周波数帯域割当装置及び方法
【課題】 SCPC及びFDMA方式を利用する通信システムにおいて、周波数リソースを有効に活用しながらマルチレート化を図る周波数帯域割当装置を提供すること。
【解決手段】 周波数割当装置は、シングルキャリアの信号を通信するための周波数帯域を変更することができる移動局の1以上が基地局と周波数分割多元接続(FDMA)方式で接続される無線通信システムに使用される。本装置は、移動局に割り当てられる帯域と、総ての移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係を定める制約条件を、移動局毎に管理するデータベースと、総ての移動局に割り当てられる帯域の合計が無線通信システムにおける所望の値になるような割当水準パラメータの値を導出する手段と、導出された割当水準パラメータに基づいて、空き帯域が最小になるように各移動局に割り当てる帯域をそれぞれ算出する手段とを有する。
【解決手段】 周波数割当装置は、シングルキャリアの信号を通信するための周波数帯域を変更することができる移動局の1以上が基地局と周波数分割多元接続(FDMA)方式で接続される無線通信システムに使用される。本装置は、移動局に割り当てられる帯域と、総ての移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係を定める制約条件を、移動局毎に管理するデータベースと、総ての移動局に割り当てられる帯域の合計が無線通信システムにおける所望の値になるような割当水準パラメータの値を導出する手段と、導出された割当水準パラメータに基づいて、空き帯域が最小になるように各移動局に割り当てる帯域をそれぞれ算出する手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に無線通信の技術分野に関し、特に複数の移動局が周波数分割多元接続(FDMA)方式で基地局と通信する無線通信システムにおける周波数割当装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の移動局と1つの基地局との多元接続方法の1つであるFDMA方式では、移動局各々に周波数帯域幅が割り当てられ、移動局はその帯域を占有できる。従って、FDMA方式によれば、移動局に搭載する送信機の構成及び機能を簡易に設計することができる。このため、FDMA方式は、電力制限の厳しい静止衛星を介した衛星通信システムや、端末の大きさに制限のある移動通信システム等の用途に適している。
【0003】
一例として、非特許文献1に記載されているような衛星通信システムがある。このシステムは、基地局と移動局が固定された周波数帯域幅(非マルチレート方式)のシングルキャリアを用いて通信を行う。このような方式は、SCPC(Single Carrier Per Channel)方式と呼ばれる。SCPCは、マルチキャリア方式のMCPCと比較して、移動局に搭載されたアンプの能力を有効に利用することができる。従来想定されていたアプリケーションは主に音声通信のみであるので、要求される伝送速度はほぼ一定であり、所望のサービス品質(QoS:Quality of Service)を効率よく実現することができる。更に、1キャリア当たりの周波数帯域は固定されているので、同時に通信している移動局数(同時接続数)が最大値に達するまでは、通信要求の発生順序に関係なく公平に周波数を割り当てることができる。
【非特許文献1】「Sバンドを用いる国内移動衛星通信システム」,ARIB STD−T49 3.0版,社団法人 電波産業界,p.5,p.10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のシステムでは、システム全体でなされる通信量は同時接続数に比例する。従って、同時接続数が少ない状況では、システムに用意されているリソース(周波数や衛星中継器の電力等)が十分に活用されておらず、それは望ましい状況ではない。移動局に割り当てる周波数帯域幅を大きくすれば、同時接続数が少ない状況でのリソースの利用効率を幾分向上させることができるかもしれない。しかしながら、そのようにすると、同時接続数の最大値が小さくなり、より多くのユーザ数を収容する観点からはそれは望ましくない。
【0005】
一方、インターネット上で伝送されるトラフィックは非常に多くのアプリケーションを含み、各アプリケーションの要求する速度も同じではない。非マルチレートの従来のシステムは、このようなトラフィックを効率よく収容することは困難であるので、将来的な通信システムにはマルチレート化(通信速度を変更する機能を備えること)が求められる。通信速度が変更可能になるということは、移動局に割り当てられる周波数帯域幅を変更可能にすることになる。更に、様々なアプリケーションに対する要求を満足すること、柔軟なQoS制御を実現すること、移動局間の公平性を保つこと等も望まれる。
【0006】
本発明は、上記問題点の少なくとも1つに対処するためになされたものであり、その課題は、SCPC及びFDMA方式を利用する通信システムにおいて、周波数リソースを有効に活用しながらマルチレート化を図る周波数帯域割当装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、シングルキャリアの信号を通信するための周波数帯域を変更することができる複数の移動局基地局と周波数分割多元接続(FDMA)方式で接続される無線通信システムに使用される周波数割当装置が使用される。本装置は、移動局に割り当てられる帯域と、総ての移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係を定める制約条件を、移動局毎に管理するデータベースと、総ての移動局に割り当てられる帯域の合計が無線通信システムにおける所望の値になるような割当水準パラメータの値を導出する手段と、導出された割当水準パラメータに基づいて、空き帯域が最小になるように各移動局に割り当てる帯域をそれぞれ算出する手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、SCPC及びFDMA方式を利用する通信システムで周波数帯域を割り当てる際に、周波数リソースを有効に活用しながらマルチレート化に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一態様による周波数帯域割当装置では、移動局から新規の周波数割当要求が発生したときや、既に周波数帯域の割当を受けている移動局からその解放要求が発生したときに周波数帯域の割当内容が変更される。割当内容は、各移動局に割り当てる周波数帯域幅の合計が、システムで使用可能な全周波数帯域幅と一致するように算出される。システムで使用可能な全周波数帯域幅は、割当を要求する移動局数によらない一定の値である。これにより、同時接続数がいくつでも周波数リソースを有効に活用することができる。言い換えれば、割当を要求する移動局の総数の増減に関わらず空きとなる帯域が常に最低量になるように周波数リソースを活用できる。特に、同時接続数が少ない場合でもシステム全体の通信容量を大きくすることができ且つ移動局当たりの通信速度を大きくすることもできる。このような周波数帯域割当装置は、典型的には基地局に設けられるが、基地局以外の場所に設けられてもよい。
