説明

味の改善方法及び改善された味を有する口腔ケア組成物

改善された味を有する口腔ケア組成物に関する組成及び方法が本明細書で提供される。1つのこのような方法は、金属塩、過酸化物、抗菌剤、口臭低減剤、界面活性剤又はこれらの組み合わせを含む口腔ケア組成物を供給することと、この口腔ケア組成物にTRPV1活性化因子及び/又はバニトロープを添加することと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された味を有する口腔ケア組成物、及び、口腔ケア組成物の味の改善方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
人々は、彼らの笑顔並びに彼らの歯及び口腔の健康を改善する方法を常に求めている。多くの人にとって、練り歯磨き及びリンスのような口腔ケア組成物を使用することが、改善方法の第一段階になる。こうした種類の製品を使用することから達成される効果は、美白及び爽やかな息のような美容効果から、歯石の低減のような健康効果まで、広範囲に及ぶ。残念なことに、所望の効果を与える作用剤などの、口腔ケア組成物で使用される多くの成分は、多くの場合、製品の全体の味に負の影響を有する。そのため、口腔ケア組成物に改善された風味を提供する方法及び改善された風味を有する口腔ケア組成物に対して必要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態では、本発明は、口腔ケア組成物の味の改善方法を目的とする。この方法は、口腔ケア組成物を形成するために、TRPV1活性化因子と、金属塩、過酸化物、抗菌剤、口臭低減剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される悪味作用物質と、を混合することを含む。
【0004】
別の実施形態では、本発明は、口腔ケア組成物の味の改善方法を目的とし、この方法は、口腔ケア組成物を形成するために、バニリルブチルエーテルと、亜鉛塩、スズ塩、カリウム塩、銅塩又はこれらの組み合わせを含む悪味作用物質と、を混合することを含み、バニリルブチルエーテルは口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約0.025重量%の量で存在する。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、口腔ケア組成物の味の改善方法を目的とし、この方法は、口腔ケア組成物を形成するために、バニトロープと、金属塩、過酸化物又はこれらの組み合わせを含む悪味作用物質と、を混合することを含み、バニトロープは口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約0.4重量%の量で存在する。
【0006】
本発明のこれら並びに他の実施形態は、以下の説明から、より良く理解されると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
本明細書の以下で使用されるすべての百分率及び比率は、特に指示がない限り、組成物全体の重量を基準とする。本明細書で言及される成分の百分率、比率及び濃度は、特に指示がない限りすべて成分の実際の量に基づき、市販製品として成分と組み合わされている可能性がある溶媒、充填剤、又はその他の物質を包含しない。
【0008】
本明細書において言及されるすべての測定は、特に規定されない限り、25℃(すなわち、室温)で実施される。
【0009】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、±10パーセントを意味する。
【0010】
本明細書で使用するとき、用語「包含する」及びその変形は、挙げられている項目の詳細説明が、本発明の材料、組成物、装置、及び方法に同様に有用であると考えられる他の類似の項目を除外しないように、非限定的であることを意図している。
【0011】
「口腔ケア組成物」とは、通常の使用過程において、特定の治療剤を全身投与する目的で意図的に嚥下されるものではなく、むしろ、歯の表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたって口腔内に保持される製品を意味する。口腔ケア組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、フォーム、マウススプレー、ドロップ、咀嚼錠、チューインガム又は義歯ケア製品などの様々な形態であってよい。口腔ケア組成物は、口腔表面に直接適用又は取り付けるためにストリップ又はフィルムに組み込まれてもよい。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「歯磨剤」は、特に指定がない限り、ペースト、ゲル、又は液体製剤を含む。歯磨剤は、例えば、縞模様のペーストのような二相形態であることができ、レジメンとして使用することもできる。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「悪味作用物質(bad taste agent)」は、使用者に、例えば、金属味又は渋味といった、有害な味、又は、例えば、口が渇いた感覚といった、有害な知覚を与える、口腔ケア組成物中の成分を指す。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「歯」は、天然歯、並びに人工歯又は歯科補綴物を指す。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「TRPV1」は、小直径の感覚ニューロン上に優先的に発現し、有害物質並びに他の物質を検出する、リガンド開口型、非選択性カチオンチャネルである、一過性受容器電位バニロイド受容体1を指す。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「TRPV1活性化因子」は、1mMの濃度にて、本明細書で説明されているようにFLIPR法に従って、細胞中に存在するカルシウムのバックグラウンド濃度よりも少なくとも1000カウント大きいカルシウム流動カウントを与える、任意の成分を指す。用語「カウント」は、細胞膜を通過してのカルシウムの流入(これは、細胞内に存在するカルシウム感受性色素と反応する)に起因する、形質移入された細胞株の蛍光における変化として定義される。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「TRPV1エンハンサー」は、TRPV1を直接活性化する化合物のカルシウム流動活性を促進するが、TRPV1を直接活性化しない任意の成分を指す。
【0018】
本明細書に有用な活性物質及び他の成分は、美容的及び/若しくは治療的な効果、又はそれらが要求される作用様式若しくは機能によって、本明細書中で分類又は記述することができる。ただし、本明細書に有用な活性物質及び他の成分が、場合によっては美容的及び/若しくは治療的な1を超える効果をもたらすこと、又は1を超える作用様式で作用することもあることを理解すべきである。したがって、本明細書での分類は便宜上実施されるものであり、成分を列挙される具体的に規定した作用又は活性に制限しようとするものではない。
【0019】
口腔ケア組成物及び方法
口腔の洗浄及びケアでの使用のための消費者製品が、爽やかさと清潔さが持続しているという信号を消費者に提供しながら、爽やかで清潔な感覚を付与することは非常に望ましい。清潔さの感覚に加えて、消費者はまた、例えば、口腔ケアレジメンを通して、抗歯石剤のような口腔ケア活性剤の効果を経験することも望む。しかしながら、消費者が受容可能な口腔ケア組成物を配合する技能は、風味を付与し、利益を送達するために使用される又は口腔ケア組成物のベースの一部である成分の多くが、これらが添加される目的とされる効果と共に、望ましくない味及び/又は感覚を付与してしまうことで、難題を引き起こす。それゆえに、口腔ケア組成物の配合は、受容可能な風味と受容可能な効果との間の平衡を取る作業であり得る。
【0020】
下記で見られるように、口腔ケア組成物を配合するために使用できる成分の多くは、異味を提供し、それゆえに消費者が許容可能な製品を配合するのを難題にする。特定の成分を口腔ケア組成物に添加することにより、下記で議論される成分の多くに伴う異味を低減し、ひいては味を改善することができることが遂に発見された。これらの味改善成分としては、例えば、TRPV1活性化因子及びバニトロープが挙げられる。
【0021】
口腔ケア組成物において味を改善するのを助ける成分の第一群は、一過性受容器電位バニロイド1(TRPV1)活性化因子である。TRPV1は、小直径の感覚ニューロン上に優先的に発現するリガンド開口型の非選択性カチオンチャネルである。この受容体に着目したところ、この受容体の活性化は驚くべき効果を生じることが発見された。異味の成分を有する口腔ケア組成物にTRPV1活性化因子を添加することにより、この組成物の使用者は、TRPV1活性化因子を有さない口腔ケア組成物に勝る改善された味を経験した。このように、TRPV1活性化因子は、口腔ケア組成物中で使用される多くの成分に伴う悪味を相殺する働きをする。
【0022】
TRPV1が活性化されたかどうかを判定するために、TRPV1受容体中の細胞内カルシウムイオン(Ca+2)濃度を測定する。ヒトのTRPV1で安定に形質移入したHEK−23(ヒト胎児腎臓)細胞を、5% COに設定された哺乳動物細胞培養インキュベーター内で75Cmフラスコ内の増殖培地15mL[10% FBS(ウシ胎児血清)、100μg/mLペニシリン/ストレプトマイシン、100μg/mL G418を添加した高グルコースDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)]で3日にわたって、33℃にて増殖させる。PBS10mL(リン酸緩衝生理食塩水)を添加し、手で穏やかに振盪することにより、細胞を剥離する。細胞を50mLのチューブに移し、850rpmで3分にわたって遠心分離させて、PBSを除去する。遠心分離後、細胞のペレットがチューブの底に形成される。これらを上清溶液から分離する。上清を捨て、細胞ペレットを1mLの新鮮な増殖培地中で懸濁し、これに5μL(12.5μg)のFluo−4 AM(Molecular Probes,Inc.)カルシウム指示薬を添加し、穏やかに振盪しながら30分にわたってインキュベートする。Fluo−4は、細胞内Ca2+濃度を100nM〜1μMの範囲で定量するために用いられる蛍光色素である。この30分の終わりに、アッセイ用緩衝液45mL[1xHBSS(ハンクス平衡塩類溶液)、20mM HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)]を加えて細胞を洗浄し、次いで得られた組み合わせを850rpmで3分にわたって遠心分離して、余分な緩衝液及びFluo−4AMカルシウム指示薬を除去する。
【0023】
ペレット状の細胞をアッセイ用緩衝液10mLに再懸濁させ、10μLの試験化合物(アッセイ用緩衝液中1mM、最終濃度100μM)又は緩衝剤対照を含有する96ウェルのアッセイプレートに、1ウェルにつき90μLのアリコート(およそ細胞50,000個)を撒き、室温にて30分にわたってインキュベートする。30分後、プレートを蛍光測定画像解析用プレートリーダー(Molecular DevicesからのFLIPR384)に配置し、定常蛍光度を記録する(励起波長488nm及び発光波長510nm)。細胞内カルシウムの濃度の変化を検出するために、FLIPRアッセイは一般に認められた方法である。次に、TRPV1活性化因子として試験される分子20μLを添加し、蛍光度を記録する。TRPV1に対する試験化合物の直接的な効果を判断するために、各化合物の添加直後に蛍光度を測定する。FLIPR法についての追加的な議論をSmartら、Characterization using FLIPR of human vanilloid VR1 receptor pharmacology,European Journal of Pharmacology 417,51〜58(2001)及びLiuら、Development and validation of a platelet calcium flux assay using a fluorescent imaging plate reader,Analytical Biochemistry 357,216〜224(2006)に見ることができる。
【0024】
TRPV1は、例えば、有害な刺激及び有痛性の刺激の両方に反応する。有害な刺激としては、灼熱(すなわち、辛さ)感を与えるものが挙げられる。以下の表は、この部類に属するいくつかのTRPV1活性化因子を列挙し、標準スコヴィル辛味尺度に基づいて測定される灼熱感を与える。
【表1】

