周波数シンセサイザシステム及び周波数信号の出力方法
【課題】設定された周波数に応じて、適切なバンドパスフィルタを選択することが可能な周波数シンセサイザシステム及び周波数信号の出力方法を提供する。
【解決手段】ミキサ53は、第1、第2のシンセサイザ1、2から各々出力された第1、第2の周波数信号を混合して、予め設定された周波数の周波数信号を含む混合信号を出力し、周波数選択部41は所定の式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択する。フィルタ選択部42は周波数選択部41にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれるスプリアス成分の信号レベルが予め設定したレベル以下まで低減されるように、複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択する。
【解決手段】ミキサ53は、第1、第2のシンセサイザ1、2から各々出力された第1、第2の周波数信号を混合して、予め設定された周波数の周波数信号を含む混合信号を出力し、周波数選択部41は所定の式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択する。フィルタ選択部42は周波数選択部41にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれるスプリアス成分の信号レベルが予め設定したレベル以下まで低減されるように、複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の周波数信号を混合して設定周波数の周波数信号を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
数GHz〜数十GHzの高周波信号を利用して無線通信を行う高周波無線装置においては、図12にブロック図を示すように受信信号を各種のバンドパスフィルタBPF11〜15で処理して不要波を取り除きつつ、ミキサ(混合器)MX11〜12にて周波数変換を行い、増幅器AMP11〜13にて増幅した周波数信号を復調器にて復調する処理が行われる。また、送信信号においても同様に変調器にて変調された周波数信号がバンドパスフィルタBPF21〜25で濾波され、ミキサMX21〜22にて周波数変換されると共に、増幅器AMP21〜22で増幅され高周波信号として送信される。
【0003】
各ミキサMX11〜12、21〜22においては、これら受信信号や送信信号と、他の周波数信号とをヘテロダインの原理を利用して混合することにより、受信信号を復調器にて処理可能な周波数に変換し、また送信信号を高周波信号として送信している。送信信号や受信信号と混合される周波数信号は、例えばVCO(voltage controlled oscillator)を備えたPLL(Phase Locked Loop)回路を含む周波数シンセサイザなどから出力される。図12に示した高周波無線装置の例においては、周波数シンセサイザFRX2〜3、FTX2〜3が各ミキサMX11〜12、21〜22に入力される周波数信号を生成している。
【0004】
これらの周波数シンセサイザFRX2〜3、FTX2〜3のうち、例えば受信信号の入力端に近いミキサMX11や、送信信号の出力端に近いミキサMX22にて受信信号、送信信号と混合される周波数信号は、受信端における受信信号や送信端における送信信号の周波数に近い、数GHz〜数十GHzの高周波となる場合がある。このように高周波の周波数信号を出力する周波数シンセサイザFRX2、FTX3においては、例えば2つの周波数シンセサイザから出力された周波数F1、F2の周波数信号をミキサにて混合し、周波数F1+F2の周波数信号を取り出して、受信信号や送信信号との混合に利用することが多い。
【0005】
このように、2つの周波数シンセサイザから出力された周波数信号を混合して希望の周波数を持つ信号を得る周波数シンセサイザシステムにおいては、ミキサから出力される信号中に、目的のF1+F2の周波数を持つ周波数信号に加えて不要信号、即ちスプリアス成分が含まれている。このため例えば当該ミキサから出力された周波数信号は、バンドパスフィルタにて不要なスプリアスが除去され、増幅器にて増幅されてから受信系統側の復調器に入力され、送信系統側は送信信号として出力される。
【0006】
そしてこのとき用いられるバンドパスフィルタは挿入損失が小さく、増幅器のゲインが小さくて済むようにすることが周波数シンセサイザを全体で見たときの電力効率がよくなる。後述するようにバンドパスフィルタは、通過帯域幅が狭いものほど挿入損失が大きくなる一方、通過帯域幅が広いと挿入損失が小さくなる傾向がある。そこで2つの周波数シンセサイザを利用する周波数シンセサイザシステムは、例えば設定周波数F1+F2の近傍に信号レベルの大きなスプリアスが発生しない周波数F1、F2の組み合わせを設計段階で探索し、各周波数シンセサイザの発振周波数を固定することにより、挿入損失の小さなバンドパスフィルタを採用して周波数シンセサイザの効率を高めている。
【0007】
しかしながら設計段階における各周波数シンセサイザの周波数F1、F2の選択は、設計者の経験に基づいて試行錯誤的に選択される場合が多く、時間的な労力が大きかった。また、無線通信に利用される高周波信号の広帯域化などに伴い、周波数変換に利用されるローカル信号の周波数を必要に応じて変更することが可能な周波数シンセサイザシステムが必要にもなってきている。このとき2つの周波数信号の混合により発生するスプリアスは、混合前の各信号の周波数F1、F2によりそのスプリアス周波数やスプリアスレベルが変化するため、設計時の状態から周波数を変更すると、十分にスプリアスを除去できなかったり、仮にスプリアスを除去できたとしても予め備わっているバンドパスフィルタでは必要以上に挿入損失が大きくなったりしてしまう場合がある。
【0008】
ここで引用文献1には、変調器などから出力された送信信号を、2つの周波数シンセサイザを用いて所定の周波数にまで周波数変換する際に、これら2つの周波数シンセサイザから出力される周波数信号中に含まれるスプリアスが最も小さくなる周波数の組み合わせを選択する手法が記載されている。しかしながら、引用文献1に記載の技術は、例えばDDS(Direct Digital Synthesizer)などの出力中に予め含まれるスプリアスが送信信号へ与える影響を低減するために、このスプリアスが少ない周波数の組み合わせを探索するものである。このため、2つの周波数シンセサイザから出力された周波数信号をミキサで混合してから出力する周波数シンセサイザにおいて、ミキサで発生するスプリアスを除去するのに適したバンドパスフィルタを選択する手法についてはなんら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−253356号公報:請求項1、段落0029〜段落0032、図2、図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、設定された周波数に応じて、適切なバンドパスフィルタを選択することが可能な周波シンセサイザシステム及び周波数信号の出力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る周波数シンセサイザシステムは、周波数設定部により設定した周波数の周波数信号を出力する周波数シンセサイザシステムにおいて、
第1の周波数信号及び第2の周波数信号を夫々出力する第1の周波数シンセサイザ及び第2の周波数シンセサイザと、
前記第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合して前記設定した周波数の周波数信号を含む混合信号を出力するミキサと、
このミキサから出力された混合信号に含まれるスプリアス成分を低減するために設けられた互いに通過帯域幅の異なる複数のバンドパスフィルタと、
前記ミキサから出力される混合信号に前記設定した周波数の周波数信号が含まれるように前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数を変化させて、当該混合信号に含まれる下記式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択して前記第1の周波数シンセサイザ及び第2の周波数シンセサイザの設定とする周波数選択部と、
この周波数選択部にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれる前記スプリアス成分の信号レベルを予め設定したレベル以下まで低減するために、前記複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択するフィルタ選択部と、を備えたことを特徴とする。
FS=|mF1±nF2|
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但し、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【0012】
前記周波数シンセサイザシステムは、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記周波数選択部は、前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせの複数の候補から、前記設定周波数の周波数信号に隣接するスプリアス成分の信号レベルが最も小さくなる周波数の組み合わせを選択すること。
(b)前記複数のバンドパスフィルタは、通過帯域幅が狭くなるに連れて、スプリアスレベルが小さくなること。またこのとき、前記フィルタ選択部は、通過帯域幅の広いバンドパスフィルタから順に前記混合信号を処理したときにスプリアス成分の信号レベルが予め設定したレベル以下まで低減できるか否かを判断して当該混合信号を処理するバンドパスフィルタの選択を行うこと。
(c)前記ミキサとバンドパスフィルタとの間には、ミキサから出力された混合信号を2つの系統に分配する分配器と、この分配器にて分配された一方側の系統の混合信号のうち、スプリアス成分の位相を180度反転させて得た反転信号を出力する位相反転部と、この位相反転部から出力された反転信号と、前記分配器にて分配された他方側の系統の混合信号とを合成し、混合信号に含まれるスプリアス成分の信号レベルを低減する合成器と、を備えたこと。
【0013】
次いで、他の発明に係る周波数信号の出力方法は、設定された周波数の周波数信号を出力する周波数信号の出力方法において、
第1の周波数信号及び第2の周波数信号を夫々出力する工程と、
前記第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合して前記設定された周波数の周波数信号を含む混合信号を出力する工程と、