【0010】
割当内容は、Σfm(x)=Wall を満たす解x=αを用いて導出されてもよい。ここで、fm(x)はm番目の移動局に割り当てられる帯域を表し、xは割当水準パラメータを表す。Wallはシステムで使用可能な全周波数帯域幅である。これにより、各移動局に割り当てる適切な周波数帯域を速やかに導出することができる。
【0011】
データベースは、移動局のハードウエアの条件から定められる帯域の第1の下限値及び上限値と、前記移動局に提供されるサービスの要求から定められる帯域の第2の下限値及び上限値とを管理してもよい。移動局に割り当てられる帯域の最小値は、第1及び第2の下限値の内の大きい方に設定されてもよい。移動局に移動局に割り当てられる帯域の最大値は、第1及び第2の上限値の内の小さい方に設定されてもよい。
【0012】
複数の移動局が同期して周波数帯域を変更するように、各移動局に割り当てる帯域が通知されてもよい。これにより、不適切な周波数帯域の割当がなされてしまうことを回避できる。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明を使用するシステムの一例を示す。図1には、基地局11と、衛星中継器12と、サービスエリア13とが描かれている。サービスエリア13内には複数の移動局14が存在する。サービスエリアは、シングルビーム又はマルチビームで形成される。マルチビームは、周波数繰り返しを行わないビームでもよいし、周波数繰り返しを行うが他ビームからの干渉を無視できるビームでもよい。基地局11は更に上位の装置(図示せず)に接続され、配下の移動局14の通信を支援する。
【0014】
サービスエリア内の複数の移動局14の各々は、周波数帯域幅を変更可能であり、シングルキャリアの信号を通信することができる。基地局はFDMA方式で接続される多数の移動局と同時に通信を行う。基地局11及び移動局14間では、衛星中継器12を介して、制御信号は(無線)制御用チャネルを通じて伝送され、データ信号は通信用チャネルを通じて伝送される。この制御用チャネルを通じて、基地局11は、移動局14の送信信号の周波数帯域を制御することができる。なお、制御用チャネルと通信用チャネルは論理的な区分を示し、必ずしも物理的に独立した回線上に存在する必要はない。
【0015】
なお、本発明では衛星中継器12は必須ではないが、図示されるような衛星通信システムで周波数リソースを割り当てる場合に本発明は特に好都合である。
【0016】
図2は、基地局11及び移動局14に関する概略的な機能ブロック図を示す。図2では、基地局及び移動局の機能の内、本発明の説明に特に関係するものが描かれており、他の通常備わっている要素は省略されている。図中、移動局14の側には通信要求制御部21及び送信機27が描かれている。図中、基地局11の側には、通信要求管理部22、移動局管理データベース23、割当周波数帯域幅の制御部24、受信機25及び移動局の送信能力推定部26が描かれている。
【0017】
移動局14内の通信要求制御部21は、通信開始時に新規の周波数割当を要求する場合、既に割当を受けている周波数帯域の解放を要求する場合、後述の制約情報の内容を更新すべき場合、その他の周波数帯域の割当内容を変更すべき場合に、その旨を示す要求信号を作成する。要求信号は制御チャネルを通じて衛星中継器を介して基地局に通知される。
【0018】
送信機27は、基地局11から通知された周波数帯域で信号を送信する。
【0019】
基地局11内の通信要求管理部22は、移動局14からの要求信号を受信する。要求信号には、移動局の識別情報、新規の割当要求、解放要求等を示す情報が含まれている。
【0020】
移動局管理データベース23は、移動局に割り当てることができる周波数帯域の最大値、最小値、周波数割当における移動局間の優先度等の情報(以下、「制約情報」という。)を移動局毎に管理する。この最大値、最小値及び優先度は、その移動局に割り当てる周波数帯域と、全移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係(関数)を決定する。
【0021】
個々の移動局に設定可能な周波数帯域の範囲は、移動局の送信能力や通信環境等の物理的な条件に依存する。例えば、移動局に割り当てられる周波数帯域幅は、移動局が最大の送信電力で信号を送信したときに、受信側(基地局)で測定された受信CNRが所要CNRと一致するときの周波数帯域幅に制限される。それより大きな帯域幅をその移動局に割り当てても基地局で所要CNRを実現できないからである。なお、CNRだけでなく、SIRのような他の信号品質を表す量が測定されてもよい。一方、移動局に設定可能な周波数帯域の範囲は、移動局の物理的な条件の他に、アプリケーションから要求される条件にも依存する。従って、移動局に割当可能な周波数帯域の最大値は、物理的な条件で制限される値及びアプリケーションにより制限される値の何れか小さい方に設定されることが望ましい。また、移動局に割当可能な周波数帯域の最小値は、物理的な条件で制限される値及びアプリケーションにより制限される値の何れか大きい方に設定されることが望ましい。更に、物理的条件やアプリケーションによる条件の他に、電波法等の法規制による制限を加味することもできる。
【0022】
割当周波数帯域幅の制御部24は、移動局毎に設定されている制約情報に応じて、各移動局に割り当てる周波数帯域を算出する。m番目の(mは移動局総数M以下の自然数である)移動局に関する制約情報は、そのm番目の移動局に割り当てられる周波数帯域fmと、全移動局に共通に使用される割当水準パラメータxとの対応関係を定める。従って、正確には、
fm=fm(x;hm,lm,am)
のように表現できるが、簡単のため、fm=fm(x)と略す。fm(x)は、一例として次のように定めることができる。
【0023】
