説明

呼吸ガス分析から能力パラメータを検出するためのユーザユニット

本発明は、特に肺機能検査装置において使用するための、呼吸ガス分析から能力パラメータを検出するためのユーザユニット(1)に関する。ユーザユニット(1)は、有利には交換可能である呼吸管(2)とケーシング部(3)とを備えており、更に有利にはユーザユニットを測定状態に移行させるために呼吸管(2)はケーシング部(3)に挿入可能である。本発明によれば、ケーシング部(3)の上面には、ケーシング部(3)と接続されており、且つ、能力パラメータを検出する際にユーザ(5)の鼻を閉鎖するために構成されている鼻クランプ(4)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利には交換可能である呼吸管とケーシング部とを備えており、更に有利にはユーザユニットを測定状態に移行させるために呼吸管をケーシング部に挿入することができる、呼吸ガス分析から能力パラメータを検出するためのユーザユニット、特に肺機能検査装置において使用するためのユーザユニットに関する。
【0002】
人間の代謝活動を検出するための正確で直接的な方法は呼吸ガスの分析であり、この分析では呼吸中の酸素濃度及び二酸化炭素濃度並びに呼吸の体積流が検出される。その測定から、RQとしても公知である呼吸商のような代謝特性値が算出される。RQは酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の比である。このガス量を検出するために種々のパラメータが測定される。例えば超音波伝播時間測定を介して呼吸ガスの流速を測定するセンサを用いて、呼吸ガスの体積流が検出される。体積流の時間積分によって、種々の呼吸量を導出することができる。公知の肺機能検査装置においては、更に、主呼吸流からガスサンプルが吸気され、装置内に含まれているセンサに供給される。これによって、吸息及び呼息時の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を検出することができる。ガス濃度のそれぞれの値は実質的に吸息と呼息とで区別される。事前に検出された呼吸量を介して、身体によって変換されたガス量を濃度から算出することができる。
【0003】
従来の肺機能検査装置はユーザユニットと分析ユニットとから構成されており、分析ユニットはガス濃度を検出するために必要とされるセンサを含んでいる。被験者インタフェースは大抵の場合、呼吸マスクを備えたユーザユニットであり、呼吸マスクには呼吸流量を測定する流量センサが付加的に取り付けられている。呼吸マスクにおける細いチューブを用いてガスサンプルが吸気され、分析ユニットに供給される。この分析ユニットにおいては、相応のガス濃度が測定される。呼吸マスクを備えたユーザユニットは、比較的長い期間にわたる継続的な測定に使用される。
【0004】
呼吸ガス分析から能力パラメータを検出するために、呼吸流全体を測定することが必要である。通常の場合、呼息時の呼吸流は鼻呼吸と口呼吸に区分されるが、能力パラメータを検出するためには両方の流量を検出する必要がある。このために、公知の呼吸マスクは被験者の口も鼻も覆うものである。これによって、全ての呼吸流がマスクを通って案内される。漏れを回避するためには、マスクが被験者の顔に密着されなければならない。被験者の頭部への確実な固定は弾性のバンドによって達成される。しかしながら、呼吸マスクが密着されることは被験者にとって極めて不快なものとなり得る。更には、呼吸マスクは使用される度に被験者の呼吸によって汚染されるので衛生上の欠点も有している。複数の人間が連続して検査される場合には、使用の度に呼吸マスクを消毒しなければならず、これは煩雑である。更には、呼吸マスクの不十分な消毒によって感染症が生じる虞もある。
【0005】
その都度、測定時点においてのみ呼吸ガスから能力パラメータが分析される、いわゆるスポット測定については、通常の場合鼻を介して分散される呼吸流を抑制するために、鼻クランプを使用することができる。有利には交換可能である呼吸管と、この呼吸管が挿入されているケーシング部を有しているユーザユニットと一緒に鼻クランプを使用することができる。更に有利には、呼吸管の使い捨ての用途を予定することができる。その種のユーザユニットはDE 42 22 286 C1から公知である。
【0006】