【0025】
これらの化合物の多くが天然供給源に由来するので、加温効果を及ぼす濃度で使用されると、多くの場合、原材料の固有の辛味を保持する。例えば、ピペリンはコショウのようであり、カプサイシンは赤唐辛子のようであり、ジンゲロンはショウガの辛味を保持する。これはまた、米国特許第6570010(B2)号に記載のバニリルブチルエーテルのような合成化合物についても当てはまる。興味深いことに、灼熱効果を引き起こす量よりも少ない量で、上記のようなTRPV1活性化因子を使用すると、異味が低減され、及び消費者が改善された味を感知できる製品が生じる。灼熱効果を引き起こす濃度で使用すると、消費者は灼熱感を感知することになり、必ずしも味の改善を感知しなくなる。一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.0001重量%〜約0.1重量%の量でTRPV1活性化因子を添加する。しかしながら、TRPV1の活性化のレベルは、活性化因子の辛さのレベルに関連する。それゆえに、使用されるTRPV1活性化因子の濃度は、その辛さの強度に依存する。例えば、バニリルブチルエーテル(1mMの濃度にて、およそ14942.84カルシウムイオンの活性化レベルを有する)は、一般に、約0.025%の量で使用され、一方、カプサイシン(300nMというはるかに低い濃度にて、約14127.16カルシウムイオンの活性化レベルを有する)は約0.009%以下の量で使用される。このように、はるかに低濃度のカプサイシン(300nM)は、はるかに高濃度のVBE(1mM)とほぼ同レベルの活性化を生じ、それゆえに、より少量で使用することができる。
【0026】
有害な物質検出子としての役割に加えて、TRPV1の活性化は下流にもある程度影響を有する。特に、理論に制限されるものではないが、TRPV1の活性化により、他の味覚受容体、特にPKD1L3、PKD2L1及びTAS2Rファミリーの受容体、に変化が生じると考えられている。TAS2R16、TAS2R38、PKD2L1及びPKD1L3受容体における変化はまた、味の改善に貢献すると考えられている。
【0027】
興味深いことに、異味を与える化合物の一部も、非常に低いレベル(すなわち、TRPV1活性化因子として必要とされるレベル以下)ではあるがTRPV1の活性に影響を与える。理論に制限されるものではないが、口腔ケア組成物に異味を与え、TRPV1受容体活性に影響を与えるが、活性化因子の濃度まで上昇させない化合物については、TRPV1活性化因子が、TRPV1受容体の結合においてこれらの成分を圧倒すると考えられている。これにより、TRPV1の活性、又は、TRPV1への異味成分の結合により生じる任意の下流の活性、を介して、異味成分があらゆる異味を広げることが阻止される。
【0028】
上記の見地から、本発明の一実施形態に従って、悪味作用物質とTRPV1活性化因子とを含む口腔ケア組成物は、改善された味を有する。更に、一実施形態では、口腔ケア組成物の味の改善方法は、口腔ケア組成物を形成するために、TRPV1活性化因子と、金属塩、過酸化物、抗菌剤、口臭低減剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される悪味作用物質と、を混合することを含む。
【0029】
一実施形態では、TRPV1活性化因子は、バニリルブチルエーテル、ジンゲロン、カプサイシン、カプシエイト、ショウガオール、ジンゲロール、ピペリン、又はこれらの組み合わせを含む。更なる実施形態では、TRPV1活性化因子は、バニリルブチルエーテルを含む。一実施形態では、バニリルブチルエーテルは、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約0.25重量%の量で添加される。別の実施形態では、バニリルブチルエーテルは、口腔ケア組成物の約0.002重量%〜約0.02重量%の量で添加される。
【0030】
別の実施形態では、口腔ケア組成物の味の改善方法は、口腔ケア組成物を形成するために、バニリルブチルエーテルと、亜鉛塩、スズ塩、カリウム塩、銅塩又はこれらの組み合わせを含む悪味作用物質と、を混合することを含み、バニリルブチルエーテルは口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約0.025重量%の量で存在する。更なる実施形態では、口腔ケア組成物又は方法は、バニトロープ、ジンゲロン又はこれらの組み合わせを口腔ケア組成物に添加することを更に含む。一実施形態では、ジンゲロンは、約0.01%〜約0.015%の量で添加される。別の実施形態では、バニトロープは、約0.01%〜約0.015%の量で添加される。
【0031】
更に、いくつかの化合物は、これらのエンハンサーが自身ではTRPV1を活性化しないものの、TRPV1活性化因子の効果を増強することが判明している。例えば、追加の活性が生じるかどうかを判定するためにTRPV1活性化因子(カプサイシン)の後にエンハンサーが添加される、以下の表を参照されたい。
【表2】