前記混合信号に前記設定された周波数の周波数信号が含まれるように前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数を変化させて、当該混合信号に含まれる下記式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択する工程と、
この工程にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれる前記スプリアス成分の信号レベルを予め設定したレベル以下まで低減するために、互いに通過帯域幅の異なる複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択する工程と、を含むことを特徴とする。
FS=|mF1±nF2|
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但し、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2つの周波数シンセサイザから出力された第1、第2の周波数信号をミキサにて混合して、設定された周波数の周波数信号を出力するにあたり、予め設定した周波数範囲内に、所定の式で表されるスプリアス成分が存在しないこととなる第1、第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択する。この結果、前記周波数範囲内にスプリアス成分が存在する場合と比較して、通過帯域幅の広いバンドパスフィルタを選択することが可能となり、バンドパスフィルタによる処理に起因する挿入損失の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】前記周波数シンセサイザシステムに設けられている切り替えフィルタ部の構成例を示すブロック図である。
【図3】前記切り替えフィルタ部に設けられているバンドパスフィルタの通過特性を模式的に示した特性図である。
【図4】前記周波数シンセサイザシステム内に設けられている2つの周波数シンセサイザの周波数を設定する動作の流れを示すフロー図である。
【図5】前記2つの周波数シンセサイザの周波数を変更したときに発生するスプリアス成分の周波数の例を示す第1の説明図である。
【図6】前記2つの周波数シンセサイザの周波数を変更したときに発生するスプリアス成分の周波数の例を示す第2の説明図である。
【図7】前記2つの周波数シンセサイザの周波数を変更したときに発生するスプリアス成分の周波数の例を示す第3の説明図である。
【図8】前記周波数シンセサイザシステムに設けられているミキサにて発生するスプリアス成分のS/N比を示す説明図である。
【図9】前記2つの周波数シンセサイザの周波数を変更したときに発生するスプリアス成分の信号レベルの分布を示す説明図である。
【図10】他の実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムの構成例を示すブロック図である。
【図11】前記切り替えフィルタ部の他の構成例を示すブロック図である。
【図12】実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムを備えた高周波無線装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
初めに、図1のブロック図を参照しながら本実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムの構成について説明する。本例の周波数シンセサイザシステムは、例えば数GHz〜数十GHzの範囲の例えば1GHz〜10GHzの範囲において、設定された周波数(設定周波数)の周波数信号を出力する機能を備えており、例えば0.1GHz〜3GHzの範囲の低周波数領域において第1の周波数信号を出力する低周波シンセサイザ1と、例えば4GHz〜9GHzの範囲の高周波領域において第2の周波数信号を出力する高周波シンセサイザ2と、これら低周波シンセサイザ1から出力された第1の周波数信号と、高周波シンセサイザ2から出力された第2の周波数信号とを混合して、予め設定された周波数の周波数信号及びそのスプリアス成分を含む信号(以下、混合信号という)を出力するミキサ53と、この混合信号中のスプリアス成分を低減するための複数のBPF611〜614が設けられた切り替えフィルタ部6と、を備えている。
【0017】
低周波シンセサイザ1は、制御電圧の大きさに応じた周波数信号を出力する電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator;以下、VCOという)11と、このVCO11から出力された周波数信号を、基準発振器3から出力された基準信号と比較して両信号の位相差を取り出す位相比較器12と、この位相比較器12にて取り出された位相差を積分し、この積分値に応じた電圧をVCO11に出力するループフィルタ13とを備えた公知のPLL回路として構成されている。
【0018】
VCO11からは、予め選択された周波数(F1)を持つ第1の周波数信号が出力される。図1中、16は基準発振器3からの基準信号をアナログ信号に変換すると共に、設定された分周数に応じて当該基準信号を出力するD/Aコンバータである。低周波シンセサイザ1は、既述の0.1GHz〜3GHzの範囲の第1の周波数信号を例えば0.01GHz単位で変更することができるようになっており、本実施の形態の第1の周波数シンセサイザに相当する。
【0019】
また高周波シンセサイザ2についても、VCO21と位相比較器23とループフィルタ24とを備えた公知のPLL回路として構成されている。但し、VCO21の出力を1/Mに分周してから位相比較器23に入力する分周器22を備えている点が既述の低周波シンセサイザ1とは異なる。分周器22は、予め設定された範囲で分周数Mを任意の整数に変更することが可能となっており、この分周数の変更により、位相比較する周波数を増減できる。
【0020】
低周波シンセサイザ1の場合と同様にVCO21からは予め選択された周波数(F2)を持つ第2の周波数信号が出力される。また基準発振器3と位相比較器23との間には、基準発振器3の信号に基づくアナログ信号を出力する不図示のD/Aコンバータが設けられており、基準信号はアナログ信号に変換されてから位相比較器23に入力される。高周波シンセサイザ2は、既述の4GHz〜9GHzの範囲の周波数信号を例えば0.01GHz単位で変更することができるようになっており、本実施の形態の第2の周波数シンセサイザに相当する。ここで各シンセサイザ1、2のVCO11、21の出口側には、VCO11、21から出力された周波数信号を予め設定された逓倍数分だけ逓倍する逓倍回路を設けてもよい。また、例えば0.1GHz〜3GHzの低周波領域の周波数信号を設定周波数とする場合は、高周波シンセサイザ2を停止して、低周波シンセサイザ1のみを作動させてもよい。
【0021】
ミキサ53は、低周波シンセサイザ1から出力された第1の周波数信号(周波数F1)と、高周波シンセサイザ2から出力された第2の周波数信号(周波数F2)と、をヘテロダインの原理により混合し、周波数F1+F2の周波数信号を出力する機能を備えている。ここで図1に示した51、52は、低周波シンセサイザ1及び高周波シンセサイザ2から第1、第2の周波数信号と共に出力されるスプリアス成分を除去するバンドパスフィルタ(Band Pass Filter;以下、BPFという)、55はBPF52にてスプリアス成分が除去された後の第2の周波数信号を増幅するための増幅器、54はこの増幅器55にて発生した高調波スプリアス成分を除去するためのローパスフィルタ(Low Pass Filter;以下LPFという)である。
【0022】
第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合するミキサ53では、スプリアスの原理に基づいてこれらの信号を混合することに伴って、F1、F2の値に応じて、下記(1)式で表されるスプリアス成分が発生する。
FS=|mF1±nF2| …(1)
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但しm、nは、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【0023】
ここで(1)式を見て分かるとおり、ミキサ53にて発生するスプリアス成分の周波数は、第1、第2の周波数信号の各周波数(F1、F2)の値によって変化する。このため、例えば既述のように、数GHzの範囲にわたってF1及びF2の値が広範囲に変化する2つの周波数シンセサイザ1、2を利用して設定周波数の周波数信号を得る周波数シンセサイザシステムにおいては、スプリアス成分の周波数も広範囲に変化する可能性がある。
【0024】
そこで本実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムには、例えば設定周波数に応じて通過帯域の異なる複数のBPFを備えた切り替えフィルタ部6が設けられている。そしてこれら複数のBPFから適切なBPFを選択して、ミキサ53から出力された混合信号に含まれるスプリアス成分を除去することにより、設定周波数F1+F2に調整された、純度の高い周波数信号を出力することができるようになっている。
【0025】
図2に構成例を示すように切り替えフィルタ部6は、例えば通過帯域が異なる複数のBPF611〜614と、これらBPF611〜614の前後に設けられた切り替えスイッチ621、622と、を備えている。切り替えスイッチ621、622は、ミキサ53から出力された混合信号を選択されたBPF611〜614に入力し、また選択されたBPF611〜614にて処理された混合信号を、設定周波数の周波数信号として取り出す役割を果たす。これら通過帯域の異なるBPF611〜614は、例えば当該周波数シンセサイザシステムから出力可能な設定周波数の範囲をカバーするように設けられている。
【0026】
ここで本実施の形態の切り替えフィルタ部6は、既述のように通過帯域の異なる複数のBPF611〜614が設けられると共に、共通の通過帯域を有し、通過帯域幅が異なる複数のBPF611〜614を備えている。例えば図3には、中心周波数が共通し、通過帯域幅が異なる3種類のBPF611〜613の周波数特性を模式的に示している。
【0027】
例えば図3(a)に示す第1のBPF611は、周波数信号の減衰量が−20dBとなる周波数帯域(減衰帯域)が、中心周波数±500MHzよりも外側の帯域に存在し、他の2つのBPF612、613と比較して通過帯域幅も広い。また、図3(b)に示す第2のBPF612では、減衰帯域は中心周波数±300MHzよりも外側の帯域に位置しており、中程度の通過帯域幅を有している。そして図3(c)に示す第3のBPF613の減衰帯域は、中心周波数±100MHzより外側の帯域にあり、他の2つのBPF611、612と比較して通過帯域幅が最も狭い。
【0028】