【数2】
図3は、y=fm(x)のグラフの概形を示す。簡明化のため、am=1としている。図4は、lm=hm=A(一定値)の場合のグラフを示す。これは、パラメータxの値によらずyの値は一定となり、固定された周波数帯域しか割り当てらないようなQoSを実現する場合に相当する。図5は、lm=B(一定値),hm=∞の場合のグラフを示す。これは、例えば音声通信用の通信速度を最低限確保しながら、割り当てる周波数帯域幅がパラメータxに比例するようなQoSを実現する場合に相当する。図6は、lm=0及びhm=∞の場合のグラフを示す図である。これは、割り当てる周波数帯域幅が完全にパラメータxに比例するようなQoSを実現する場合に相当する。
【0024】
最大値hm、最小値lm及び優先度am等の制約情報は、移動局毎に異なる値になるかもしれないが、割当水準パラメータxはmの値によらず、総ての移動局に共通に使用されることに留意を要する。従って、1番目の移動局に割り当てられる周波数帯域はf1(x)で表現され、2番目の移動局に割り当てられる周波数帯域はf2(x)で表現され、以下同様にM番目の移動局に割り当てられる周波数帯域はfM(x)で表現される。
【0025】
図2の割当周波数帯域の制御部24は、各移動局の制約情報に基づいて、総ての移動局で使用される周波数帯域の合計が、所望の値Wallとなるような割当水準パラメータxの値x1を導出する。即ち、
Σfm(x)=f1(x)+f2(x)+・・・+fM(x)=Wall・・・(P)
を満たす解x=αを導出する。所望の値Wallは、システム全体で使用可能な全周波数帯域幅である。導出された解x=αをfm(x)の各々に代入することで、各移動局に割り当てる周波数帯域f1(α),f2(α),...,fM(α)が導出される。これらの計算結果は、各移動局14に通知される。
【0026】
受信機25は、衛星中継器12を介して移動局14からの信号を受信する。
【0027】
送信能力推定部26は、移動局からの信号の受信信号品質(例えば、受信CNR)、その移動局に設定されている周波数帯域幅等に基づいて、通信中の環境における移動局の送信能力を推定する。推定結果は移動局管理データベース23に通知され、その移動局に関する制約情報(例えば、割当可能な周波数帯域の最大値)が必要に応じて更新される。
【0028】
一方、無線通信システムで、適応変復調符号化(AMC:Adaptive Modulation and channel Coding)方式が使用されている場合には、受信信号品質に応じて変調多値数及び符号化率が適応的に設定される。送信電力が一定ならば、周波数帯域幅が狭くなるにつれて受信CNRは大きくなる傾向がある。そこで、変調多値数及び符号化率を大きくする代わりに、周波数帯域幅をより狭く設定することで、送信電力及び信号品質を維持しつつ通信速度を向上させることができる。これにより、移動局の有する電力リソースを更に有効活用することができる。
【0029】
図7は、基地局で行われる移動局の周波数帯域を算出するフローを示す。ステップ72では、移動局毎の制約情報が用意される。制約情報は、図2の移動局管理データベース23で管理されている。
【0030】
ステップ74では、上記の(P)で示される方程式を解く計算が行われる。上述したように、制約情報は移動局毎に管理され、制約情報は周波数帯域fmと割当水準パラメータxとの対応関係fm(x)を規定する。図8は様々な関数形のfm(x)、それらの総和及び方程式の解x=αの関係を模式的に示している。
【0031】
ステップ76では、得られた解x=αを用いて、各移動局に割り当てるべき周波数帯域fm(α)(m=1,...,M) を算出し、各移動局に通知する。この通知に応じて、各移動局は使用する周波数帯域幅を変更することができる。
【0032】
これらの一連のステップは、周波数帯域の割当内容を変更する要求がある毎に行われる。そのような要求は、周波数帯域の新たな割当要求があった場合、解放要求があった場合及び制約情報の更新要求があった等の場合に行われる。ステップ74にて各移動局の周波数帯域の総和(Σfm(x))を算出する際に、新規の割当要求についてはその移動局についての関数fk(x)を変更前の総和に加算し、解放要求の場合にはそれを減算することで、演算効率を高めることができる。
【0033】
図9は、同時に通信中の移動局数と移動局に割り当てられた周波数との間の関係の一例を示す。この例では、fm(x)の関数形として図6に示されるものが使用されている(fm(x)=x)。システムで使用可能な全周波数帯域幅を常に総て使用しつつ、同時接続数の変化に伴って、各移動局に割り当てられる周波数帯域幅は公平に変えられている。この例では、移動局各々に割り当てられる周波数帯域幅は、システムで利用可能な周波数帯域幅Wallを同時接続数で除算した値に等しい。
【0034】
ところで、周波数帯域幅を切り替える処理は全移動局が協調して行うべきである。そうでなければ、移動局の送信信号同士が互いに干渉し、所望の通信品質を確保できなくなるおそれがあるからである。このため、移動局同士の間で時間同期が確立され、定期的に又は非定期的に割当周波数帯域の切替を行うことが望ましい。この場合、ある期間内で生じた通信要求や解放要求を集約して一斉に制約情報及び周波数帯域にそれらを反映させるため、切替の頻度は多い方がよい(それが定期的に行われるならば、周期は短い方が望ましい。)。この場合における時間同期は、時分割多元接続(TDMA)方式で行われるような正確なものであることは必須ではなく、各移動局の通信要求に変化が生じる頻度に応じて、適切に時間同期の周期が設定されていればよい。環境の変化が小さく、周波数帯域の切替要求等の発生する頻度が少ない状況下では、時間同期の周期を長くすることができるので、比較的低精度の時間同期能力しか有しない装置でも実現することができる。また、移動局の位置の相違に起因する伝搬遅延時間の相違がある場合、切り替え時における信号の衝突を避けるためのガードタイムが必要である。上記の時間同期の周期がガードタイムに比べて長く設定されていれば、そのようなガードタイムによる伝送効率の低下を抑えることができる。
【0035】
本実施例によれば、システムで使用可能な周波数帯域幅を総て使い切りながら、各移動局のQoSを満たす周波数帯域の割当を実現することができる。本実施例では優先度amを総ての移動局に対して1に固定しているので、移動局は互いに平等であり、公平にリソースが割り当てられる。但し、最大値の総和がシステムで利用可能な周波数帯域より小さい場合には、即ち、
Σhm<Wall