【0032】
別の試験では、TRPV1活性化因子(VBE)及びエンハンサーを一緒に添加する。ここで、理論に制限されるものではないが、驚くべきことに、エンハンサーを開始時に添加すると、TRPV1の活性化に追加の影響が存在するように見える。以下の表を参照されたい。
【表3】

【0033】
エンハンサーの使用により、口腔ケア組成物の味の改善が更に促進され、必要とされるTRPV1活性化因子の量を低減させることができる。増強のレベルは、促進因子の効果及びTRPV1活性化因子における任意の所望の低減を判定するのを助けるために使用することができる。例えば、一実施形態では、バニリルブチルエーテルは0.012%で使用されるが、エンハンサーであるδ−ダマスコーン(delta damascene)が0.003%存在する場合には、VBEは0.008%の使用で、エンハンサーが非存在である場合と同一の効果を達成できるようになる。
【0034】
それゆえに、一実施形態では、口腔ケア組成物又は口腔ケア組成物の味の改善方法は、TRPV1エンハンサーを口腔ケア組成物に添加することを更に含む。更なる実施形態では、TRPV1エンハンサーは、ダマスコーン、酪酸ゲラニル、2−オクタノン、フルフラール、イオノン、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、ピロリン酸四ナトリウム、酢酸α,α−ジメチルフェネチル(alpha dimethyl phenethyl acetate)、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、ケファリス、リナロールオキシド、酢酸カルビル、ファルネセン、トランス−2−ヘキセニルアセテート、ヘプチルアルコール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
TRPV1活性化因子であるとは考えられないが、バニトロープもまた、上記に列挙した成分の少なくとも一部に伴う異味を低減する能力を有する。バニトロープは、バニラ風味を有するオイゲノール誘導体である。理論に制限されるものではないが、バニトロープも同様に、TRPV1活性化の助けを必要とせずに、上記味覚受容体を直接調節すると考えられる。
【0036】
以上を考慮すれば、悪味を与える口腔ケア成分とバニトロープとを含む口腔ケア組成物は、改善された味を有することになる。更に、一実施形態では、本発明は、口腔ケア組成物を形成するために、バニトロープと、金属塩、過酸化物又はこれらの組み合わせを含む悪味作用物質と、を混合することを含む、口腔ケア組成物の味の改善方法を目的とし、バニトロープは口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約0.4重量%の量で存在する。
【0037】
一実施形態では、金属塩は、亜鉛塩、スズ塩、カリウム塩、銅塩又はこれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、過酸化物は、過酸化水素、過酸化カルバミド、過酸化カルシウム、過酸化ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、バニトロープは、口腔ケア組成物の約0.05重量%〜約0.15重量%の量で添加される。更なる実施形態では、カリウム塩は硝酸カリウムを含み、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約5.0重量%の量で存在する。別の実施形態では、亜鉛塩はクエン酸亜鉛を含み、口腔ケア組成物の約0.05重量%〜約5.0重量%の量で存在する。
【0038】
更なる実施形態では、バニトロープとジンゲロンとバニリルブチルエーテルの組み合わせは、口腔ケア組成物に改善された味を与えるために使用することができる。それゆえに、一実施形態では、改善された味を有する口腔ケア組成物は、バニトロープ、ジンゲロン及びバニリルブチルを含む。
【0039】
TRPV1活性化因子及び/又はバニトロープの添加順序は、重要ではない。それゆえに、TRPV1活性化因子及び/又はバニトロープは、口腔ケア組成物の製造時にて又は口腔ケア組成物の完成後のある時点にて、口腔ケア組成物に添加することができる。
【0040】
口腔ケア組成物
口腔ケア組成物は、多くの場合、キャリア材料、界面活性剤、風味剤、着色剤、知覚剤、活性剤及び他の添加剤を含むことができる成分の組み合わせから作製される。
【0041】
キャリア材料
キャリア材料は、一般に、口腔ケア組成物の約5重量%〜約80重量%の任意の量を表す。キャリア材料として機能し得る材料の例としては、水、グリセリン、ソルビトール、約50,000未満の分子量を有するポリエチレングリコール、プロピレングリコール及び他の食用多価アルコール、エタノール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。これらのキャリア材料のうちで、口腔ケア組成物内に望ましくない味を提供するいくつかのものの例としては、例えば、プロピレングリコール及び/又はエタノールが挙げられる。これらの種類の材料が多くの場合伴う望ましくない味は、苦味、灼熱味、渋味及び/又は土のような若しくは泥のような味である。
【0042】
界面活性剤
口腔ケア組成物の別の成分としては、界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、一般に、口腔ケア組成物中に約1%〜約15%の範囲で含まれる。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、カチオン性、又はこれらの組み合わせであってもよい。本明細書で有用なアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル基に8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び、8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤としては、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムのようなサルコシネート、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。アニオン性界面活性剤の組み合わせを使用することもできる。多くの好適なアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458(Agricolaら)、によって開示されている。様々な実施形態において、本組成物は、約0.025%〜約9%、約0.05%〜約5%、又は約0.1%〜約1%の濃度でアニオン性界面活性剤を含む。
【0043】
本明細書において有用な別の部類のアニオン性界面活性剤は、アルキルホスフェートである。表面活性有機リン酸剤は、エナメル表面に対する強い親和性を有し、かつ外皮タンパク質を脱着し、エナメル表面に付着し続けるのに十分な表面結合傾向を有する。有機リン酸化合物の好適な例はとしては、以下の一般構造によって表される、モノエステル、ジエステル若しくはトリエステルが挙げられ、式中、Z1、Z2又はZ3は同一であっても若しくは異なってもよく、少なくとも1つが有機部分であり、一実施形態では、所望により1個以上のリン酸基によって置換される、炭素原子数1〜22の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル又はアルケニル基、アルコキシル化アルキル又はアルケニル、(多)糖、ポリオールあるいはポリエーテル基から選択される。
【化1】

