説明

呼気濃度測定器

【課題】口臭の原因となる呼気中の還元性ガス濃度および飲酒による呼気中のエチルアルコールの濃度を、一の測定器で測定することができる呼気濃度測定器の提供。
【解決手段】半導体ガスセンサー1と、半導体素子11の電気抵抗を測定する測定手段2と、この測定手段2により測定された電気抵抗RSの値を用いて呼気中の還元性ガスの濃度を演算する第1の演算手段31と、測定手段2により測定された電気抵抗RSの値を用いて呼気中のエチルアルコールの濃度を演算する第2の演算手段32と、呼気中の還元性ガスの濃度を測定する場合と呼気中のエチルアルコールの濃度を測定する場合とで第1の演算手段31と第2の演算手段32とを切り替える切替手段4と、この切替手段4により切り替えられた第1の演算手段31または第2の演算手段32により演算した結果を表示する濃度表示手段51とを備えているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口臭の原因となる呼気中の還元性ガスの濃度および飲酒による呼気中のエチルアルコールの濃度の測定を一の測定器で行うことができる呼気濃度測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
口臭の原因となる呼気中の還元性ガスの濃度あるいは飲酒による呼気中のエチルアルコールの濃度を測定するものとして半導体素子を有する半導体ガスセンサーを備えた呼気濃度測定器が用いられている。
【0003】
このような呼気濃度測定器にあっては、被験者の呼気を半導体素子に吹きかけ、呼気中のメチルメルカプタン等の揮発性硫黄化合物を主成分とする還元性ガスあるいは呼気中のエチルアルコールにより半導体素子に吸着している酸素分子等を還元して脱着させ、この脱着による半導体素子の電気抵抗の変化を利用して呼気中の還元性ガスあるいは呼気中のエチルアルコールの濃度を測定するものであり、たとえば、口臭(呼気中の還元性ガスの濃度)を測定する場合には呼気中の還元性ガスの濃度を測定する口臭測定器が(例えば、特許文献1参照)、呼気中のエチルアルコールの濃度を測定する場合にはエチルアルコール濃度測定器が(例えば、特許文献2参照)それぞれ用いられている。
【特許文献1】特開平5−322816号公報
【特許文献2】特開2004−245800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、口臭の原因となる呼気中の揮発性硫黄化合物を主成分とする還元性ガスと呼気中のエチルアルコールとでは濃度に対する半導体素子の電気抵抗の変化が大きく異なるため、測定するガスの種類によって使用する半導体ガスセンサーの種類を変えており、口臭を測定する口臭測定器と呼気中のエチルアルコールの濃度を測定するエチルアルコール濃度測定器とはそれぞれ別個に設けられ、使用に際して利便性等の点で問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、口臭の原因となる呼気中の還元性ガスあるいは飲酒による呼気中のエチルアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子を有する半導体ガスセンサーと、前記半導体素子の前記電気抵抗を測定する測定手段と、この測定手段により測定された前記電気抵抗の値を用いて前記呼気中の還元性ガスの濃度を演算する第1の演算手段と、前記測定手段により測定された前記電気抵抗の値を用いて前記呼気中のエチルアルコールの濃度を演算する第2の演算手段と、前記呼気中の還元性ガスの濃度を測定する場合と前記呼気中のエチルアルコールの濃度を測定する場合とで前記第1の演算手段と前記第2の演算手段とを切り替える切替手段と、この切替手段により切り替えられた前記第1の演算手段または前記第2の演算手段により演算した結果を表示する濃度表示手段とを備えている呼気濃度測定器である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の呼気濃度測定器において、呼気中の還元性ガスの濃度に対し、あらかじめ定められた還元性ガスの濃度の値と比較して口臭の度合いに分類する第1の分類手段と、呼気中のエチルアルコールの濃度に対し、あらかじめ定められたエチルアルコールの濃度の値と比較して飲酒による酒臭の度合いに分類する第2の分類手段と、前記第1の分類手段または前記第2の分類手段により得られた結果を表示する分類結果表示手段とを有しているものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の呼気濃度測定器によれば、測定手段により測定された電気抵抗の値を用いて呼気中の還元性ガスの濃度を演算する第1の演算手段と、測定手段により測定された電気抵抗の値を用いて呼気中のエチルアルコールの濃度を演算する第2の演算手段と、呼気中の還元性ガスの濃度を測定する場合と呼気中のエチルアルコールの濃度を測定する場合とで第1の演算手段と第2の演算手段とを切り替える切替手段とを備えているため、一の呼気濃度測定器を用いて口臭の原因となる呼気中の還元性ガスの濃度と飲酒による呼気中のエチルアルコールの濃度とを切替手段により切り替えて測定することができ、利便性が向上すると共に、呼気中の還元性ガスの濃度を測定する場合と呼気中のエチルアルコールの濃度を測定する場合とで同じ半導体ガスセンサーを用いることができ、呼気中の還元性ガスの濃度を測定する呼気濃度測定器と呼気中のエチルアルコールの濃度を測定する呼気濃度測定器とを各別に作製する場合に比べ製造コストを大幅に低減させることができる。
【0009】
請求項2記載の呼気濃度測定器によれば、請求項1記載の呼気濃度測定器の効果に加え、呼気中の還元性ガスの濃度に対し、あらかじめ定められた還元性ガスの濃度の値と比較して口臭の度合いに分類する第1の分類手段と、呼気中のエチルアルコールの濃度に対し、あらかじめ定められたエチルアルコールの濃度の値と比較して飲酒による酒臭の度合いに分類する第2の分類手段と、第1の分類手段または第2の分類手段により得られた結果を表示する分類結果表示手段とを有しているため、口臭の度合い及び飲酒による酒臭の度合いを迅速かつ簡便に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例1について、図1〜5に基づき説明する。
【0011】
図1および図2において、Aは呼気濃度測定器であり、呼気濃度測定器Aは、半導体ガスセンサー1と、測定手段2と、第1の演算手段31と、第2の演算手段32と、切替手段4と、濃度表示手段51とにより概略的に構成され、これらはケース本体61内に組み込まれている。
【0012】
半導体ガスセンサー1は、呼気中の還元性ガスおよび呼気中のエチルアルコールを検知するもので、電源となる電池8に接続され、ケース本体61を覆う蓋体62に穿設された呼気導入口62aに臨むように取り付けられている。
【0013】
この半導体ガスセンサー1は、図3に示したように、口臭の原因となる呼気中の還元性ガスあるいは飲酒による呼気中のエチルアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子11を有している。半導体素子11には、例えば、半導体材料として酸化スズなどの酸化物を用いた公知のものを使用することができる。この半導体素子11には絶縁体であるアルミナ基板12を介して該半導体素子を加熱するためのヒータ13(図4参照)が設けられており、半導体素子11およびヒータ13はそれぞれ端子14、14、・・に接続されている。また、半導体ガスセンサー1には半導体素子11に呼気を導入するための通孔15、15、・・が設けられている。なお、ここでいう還元性ガスとは、口臭の原因となるメチルメルカプタンや硫化水素などを含む揮発性硫黄化合物であり、還元性ガスにエチルアルコールは含まないものとする。
【0014】
測定手段2は、半導体素子11の電気抵抗を測定するもので、図4に示したように、半導体ガスセンサー1の電気回路に直列に接続した基準抵抗RLの端子間電圧VLおよび負荷全体にかかる電圧VCを測定することにより半導体素子11の抵抗値RSを算出して出力するものである。
【0015】
第1の演算手段31は、測定手段2により測定された電気抵抗RSの値を用いて呼気中の還元性ガスの濃度を演算するものであり、測定された電気抵抗RSと還元性ガスを含まない清浄な空気の電気抵抗RS(0)との抵抗比(RS/RS(0))から、図5に例示したような、あらかじめ求めておいた関数1により呼気中の還元性ガスの濃度を演算する。
【0016】
第2の演算手段32は、測定手段2により測定された電気抵抗Rsの値を用いて呼気中のエチルアルコールの濃度を演算するものであり、前述の第1の演算手段31と同様に、抵抗比(RS/RS(0))から、図5に例示したような、あらかじめ求めておいた関数2により呼気中のエチルアルコールの濃度を演算する。
【0017】
これらの第1の演算手段31および第2の演算手段32は、関数1および関数2の演算プログラムが組み込まれたマイコンが用いられる。
【0018】
切替手段4は、図4に示したように、第1の演算手段31と第2の演算手段32とを切り替えるものであり、口臭の原因となる呼気中の還元性ガスの濃度を測定する場合には第1の演算手段31に切り替え、飲酒による呼気中のエチルアルコールの濃度を測定する場合には第2の演算手段32に切り替えることにより、それぞれの演算を行うことができる。
【0019】
