説明

呼吸器疾患治療用の新規な長時間作用型医薬の組合せ

本発明は、新規な抗コリン作用薬及び新規な長時間作用型のベータ2作用薬を基礎とした新規な医薬組成物に関する。また、本発明は、その組成物の製造と気道疾患の治療における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規な抗コリン作用薬及び新規な長時間作用型(long-acting)のベータ2作用薬を基礎とした新規な医薬組成物、その製造方法ならびに呼吸器疾患の治療における使用に関する。
(発明の説明)
本発明は、式1で表される抗コリン作用薬と、
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、X-は1個の負電荷を有するアニオンを示し、好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルフェート、ホスフェート、メタンスルホネート、ニトレート、マレエート、アセテート、シトレート、フマレート、タルトレート、オキサレート、スクシネート、ベンゾエート及びパラ−トルエンスルホネートからなる群から選択されるアニオンを示す。)
式2の化合物を含む新規な医薬組成物に関するもので、
【0004】
【化2】

【0005】
薬理学的に許容される酸付加塩の形、鏡像異性体、鏡像異性体又はラセミ化合物の混合物の形、溶媒和物や水和物の形であってもよく、生理学的に許容される賦形剤と組み合わせてもよい医薬組成物に関する。
式1の塩は、好ましくは、式中のX-が1個の負電荷を有するアニオンを示し、塩化物、臭化物、4−トルエンスルホネート及びメタンスルホネートからなる群から選択され、好ましくは臭化物を示す塩が用いられる。
特に好ましくは、式中、X-が1個の負電荷を有するアニオンを示し、塩化物、臭化物及びメタンスルホネートからなる群から選択され、好ましくは臭化物を示す式1の塩が用いられる。
式中、X-が臭化物を示す式1の塩がとりわけ好ましい。
式1の化合物はWO02/32899より公知である。
驚いたことに、式1の抗コリン作用薬を式2の化合物と一緒に投与すると、炎症性又は閉塞性の気道疾患の治療において、予期しなかった有利な治療効果、特に相乗効果を見ることができる。この相乗効果を考慮すると、本発明の医薬組合せは、従来の単剤治療で使用したそれぞれの化合物の場合に比べて、少ない投与量で使用することができる。本発明のもう一つの良い態様は、例えばベータ受容体刺激薬を投与した際に起きる可能性のある望ましくない副作用を低減することである。本件で特に言及に値する望ましくない副作用とは、ベータ受容体刺激薬により起きることがある心臓への興奮性作用、とりわけ頻拍といわれる心搏が激しくなること、狭心症に似た痛み、ならびに不整脈といった副作用である。
前述の効果は、2種の有効成分を単一の有効成分処方にして同時に投与する場合、また2種の有効成分を別々の処方にして順次投与する場合のどちらにもみられる。本発明では2種の有効成分を単一処方にして同時に投与する方が好ましい。
本発明の範囲において化合物1’に言及する際は、塩1に含まれる下記式の薬理学的に有効なカチオンを指すものとする。
【0006】
【化3】

【0007】
前記医薬組合せにおいては、有効成分は、両方を単一処方に含有させてもよいし、あるいは2種の別々の処方に含有させてもよい。本発明では、有効成分1及び2を単一処方に含む医薬組成物が好ましい。
式2のベータ受容体刺激薬について述べる際は、鏡像異性体(R又はS体)又はその混合物を含むものであり、該化合物のR鏡像異性体が本発明の範囲においては特に有用である。式2の化合物の鏡像異性体の立体選択性を有する製造方法は、この分野では公知である。また、本発明によると、化合物2は塩の形及び水和物又は溶媒和物の形で存在してもよい。
本発明の範囲において、化合物2は生理学的に許容されるその酸付加塩を含むものである。本発明では、ベータ受容体刺激薬2の生理学的に許容される酸付加塩とは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸又はマレイン酸の塩から選択される製薬学的に許容される塩を意味する。所望であれば、前記酸の混合物を用いて塩2を調製してもよい。本発明では、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩及びキシナホ酸塩から選択される塩2が好ましい。
本発明の態様の1つは、治療上有効量の1及び2に加えて、製薬学的に許容される賦形剤を含む前記医薬組成物に関するものである。別の本発明の態様は、治療上有効量の1及び2の他に製薬学的に許容される賦形剤を含まない前記医薬組成物に関するものである。
さらに、本発明は、炎症性又は閉塞性呼吸器疾患の治療用として、式2の化合物も含有する医薬組成物を製造するために治療上有効量の塩1を使用することに関する。好ましくは、本発明は、喘息又はCOPDの治療用の医薬組成物を製造するための前記使用に関する。