WO 2009/056562 A1からは使い捨て鼻クランプが公知であり、この鼻クランプを、単純なプラスチッププレートからフライス削り、切断又は打抜き加工のような従来の方法によって製造することができる。公知の鼻クランプは実質的に蹄鉄型又はU字型の形状を有している。ベース部から二つの片持ちアームが実質的に同一の方向に延在している。鼻クランプのそれら二つの片持ちアームの間には、鼻を挿入するために形成されている、開かれた領域が存在している。
【0007】
DE 34 16 146 A1からは別の鼻クランプが公知であり、この鼻クランプはバネによって接続されている二つの脚片を有しており、それらの脚片は軟らかい材料から製造されており、またバネは鼻孔を閉鎖するために鼻腔壁を押し付けることができるような強さに設計されている。調整ネジによってバネの圧縮力を個別に変更することができる。
【0008】
公知の鼻クランプは、呼吸マスクに比べて装用感が高いことを特徴としている。使い捨て用の公知の鼻クランプを使用することによって、必要とされる衛生面を保障しながら、呼吸ガス分析から能力パラメータを検出することができる。もっとも、公知の鼻クランプを鼻に装着する際に、鼻孔が完全には閉鎖されていない状態を生じさせる虞がある、ユーザ側のエラーが生じる可能性がある。この場合には、鼻クランプが装着されている場合であっても鼻呼吸が完全に排除されていないので、鼻を介して流れる空気流又は呼吸流によって測定結果の質が低下する可能性がある。
【0009】
本発明の課題は、被験者によって簡単に取り扱うことができ、また、能力パラメータを検出する際の高い装用感及び高い測定精度の点で優れている、冒頭で述べたようなユーザユニットを提供することである。その他の点では、本発明によるユーザユニットは廉価に製造できるべきであり、また衛生面に対する高い要求も満たすべきである。
【0010】
上述の課題は、本発明の第1の実施の形態による冒頭で述べたようなユーザユニットにおいては、ケーシング部の上面に、このケーシング部と接続されており、且つ、能力パラメータを検出する際に鼻を閉鎖するために構成されている、鼻クランプが設けられていることによって解決される。本発明が基礎とする着想は、鼻クランプをユーザユニットのケーシング部と接続させることであり、これにより、鼻クランプを鼻に装着する際のユーザ側のエラーを十分に排除することができる。手を動かすことによって鼻クランプを装着し、また吸い口部を挿入することができるので、このことは特に、例えばトレッドミル上で身体的な負荷が掛けられている状態では、被験者にとって重要な軽減措置を表す。能力パラメータを検出する際のユーザユニットの保持によって、即ち、被験者に相対的なケーシング部及び呼吸管の配置によって、被験者に対する鼻クランプの相対的な位置も規定される。本発明によるユーザユニットは快適に取り扱うことができ、また、高い精度で能力パラメータを検出することができ、鼻を介して流れる呼吸流による測定結果の質の低下を十分に排除することができる。更には、衛生面に対する高い要求を満たすために、被験者の鼻と接触する鼻クランプの部分を使い捨てに設計することができる。
【0011】
本発明によるユーザユニットは、有利には使い捨ての用途を予定している呼吸管と、この呼吸管を挿入又は差込可能であるケーシング部とを有している。呼吸管及び/又はケーシング部には、主呼吸流からガスサンプルを取り出すための少なくとも一つの取り出し個所を設けることができる。取り出されたガスサンプルを、続いてチューブ管を介して別個の分析ユニットに転送することができる。続いて、分析ユニットにおいて呼吸ガスの分析を実施することができる。しかしながら基本的には、ユーザユニットが呼吸ガスを分析するための複数のセンサを有することも考えられる。その他の点では、ケーシング部に複数のセンサ、特に超音波変換器を設けることができ、それらのセンサを用いることによって、呼吸流の速度、体積流及び種々の肺体積を算出することができる。呼吸ガスサンプルにおけるガス濃度、呼吸ガス流の速度、呼吸体積流及び種々の肺体積を、本発明によるユーザユニットを使用して検出されるべき能力パラメータと見なすことができる。もっとも、これらの能力パラメータは列記を意図したものではない。
【0012】
