極めて好ましくは145〜160nm、最も好ましくは150nmである。
550nmの波長の緑色光に対しては、位相差は、122〜152nm、好ましくは127〜147nm、極めて好ましくは132〜142nm、最も好ましくは137nmである。
【0051】
450nmの波長の青色光に対しては、位相差は、85〜120nm、好ましくは90〜115nm、極めて好ましくは100〜115nm、最も好ましくは112nmである。
フィルムの位相差は、例えば、異性化を起こさせる光照射の強度および/または持続時間を変化させることにより変化させることができる。
【0052】
好ましくは、パターン化二軸性位相差フィルムは、以下の工程を含む製法により調製する。
A)少なくとも1つの感光性化合物、少なくとも1つのキラル化合物および少なくとも1つの重合性化合物(ここで、これらの化合物は同一であってもまたは異なっていてもよい)、および少なくとも1つの二色性光開始剤を含む、キラルな重合性メソゲン材料の層を基材上に提供する工程であって、基材上で、前記層が平面配向に配向するかまたはこれを任意に平面配向に配向させる工程、
B)材料の選択された領域が異なるUV出力の量を受けるように、材料を、直線偏光光、好ましくは直線偏光UV光で、例えば、フォトマスクを介して照射して、選択された領域の感光性化合物が、選択されていない領域とは異なる程度の光反応を示すように、感光性化合物(1種または2種以上)の光反応を誘導する工程、
C)キラルなメソゲン材料を重合する工程、
D)任意に基材から重合した材料を取り外す工程。
【0053】
本発明による二軸性フィルムは、単独でまたは他の位相差フィルムと組み合わせて、補償器または位相差板として、特にLCDでの視野角補償のために用いることができる。
好ましくは前記二軸性フィルムは、Aプレート、CプレートおよびOプレート位相差板、または平面、ホメオトロピック、傾斜またはスプレイ構造を有する、異方性または液晶フィルムの群から選択した、付加的な位相差板との組み合わせで使用する。とりわけ好ましくは、前記二軸性フィルムは、傾斜またはスプレイ構造を有する、極めて特に好ましくはスプレイ構造を有する、少なくとも1つのOプレート位相差板と組み合わせて使用する。
【0054】
したがって、本発明はさらに、本明細書に記載の少なくとも1つの二軸性位相差フィルムを含み、および任意に、スプレイまたは傾斜構造の少なくとも1つのOプレート位相差板をさらに含む補償器に関する。
本発明による補償器に用いることができるOプレート位相差板およびその製造の適した例は、WO 01/20393に記載されており、その全開示は本明細書に参照により組み込まれる。
【0055】
偏光子および位相差板などの個々の光学フィルムは、互いに積層するか、または、例えばTACまたはDAC(トリまたはジアセチルセルロース)フィルムなどの接着層により結合することができる。
本発明の別の目的は、本明細書に記載の少なくとも1つの二軸性フィルムまたは補償器を含む液晶ディスプレイである。
【0056】
特に好ましくは、前記液晶ディスプレイデバイスは、以下の要素:
− 互いに対向する表面を有する2つの透明基材、前記2つの透明基材の少なくとも1つの内面に提供され、任意に配向膜と重ね合わされた電極層、および2つの透明基材の間に存在する液晶媒体により形成される液晶セル、
− 前記透明基材の外側に配置された偏光子、または前記基材をはさむ1組の偏光子、および
− 液晶セルと、少なくとも1つの前記偏光子との間に置かれた、本発明による少なくとも1つの二軸性フィルムまたは補償器
を含み、上記の要素は、分離したり、積み重ねたり、互いの上に乗せたり、または接着層により、これらの組立手段の任意の組み合わせで結合することができる。
【0057】
本発明による二軸性フィルムおよび補償器は、従来のディスプレイの、特にTN(ねじれネマチック)、HTN(高度(highly)ねじれネマチック)またはSTN(超ねじれネマチック)モードのディスプレイの、AMD−TN(アクティブマトリクス駆動TN)ディスプレイにおける、「スーパーTFT」ディスプレイとしても知られるIPS(インプレーンスイッチング)モードのディスプレイにおける、例えばECB(電気制御複屈折)、CSH(カラースーパーホメオトロピック)、VANまたはVAC(垂直配向ネマチックまたはコレステリック) ディスプレイなどの、DAP(配向相の変形(deformation of aligned phases))またはVA(垂直配向)モードのディスプレイの、ベンドモードのディスプレイまたはハイブリッド型ディスプレイ、例えばOCB(光学補償ベンドセルまたは光学補償複屈折)、R−OCB(反射型(reflective)OCB)、HAN(ハイブリッド配向ネマチック)またはパイセル(πセル)ディスプレイなど、または半透過型ディスプレイにおける補償のために用いることができる。
【0058】
特に好ましいのは、TN、STN、VA、MVA、OCBおよびパイセルディスプレイである。
以下で、本発明の好ましい態様による補償されたディスプレイを説明する。
下記のコンピューターシミュレーションは、層状の異方性媒体のためのBerremanの4×4行列法を用いて行った。
【0059】
ねじれネマチック(TN)モード
図6Aおよび図6Bは、オフ状態でねじれネマチック配向のネマチック液晶混合物を有するLCセル、セルのそれぞれの側に平面Aプレート、(一軸性)ネガティブCプレートおよびスプレイOプレートを含む補償器、およびセルおよび補償器を挟む、偏光軸が直角に交差する2つの偏光子を含む、従来技術による補償されたTNディスプレイを示す。
図6Cは本発明の第一の好ましい態様による補償されたTNディスプレイを例示的に示し、ここで、補償器は、図6Aおよび図6Bと比較して、別々のAプレートおよびネガティブCプレート位相差板の代わりに、本発明による単一の二軸性ネガティブCフィルムを含む。
【0060】
コンピューターシミュレーションは、ある構成において、図6Cに示す補償器が、TNディスプレイの光学的な性能を明白に改善することを示した。補償器の構成は、導波モード(OモードまたはEモード)およびスプレイフィルムおよび二軸性フィルムの相対的な位置に依存する。モデリングにより、単一の二軸性フィルムに加えてスプレイフィルムを含む図6Cによる補償器で達成される光学的な性能は、スプレイフィルムとともに順次積み重ねた、別々のAプレートおよびネガティブCプレートを含む、図6Aまたは6Bによる補償器で達成される性能よりも明白に良いということも示された。
【0061】
例えば図6Cに示す補償スタック(compensation stack)において、本発明の二軸性フィルムの方向性屈折率(directional refractive indice)の比は、その大きさよりも重要である。例えば、nx=1.65、ny=1.60およびnz=1.50の二軸性フィルムの場合、優れたコントラストはフィルム厚1200nmで達成できる。
しかしながら、例えば、実質的に同じ光学的性能を有するフィルムを得るために、例えば、面内異方性および面外異方性(ΔnyzおよびΔnxy)を係数倍減少させ、かつ同じ係数倍フィルムの厚さを増加させることもまた可能である。この方法は、本発明による二軸性フィルムに適用できる。
【0062】
マルチドメイン垂直配向(MVA)モード
コンピューターシミュレーションにより、MVAモードのディスプレイをネガティブCプレートおよびAプレートを用いて補償し、80°の角度まで全ての視野方向において10:1のコントラスト比を達成できることが示された。このタイプの補償はまた、軸外の色のウォッシュアウト(off-axis colour washout)を低減し、カラー性能も改善する。
図7Aは、オフ状態でホメオトロピック配向のネマチック液晶混合物のLCセル、LCセルの一方の面に(一軸性)ネガティブCプレートと平面Aプレートとを含む補償器、およびセルおよび補償器を挟む、直角に交差する偏光軸を有する2つの偏光子を含む、補償されたMVAディスプレイを示す。
【0063】
図7Bは、本発明の第二の好ましい態様による補償されたMVAディスプレイを例示的に示し、これは、2つの交差する偏光子にはさまれた、ホメオトロピックLCセルと、該LCセルの一方の面上の本発明による二軸性ネガティブCフィルムとを含む。
前述のとおり、ネガティブCプレートとAプレート(平面フィルム)との組み合わせは、二軸性ネガティブCフィルムに近似させることができる。図7Bに示す、単一の二軸性ネガティブCフィルムのMVAモードのディスプレイへの適用は、驚くことに、図7Aに示す、別々に適用したフィルムと比較して改善されたコントラストをもたらした。
【0064】
OCBまたはパイセルモード
図8Aは、オフ状態で標準的なOCB配置(ホモジニアスなエッジ配向(edge alignment)およびベンド構造)のネマチック液晶混合物を有するLCセル、LCセルのそれぞれの面上の、平面Aプレートと(一軸性)ネガティブCプレートとを含む補償器、および偏光軸が直角に交差する、セルおよび補償器をはさむ2つの偏光子、を含む補償されたOCBモードのディスプレイを示す。
【0065】
図8Bは、本発明の第3の好ましい態様による補償されたOCBディスプレイを例示的に示し、これは、2つの交差する偏光子に挟まれた、ベンド構造のLCセルと、該LCセルのそれぞれの面上の本発明による二軸性ネガティブCフィルムと含む。
コンピューターシミュレーションにより、図8Bに示す単一の二軸性ネガティブCフィルムを用いて、図8Aに示す分離したAプレートおよびネガティブCプレートを置き換え、スタックにおける異なるフィルムの数を減らしながら同等の光学的性能を得ることができることが示された。
【0066】
イン・セルでの使用
さらに好ましい態様において、本発明による二軸性フィルムは、LCDにおける光学位相差フィルムとして、ディスプレイの切り替え可能なLCセルの外側でなく、切り替え可能なLCセルを形成し、切り替え可能なLC媒体を含む基材、通常はガラス基材の間に用いられる(イン・セル適用(incell application))。
【0067】
光学位相差板が、通常、LCセルと偏光子との間に位置する従来のディスプレイと比較して、光学位相差フィルムのイン・セル適用は複数の利点を有する。例えば、光学フィルムがLCセルを形成するガラス基材の外側に付着しているディスプレイは、通常、視差の問題を生じ、これは視野角特性をひどく損ない得る。位相差フィルムをLCディスプレイセルの内部に調製すると、前記視差の問題を軽減し、さらには回避することができる。
【0068】
さらに、光学位相差フィルムのイン・セル適用は、LCDデバイスの合計の厚さを低減することができ、このことはフラットパネルディスプレイにとって重要な利点である。しかも、ディスプレイはより頑強になる。イン・セル適用で特に有利なのは、本発明による重合性LC材料を含むフィルムであり、これは、該LC材料の複屈折が、例えば延伸プラスチックフィルムと比較してより高いために、フィルムをより薄くすることができるからである。したがって、2ミクロンまたはこれ未満の厚さを有するフィルムを用いることができ、これはイン・セル適用に特に好適である。
【0069】
したがって、本発明はさらに、
− 少なくとも1つが入射光に対して透明である、2つの平行な基材平面、前記2つの透明な基材の少なくとも1つの内側に提供され、任意に配向膜に重ね合わされる電極層、および前記2つの基材の間に存在し、電界の適用により少なくとも2つの異なる状態の間で切り替え可能な液晶媒体により形成される液晶セル、
− 液晶セルの1つの面上の第一の直線偏光子、
− 任意に、前記第一の直線偏光子と反対側の液晶セルの面上の第二の直線偏光子、
を含むLCDであって、
該LCDが、前記液晶セルの2つの平行平面基材の間に位置する本明細書に記載の少なくとも1つの二軸性フィルムを含むことを特徴とするLCDに関する。
【0070】
前記態様による好ましいLCDは、
− 以下の要素:
− 互いに平行な第一および第二の基材平面であって、前記の少なくとも1つが入射光に対して透明であるもの、
− 前記LCセルの個々のピクセルの個別の切り替えに使用できる、前記基材の1つに設けられた非線形電気要素のアレイであって、前記要素が、好ましくはトランジスタなどのアクティブな要素であり、極めて好ましくはTFTであるもの、
− 前記基材の1つ、好ましくは非線形要素のアレイを担持する基材に対向する基材に設けられた、原色である赤、緑、青(R、G、B)の1つを透過する異なるピクセルのパターンを有するカラーフィルターアレイであって、前記カラーフィルターが任意に平坦化層により被覆されているもの、
− 前記第一の基材の内面に設けられた第一の電極層、
− 任意に、前記第二の基材の内面に設けられた第二の電極層、
− 任意に、前記第一および第二の電極上に設けられた第一および第二の配向膜、
− 電界の適用により少なくとも2つの異なる配向の間で切り替え可能なLC媒体、
を含むLCセル、
−LCセルの第一の面上の、第一の(または「正面」)直線偏光子
−任意に、LCセルの第二の面上の、第二の(または「背面」)直線偏光子、および
−本明細書に記載の少なくとも1つの二軸性フィルム、
を含み、
前記二軸性フィルムが、LCセルの第一の基材と第二の基材との間、好ましくはカラーフィルターと液晶媒体との間、極めて好ましくはカラーフィルターと前記電極層の1つとの間、または平坦化層が存在する場合は平坦化層と前記電極層の1つとの間に位置することを特徴とする。
【0071】
この好ましい態様によるLCDは図9Aに例示的に表されており、該LDCは、2つの基材(11a、11b)、TFTアレイ(12)、カラーフィルターアレイ(13a)、任意に平坦化層(13b)、電極層((14)および任意に(15))、任意に2つの配向膜(16a、16b)、LC媒体(17)、および前記平坦化層とLC媒体との間に位置し、任意に別の配向膜(16c)上に設けられた、本発明による二軸性フィルム(4)を含む。ディスプレイモードに依存して、平坦化層(13a)、配向膜(16a)および/または(16b)、および電極層(14)および(15)の1つを除いてもよい。好ましくは、配向膜(16c)が、光学位相差フィルム(4)と平坦化層 (13b)との間に存在する。
【0072】
二軸性フィルム(4)を、直接(つまり中間層の存在なしに)カラーフィルターアレイ(13a)上に、平坦化層(13b)の存在なしに配置し、光学位相差フィルムが平坦化層としての役割を果たすようにすることもできる。光学位相差フィルム(4)を、カラーフィルターアレイ(13a)と平坦化層(13b)との間に配置することもまた可能である。好ましくは、配向膜(16c)が、光学位相差フィルム(4)とカラーフィルター(13a)との間に存在する。
【0073】
特に好ましくは、二軸性フィルムは、ディスプレイセル内部のカラーフィルター(13a)または平坦化層(13b)上に直接調製し、すなわち、任意に配向膜で被覆されたカラーフィルターまたは平坦化層は、LCフィルム調製のための基材としての役割を果たす。
第一および第二の偏光子は、LCセルの外側に、LCセルを挟むように適用することができる。あるいは、1つまたは両方の偏光子をLCセルの内側にLC媒体を挟むように適用することができる。例えば、図9Bに示すディスプレにおいて、2つの偏光子(18)および(19)は、LCセルを形成する基材(11a、11b)の内面に適用されている。理想的には、偏光子は、カラーフィルターまたはTFTの適用前に、基材の内面に直接適用する。
【0074】
イン・セル用途に特に好適で好ましいのは、例えばEP 0 397 263 AまたはEP 1 132 450 Aに記載の、二色性色素を含む重合または架橋液晶材料を含む直線偏光子である。
カラーフィルター(13a)として、フラットパネルディスプレイ用の、従来技術で知られる任意の標準的なカラーフィルタを用いることができる。かかるカラーフィルターは、典型的に原色である赤、緑および青(R、G、B)の1つを透過する異なる画素のパターンを有する。
【0075】
特に好ましいのは、マルチプレックスまたはマトリックスディスプレイ、極めて好ましくはアクティブマトリックスディスプレイである。