【0008】
本発明の範囲において、化合物1及び2は同時に投与してもよいし、あるいは順次投与してもよいが、本発明では化合物1及び2は同時投与が好ましい。
また、本発明は塩1及び長時間作用型のベータ受容体刺激薬2の治療有効量を、炎症性又は閉塞性呼吸器疾患、とりわけ喘息又はCOPDの治療へ使用することに関するものである。
本発明の有効成分組合せ中で用いることができる有効成分1及び2の比率は様々である。有効成分1及び2は、溶媒和物又は水和物の形で存在してもよい。塩1及び2の選択によって、様々な塩の分子量の違いから本発明の範囲内で用いることができる質量比が異なる。そこで、以下の質量比では、カチオン1’と化合物2の遊離塩基を基準とする。
本発明による有効成分の組合せには、1’と式2で表わされる化合物の遊離塩基とを、質量比で例えば約1:30〜400:1の範囲、好ましくは1:25〜200:1、好ましくは1:20〜100:1、特に好ましくは1:15〜50:1の範囲で含むことができる。
本発明を限定するものではないが、例えば、本発明による1及び2の好ましい組合せには、カチオン1’及び化合物2の遊離塩基が以下の質量比で含まれるとよい。1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1。
1と2の組合せを含む本発明の医薬組成物は、通常、1回の投与につき5〜5000μg、好ましくは10〜2000μg、より好ましくは15〜1000μg、さらに好ましくは20〜800μg、さらに本発明によると好ましくは30〜750μg、より好ましくは40〜700μgの投与量中に、カチオン1’及び化合物2が一緒に存在するようにして投与するもので、これらの投与量の合計においては化合物2は遊離塩基を基準とする。
【0009】
例えば、本発明の1と2の組合せには一回の投与での投与量の合計が、約15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg、260μg、265μg、270μg、275μg、280μg、285μg、290μg、295μg、300μg、305μg、310μg、315μg、320μg、325μg、330μg、335μg、340μg、345μg、350μg、355μg、360μg、365μg、370μg、375μg、380μg、385μg、390μg、395μg、400μg、405μg、410μg、415μg、420μg、425μg、430μg、435μg、440μg、445μg、450μg、455μg、460μg、465μg、470μg、475μg、480μg、485μg、490μg、495μg、500μg、505μg、510μg、515μg、520μg、525μg、530μg、535μg、540μg、545μg、550μg、555μg、560μg、565μg、570μg、575μg、580μg、585μg、590μg、595μg、600μg、605μg、610μg、615μg、620μg、625μg、630μg、635μg、640μg、645μg、650μg、655μg、660μg、665μg、670μg、675μg、680μg、685μg、690μg、695μg、700μg等となるように、1’と式2の化合物が含有される。ここでも規定の投与量は、本発明の医薬組合せにおいて、化合物2は遊離塩基の量を基準とする。これらの1回の投与あたりの推奨投与量が実際に記載されている数値に限定されるものではないということは当業者であれば明らかである。また、およそ±2.5μgの範囲内の増減、とりわけ小数範囲の増減も含まれることは当業者であれば明らかであろう。このような投与量範囲において、有効成分1’及び2が上記に記載した質量比で存在すればよい。
本発明による1及び2の有効成分組合せは、吸入での投与が好ましい。そのためには、成分1及び2は吸入に適した形態で利用できなければならない。吸入用調剤としては吸入粉末、噴射剤含有定量エアロゾル又は噴射剤を含有しない吸入可能な溶液が挙げられる。有効成分1及び2の組合せを含有する本発明の吸入粉末は、有効成分のみから構成されていてもよいし、あるいは、有効成分と生理的に許容される賦形剤との混合物で構成されていてもよい。また、本発明の範囲において、噴射剤を含有しない吸入可能な溶液という用語は、濃縮物又は直ぐに使用できる無菌吸入液が挙げられる。本発明によるこの調剤は、有効成分1及び2の組合せを、1つの処方中に一緒に含有させるか、又は2つの別個の処方に含有させるかのいずれでもよい。本発明の範囲において使用できるこうした処方については、明細書の次のパートでより詳細に説明する。
【0010】
A)本発明による有効成分1及び2の組合せを含む吸入粉末:
本発明による吸入粉末は1及び2のみを含むか、あるいは、1及び2を生理的に許容される適当な賦形剤と混合させて含むかのいずれでもよい。有効成分1及び2が生理的に許容される賦形剤との混合物として存在する場合、以下の生理的に許容される賦形剤を使用して本発明による吸入粉末を調製することができる。単糖類(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース)、オリゴ糖類および多糖類(例えば、デキストラン)、多価アルコール類(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、あるいはこれら賦形剤の混合物。好ましくは、単糖類又は二糖類が使用され、ラクトース又はグルコースの使用が好ましく、限定はされないが、その水和物の形が特に好ましい。
本発明による吸入粉末の範囲において、賦形剤の最大平均粒径は250μmまで、好ましくは10〜150μm、最も好ましくは15〜80μmの範囲である。上記の賦形剤に平均粒径1〜9μmのより微細な賦形剤画分を添加することが適切と考えられる場合もあろう。より微細な賦形剤も、本願明細書中で前記に列挙した使用可能な賦形剤の群から選択される。最終的には、本発明の吸入粉末を調製するために、好ましくは平均粒径0.5〜10μm、さらに好ましくは1〜5μmの微粉化した有効成分1及び2を、賦形剤混合物に添加する。粉砕、微粉化し、最終的に各成分を混合することによる本発明の吸入粉末の製造方法は、従来技術より公知である。本発明の吸入粉末は、1及び2の両方を含む単一の粉体混合物、あるいは、それぞれに1又は2のみを含有する別個の吸入粉末の形態のいずれかに調製して投与することができる。
【0011】
本発明の吸入粉末は、従来技術から公知の吸入器を用いて投与することができる。1及び2に加えて生理的に許容される賦形剤を含む本発明の吸入粉末は、例えば、US4570630Aに記載されているような計量チャンバーを用いた供給源から一回分の投与量を放出する吸入器によって、あるいは、DE3625685Aに記載されているような他の手段によって投与することができる。1及び2、さらに生理的に許容される賦形剤を一緒に含有してもよい本発明の吸入粉末は、例えば「タービュヘイラー(Turbuhaler)(登録商標)」という名称で知られている吸入器を用いて、あるいは、例えばEP237507Aに開示されているような吸入器を用いて投与することができる。好ましくは、1と2とに加えて生理的に許容される賦形剤を含む本発明の吸入粉末を、例えばWO94/28958に記載の吸入器で使用するカプセル内に充填(所謂インハレット(inhalettes)の形成)する。
図1に、インハレット内の本発明の医薬組合せを投与するための特に好ましい吸入器を示す。カプセルから粉末状の医薬組成物を吸入するためのこの吸入器(「ハンディヘラー」)は、2個の窓2を含むハウジング1と、空気導入口を有し、スクリーンハウジング4を介して固定されたスクリーン5を備えたデッキ3と、デッキ3に連結し、2本の尖ったピン7を備えバネ8に対して可動する押しボタン9を有する吸入チャンバー6と、スピンドル10を介してハウジング1、デッキ3及びカバー11と連結し、跳ね上げ式で開閉可能なマウスピース12と、流動抵抗を調整するための空気穴13とによって特徴づけられる。
【0012】
B)有効成分1及び2の組合せを含む、噴射剤ガス駆動型吸入エアロゾル:
本発明による噴射剤ガス含有吸入エアロゾルには、有効成分1及び2が噴射剤ガス中に溶解されているか、あるいは分散状態で含まれる。1及び2は別々の処方又は単一調剤中に存在させることができ、その中で1及び2は、両方が溶解または分散されているか、あるいは一方の成分が溶解され他方が分散されているかのいずれかである。本発明の吸入エアロゾルの調製に使用できる噴射剤ガスについては従来技術から既知である。n−プロパン、n−ブタン又はイソブタン等の炭化水素化合物、及び、メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの好ましくは塩素化及びフッ素化誘導体等のハロ炭化水素化合物から、適当な噴射剤ガスが選択される。上記噴射剤ガスは単独で、又はその混合物として使用できる。特に好ましい噴射剤ガスは、TG11、TG12、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、TG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)及びこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルカン誘導体であり、TG134a、TG227及びそれらの混合物の噴射剤ガスが好ましい。
また、本発明の噴射剤駆動型吸入エアロゾルには、補助溶剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、滑剤及びpH調節剤等の他の成分も含ませることができる。これらの成分はすべて、当分野において公知である。