上述の課題を解決するために、本発明の代替的な第2の実施の形態による冒頭で述べたようなユーザユニットにおいては、ケーシング部の下面に、このケーシング部と接続されており、且つ、能力パラメータを検出する際に下顎へ当て付けるために構成されている、下顎支持部が設けられていることによって解決される。下顎支持部によって、ユーザユニットは能力パラメータを検出する際に被験者の下顎に支持され、それによりユーザユニットを保持するために消費される力は少なくて済む。このことは、本発明によるユーザユニットの簡単な取り扱いに寄与する。その他の点においては、下顎支持部の適切な形状によって、被験者の顔に相対的なユーザユニットの所望の位置をサポートすることができる。このことは、ケーシングが上面においてケーシング部と接続されている鼻クランプを有しており、それにより、呼吸管を被験者の口に挿入した後にケーシング部が鼻クランプを介して被験者の鼻に保持されており、且つ、下顎支持部を介して被験者の下顎に支持されている場合には特に有利である。下顎支持部は、ユーザユニットが鼻クランプを用いて精確に被験者の顔又は鼻へと配向されており、且つ、被験者の鼻が常に完全に鼻クランプによって閉鎖されることに寄与することができる。これによって鼻呼吸が排除され、能力パラメータを検出する際の高い精度が保証される。
【0013】
鼻クランプ及び下顎支持部が有利にはケーシング部に固定されており、ケーシング部が複数回の使用のために構成されており、また複数回の使用を予定しているにもかかわらず、基本的には、鼻クランプ及び/又は下顎支持部を呼吸管に固定し、また鼻クランプ及び/又は下顎支持部の使い切りの用途を予定することができる。本発明の重要性はこの態様に適している。
【0014】
本発明の前述の態様及び特徴、並びに、以下において説明する本発明の態様及び特徴を相互に独立して実現することができるが、任意の組み合わせにおいても実現することができる。本発明の更なる利点、特徴、特性及び態様は、図面に基づいた有利な実施の形態の以下の説明より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のユーザユニットの斜め上からの斜視図を示す。
【図2】被験者の能力パラメータを検出する際の図1に示されているユーザユニットの概略図を示す。
【図3】クランプローラが上方にスライドされた状態の図1に示したユーザユニットの鼻クランプの斜視図を示す。
【図4】クランプローラが下方にスライドされた状態の図3に示した鼻クランプを示す。
【図5】ローラボディが部分的に組み立てられた状態において二つのローラボディを備えている、図3及び図4に示されている鼻クランプのクランプ部材の部分図を示す。
【図6】組み立てられた状態の図5のローラボディの部分図を示す。
【図7】ローラボディが組み立てられた状態の図5に示されているクランプ部材の部分図を示す。
【図8】ローラボディが分解された状態において一つの別のローラボディを備えている、図3及び図4に示されている鼻クランプのクランプ脚部の部分図を示す。
【図9】ローラボディが組み立てられた状態のローラボディを備えている、図8に示されているクランプ脚部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2には、呼吸ガス分析から能力パラメータを検出する際に使用されるユーザユニット1、特に肺機能検査装置において使用するためのユーザユニット1が概略的に示されている。ユーザユニット1は有利には交換可能である呼吸管2とケーシング部3とを有している。ユーザユニット1を使用状態又は測定状態に移行させるために、呼吸管2をケーシング部3に挿入可能又は差込可能である。
【0017】
ケーシング3の上面には、ケーシング部3と接続されている鼻クランプ4が設けられている。鼻クランプ4は能力パラメータを検出する際にユーザ5の鼻を閉鎖するために使用される。更に図1及び図2から見て取れるように、ケーシング部3の下面には、ケーシング部3と接続されている下顎支持部6を設けることができ、この下顎支持部6は能力パラメータを検出する際にユーザ5の下顎へ当て付けるために構成されている。ユーザ5は能力パラメータを検出している間にこの図1及び図2に示されているユーザユニット1を簡単に取り扱うことができる。特に、能力パラメータを検出する際に、ユーザがケーシング部3を手で固定することは必要ない。ケーシング部3は呼吸管2を介して口によって保持され、付加的に鼻クランプ4を介して鼻4において保持され、また、下顎支持部6を介してユーザ5の下顎において支持されている。鼻クランプ4によって、能力パラメータを検出する際に鼻呼吸が排除される。これによって、ユーザユニット1は能力パラメータを検出する際の高い精度に寄与する。
【0018】