別の好ましい態様は、3つの異なる位相差の領域または画素のパターンを有する二軸性フィルムに関し、これらの領域の位相差値は、それぞれの領域または画素における、直線偏光光を円偏光光へ変換する効率がR、GおよびBの色の1つに対して最適化されるように調整され、これは、好ましくはカラーフィルターのR、G、B画素のそれぞれが、その色について最適化された位相差を有する二軸性フィルムの対応する画素により被覆されるように、カラーフィルター上に配置される。
【0076】
例えば、カラーフィルターの青(B)の画素の450nmの波長、緑(G)の画素の550nmの波長および600nmの赤(R)の画素の600nmの波長の約1/4にそれぞれ対応する、約112nm、137nmおよび150nmの位相差を有する3種類の画素を有する画素化された二軸性QWFを構築することができる。画素化されたHWFは、同様に調製することができる。対照的に、画素化していないフィルムはディスプレイの全てのエリアについて平均的な一様の特性のみを提供する。
【0077】
代替的にまたはRGBパターンに加えて、二軸性フィルムは、QWF(またはHWF)の位相差を有するエリアおよび別の位相差、例えばゼロ位相差を有するエリアのパターンを有することができる。前記のパターン化フィルムは、パターン化半透過型ディスプレイ、例えばWO 03/019276 A2またはvan der Zande et al., SID Digest 14.2, 2003, page 194-197、S. Roosendaal et al., SID Digest 8.1, 2003, page 78-81およびM. Kubo et al., Proccedings of the IDW 1999, page 183-186に記載されたホールインミラー(hole-in-mirror)型の半透過型ディスプレイにおける補償器として特に適する。
【0078】
本発明によるパターン化していない二軸性フィルムは、LCD、例えばVAまたはMVA型のLCD用に、典型的には25〜60nmの位相差を有するイン・セルフィルムとして用いることもできる。
本発明および上記の好ましい態様において、Aプレートは好ましくは平面構造の重合液晶材料のフィルムである。ネガティブCプレートは、好ましくは短ピッチのコレステリック構造およびUV領域での反射を有する重合液晶材料のフィルムである。Oプレートは、好ましくはスプレイ構造の重合液晶材料のフィルムである。しかしながら、従来技術で既知の他のAプレート、CプレートおよびOプレート位相差板を用いることも可能である。適したフィルムは例えばUS 5,619,352またはWO 01/20393に開示されている。
【0079】
本発明による二軸性フィルムは、混合物の反射波長が通常重合に用いられる光の波長(典型的には約365nm)より下になるように、かつ複屈折の局所変化が可能になるように作出した、重合性キラル液晶材料から調製することができる。これは、例えば、Bragg反射バンドをUVへと押しやる高いねじれおよび/または高い量の1つまたは2つ以上のキラル成分を加えることにより、および1つまたは2つ以上の感光性化合物を加えることにより達成される。
【0080】
加えて、本発明による混合物および材料により、フィルムの製造方法をプラスチック基材上での生産に適したものとすることが可能となり、硬化時間は5分未満であり、これは大量生産に特に適している。
重合性材料は、好ましくはキラルスメクチックもしくはキラルネマチック(コレステリック)LC相の、またはブルー相の液晶材料である。適したスメクチック材料は、例えばキラルスメクチックC相のLC材料を含む。
【0081】
特に好ましくは、重合性材料はコレステリックLC(CLC)材料である。好ましくは、これは1つまたは2つ以上のアキラル重合性メソゲン化合物および少なくとも1つのキラル化合物を含む。キラル化合物は、非重合性キラル化合物、例えば液晶混合物またはデバイスで用いられるキラルドーパントなどの、重合性キラル非メソゲンまたは重合性キラルメソゲン化合物から選ぶことができる。特に好ましいのは、高いらせんねじれ力を有するキラルドーパントであり、これは、これらが少量で用いられた場合でさえも、短ピッチCLC混合物をもたらすからである。
【0082】
特に好ましいのは、
a)少なくとも1つの重合性基を有する、少なくとも1つの重合性メソゲン化合物、
b)少なくとも1つのキラル化合物であって、重合性および/またはメソゲンであってもよく、また、成分a)および/もしくはc)の化合物の1つまたは追加の化合物であってもよいもの、
c)少なくとも1つの感光性化合物であって、重合性および/またはメソゲンであってもよく、また成分a)および/もしくはb)の化合物の1つまたは追加の化合物であってもよいもの、
d)1つまたは2つ以上の二色性光開始剤
を含み、かつ、以下の成分
e)1つ、2つまたは3つ以上の重合性基を有する1つまたは2つ以上の非メソゲン化合物
f)材料が光重合される場合には、光重合を開始させるのに用いられる波長で吸収極大を示す、1つまたは2つ以上の色素
g)1つまたは2つ以上の連鎖移動剤
h)1つまたは2つ以上の界面活性化合物
の1つまたは2つ以上を任意に含む、キラル重合性メソゲン材料である。
【0083】
本明細書に記載のキラル重合性メソゲンおよびLC材料は、本発明のもう1つの目的である。
好ましくは、アキラルおよびキラル化合物は異なる数の重合性基を有する。
本発明の好ましい態様において、重合性材料は、少なくとも1つの二官能性または多官能性キラル重合性メソゲン化合物および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む。
【0084】
本発明の別の好ましい態様において、重合性材料は、少なくとも1つの一官能性キラル重合性メソゲン化合物および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む。
別の好ましい態様において、重合性材料は、少なくとも1つの非重合性キラル化合物および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性重合性メソゲン化合物を含む。
【0085】
二官能性または多官能性重合性化合物が重合性材料中に存在する場合、ポリマーネットワークが形成される。かかるネットワークで作られる光学位相差フィルムは自己支持性であり、高い機械的および熱的安定性、およびその物理的および光学的特性の低い温度依存性を示す。
二官能性または多官能性化合物の濃度を変化させることにより、ポリマーフィルムの架橋密度およびそれゆえ、光学位相差フィルムの光学的特性の温度依存性、熱的および機械的安定性または耐溶剤性のためにも重要な、ガラス転移温度などのその物理的および化学的特性を容易に調整することができる。
【0086】
好ましい重合性LC混合物は、
− 0〜80%、好ましくは5〜50%の、2つまたは3つ以上の重合性基を有する1つまたは2つ以上のアキラルメソゲン化合物、
− 0〜80%、好ましくは5〜50%の、1つの重合性基を有する1つまたは2つ以上のアキラルメソゲン化合物、
− 1〜80%、好ましくは5〜50%の、1つまたは2つ以上の重合性キラルメソゲン化合物および/または1〜20%のメソゲンであってもよい1つまた2つ以上の非重合性キラル化合物、
− 5〜100%の、好ましくは1つまたは2つの重合性基を有する、1つまたは2つ以上の感光性メソゲン化合物
− 0〜15%、好ましくは0.01〜10%、極めて好ましくは0.05〜5%の、1つまたは2つ以上の光開始剤であって、このうち少なくとも1つは二色性、好ましくは液晶性光開始剤であるもの、
− 0〜10%の、1つまたは2つ以上の連鎖移動剤
− 0〜3%の、1つまたは2つ以上の非重合性または一官能性、二官能性もしくは多官能性の重合性界面活性剤。
【0087】
特に好ましいのは、棒状または板状のメソゲンまたは液晶化合物である。さらに好ましいのは、以下に示す式R1〜R23で表される化合物である。
本発明で用いられる重合性メソゲン一官能性、二官能性および多官能性重合性化合物を、自体公知の、例えば、Houben-Weyl, methoden der organischen Chemie, Thieme-Verlag, Stuttgartなどの有機化学の標準的な著作物に記載された方法によって調製することができる。
【0088】
本発明による重合性LC混合物においてモノマーまたはコモノマーとして用いることのできる適した重合性メソゲン化合物の例は、例えば、WO 93/22397、EP 0 261 712、DE 195 04 224、WO 95/22586、WO 97/00600およびGB 2 351 734に開示されている。しかしながら、これらの文献に開示されている化合物は、本発明の範囲を限定しない単なる例とみなす。
【0089】
特に有用なキラルおよびアキラル重合性メソゲン化合物の例は以下のものである。
【化1】
【0090】
【化2】
【0091】
【化3】
【0092】
【化4】
【0093】
上記式において、Pは重合性基であり、好ましくはアクリル、メタクリル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセタンまたはスチリル基であり、xおよびyは1〜12の同一のまたは異なる整数であり、Aは、L1により任意に1、2または3置換されている1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンであり、uおよびvは互いに独立して0または1であり、Z0およびX0は互いに独立して−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、NR’−CO−NR’−、−O−CO−NR’−、NR’−COO−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、R’はHまたは1〜6個のC原子を有するアルキルであり、R0は極性基または非極性基であり、Terは、例えばメンチルなどのテルペノイド基であり、Cholはコレステリル基であり、L、L1、およびL2は互いに独立してH、F、Cl、CNまたは任意にハロゲン化された1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ基であり、rは0、1、2、3または4である。上記式におけるフェニル環は、任意に1、2、3または4個の基Lで置換されている。
【0094】
ここで「極性基」という用語は、F、Cl、CN、NO2、OH、OCH3、OCN、SCN、任意にフッ素化された4個までのC原子を有するアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ基、または1〜4個のC原子を有するモノ、オリゴ、ポリフッ素化アルキルまたはアルコキシ基から選択される基を意味する。「非極性基」という用語は、1つまたは2つ以上、好ましくは1〜12個のC原子を有する、上記の「極性基」の定義によってカバーされていない、任意にハロゲン化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ基を意味する。
【0095】
適したキラルドーパントは、例えば市販のR−またはS−811、R−またはS−1011、R−またはS−2011、R−またはS−3011、R−またはS−4011、R−またはS−5011またはCB15(Merck KGaA, Darmstadt, Germany製)から選択することができる。極めて好ましいのは、高いらせんねじれ力(HTP)を有するキラル化合物であり、特にWO 98/00428に記載されたソルビトール基を含む化合物、GB 2,328,207に記載されたヒドロベンゾイン基を含む化合物、WO 02/94805に記載されたキラルビナフチル誘導体、WO 02/34739に記載されたキラルビナフチルアセタール誘導体、WO 02/06265に記載されたキラルTADDOL誘導体、およびWO 02/06196およびWO 02/06195に記載された、少なくとも1つのフッ素化された結合基(linkage group)および末端または中心キラル基を有するキラル化合物である。
【0096】
適した光反応性または感光性化合物は従来技術で既知である。これらは、例えば光照射に際して光異性化、光フリース転移または2+2−付加環化または他の光崩壊過程を示す化合物である。特に好ましいのは、光異性化化合物である。これらの化合物の例は、アゾベンゼン類、ベンズアルドキシム類、アゾメチン類、スチルベン類、スピロピラン類、スピロオキサジン類、フルギド類、ジアリールエテン類、ケイ皮酸エステル類を含む。さらなる例は、例えばEP 1 247 796に記載された2−メチレンインダンー1−オン類および例えばEP 1 247 797に記載された(ビス−)ベンジリデン−シクロアルカノン類である。
【0097】
特に好ましくは、LC材料は1つまたは2つ以上のケイ皮酸エステル、特に、例えばGB 2 314 839、EP 03007236.7、US 5,770,107またはEP 02008230.1およびこれらの対応する特許に開示された重合性メソゲンまたは液晶性ケイ皮酸エステルを含む。極めて好ましくは、LC材料は、以下の式から選択される1つまたは2つ以上のケイ皮酸エステルを含む:
【化5】
式中、P、A、Lおよびvは上記で与えられた意味を有し、Spは、スペーサー基、例えば1〜12個のC原子を有するアルキレン、アルキレン−オキシ、アルキレン−カルボニル、アルキレンオキシ−カルボニル、アルキレン−カルボニルオキシまたはアルキレンオキシ−カルボニルオキシ、または単結合であり、Rは上記で定義されるR0の意味を有するかP−Spを示す。
【0098】
特に好ましいのは、上記で定義した、極性末端基R0を含むケイ皮酸エステルRMである。極めて好ましいのは、Rが極性基R0である式IおよびIIのケイ皮酸エステルRMである。
さらに好ましいのは、キラル重合性ケイ皮酸エステル、例えばGB 2 314 839またはEP 03007236.7に記載されたキラルソルビトールケイ皮酸エステル、またはUS 5,770,107に記載されたキラル基を含むケイ皮酸エステルなどである。
【0099】
LC材料において光反応を起こすのに用いる光照射は、感光性化合物のタイプに依存し、当業者は容易に選択することができる。一般的に、UV照射により誘発される光反応を示す化合物が好ましい。例えば式III、IVおよびVなどのケイ皮酸エステル化合物に対しては、典型的に、UV−A領域(320〜400nm)の波長または365nmの波長のUV照射を用いる。
【0100】
コレステリックフィルムの調製のために、重合性LC材料は、好ましくは基材上に被覆または印刷し、一定の配向に配向させ、コレステリック構造を永久的に固定するために重合する。基材としては、例えば、ガラスもしくは石英のシート、またはプラスチックフィルムもしくはシートを用いることができる。第二の基材を被覆した混合物の上に、重合前および/または重合中および/または重合後に載せることもまた可能である。基材は、重合後に除去することも、除去しないこともできる。化学線による硬化の場合に2つの基材を用いるとき、少なくとも1つの基材は、重合に用いられる化学線に対して透過性でなければならない。等方性または複屈折基材を用いることができる。重合後基材を重合フィルムから除去しない場合、好ましくは等方性基材を用いる。
【0101】
好ましくは、少なくとも1つの基材は、プラスチック基材、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルのフィルム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)またはトリアセチルセルロース(TAC)のフィルム、特に好ましくはPETフィルムまたはTACフィルムである。複屈折基材としては、例えば一軸性延伸プラスチックフィルムを用いることができる。例えば、PETフィルムはDuPont Teijin FilmsよりMelinex(登録商標)という商品名で市販されている。
【0102】