本発明による噴射剤ガス含有吸入エアロゾルには、有効成分1及び/又は2を5質量%まで含有させるとよい。例えば、本発明のエアロゾルは、有効成分1及び/又は2を0.002〜5質量%、0.01〜3質量%、0.015〜2質量%、0.1〜2質量%、0.5〜2質量%又は0.5〜1質量%含む。
有効成分1及び/又は2が分散状態で存在する場合は、該有効成分粒子の平均粒子径は10μmまでが好ましく、さらに好ましくは0.1〜6μm、より好ましくは1〜5μmである。
【0013】
前述の本発明による噴射剤駆動型吸入エアロゾルは、当該分野において公知の吸入器(定量噴霧吸入器(MDI))を用いて投与することができる。従って、本発明の別の態様としては、噴射剤駆動型エアロゾルを投与するのに適した1種以上の吸入器と組み合わせた、前述の噴射剤駆動型エアロゾル状態の医薬組成物に関する。更に、本発明は、本発明による前記噴射剤ガス含有エアロゾルを収容することを特徴とする吸入器に関するものである。また、本発明は、適切なバルブが設けられ、適当な吸入器内で使用可能であり、かつ、本発明による上記噴射剤ガス含有吸入エアロゾルの1種を収容する、カートリッジに関する。好適なカートリッジ、さらには本発明による噴射剤ガス含有吸入エアロゾルをカートリッジに充填する方法については、従来技術から公知である。
C)本発明の有効成分1及び2の組合せを含む、噴射剤を使用しない吸入溶液又は懸濁液:
本発明による噴射剤を使用しない吸入溶液は、例えば水性又はアルコール系溶媒、好ましくはエタノール性溶媒を含有し、水性溶媒とエタノール性溶媒との混合物を含有することもできる。水性溶媒とエタノール性溶媒との混合物の場合、水に対するエタノールの相対的割合は限定されないが、エタノールの最大値は70容量%まで、より好ましくは60容量%までである。残りの容量を水で構成する。1及び2を別個に又は一緒に含有する溶液又は懸濁液は、適当な酸を用いてpH値を2〜7、好ましくは2〜5に調整する。pH値は無機又は有機の酸から選択される酸を用いて調整すればよい。特に好適な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸が挙げられる。特に好適な有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸等が挙げられる。推奨される無機酸は塩酸及び硫酸である。また、有効成分の1つとともに酸付加塩を形成した酸を使用することも可能である。有機酸の中では、アスコルビン酸、フマル酸及びクエン酸が好ましい。所望であれば、上記の酸の混合物を用いることもでき、特に、酸性化特性に加えて、例えば香料、酸化防止剤又は錯化剤としての特性を有する酸、例えばクエン酸又はアスコルビン酸等の場合は、混合して用いるとよい。本発明によると、塩酸を用いてpH値を調整することが特に好ましい。
【0014】
本発明では、エデト酸(EDTA)又はその公知の塩の1つであるエデト酸ナトリウムを安定剤又は錯化剤として添加することは、本発明の処方においては不要である。実施形態によっては、この化合物を1種以上含んでもよい。推奨実施形態において、エデト酸ナトリウムを基準とした含有量は、100mg/100ml未満、好ましくは50mg/100ml未満、さらに好ましくは20mg/100ml未満である。一般に、エデト酸ナトリウムの含有量が0〜10mg/100mlの範囲となる吸入溶液が好ましい。
本発明による噴射剤を使用しない吸入溶液には、補助溶剤及び/又は他の賦形剤を添加することができる。好ましい補助溶剤は、ヒドロキシル基又は他の極性基を含むもので、例えばアルコール類、特にイソプロピルアルコール、グリコール類、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類である。本明細書における賦形剤及び添加剤という用語は、それ自体は活性物質ではないが、薬理学的に好適な溶媒中で1種またはそれより多くの活性物質と共に処方することができ、活性物質を含む処方物の定性的特性を改善することができる、薬理学的に許容される任意の物質を意味する。これらの物質は薬理的作用を持たないことが好ましい。あるいは、所望の療法との関連において容易に認識できるような薬理作用は持たないか、少なくとも望ましくない薬理作用を有していないことが好ましい。賦形剤及び添加剤としては、例えば、大豆レシチン、オレイン酸、ポリソルベート等のソルビタンエステル類、ポリビニルピロリドンなどの界面活性剤、他の安定剤、錯化剤、最終的な医薬処方物の品質保持期間を保証又は延長する酸化防止剤及び/又は防腐剤、香味付与剤、ビタミン類及び/又は当分野において公知の他の添加剤が挙げられる。また、該添加剤として、例えば塩化ナトリウム等の薬理学的に許容される塩も等張剤として挙げられる。