図示してはいないが、その他の点では、チューブ結合部を介してユーザユニット1を分析ユニットに接続することができ、この分析ユニットは吸込装置と呼吸ガス中のガス濃度を検出するために必要なセンサとを含むことができる。その他の点では、それ自体は従来技術から公知であるやり方で、吸息及び/又は呼息時の体積流及び/又は肺体積を検出するために、ケーシング部3に例えば超音波変換器のような測定装置を設けることができる。
【0019】
図示してはいないが、その他の点では、択一的な実施の形態におけるユーザユニット1が、ケーシング部3と接続されている鼻クランプ4又はケーシング部3と接続されている下顎支持部6のみを有していることも考えられる。
【0020】
呼吸管2の長手方向X1において奥行き調整可能であるように鼻クランプ4をケーシング部3に支承させることができ、また、種々の位置においてケーシング部3に固定することができる。これによって、鼻クランプ4からユーザ5の顔までの距離を変更することができ、また、鼻クランプ4の位置をユーザ5の鼻の位置に相対的に設定することができる。その他の点では、鼻クランプ4の奥行きを調整できることに加えて、呼吸管2の長手方向X1を横切る方向又は半径方向においても鼻クランプ4を調整し、鼻の形状に適合させることができる。これによって、能力パラメータを測定する際に鼻を完全に閉鎖することができる。
【0021】
図3から図9は、鼻クランプ4が、二つのクランプ脚片8,9を備えている、実質的にU字型のクランプ部材7を有することができ、それら二つのクランプ脚片8,9を自由端部10,11においてL字型に折り曲げることができることが見て取れる。折り曲げられている端部10,11の間には、ユーザ5の鼻を挿入するための、呼吸管2の吸い口側又はユーザ5側に開かれているクランプ領域12が形成される。クランプ部材7として、1mmから5mm、有利には約2mmの直径を有している、湾曲された線材、有利にはステンレス線材を使用することができる。これによって、クランプ脚片8,9の十分に高いクランプ力が保証される。
【0022】
図1及び図2から見て取れるように、クランプ脚片8,9の自由端部10,11を、呼吸管2の中心軸X1に対して90°よりも小さい角度で配置することができる。この場合、クランプ脚片8,9の自由端部10,11は、ケーシング部3の端面の外縁13を超えて前に向かって延在しているので、ユーザ5の鼻を簡単にクランプ領域12に挿入することができる。更にケーシング部3はユーザ5に対向する端面に凹状の湾曲部を更に有することができ、これによりユーザ5の顔を鼻クランプ4により近付けることができる。
【0023】
鼻クランプ4の奥行きを簡単に調整できるようにするために、クランプ部材7を、少なくとも一つのクランプネジを用いたネジ締めを介して、有利には二つのクランプ脚片8,9のU字型の接続領域14において、ケーシング部3に固定することができる。U字型の接続領域14は図3及び図4に示されている。クランプネジは二つの脚片8,9の間の領域においてケーシング部3にねじ込まれ、クランプ部材7はクランプネジのネジ頭15とケーシング部3との間に緊張される。クランプ部材7を呼吸管2の長手方向において、クランプネジによるネジ締めの前に、その都度ユーザ5の顔に関して、ある程度十分に前方又は後方にスライドさせることができる。ネジ頭15とケーシング部3との間にクランプ部材7を緊張させることによって、クランプ部材7は離れることなくケーシング部3に保持され、またクランプネジによるネジ締めによってユーザ5の鼻までの所望の距離で固定される。ユーザ5の鼻から鼻クランプ4の自由端部10,11までの最適な距離によって、鼻クランプ4の快適な嵌め合いが実現されるので、ユーザ5がクランプ作用を不快に感じることはない。その他の点では、ユーザ5の顔までの鼻クランプ4の最適な距離によって、能力パラメータを検出する際の鼻の可能な限り完全な閉鎖が保証される。
【0024】
詳細には図示していないが、ケーシング部3及び/又はネジ頭15には、クランプ脚片8,9をガイドするための少なくとも一つのガイド突出部及び/又はガイド切欠部を設けることができる。これによって、奥行き調整の際に、ケーシング部3及び呼吸管2に相対的にクランプ部材7を常に中心に配置することを保証することができる。その他の点では、相応のガイド突起物及び/又はガイド切欠部によるケーシング部3におけるクランプを介して、呼吸管2を長手方向にスライドさせる際にクランプ脚片8,9の所定の拡がりも強制することができる。
【0025】