重合性LC材料は、基材上にスピンコーティングまたはブレード塗工などの従来の被覆技術により適用できる。これはまた、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、リール・ツー・リール(reel-to-reel)印刷、レタープレス印刷、グラビア印刷、ロトグラビア(rotogravure)印刷、フレキソ印刷、凹版印刷、パッド印刷、ヒートシール(heat-seal)印刷、インクジェット印刷または刻印機または印刷板による印刷などの、当業者に既知の従来の印刷技法によっても基材に適用できる。
【0103】
重合性メソゲン材料を適した溶媒に溶解することもまた可能である。この溶液をその後、例えばスピンコーティングまたは印刷または他の既知の技法により、基材上に被覆または印刷し、重合化の前に溶媒を蒸発させる。ほとんどの場合、混合物を、溶媒の蒸発を促進させるために加熱することが適している。溶媒としては、例えば、標準的な有機溶媒を用いることができる。溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン類、例えば酢酸メチル、エチルまたはブチルまたはアセト酢酸メチルなどの酢酸エステル類、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール類、例えばトルエンまたはキシレンなどの芳香族溶剤類、例えばジ−またはトリクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、グリコール類、あるいは例えばPEGMA(プロピルグリコールモノメチルエーテルアセテート)、γ−ブチロラクトンなどのそのエステル類などから選ぶことができる。2成分、3成分またはそれより多い上記溶媒の混合物を用いることもまた可能である。
【0104】
LC材料の重合は、これを好ましくは熱または化学線に暴露することにより達成する。化学線は、UV光、IR光または可視光などの光での照射、X線またはガンマ線での照射、またはイオンまたは電子などの高エネルギー粒子での照射を意味する。好ましくは、重合は、光照射により、特にUV光により、特に好ましくは直線偏光UV光により行う。化学線源としては、例えば1つのUVランプまたはUVランプのセットを用いることができる。高いランプ出力を用いると、硬化時間を短縮することができる。他の可能な光照射源は、例えばUVレーザー、IRレーザーまたは可視光レーザーなどのレーザーである。
【0105】
重合は、好ましくは化学線の波長を吸収する開始剤の存在下で行う。例えば、UV光により重合するときには、UV照射下で分解し、重合反応を開始させるフリーラジカルまたはイオンを産生する光開始剤を用いることができる。UV光開始剤、特にラジカルUV光開始剤が好ましい。
【0106】
コレステリックフィルムにおいてらせんの歪みを得るために、重合性CLC混合物は、好ましくは、例えば液晶光開始剤などの二色性光開始剤を含有すべきである。LC光開始剤としては、例えばEP 03014990.0に開示された化合物の1つまたは以下の化合物を用いることができる。
【化6】
【0107】
二色性光開始剤に加えて、重合性混合物は1つまたは2つ以上の通常の光開始剤を含んでもよい。ラジカル重合のための標準的な光開始剤としては、例えば市販のIrgacure(登録商標)651、Irgacure(登録商標)184、Darocure(登録商標)1173またはDarocure(登録商標)4205(全てCiba Geigy AG製)を用いることができ、一方カチオン光重合の場合、市販のUVI 6974 (Union Carbide)を用いることができる。
【0108】
硬化時間は、とりわけ、重合性材料の反応性、被覆された層の厚さ、重合開始剤のタイプおよびUVランプの出力に依存する。本発明による硬化時間は、好ましくは10分より長くなく、特に好ましくは5分より長くなく、極めて特に好ましくは2分よりも短い。大量生産のためには、3分またはそれ未満、極めて好ましくは1分またはそれ未満、特に30秒またはそれ未満の短い硬化時間が好ましい。
【0109】
重合性LC材料は、例えば触媒、増感剤、安定剤、連鎖移動剤、阻害剤、促進剤、共反応モノマー、界面活性化合物、平滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤(hydrophobing agent)、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、助剤、着色剤、色素または顔料などの1つまたは2つ以上の他の適した成分をさらに含むことができる。
【0110】
混合物はまた、重合に用いる照射の波長に調整された吸収極大を有する、1つまたは2つ以上の色素、特に、例えば4,4’−アゾキシアニソールまたは市販のTinuvin(Ciba AG, Basel, Switzerland製)などのUV色素を含んでもよい。
別の好ましい態様においては、重合性材料の混合物は70%までの、好ましくは1〜50%の、1つの重合性官能基を有する1つまたは2つ以上の非メソゲン化合物を含む。典型的な例は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである。
【0111】
ポリマーの架橋を増加させるために、二官能性または多官能性重合性メソゲン化合物の代わりに、またはこれに加えて、2つまたは3つ以上の重合性官能基を有する1つまたは2つ以上の非メソゲン化合物を、重合性LC材料に20%まで加え、ポリマーの架橋を増加させることも可能である。二官能性非メソゲンモノマーの典型的な例は、1〜20個のC原子のアルキル基を有するアルキルジアクリレートまたはアルキルジメタクリレートである。多官能性非メソゲンモノマーの典型的な例は、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0112】
本発明のポリマーフィルムの物理的特性を改変するために、1つまたは2つ以上の連鎖移動剤を重合性材料に加えることもまた可能である。特に好ましいのは、例えばドデカンチオールなどの一官能性チオール化合物または例えばトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)などの多官能性チオール化合物などのチオール化合物であり、極めて好ましくは、例えばWO 96/12209、WO 96/25470またはUS 6,420,001に開示されるメソゲンまたは液晶性チオール化合物である。連鎖移動剤を加えると、本発明のポリマーフィルムにおける遊離ポリマー鎖の長さおよび/または2つの架橋間のポリマー鎖の長さをコントロールすることができる。連鎖移動剤の量を増加すると、得られたポリマーフィルムにおけるポリマー鎖長は減少する。
【0113】
コレステリックフィルムの調製のために、キラル重合性材料の平面配向を達成すること、つまりらせん軸をフィルム平面に対して実質的に垂直に配向させることが必要である。平面配向は例えば、例えばドクターブレードによって、材料をせん断することにより達成することができる。配向膜、例えばラビングしたポリイミドまたはスパッタリングしたSiOxの層を、少なくとも1つの基材の上に適用することも可能である。平面配向はまた、付加的な配向膜を適用せずに、基材をラビングすることにより、例えばラビング布またはラビングローラーにより達成することもまた可能である。小さいチルト角の平面配向は、1つまたは2つ以上の界面活性剤を重合性メソゲン材料に加えることによっても達成可能である。適した界面活性剤は、例えばJ. Cognard, Mol.Cryst.Liq.Cryst. 78, Supplement 1, 1-77 (1981)に記載されている。特に好ましいのは、非イオン系界面活性剤、例えば市販のFluorad(登録商標)(3M製)またはZonyl FSN(登録商標)(DuPont製)などの非イオン系フッ化炭素界面活性剤、またはEP 1 256 617 A1に開示されているような重合性界面活性剤である。さらに好ましいのはGB 2 383 040 Aに開示されているマルチブロック界面活性剤である。
【0114】
いくつかの場合において、配向を補助し、かつ重合を阻害し得る酸素を排除するために、第二の基材を適用することが有利である。代替的に、不活性ガス雰囲気下で硬化を行うことができる。しかしながら、適した光開始剤および高UVランプ出力を用いることによって、空気中での硬化も可能である。カチオン光開始剤を用いる場合、酸素の除去はほとんどの場合必要ないが、水を除去すべきである。本発明の好ましい態様において、重合性材料の重合は、不活性ガス雰囲気下で、好ましくは窒素雰囲気下で行う。
【0115】
以下の例は、限定することなく本発明を例証する役割を果たす。本明細書において、他に記述されていない場合は、全ての温度は摂氏度で、全てのパーセンテージは重量により与えられる。
【0116】
例1
以下の重合性混合物を調製した。
【表1】
【化7】
【0117】
Paliocolor 756(登録商標)はBASF AG(Ludwigshafen, Germany)より市販されている重合性キラル化合物である。FC171(登録商標)は3M (St. Paul, Minnesota, USA)より市販されている非重合性フッ化炭素界面活性剤である。
【0118】
前記混合物をPGMEAに溶解し、45%w/w溶液とした。該溶液を、2000rpmの回転速度で、ラビングしたポリイミド基材上へスピンコーティングした。溶媒を環境温度で蒸発させ、フィルムを1分間70℃でアニールし、配向を促進させた。次に、該被覆を365nmの直線偏光UV光(UV光を色素タイプの(dye-type)偏光子を通過させることにより発生させた)に60秒間暴露し、その後窒素雰囲気中に置き、30mWcm2の365nmの直線偏光UV照射で10分間硬化させた。フィルムの位相差プロファイル(x軸はnmで表示した位相差、対するy軸は度で表示した視野角)を図10に表すが、同プロファイルが二軸性であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】感光性メソゲン化合物のUV照射に際しての形状の変化を例示的に図解した図である。
【図2】偏光UV光を用いてコレステリック材料を光重合することによる、本発明による二軸性フィルムの調製方法を図解した図である。
【図3】非偏光UV光での光重合による正弦コレステリックらせん(A)、および偏光UV光での光重合による歪んだらせん(B)の作製を図解した図である。
【0120】
【図4】従来技術による二軸性フィルムの調製方法(A)、従来技術による一軸性フィルムの調製方法(B)および本発明による二軸性フィルムの調製方法(C)を描く表した図である。
【図5】歪んでいない(A)および歪んだ(B)コレステリックらせんを有するコレステリック材料の屈折率楕円体を表した図である。
【図6】従来技術による(A、B)および本発明による(C)補償されたTN−LCDを図式的に表した図である。
【0121】
【図7】従来技術による(A)および本発明による(B)補償されたMVA−LCDを図式的に表した図である。
【図8】従来技術による(A)および本発明による(B)補償されたOCB−LCDを図式的に表した図である。
【図9A】液晶ディスプレイにおける本発明による二軸性フィルムのイン・セル使用を図式的に表した図である。
【図9B】液晶ディスプレイにおける本発明による二軸性フィルムのイン・セル使用を図式的に表した図である。
【図10】本発明の例1による二軸性フィルムの位相差プロファイル(位相差対視野角)を示した図である。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、光学的二軸性フィルム、その調製のための方法および材料、補償器(compensator)および液晶ディスプレイなどの光学デバイスでのその使用、および該二軸性フィルムを含む補償器および液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
背景および従来技術
光学補償器は、従来技術において、広視野角でのコントラスト比およびグレースケール表示などの、液晶ディスプレイ(LCD)の光学的な特性を改善するために用いられている。例えば、TNまたはSTN型の非補償型のディスプレイでは、広視野角においてしばしば、グレーレベルの変化、さらにはグレースケールの反転(grey scale inversion)、ならびにコントラストの消失および色域の望ましくない変化が観察される。
【0003】
LCD技術の概説およびLCDの光学補償の原理および方法はUS 5,619,352で与えられており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。US 5,619,352で述べられているように、広視野角のディスプレイのコントラストを改善するために負の複屈折のCプレート補償器を用いることができるが、しかしながら、かかる補償器はディスプレイのグレースケール表示を改善しない。一方、グレースケールの反転を抑制さらには解消し、かつグレースケールの安定性を改善するために、US 5,619,352は複屈折Oプレート補償器を用いることを提案している。US 5,619,352で記述されるOプレート補償器はOプレートを含み、付加的に1つまたは2つ以上のAプレートおよび/またはネガティブCプレートを含むことができる。
【0004】
US 5,619,352およびこの発明を通して用いられる「Oプレート」、「Aプレート」および「Cプレート」という用語は、以下の意味を有する。「Oプレート」は、層の平面に関して傾斜した(oblique)角度に配向された主光軸を有する、正の複屈折の(例えば、液晶)材料の層を利用した光学位相差板(optical retarder)である。「Aプレート」は、層の平面に平行に配向された異常軸(extraordinary axis)と、層の平面に垂直、すなわち、法線入射光の方向に平行に配向された通常軸(ordinary axis)(「a軸」とも呼ばれる)を有する、一軸性の複屈折の材料の層を利用した光学位相差板である。「Cプレート」は、層の平面に垂直な、すなわち、法線入射光の方向に平行な異常軸(「c軸」とも呼ばれる)を有する一軸性の複屈折の材料の層を利用した光学位相差板である。
【0005】
従来技術において、負の複屈折のCプレート位相差板は、例えばUS 5,196,953で記述されているように、例えば等方性ポリマーの一軸性の圧縮されたフィルムから、無機薄膜の蒸着により、または負の複屈折の液晶材料から調製されてきた。しかしながら、延伸したまたは圧縮したポリマーフィルムはしばしば中程度の複屈折しか示さず、高程度のフィルム厚を必要とし、蒸着は複雑な製造工程を必要とし、および負の複屈折の液晶材料はしばしば容易に入手できず、正の複屈折の材料よりも高価である。
【0006】
前記の不利益を回避するために、例えばWO 01/20393およびWO 01/20394において、典型的には電磁スペクトルのUV領域でのブラッグ反射バンドを有する、短ピッチのコレステリック液晶フィルムを用いることが最近提案されている。かかるフィルムは、その最大反射よりも大きな波長で負の複屈折を有するCタイプの位相差(retardation)を示す。このタイプのフィルムの屈折率楕円体は、負の複屈折を有する垂直に配向した液晶のものと類似する。かかる位相差フィルムは、例えば、TN−LCDのホメオトロピックに駆動された(homeotropically driven)暗状態における軸外の(off-axis)位相差を解消するのに用いることができる。
【0007】
WO 01/20393は、平面Aプレート、OプレートおよびネガティブCプレートを組み合わせた補償器を開示し、ここで、ネガティブCプレートは短ピッチのコレステリックLCフィルムを含む。例えばTN−LCDで使用されるとき、この組み合わせは、水平な視野角での優れたコントラストを提供し、色域の望ましくない変化を低減する。しかしながら、垂直な視野角でのその性能は限定されている。さらに、複数の位相差フィルムの使用は高価であり、製造上の問題および耐及性の問題をもたらす。
【0008】
本発明の1つの目的は、LCDの補償器として改善された性能を有し、製造が、特に大量生産のために容易であり、上述の従来技術の補償器の欠点を有しない光学補償器を提供することである。本発明のもう1つの目的は、その調製のための改善された方法を提供することである。本発明の他の目的は、以下の詳細な説明から当業者に直ちに明らかである。