一般的に、このように通過帯域幅の異なるBPF611〜613の挿入損失を比較すると、通過帯域幅が広いものほど挿入損失が小さく、通過帯域幅が狭くなるに連れて挿入損失が大きくなっていく。図3(a)〜図3(c)に記載のBPF611〜613も、第1のBPF611(挿入損失−1.0dB)→第2のBPF612(挿入損失−2.0dB)→第3のBPF613(挿入損失−3.0dB)と、通過帯域幅が狭くなるに連れて挿入損失が大きくなっている。
【0029】
一方で(1)式を用いて説明したように、ミキサ53から出力される混合信号中に含まれているスプリアス成分の周波数は、第1、第2の周波数信号の周波数(F1、F2)によって大きく変化する。従って、スプリアス成分は、これらF1、F2の周波数の選択によって、設定周波数の近傍位置に発生する場合もあれば、設定周波数から遠い位置に発生する場合もある。
【0030】
このとき例えばBPF611〜613で既述の混合信号を処理すると、混合信号に含まれるスプリアス成分のスプリアスレベルは、通過帯域幅が大きいものほど大きくなる一方で、通過帯域幅が狭くなるに連れてスプリアスレベルを小さくすることができる。そこで例えば第3のBPF613相当の最も通過帯域幅の狭いBPFを設定周波数の可変範囲をカバーするように複数個設け、一律に通過帯域幅の狭いBPFを用いてミキサ53から出力される混合信号を処理するようにすれば、どの位置にスプリアス成分が発生したとしてもスプリアス成分を予め設定したレベル以下まで低減できる可能性は高い。しかしながら既述のように通過帯域幅の狭いBPFは挿入損失が大きく、設定周波数の周波数信号の減衰量も大きいため、濾波後の周波数信号を所定の信号レベルまで増幅する際の増幅量が増大し、増幅処理の際に再び高調波スプリアスが発生してしまうおそれもある。
【0031】
したがって、設定周波数の近傍にスプリアス成分が存在しない場合には、スプリアス成分を設定レベル以下まで低減でき、且つ、できるだけ通過帯域幅の広いBPFを選択して、挿入損失を抑えることが好ましい。そこで本実施の形態に係る切り替えフィルタ部6には、図2に示すように周波数帯域の位置、及び通過帯域幅が異なるN個のBPF611〜614が設けられている。本例に係る切り替えフィルタ部6は、例えば図3(a)〜図3(c)に例示した通過帯域幅が広、中、狭の3種類のBPF611〜613の各々について、設定周波数の可変範囲をカバーするように通過帯域の異なるBPFを備えている。
【0032】
さらに本実施の形態の周波数シンセサイザシステムは、図1に示すように例えばCPUとメモリとを備えたコンピュータなどからなる制御部4を備えている。制御部4は、低周波シンセサイザ1のD/Aコンバータ16への周波数データの設定や、位相比較器12の比較周波数の設定を行うことにより、低周波シンセサイザ1から出力される第1の周波数信号の周波数をF1に設定し、また高周波シンセサイザ2の分周器22の分周数Mを設定することにより第2の周波数信号の周波数をF2に設定する機能を備えている。また制御部4には、外部から設定周波数(F1+F2)の入力を受け付けるインターフェース部43が接続されており、前記F1、F2はこの設定周波数に基づいて選択される。この観点においてインターフェース部43は本実施の形態の周波数設定部に相当している。
【0033】
さらに前記制御部4は、ミキサ53から出力される混合信号中に含まれるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる周波数F1とF2との組み合わせを選択する周波数選択部41としての機能と、この周波数選択部41にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれるスプリアス成分の信号レベル(スプリアスレベル)を予め設定したレベル以下まで低減するために、切り替えフィルタ部6にて濾波処理を実行するBPF611〜614を選択するフィルタ選択部42としての機能と、を備えている。以下、図4に示すフロー図及び図5〜図9を参照しながら周波数選択部41やフィルタ選択部42の作用について説明する。
【0034】
例えば本周波数シンセサイザシステムの製造、出荷時における設定周波数の調整や、既に設定されている設定周波数を変更する場合などに際し(図4のスタート)、まずインターフェース部43から設定周波数の入力を受け付ける(ステップS1)。次いで例えば設定周波数±2%の周波数範囲内に、前記(1)式で表されるスプリアス成分が存在しないF1、F2の組み合わせを選択するといった、F1、F2の選択条件を受け付ける(ステップS2)。本例では例えば設定周波数を6.73GHz(6730MHz、以下、F1、F2はMHz単位で表す)とし、この±2%の範囲、即ち6730±134.6MHzの範囲内に前記スプリアス成分が存在しない組み合わせを選択する場合を例にとって説明する。
【0035】
以上の条件が選択されたら、例えば予め設定されたデフォルトのF1、F2の組み合わせ(例えばF1=160MHz、F2=6570MHz)を起点にして、F1+F2=6730MHzを維持しつつ例えば60MHz刻みでF1、F2の値を変化させ、例えばm+n≦15の範囲で(1)式に基づいてスプリアス成分の発生する周波数の位置を計算し、制御部4のメモリ内に記憶する(ステップS3)。
【0036】
図5(a)は、F1=160MHz、F2=6570MHzの場合において、m=1〜10、n=1〜5まで変化させたときの|mF1+nF2|で表される設定周波数及びスプリアス成分の周波数を示している。また図5(b)は、このときの|mF1−nF2|で表されるスプリアス成分の周波数を示している。図5(a)、図5(b)において、設定周波数は二重枠線で囲んだカラム内に示し、設定周波数±2%以内の周波数領域に存在するスプリアス成分は黒塗りのカラム内に示す。また、設定周波数±2%の外側であり、且つ設定周波数±5%以内の周波数領域に存在するスプリアス成分を薄いグレーで塗りつぶしたカラム内に示し、設定周波数±5%の外側であり、且つ設定周波数±10%以内の周波数領域に存在するスプリアス成分を濃いグレーで塗りつぶしたカラム内に示す。
【0037】
図5(a)、図5(b)に示した例では、設定周波数±2%以内の周波数領域にスプリアス成分は存在しない。また、F1=160MHzと小さく、F2=6570MHzと設定周波数に比較的近いことから、設定周波数±2%の外側、且つ、設定周波数±10%以内の周波数領域では、F2自身及び|mF1±F2|のスプリアス成分が支配的となっていることが分かる。
【0038】
一方、図6(a)、図6(b)は、F1=1300MHz、F2=5430MHzの場合のスプリアス成分の周波数を、図5と同様の手法により示したものである。この例においても設定周波数±2%以内の周波数領域にスプリアス成分は存在しないが、設定周波数±2%の外側、且つ、設定周波数±10%以内の周波数領域では、nやmの値が高次の位置にスプリアス成分が発生していることが分かる。
【0039】
次いで図7(a)、図7(b)はF1=2200MHz、F2=4530MHzの場合のスプリアス成分の周波数を、図5と同様の手法により示したものであり、本例では設定周波数±2%以内の周波数領域にスプリアス成分が発生することが分かる。
このように、例えばF1=160MHz〜2200MHzの範囲で60MHz毎に変化させると、例えば図4に示したステップS3においては34パターンのF1、F2の組み合わせについてスプリアス成分の位置が計算されることになる。但し、以下の説明においては簡単のため図5〜図7に示した3種類のF1、F2の組み合わせから第1、第2の周波数信号の周波数を決定する場合について説明する。
【0040】
ステップS3においてF1、F2の組み合わせごとにスプリアス成分の位置を計算したら、これらの組み合わせの中からF1、F2の選択条件(本例では設定周波数±2%以内の周波数領域にスプリアス成分が存在しないこと)を満たすF1、F2の組み合わせが存在するか否かを判断する(ステップS4)。選択条件を満たすF1、F2が存在しない場合には(ステップS4;NO)、例えばインターフェース部43にエラー表示等を出力し、設定周波数の±5%以内の周波数領域にスプリアス成分が発生しないF1、F2の組を選択するように選択条件を緩和するなど、選択条件の変更を受け付けて(ステップS5)、再度当該条件を満たすF1、F2が存在するか否かを判断する(ステップS4)。
【0041】
一方、現在検討している図5〜図7に例示したF1、F2の組み合わせにおいては、図7の場合を除いて、図5に示したF1=160MHz、F2=6570MHzの場合と、図6に示したF1=1300MHz、F2=5430MHzの場合とにおいて、設定周波数±2%の周波数領域にスプリアス成分が存在しないという選択条件を満たしている(ステップS4;YES)。
【0042】
そこでこの選択条件を満たすF1、F2の組み合わせを選択候補とし、これらの選択候補について、先のステップS3で記憶しておいたスプリアス成分の周波数の分布と、図8(a)、図8(b)に示すように、予め制御部4内のメモリ等に記憶しておいたミキサ53のスプリアス特性と、を用い各選択候補におけるスプリアス成分の信号レベルの分布を計算する(ステップS6)。ここで図8(a)、図8(b)に例示したスプリアス特性は、設定周波数の周波数信号を0とした場合のSN比をデシベル単位で示したものである。
【0043】
図9(a)は、図5に示したF1=160MHz、F2=6570MHzの場合におけるスプリアス成分の信号レベル分布を示しており、図9(b)は図6に示したF1=1300MHz、F2=5430MHzの場合におけるスプリアス成分の信号レベル分布を示している。また参考のため、図9(c)にはステップS6で選択されなかった、図7に示したF1=2200MHz、F2=4530MHzの場合のスプリアス成分の信号レベル分布を示してある。
【0044】
こうしてスプリアス成分の信号レベルの分布が計算されたら、設定周波数に最も近いスプリアス成分の信号レベルが最小となる選択候補を選ぶ(ステップS7)。図9(a)、図9(b)から、F1=1300MHz、F2=5430MHzの選択候補の方が、設定周波数近傍のスプリアス成分の信号レベルが小さいことが分かる。
【0045】
そこでこのF1=1300MHz、F2=5430MHzの選択候補を選択する一方(ステップS7)、通過帯域中に設定周波数を含み、通過帯域幅が最大のBPF(例えば第1のBPF611)を選択する(ステップS8)。そして図9(a)の計算結果に基づき、ステップS7にて選択された選択候補F1、F2をミキサ53にて混合して得られる混合信号に対し、ステップS8にて選択されたBPFを用いて処理を行った場合のスプリアス成分の信号レベルを計算する(ステップS9)。
【0046】