好ましい賦形剤としては、例えばpHの調整に使用されていない場合のアスコルビン酸、さらにはビタミンA、ビタミンE、トコフェロール類及び人体で産生する類似のビタミン類及びプロビタミン類等の酸化防止剤が挙げられる。
【0015】
防腐剤を使用して病原体による汚染から該処方物を保護することができる。適当な防腐剤は当該分野において公知のものであり、特に当該分野において公知の濃度の塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム又は安息香酸もしくは安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩である。上記防腐剤は、好ましくは50mg/100mlまで、より好ましくは5〜20mg/100mlの範囲の濃度で存在していることが好ましい。
好ましい処方物は、溶剤としての水及び有効成分1と2との組合せの他に、塩化ベンザルコニウム及びエデト酸ナトリウムのみを含むものである。エデト酸ナトリウムを含有させない推奨実施形態もある。
本発明の噴射剤を使用しない吸入溶液は、特別に、治療投与量の少量の液体処方物を数秒間以内で霧状にして治療用の吸入に適したエアロゾルを生成することができるタイプの吸入器を用いて投与される。本発明の範囲内において、100μL未満、好ましくは50μL未満、より好ましくは10〜30μLの量の有効成分溶液を、好ましくは1回のスプレー操作で霧状にすることができ、その結果、平均粒径が20μm未満、好ましくは10μm未満のエアロゾルを生成させ、エアロゾルの吸入可能な量が治療上の有効量に相当するように生成させることのできる吸入器が好ましい吸入器である。
液状医薬組成物の定量を噴射剤無しで放出するタイプの吸入用装置については、例えば国際特許出願WO91/14468及びWO97/12687(特に図6a及び図6b参照)に記載されている。これらに記載されているネブライザー(装置)は、「Respimat(登録商標)」という名称で知られている。
【0016】
このネブライザー(「Respimat(登録商標)」)を効果的に利用して、有効成分1及び2の組合せを含む本発明の吸入エアロゾルを生成することができる。
従って、更なる本発明の態様は、上記のような噴射剤を使用しない吸入溶液又は懸濁液状態の医薬処方物の投与に適した装置、好ましくは「Respimat(登録商標)」と組み合わせた、噴射剤を使用しない吸入溶液又は懸濁液状態の医薬処方物に関する。好ましくは、本発明による有効成分1及び2の組合せを特徴とする噴射剤を使用しない吸入溶液又は懸濁液であって、「Respimat(登録商標)」という名称で知られている装置と組み合わせた前記吸入溶液又は懸濁液に関する。さらに、本発明は、本願明細書で前述したような本発明の噴射剤無しの吸入溶液又は懸濁液を収容することを特徴とする、前記吸入用装置、好ましくは「Respimat(登録商標)」に関するものである。
本発明によると、有効成分1及び2を単一処方に含有する吸入溶液の方が好ましい。「単一処方」という用語は、例えばWO00/23037に開示されているように、2種の成分1及び2を2室型(two-chamber)カートリッジに収容する処方物も含むものである。この公報はそのすべてを本願明細書に引用する。
本発明による噴射剤を使用しない吸入溶液又は懸濁液は、濃縮物又は直ぐに使用できる無菌吸入溶液もしくは懸濁液、ならびに「Respimat(登録商標)」用に設計された上記溶液及び懸濁液の状態とすることができる。濃縮物の場合、例えば等張性の生理食塩水を添加することによって直ぐに使用可能な処方物が作製できる。直ぐに使用できる無菌処方物は、ベンチュリの原理又は他の原理によって超音波又は圧縮空気を用いて吸入性エアロゾルを生成するエネルギー駆動型の固定式又は持運び可能なネブライザーを使用して投与することができる。
従って、本発明の別の態様は、濃縮物又は直ぐに使用可能な無菌処方物の形態をとる前述のような噴射剤を使用しない吸入溶液又は懸濁液状態の医薬組成物に関するもので、これらの液を投与するのに適した装置、即ち、ベンチュリの原理または他の方法によって超音波又は圧縮空気を用いて吸入性エアロゾルを生成する、エネルギー駆動式の自立型又は持運び可能なネブライザーであることを特徴とする装置と組み合わせた医薬組成物に関する。
以下の実施例は本発明をより詳細に説明することを意図するもので、本発明の範囲を一例として以下の実施形態に限定するものではない。
当該分野で公知な方法と同様にして得ることができる下記の処方物の例は本発明をさらに説明するためのものであり、本発明の範囲をその例に限定するものではない。
【0017】
処方例
A)吸入粉末
1)
【0018】
【表1】

【0019】
2)
【表2】



【0020】
3)
【表3】

【0021】
4)