【0009】
本発明者らは、複数のフィルムを単一の層に組み合わせ、二軸性Cプレート位相差板を用いることにより、上述の問題を解決することができ、より優れた性能を有する光学補償器を得ることができることを見出した。二軸性ネガティブCプレート位相差板は、光学的性質において平面AプレートおよびネガティブCプレートの組み合わせに類似するが、かかる組み合わせよりもより良好な光学的性能を示すことが見出された。二軸性ネガティブCプレート位相差板(Δnxy)の面内異方性はAプレートに類似し、面外異方性(ΔnxzおよびΔnyz)はネガティブCプレートに類似する。シミュレーションにより、二軸性ネガティブCプレート位相差板の光学的性能は、AプレートおよびネガティブCプレートを順に重ねたものの性能より驚異的に優れており、液晶ディスプレイのための格別に良好な視野角性能を示すことが明らかとなった。さらに、2つの重ねたフィルムではなく、単一の二軸性フィルムの使用は、費用と製造の問題を低減する。
【0010】
さらに本発明者らは、感光性化合物および二色性光開始剤を含む重合性キラル液晶材料を用い、前記材料を偏光UV光で照射することにより、フィルムのある部分の感光性化合物の形状または構造の変化させ、そしてしたがって、複屈折の変化をもたらし、その後、これを重合によって凍結させることによる、該フィルムの新規かつ改善された調製方法を見出した。
【0011】
WO 03/01544は、楕円屈折率の変形したらせん構造を有するコレステリック二軸性フィルム、および二色性光開始剤を含む重合性コレステリック液晶材料からのかかるフィルムの調製方法を開示している。しかしながら、本特許請求の範囲に記載された方法および感光性化合物を含む材料から得られる、異なる複屈折の二軸性フィルムは開示していない。
【0012】
US 6,685,998は、透明な基材(substrate)と棒状液晶分子から形成されるフィルムとを含む補償器を開示し、ここにおいて、該フィルムは3つの異なる主屈折率を有し、液晶分子がコレステリック配向で配向されている。しかしながら、本特許請求の範囲に記載された方法および材料から得られる、UV領域で反射し、周期的に変化する複屈折を有する二軸性コレステリックフィルムを開示していない。
【0013】
用語の定義
「光反応性」、「感光性」および「光反応」という用語は、限定せずに、光異性化、光誘発性2+2付加環化、光フリース転位(photo-fries arrangement)、または類似の光崩壊過程を含む反応により、光照射に際してその構造または形状が変化する化合物を指す。光重合反応はこれらの意味に含まれない。しかしながら、本発明において解説する光反応性または感光性化合物は、加えて、重合性または光重合性であることもできる。
【0014】
「フィルム」という用語は、堅いまたは柔軟な、機械的安定性を有する自己支持性または自立性のフィルム、ならびに支持基材上のまたは2つの基材の間の被覆または層を含む。
「液晶またはメソゲン材料」または「液晶またはメソゲン化合物」という用語は、1つまたは2つ以上の棒状、板状、または円盤状のメソゲン基、つまり液晶(LC)相挙動を誘導する能力を有する基を含む材料または化合物を意味する。棒状または板状の基を伴うLC化合物は、当該技術分野で「カラミティック」液晶としても知られている。円盤状の基を伴うLC化合物は、当該技術分野で「ディスコティック」液晶としても知られている。メソゲン基を含む化合物または材料は、必ずしもそれ自体が液晶相を示す必要はない。他の化合物との混合物であるとき、またはメソゲン化合物または材料、あるいはその混合物が重合されているときのみにLC相挙動を示すことも可能である。
【0015】
単純化のために、「液晶材料」という用語は、以降、メソゲン材料およびLC材料の両方について用いる。
1つの重合性基を伴う重合性化合物はまた「単反応性(monoreactive)」化合物とも称し、2つの重合性基を伴う化合物はまた「二反応性(direactive)」化合物とも称し、2つより多い重合性基を伴う化合物はまた「多反応性(multireactive)」とも称する。重合性基を伴わない化合物はまた、「非反応性(non-reactive)」化合物とも称する。
【0016】
「反応性メソゲン(reactive mesogen)」(RM)という用語は、重合性のメソゲンまたは液晶化合物を意味する。
「ダイレクター(director)」という用語は従来技術において知られており、LC材料における、メソゲン基の分子長軸(カラミティック化合物の場合)または分子短軸(ディスコティック化合物の場合)の好ましい配向方向を意味する。
一軸性の正の複屈折のLC材料を含むフィルムにおいて、光軸はダイレクターによって与えられる。
【0017】
「コレステリック構造」または「ねじれらせん構造」という用語は、LC分子を含むフィルムであって、ダイレクターがフィルム平面に平行であり、フィルム平面に垂直な軸のまわりでらせん状にねじれているものを指す。
「ホメオトロピック構造」または「ホメオトロピック配向」という用語は、光軸がフィルム平面に実質的に垂直であるフィルムを指す。
「平面構造」または「平面配向」という用語は、光軸が実質的にフィルム平面と平行であるフィルムを指す。
【0018】
「傾斜構造」または「傾斜配向」という用語は、光軸がフィルム平面に対して0〜90°の間の角度θで傾斜しているフィルムを指す。
「スプレイ(splayed)構造」または「スプレイ配向」という用語は、チルト角がフィルム平面に対して垂直な方向で、好ましくは最小値から最大値まで変化する、上記で定義した傾斜配向を意味する。
【0019】
平均チルト角θaveは以下のように定義する。
【数1】
式中、θ’(d’)はフィルム中の厚さd’での局所チルト角(local tilt angle)であり、dはフィルムの合計の厚さである。
以降、スプレイフィルム(splayed film)のチルト角は、他に記載がなければ、平均チルト角θaveとして与えられる。
【0020】
単純化のために、ねじれ、平面、ホメオトロピック、傾斜もしくはスプレイ配向または構造を有する光学フィルムはまた、以降それぞれ、「ねじれフィルム」「平面フィルム」、「ホメオトロピックフィルム」、「傾斜フィルム」または「スプレイフィルム」とも呼ぶ。
傾斜およびスプレイフィルムはまた、「Oプレート」とも呼ぶ。平面フィルムはまた、「Aプレート」または「平面Aプレート」とも呼ぶ。
【0021】
「Eモード」は、ディスプレイセルに入るときに、入力偏光方向がLC分子のダイレクターと実質的に平行な、つまり異常(E、extraordinary)屈折率の、ねじれネマチック液晶ディスプレイ(TN−LCD)を指す。「Oモード」は、ディスプレイセルに入るときに、入力偏光がダイレクターに実質的に垂直な、つまり正常(O、ordinary)屈折率の、TN−LCDを指す。
【発明の開示】
【0022】
発明の概要
本発明は、変形した(または歪んだ)らせんと、らせん軸の方向で周期的に変化する局所複屈折とを有する、らせん状にねじれた構造を伴う異方性材料を含む、光学的二軸性フィルムに関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の二軸性フィルムの調製方法に関する。
【0023】
本発明はさらに、本明細書に記載の二軸性フィルムの、例えば液晶ディスプレイなどの光学デバイスでの位相差または補償フィルムとしての使用に関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の二軸性フィルムを含む補償器に関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の補償器または二軸性フィルムを含む液晶ディスプレイに関する。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明による二軸性フィルムを含む補償器をLCDに用いると、ディスプレイの広視野角でのコントラストおよびグレーレベルの表示が大幅に改善され、グレースケールの反転が抑制される。カラーディスプレイの場合、色の安定性は大幅に改善され、色域の変化は抑制される。さらに、本発明による補償器は特に大量生産に適している。
【0025】
特に好ましいのは、nx≠ny≠nzおよびnx,ny>nzである光学的二軸性の負のC対称を有する位相差フィルムであり、式中nxおよびnyはフィルム平面における直角方向の主屈折率であり、nzはフィルム平面に垂直な主屈折率である。
【0026】
本発明による二軸性フィルムは、好ましくは400nm未満の波長の円偏光光を反射する。特に好ましいのは、UV領域またはUV領域より下の光、好ましくは380nmより下の波長の光を反射する二軸性フィルムである。さらに好ましいのは、400nmまたはこれより高い波長の光に対して、好ましくは380nmまたはこれより高い光に対して実質的に透明な二軸性フィルムである。非常に好ましくは、二軸性フィルムは380〜少なくとも780nmの波長の可視光に対して実質的に透明である。
【0027】
二軸性フィルムの厚さは、好ましくは0.5〜5μmであり、非常に好ましくは1〜3μmである。
本発明による二軸性フィルムの軸上の(on axis)位相差(すなわち0°の視野角での)は、好ましくは60nm〜400nmであり、特に好ましくは100nm〜350nmである。他の好ましい態様において、二軸性フィルムは好ましくは10〜200nm、非常に好ましくは20〜150nmの位相差を有する。
【0028】
一部のLCD用途のためには、二軸性フィルムは入射光の波長の約0.25倍の位相差を示すことが好ましく、従来技術において四分の一波長位相差フィルム(QWF)またはλ/4プレートとしても知られている。かかる用途のために特に好ましいのは、90〜200nm、好ましくは100〜175nmの位相差値である。
他のLCD用途のためには、二軸性フィルムは入射光の波長の約0.5倍の位相差を示すのが好ましく、従来技術において半波長位相差フィルム(HWF)またはλ/2プレートとしても知られている。かかる用途のために特に好ましいのは、180〜400nm、好ましくは200〜350nmの位相差値である。
【0029】
好ましくは、二軸性フィルムは(変形した)コレステリック構造を示す。可視光より下の、380nmよりも好ましくは小さい反射波長を達成するために、かかる二軸性フィルムのコレステリックらせんのらせんピッチは、好ましくは225nmより下から選択する。
フィルムは、好ましくはキラル重合性メソゲンまたは液晶(LC)材料、特に好ましくはコレステリック相の重合性LC材料から調製される。
【0030】
重合性LC材料は、好ましくは基材上に薄いフィルムとして被覆され、そこでコレステリックらせんがフィルムの平面に実質的に垂直な平面配向をとる。任意に、重合性LC材料の平面配向への配向は、付加的な手段または技術により、例えば界面活性剤などの配向剤を添加すること、または配向膜で基材を処理することおよび/または基材または配向膜をラビングすることなどにより補助する。適する手段および技術は、当業者に既知である。キラル化合物の量およびらせんねじれ力(HTP)は、好ましくはコレステリック材料が短いピッチおよび<380nmの反射波長を有するように選択される。
【0031】
前記材料は、好ましくは一官能性、二官能性または多官能性の重合性化合物および非重合性化合物から選択されるモノマー化合物の混合物である。1つまたは2つ以上の前記化合物は、らせんねじれコレステリック構造を誘発するキラル化合物である。また、前記化合物の1つまたは2つ以上は、好ましくは5〜100重量%までの量であり、例えばケイ皮酸エステル(cinnamate)ベースのLCまたはRMにおけるものなどのような、光反応性または感光性化合物である。前記感光性化合物は、例えばUV光で照射されると、図1で例示的に描かれているような、形状および/または屈折率の変化を示す。これは、コレステリックらせんの選択された部位で局所的に複屈折の変化を導く。
【0032】
配向したコレステリック材料の光照射に際して、感光性化合物(1種または2種以上)は、上記のように、異なる複屈折を有する形態へと変換される。材料が偏光光で照射されると、LCダイレクターが偏光光の方向に沿っているらせんの領域のみが光反応を起こし、このようにしてこれらの範囲のみで複屈折が低減する。
【0033】
同時に、(UV)光開始剤(1種または2種以上)が重合過程を開始し、これによりらせん構造を「固定化する」一方、感光性材料を、らせん中での部位に応じて、高いまたは低い複屈折の状態に「閉じ込める」。このようにして、らせん構造は一様のままであるが、複屈折はらせんを通して局所的に異なり、二軸性の光学フィルムとなる。
【0034】
重合性LC材料は、さらに、1つまたは2つ以上の二色性または液晶光開始剤、好ましくはUV光開始剤を含むことを特徴とする。二色性光開始剤は、液晶ダイレクターと平行なUV吸収軸で局所的に配向する。偏光UV光で照らされると、図2に示すとおり、局所のダイレクターが偏光の方向(E)と平行に位置する部位で、重合開始フリーラジカルを産生する。
【0035】
不均一なフリーラジカル産生により、主に二官能性または多官能性の重合性化合物などの高反応性成分の、局所的な重合が結果として起こる。このことにより、図3Bで示すように、らせんの半回転の中に、高反応性成分および低反応性成分の間の濃度勾配が結果として生じる。
高度に反応性の成分は、ダイレクターがEフィールド(E-field)(フリーラジカルの最大濃度)と平行に位置する場所で濃縮されるようになり、一官能性の重合性化合物または非重合性化合物などのより反応性の低い成分は、ダイレクターがEフィールドに垂直である場所で濃縮されるようになる。キラル成分の局所的な変化のため、正弦らせん(sinusoidal helix)の歪みが結果として起こる(本明細書中では、「歪んだ」または「変形した」らせんともいう)。
【0036】
光照射量、例えば照射強度および/または暴露時間、を変化させることにより、異性化の程度およびしたがって二軸性フィルムの最終的な位相差を変化させることができる。
【0037】
直線偏光された光照射の偏光方向を変化させることにより、二軸性フィルムの遅軸の方向を制御することが可能である。「遅軸」は最も高い屈折率の方向に対応し、例えばnx>ny>nzであるフィルムにおいて、遅軸の方向はnxの方向である(フィルム平面において)。例えば、直線偏光UV光による照射は、直線偏光子(例えば、市販の色素ドープ吸収偏光子(dye-doped absorption polarizer))を通してUV光を通過させることにより達成することができる。結果物の二軸性フィルムにおける遅軸の方向は、したがって、偏光子の透過軸(transmission axis)の方向に一致する。偏光子を回転させることにより、遅軸の方向をこのようにして制御することできる。
【0038】
長ピッチCLCポリマーにおいて歪んだらせんを達成する方法が、D. J. Broer et al., Adv. Mater. 1999, 11(7), 573-77に開示されている。しかしながら、Broer et al.は、UV領域の反射波長を有するコレステリックフィルムを開示していない。
【0039】
図4は、本発明の二軸性コレステリックフィルムにおけるらせん構造(C)を、WO 03/054111に記載された従来技術の二軸性コレステリックフィルムにおけるらせん構造(A)、および従来技術の一軸性コレステリックフィルムにおけるらせん構造(B)と比較して、図式的に表している。
図4Aの二軸性フィルムは、二色性光開始剤を含む重合性コレステリック材料から、WO 03/054111に記載のとおりに、直線偏光光での照射により得る。この処理の結果として、二軸性フィルムは変形したらせん構造を有するが、複屈折の局所的な変化を示さない。
【0040】
重合性コレステリック材料の非偏光光での照射により、フィルムにおける複屈折の全体的な低減、そしてしたがって図4Bに表すような光学的一軸性フィルムがもたらされる。
これに対して、本発明による処理により得られる図4Cのフィルムは、変形したらせん、および高複屈折領域(1)および低複屈折領域(2)で周期的に変化する複屈折率を有する。