この結果、混合信号をBPFで濾波した後の全スプリアス成分の信号レベルが予め設定した目標値以下(例えば−20dB以下)とならない場合には(ステップS10;NO)、通過帯域中に設定周波数を含み、通過帯域幅がひと回り狭いBPFの選択を試みる(ステップS11)。切り替えフィルタ部6にこの条件を満たすBPF(例えば第2のBPF612)が存在する場合には(ステップS12;YES)、当該BPFを用いて再度選択候補F1、F2の混合信号を処理した時のスプリアス成分の信号レベルを計算し(ステップS9)、当該信号レベルが目標値以下となるか否かを再度判断する(ステップS10)。
【0047】
一方、ステップS11にて選択が試みられた条件を満たすBPFが切り替えフィルタ部6内に存在しない場合には、現在、スプリアス成分の信号レベルを計算しているF1、F2の組み合わせを選択候補から削除し(ステップS13)、残る選択候補の中から設定周波数に最も近いスプリアス成分の信号レベルが最小となる選択候補を選ぶ(ステップS7)。本例の場合には、図9(a)に示したF1=160MHz、F2=6570MHzが次の選択候補として選択されることになる。そして、新たに選択されたF1、F2の選択候補に対して、ステップS8〜S13の動作が再度実行される。
【0048】
以上に説明した動作の結果、選択候補F1、F2をミキサ53で処理して得られた混合信号に対し、当該混合信号をBPFで濾波した後の全スプリアス成分の信号レベルが目標値以下となったら(ステップS10;YES)、第1、第2の周波数信号の周波数が各々F1、F2となるように低周波シンセサイザ1及び高周波シンセサイザ2の設定を行い(ステップS14)、周波数の設定動作を終える(エンド)。
【0049】
本実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムによれば以下の効果がある。2つの周波数シンセサイザ1、2から出力された第1、第2の周波数信号をミキサ53にて混合して、設定周波数の周波数信号を出力するにあたり、予め設定した周波数範囲内(例えば設定周波数±2%の周波数範囲内)に、前述の(1)式で表されるスプリアス成分が存在しないこととなる第1、第2の周波数信号の周波数F1、F2の組み合わせが選択される。この結果、当該周波数範囲内にスプリアス成分が存在する場合と比較して、通過帯域幅の広いバンドパスフィルタを選択することが可能となり、バンドパスフィルタによる処理に起因する挿入損失の低減を図ることができる。
【0050】
ここで周波数シンセサイザシステムは、図10に示すように、各周波数F1、F2が可変に構成された低周波シンセサイザ1及び高周波シンセサイザ2の出口に設けられBPF51、52についても、複数のBPF51、52の中から適切なBPF51、52を選択する切り替えフィルタ部56、57を設ける構成としてもよい。この場合には、異なる通過帯域を持つBPF51、52の中から、選択されたF1、F2に応じた通過帯域を持つBPF51、52が選択される。
【0051】
また例えば図11に示すように、ミキサ53の出口に設けられた切り替えフィルタ部6において、各BPF611〜614の入口に、ミキサ53にて発生したスプリアス成分の信号レベルを予め低減する機構を設けてもよい。図11に示した例では、当該機構は、ミキサ53から出力された混合信号を2つの系統に分配する分配器63と、この分配器から出力された一方側の混合信号中に含まれる周波数成分の位相を反転する位相反転器64と、この位相反転器64から出力された信号から設定周波数の周波数信号を除去するBEF(Band Elimination Filter)65と、このBEF65の出力と分配器63の他方側の出力とを合成する合成器66とを備えている。これにより、分配器63の他方側の出力のスプリアス成分と、分配器63の一方側の出力のスプリアス成分の位相を180°反転して得られた信号とが合成され、混合信号中のスプリアス成分の信号レベルが相殺されたうえで各BPF611〜614に入力される。この結果、上述のスプリアスの低減機構を設けない場合と比較して、通過帯域幅の広いBPF611〜614を採用することが可能となり、BPF611〜614を設けることによる挿入損失を低減できる。
【0052】
また、図5〜図7に示したスプリアス成分の周波数や図9に示したスプリアス成分の信号レベルは、F1、F2の選択の際に計算を実行する場合に限定されない。例えばF1、F2の変化幅が大きく、F1、F2の組み合わせの数が少ない場合などにおいては、制御部4内のメモリに図9に示したスプリアス成分の位置とその信号レベルを記憶しておいてもよい。
【0053】
また、F1、F2の選択候補の中から、当該F1、F2の組み合わせ、及びこの組み合わせにおいてミキサ53から出力される混合信号を処理するBPF611〜614を選択する手法は、図4のステップS6〜ステップS13を用いて説明した手法に限定されるものではない。例えば選択条件を満たすF1、F2の選択候補の全てについて網羅的にスプリアス成分の信号レベルを計算し、これらの計算結果の全てについいて、通過帯域幅の異なるBPF611〜614を用いて混合信号の濾波を行った場合のスプリアス成分の信号レベルを計算してもよい。この場合は、例えば、スプリアス成分の信号レベルが目標値以下となったF1、F2のすべての組み合わせ及びその混合信号を処理可能なBPF611〜614の中から、例えば挿入損失が最も小さなBPF611〜614とこのBPF611〜614で処理可能なF1、F2の組み合わせを選択する手法などが考えられる。
【0054】
また第1の周波数シンセサイザや第2の周波数シンセサイザは、図1に示した低周波シンセサイザ1や高周波シンセサイザ2のようにPLL回路を用いて構成する場合に限定されない。例えば不図示の波形テーブルに正弦波の振幅データを位相データに対応付けて記憶しておき、基準発振器3からのクロック信号の入力タイミング毎に予め設定された位相幅データを累積加算して得た位相データに基づいて振幅データを読み出し、ディジタル周波数信号を出力するDDSなどを採用してもよいことは勿論である。
【0055】
さらにまた、周波数シンセサイザシステム内に通過帯域幅が異なる複数のBPF611〜614を備えることは必須の要件ではない。例えば通過帯域幅の異なる複数のBPF611〜614の選択候補の通過特性を制御部4のメモリ内に記憶しておき、図4に例示したフロー図で選択されたBPF611〜614を周波数シンセサイザシステムに組み込む場合も本実施の形態の周波数信号の出力方法に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 低周波シンセサイザ
11 VCO
12 位相比較器
13 ループフィルタ
2 高周波シンセサイザ
21 VCO
22 分周器
23 位相比較器
24 ループフィルタ
3 基準発振器
4 制御部
41 周波数選択部
42 フィルタ選択部
43 インターフェース部
6 切り替えフィルタ部
611〜614
第1〜第NのBPF
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の周波数信号を混合して設定周波数の周波数信号を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
数GHz〜数十GHzの高周波信号を利用して無線通信を行う高周波無線装置においては、図12にブロック図を示すように受信信号を各種のバンドパスフィルタBPF11〜15で処理して不要波を取り除きつつ、ミキサ(混合器)MX11〜12にて周波数変換を行い、増幅器AMP11〜13にて増幅した周波数信号を復調器にて復調する処理が行われる。また、送信信号においても同様に変調器にて変調された周波数信号がバンドパスフィルタBPF21〜25で濾波され、ミキサMX21〜22にて周波数変換されると共に、増幅器AMP21〜22で増幅され高周波信号として送信される。
【0003】
各ミキサMX11〜12、21〜22においては、これら受信信号や送信信号と、他の周波数信号とをヘテロダインの原理を利用して混合することにより、受信信号を復調器にて処理可能な周波数に変換し、また送信信号を高周波信号として送信している。送信信号や受信信号と混合される周波数信号は、例えばVCO(voltage controlled oscillator)を備えたPLL(Phase Locked Loop)回路を含む周波数シンセサイザなどから出力される。図12に示した高周波無線装置の例においては、周波数シンセサイザFRX2〜3、FTX2〜3が各ミキサMX11〜12、21〜22に入力される周波数信号を生成している。
【0004】
これらの周波数シンセサイザFRX2〜3、FTX2〜3のうち、例えば受信信号の入力端に近いミキサMX11や、送信信号の出力端に近いミキサMX22にて受信信号、送信信号と混合される周波数信号は、受信端における受信信号や送信端における送信信号の周波数に近い、数GHz〜数十GHzの高周波となる場合がある。このように高周波の周波数信号を出力する周波数シンセサイザFRX2、FTX3においては、例えば2つの周波数シンセサイザから出力された周波数F1、F2の周波数信号をミキサにて混合し、周波数F1+F2の周波数信号を取り出して、受信信号や送信信号との混合に利用することが多い。
【0005】
このように、2つの周波数シンセサイザから出力された周波数信号を混合して希望の周波数を持つ信号を得る周波数シンセサイザシステムにおいては、ミキサから出力される信号中に、目的のF1+F2の周波数を持つ周波数信号に加えて不要信号、即ちスプリアス成分が含まれている。このため例えば当該ミキサから出力された周波数信号は、バンドパスフィルタにて不要なスプリアスが除去され、増幅器にて増幅されてから受信系統側の復調器に入力され、送信系統側は送信信号として出力される。
【0006】
そしてこのとき用いられるバンドパスフィルタは挿入損失が小さく、増幅器のゲインが小さくて済むようにすることが周波数シンセサイザを全体で見たときの電力効率がよくなる。後述するようにバンドパスフィルタは、通過帯域幅が狭いものほど挿入損失が大きくなる一方、通過帯域幅が広いと挿入損失が小さくなる傾向がある。そこで2つの周波数シンセサイザを利用する周波数シンセサイザシステムは、例えば設定周波数F1+F2の近傍に信号レベルの大きなスプリアスが発生しない周波数F1、F2の組み合わせを設計段階で探索し、各周波数シンセサイザの発振周波数を固定することにより、挿入損失の小さなバンドパスフィルタを採用して周波数シンセサイザの効率を高めている。
【0007】
しかしながら設計段階における各周波数シンセサイザの周波数F1、F2の選択は、設計者の経験に基づいて試行錯誤的に選択される場合が多く、時間的な労力が大きかった。また、無線通信に利用される高周波信号の広帯域化などに伴い、周波数変換に利用されるローカル信号の周波数を必要に応じて変更することが可能な周波数シンセサイザシステムが必要にもなってきている。このとき2つの周波数信号の混合により発生するスプリアスは、混合前の各信号の周波数F1、F2によりそのスプリアス周波数やスプリアスレベルが変化するため、設計時の状態から周波数を変更すると、十分にスプリアスを除去できなかったり、仮にスプリアスを除去できたとしても予め備わっているバンドパスフィルタでは必要以上に挿入損失が大きくなったりしてしまう場合がある。