【0044】
いくつかの他の作用剤としては、以下の構造によって表されるアルキル又はアルケニルリン酸エステルが挙げられる:
【化2】

式中、Rは、所望により1個以上のリン酸基により置換される、直鎖若しくは分枝鎖の、6〜22個の炭素原子のアルキル又はアルケニル基を表し;n及びmは個々に及び別々に2〜4であり、a及びbは個々に及び別々に0〜20であり;Z及びZは同一であっても異なっていてもよく、それぞれは水素、アルカリ金属、アンモニウム、プロトン化アルキルアミン若しくはアルカノールアミンのようなプロトン化官能性アルキルアミン、又はR−(OC2n(OC2m−基を表す。好適な作用剤の例としては、アルキル及びアルキル(ポリ)アルコキシリン酸、例えばリン酸ドデシル;PPG5セテアレス−10リン酸;ラウレス−1リン酸;ラウレス−3リン酸;ラウレス−9リン酸;トリラウレス−4リン酸;C12〜18のPEG 9リン酸;ジラウレス−10リン酸ナトリウムが挙げられる。一実施形態では、アルキルリン酸は高分子である。高分子アルキルリン酸の例としては、高分子部分としての反復アルコキシ基、具体的には、3個以上のエトキシ基、プロポキシイソプロポキシ基又はブトキシ基を含有するものが挙げられる。
【0045】
更なる好適な高分子有機リン酸剤としては、デキストランホスフェート、ポリグルコシドホスフェート、アルキルポリグルコシドホスフェート、ポリグリセリルホスフェート、アルキルポリグリセリルホスフェート、ポリエーテルホスフェート、及びアルコキシル化ポリオールホスフェートが挙げられる。いくつかの具体例は、PEGホスフェート、PPGホスフェート、アルキルPPGホスフェート、PEG/PPGホスフェート、アルキルPEG/PPGホスフェート、PEG/PPG/PEGホスフェート、ジプロピレングリコールホスフェート、PEGグリセリルホスフェート、PBG(ポリブチレングリコール)ホスフェート、PEGシクロデキストリンホスフェート、PEGソルビタンホスフェート、PEGアルキルソルビタンホスフェート、及びPEGメチルグルコシドホスフェートである。好適な非高分子リン酸としては、リン酸アルキルモノグリセリド、リン酸アルキルソルビタン、リン酸アルキルメチルグルコシド、リン酸アルキルスクロースが挙げられる。
【0046】
別の好適な界面活性剤は、サルコシネート界面活性剤、イセチオネート界面活性剤、及びタウレート界面活性剤からなる群から選択されるものである。一実施形態では、これらの界面活性剤のアルカリ金属又はアンモニウム塩が使用される。これらのナトリウム及びカリウム塩の例としては以下のものが挙げられる:ラウロイルサルコシネート、ミリストイルサルコシネート、パルミトイルサルコシネート、ステアロイルサルコシネート及びオレオイルサルコシネート又はこれらの組み合わせ。これらのアニオン性界面活性剤のうちで、口腔ケア組成物内に望ましくない味を提供するいくつかの例としては、例えば、SLS、ラウロイルサルコシネート、及び/又は天然系界面活性剤に関連する脂肪族アルコール若しくは酸が挙げられる。これらの界面活性剤が多くの場合伴う望ましくない味は、石鹸のようであり、化学的及び/又は人工的である。
【0047】
口腔ケア組成物で有用な双性イオン性又は両性界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体が挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分枝鎖であることができ、脂肪族置換基の1つは約8個〜約18個の炭素原子を含有し、1つは、例えば、カルボキシ、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩又はホスホン酸塩のようなアニオン性水溶性基を含有する。好適なベタイン界面活性剤は、米国特許第5,180,577号(Polefkaら)に開示されている。典型的なアルキルジメチルベタイン類としては、デシルベタイン又は2−(N−デシル−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ココベタイン又は2−(N−ココ−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタイン等が挙げられる。アミノベタインは、ココアミドエチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン(CADB)及びラウラミドプロピルベタインによって例示される。これらの界面活性剤のうちで、口腔ケア組成物内に望ましくない味を提供するいくつかの例としては、例えば、ココアミドプロピルベタイン及びラウリルベタインが挙げられる。これらの種類の界面活性剤が多くの場合伴う望ましくない味は、石鹸のようであり及び化学的である。これらの界面活性剤は、一般に、口腔ケア組成物中に約0.5%〜約5%の範囲で含まれる。
【0048】
本発明に有用なカチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ココナツアルキルトリメチルアンモニウムナイトレート、フッ化セチルピリジニウ及びこれらの組み合わせのような、約8個〜18個の炭素原子を含有する1本のアルキル長鎖を有する脂肪族四級アンモニウム化合物の誘導体が挙げられる。更なる洗剤特性を有する四級アンモニウムフッ化物は、米国特許第3,535,421号(Brinerら)に記載されている。これらの界面活性剤のうちで、口腔ケア組成物内に望ましくない味を提供するいくつかの例としては、例えば、セチルピリジニウムクロリド又はクロルヘキシジンが挙げられる。これらの界面活性剤が多くの場合伴う望ましくない味は、化学的及び/又は防腐剤的である。
【0049】
本発明の組成物に使用できる非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキレンオキシド基(性質上は親水性)と、性質上は脂肪族又はアルキル芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成する化合物が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤の例としては、ポロキサマーであるPluronic(登録商標)、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドと、プロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物との縮合から誘導される生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、並びにこのような材料の組み合わせが挙げられる。
【0050】
風味剤
口腔ケア組成物の一部であることができる別の成分としては、風味剤が挙げられる。風味剤は、一般に、口腔ケア組成物の約0.4重量%〜約3重量%の量で存在する。口腔ケア組成物中で使用されるいくつかの風味剤及び風味成分の例は、ミント油、冬緑油、クローブの芽の油、カッシア、セージ、パセリオイル、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、ヘリオトロピン、4−シス−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−ρ−tert−ブチルフェニルアセテート、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、1−メンチルアセテート、オキサノン、α−イリソン、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、桂皮酸ブチル、酪酸エチル、酢酸エチル、アントラニル酸メチル、イソアミルアセテート、イソアミルブチラート、アリルカプロエート、オイゲノール、ユーカリプトール、チモール、桂皮酸アルコール、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、ネラール、ゲラニアール、ゲラニオールネロール、マルトール、エチルマルトール、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、メントン、β−ダマセノン、イオノン、γ−デカラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ウンデカラクトン又はこれらの組み合わせである。一般に好適な風味成分は、構造的特徴及びレドックス反応し難い官能基を有する化学物質である。これらとしては、飽和した、又は安定な芳香環若しくはエステル基を含有する、風味化学物質の誘導体が挙げられる。これらの風味剤のうち、望ましくない味を提供するいくつかの例としては、例えば、シトラール、ゲラニアール、ユーカリプトール及びオイゲノールが挙げられる。これらの種類の風味剤が多くの場合伴う望ましくない味は、酸味、化学的な味、苦味、鼻にツンとくる味、及び/又は、渋味である。
【0051】
着色剤
更に、着色剤が、口腔ケア組成物の一部を形成することができる。着色剤は、一般に、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約0.5重量%の量で存在する。口腔ケア組成物中で使用されるいくつかの着色剤の例としては、D&C Yellow No.10、FD&C Blue No.1、FD&C Red No.40、D&C Red No.33及びこれらの組み合わせが挙げられる。着色剤の濃度は、約0.0001%〜約0.1%の範囲であり得る。一実施形態では、着色剤は、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約0.01重量%の量である。これらの着色剤のうち、望ましくない味を提供する着色剤の例としては、例えば、D&C Red No.33が挙げられる。この着色剤が多くの場合伴う望ましくない味は、金属的及び/又は化学的である。
【0052】
知覚剤
口腔ケア組成物の一部であることができる別の成分は、知覚剤である。冷却、温熱及び刺感剤などの知覚分子は、消費者に信号を送達するために有用である。知覚剤は、一般に、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約0.8重量%の量で存在する。最も周知の冷感化合物はメントール、特にl−メントールであり、これはペパーミント油中に天然に見られる。メントールのその他の異性体(ネオメントール、イソメントール及びネオイソメントール)は、ある程度類似しているが同一ではない香り及び味を有する(すなわち、土のよう、樟脳、かび臭いなどとして表される、好ましくない風味を有する)。異性体の中で最大の違いは、その冷感効力である。L−メントールは最も強力な冷感をもたらす。すなわち、約800ppbの最低冷感閾値を有し、すなわち、約800ppbの濃度で冷感効果をはっきりと認識できる。この濃度において、他の異性体では冷感効果がない。