特に図3及び図4から見て取れるように、各クランプ脚片8,9の折り曲げられた端部10,11は、クランプ脚片8,9の長手方向軸について回動可能なクランプローラ16,17を有することができ、それらクランプローラ16,17の間にクランプ領域12が形成される。クランプローラ16,17の間の距離は、一方では鼻が確実に閉鎖されるが、しかしながら他方では、被験者がクランプ作用を不快に感じることがないように定められている。鼻クランプ4の鼻への差込はクランプローラ16,17の回動可能な軸受けによって簡略化される。クランプローラ16,17の外周面が鼻の外面上を回転する。
【0026】
鼻の可能な限り完全な閉鎖を保証するために、クランプローラ16,17を円筒状に形成することができる。同じ目的のために、有利には、クランプローラ16,17を弾性のモールドとして、特に発泡材から成るモールドとして製造することができる。クランプローラ16,17の位置を顔及び鼻に適合させるために、クランプローラ16,17をクランプ脚片8,9の長手方向軸X2の方向にスライド可能に支承させることができる。これは図3と図4を比較することにより明らかになる。
【0027】
クランプローラ16,17の回動可能な軸受けに関して、クランプ脚片8,9の折り曲げられた端部10,11において、クランプ脚片8,9の長手方向軸X2について回動可能に支承されている円筒状のローラボディ18,19を設けることができ、各クランプローラ16,17はローラボディ18,19に差し込むために中央に開口部を有している。クランプローラ16,17の位置をユーザ5の顔及び鼻に適合させるために、クランプローラ16,17を軸方向においてスライド可能にローラボディ18,19に保持することができる。このために、ローラボディ18,19はクランプローラ16,17よりも長い。更には、使い捨てクランプローラ16,17を使用することができ、その場合には、使用済みのクランプローラ16,17をローラボディ18,19から引き抜き、未使用のクランプローラ16,17に交換することができる。これによって、能力パラメータを検出する際に高い衛生環境が保証される。
【0028】
図5から図7には、第1の実施の形態のローラボディ18,19が図示されている。ローラボディ18,19は、保持部材20,21によって、クランプ脚片8,9における軸方向のスライド又は滑りから保護されている。図示されている実施の形態においては、保持部材20,21として、クランプ脚片8,9の溝に固定されている軸保持リングが設けられている。
【0029】
ローラボディを二つの部材から形成することができる。即ち、ローラボディはクランプローラ16,17のための円筒状の軸受け部分22,23及びリング状の栓部24,25を有している。栓部24,25はプラスチックワッシャで良い。
【0030】
ローラボディ18,19を取り付けるために、先ず、栓部24,25がそれぞれのクランプ脚片8,9の折り曲げられた端部10,11に差し込まれるか、又は、通される。続いて、保持部材20,21が取り付けられる。それに続いて、軸受け部分22,23が保持部材20,21に接触するまでクランプ脚片8,9に差し込まれる。軸受け部分22,23は中央に、クランプ脚片8,9の直径よりも僅かに大きい直径の孔を有している。これによって、ローラボディ18,19が自由に回転できることが保証されている。
【0031】
図5から図7に示されている実施の形態においては、軸受け部分22,23の一方の端部が、リング状の外側部分28,29を備えた放射状ウェブ26,27を有しており、これにより栓部24,25の収容領域が形成される。放射状ウェブ26,27は、軸保持リングよりも大きい直径を有している円形の凹部30,31と境界を成している。これによって、栓部24,25をより少ない点で軸受け部分22,23と接着させることができ、それと共に、ローラボディ18,19をクランプ脚片8,9における軸方向のスライドから保護することができる。ローラボディ18,19が自由に回転できるための前提条件は、それらローラボディ18,19がクランプ脚片8,9とは接着されないことである。
【0032】
更に、ローラボディ18,19が容易に回転できることを保証するために、接着後の軸受け部分22,23と栓部24,25との間に、保持部材20,21のための空所を形成することができ、それによって保持部材20,21に相対的な軸方向におけるローラボディ18,19の極僅かな補償運動が実現される。図5においてはローラボディ18,19が組み立てられていない状態で示されており、図7においてはローラボディ18,19が組み立てられた状態で示されている。