【0008】
ここで引用文献1には、変調器などから出力された送信信号を、2つの周波数シンセサイザを用いて所定の周波数にまで周波数変換する際に、これら2つの周波数シンセサイザから出力される周波数信号中に含まれるスプリアスが最も小さくなる周波数の組み合わせを選択する手法が記載されている。しかしながら、引用文献1に記載の技術は、例えばDDS(Direct Digital Synthesizer)などの出力中に予め含まれるスプリアスが送信信号へ与える影響を低減するために、このスプリアスが少ない周波数の組み合わせを探索するものである。このため、2つの周波数シンセサイザから出力された周波数信号をミキサで混合してから出力する周波数シンセサイザにおいて、ミキサで発生するスプリアスを除去するのに適したバンドパスフィルタを選択する手法についてはなんら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−253356号公報:請求項1、段落0029〜段落0032、図2、図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、設定された周波数に応じて、適切なバンドパスフィルタを選択することが可能な周波シンセサイザシステム及び周波数信号の出力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る周波数シンセサイザシステムは、周波数設定部により設定した周波数の周波数信号を出力する周波数シンセサイザシステムにおいて、
第1の周波数信号及び第2の周波数信号を夫々出力する第1の周波数シンセサイザ及び第2の周波数シンセサイザと、
前記第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合して前記設定した周波数の周波数信号を含む混合信号を出力するミキサと、
このミキサから出力された混合信号に含まれるスプリアス成分を低減するために設けられた互いに通過帯域幅の異なる複数のバンドパスフィルタと、
前記ミキサから出力される混合信号に前記設定した周波数の周波数信号が含まれるように前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数を変化させて、当該混合信号に含まれる下記式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択して前記第1の周波数シンセサイザ及び第2の周波数シンセサイザの設定とする周波数選択部と、
この周波数選択部にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれる前記スプリアス成分の信号レベルを予め設定したレベル以下まで低減するために、前記複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択するフィルタ選択部と、を備えたことを特徴とする。
FS=|mF1±nF2|
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但し、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【0012】
前記周波数シンセサイザシステムは、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記周波数選択部は、前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせの複数の候補から、前記設定周波数の周波数信号に隣接するスプリアス成分の信号レベルが最も小さくなる周波数の組み合わせを選択すること。
(b)前記複数のバンドパスフィルタは、通過帯域幅が狭くなるに連れて、スプリアスレベルが小さくなること。またこのとき、前記フィルタ選択部は、通過帯域幅の広いバンドパスフィルタから順に前記混合信号を処理したときにスプリアス成分の信号レベルが予め設定したレベル以下まで低減できるか否かを判断して当該混合信号を処理するバンドパスフィルタの選択を行うこと。
(c)前記ミキサとバンドパスフィルタとの間には、ミキサから出力された混合信号を2つの系統に分配する分配器と、この分配器にて分配された一方側の系統の混合信号のうち、スプリアス成分の位相を180度反転させて得た反転信号を出力する位相反転部と、この位相反転部から出力された反転信号と、前記分配器にて分配された他方側の系統の混合信号とを合成し、混合信号に含まれるスプリアス成分の信号レベルを低減する合成器と、を備えたこと。
【0013】
次いで、他の発明に係る周波数信号の出力方法は、設定された周波数の周波数信号を出力する周波数信号の出力方法において、
第1の周波数信号及び第2の周波数信号を夫々出力する工程と、
前記第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合して前記設定された周波数の周波数信号を含む混合信号を出力する工程と、
前記混合信号に前記設定された周波数の周波数信号が含まれるように前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数を変化させて、当該混合信号に含まれる下記式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択する工程と、
この工程にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれる前記スプリアス成分の信号レベルを予め設定したレベル以下まで低減するために、互いに通過帯域幅の異なる複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択する工程と、を含むことを特徴とする。
FS=|mF1±nF2|
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但し、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2つの周波数シンセサイザから出力された第1、第2の周波数信号をミキサにて混合して、設定された周波数の周波数信号を出力するにあたり、予め設定した周波数範囲内に、所定の式で表されるスプリアス成分が存在しないこととなる第1、第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択する。この結果、前記周波数範囲内にスプリアス成分が存在する場合と比較して、通過帯域幅の広いバンドパスフィルタを選択することが可能となり、バンドパスフィルタによる処理に起因する挿入損失の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】前記周波数シンセサイザシステムに設けられている切り替えフィルタ部の構成例を示すブロック図である。
【図3】前記切り替えフィルタ部に設けられているバンドパスフィルタの通過特性を模式的に示した特性図である。
【図4】前記周波数シンセサイザシステム内に設けられている2つの周波数シンセサイザの周波数を設定する動作の流れを示すフロー図である。
【図5】前記2つの周波数シンセサイザの周波数を変更したときに発生するスプリアス成分の周波数の例を示す第1の説明図である。
【図6】前記2つの周波数シンセサイザの周波数を変更したときに発生するスプリアス成分の周波数の例を示す第2の説明図である。
【図7】前記2つの周波数シンセサイザの周波数を変更したときに発生するスプリアス成分の周波数の例を示す第3の説明図である。
【図8】前記周波数シンセサイザシステムに設けられているミキサにて発生するスプリアス成分のS/N比を示す説明図である。
【図9】前記2つの周波数シンセサイザの周波数を変更したときに発生するスプリアス成分の信号レベルの分布を示す説明図である。
【図10】他の実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムの構成例を示すブロック図である。
【図11】前記切り替えフィルタ部の他の構成例を示すブロック図である。
【図12】実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムを備えた高周波無線装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
初めに、図1のブロック図を参照しながら本実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムの構成について説明する。本例の周波数シンセサイザシステムは、例えば数GHz〜数十GHzの範囲の例えば1GHz〜10GHzの範囲において、設定された周波数(設定周波数)の周波数信号を出力する機能を備えており、例えば0.1GHz〜3GHzの範囲の低周波数領域において第1の周波数信号を出力する低周波シンセサイザ1と、例えば4GHz〜9GHzの範囲の高周波領域において第2の周波数信号を出力する高周波シンセサイザ2と、これら低周波シンセサイザ1から出力された第1の周波数信号と、高周波シンセサイザ2から出力された第2の周波数信号とを混合して、予め設定された周波数の周波数信号及びそのスプリアス成分を含む信号(以下、混合信号という)を出力するミキサ53と、この混合信号中のスプリアス成分を低減するための複数のBPF611〜614が設けられた切り替えフィルタ部6と、を備えている。
【0017】
低周波シンセサイザ1は、制御電圧の大きさに応じた周波数信号を出力する電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator;以下、VCOという)11と、このVCO11から出力された周波数信号を、基準発振器3から出力された基準信号と比較して両信号の位相差を取り出す位相比較器12と、この位相比較器12にて取り出された位相差を積分し、この積分値に応じた電圧をVCO11に出力するループフィルタ13とを備えた公知のPLL回路として構成されている。
【0018】
VCO11からは、予め選択された周波数(F1)を持つ第1の周波数信号が出力される。図1中、16は基準発振器3からの基準信号をアナログ信号に変換すると共に、設定された分周数に応じて当該基準信号を出力するD/Aコンバータである。低周波シンセサイザ1は、既述の0.1GHz〜3GHzの範囲の第1の周波数信号を例えば0.01GHz単位で変更することができるようになっており、本実施の形態の第1の周波数シンセサイザに相当する。
【0019】
また高周波シンセサイザ2についても、VCO21と位相比較器23とループフィルタ24とを備えた公知のPLL回路として構成されている。但し、VCO21の出力を1/Mに分周してから位相比較器23に入力する分周器22を備えている点が既述の低周波シンセサイザ1とは異なる。分周器22は、予め設定された範囲で分周数Mを任意の整数に変更することが可能となっており、この分周数の変更により、位相比較する周波数を増減できる。