の場合には、システムで使用可能な周波数帯域を総て使い切る状況にはならない。
【実施例2】
【0036】
上記の実施例では、移動局間の優先度amは総て1に設定されていたが、それ以外の値が設定されてもよい。図10に示される例では、移動局1の優先度a1は1に設定されるが、移動局2の優先度a2は1.5に設定され、移動局3の優先度a3は0.5に設定されている。最大値及び最小値については、hm=∞及びlm=0 のように設定されている。優先度がこのように設定されていると、移動局2は移動局1よりも1.5倍多い周波数帯域の割当を受けることができる。移動局3には移動局1の周波数帯域の半分しか割り当てられない。一般に、m番目の移動局を基準にすると、n番目の移動局にはan/am倍の周波数帯域が割り当てられる。このように移動局毎に優先度を設定することで、移動局間で相対的にQoSを制御することができる。実施例1のように優先度を総て同じ値に設定すると、各移動局を均一に取り扱うことができる。
【実施例3】
【0037】
図11は、同時送信局数に関するシステム容量の変化を示すシミュレーション結果を示す。システム容量とは、通信中の移動局全体で達成される通信速度である。図中、4本の曲線の線のうち、2つは従来技術に関するものであり、2つは本発明によるものである。従来技術に関する2つの線のうち一方は適応変調符号化方式を採用している場合で他方は採用していない場合に関連する。本発明に関する2つの線についても、一方は適応変調符号化方式を採用している場合で他方は採用していない場合に関連する。図示されているように、本発明による方式の方が、従来技術よりも大きなシステム容量を達成できていることが分かる。また、適応変調符号化を行わないよりも行った方が、より大きなシステム容量を実現できることも分かる。
【0038】
従来技術では1つの移動局に割り当てられる周波数帯域は固定されているので、同時接続数が増えるにつれて線形にシステム容量が増えていることが分かる。シミュレーションでは、移動局の送信能力に限界のあることが想定されている(0<hm<∞)。従って、本発明に関し、同時接続数が少ない場合は、使用可能な周波数帯域総てを使い切ることはできないのでシステム容量は少ないが、同時接続数が増えるにつれてシステム容量が大幅に増加していることが分かる。仮に、移動局の送信能力に限界がなかったとすると(hm=∞)、同時接続数によらず、常に最大のシステム容量(この例では、約42Mbps)を維持することができる。
【0039】
図12は、1移動局についての通信速度に関するシミュレーション結果を示す。図示されているように、本発明による方式の方が、従来技術よりも大きなビットレートを達成できていることが分かる。また、適応変調符号化を行わないよりも行った方が、より大きなビットレートを実現できることも分かる。従来技術では1つの移動局に割り当てられる周波数帯域は固定されているので、同時接続数によらず一定のビットレートが維持される。図示されているように、同時接続数が少ない場合には、移動局は、送信能力の許す限り、非常に大きなビットレートが実現できるような周波数帯域の割り当てを受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】通信システムの一例を示す図である。
【図2】基地局及び移動局の概略ブロック図を示す。
【図3】y=fm(x)のグラフを示す図である。
【図4】y=fm(x)のグラフを示す図(lm=hm=A)である。
【図5】y=fm(x)のグラフを示す図(lm=B,hm=∞)である。
【図6】y=fm(x)のグラフを示す図(lm=0,hm=∞)である。
【図7】各移動局の周波数帯域を算出するフローチャートを示す。
【図8】Σfm(x)=Wallを計算する様子を示す図である。
【図9】同時接続数及び割り当てられた周波数帯域の一例を示す図である。
【図10】優先度amの異なる関数fm(x)の例を示す図である。
【図11】システム容量に関するシミュレーション結果を示す図である。
【図12】通信速度に関するシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
11 基地局
12 衛星中継器
13 サービスエリア
14 移動局
21 通信要求制御部
22 通信要求管理部
23 移動局管理データベース
24 割当周波数帯域幅の制御部
25 受信機
26 送信能力推定部
27 送信機
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に無線通信の技術分野に関し、特に複数の移動局が周波数分割多元接続(FDMA)方式で基地局と通信する無線通信システムにおける周波数割当装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の移動局と1つの基地局との多元接続方法の1つであるFDMA方式では、移動局各々に周波数帯域幅が割り当てられ、移動局はその帯域を占有できる。従って、FDMA方式によれば、移動局に搭載する送信機の構成及び機能を簡易に設計することができる。このため、FDMA方式は、電力制限の厳しい静止衛星を介した衛星通信システムや、端末の大きさに制限のある移動通信システム等の用途に適している。
【0003】
一例として、非特許文献1に記載されているような衛星通信システムがある。このシステムは、基地局と移動局が固定された周波数帯域幅(非マルチレート方式)のシングルキャリアを用いて通信を行う。このような方式は、SCPC(Single Carrier Per Channel)方式と呼ばれる。SCPCは、マルチキャリア方式のMCPCと比較して、移動局に搭載されたアンプの能力を有効に利用することができる。従来想定されていたアプリケーションは主に音声通信のみであるので、要求される伝送速度はほぼ一定であり、所望のサービス品質(QoS:Quality of Service)を効率よく実現することができる。更に、1キャリア当たりの周波数帯域は固定されているので、同時に通信している移動局数(同時接続数)が最大値に達するまでは、通信要求の発生順序に関係なく公平に周波数を割り当てることができる。
【非特許文献1】「Sバンドを用いる国内移動衛星通信システム」,ARIB STD−T49 3.0版,社団法人 電波産業界,p.5,p.10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のシステムでは、システム全体でなされる通信量は同時接続数に比例する。従って、同時接続数が少ない状況では、システムに用意されているリソース(周波数や衛星中継器の電力等)が十分に活用されておらず、それは望ましい状況ではない。移動局に割り当てる周波数帯域幅を大きくすれば、同時接続数が少ない状況でのリソースの利用効率を幾分向上させることができるかもしれない。しかしながら、そのようにすると、同時接続数の最大値が小さくなり、より多くのユーザ数を収容する観点からはそれは望ましくない。