【0033】
図8及び図9においては、ローラボディ18,19の代替的な実施の形態が示されている。上述の実施の形態に応じて、ローラボディ18,19はここでもまた、放射状ウェブ26,27とリング状の外側部分28,29とを備えた軸受け部分22,23を、栓部24,25に対向する側の端部に有している。しかしながら、図5から図7に示されている実施の形態とは異なり、図8及び図9に示されている実施の形態においては、軸受け部分22,23は係止結合でもって力結合及び形状結合により栓部24,25と接続される。このために、リング状の外側部分28,29には軸方向のスリット32が設けられており、その結果、リング状の外側部分28,29は複数の弧部分33に分割されている。栓部24,25を放射状ウェブ26,27とリング状の外側部分28,29との間に形成されている収容領域内に押し込む際に、復元力に抗って弧部分33を可逆性に外側に向かって湾曲させることができる。克服すべきスナップ力はスリットが形成された実施の形態によって小さくなっている。
【0034】
リング状の外側部分28,39は、内面上に、軸方向において内側に位置する傾斜部34と外側に位置する傾斜部35とを有している。このことは特に図9に示されている。外側に位置する傾斜部35は内側に位置する傾斜部34よりも小さい勾配を有しており、このことは、一方では収容領域内に栓部24,25を押し込む際に消費する力がより小さいことが保証され、他方では栓部24,25の係止後のローラボディ18,19の軸方向の十分な保持が保証される。
【0035】
図8及び図9に示されている実施の形態においても、ローラボディ18,19が組み立てられた状態では、栓部24,25と放射状ウェブ26,27との間に空所36が設けられており、これによりローラボディ18,19が容易に回転できることが保証される。図8及び図9に示されている実施の形態は、ローラボディ18,19の簡単な組み立てを実現する。その他の点では、ローラボディ18,19を分解するために、栓部24,25を必要に応じて軸受け部分22,23から再び外すことができる。
【0036】
軸受け部分22,23における放射状ウェブ26,27は、クランプローラ16,17のためのストッパとして作用する。従って、軸受け部分22,23におけるクランプローラ16,17のスライド運動は下方に向かって制限されている。
【0037】
図1及び図2に示されている下顎支持部6を呼吸管2の軸方向において同様に、奥行き調整可能であるようにケーシング部3に支承させることができ、種々の個所においてケーシング3に固定することができる。これによって、下顎支持部6の位置をユーザ5の顔に適合させることができ、また、能力パラメータを検出する際に、ユーザ5にとって快適なユーザユニット1の位置を保証することができる。ケーシング部3における下顎支持部6のクランプをケーシング部3における鼻クランプ4の前述のクランプに対応させることができる。
【0038】
下顎支持部6は、二つの支持脚片38,39を供えた実質的にU字型の支持部材37を有することができ、二つの支持脚片38,39をL字型に湾曲させ、ケーシング部3と接続させることができる。支持部材37を閉じられたワイヤループとして構成することができる。
【0039】
二つの支持脚片38,39は、ユーザ5の下顎へ当て付けるために実質的にU字型の支持領域40を形成して相互に接続されている。二つの支持脚片38,39を、呼吸管2の中心長手方向軸X1に対して90°以下の角度で支持領域40内に配置することができる。支持領域40内の支持脚片38,39の湾曲部を、鼻クランプ4のクランプ脚片8,9の自由端部10,11の湾曲部に対応させることができる。これによって、ユーザユニット1の快適な装着状態が達成される。
【0040】
更に図2から見て取れるように、二つの支持脚片38,39を、少なくとも一つのクランプネジを用いたネジ締めを介してケーシング部3に固定することができる。支持脚片38,39を、鼻クランプ4のクランプと同様に、ユーザ5の下顎まで所定の距離を取って、クランプネジのネジ頭41とケーシング部3との間に緊張させることができる。
【0041】
詳細には図示してはいないが、ケーシング部3の下面及び/又はネジ頭41には、支持脚片38,39をガイドするための少なくとも一つのガイド突出部及び/又はガイド切欠部を設けることができる。
【0042】