【0041】
本発明による二軸性フィルムにおいて、らせんピッチは可視波長より十分下の値に縮小し、そのために平均的な方向性の屈折率(average directional refractive indice)のみが経験される。結果として、ブラッグ反射バンドが光のUV領域で起こり、そのため、フィルムは光の可視波長に対して透明であり、これらの可視波長に対して純粋に位相差板として機能する。二軸性フィルムにおけるらせんの歪みは、図5Bに示すような楕円形で円盤状の屈折率楕円体をもたらし、これに対し、従来技術のフィルムにおける歪んでいないらせんでは、図5Aに示すように円形で円盤状の楕円体となる。対照的に、従来技術、例えばBroer et al., Adv. Mater. 1999, 11(7), 573-77で報告されたような、より長いピッチのフィルムは、可視波長に関しては、偏光反射体またはカラーフィルターとして機能する。
【0042】
従来技術のコレステリックフィルムにおける短ピッチの正弦(つまり、歪んでいない)らせんは、図5Aの円盤状の屈折率楕円体によって示されるように、負の有効複屈折(effective birefringence)(Δnz−xy)をもたらす。面内の屈折率は等しく(nx=ny)、面外の率(nz)よりも大きい。これは光学的一軸性の、負のCタイプ構造をもたらす。対照的に、本発明による短ピッチコレステリックフィルムにおいては、らせんの歪みのために、負のCタイプ構造において付加的な面内異方性(Δnx−y)が生じ、結果として、nx≠ny≠nzでnxおよびnyがnzよりも大きい、二軸性の負のCタイプの対称性を有する、図5Bに示される屈折率楕円体を生じる。
【0043】
このようにして、可視スペクトルの波長の直線偏光光に対する位相差板として作用し得る、光学的二軸性の負のCタイプの対称性を有するコレステリックフィルムを作製することができる。
代替的に、本発明による製法は、第一の工程で、重合を、非偏光光、好ましくは非偏光UV光での照射によりポリマーらせんを固定化して成し遂げ、第二の工程で、らせん構造の選択された部位の複屈折を、偏光光、好ましくは偏光UV光での照射により成し遂げるようにして実行することができる。
【0044】
光反応および光重合を同時に実行することもまた可能である。
本明細書に記載した光重合の代わりに、重合性キラルメソゲン材料は、例えば既知の方法によるまたは既知の方法に類似した熱重合などの他の技法によっても重合することができる。
【0045】
本発明の別の目的は、本明細書に記載した二軸性位相差フィルムの製造方法、好ましくは下記の工程を含む製法である:
A)少なくとも1つの感光性化合物、少なくとも1つのキラル化合物および少なくとも1つの重合性化合物(ここで、これらの化合物は同一であってもまたは異なっていてもよい)、および少なくとも1つの二色性光開始剤を含む、キラルな重合性メソゲン材料の層を基材上に提供する工程であって、基材上で、前記層が平面配向に配向するか、またはこれを任意に平面配向に配向させる工程、
B)材料を、直線偏光光、好ましくは直線偏光UV光で照射し、材料の選択された領域で感光性化合物(1種または2種以上)の光反応を誘発する工程、
C)キラルなメソゲン材料を重合する工程、
D)任意に基材から重合した材料を取り外す工程。
【0046】
本発明はさらに、工程C)を工程B)の前または同時に実行する、上記の製法に関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の製法により得ることができるまたはこれにより得られたコレステリック構造の二軸性フィルムに関する。
【0047】
パターン化二軸性フィルム
本発明はさらに、変形したらせん構造を有し、かつ、異なる複屈折の少なくとも2つの領域を含むか、または異なる複屈折を有する2つまたは3つ以上の領域のパターンを含む、光学的二軸性フィルムに関する。複屈折の変化は、フィルムの異なる領域で位相差の変化をもたらす。
【0048】
かかるフィルムは、重合性混合物の選択した部位だけを、例えばフォトマスクを用いることにより、光照射に暴露する、または重合性混合物の異なる部位を、例えば異なる領域が異なる光照射透過性を有する遮光フォトマスク(shaded photomask)を用いることにより、または可変強度の照射源を用いることにより、異なる強度の光照射に暴露する、上記の方法により製造することができる。
【0049】
特に好ましいのは、異なる位相差値を有する、1つまたは2つ以上の、好ましくは1つ、2つまたは3つの異なる領域のパターンを含む本発明による二軸性フィルムであり、前記値の各々は、直線偏光光を、円偏光光に変換する能力が、赤、緑および青(R、G、B)の原色の1つの光について最適化されるように調節されている。特に、前記位相差値は以下のとおりである:
【0050】
600nmの波長の赤色光に対しては、位相差は、140〜190nm、好ましくは145〜180nm、極めて好ましくは145〜160nm、最も好ましくは150nmである。
550nmの波長の緑色光に対しては、位相差は、122〜152nm、好ましくは127〜147nm、極めて好ましくは132〜142nm、最も好ましくは137nmである。
【0051】
450nmの波長の青色光に対しては、位相差は、85〜120nm、好ましくは90〜115nm、極めて好ましくは100〜115nm、最も好ましくは112nmである。
フィルムの位相差は、例えば、異性化を起こさせる光照射の強度および/または持続時間を変化させることにより変化させることができる。
【0052】
好ましくは、パターン化二軸性位相差フィルムは、以下の工程を含む製法により調製する。
A)少なくとも1つの感光性化合物、少なくとも1つのキラル化合物および少なくとも1つの重合性化合物(ここで、これらの化合物は同一であってもまたは異なっていてもよい)、および少なくとも1つの二色性光開始剤を含む、キラルな重合性メソゲン材料の層を基材上に提供する工程であって、基材上で、前記層が平面配向に配向するかまたはこれを任意に平面配向に配向させる工程、
B)材料の選択された領域が異なるUV出力の量を受けるように、材料を、直線偏光光、好ましくは直線偏光UV光で、例えば、フォトマスクを介して照射して、選択された領域の感光性化合物が、選択されていない領域とは異なる程度の光反応を示すように、感光性化合物(1種または2種以上)の光反応を誘導する工程、
C)キラルなメソゲン材料を重合する工程、
D)任意に基材から重合した材料を取り外す工程。
【0053】
本発明による二軸性フィルムは、単独でまたは他の位相差フィルムと組み合わせて、補償器または位相差板として、特にLCDでの視野角補償のために用いることができる。
好ましくは前記二軸性フィルムは、Aプレート、CプレートおよびOプレート位相差板、または平面、ホメオトロピック、傾斜またはスプレイ構造を有する、異方性または液晶フィルムの群から選択した、付加的な位相差板との組み合わせで使用する。とりわけ好ましくは、前記二軸性フィルムは、傾斜またはスプレイ構造を有する、極めて特に好ましくはスプレイ構造を有する、少なくとも1つのOプレート位相差板と組み合わせて使用する。
【0054】
したがって、本発明はさらに、本明細書に記載の少なくとも1つの二軸性位相差フィルムを含み、および任意に、スプレイまたは傾斜構造の少なくとも1つのOプレート位相差板をさらに含む補償器に関する。
本発明による補償器に用いることができるOプレート位相差板およびその製造の適した例は、WO 01/20393に記載されており、その全開示は本明細書に参照により組み込まれる。
【0055】
偏光子および位相差板などの個々の光学フィルムは、互いに積層するか、または、例えばTACまたはDAC(トリまたはジアセチルセルロース)フィルムなどの接着層により結合することができる。
本発明の別の目的は、本明細書に記載の少なくとも1つの二軸性フィルムまたは補償器を含む液晶ディスプレイである。
【0056】
特に好ましくは、前記液晶ディスプレイデバイスは、以下の要素:
− 互いに対向する表面を有する2つの透明基材、前記2つの透明基材の少なくとも1つの内面に提供され、任意に配向膜と重ね合わされた電極層、および2つの透明基材の間に存在する液晶媒体により形成される液晶セル、
− 前記透明基材の外側に配置された偏光子、または前記基材をはさむ1組の偏光子、および
− 液晶セルと、少なくとも1つの前記偏光子との間に置かれた、本発明による少なくとも1つの二軸性フィルムまたは補償器
を含み、上記の要素は、分離したり、積み重ねたり、互いの上に乗せたり、または接着層により、これらの組立手段の任意の組み合わせで結合することができる。
【0057】
本発明による二軸性フィルムおよび補償器は、従来のディスプレイの、特にTN(ねじれネマチック)、HTN(高度(highly)ねじれネマチック)またはSTN(超ねじれネマチック)モードのディスプレイの、AMD−TN(アクティブマトリクス駆動TN)ディスプレイにおける、「スーパーTFT」ディスプレイとしても知られるIPS(インプレーンスイッチング)モードのディスプレイにおける、例えばECB(電気制御複屈折)、CSH(カラースーパーホメオトロピック)、VANまたはVAC(垂直配向ネマチックまたはコレステリック) ディスプレイなどの、DAP(配向相の変形(deformation of aligned phases))またはVA(垂直配向)モードのディスプレイの、ベンドモードのディスプレイまたはハイブリッド型ディスプレイ、例えばOCB(光学補償ベンドセルまたは光学補償複屈折)、R−OCB(反射型(reflective)OCB)、HAN(ハイブリッド配向ネマチック)またはパイセル(πセル)ディスプレイなど、または半透過型ディスプレイにおける補償のために用いることができる。
【0058】
特に好ましいのは、TN、STN、VA、MVA、OCBおよびパイセルディスプレイである。
以下で、本発明の好ましい態様による補償されたディスプレイを説明する。
下記のコンピューターシミュレーションは、層状の異方性媒体のためのBerremanの4×4行列法を用いて行った。
【0059】
ねじれネマチック(TN)モード
図6Aおよび図6Bは、オフ状態でねじれネマチック配向のネマチック液晶混合物を有するLCセル、セルのそれぞれの側に平面Aプレート、(一軸性)ネガティブCプレートおよびスプレイOプレートを含む補償器、およびセルおよび補償器を挟む、偏光軸が直角に交差する2つの偏光子を含む、従来技術による補償されたTNディスプレイを示す。
図6Cは本発明の第一の好ましい態様による補償されたTNディスプレイを例示的に示し、ここで、補償器は、図6Aおよび図6Bと比較して、別々のAプレートおよびネガティブCプレート位相差板の代わりに、本発明による単一の二軸性ネガティブCフィルムを含む。
【0060】
コンピューターシミュレーションは、ある構成において、図6Cに示す補償器が、TNディスプレイの光学的な性能を明白に改善することを示した。補償器の構成は、導波モード(OモードまたはEモード)およびスプレイフィルムおよび二軸性フィルムの相対的な位置に依存する。モデリングにより、単一の二軸性フィルムに加えてスプレイフィルムを含む図6Cによる補償器で達成される光学的な性能は、スプレイフィルムとともに順次積み重ねた、別々のAプレートおよびネガティブCプレートを含む、図6Aまたは6Bによる補償器で達成される性能よりも明白に良いということも示された。
【0061】
例えば図6Cに示す補償スタック(compensation stack)において、本発明の二軸性フィルムの方向性屈折率(directional refractive indice)の比は、その大きさよりも重要である。例えば、nx=1.65、ny=1.60およびnz=1.50の二軸性フィルムの場合、優れたコントラストはフィルム厚1200nmで達成できる。
しかしながら、例えば、実質的に同じ光学的性能を有するフィルムを得るために、例えば、面内異方性および面外異方性(ΔnyzおよびΔnxy)を係数倍減少させ、かつ同じ係数倍フィルムの厚さを増加させることもまた可能である。この方法は、本発明による二軸性フィルムに適用できる。
【0062】
マルチドメイン垂直配向(MVA)モード
コンピューターシミュレーションにより、MVAモードのディスプレイをネガティブCプレートおよびAプレートを用いて補償し、80°の角度まで全ての視野方向において10:1のコントラスト比を達成できることが示された。このタイプの補償はまた、軸外の色のウォッシュアウト(off-axis colour washout)を低減し、カラー性能も改善する。
図7Aは、オフ状態でホメオトロピック配向のネマチック液晶混合物のLCセル、LCセルの一方の面に(一軸性)ネガティブCプレートと平面Aプレートとを含む補償器、およびセルおよび補償器を挟む、直角に交差する偏光軸を有する2つの偏光子を含む、補償されたMVAディスプレイを示す。
【0063】
図7Bは、本発明の第二の好ましい態様による補償されたMVAディスプレイを例示的に示し、これは、2つの交差する偏光子にはさまれた、ホメオトロピックLCセルと、該LCセルの一方の面上の本発明による二軸性ネガティブCフィルムとを含む。
前述のとおり、ネガティブCプレートとAプレート(平面フィルム)との組み合わせは、二軸性ネガティブCフィルムに近似させることができる。図7Bに示す、単一の二軸性ネガティブCフィルムのMVAモードのディスプレイへの適用は、驚くことに、図7Aに示す、別々に適用したフィルムと比較して改善されたコントラストをもたらした。
【0064】
OCBまたはパイセルモード
図8Aは、オフ状態で標準的なOCB配置(ホモジニアスなエッジ配向(edge alignment)およびベンド構造)のネマチック液晶混合物を有するLCセル、LCセルのそれぞれの面上の、平面Aプレートと(一軸性)ネガティブCプレートとを含む補償器、および偏光軸が直角に交差する、セルおよび補償器をはさむ2つの偏光子、を含む補償されたOCBモードのディスプレイを示す。
【0065】
図8Bは、本発明の第3の好ましい態様による補償されたOCBディスプレイを例示的に示し、これは、2つの交差する偏光子に挟まれた、ベンド構造のLCセルと、該LCセルのそれぞれの面上の本発明による二軸性ネガティブCフィルムと含む。
コンピューターシミュレーションにより、図8Bに示す単一の二軸性ネガティブCフィルムを用いて、図8Aに示す分離したAプレートおよびネガティブCプレートを置き換え、スタックにおける異なるフィルムの数を減らしながら同等の光学的性能を得ることができることが示された。
【0066】
イン・セルでの使用
さらに好ましい態様において、本発明による二軸性フィルムは、LCDにおける光学位相差フィルムとして、ディスプレイの切り替え可能なLCセルの外側でなく、切り替え可能なLCセルを形成し、切り替え可能なLC媒体を含む基材、通常はガラス基材の間に用いられる(イン・セル適用(incell application))。
【0067】
光学位相差板が、通常、LCセルと偏光子との間に位置する従来のディスプレイと比較して、光学位相差フィルムのイン・セル適用は複数の利点を有する。例えば、光学フィルムがLCセルを形成するガラス基材の外側に付着しているディスプレイは、通常、視差の問題を生じ、これは視野角特性をひどく損ない得る。位相差フィルムをLCディスプレイセルの内部に調製すると、前記視差の問題を軽減し、さらには回避することができる。
【0068】
さらに、光学位相差フィルムのイン・セル適用は、LCDデバイスの合計の厚さを低減することができ、このことはフラットパネルディスプレイにとって重要な利点である。しかも、ディスプレイはより頑強になる。イン・セル適用で特に有利なのは、本発明による重合性LC材料を含むフィルムであり、これは、該LC材料の複屈折が、例えば延伸プラスチックフィルムと比較してより高いために、フィルムをより薄くすることができるからである。したがって、2ミクロンまたはこれ未満の厚さを有するフィルムを用いることができ、これはイン・セル適用に特に好適である。
【0069】
したがって、本発明はさらに、