【0005】
一方、インターネット上で伝送されるトラフィックは非常に多くのアプリケーションを含み、各アプリケーションの要求する速度も同じではない。非マルチレートの従来のシステムは、このようなトラフィックを効率よく収容することは困難であるので、将来的な通信システムにはマルチレート化(通信速度を変更する機能を備えること)が求められる。通信速度が変更可能になるということは、移動局に割り当てられる周波数帯域幅を変更可能にすることになる。更に、様々なアプリケーションに対する要求を満足すること、柔軟なQoS制御を実現すること、移動局間の公平性を保つこと等も望まれる。
【0006】
本発明は、上記問題点の少なくとも1つに対処するためになされたものであり、その課題は、SCPC及びFDMA方式を利用する通信システムにおいて、周波数リソースを有効に活用しながらマルチレート化を図る周波数帯域割当装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、シングルキャリアの信号を通信するための周波数帯域を変更することができる複数の移動局基地局と周波数分割多元接続(FDMA)方式で接続される無線通信システムに使用される周波数割当装置が使用される。本装置は、移動局に割り当てられる帯域と、総ての移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係を定める制約条件を、移動局毎に管理するデータベースと、総ての移動局に割り当てられる帯域の合計が無線通信システムにおける所望の値になるような割当水準パラメータの値を導出する手段と、導出された割当水準パラメータに基づいて、空き帯域が最小になるように各移動局に割り当てる帯域をそれぞれ算出する手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、SCPC及びFDMA方式を利用する通信システムで周波数帯域を割り当てる際に、周波数リソースを有効に活用しながらマルチレート化に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一態様による周波数帯域割当装置では、移動局から新規の周波数割当要求が発生したときや、既に周波数帯域の割当を受けている移動局からその解放要求が発生したときに周波数帯域の割当内容が変更される。割当内容は、各移動局に割り当てる周波数帯域幅の合計が、システムで使用可能な全周波数帯域幅と一致するように算出される。システムで使用可能な全周波数帯域幅は、割当を要求する移動局数によらない一定の値である。これにより、同時接続数がいくつでも周波数リソースを有効に活用することができる。言い換えれば、割当を要求する移動局の総数の増減に関わらず空きとなる帯域が常に最低量になるように周波数リソースを活用できる。特に、同時接続数が少ない場合でもシステム全体の通信容量を大きくすることができ且つ移動局当たりの通信速度を大きくすることもできる。このような周波数帯域割当装置は、典型的には基地局に設けられるが、基地局以外の場所に設けられてもよい。
【0010】
割当内容は、Σfm(x)=Wall を満たす解x=αを用いて導出されてもよい。ここで、fm(x)はm番目の移動局に割り当てられる帯域を表し、xは割当水準パラメータを表す。Wallはシステムで使用可能な全周波数帯域幅である。これにより、各移動局に割り当てる適切な周波数帯域を速やかに導出することができる。
【0011】
データベースは、移動局のハードウエアの条件から定められる帯域の第1の下限値及び上限値と、前記移動局に提供されるサービスの要求から定められる帯域の第2の下限値及び上限値とを管理してもよい。移動局に割り当てられる帯域の最小値は、第1及び第2の下限値の内の大きい方に設定されてもよい。移動局に移動局に割り当てられる帯域の最大値は、第1及び第2の上限値の内の小さい方に設定されてもよい。
【0012】
複数の移動局が同期して周波数帯域を変更するように、各移動局に割り当てる帯域が通知されてもよい。これにより、不適切な周波数帯域の割当がなされてしまうことを回避できる。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明を使用するシステムの一例を示す。図1には、基地局11と、衛星中継器12と、サービスエリア13とが描かれている。サービスエリア13内には複数の移動局14が存在する。サービスエリアは、シングルビーム又はマルチビームで形成される。マルチビームは、周波数繰り返しを行わないビームでもよいし、周波数繰り返しを行うが他ビームからの干渉を無視できるビームでもよい。基地局11は更に上位の装置(図示せず)に接続され、配下の移動局14の通信を支援する。
【0014】
サービスエリア内の複数の移動局14の各々は、周波数帯域幅を変更可能であり、シングルキャリアの信号を通信することができる。基地局はFDMA方式で接続される多数の移動局と同時に通信を行う。基地局11及び移動局14間では、衛星中継器12を介して、制御信号は(無線)制御用チャネルを通じて伝送され、データ信号は通信用チャネルを通じて伝送される。この制御用チャネルを通じて、基地局11は、移動局14の送信信号の周波数帯域を制御することができる。なお、制御用チャネルと通信用チャネルは論理的な区分を示し、必ずしも物理的に独立した回線上に存在する必要はない。
【0015】
なお、本発明では衛星中継器12は必須ではないが、図示されるような衛星通信システムで周波数リソースを割り当てる場合に本発明は特に好都合である。
【0016】
図2は、基地局11及び移動局14に関する概略的な機能ブロック図を示す。図2では、基地局及び移動局の機能の内、本発明の説明に特に関係するものが描かれており、他の通常備わっている要素は省略されている。図中、移動局14の側には通信要求制御部21及び送信機27が描かれている。図中、基地局11の側には、通信要求管理部22、移動局管理データベース23、割当周波数帯域幅の制御部24、受信機25及び移動局の送信能力推定部26が描かれている。
【0017】