【0020】
低周波シンセサイザ1の場合と同様にVCO21からは予め選択された周波数(F2)を持つ第2の周波数信号が出力される。また基準発振器3と位相比較器23との間には、基準発振器3の信号に基づくアナログ信号を出力する不図示のD/Aコンバータが設けられており、基準信号はアナログ信号に変換されてから位相比較器23に入力される。高周波シンセサイザ2は、既述の4GHz〜9GHzの範囲の周波数信号を例えば0.01GHz単位で変更することができるようになっており、本実施の形態の第2の周波数シンセサイザに相当する。ここで各シンセサイザ1、2のVCO11、21の出口側には、VCO11、21から出力された周波数信号を予め設定された逓倍数分だけ逓倍する逓倍回路を設けてもよい。また、例えば0.1GHz〜3GHzの低周波領域の周波数信号を設定周波数とする場合は、高周波シンセサイザ2を停止して、低周波シンセサイザ1のみを作動させてもよい。
【0021】
ミキサ53は、低周波シンセサイザ1から出力された第1の周波数信号(周波数F1)と、高周波シンセサイザ2から出力された第2の周波数信号(周波数F2)と、をヘテロダインの原理により混合し、周波数F1+F2の周波数信号を出力する機能を備えている。ここで図1に示した51、52は、低周波シンセサイザ1及び高周波シンセサイザ2から第1、第2の周波数信号と共に出力されるスプリアス成分を除去するバンドパスフィルタ(Band Pass Filter;以下、BPFという)、55はBPF52にてスプリアス成分が除去された後の第2の周波数信号を増幅するための増幅器、54はこの増幅器55にて発生した高調波スプリアス成分を除去するためのローパスフィルタ(Low Pass Filter;以下LPFという)である。
【0022】
第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合するミキサ53では、スプリアスの原理に基づいてこれらの信号を混合することに伴って、F1、F2の値に応じて、下記(1)式で表されるスプリアス成分が発生する。
FS=|mF1±nF2| …(1)
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但しm、nは、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【0023】
ここで(1)式を見て分かるとおり、ミキサ53にて発生するスプリアス成分の周波数は、第1、第2の周波数信号の各周波数(F1、F2)の値によって変化する。このため、例えば既述のように、数GHzの範囲にわたってF1及びF2の値が広範囲に変化する2つの周波数シンセサイザ1、2を利用して設定周波数の周波数信号を得る周波数シンセサイザシステムにおいては、スプリアス成分の周波数も広範囲に変化する可能性がある。
【0024】
そこで本実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムには、例えば設定周波数に応じて通過帯域の異なる複数のBPFを備えた切り替えフィルタ部6が設けられている。そしてこれら複数のBPFから適切なBPFを選択して、ミキサ53から出力された混合信号に含まれるスプリアス成分を除去することにより、設定周波数F1+F2に調整された、純度の高い周波数信号を出力することができるようになっている。
【0025】
図2に構成例を示すように切り替えフィルタ部6は、例えば通過帯域が異なる複数のBPF611〜614と、これらBPF611〜614の前後に設けられた切り替えスイッチ621、622と、を備えている。切り替えスイッチ621、622は、ミキサ53から出力された混合信号を選択されたBPF611〜614に入力し、また選択されたBPF611〜614にて処理された混合信号を、設定周波数の周波数信号として取り出す役割を果たす。これら通過帯域の異なるBPF611〜614は、例えば当該周波数シンセサイザシステムから出力可能な設定周波数の範囲をカバーするように設けられている。
【0026】
ここで本実施の形態の切り替えフィルタ部6は、既述のように通過帯域の異なる複数のBPF611〜614が設けられると共に、共通の通過帯域を有し、通過帯域幅が異なる複数のBPF611〜614を備えている。例えば図3には、中心周波数が共通し、通過帯域幅が異なる3種類のBPF611〜613の周波数特性を模式的に示している。
【0027】
例えば図3(a)に示す第1のBPF611は、周波数信号の減衰量が−20dBとなる周波数帯域(減衰帯域)が、中心周波数±500MHzよりも外側の帯域に存在し、他の2つのBPF612、613と比較して通過帯域幅も広い。また、図3(b)に示す第2のBPF612では、減衰帯域は中心周波数±300MHzよりも外側の帯域に位置しており、中程度の通過帯域幅を有している。そして図3(c)に示す第3のBPF613の減衰帯域は、中心周波数±100MHzより外側の帯域にあり、他の2つのBPF611、612と比較して通過帯域幅が最も狭い。
【0028】
一般的に、このように通過帯域幅の異なるBPF611〜613の挿入損失を比較すると、通過帯域幅が広いものほど挿入損失が小さく、通過帯域幅が狭くなるに連れて挿入損失が大きくなっていく。図3(a)〜図3(c)に記載のBPF611〜613も、第1のBPF611(挿入損失−1.0dB)→第2のBPF612(挿入損失−2.0dB)→第3のBPF613(挿入損失−3.0dB)と、通過帯域幅が狭くなるに連れて挿入損失が大きくなっている。
【0029】
一方で(1)式を用いて説明したように、ミキサ53から出力される混合信号中に含まれているスプリアス成分の周波数は、第1、第2の周波数信号の周波数(F1、F2)によって大きく変化する。従って、スプリアス成分は、これらF1、F2の周波数の選択によって、設定周波数の近傍位置に発生する場合もあれば、設定周波数から遠い位置に発生する場合もある。
【0030】
このとき例えばBPF611〜613で既述の混合信号を処理すると、混合信号に含まれるスプリアス成分のスプリアスレベルは、通過帯域幅が大きいものほど大きくなる一方で、通過帯域幅が狭くなるに連れてスプリアスレベルを小さくすることができる。そこで例えば第3のBPF613相当の最も通過帯域幅の狭いBPFを設定周波数の可変範囲をカバーするように複数個設け、一律に通過帯域幅の狭いBPFを用いてミキサ53から出力される混合信号を処理するようにすれば、どの位置にスプリアス成分が発生したとしてもスプリアス成分を予め設定したレベル以下まで低減できる可能性は高い。しかしながら既述のように通過帯域幅の狭いBPFは挿入損失が大きく、設定周波数の周波数信号の減衰量も大きいため、濾波後の周波数信号を所定の信号レベルまで増幅する際の増幅量が増大し、増幅処理の際に再び高調波スプリアスが発生してしまうおそれもある。
【0031】
したがって、設定周波数の近傍にスプリアス成分が存在しない場合には、スプリアス成分を設定レベル以下まで低減でき、且つ、できるだけ通過帯域幅の広いBPFを選択して、挿入損失を抑えることが好ましい。そこで本実施の形態に係る切り替えフィルタ部6には、図2に示すように周波数帯域の位置、及び通過帯域幅が異なるN個のBPF611〜614が設けられている。本例に係る切り替えフィルタ部6は、例えば図3(a)〜図3(c)に例示した通過帯域幅が広、中、狭の3種類のBPF611〜613の各々について、設定周波数の可変範囲をカバーするように通過帯域の異なるBPFを備えている。
【0032】
さらに本実施の形態の周波数シンセサイザシステムは、図1に示すように例えばCPUとメモリとを備えたコンピュータなどからなる制御部4を備えている。制御部4は、低周波シンセサイザ1のD/Aコンバータ16への周波数データの設定や、位相比較器12の比較周波数の設定を行うことにより、低周波シンセサイザ1から出力される第1の周波数信号の周波数をF1に設定し、また高周波シンセサイザ2の分周器22の分周数Mを設定することにより第2の周波数信号の周波数をF2に設定する機能を備えている。また制御部4には、外部から設定周波数(F1+F2)の入力を受け付けるインターフェース部43が接続されており、前記F1、F2はこの設定周波数に基づいて選択される。この観点においてインターフェース部43は本実施の形態の周波数設定部に相当している。
【0033】
さらに前記制御部4は、ミキサ53から出力される混合信号中に含まれるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる周波数F1とF2との組み合わせを選択する周波数選択部41としての機能と、この周波数選択部41にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれるスプリアス成分の信号レベル(スプリアスレベル)を予め設定したレベル以下まで低減するために、切り替えフィルタ部6にて濾波処理を実行するBPF611〜614を選択するフィルタ選択部42としての機能と、を備えている。以下、図4に示すフロー図及び図5〜図9を参照しながら周波数選択部41やフィルタ選択部42の作用について説明する。
【0034】
例えば本周波数シンセサイザシステムの製造、出荷時における設定周波数の調整や、既に設定されている設定周波数を変更する場合などに際し(図4のスタート)、まずインターフェース部43から設定周波数の入力を受け付ける(ステップS1)。次いで例えば設定周波数±2%の周波数範囲内に、前記(1)式で表されるスプリアス成分が存在しないF1、F2の組み合わせを選択するといった、F1、F2の選択条件を受け付ける(ステップS2)。本例では例えば設定周波数を6.73GHz(6730MHz、以下、F1、F2はMHz単位で表す)とし、この±2%の範囲、即ち6730±134.6MHzの範囲内に前記スプリアス成分が存在しない組み合わせを選択する場合を例にとって説明する。
【0035】
以上の条件が選択されたら、例えば予め設定されたデフォルトのF1、F2の組み合わせ(例えばF1=160MHz、F2=6570MHz)を起点にして、F1+F2=6730MHzを維持しつつ例えば60MHz刻みでF1、F2の値を変化させ、例えばm+n≦15の範囲で(1)式に基づいてスプリアス成分の発生する周波数の位置を計算し、制御部4のメモリ内に記憶する(ステップS3)。
【0036】
図5(a)は、F1=160MHz、F2=6570MHzの場合において、m=1〜10、n=1〜5まで変化させたときの|mF1+nF2|で表される設定周波数及びスプリアス成分の周波数を示している。また図5(b)は、このときの|mF1−nF2|で表されるスプリアス成分の周波数を示している。図5(a)、図5(b)において、設定周波数は二重枠線で囲んだカラム内に示し、設定周波数±2%以内の周波数領域に存在するスプリアス成分は黒塗りのカラム内に示す。また、設定周波数±2%の外側であり、且つ設定周波数±5%以内の周波数領域に存在するスプリアス成分を薄いグレーで塗りつぶしたカラム内に示し、設定周波数±5%の外側であり、且つ設定周波数±10%以内の周波数領域に存在するスプリアス成分を濃いグレーで塗りつぶしたカラム内に示す。