− 少なくとも1つが入射光に対して透明である、2つの平行な基材平面、前記2つの透明な基材の少なくとも1つの内側に提供され、任意に配向膜に重ね合わされる電極層、および前記2つの基材の間に存在し、電界の適用により少なくとも2つの異なる状態の間で切り替え可能な液晶媒体により形成される液晶セル、
− 液晶セルの1つの面上の第一の直線偏光子、
− 任意に、前記第一の直線偏光子と反対側の液晶セルの面上の第二の直線偏光子、
を含むLCDであって、
該LCDが、前記液晶セルの2つの平行平面基材の間に位置する本明細書に記載の少なくとも1つの二軸性フィルムを含むことを特徴とするLCDに関する。
【0070】
前記態様による好ましいLCDは、
− 以下の要素:
− 互いに平行な第一および第二の基材平面であって、前記の少なくとも1つが入射光に対して透明であるもの、
− 前記LCセルの個々のピクセルの個別の切り替えに使用できる、前記基材の1つに設けられた非線形電気要素のアレイであって、前記要素が、好ましくはトランジスタなどのアクティブな要素であり、極めて好ましくはTFTであるもの、
− 前記基材の1つ、好ましくは非線形要素のアレイを担持する基材に対向する基材に設けられた、原色である赤、緑、青(R、G、B)の1つを透過する異なるピクセルのパターンを有するカラーフィルターアレイであって、前記カラーフィルターが任意に平坦化層により被覆されているもの、
− 前記第一の基材の内面に設けられた第一の電極層、
− 任意に、前記第二の基材の内面に設けられた第二の電極層、
− 任意に、前記第一および第二の電極上に設けられた第一および第二の配向膜、
− 電界の適用により少なくとも2つの異なる配向の間で切り替え可能なLC媒体、
を含むLCセル、
−LCセルの第一の面上の、第一の(または「正面」)直線偏光子
−任意に、LCセルの第二の面上の、第二の(または「背面」)直線偏光子、および
−本明細書に記載の少なくとも1つの二軸性フィルム、
を含み、
前記二軸性フィルムが、LCセルの第一の基材と第二の基材との間、好ましくはカラーフィルターと液晶媒体との間、極めて好ましくはカラーフィルターと前記電極層の1つとの間、または平坦化層が存在する場合は平坦化層と前記電極層の1つとの間に位置することを特徴とする。
【0071】
この好ましい態様によるLCDは図9Aに例示的に表されており、該LDCは、2つの基材(11a、11b)、TFTアレイ(12)、カラーフィルターアレイ(13a)、任意に平坦化層(13b)、電極層((14)および任意に(15))、任意に2つの配向膜(16a、16b)、LC媒体(17)、および前記平坦化層とLC媒体との間に位置し、任意に別の配向膜(16c)上に設けられた、本発明による二軸性フィルム(4)を含む。ディスプレイモードに依存して、平坦化層(13a)、配向膜(16a)および/または(16b)、および電極層(14)および(15)の1つを除いてもよい。好ましくは、配向膜(16c)が、光学位相差フィルム(4)と平坦化層 (13b)との間に存在する。
【0072】
二軸性フィルム(4)を、直接(つまり中間層の存在なしに)カラーフィルターアレイ(13a)上に、平坦化層(13b)の存在なしに配置し、光学位相差フィルムが平坦化層としての役割を果たすようにすることもできる。光学位相差フィルム(4)を、カラーフィルターアレイ(13a)と平坦化層(13b)との間に配置することもまた可能である。好ましくは、配向膜(16c)が、光学位相差フィルム(4)とカラーフィルター(13a)との間に存在する。
【0073】
特に好ましくは、二軸性フィルムは、ディスプレイセル内部のカラーフィルター(13a)または平坦化層(13b)上に直接調製し、すなわち、任意に配向膜で被覆されたカラーフィルターまたは平坦化層は、LCフィルム調製のための基材としての役割を果たす。
第一および第二の偏光子は、LCセルの外側に、LCセルを挟むように適用することができる。あるいは、1つまたは両方の偏光子をLCセルの内側にLC媒体を挟むように適用することができる。例えば、図9Bに示すディスプレにおいて、2つの偏光子(18)および(19)は、LCセルを形成する基材(11a、11b)の内面に適用されている。理想的には、偏光子は、カラーフィルターまたはTFTの適用前に、基材の内面に直接適用する。
【0074】
イン・セル用途に特に好適で好ましいのは、例えばEP 0 397 263 AまたはEP 1 132 450 Aに記載の、二色性色素を含む重合または架橋液晶材料を含む直線偏光子である。
カラーフィルター(13a)として、フラットパネルディスプレイ用の、従来技術で知られる任意の標準的なカラーフィルタを用いることができる。かかるカラーフィルターは、典型的に原色である赤、緑および青(R、G、B)の1つを透過する異なる画素のパターンを有する。
【0075】
特に好ましいのは、マルチプレックスまたはマトリックスディスプレイ、極めて好ましくはアクティブマトリックスディスプレイである。
別の好ましい態様は、3つの異なる位相差の領域または画素のパターンを有する二軸性フィルムに関し、これらの領域の位相差値は、それぞれの領域または画素における、直線偏光光を円偏光光へ変換する効率がR、GおよびBの色の1つに対して最適化されるように調整され、これは、好ましくはカラーフィルターのR、G、B画素のそれぞれが、その色について最適化された位相差を有する二軸性フィルムの対応する画素により被覆されるように、カラーフィルター上に配置される。
【0076】
例えば、カラーフィルターの青(B)の画素の450nmの波長、緑(G)の画素の550nmの波長および600nmの赤(R)の画素の600nmの波長の約1/4にそれぞれ対応する、約112nm、137nmおよび150nmの位相差を有する3種類の画素を有する画素化された二軸性QWFを構築することができる。画素化されたHWFは、同様に調製することができる。対照的に、画素化していないフィルムはディスプレイの全てのエリアについて平均的な一様の特性のみを提供する。
【0077】
代替的にまたはRGBパターンに加えて、二軸性フィルムは、QWF(またはHWF)の位相差を有するエリアおよび別の位相差、例えばゼロ位相差を有するエリアのパターンを有することができる。前記のパターン化フィルムは、パターン化半透過型ディスプレイ、例えばWO 03/019276 A2またはvan der Zande et al., SID Digest 14.2, 2003, page 194-197、S. Roosendaal et al., SID Digest 8.1, 2003, page 78-81およびM. Kubo et al., Proccedings of the IDW 1999, page 183-186に記載されたホールインミラー(hole-in-mirror)型の半透過型ディスプレイにおける補償器として特に適する。
【0078】
本発明によるパターン化していない二軸性フィルムは、LCD、例えばVAまたはMVA型のLCD用に、典型的には25〜60nmの位相差を有するイン・セルフィルムとして用いることもできる。
本発明および上記の好ましい態様において、Aプレートは好ましくは平面構造の重合液晶材料のフィルムである。ネガティブCプレートは、好ましくは短ピッチのコレステリック構造およびUV領域での反射を有する重合液晶材料のフィルムである。Oプレートは、好ましくはスプレイ構造の重合液晶材料のフィルムである。しかしながら、従来技術で既知の他のAプレート、CプレートおよびOプレート位相差板を用いることも可能である。適したフィルムは例えばUS 5,619,352またはWO 01/20393に開示されている。
【0079】
本発明による二軸性フィルムは、混合物の反射波長が通常重合に用いられる光の波長(典型的には約365nm)より下になるように、かつ複屈折の局所変化が可能になるように作出した、重合性キラル液晶材料から調製することができる。これは、例えば、Bragg反射バンドをUVへと押しやる高いねじれおよび/または高い量の1つまたは2つ以上のキラル成分を加えることにより、および1つまたは2つ以上の感光性化合物を加えることにより達成される。
【0080】
加えて、本発明による混合物および材料により、フィルムの製造方法をプラスチック基材上での生産に適したものとすることが可能となり、硬化時間は5分未満であり、これは大量生産に特に適している。
重合性材料は、好ましくはキラルスメクチックもしくはキラルネマチック(コレステリック)LC相の、またはブルー相の液晶材料である。適したスメクチック材料は、例えばキラルスメクチックC相のLC材料を含む。
【0081】
特に好ましくは、重合性材料はコレステリックLC(CLC)材料である。好ましくは、これは1つまたは2つ以上のアキラル重合性メソゲン化合物および少なくとも1つのキラル化合物を含む。キラル化合物は、非重合性キラル化合物、例えば液晶混合物またはデバイスで用いられるキラルドーパントなどの、重合性キラル非メソゲンまたは重合性キラルメソゲン化合物から選ぶことができる。特に好ましいのは、高いらせんねじれ力を有するキラルドーパントであり、これは、これらが少量で用いられた場合でさえも、短ピッチCLC混合物をもたらすからである。
【0082】
特に好ましいのは、
a)少なくとも1つの重合性基を有する、少なくとも1つの重合性メソゲン化合物、
b)少なくとも1つのキラル化合物であって、重合性および/またはメソゲンであってもよく、また、成分a)および/もしくはc)の化合物の1つまたは追加の化合物であってもよいもの、
c)少なくとも1つの感光性化合物であって、重合性および/またはメソゲンであってもよく、また成分a)および/もしくはb)の化合物の1つまたは追加の化合物であってもよいもの、
d)1つまたは2つ以上の二色性光開始剤
を含み、かつ、以下の成分
e)1つ、2つまたは3つ以上の重合性基を有する1つまたは2つ以上の非メソゲン化合物
f)材料が光重合される場合には、光重合を開始させるのに用いられる波長で吸収極大を示す、1つまたは2つ以上の色素
g)1つまたは2つ以上の連鎖移動剤
h)1つまたは2つ以上の界面活性化合物
の1つまたは2つ以上を任意に含む、キラル重合性メソゲン材料である。
【0083】
本明細書に記載のキラル重合性メソゲンおよびLC材料は、本発明のもう1つの目的である。
好ましくは、アキラルおよびキラル化合物は異なる数の重合性基を有する。
本発明の好ましい態様において、重合性材料は、少なくとも1つの二官能性または多官能性キラル重合性メソゲン化合物および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む。
【0084】
本発明の別の好ましい態様において、重合性材料は、少なくとも1つの一官能性キラル重合性メソゲン化合物および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む。
別の好ましい態様において、重合性材料は、少なくとも1つの非重合性キラル化合物および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性重合性メソゲン化合物を含む。
【0085】
二官能性または多官能性重合性化合物が重合性材料中に存在する場合、ポリマーネットワークが形成される。かかるネットワークで作られる光学位相差フィルムは自己支持性であり、高い機械的および熱的安定性、およびその物理的および光学的特性の低い温度依存性を示す。
二官能性または多官能性化合物の濃度を変化させることにより、ポリマーフィルムの架橋密度およびそれゆえ、光学位相差フィルムの光学的特性の温度依存性、熱的および機械的安定性または耐溶剤性のためにも重要な、ガラス転移温度などのその物理的および化学的特性を容易に調整することができる。
【0086】
好ましい重合性LC混合物は、
− 0〜80%、好ましくは5〜50%の、2つまたは3つ以上の重合性基を有する1つまたは2つ以上のアキラルメソゲン化合物、
− 0〜80%、好ましくは5〜50%の、1つの重合性基を有する1つまたは2つ以上のアキラルメソゲン化合物、
− 1〜80%、好ましくは5〜50%の、1つまたは2つ以上の重合性キラルメソゲン化合物および/または1〜20%のメソゲンであってもよい1つまた2つ以上の非重合性キラル化合物、
− 5〜100%の、好ましくは1つまたは2つの重合性基を有する、1つまたは2つ以上の感光性メソゲン化合物
− 0〜15%、好ましくは0.01〜10%、極めて好ましくは0.05〜5%の、1つまたは2つ以上の光開始剤であって、このうち少なくとも1つは二色性、好ましくは液晶性光開始剤であるもの、
− 0〜10%の、1つまたは2つ以上の連鎖移動剤
− 0〜3%の、1つまたは2つ以上の非重合性または一官能性、二官能性もしくは多官能性の重合性界面活性剤。
【0087】
特に好ましいのは、棒状または板状のメソゲンまたは液晶化合物である。さらに好ましいのは、以下に示す式R1〜R23で表される化合物である。
本発明で用いられる重合性メソゲン一官能性、二官能性および多官能性重合性化合物を、自体公知の、例えば、Houben-Weyl, methoden der organischen Chemie, Thieme-Verlag, Stuttgartなどの有機化学の標準的な著作物に記載された方法によって調製することができる。
【0088】
本発明による重合性LC混合物においてモノマーまたはコモノマーとして用いることのできる適した重合性メソゲン化合物の例は、例えば、WO 93/22397、EP 0 261 712、DE 195 04 224、WO 95/22586、WO 97/00600およびGB 2 351 734に開示されている。しかしながら、これらの文献に開示されている化合物は、本発明の範囲を限定しない単なる例とみなす。
【0089】
特に有用なキラルおよびアキラル重合性メソゲン化合物の例は以下のものである。
【化1】
【0090】
【化2】
【0091】
【化3】
【0092】
【化4】
【0093】
上記式において、Pは重合性基であり、好ましくはアクリル、メタクリル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセタンまたはスチリル基であり、xおよびyは1〜12の同一のまたは異なる整数であり、Aは、L1により任意に1、2または3置換されている1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンであり、uおよびvは互いに独立して0または1であり、Z0およびX0は互いに独立して−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、NR’−CO−NR’−、−O−CO−NR’−、NR’−COO−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、R’はHまたは1〜6個のC原子を有するアルキルであり、R0は極性基または非極性基であり、Terは、例えばメンチルなどのテルペノイド基であり、Cholはコレステリル基であり、L、L1、およびL2は互いに独立してH、F、Cl、CNまたは任意にハロゲン化された1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ基であり、rは0、1、2、3または4である。上記式におけるフェニル環は、任意に1、2、3または4個の基Lで置換されている。
【0094】
ここで「極性基」という用語は、F、Cl、CN、NO2、OH、OCH3、OCN、SCN、任意にフッ素化された4個までのC原子を有するアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ基、または1〜4個のC原子を有するモノ、オリゴ、ポリフッ素化アルキルまたはアルコキシ基から選択される基を意味する。「非極性基」という用語は、1つまたは2つ以上、好ましくは1〜12個のC原子を有する、上記の「極性基」の定義によってカバーされていない、任意にハロゲン化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ基を意味する。
【0095】