移動局14内の通信要求制御部21は、通信開始時に新規の周波数割当を要求する場合、既に割当を受けている周波数帯域の解放を要求する場合、後述の制約情報の内容を更新すべき場合、その他の周波数帯域の割当内容を変更すべき場合に、その旨を示す要求信号を作成する。要求信号は制御チャネルを通じて衛星中継器を介して基地局に通知される。
【0018】
送信機27は、基地局11から通知された周波数帯域で信号を送信する。
【0019】
基地局11内の通信要求管理部22は、移動局14からの要求信号を受信する。要求信号には、移動局の識別情報、新規の割当要求、解放要求等を示す情報が含まれている。
【0020】
移動局管理データベース23は、移動局に割り当てることができる周波数帯域の最大値、最小値、周波数割当における移動局間の優先度等の情報(以下、「制約情報」という。)を移動局毎に管理する。この最大値、最小値及び優先度は、その移動局に割り当てる周波数帯域と、全移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係(関数)を決定する。
【0021】
個々の移動局に設定可能な周波数帯域の範囲は、移動局の送信能力や通信環境等の物理的な条件に依存する。例えば、移動局に割り当てられる周波数帯域幅は、移動局が最大の送信電力で信号を送信したときに、受信側(基地局)で測定された受信CNRが所要CNRと一致するときの周波数帯域幅に制限される。それより大きな帯域幅をその移動局に割り当てても基地局で所要CNRを実現できないからである。なお、CNRだけでなく、SIRのような他の信号品質を表す量が測定されてもよい。一方、移動局に設定可能な周波数帯域の範囲は、移動局の物理的な条件の他に、アプリケーションから要求される条件にも依存する。従って、移動局に割当可能な周波数帯域の最大値は、物理的な条件で制限される値及びアプリケーションにより制限される値の何れか小さい方に設定されることが望ましい。また、移動局に割当可能な周波数帯域の最小値は、物理的な条件で制限される値及びアプリケーションにより制限される値の何れか大きい方に設定されることが望ましい。更に、物理的条件やアプリケーションによる条件の他に、電波法等の法規制による制限を加味することもできる。
【0022】
割当周波数帯域幅の制御部24は、移動局毎に設定されている制約情報に応じて、各移動局に割り当てる周波数帯域を算出する。m番目の(mは移動局総数M以下の自然数である)移動局に関する制約情報は、そのm番目の移動局に割り当てられる周波数帯域fmと、全移動局に共通に使用される割当水準パラメータxとの対応関係を定める。従って、正確には、
fm=fm(x;hm,lm,am)
のように表現できるが、簡単のため、fm=fm(x)と略す。fm(x)は、一例として次のように定めることができる。
【0023】
【数2】
図3は、y=fm(x)のグラフの概形を示す。簡明化のため、am=1としている。図4は、lm=hm=A(一定値)の場合のグラフを示す。これは、パラメータxの値によらずyの値は一定となり、固定された周波数帯域しか割り当てらないようなQoSを実現する場合に相当する。図5は、lm=B(一定値),hm=∞の場合のグラフを示す。これは、例えば音声通信用の通信速度を最低限確保しながら、割り当てる周波数帯域幅がパラメータxに比例するようなQoSを実現する場合に相当する。図6は、lm=0及びhm=∞の場合のグラフを示す図である。これは、割り当てる周波数帯域幅が完全にパラメータxに比例するようなQoSを実現する場合に相当する。
【0024】
最大値hm、最小値lm及び優先度am等の制約情報は、移動局毎に異なる値になるかもしれないが、割当水準パラメータxはmの値によらず、総ての移動局に共通に使用されることに留意を要する。従って、1番目の移動局に割り当てられる周波数帯域はf1(x)で表現され、2番目の移動局に割り当てられる周波数帯域はf2(x)で表現され、以下同様にM番目の移動局に割り当てられる周波数帯域はfM(x)で表現される。
【0025】
図2の割当周波数帯域の制御部24は、各移動局の制約情報に基づいて、総ての移動局で使用される周波数帯域の合計が、所望の値Wallとなるような割当水準パラメータxの値x1を導出する。即ち、
Σfm(x)=f1(x)+f2(x)+・・・+fM(x)=Wall・・・(P)
を満たす解x=αを導出する。所望の値Wallは、システム全体で使用可能な全周波数帯域幅である。導出された解x=αをfm(x)の各々に代入することで、各移動局に割り当てる周波数帯域f1(α),f2(α),...,fM(α)が導出される。これらの計算結果は、各移動局14に通知される。
【0026】
受信機25は、衛星中継器12を介して移動局14からの信号を受信する。
【0027】
送信能力推定部26は、移動局からの信号の受信信号品質(例えば、受信CNR)、その移動局に設定されている周波数帯域幅等に基づいて、通信中の環境における移動局の送信能力を推定する。推定結果は移動局管理データベース23に通知され、その移動局に関する制約情報(例えば、割当可能な周波数帯域の最大値)が必要に応じて更新される。
【0028】
一方、無線通信システムで、適応変復調符号化(AMC:Adaptive Modulation and channel Coding)方式が使用されている場合には、受信信号品質に応じて変調多値数及び符号化率が適応的に設定される。送信電力が一定ならば、周波数帯域幅が狭くなるにつれて受信CNRは大きくなる傾向がある。そこで、変調多値数及び符号化率を大きくする代わりに、周波数帯域幅をより狭く設定することで、送信電力及び信号品質を維持しつつ通信速度を向上させることができる。これにより、移動局の有する電力リソースを更に有効活用することができる。
【0029】
図7は、基地局で行われる移動局の周波数帯域を算出するフローを示す。ステップ72では、移動局毎の制約情報が用意される。制約情報は、図2の移動局管理データベース23で管理されている。
【0030】
ステップ74では、上記の(P)で示される方程式を解く計算が行われる。上述したように、制約情報は移動局毎に管理され、制約情報は周波数帯域fmと割当水準パラメータxとの対応関係fm(x)を規定する。図8は様々な関数形のfm(x)、それらの総和及び方程式の解x=αの関係を模式的に示している。
【0031】
ステップ76では、得られた解x=αを用いて、各移動局に割り当てるべき周波数帯域fm(α)(m=1,...,M) を算出し、各移動局に通知する。この通知に応じて、各移動局は使用する周波数帯域幅を変更することができる。
【0032】