【0037】
図5(a)、図5(b)に示した例では、設定周波数±2%以内の周波数領域にスプリアス成分は存在しない。また、F1=160MHzと小さく、F2=6570MHzと設定周波数に比較的近いことから、設定周波数±2%の外側、且つ、設定周波数±10%以内の周波数領域では、F2自身及び|mF1±F2|のスプリアス成分が支配的となっていることが分かる。
【0038】
一方、図6(a)、図6(b)は、F1=1300MHz、F2=5430MHzの場合のスプリアス成分の周波数を、図5と同様の手法により示したものである。この例においても設定周波数±2%以内の周波数領域にスプリアス成分は存在しないが、設定周波数±2%の外側、且つ、設定周波数±10%以内の周波数領域では、nやmの値が高次の位置にスプリアス成分が発生していることが分かる。
【0039】
次いで図7(a)、図7(b)はF1=2200MHz、F2=4530MHzの場合のスプリアス成分の周波数を、図5と同様の手法により示したものであり、本例では設定周波数±2%以内の周波数領域にスプリアス成分が発生することが分かる。
このように、例えばF1=160MHz〜2200MHzの範囲で60MHz毎に変化させると、例えば図4に示したステップS3においては34パターンのF1、F2の組み合わせについてスプリアス成分の位置が計算されることになる。但し、以下の説明においては簡単のため図5〜図7に示した3種類のF1、F2の組み合わせから第1、第2の周波数信号の周波数を決定する場合について説明する。
【0040】
ステップS3においてF1、F2の組み合わせごとにスプリアス成分の位置を計算したら、これらの組み合わせの中からF1、F2の選択条件(本例では設定周波数±2%以内の周波数領域にスプリアス成分が存在しないこと)を満たすF1、F2の組み合わせが存在するか否かを判断する(ステップS4)。選択条件を満たすF1、F2が存在しない場合には(ステップS4;NO)、例えばインターフェース部43にエラー表示等を出力し、設定周波数の±5%以内の周波数領域にスプリアス成分が発生しないF1、F2の組を選択するように選択条件を緩和するなど、選択条件の変更を受け付けて(ステップS5)、再度当該条件を満たすF1、F2が存在するか否かを判断する(ステップS4)。
【0041】
一方、現在検討している図5〜図7に例示したF1、F2の組み合わせにおいては、図7の場合を除いて、図5に示したF1=160MHz、F2=6570MHzの場合と、図6に示したF1=1300MHz、F2=5430MHzの場合とにおいて、設定周波数±2%の周波数領域にスプリアス成分が存在しないという選択条件を満たしている(ステップS4;YES)。
【0042】
そこでこの選択条件を満たすF1、F2の組み合わせを選択候補とし、これらの選択候補について、先のステップS3で記憶しておいたスプリアス成分の周波数の分布と、図8(a)、図8(b)に示すように、予め制御部4内のメモリ等に記憶しておいたミキサ53のスプリアス特性と、を用い各選択候補におけるスプリアス成分の信号レベルの分布を計算する(ステップS6)。ここで図8(a)、図8(b)に例示したスプリアス特性は、設定周波数の周波数信号を0とした場合のSN比をデシベル単位で示したものである。
【0043】
図9(a)は、図5に示したF1=160MHz、F2=6570MHzの場合におけるスプリアス成分の信号レベル分布を示しており、図9(b)は図6に示したF1=1300MHz、F2=5430MHzの場合におけるスプリアス成分の信号レベル分布を示している。また参考のため、図9(c)にはステップS6で選択されなかった、図7に示したF1=2200MHz、F2=4530MHzの場合のスプリアス成分の信号レベル分布を示してある。
【0044】
こうしてスプリアス成分の信号レベルの分布が計算されたら、設定周波数に最も近いスプリアス成分の信号レベルが最小となる選択候補を選ぶ(ステップS7)。図9(a)、図9(b)から、F1=1300MHz、F2=5430MHzの選択候補の方が、設定周波数近傍のスプリアス成分の信号レベルが小さいことが分かる。
【0045】
そこでこのF1=1300MHz、F2=5430MHzの選択候補を選択する一方(ステップS7)、通過帯域中に設定周波数を含み、通過帯域幅が最大のBPF(例えば第1のBPF611)を選択する(ステップS8)。そして図9(a)の計算結果に基づき、ステップS7にて選択された選択候補F1、F2をミキサ53にて混合して得られる混合信号に対し、ステップS8にて選択されたBPFを用いて処理を行った場合のスプリアス成分の信号レベルを計算する(ステップS9)。
【0046】
この結果、混合信号をBPFで濾波した後の全スプリアス成分の信号レベルが予め設定した目標値以下(例えば−20dB以下)とならない場合には(ステップS10;NO)、通過帯域中に設定周波数を含み、通過帯域幅がひと回り狭いBPFの選択を試みる(ステップS11)。切り替えフィルタ部6にこの条件を満たすBPF(例えば第2のBPF612)が存在する場合には(ステップS12;YES)、当該BPFを用いて再度選択候補F1、F2の混合信号を処理した時のスプリアス成分の信号レベルを計算し(ステップS9)、当該信号レベルが目標値以下となるか否かを再度判断する(ステップS10)。
【0047】
一方、ステップS11にて選択が試みられた条件を満たすBPFが切り替えフィルタ部6内に存在しない場合には、現在、スプリアス成分の信号レベルを計算しているF1、F2の組み合わせを選択候補から削除し(ステップS13)、残る選択候補の中から設定周波数に最も近いスプリアス成分の信号レベルが最小となる選択候補を選ぶ(ステップS7)。本例の場合には、図9(a)に示したF1=160MHz、F2=6570MHzが次の選択候補として選択されることになる。そして、新たに選択されたF1、F2の選択候補に対して、ステップS8〜S13の動作が再度実行される。
【0048】
以上に説明した動作の結果、選択候補F1、F2をミキサ53で処理して得られた混合信号に対し、当該混合信号をBPFで濾波した後の全スプリアス成分の信号レベルが目標値以下となったら(ステップS10;YES)、第1、第2の周波数信号の周波数が各々F1、F2となるように低周波シンセサイザ1及び高周波シンセサイザ2の設定を行い(ステップS14)、周波数の設定動作を終える(エンド)。
【0049】
本実施の形態に係る周波数シンセサイザシステムによれば以下の効果がある。2つの周波数シンセサイザ1、2から出力された第1、第2の周波数信号をミキサ53にて混合して、設定周波数の周波数信号を出力するにあたり、予め設定した周波数範囲内(例えば設定周波数±2%の周波数範囲内)に、前述の(1)式で表されるスプリアス成分が存在しないこととなる第1、第2の周波数信号の周波数F1、F2の組み合わせが選択される。この結果、当該周波数範囲内にスプリアス成分が存在する場合と比較して、通過帯域幅の広いバンドパスフィルタを選択することが可能となり、バンドパスフィルタによる処理に起因する挿入損失の低減を図ることができる。
【0050】
ここで周波数シンセサイザシステムは、図10に示すように、各周波数F1、F2が可変に構成された低周波シンセサイザ1及び高周波シンセサイザ2の出口に設けられBPF51、52についても、複数のBPF51、52の中から適切なBPF51、52を選択する切り替えフィルタ部56、57を設ける構成としてもよい。この場合には、異なる通過帯域を持つBPF51、52の中から、選択されたF1、F2に応じた通過帯域を持つBPF51、52が選択される。
【0051】
また例えば図11に示すように、ミキサ53の出口に設けられた切り替えフィルタ部6において、各BPF611〜614の入口に、ミキサ53にて発生したスプリアス成分の信号レベルを予め低減する機構を設けてもよい。図11に示した例では、当該機構は、ミキサ53から出力された混合信号を2つの系統に分配する分配器63と、この分配器から出力された一方側の混合信号中に含まれる周波数成分の位相を反転する位相反転器64と、この位相反転器64から出力された信号から設定周波数の周波数信号を除去するBEF(Band Elimination Filter)65と、このBEF65の出力と分配器63の他方側の出力とを合成する合成器66とを備えている。これにより、分配器63の他方側の出力のスプリアス成分と、分配器63の一方側の出力のスプリアス成分の位相を180°反転して得られた信号とが合成され、混合信号中のスプリアス成分の信号レベルが相殺されたうえで各BPF611〜614に入力される。この結果、上述のスプリアスの低減機構を設けない場合と比較して、通過帯域幅の広いBPF611〜614を採用することが可能となり、BPF611〜614を設けることによる挿入損失を低減できる。
【0052】
また、図5〜図7に示したスプリアス成分の周波数や図9に示したスプリアス成分の信号レベルは、F1、F2の選択の際に計算を実行する場合に限定されない。例えばF1、F2の変化幅が大きく、F1、F2の組み合わせの数が少ない場合などにおいては、制御部4内のメモリに図9に示したスプリアス成分の位置とその信号レベルを記憶しておいてもよい。
【0053】
また、F1、F2の選択候補の中から、当該F1、F2の組み合わせ、及びこの組み合わせにおいてミキサ53から出力される混合信号を処理するBPF611〜614を選択する手法は、図4のステップS6〜ステップS13を用いて説明した手法に限定されるものではない。例えば選択条件を満たすF1、F2の選択候補の全てについて網羅的にスプリアス成分の信号レベルを計算し、これらの計算結果の全てについいて、通過帯域幅の異なるBPF611〜614を用いて混合信号の濾波を行った場合のスプリアス成分の信号レベルを計算してもよい。この場合は、例えば、スプリアス成分の信号レベルが目標値以下となったF1、F2のすべての組み合わせ及びその混合信号を処理可能なBPF611〜614の中から、例えば挿入損失が最も小さなBPF611〜614とこのBPF611〜614で処理可能なF1、F2の組み合わせを選択する手法などが考えられる。
【0054】
また第1の周波数シンセサイザや第2の周波数シンセサイザは、図1に示した低周波シンセサイザ1や高周波シンセサイザ2のようにPLL回路を用いて構成する場合に限定されない。例えば不図示の波形テーブルに正弦波の振幅データを位相データに対応付けて記憶しておき、基準発振器3からのクロック信号の入力タイミング毎に予め設定された位相幅データを累積加算して得た位相データに基づいて振幅データを読み出し、ディジタル周波数信号を出力するDDSなどを採用してもよいことは勿論である。
【0055】