適したキラルドーパントは、例えば市販のR−またはS−811、R−またはS−1011、R−またはS−2011、R−またはS−3011、R−またはS−4011、R−またはS−5011またはCB15(Merck KGaA, Darmstadt, Germany製)から選択することができる。極めて好ましいのは、高いらせんねじれ力(HTP)を有するキラル化合物であり、特にWO 98/00428に記載されたソルビトール基を含む化合物、GB 2,328,207に記載されたヒドロベンゾイン基を含む化合物、WO 02/94805に記載されたキラルビナフチル誘導体、WO 02/34739に記載されたキラルビナフチルアセタール誘導体、WO 02/06265に記載されたキラルTADDOL誘導体、およびWO 02/06196およびWO 02/06195に記載された、少なくとも1つのフッ素化された結合基(linkage group)および末端または中心キラル基を有するキラル化合物である。
【0096】
適した光反応性または感光性化合物は従来技術で既知である。これらは、例えば光照射に際して光異性化、光フリース転移または2+2−付加環化または他の光崩壊過程を示す化合物である。特に好ましいのは、光異性化化合物である。これらの化合物の例は、アゾベンゼン類、ベンズアルドキシム類、アゾメチン類、スチルベン類、スピロピラン類、スピロオキサジン類、フルギド類、ジアリールエテン類、ケイ皮酸エステル類を含む。さらなる例は、例えばEP 1 247 796に記載された2−メチレンインダンー1−オン類および例えばEP 1 247 797に記載された(ビス−)ベンジリデン−シクロアルカノン類である。
【0097】
特に好ましくは、LC材料は1つまたは2つ以上のケイ皮酸エステル、特に、例えばGB 2 314 839、EP 03007236.7、US 5,770,107またはEP 02008230.1およびこれらの対応する特許に開示された重合性メソゲンまたは液晶性ケイ皮酸エステルを含む。極めて好ましくは、LC材料は、以下の式から選択される1つまたは2つ以上のケイ皮酸エステルを含む:
【化5】
式中、P、A、Lおよびvは上記で与えられた意味を有し、Spは、スペーサー基、例えば1〜12個のC原子を有するアルキレン、アルキレン−オキシ、アルキレン−カルボニル、アルキレンオキシ−カルボニル、アルキレン−カルボニルオキシまたはアルキレンオキシ−カルボニルオキシ、または単結合であり、Rは上記で定義されるR0の意味を有するかP−Spを示す。
【0098】
特に好ましいのは、上記で定義した、極性末端基R0を含むケイ皮酸エステルRMである。極めて好ましいのは、Rが極性基R0である式IおよびIIのケイ皮酸エステルRMである。
さらに好ましいのは、キラル重合性ケイ皮酸エステル、例えばGB 2 314 839またはEP 03007236.7に記載されたキラルソルビトールケイ皮酸エステル、またはUS 5,770,107に記載されたキラル基を含むケイ皮酸エステルなどである。
【0099】
LC材料において光反応を起こすのに用いる光照射は、感光性化合物のタイプに依存し、当業者は容易に選択することができる。一般的に、UV照射により誘発される光反応を示す化合物が好ましい。例えば式III、IVおよびVなどのケイ皮酸エステル化合物に対しては、典型的に、UV−A領域(320〜400nm)の波長または365nmの波長のUV照射を用いる。
【0100】
コレステリックフィルムの調製のために、重合性LC材料は、好ましくは基材上に被覆または印刷し、一定の配向に配向させ、コレステリック構造を永久的に固定するために重合する。基材としては、例えば、ガラスもしくは石英のシート、またはプラスチックフィルムもしくはシートを用いることができる。第二の基材を被覆した混合物の上に、重合前および/または重合中および/または重合後に載せることもまた可能である。基材は、重合後に除去することも、除去しないこともできる。化学線による硬化の場合に2つの基材を用いるとき、少なくとも1つの基材は、重合に用いられる化学線に対して透過性でなければならない。等方性または複屈折基材を用いることができる。重合後基材を重合フィルムから除去しない場合、好ましくは等方性基材を用いる。
【0101】
好ましくは、少なくとも1つの基材は、プラスチック基材、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルのフィルム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)またはトリアセチルセルロース(TAC)のフィルム、特に好ましくはPETフィルムまたはTACフィルムである。複屈折基材としては、例えば一軸性延伸プラスチックフィルムを用いることができる。例えば、PETフィルムはDuPont Teijin FilmsよりMelinex(登録商標)という商品名で市販されている。
【0102】
重合性LC材料は、基材上にスピンコーティングまたはブレード塗工などの従来の被覆技術により適用できる。これはまた、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、リール・ツー・リール(reel-to-reel)印刷、レタープレス印刷、グラビア印刷、ロトグラビア(rotogravure)印刷、フレキソ印刷、凹版印刷、パッド印刷、ヒートシール(heat-seal)印刷、インクジェット印刷または刻印機または印刷板による印刷などの、当業者に既知の従来の印刷技法によっても基材に適用できる。
【0103】
重合性メソゲン材料を適した溶媒に溶解することもまた可能である。この溶液をその後、例えばスピンコーティングまたは印刷または他の既知の技法により、基材上に被覆または印刷し、重合化の前に溶媒を蒸発させる。ほとんどの場合、混合物を、溶媒の蒸発を促進させるために加熱することが適している。溶媒としては、例えば、標準的な有機溶媒を用いることができる。溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン類、例えば酢酸メチル、エチルまたはブチルまたはアセト酢酸メチルなどの酢酸エステル類、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール類、例えばトルエンまたはキシレンなどの芳香族溶剤類、例えばジ−またはトリクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、グリコール類、あるいは例えばPEGMA(プロピルグリコールモノメチルエーテルアセテート)、γ−ブチロラクトンなどのそのエステル類などから選ぶことができる。2成分、3成分またはそれより多い上記溶媒の混合物を用いることもまた可能である。
【0104】
LC材料の重合は、これを好ましくは熱または化学線に暴露することにより達成する。化学線は、UV光、IR光または可視光などの光での照射、X線またはガンマ線での照射、またはイオンまたは電子などの高エネルギー粒子での照射を意味する。好ましくは、重合は、光照射により、特にUV光により、特に好ましくは直線偏光UV光により行う。化学線源としては、例えば1つのUVランプまたはUVランプのセットを用いることができる。高いランプ出力を用いると、硬化時間を短縮することができる。他の可能な光照射源は、例えばUVレーザー、IRレーザーまたは可視光レーザーなどのレーザーである。
【0105】
重合は、好ましくは化学線の波長を吸収する開始剤の存在下で行う。例えば、UV光により重合するときには、UV照射下で分解し、重合反応を開始させるフリーラジカルまたはイオンを産生する光開始剤を用いることができる。UV光開始剤、特にラジカルUV光開始剤が好ましい。
【0106】
コレステリックフィルムにおいてらせんの歪みを得るために、重合性CLC混合物は、好ましくは、例えば液晶光開始剤などの二色性光開始剤を含有すべきである。LC光開始剤としては、例えばEP 03014990.0に開示された化合物の1つまたは以下の化合物を用いることができる。
【化6】
【0107】
二色性光開始剤に加えて、重合性混合物は1つまたは2つ以上の通常の光開始剤を含んでもよい。ラジカル重合のための標準的な光開始剤としては、例えば市販のIrgacure(登録商標)651、Irgacure(登録商標)184、Darocure(登録商標)1173またはDarocure(登録商標)4205(全てCiba Geigy AG製)を用いることができ、一方カチオン光重合の場合、市販のUVI 6974 (Union Carbide)を用いることができる。
【0108】
硬化時間は、とりわけ、重合性材料の反応性、被覆された層の厚さ、重合開始剤のタイプおよびUVランプの出力に依存する。本発明による硬化時間は、好ましくは10分より長くなく、特に好ましくは5分より長くなく、極めて特に好ましくは2分よりも短い。大量生産のためには、3分またはそれ未満、極めて好ましくは1分またはそれ未満、特に30秒またはそれ未満の短い硬化時間が好ましい。
【0109】
重合性LC材料は、例えば触媒、増感剤、安定剤、連鎖移動剤、阻害剤、促進剤、共反応モノマー、界面活性化合物、平滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤(hydrophobing agent)、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、助剤、着色剤、色素または顔料などの1つまたは2つ以上の他の適した成分をさらに含むことができる。
【0110】
混合物はまた、重合に用いる照射の波長に調整された吸収極大を有する、1つまたは2つ以上の色素、特に、例えば4,4’−アゾキシアニソールまたは市販のTinuvin(Ciba AG, Basel, Switzerland製)などのUV色素を含んでもよい。
別の好ましい態様においては、重合性材料の混合物は70%までの、好ましくは1〜50%の、1つの重合性官能基を有する1つまたは2つ以上の非メソゲン化合物を含む。典型的な例は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである。
【0111】
ポリマーの架橋を増加させるために、二官能性または多官能性重合性メソゲン化合物の代わりに、またはこれに加えて、2つまたは3つ以上の重合性官能基を有する1つまたは2つ以上の非メソゲン化合物を、重合性LC材料に20%まで加え、ポリマーの架橋を増加させることも可能である。二官能性非メソゲンモノマーの典型的な例は、1〜20個のC原子のアルキル基を有するアルキルジアクリレートまたはアルキルジメタクリレートである。多官能性非メソゲンモノマーの典型的な例は、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0112】
本発明のポリマーフィルムの物理的特性を改変するために、1つまたは2つ以上の連鎖移動剤を重合性材料に加えることもまた可能である。特に好ましいのは、例えばドデカンチオールなどの一官能性チオール化合物または例えばトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)などの多官能性チオール化合物などのチオール化合物であり、極めて好ましくは、例えばWO 96/12209、WO 96/25470またはUS 6,420,001に開示されるメソゲンまたは液晶性チオール化合物である。連鎖移動剤を加えると、本発明のポリマーフィルムにおける遊離ポリマー鎖の長さおよび/または2つの架橋間のポリマー鎖の長さをコントロールすることができる。連鎖移動剤の量を増加すると、得られたポリマーフィルムにおけるポリマー鎖長は減少する。
【0113】
コレステリックフィルムの調製のために、キラル重合性材料の平面配向を達成すること、つまりらせん軸をフィルム平面に対して実質的に垂直に配向させることが必要である。平面配向は例えば、例えばドクターブレードによって、材料をせん断することにより達成することができる。配向膜、例えばラビングしたポリイミドまたはスパッタリングしたSiOxの層を、少なくとも1つの基材の上に適用することも可能である。平面配向はまた、付加的な配向膜を適用せずに、基材をラビングすることにより、例えばラビング布またはラビングローラーにより達成することもまた可能である。小さいチルト角の平面配向は、1つまたは2つ以上の界面活性剤を重合性メソゲン材料に加えることによっても達成可能である。適した界面活性剤は、例えばJ. Cognard, Mol.Cryst.Liq.Cryst. 78, Supplement 1, 1-77 (1981)に記載されている。特に好ましいのは、非イオン系界面活性剤、例えば市販のFluorad(登録商標)(3M製)またはZonyl FSN(登録商標)(DuPont製)などの非イオン系フッ化炭素界面活性剤、またはEP 1 256 617 A1に開示されているような重合性界面活性剤である。さらに好ましいのはGB 2 383 040 Aに開示されているマルチブロック界面活性剤である。
【0114】
いくつかの場合において、配向を補助し、かつ重合を阻害し得る酸素を排除するために、第二の基材を適用することが有利である。代替的に、不活性ガス雰囲気下で硬化を行うことができる。しかしながら、適した光開始剤および高UVランプ出力を用いることによって、空気中での硬化も可能である。カチオン光開始剤を用いる場合、酸素の除去はほとんどの場合必要ないが、水を除去すべきである。本発明の好ましい態様において、重合性材料の重合は、不活性ガス雰囲気下で、好ましくは窒素雰囲気下で行う。
【0115】
以下の例は、限定することなく本発明を例証する役割を果たす。本明細書において、他に記述されていない場合は、全ての温度は摂氏度で、全てのパーセンテージは重量により与えられる。
【0116】
例1
以下の重合性混合物を調製した。
【表1】
【化7】
【0117】
Paliocolor 756(登録商標)はBASF AG(Ludwigshafen, Germany)より市販されている重合性キラル化合物である。FC171(登録商標)は3M (St. Paul, Minnesota, USA)より市販されている非重合性フッ化炭素界面活性剤である。
【0118】
前記混合物をPGMEAに溶解し、45%w/w溶液とした。該溶液を、2000rpmの回転速度で、ラビングしたポリイミド基材上へスピンコーティングした。溶媒を環境温度で蒸発させ、フィルムを1分間70℃でアニールし、配向を促進させた。次に、該被覆を365nmの直線偏光UV光(UV光を色素タイプの(dye-type)偏光子を通過させることにより発生させた)に60秒間暴露し、その後窒素雰囲気中に置き、30mWcm2の365nmの直線偏光UV照射で10分間硬化させた。フィルムの位相差プロファイル(x軸はnmで表示した位相差、対するy軸は度で表示した視野角)を図10に表すが、同プロファイルが二軸性であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】感光性メソゲン化合物のUV照射に際しての形状の変化を例示的に図解した図である。
【図2】偏光UV光を用いてコレステリック材料を光重合することによる、本発明による二軸性フィルムの調製方法を図解した図である。
【図3】非偏光UV光での光重合による正弦コレステリックらせん(A)、および偏光UV光での光重合による歪んだらせん(B)の作製を図解した図である。
【0120】
【図4】従来技術による二軸性フィルムの調製方法(A)、従来技術による一軸性フィルムの調製方法(B)および本発明による二軸性フィルムの調製方法(C)を描く表した図である。
【図5】歪んでいない(A)および歪んだ(B)コレステリックらせんを有するコレステリック材料の屈折率楕円体を表した図である。
【図6】従来技術による(A、B)および本発明による(C)補償されたTN−LCDを図式的に表した図である。
【0121】
【図7】従来技術による(A)および本発明による(B)補償されたMVA−LCDを図式的に表した図である。
【図8】従来技術による(A)および本発明による(B)補償されたOCB−LCDを図式的に表した図である。
【図9A】液晶ディスプレイにおける本発明による二軸性フィルムのイン・セル使用を図式的に表した図である。
【図9B】液晶ディスプレイにおける本発明による二軸性フィルムのイン・セル使用を図式的に表した図である。