これらの一連のステップは、周波数帯域の割当内容を変更する要求がある毎に行われる。そのような要求は、周波数帯域の新たな割当要求があった場合、解放要求があった場合及び制約情報の更新要求があった等の場合に行われる。ステップ74にて各移動局の周波数帯域の総和(Σfm(x))を算出する際に、新規の割当要求についてはその移動局についての関数fk(x)を変更前の総和に加算し、解放要求の場合にはそれを減算することで、演算効率を高めることができる。
【0033】
図9は、同時に通信中の移動局数と移動局に割り当てられた周波数との間の関係の一例を示す。この例では、fm(x)の関数形として図6に示されるものが使用されている(fm(x)=x)。システムで使用可能な全周波数帯域幅を常に総て使用しつつ、同時接続数の変化に伴って、各移動局に割り当てられる周波数帯域幅は公平に変えられている。この例では、移動局各々に割り当てられる周波数帯域幅は、システムで利用可能な周波数帯域幅Wallを同時接続数で除算した値に等しい。
【0034】
ところで、周波数帯域幅を切り替える処理は全移動局が協調して行うべきである。そうでなければ、移動局の送信信号同士が互いに干渉し、所望の通信品質を確保できなくなるおそれがあるからである。このため、移動局同士の間で時間同期が確立され、定期的に又は非定期的に割当周波数帯域の切替を行うことが望ましい。この場合、ある期間内で生じた通信要求や解放要求を集約して一斉に制約情報及び周波数帯域にそれらを反映させるため、切替の頻度は多い方がよい(それが定期的に行われるならば、周期は短い方が望ましい。)。この場合における時間同期は、時分割多元接続(TDMA)方式で行われるような正確なものであることは必須ではなく、各移動局の通信要求に変化が生じる頻度に応じて、適切に時間同期の周期が設定されていればよい。環境の変化が小さく、周波数帯域の切替要求等の発生する頻度が少ない状況下では、時間同期の周期を長くすることができるので、比較的低精度の時間同期能力しか有しない装置でも実現することができる。また、移動局の位置の相違に起因する伝搬遅延時間の相違がある場合、切り替え時における信号の衝突を避けるためのガードタイムが必要である。上記の時間同期の周期がガードタイムに比べて長く設定されていれば、そのようなガードタイムによる伝送効率の低下を抑えることができる。
【0035】
本実施例によれば、システムで使用可能な周波数帯域幅を総て使い切りながら、各移動局のQoSを満たす周波数帯域の割当を実現することができる。本実施例では優先度amを総ての移動局に対して1に固定しているので、移動局は互いに平等であり、公平にリソースが割り当てられる。但し、最大値の総和がシステムで利用可能な周波数帯域より小さい場合には、即ち、
Σhm<Wall
の場合には、システムで使用可能な周波数帯域を総て使い切る状況にはならない。
【実施例2】
【0036】
上記の実施例では、移動局間の優先度amは総て1に設定されていたが、それ以外の値が設定されてもよい。図10に示される例では、移動局1の優先度a1は1に設定されるが、移動局2の優先度a2は1.5に設定され、移動局3の優先度a3は0.5に設定されている。最大値及び最小値については、hm=∞及びlm=0 のように設定されている。優先度がこのように設定されていると、移動局2は移動局1よりも1.5倍多い周波数帯域の割当を受けることができる。移動局3には移動局1の周波数帯域の半分しか割り当てられない。一般に、m番目の移動局を基準にすると、n番目の移動局にはan/am倍の周波数帯域が割り当てられる。このように移動局毎に優先度を設定することで、移動局間で相対的にQoSを制御することができる。実施例1のように優先度を総て同じ値に設定すると、各移動局を均一に取り扱うことができる。
【実施例3】
【0037】
図11は、同時送信局数に関するシステム容量の変化を示すシミュレーション結果を示す。システム容量とは、通信中の移動局全体で達成される通信速度である。図中、4本の曲線の線のうち、2つは従来技術に関するものであり、2つは本発明によるものである。従来技術に関する2つの線のうち一方は適応変調符号化方式を採用している場合で他方は採用していない場合に関連する。本発明に関する2つの線についても、一方は適応変調符号化方式を採用している場合で他方は採用していない場合に関連する。図示されているように、本発明による方式の方が、従来技術よりも大きなシステム容量を達成できていることが分かる。また、適応変調符号化を行わないよりも行った方が、より大きなシステム容量を実現できることも分かる。
【0038】
従来技術では1つの移動局に割り当てられる周波数帯域は固定されているので、同時接続数が増えるにつれて線形にシステム容量が増えていることが分かる。シミュレーションでは、移動局の送信能力に限界のあることが想定されている(0<hm<∞)。従って、本発明に関し、同時接続数が少ない場合は、使用可能な周波数帯域総てを使い切ることはできないのでシステム容量は少ないが、同時接続数が増えるにつれてシステム容量が大幅に増加していることが分かる。仮に、移動局の送信能力に限界がなかったとすると(hm=∞)、同時接続数によらず、常に最大のシステム容量(この例では、約42Mbps)を維持することができる。
【0039】
図12は、1移動局についての通信速度に関するシミュレーション結果を示す。図示されているように、本発明による方式の方が、従来技術よりも大きなビットレートを達成できていることが分かる。また、適応変調符号化を行わないよりも行った方が、より大きなビットレートを実現できることも分かる。従来技術では1つの移動局に割り当てられる周波数帯域は固定されているので、同時接続数によらず一定のビットレートが維持される。図示されているように、同時接続数が少ない場合には、移動局は、送信能力の許す限り、非常に大きなビットレートが実現できるような周波数帯域の割り当てを受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】通信システムの一例を示す図である。
【図2】基地局及び移動局の概略ブロック図を示す。
【図3】y=fm(x)のグラフを示す図である。
【図4】y=fm(x)のグラフを示す図(lm=hm=A)である。
【図5】y=fm(x)のグラフを示す図(lm=B,hm=∞)である。
【図6】y=fm(x)のグラフを示す図(lm=0,hm=∞)である。
【図7】各移動局の周波数帯域を算出するフローチャートを示す。
【図8】Σfm(x)=Wallを計算する様子を示す図である。
【図9】同時接続数及び割り当てられた周波数帯域の一例を示す図である。
【図10】優先度amの異なる関数fm(x)の例を示す図である。