さらにまた、周波数シンセサイザシステム内に通過帯域幅が異なる複数のBPF611〜614を備えることは必須の要件ではない。例えば通過帯域幅の異なる複数のBPF611〜614の選択候補の通過特性を制御部4のメモリ内に記憶しておき、図4に例示したフロー図で選択されたBPF611〜614を周波数シンセサイザシステムに組み込む場合も本実施の形態の周波数信号の出力方法に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 低周波シンセサイザ
11 VCO
12 位相比較器
13 ループフィルタ
2 高周波シンセサイザ
21 VCO
22 分周器
23 位相比較器
24 ループフィルタ
3 基準発振器
4 制御部
41 周波数選択部
42 フィルタ選択部
43 インターフェース部
6 切り替えフィルタ部
611〜614
第1〜第NのBPF
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数設定部により設定した周波数の周波数信号を出力する周波数シンセサイザシステムにおいて、
第1の周波数信号及び第2の周波数信号を夫々出力する第1の周波数シンセサイザ及び第2の周波数シンセサイザと、
前記第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合して前記設定した周波数の周波数信号を含む混合信号を出力するミキサと、
このミキサから出力された混合信号に含まれるスプリアス成分を低減するために設けられた互いに通過帯域幅の異なる複数のバンドパスフィルタと、
前記ミキサから出力される混合信号に前記設定した周波数の周波数信号が含まれるように前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数を変化させて、当該混合信号に含まれる下記式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択して前記第1の周波数シンセサイザ及び第2の周波数シンセサイザの設定とする周波数選択部と、
この周波数選択部にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれる前記スプリアス成分の信号レベルを予め設定したレベル以下まで低減するために、前記複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択するフィルタ選択部と、を備えたことを特徴とする周波数シンセサイザシステム。
FS=|mF1±nF2|
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但し、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【請求項2】
前記周波数選択部は、前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせの複数の候補から、前記設定周波数の周波数信号に隣接するスプリアス成分の信号レベルが最も小さくなる周波数の組み合わせを選択することを特徴とする請求項1に記載の周波数シンセサイザシステム。
【請求項3】
前記複数のバンドパスフィルタは、通過帯域幅が狭くなるに連れて、スプリアスレベルが小さくなることを特徴とする請求項1または2に記載の周波数シンセサイザシステム。
【請求項4】
前記フィルタ選択部は、通過帯域幅の広いバンドパスフィルタから順に前記混合信号を処理したときにスプリアス成分の信号レベルが予め設定したレベル以下まで低減できるか否かを判断して当該混合信号を処理するバンドパスフィルタの選択を行うことを特徴とする請求項3に記載の周波数シンセサイザシステム。
【請求項5】
前記ミキサとバンドパスフィルタとの間には、ミキサから出力された混合信号を2つの系統に分配する分配器と、この分配器にて分配された一方側の系統の混合信号のうち、スプリアス成分の位相を180度反転させて得た反転信号を出力する位相反転部と、この位相反転部から出力された反転信号と、前記分配器にて分配された他方側の系統の混合信号とを合成し、混合信号に含まれるスプリアス成分の信号レベルを低減する合成器と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の周波数シンセサイザシステム。
【請求項6】
設定された周波数の周波数信号を出力する周波数信号の出力方法において、
第1の周波数信号及び第2の周波数信号を夫々出力する工程と、
前記第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合して前記設定された周波数の周波数信号を含む混合信号を出力する工程と、
前記混合信号に前記設定された周波数の周波数信号が含まれるように前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数を変化させて、当該混合信号に含まれる下記式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択する工程と、
この工程にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれる前記スプリアス成分の信号レベルを予め設定したレベル以下まで低減するために、互いに通過帯域幅の異なる複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択する工程と、を含むことを特徴とする周波数信号の出力方法。
FS=|mF1±nF2|
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但し、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【請求項1】
周波数設定部により設定した周波数の周波数信号を出力する周波数シンセサイザシステムにおいて、
第1の周波数信号及び第2の周波数信号を夫々出力する第1の周波数シンセサイザ及び第2の周波数シンセサイザと、
前記第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合して前記設定した周波数の周波数信号を含む混合信号を出力するミキサと、
このミキサから出力された混合信号に含まれるスプリアス成分を低減するために設けられた互いに通過帯域幅の異なる複数のバンドパスフィルタと、
前記ミキサから出力される混合信号に前記設定した周波数の周波数信号が含まれるように前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数を変化させて、当該混合信号に含まれる下記式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択して前記第1の周波数シンセサイザ及び第2の周波数シンセサイザの設定とする周波数選択部と、
この周波数選択部にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれる前記スプリアス成分の信号レベルを予め設定したレベル以下まで低減するために、前記複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択するフィルタ選択部と、を備えたことを特徴とする周波数シンセサイザシステム。
FS=|mF1±nF2|
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但し、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【請求項2】
前記周波数選択部は、前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせの複数の候補から、前記設定周波数の周波数信号に隣接するスプリアス成分の信号レベルが最も小さくなる周波数の組み合わせを選択することを特徴とする請求項1に記載の周波数シンセサイザシステム。
【請求項3】
前記複数のバンドパスフィルタは、通過帯域幅が狭くなるに連れて、スプリアスレベルが小さくなることを特徴とする請求項1または2に記載の周波数シンセサイザシステム。
【請求項4】
前記フィルタ選択部は、通過帯域幅の広いバンドパスフィルタから順に前記混合信号を処理したときにスプリアス成分の信号レベルが予め設定したレベル以下まで低減できるか否かを判断して当該混合信号を処理するバンドパスフィルタの選択を行うことを特徴とする請求項3に記載の周波数シンセサイザシステム。
【請求項5】
前記ミキサとバンドパスフィルタとの間には、ミキサから出力された混合信号を2つの系統に分配する分配器と、この分配器にて分配された一方側の系統の混合信号のうち、スプリアス成分の位相を180度反転させて得た反転信号を出力する位相反転部と、この位相反転部から出力された反転信号と、前記分配器にて分配された他方側の系統の混合信号とを合成し、混合信号に含まれるスプリアス成分の信号レベルを低減する合成器と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の周波数シンセサイザシステム。
【請求項6】
設定された周波数の周波数信号を出力する周波数信号の出力方法において、
第1の周波数信号及び第2の周波数信号を夫々出力する工程と、
前記第1の周波数信号と第2の周波数信号とを混合して前記設定された周波数の周波数信号を含む混合信号を出力する工程と、
前記混合信号に前記設定された周波数の周波数信号が含まれるように前記第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数を変化させて、当該混合信号に含まれる下記式で表されるスプリアス成分が予め設定した周波数範囲内に存在しないこととなる第1の周波数信号及び第2の周波数信号の周波数の組み合わせを選択する工程と、
この工程にて選択された周波数の組み合わせから得られる混合信号に含まれる前記スプリアス成分の信号レベルを予め設定したレベル以下まで低減するために、互いに通過帯域幅の異なる複数のバンドパスフィルタから当該混合信号を処理するバンドパスフィルタを選択する工程と、を含むことを特徴とする周波数信号の出力方法。
FS=|mF1±nF2|
但し、FS;スプリアス成分の周波数、F1;第1の周波数信号の周波数、F2;第2の周波数信号の周波数、m、n;0または自然数(但し、少なくとも一方が1以上であり、|mF1+nF2|の場合はm=n=1を含まない)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−211417(P2011−211417A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75974(P2010−75974)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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