【0053】
合成冷感剤のうち、多くは、メントールの誘導体であるか、又はメントールと構造的に関連する。すなわち、シクロヘキサン部分を含有し、カルボキサミド、ケタール、エステル、エーテル及びアルコールを含む官能基で誘導体化される。例としては、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミドなどのp−メンタンカルボキサミド化合物が挙げられる。メントールと構造的に無関係の合成カルボキサミド冷感剤の例は、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタナミドである。合成冷感剤の更なる例としては、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、イソプレゴール及びρ−メンタン−3,8−ジオールなどのアルコール誘導体;メントングリセロールアセタール;酢酸メンチル、メンチルアセトアセテート、乳酸メンチル及びコハク酸モノメンチルなどのメンチルエステルが挙げられる。カルボキサミド冷感剤は、例えば、米国特許第4,136,163号、同第4,150,052号、同第4,153,679号、同第4,157,384号、同第4,178,459号及び同第4,230,688号に記載されている。
【0054】
構造的にはメントールに関連していないが類似の生理学的冷感効果を有することが報告されている更なる作用剤としては、米国特許第6,592,884号に記載されている、3−メチル−2−(1−ピロリジニル)−2−シクロペンテン−1−オン(3−MPC)、5−メチル−2−(1−ピロリジニル)−2−シクロペンテン−1−オン(5−MPC)、及び2,5−ジメチル−4−(1−ピロリジニル)−3(2H)−フラノン(DMPF)などの、α−ケトエナミン誘導体;Weiら、J.Pharmacol.(1983),35:110〜112に記載されているイシリン(AG−3−5としても知られており、化学名は1−[2−ヒドロキシフェニル]−4−[2−ニトロフェニル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン)が挙げられる。これらの冷感剤のうち、望ましくない味を提供するいくつかの例としては、例えば、メントール及びメントンが挙げられる。これらの冷感剤が多くの場合伴う望ましくない味としては、灼熱、化学的及び/又は薬のようなものが挙げられる。
【0055】
温感剤のいくつかの例としては、エタノール;トウガラシ:ニコチン酸ベンジルなどのニコチネートエステル;多価アルコール;トウガラシ粉末;トウガラシチンキ剤;トウガラシ抽出物;カプサイシン;ホモカプサイシン;ホモジヒドロカプサイシン;ノナノイルバニリルアミド;ノナン酸バニリルエーテル;バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル及びバニリルヘキシルエーテルなどのバニリルアルコールアルキルエーテル誘導体;イソバニリルアルコールアルキルエーテル;エチルバニリルアルコールアルキルエーテル;ベラトリルアルコール誘導体;置換ベンジルアルコール誘導体;置換ベンジルアルコールアルキルエーテル;バニリンプロピレングリコールアセタール;エチルバニリンプロピレングリコールアセタール;ショウガ抽出物;ショウガ油;ジンゲロール;ジンゲロン;又はこれらの組み合わせが挙げられる。温感剤は、一般に、口腔ケア組成物中に約0.05%〜約2%の濃度で含まれる。
【0056】
いくつかの刺感剤の例としては、jambu Oleoresin、山椒、サンショオール−I、サンショオールII、サンショアミド、ピペリン、ピペリジン、オイゲノール、スピラントール、4−(1−メトキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン又はこれらの組み合わせが挙げられる。刺感剤は、一般に、口腔ケア組成物中に約0.0005%〜約1%の濃度で含まれる。これらの刺感剤のうちで、口腔ケア組成物内に望ましくない味を提供するいくつかのものの例としては、例えば、jambu、サンショオール及び/又はオイゲノールが挙げられる。これらの刺感剤が多くの場合伴う望ましくない味としては、コショウのような味、苦味及び/又は金属味が挙げられる。
【0057】
甘味剤
口腔ケア組成物中に含むことができる別の成分としては、甘味剤が挙げられる。甘味剤は、天然及び人工のどちらでもあり得、一般に口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約1重量%である。いくつかの好適な水溶性甘味剤としては、キシロース、リボース、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(果糖)、ショ糖(砂糖)、マルトース、転化糖(フルクトースとショ糖由来のグルコースとの組み合わせ)、部分的に加水分解したデンプン、コーンシロップ固形物、ジヒドロカルコン、モネリン、ステビオシド及びグリチルリチン又はこれらの組み合わせのような単糖、二糖及び多糖が挙げられる。好適な水溶性人工甘味剤としては、可溶性サッカリン塩、すなわち、サッカリンナトリウム又はカルシウム塩、シクラメート塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのナトリウム塩、アンモニウム塩、又はカルシウム塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのカリウム塩(アセスルファム−K)、遊離酸型のサッカリンなどが挙げられる。他の好適な甘味剤としては、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)、N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン1−メチルエステル(ネオターム)及び米国特許第3,492,131号に記載された物質のようなL−アスパラギン酸由来の甘味剤、L−α−アスパルチル−N−(2,2,4,4−テトラメチル−3−チエタニル)−D−アラニンアミド水和物、L−アスパルチル−L−フェニルグリセリンとL−アスパルチル−L−2,5,ジヒドロフェニル−グリシンとのメチルエステル、L−アスパルチル−2,5−ジヒドロ−L−フェニルアラニン、L−アスパルチル−L−(1−シクロヘキシレン)−アラニン及びこれらに類するもののようなジペプチド系甘味剤が挙げられる。例えば、スクラロースの製品銘柄で既知である通常の砂糖(スクロース)の塩素化誘導体のような、天然素材の水溶性甘味剤由来の水溶性甘味剤、並びにタウマトコッカス・ダニエリ(thaumatoccous danielli)(タウマチンI及びII)のようなタンパク質系甘味剤が使用できる。これらの甘味剤のうちで、口腔ケア組成物内に望ましくない味を提供するいくつかのものの例としては、例えば、アスパルテーム、サッカリン又はネオタームが挙げられる。これらの甘味剤が多くの場合伴う望ましくない味としては、苦味及び酸味が挙げられる。
【0058】
活性剤
口腔ケア組成物中に含むことができる更なる成分としては、口腔ケア活性剤が挙げられる。口腔ケア活性剤は、一般に、約0.0001%〜約8%の量で存在する。口腔ケア活性剤のいくつかの例としては、抗カリエス剤、抗菌剤、抗歯石剤、口臭低減剤及び漂白剤が挙げられる。抗カリエス剤は、一般に、約0.01%〜約3.0%の量で使用される。抗カリエス効果を提供するために、組成物中に約0.0025重量%〜約5.0重量%のフッ化物イオン濃度を与えるのに十分な量で、歯磨剤及び他の口腔用組成物にフッ化物化合物を存在させることが一般的である。一実施形態では、フッ化物濃度は、約0.005重量%〜約2.0重量%である。広範なフッ化物イオン生成物質を、本組成物及び方法において、可溶性フッ化物の供給源として使用することができる。好適なフッ化物イオン生成物質の例は、米国特許第3,535,421号(Brinerら)及び米国特許第3,678,154号(Widderら)に見られる。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化インジウム、オラフルルなどのフッ化アミン及び多くの他のものが挙げられる。一実施形態では、抗カリエス剤は、約0.454%の量でフッ化スズを含む。別の実施形態では、抗カリエス剤は、約0.243%の量でフッ化ナトリウムを含む。これらの抗カリエス剤のうちで、望ましくない味を提供するいくつかの例としては、例えば、フッ化スズ及びフッ化カリウムが挙げられる。これらの抗カリエス剤が多くの場合伴う望ましくない味としては、土のような味、泥のような味及び/又は金属味が挙げられる。
【0059】
別の口腔ケア活性剤は、抗菌剤である。抗菌剤の一例は、四級アンモニウム化合物である。本明細書で有用なものとしては、例えば、四級窒素上の置換基のうち1個又は2個が炭素原子約8〜約20個、典型的には約10〜約18個の炭素鎖長(典型的にはアルキル基)を有する一方、残りの置換基(典型的にはアルキル基又はベンジル基)は、炭素原子約1〜約7個のような、より少ない炭素原子数、典型的にはメチル基又はエチル基を有するものが挙げられる。臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、臭化ドミフェン、N−テトラデシル−4−塩化エチルピリジニウム、ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)臭化アンモニウム、ベンジルジメチルスチレン臭化アンモニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサジヒドロピリミジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化メチルベンゼトニウムが、典型的な第四級アンモニウム抗菌剤の例示的なものである。他の化合物としては、米国特許第4,206,215号(Bailey、1980年6月3日)に開示されたビス[4−(R−アミノ)−1−ピリジニウム]アルカンが挙げられる。他の四級アンモニウム化合物としては、ピリジニウム化合物が挙げられる。ピリジニウム四級アンモニウム化合物の例としては、セチルピリジニウム及びテトラデシルピリジニウムハロゲン化物塩(塩化物、臭化物、フッ化物及びヨウ化物)が挙げられる。四級アンモニウム抗菌剤は、少なくとも約0.035%の濃度で含むことができる。他の実施形態では、これらは口腔ケア組成物の約0.045重量%〜約1.0重量%、又は、約0.05重量%〜約0.10重量%で含まれる。
【0060】