以下では、単独で、又は、相互的な任意の組み合わせで、及び/又は、特許請求の範囲に記載されている特徴を備えている、考えられる実施の形態を表しており、従って本発明の本質も成している、本発明のその他の特徴及び態様を説明する。つまり、本発明によるユーザユニットにおいては、
−クランプ脚片(8,9)の自由端部(10,11)を、呼吸管(2)の中心長手方向軸(X1)に対して90°以下の角度で配置することができる、及び/又は、
−クランプ部材(7)を、少なくとも一つのクランプネジを用いたネジ締めを介して、ケーシング部(3)に固定することができ、クランプネジをクランプ脚片(8,9)の間においてケーシング部(3)にねじ込むことができ、クランプ部材(7)をクランプネジのネジ頭(15)とケーシング部(3)との間に緊張させることができる、及び/又は、
−ケーシング部(3)及び/又はネジ頭(15)には、クランプ脚片(8,9)をガイドするための少なくとも一つのガイド突出部及び/又はガイド切欠部を設けることができる、及び/又は、
−クランプローラ(16,17)は円筒状で良い、及び/又は、
−クランプローラ(16,17)は弾性のモールドとして、特に発泡材から成るモールドとして製造することができる、及び/又は、
−クランプローラ(16,17)を、クランプ脚片(8,9)の長手方向軸(X2)の方向においてスライド可能に支承させることができる、及び/又は、
−ローラボディ(18,19)をクランプローラ(16,17)よりも長くすることができる、及び/又は、
−ローラボディ(18,19)をクランプ脚部(8,9)における軸方向のスライドから保護するために少なくとも一つの保持部材(20,21)を設けることができ、有利には、クランプ脚部(8,9)の溝に固定されている軸保持リングを設けることができる、及び/又は、
−ローラボディ(18,19)を二つの部材から形成することができ、ローラボディ(18,19)は円筒状の軸受け部分(22,23)と栓部(24,25)とを有することができ、軸受け部分(22,23)を回動可能にクランプ脚部(8,9)に支承させることができ、保持部材(20,21)と接触させ、栓部(24,25)は力結合及び/又は形状結合及び/又は素材結合により軸受け部分(22,23)と接続することができ、有利には、軸受け部分(22,23)と栓部(24,25)との間に保持部材(20,21)のための空所を形成することができる、及び/又は、
−軸受け部分(22,23)の下側の端部は、クランプローラ(16,17)のためのストッパとしての放射状ウェブ(26,27)を有することができる、及び/又は、
−二つの支持脚片(38,39)を、ユーザ(5)の下顎へ当て付けるために実質的にU字型の支持領域(40)を形成して、相互に接続させることができ、支持領域(40)を呼吸管(2)の中心長手方向軸(X1)に対して90°以下の角度で配置することができる、及び/又は、
−二つの支持脚片(38,39)を、少なくとも一つのクランプネジを用いたネジ締めを介してケーシング部(3)に固定することができ、支持脚片(38,39)を、クランプネジのネジ頭(41)とケーシング部(3)との間に緊張させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に肺機能検査装置において使用するための、呼吸ガス分析から能力パラメータを検出するためのユーザユニット(1)であって、
有利には交換可能である呼吸管(2)とケーシング部(3)とを備えており、更に有利には前記ユーザユニットを測定状態に移行させるために前記呼吸管(2)は前記ケーシング部(3)に挿入可能である、ユーザユニットにおいて、
前記ケーシング部(3)の上面には、前記ケーシング部(3)と接続されており、且つ、前記能力パラメータを検出する際にユーザ(5)の鼻を閉鎖するために構成されている鼻クランプ(4)が設けられていることを特徴とする、ユーザユニット。
【請求項2】
前記鼻クランプ(4)は、前記呼吸管(2)の軸方向において奥行き調整可能であるように前記ケーシング部(3)に支承されており、且つ、種々の位置において前記ケーシング部(3)に固定可能である、請求項1に記載のユーザユニット。
【請求項3】
前記鼻クランプ(4)は、二つのクランプ脚片(8,9)を備えている、実質的にU字型のクランプ部材(7)を有しており、前記二つのクランプ脚片(8,9)は自由端部(10,11)においてL字型に折り曲げられており、折り曲げられた前記端部(10,11)間には、前記鼻を挿入するために前記呼吸管(2)の吸い口側に開かれているクランプ領域(12)が形成される、請求項1又は2に記載のユーザユニット。