【図10】本発明の例1による二軸性フィルムの位相差プロファイル(位相差対視野角)を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形したらせん、およびらせん軸の方向で周期的に変化する局所複屈折を有する、らせんねじれ構造の異方性材料を含むことを特徴とする、光学的二軸性フィルム。
【請求項2】
400nm未満の波長の光を反射することを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
フィルム平面における直角方向のnxおよびnyならびにフィルム平面に垂直なnzの主屈折率を有し、nx≠ny≠nzかつnx,ny>nzであることを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
380〜780nmの波長の光に対して実質的に透明であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
架橋コレステリック材料を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
光学位相差の異なる値を有する異なる領域のパターンを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
以下の工程:
A)少なくとも1つの感光性化合物、少なくとも1つのキラル化合物および少なくとも1つの重合性化合物(ここで、これらの化合物は同一であってもまたは異なっていてもよい)、および少なくとも1つの二色性光開始剤を含む、キラルな重合性メソゲン材料の層を基材上に提供する工程であって、基材上で、前記層が平面配向に配向するか、またはこれを任意に平面配向に配向させる工程、
B)材料を、直線偏光光、好ましくは直線偏光UV光で照射し、材料の選択された領域で感光性化合物(1種または2種以上)の光反応を誘発する工程、
C)キラルなメソゲン材料を重合する工程、
D)任意に基材から重合した材料を取り外す工程、
を含む処理により得られることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
a)少なくとも1つの重合性基を有する、少なくとも1つの重合性メソゲン化合物、
b)少なくとも1つのキラル化合物であって、重合性および/またはメソゲンであってもよく、また、成分a)および/もしくはc)の化合物の1つまたは追加の化合物であってもよいもの、
c)少なくとも1つの感光性化合物であって、重合性および/またはメソゲンであってもよく、また成分a)および/もしくはb)の化合物の1つまたは追加の化合物であってもよいもの、
d)少なくとも1つの二色性光開始剤、
を含み、かつ、以下の成分:
e)1つ、2つまたは3つ以上の重合性基を有する、1つまたは2つ以上の非メソゲン化合物、
f)材料が光重合される場合には、光重合を開始させるのに用いる波長で吸収極大を示す、1つまたは2つ以上の色素、
g)1つまたは2つ以上の連鎖移動剤、
h)1つまたは2つ以上の界面活性化合物、
の1つまたは2つ以上を任意に含む、キラル重合性メソゲン材料から得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
重合性材料が少なくとも1つの一官能性キラル重合性メソゲン化合物、および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む、請求項7または8に記載のフィルム。
【請求項10】
重合性材料が少なくとも1つの二官能性または多官能性キラル重合性メソゲン化合物、および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む、請求項7または8に記載のフィルム。
【請求項11】
重合性材料が少なくとも1つの非重合性キラル化合物、および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む、請求項7または8に記載のフィルム。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載のフィルムを製造する方法。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれかに定義されるキラル重合性メソゲン材料。
【請求項14】
液晶ディスプレイなどの光学デバイスにおける位相差フィルムまたは補償フィルムとしての、請求項1〜11のいずれかに記載のフィルムの使用。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の少なくとも1つのフィルムを含む補償器。
【請求項16】
スプレイまたは傾斜構造を有する少なくとも1つの位相差フィルムをさらに含む、請求項15に記載の補償器。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれかに記載の少なくとも1つのフィルムまたは請求項15〜17のいずれかに記載の補償器を含む、液晶ディスプレイ。
【請求項18】
以下の要素:
−互いに対向する表面を有する2つの透明基材、前記2つの透明基材の少なくとも1つの内面に提供され、任意に配向膜と重ね合わされた電極層、および2つの透明基材の間に存在する液晶媒体、により形成される液晶セル、
−前記透明基材の外側に配置された偏光子、または前記基材をはさむ1組の偏光子、および
−液晶セルおよび少なくとも1つの前記偏光子の間に置かれた、請求項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの二軸性フィルムまたは補償器、
を含む液晶ディスプレイであって、上記要素は、分離し、積み重ね、互いの上に乗せたり、または接着層により、これらの組立手段の任意の組み合わせで結合することができる、前記液晶ディスプレイ。
【請求項19】
−以下の要素:
−互いに平行な第一および第二の基材平面であって、前記の少なくとも1つは入射光に対して透明であるもの、
−前記LCセルの個々のピクセルの個別の切り替えに使用できる、前記基材の1つに設けられた非線形電気要素のアレイであって、前記要素が、好ましくはトランジスタなどのアクティブな要素であり、極めて好ましくはTFTであるもの、
−前記基材の1つ、好ましくは非線形要素のアレイを担持する基材に対向する基材に設けられた、原色である赤、緑、青(R、G、B)の1つを透過する異なるピクセルのパターンを有するカラーフィルターアレイであって、前記カラーフィルターが任意に平坦化層により被覆されているもの、
−前記第一の基材の内面に設けられた第一の電極層、
−任意に、前記第二の基材の内面に設けられた第二の電極層、
−任意に、前記第一および第二の電極上に設けられた第一および第二の配向膜、
−電界の適用により少なくとも2つの異なる配向の間で切り替え可能なLC媒体、
を含むLCセル、
−LCセルの第一の面上の、第一の(または「正面」)直線偏光子
−任意に、LCセルの第二の面上の、第二の(または「背面」)直線偏光子、および
−請求項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの二軸性フィルム、
を含む液晶ディスプレイであって、前記二軸性フィルムが、LCセルの第一の基材と第二の基材との間に位置することを特徴とする、前記液晶ディスプレイ。
【請求項20】
TN(ねじれネマチック)、OCB(光学補償ベンド)、パイセル、VA(垂直配向)またはMVA(マルチドメイン垂直配向)モードのディスプレイであることを特徴とする、請求項17〜20のいずれかに記載の液晶ディスプレイ。
【請求項21】
半透過型ディスプレイであることを特徴とする、請求項17〜21のいずれかに記載の液晶ディスプレイ。
【請求項1】
変形したらせん、およびらせん軸の方向で周期的に変化する局所複屈折を有する、らせんねじれ構造の異方性材料を含むことを特徴とする、光学的二軸性フィルム。
【請求項2】
400nm未満の波長の光を反射することを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
フィルム平面における直角方向のnxおよびnyならびにフィルム平面に垂直なnzの主屈折率を有し、nx≠ny≠nzかつnx,ny>nzであることを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
380〜780nmの波長の光に対して実質的に透明であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
架橋コレステリック材料を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
光学位相差の異なる値を有する異なる領域のパターンを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
以下の工程:
A)少なくとも1つの感光性化合物、少なくとも1つのキラル化合物および少なくとも1つの重合性化合物(ここで、これらの化合物は同一であってもまたは異なっていてもよい)、および少なくとも1つの二色性光開始剤を含む、キラルな重合性メソゲン材料の層を基材上に提供する工程であって、基材上で、前記層が平面配向に配向するか、またはこれを任意に平面配向に配向させる工程、
B)材料を、直線偏光光、好ましくは直線偏光UV光で照射し、材料の選択された領域で感光性化合物(1種または2種以上)の光反応を誘発する工程、
C)キラルなメソゲン材料を重合する工程、
D)任意に基材から重合した材料を取り外す工程、
を含む処理により得られることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
a)少なくとも1つの重合性基を有する、少なくとも1つの重合性メソゲン化合物、
b)少なくとも1つのキラル化合物であって、重合性および/またはメソゲンであってもよく、また、成分a)および/もしくはc)の化合物の1つまたは追加の化合物であってもよいもの、
c)少なくとも1つの感光性化合物であって、重合性および/またはメソゲンであってもよく、また成分a)および/もしくはb)の化合物の1つまたは追加の化合物であってもよいもの、
d)少なくとも1つの二色性光開始剤、
を含み、かつ、以下の成分:
e)1つ、2つまたは3つ以上の重合性基を有する、1つまたは2つ以上の非メソゲン化合物、
f)材料が光重合される場合には、光重合を開始させるのに用いる波長で吸収極大を示す、1つまたは2つ以上の色素、
g)1つまたは2つ以上の連鎖移動剤、
h)1つまたは2つ以上の界面活性化合物、
の1つまたは2つ以上を任意に含む、キラル重合性メソゲン材料から得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
重合性材料が少なくとも1つの一官能性キラル重合性メソゲン化合物、および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む、請求項7または8に記載のフィルム。
【請求項10】
重合性材料が少なくとも1つの二官能性または多官能性キラル重合性メソゲン化合物、および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む、請求項7または8に記載のフィルム。
【請求項11】
重合性材料が少なくとも1つの非重合性キラル化合物、および少なくとも1つの一官能性、二官能性または多官能性アキラル重合性メソゲン化合物を含む、請求項7または8に記載のフィルム。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載のフィルムを製造する方法。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれかに定義されるキラル重合性メソゲン材料。
【請求項14】
液晶ディスプレイなどの光学デバイスにおける位相差フィルムまたは補償フィルムとしての、請求項1〜11のいずれかに記載のフィルムの使用。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の少なくとも1つのフィルムを含む補償器。
【請求項16】
スプレイまたは傾斜構造を有する少なくとも1つの位相差フィルムをさらに含む、請求項15に記載の補償器。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれかに記載の少なくとも1つのフィルムまたは請求項15〜17のいずれかに記載の補償器を含む、液晶ディスプレイ。
【請求項18】
以下の要素:
−互いに対向する表面を有する2つの透明基材、前記2つの透明基材の少なくとも1つの内面に提供され、任意に配向膜と重ね合わされた電極層、および2つの透明基材の間に存在する液晶媒体、により形成される液晶セル、
−前記透明基材の外側に配置された偏光子、または前記基材をはさむ1組の偏光子、および
−液晶セルおよび少なくとも1つの前記偏光子の間に置かれた、請求項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの二軸性フィルムまたは補償器、
を含む液晶ディスプレイであって、上記要素は、分離し、積み重ね、互いの上に乗せたり、または接着層により、これらの組立手段の任意の組み合わせで結合することができる、前記液晶ディスプレイ。
【請求項19】
−以下の要素:
−互いに平行な第一および第二の基材平面であって、前記の少なくとも1つは入射光に対して透明であるもの、
−前記LCセルの個々のピクセルの個別の切り替えに使用できる、前記基材の1つに設けられた非線形電気要素のアレイであって、前記要素が、好ましくはトランジスタなどのアクティブな要素であり、極めて好ましくはTFTであるもの、
−前記基材の1つ、好ましくは非線形要素のアレイを担持する基材に対向する基材に設けられた、原色である赤、緑、青(R、G、B)の1つを透過する異なるピクセルのパターンを有するカラーフィルターアレイであって、前記カラーフィルターが任意に平坦化層により被覆されているもの、
−前記第一の基材の内面に設けられた第一の電極層、
−任意に、前記第二の基材の内面に設けられた第二の電極層、
−任意に、前記第一および第二の電極上に設けられた第一および第二の配向膜、
−電界の適用により少なくとも2つの異なる配向の間で切り替え可能なLC媒体、
を含むLCセル、
−LCセルの第一の面上の、第一の(または「正面」)直線偏光子
−任意に、LCセルの第二の面上の、第二の(または「背面」)直線偏光子、および
−請求項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの二軸性フィルム、
を含む液晶ディスプレイであって、前記二軸性フィルムが、LCセルの第一の基材と第二の基材との間に位置することを特徴とする、前記液晶ディスプレイ。
【請求項20】
TN(ねじれネマチック)、OCB(光学補償ベンド)、パイセル、VA(垂直配向)またはMVA(マルチドメイン垂直配向)モードのディスプレイであることを特徴とする、請求項17〜20のいずれかに記載の液晶ディスプレイ。
【請求項21】
半透過型ディスプレイであることを特徴とする、請求項17〜21のいずれかに記載の液晶ディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公表番号】特表2008−505369(P2008−505369A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519647(P2007−519647)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006417
【国際公開番号】WO2006/002765
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006417
【国際公開番号】WO2006/002765
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
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