また、本発明は、ハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール及びその同族体を含むフェノール化合物、モノアルキル及びポリアルキル並びに芳香族ハロフェノール、レゾルシノール及びその誘導体、キシリトール、ビスフェノール化合物及びハロゲン化サルチルアニリド、安息香酸エステル及びハロゲン化カルバニリド等の非カチオン性抗菌剤を含む、他の抗菌剤を含んでもよい。エンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、及びこれらの組み合わせなどの酵素も、有用な抗菌剤である。このような作用剤は、米国特許第2,946,725号(Norrisら、1960年7月26日)及び同第4,051,234号(Gieskeら)に開示されている。その他の抗菌剤の例として、クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロサンモノホスフェート、及びチモールなどの香味油が挙げられる。トリクロサン及びこの種の他の剤は、米国特許第5,015,466号(Parran,Jr.ら)及び米国特許第4,894,220号(Nabiら)に記載されている。これらの剤は、歯磨剤組成物の約0.01重量%〜約1.5重量%の濃度で存在してもよい。上記抗菌剤のうちで、望ましくない味を提供するいくつかの例としては、例えば、クロルヘキシジン、トリクロサン及びチモールが挙げられる。これらの種類の抗菌剤が多くの場合伴う望ましくない味としては、苦味、泥のような味、土のような味、酸味及び/又は渋味が挙げられる。
【0061】
別の口腔ケア活性剤としては、抗歯石剤が挙げられる。抗歯石剤の一例は、ピロリン酸イオンの供給源としてのピロリン酸塩である。本組成物に有用なピロリン酸塩としては、例えば、ピロリン酸一、二、及び四アルカリ金属塩並びにこれらの組み合わせが挙げられる。無水和物並びに水和物の形態の、二水素ピロリン酸二ナトリウム(Na)、酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、及びピロリン酸四カリウム(K)が更なる種である。本発明の組成物において、ピロリン酸塩は次の3通りのうちの1つの形態で存在してもよい:すなわち、主に溶解した形態、主に溶解していない形態、又は溶解した形態と溶解していない形態のピロリン酸塩の組み合わせである。これらの組成物を作製するのに有用なピロリン酸塩の量は、任意の歯石制御に有効な量である。様々な実施形態において、ピロリン酸塩の量は、口腔ケア組成物の約1.5重量%〜約15重量%、約2重量%〜約10重量%、又は約3重量%〜約8重量%である。
【0062】
口腔ケア活性剤の更なる例は、漂白剤である。漂白剤は、一般に、歯を白くする作用剤である。漂白剤の例としては、過酸化物、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸、過硫酸塩及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な過酸化物化合物としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化ナトリウム、過酸化亜鉛及びこれらの組み合わせが挙げられる。過炭酸塩の一例は、過炭酸ナトリウムである。過硫酸塩の例としては、オキソンが挙げられる。以下の量は過酸化物原料物質の量を示すが、過酸化物源は過酸化物原料物質以外の成分を含有してもよい。例えば、過酸化物源は、過酸化物原材料とキャリア材料の溶液であることができる。一般に、本組成物は、約0.01%〜約30%の過酸化物原材料を含有し得る。一実施形態では、過酸化物原材料は、口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約10重量%、又は、約0.5重量%〜約5重量%である。これらの漂白剤のうちで、口腔ケア組成物内に望ましくない味を提供するいくつかの例としては、例えば、過酸化物及び過炭酸塩が挙げられる。これらの漂白剤が多くの場合伴う望ましくない味としては、泥のような味、化学的な味及び/又は酸味が挙げられる。
【0063】
別の口腔ケア活性剤は、口臭低減剤である。これらの作用剤は、一般に、口の悪臭を低減するように作用する。口臭低減剤の例としては、銅塩及びカルボニル化合物、例えばアスコルビン酸[3−オキソ−L−グロフラノールアクトン];シス−ジャスモン[3−メチル−2−(2−ペンテニル−2−シクロペンテノン)];2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン;5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン;バニリン[4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド];エチルバニリン;アニスアルデヒド[4−メトキシベンズアルデヒド];3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド;3,4−ジメトキシベンズアルデヒド;4−ヒドロキシベンズアルデヒド;2−メトキシベンズアルデヒド;ベンズアルデヒド;シンナムアルデヒド[3−フェニル−2−プロペナール];ヘキシルシンナムアルデヒド;α−メチルシンナムアルデヒド;オルト−メトキシシンナムアルデヒド;又はこれらの組み合わせが挙げられる。理論に制限されるものではないが、口臭低減剤は、チオール又は硫化物と反応して、臭いの影響が少ない生成物を形成することにより、「トラップ」として働くと考えられる。これらの口臭低減剤のうちで、口腔ケア組成物内に望ましくない味を提供するものの例としては、例えば、アニスアルデヒドが挙げられる。一般に、風味剤は、口臭低減剤とは考えられない。これらの種類の口臭低減剤が伴う望ましくない味としては、化学的な味、プラスチック味、苦味及び/又は酸味が挙げられる。
【0064】
金属塩
口腔ケア組成物における別の可能な成分は、金属塩である。金属塩は、抗菌剤から感度作用剤及び/又は緩衝剤までの広範な機能を有する。一実施形態では、金属塩は、亜鉛塩、スズ塩、カリウム塩、銅塩又はこれらの組み合わせを含む。更なる実施形態では、亜鉛塩は、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化フッ化亜鉛、酢酸亜鉛、六フッ化ジルコニウム酸亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、酒石酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、メタリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、亜鉛塩は、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛又はこれらの組み合わせを含む。
【0065】
更なる実施形態では、カリウム塩は、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、重炭酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。更なる実施形態では、カリウム塩は、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム又はこれらの組み合わせを含む。
【0066】
更なる実施形態では、銅塩は、フッ化銅、塩化銅、ヨウ化銅、塩化フッ化銅、酢酸銅、六フッ化ジルコニウム酸銅、硫酸銅、乳酸銅、酒石酸銅、グルコン酸銅、クエン酸銅、リンゴ酸銅、グリシン酸銅、ピロリン酸銅、メタリン酸銅、シュウ酸銅、リン酸銅、炭酸銅及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。更なる実施形態では、銅塩は、グルコン酸銅、酢酸銅、グリシン酸銅又はこれらの組み合わせを含む。
【0067】
別の実施形態では、スズ塩は、フッ化スズ、塩化スズ、ヨウ化スズ、塩化フッ化スズ、酢酸スズ、六フッ化ジルコン酸スズ、硫酸スズ、乳酸スズ、酒石酸スズ、グルコン酸スズ、クエン酸スズ、リンゴ酸スズ、グリシン酸スズ、ピロリン酸スズ、メタリン酸スズ、シュウ酸スズ、リン酸スズ、炭酸スズ、グルコン酸スズ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。更なる実施形態では、スズ塩は、フッ化スズ、塩化スズ、塩化スズ二水和物、フッ化スズ、乳酸スズ、グルコン酸スズ、硫酸スズ又はこれらの組み合わせを含む。
【0068】
スズ塩、特にフッ化スズ及び塩化スズを含有する歯磨剤については、米国特許第5,004,597号(Majetiら)に記載されている。スズ塩の他の記載は、米国特許第5,578,293号(Prencipeらに発行)及び同第5,281,410号(Lukacovicらに発行)に見られる。スズイオン源に加えて、Majetiら及びPrencipeらに記載の成分などの、スズを安定させるのに必要な他の成分を含んでもよい。
【0069】
異味を与える金属塩のいくつかの例としては、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛又はこれらの組み合わせが挙げられる。これらの種類の金属塩が伴う異味は、泥のような味、乾いた味、土のような味、金属味、酸味、苦味及び渋味である。
【0070】
金属塩は、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.05%〜約11%の量で存在する。他の実施形態では、金属塩は、約0.5%〜約7%、又は、約1%〜約5%の量で存在する。更なる実施形態では、スズ塩は、口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約7重量%、又は、約1重量%〜約5重量%、又は、約1.5重量%〜約3重量%、の量で存在する。特定の実施形態では、本発明で使用される亜鉛塩又は銅塩の量は、約0.01〜約5%の範囲であり得る。他の実施形態では、亜鉛塩又は銅塩の量は、約0.05〜約4%、又は、約0.1〜約3.0%である。
【0071】
その他
上記に加えて、他の成分も、所望の効果を達成するために、口腔ケア組成物中に含まれ得る。これらのその他の成分としては、例えば、キレート化剤、研磨剤、唾液分泌剤、充填剤、溶媒、皮膚軟化剤、屈折分子(例えば、雲母)、増粘剤及び天然成分抽出物が挙げられる。
【0072】
口腔ケア組成物及びその成分は本明細書に開示している要素及び特性を任意に組み合わせて含んでいてもよい。
【実施例】
【0073】
消費者試験I
口腔ケア組成物の味の知覚におけるTRPV1活性化因子及び/又はバニトロープの添加の効果を示すために、以下の組成物を製造し、消費者に試飲させるために与える。
【表4】