【図11】システム容量に関するシミュレーション結果を示す図である。
【図12】通信速度に関するシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
11 基地局
12 衛星中継器
13 サービスエリア
14 移動局
21 通信要求制御部
22 通信要求管理部
23 移動局管理データベース
24 割当周波数帯域幅の制御部
25 受信機
26 送信能力推定部
27 送信機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルキャリアの信号を通信するための周波数帯域を変更することができる複数の移動局が基地局と周波数分割多元接続(FDMA)方式で接続される無線通信システムに使用される周波数割当装置であって、
移動局に割り当てられる帯域と、総ての移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係を定める制約条件を、移動局毎に管理するデータベースと、
総ての移動局に割り当てられる帯域の合計が無線通信システムにおける所望の値になるような割当水準パラメータの値を導出する手段と、
導出された割当水準パラメータに基づいて、空き帯域が最小になるように各移動局に割り当てる帯域をそれぞれ算出する手段と、
を有することを特徴とする周波数割当装置。
【請求項2】
前記対応関係が次式で表現され、
【数1】
ここで、fm(x)はm番目の移動局に割り当てられる帯域を表し、xは割当水準パラメータを表し、lmはm番目の移動局に割り当てられる帯域の最小値を表し、hmはm番目の移動局に割り当てられる帯域の最大値を表し、amは移動局間の相対的な優先度を表す
ことを特徴とする請求項1記載の周波数割当装置。
【請求項3】
前記データベースが、移動局のハードウエアの条件から定められる帯域の第1の下限値及び上限値と、前記移動局に提供されるサービスの要求から定められる帯域の第2の下限値及び上限値とを管理し、
前記移動局に割り当てられる帯域の最小値は前記第1及び第2の下限値の内の大きい方に設定され、
前記移動局に割り当てられる帯域の最大値は前記第1及び第2の上限値の内の小さい方に設定される
ことを特徴とする請求項1記載の周波数割当装置。
【請求項4】
複数の移動局が同期して周波数帯域を変更するように、各移動局に割り当てる帯域が通知される
ことを特徴とする請求項1記載の周波数割当装置。
【請求項5】
適応変調符号化(AMC)方式を利用する無線通信システムに使用される
ことを特徴とする請求項1記載の周波数割当装置。
【請求項6】
シングルキャリアの信号を通信するための周波数帯域を変更することができる複数の移動局が基地局と周波数分割多元接続(FDMA)方式で接続される無線通信システムに使用される周波数割当方法であって、
移動局に割り当てられる帯域と総ての移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係を定める制約条件を移動局毎に設定し、
総ての移動局に割り当てられる帯域の合計が無線通信システムにおける所望の値になるような割当水準パラメータの値を導出し、
導出された割当水準パラメータに基づいて、空き帯域が最小になるように各移動局に割り当てる帯域をそれぞれ算出する
ことを特徴とする周波数割当方法。
【請求項1】
シングルキャリアの信号を通信するための周波数帯域を変更することができる複数の移動局が基地局と周波数分割多元接続(FDMA)方式で接続される無線通信システムに使用される周波数割当装置であって、
移動局に割り当てられる帯域と、総ての移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係を定める制約条件を、移動局毎に管理するデータベースと、
総ての移動局に割り当てられる帯域の合計が無線通信システムにおける所望の値になるような割当水準パラメータの値を導出する手段と、
導出された割当水準パラメータに基づいて、空き帯域が最小になるように各移動局に割り当てる帯域をそれぞれ算出する手段と、
を有することを特徴とする周波数割当装置。
【請求項2】
前記対応関係が次式で表現され、
【数1】
ここで、fm(x)はm番目の移動局に割り当てられる帯域を表し、xは割当水準パラメータを表し、lmはm番目の移動局に割り当てられる帯域の最小値を表し、hmはm番目の移動局に割り当てられる帯域の最大値を表し、amは移動局間の相対的な優先度を表す
ことを特徴とする請求項1記載の周波数割当装置。
【請求項3】
前記データベースが、移動局のハードウエアの条件から定められる帯域の第1の下限値及び上限値と、前記移動局に提供されるサービスの要求から定められる帯域の第2の下限値及び上限値とを管理し、
前記移動局に割り当てられる帯域の最小値は前記第1及び第2の下限値の内の大きい方に設定され、
前記移動局に割り当てられる帯域の最大値は前記第1及び第2の上限値の内の小さい方に設定される
ことを特徴とする請求項1記載の周波数割当装置。
【請求項4】
複数の移動局が同期して周波数帯域を変更するように、各移動局に割り当てる帯域が通知される
ことを特徴とする請求項1記載の周波数割当装置。
【請求項5】
適応変調符号化(AMC)方式を利用する無線通信システムに使用される
ことを特徴とする請求項1記載の周波数割当装置。
【請求項6】
シングルキャリアの信号を通信するための周波数帯域を変更することができる複数の移動局が基地局と周波数分割多元接続(FDMA)方式で接続される無線通信システムに使用される周波数割当方法であって、
移動局に割り当てられる帯域と総ての移動局に共通に使用される割当水準パラメータとの対応関係を定める制約条件を移動局毎に設定し、
総ての移動局に割り当てられる帯域の合計が無線通信システムにおける所望の値になるような割当水準パラメータの値を導出し、
導出された割当水準パラメータに基づいて、空き帯域が最小になるように各移動局に割り当てる帯域をそれぞれ算出する
ことを特徴とする周波数割当方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−333405(P2006−333405A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158119(P2005−158119)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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