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】インハレットに充填した本発明の医薬組合せを投与するための特に好ましい吸入器を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表わされる抗コリン薬と
【化1】

(式中、X-は1個の負電荷を有するアニオンを示し、好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルフェート、ホスフェート、メタンスルホネート、ニトレート、マレエート、アセテート、シトレート、フマレート、タルトレート、オキサレート、スクシネート、ベンゾエート及びパラ−トルエンスルホネートからなる群から選択されるアニオンを示す。)
式2の化合物とを含む医薬組成物であって、
【化2】

薬理学的に許容される酸付加塩、鏡像異性体、鏡像異性体又はラセミ化合物の混合物、溶媒和物や水和物の形であってもよく、生理学的に許容される賦形剤と一緒であってもよい医薬組成物。
【請求項2】
前記有効成分1及び2が単一処方中に存在するか、あるいは別個の2種の処方に含有されている請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記化合物2が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸又はマレイン酸の塩の形で存在することを特徴とする請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記化合物2がR鏡像異性体の形で存在することを特徴とする請求項1、2又は3記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記2(遊離塩基を基準)に対する1’:
【化3】

の質量比が、約1:30〜400:1の範囲、好ましくは1:25〜200:1の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が吸入に適した調剤形態で存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、吸入粉末、噴射剤駆動型定量エアロゾル及び噴射剤を含有しない吸入可能な溶液から選択される調剤であることを特徴とする請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類、多価アルコール類、塩類又はこれら賦形剤を互いに混合したものから選択される生理的に許容される好適な賦形剤と混合して前記1及び2を含有する吸入粉末であることを特徴とする請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、前記有効成分1及び2を唯一の成分として含有する吸入粉末であることを特徴とする請求項7記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、前記1及び2を溶解又は分散状態で含む噴射剤含有吸入エアロゾルであることを特徴とする請求項7記載の医薬組成物。
【請求項11】
噴射剤ガスとして、n−プロパン、n−ブタン又はイソブタン等の炭化水素化合物あるいはメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの塩素化及び/又はフッ素化誘導体等のハロ炭化水素化合物を含む、請求項10記載の噴射剤含有吸入エアロゾル。
【請求項12】
前記噴射剤ガスが、TG11、TG12、TG134a、TG227又はこれらの混合物であり、好ましくはTG134a、TG227又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項11記載の噴射剤含有吸入エアロゾル。
【請求項13】
前記医薬組成物が、水、エタノール又は水とエタノールとの混合物を溶媒として含有する噴射剤を含有しない吸入可能な溶液であることを特徴とする請求項7記載の医薬組成物。
【請求項14】
他の補助溶剤及び/又は賦形剤を含んでいてもよいことを特徴とする請求項13記載の吸入液。
【請求項15】
炎症性又は閉塞性気道疾患、とりわけ喘息又はCOPDの治療用医薬品を製造するための請求項1〜14のいずれか1項記載の組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−500194(P2007−500194A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529830(P2006−529830)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005219
【国際公開番号】WO2004/105759
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】