【請求項4】
各クランプ脚片(8,9)は該クランプ脚片(8,9)の折り曲げられた端部(10,11)において、前記クランプ脚片(8,9)の長手方向軸(X2)について回動可能なクランプローラ(16,17)を有しており、該クランプローラ(16,17)の間に前記クランプ領域(12)が形成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のユーザユニット。
【請求項5】
前記クランプ脚片(8,9)の折り曲げられた前記端部(10,11)には、前記クランプ脚片(8,9)の長手方向軸(X2)について回動可能に支承されている、前記クランプローラ(16,17)のための円筒状のローラボディ(18,19)が設けられており、前記クランプローラ(16,17)は中央に前記ローラボディ(18,19)に差し込むための開口部を有しており、有利には前記ローラボディ(18,19)において軸方向にスライド可能である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のユーザユニット。
【請求項6】
特に肺機能検査装置において使用するための、呼吸ガス分析から能力パラメータを検出するためのユーザユニット(1)であって、
有利には交換可能である呼吸管(2)とケーシング部(3)とを備えており、更に有利には前記ユーザユニットを測定状態に移行させるために前記呼吸管(2)を前記ケーシング部(3)に挿入可能であるユーザユニット、特に請求項1乃至5のいずれか一項に記載のユーザユニットにおいて、
前記ケーシング部(3)の下面には、前記ケーシング部(3)と接続されており、且つ、前記能力パラメータを検出する際にユーザ(5)の下顎に当て付けるために構成されている下顎支持部(6)が設けられていることを特徴とする、ユーザユニット。
【請求項7】
前記下顎支持部(6)は、前記呼吸管(2)の軸方向において奥行き調整可能であるように前記ケーシング部(3)に支承されており、且つ、種々の位置において前記ケーシング部(3)に固定可能である、請求項6に記載のユーザユニット。
【請求項8】
前記下顎支持部(6)は、二つの支持脚片(38,39)を備えている、実質的にU字型の支持部材(37)を有しており、前記二つの支持脚片(38,39)はL字型に湾曲されており、且つ、前記ケーシング部(3)と接続されている、請求項6又は7に記載のユーザユニット。
【請求項9】
前記ケーシング部(3)及び/又はネジ頭(41)には、前記クランプ脚片(38,39)をガイドするための少なくとも一つのガイド突出部及び/又はガイド切欠部が設けられている、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のユーザユニット。
【請求項10】
特に肺機能検査装置において使用するための、呼吸ガス分析から能力パラメータを検出するためのユーザユニット(1)において、
有利には交換可能である呼吸管(2)とケーシング部(3)とを備えており、更に有利には前記ユーザユニットを測定状態に移行させるために前記呼吸管(2)を前記ケーシング部(3)に挿入可能であり、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の鼻クランプ(4)と、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の下顎支持部(6)とを備えていることを特徴とする、ユーザユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−501550(P2013−501550A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524134(P2012−524134)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004803
【国際公開番号】WO2011/018186
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512036199)アセオス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】ACEOS GmbH
【住所又は居所原語表記】Karolinenstr. 108, D−90763 Fuerth, Germany
【Fターム(参考)】