【0074】
対照歯磨剤のベース(すなわち、風味剤以外)は、真空混合により作製される。スピード混合により風味剤を第二工程で添加して、対照を完成させる。次に、TRPV1活性化因子及び/又はバニトロープと風味剤とを記載濃度で対照ベースへスピード混合することにより、更なる組成物を作製する。次に、試料を管内に配置し、試験設備に送達する。
【0075】
試験設備にて、官能試験員に1.0gの練り歯磨きを備えた一般的ブラシを供給する。各官能試験員は、個別のシンク、鏡、使い捨てカップ及びペーパータオルを有する。家庭で通常行っているように歯磨きをするように官能試験員に依頼する。歯磨き後、官能試験員は、練り歯磨きについての経験に関する一連の質問に答える。歯磨き直後に、並びに、その後の3時間にわたって1時間毎に、経験についてコメントするように官能試験員に依頼する。消費者からのコメントは、比較のために、数値に変換される。上記組成物の、不快さ(bothersome)及び後味の悪さについての結果を以下に示す。
【表5】

【0076】
上記表から理解できるように、TRPV1活性化因子(VBE及びジンゲロン)の各々は、1時間後〜3時間後の各々について、対照に比べて不快さ及び後味の悪さの両方に対して味の改善を示したが、バニトロープは、不快さについては1時間〜3時間後の各々について、及び、後味の悪さについては1時間後及び2時間後について、味の改善を示した。
【0077】
TRPV1活性化因子及び/又はバニトロープの組み合わせも上記試験に含まれる。これらの試験に対する配合は以下であり、対照は上記に列挙したものと同じである。
【表6】

【0078】
上記組成物についての結果は、以下に示される。
【表7】

【0079】
上記結果から理解できるように、TRPV1活性化因子及び/又はバニトロープの様々な組み合わせは、3時間後において等しい味を示した3種すべての組み合わせを除き、対照に対して、1時間後〜3時間後のすべてにて不快さ及び後味の悪さの両方で改善を示した。このように、上記の個々のTRPV1活性化因子又はバニトロープの結果と比較すると、VBEは1時間にて最良の結果を与える傾向があり、一方、組み合わせのいくつかは、使用される測定値に依存して、2時間後及び3時間後にてより良好な結果を与える。しかしながら、興味深いことに、バニトロープとジンゲロンとVBEの組み合わせは、不快さ又は後味の悪さの低減に関して試験にて最良の結果を得ないが、試した他の組み合わせよりも消費者に好ましい味を有するように見える。それゆえに、異味の低減において最良ではないものの、消費者はこれを好む。
【0080】
VBE及び長続きする冷感剤で作製したリンスについての更なるパネル試験は、VBEを含有する組成物が、より長続きする喜ばしい知覚経験(酸味及び冷感が少ないとして記載される)を提供することを示す。CPC及び低濃度のエタノールで作製したリンスは、依然として、VBEに起因して、清潔さの信号のようなエタノールを提供し得る。
【0081】
実施例製品I−金属塩含有歯磨剤
歯磨剤は、従来方法を用いて製造され、重量%での量は下記の通りである。
【表8】

【0082】
【表9】

風味剤は約31.3%のメントールを含み、約500ppmのメントールを供給する。
【0083】
実施例製品II−マウスリンス組成物
マウスリンス組成物は、従来方法を用いて製造され、重量%での量は下記の通りである。
【表10】

【0084】
実施例製品III−過酸化物マウスリンス組成物
過酸化物含有マウスリンス組成物の、重量%での組成量は下記の通りである。これらの組成物は従来方法を用いて製造される。マウスリンス組成物は、使用中に心地よくインパクトの強いミント味及び顕著な長続きする爽やかな息を提供する。
【表11】

【0085】
実施例製品IV−歯石制御歯磨剤組成物
歯磨剤は、従来方法を用いて製造され、重量%での量は下記の通りである。
【表12】

【0086】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0087】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願書類を含め、本明細書において引用されるすべての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、その全体を参考として本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた定義又は意味が適用されるものとする。
【0088】
本発明の特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア組成物の味の改善方法であって、
口腔ケア組成物を形成するために、TRPV1活性化因子と、金属塩、過酸化物、抗菌剤、口臭低減剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される悪味作用物質と、を混合することを含む、方法。
【請求項2】
以下の方法:
a.ヒトのTRPV1で安定に形質移入したHEK−23(ヒト胎児腎臓)細胞を、5%のCOに設定された哺乳動物細胞培養インキュベーター内で75Cmのフラスコ内の15mLの増殖培地[10%のFBS(ウシ胎児血清)、100μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、100μg/mLのG418を添加した高グルコースDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)]で3日にわたって、33℃にて増殖させること;
b.10mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を添加し、手で穏やかに振盪することにより、細胞を剥離すること;
c.細胞を50mLの管に移すこと;
d.850rpmで3分にわたって前記細胞を遠心分離し、PBSを除去すること;
e.上清溶液から細胞ペレットを回収すること;
f.前記細胞ペレットを1mLの新鮮な増殖培地に懸濁し、これに5μL(12.5μg)のFluo−4 AM(Molecular Probes,Inc.)カルシウム指示薬を添加すること;
g.穏やかに振盪しながら30分にわたって前記細胞をインキュベートすること;
h.前記30分の終わりに、Fluo−4(細胞Ca2+濃度を100nM〜1μMの範囲で定量するために用いられる蛍光色素)を添加すること;
i.45mLのアッセイ用緩衝液[1xHBSS(ハンクス平衡塩類溶液)、20mMのHEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)]を加えて、細胞を洗浄すること;
j.得られた混合物を850rpmで3分にわたって遠心分離させて、余分な緩衝液及びFluo−4AMカルシウム指示薬を除去すること;
k.前記ペレット状の細胞を10mLのアッセイ用緩衝液に再懸濁させること;
l.10μLの試験化合物(アッセイ用緩衝液中1mM、最終濃度100μM)又は緩衝液対照を含有する96ウェルのアッセイプレートに、1ウェルにつき90μLのアリコート(およそ50,000細胞)を分配すること;
m.室温にて30分にわたってインキュベートすること;
n.前記プレートを蛍光測定画像解析用プレートリーダー(Molecular DevicesからのFLIPR384)に配置すること;
o.定常蛍光度を記録する(励起波長488nm及び発光波長510nm)こと;
p.TRPV1活性化因子として試験される20μLの分子を添加し、蛍光度を記録すること;並びに
q.前記蛍光度がTRPV1活性化に必要とされる最小値よりも高いカルシウム濃度と一致するかどうかを判定すること、
に従って、TRPV1の活性化が判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TRPV1活性化因子が、バニリルブチルエーテル、ジンゲロン、カプサイシン、カプシエイト、ショウガオール、ジンゲロール、ピペリン又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記TRPV1活性化因子が、前記口腔ケア組成物の約0.0001重量%〜約0.1重量%の量で添加される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記TRPV1活性化因子が、前記口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約0.025重量%の量でバニリルブチルエーテルを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記口臭低減剤が、銅塩;アスコルビン酸[3−オキソ−L−グロフラノールアクトン];シス−ジャスモン[3−メチル−2−(2−ペンテニル−2−シクロペンテノン];2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン;5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン;バニリン[4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド];エチルバニリン;アニスアルデヒド[4−メトキシベンズアルデヒド];3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド;3,4−ジメトキシベンズアルデヒド;4−ヒドロキシベンズアルデヒド;2−メトキシベンズアルデヒド;ベンズアルデヒド;シンナムアルデヒド[3−フェニル−2−プロペナール];ヘキシルシンナムアルデヒド;α−メチルシンナムアルデヒド;オルト−メトキシシンナムアルデヒド;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ダマスコーン、酪酸ゲラニル、2−オクタノン、フルフラール、イオノン、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、ピロリン酸四ナトリウム、酢酸α−ジメチルフェネチル、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、ケファリス、リナロールオキシド、酢酸カルビル、ファルネセン、トランス−2−ヘキセニルアセテート、ヘプチルアルコール又はこれらの組み合わせを含むエンハンサーを更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の約0.001重量%〜約0.025重量%のバニリルブチルエーテルと、
b)金属塩、過酸化物、抗菌剤、口臭低減剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される悪味作用物質と、
を含む、口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記バニリルブチルエーテルが、前記口腔ケア組成物の0.002重量%〜0.02重量%の量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記悪味作用物質が、亜鉛塩、スズ塩、カリウム塩、銅塩又はこれらの組み合わせを含む金属塩である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
前記スズ塩が、フッ化スズ、塩化スズ、ヨウ化スズ、塩化フッ化スズ、酢酸スズ、六フッ化ジルコン酸スズ、硫酸スズ、乳酸スズ、酒石酸スズ、グルコン酸スズ、クエン酸スズ、リンゴ酸スズ、グリシン酸スズ、ピロリン酸スズ、メタリン酸スズ、シュウ酸スズ、リン酸スズ、炭酸スズ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記亜鉛塩が、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化フッ化亜鉛、酢酸亜鉛、六フッ化ジルコニウム酸亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、酒石酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、メタリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
バニトロープ、ジンゲロン又はこれらの組み合わせを更に含み、前記バニトロープが前記口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約0.15重量%の量で添加され、前記ジンゲロンが前記口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約0.15重量%の量で添加される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
口腔ケア組成物の味の改善方法であって、
口腔ケア組成物を形成するために、バニトロープと、金属塩、過酸化物又はこれらの組み合わせを含む悪味作用物質と、を混合することを含み、前記バニトロープが前記口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約0.4重量%の量で存在する、方法。
【請求項15】
a.約0.01%〜約0.4%のバニトロープと、
b.金属塩、過酸化物又はこれらの組み合わせを含む悪味作用物質と、
を含む、口腔ケア組成物。

【公表番号】特表2012−524792(P2012−524792A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507337(P2012−507337)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/031852
【国際公開番号】WO2010/126753
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】