濃度表示手段51は、切替手段4により切り替えられた第1の演算手段31または第2の演算手段32により演算した結果を表示するものであり、例えば、液晶表示装置や蛍光表示装置などの公知のデバイスが用いられ、演算された呼気中の還元性ガスの濃度および呼気中のエチルアルコールの濃度をppmあるいはmg/lを単位として表示したりする。この表示は、蓋体62に設けられた表示窓62b(図2参照)を介して見ることができる。
【0020】
次に、前述のように構成される本発明に係る呼気濃度測定器Aの作用について説明する。図4に示したように、呼気濃度測定器Aの電源スイッチSW1、SW2を入れると、半導体素子11およびヒータ13に所定の電圧が印加され、このヒータ13により半導体素子11が加熱されて所定の温度(約300℃)に昇温される。
【0021】
そして、切替手段4(図1、図2、図4参照)により口臭(呼気中の還元性ガスの濃度)を測定するか、呼気中のエチルアルコールの濃度を測定するかを選択して切り替える。この切替手段4により「口臭」を選択した場合には、呼気中の還元性ガスの濃度を演算する第1の演算手段31に切り替えられ、「アルコール」を選択した場合には、呼気中のエチルアルコールの濃度を演算する第2の演算手段32に切り替えられる。
【0022】
次に、被験者が呼気濃度測定器Aの呼気導入口62a(図1参照)に向かって呼気を吹きかけると、この呼気は呼気導入口62aおよび半導体ガスセンサー1の通孔15、15、・・(図3参照)を介して半導体素子11に達し、半導体素子11の表面において、あらかじめ吸着している酸素分子等と呼気中に含まれる還元性ガス若しくはエチルアルコールとが酸化還元反応を起こし、酸素分子等が還元されて気化して半導体素子11から脱着する。
【0023】
このとき、脱着した酸素分子等の割合により半導体素子11の電気抵抗RSが変化するため、この変化した電気抵抗RSを測定手段2により測定し、測定値は切替手段4により切り替えた第1の演算手段31若しくは第2の演算手段32に送信される。
【0024】
そして、送信された測定値を用いて、第1の演算手段31に切り替えた場合にあっては前述の関数1により呼気中の還元性ガスの濃度が、第2の演算手段32に切り替えた場合にあっては前述の関数2により呼気中のエチルアルコールの濃度が演算され、この演算結果は濃度表示手段51に送信されて呼気中の還元性ガスの濃度若しくは呼気中のエチルアルコールの濃度として表示される。なお、口臭は揮発性硫黄化合物の存在が主因と考えられるため、前述の関数1は、メチルメルカプタンや硫化水素を含む所定の組成の揮発性硫黄化合物の濃度と抵抗比(RS/RS(0))とにより実験的に決められる。
【0025】
ところで、切替手段4を設けて第1の演算手段31と第2の演算手段32とを切り替える構成としたのは、呼気中の還元性ガス、エチルアルコールのいずれであっても半導体素子11に吸着している酸素分子等と酸化還元反応を起こして電気抵抗RSが変化するものの、この電気抵抗RSの変化は、図5に例示したように、接触するガスの濃度だけでなくガスの種類によっても該ガスの有する還元力により異なるためであり、口臭の原因となる呼気中の還元性ガスとエチルアルコールとは、それぞれ別個の関数1、関数2を用いて濃度を演算する必要があるからである。この切替手段4を設けることで一の半導体ガスセンサー1を用いて口臭とエチルアルコールの濃度の両者を切り替えて測定することができる。
【0026】
次に、本発明の実施例2について、前述の実施例1と同一部分に同一符号を付して図6、図7に基づき説明する。実施例2の呼気濃度測定器Aは、図6に示したように、実施例1で示した呼気濃度測定器Aに、第1の分類手段71と、第2の分類手段72と、分類結果表示手段52を設けたものである。
【0027】
第1の分類手段71は、呼気中の還元性ガスの濃度に対し、あらかじめ定められた還元性ガスの濃度の値と比較して口臭の度合いに分類するものであり、分類の基準となる還元性ガスの濃度を低濃度(無臭)から高濃度(強臭)まで数ランクに分け、測定した還元性ガスの濃度がどのレベルに相当するかにより口臭の度合いに分類する。具体的には、例えば、還元性ガスの濃度を低濃度(無臭)の「1」から高濃度(強臭)の「6」までの6ランクに分け、測定した還元性ガスの濃度が「1」〜「6」のいずれのレベルに相当するかを第1の分類手段71により求めて口臭の度合いに分類する。
【0028】
第2の分類手段72は、呼気中のエチルアルコールの濃度に対し、あらかじめ定められたエチルアルコールの濃度の値と比較して飲酒による酒臭の度合いに分類するものであり、前述の第1の分類手段71と同様に、エチルアルコールの濃度を酒臭に応じて数ランクに分け、測定したエチルアルコールの濃度がどのレベルに相当するかにより酒臭の度合いに分類する。
【0029】
ここで、あらかじめ定められた濃度とは、あらかじめ官能試験により口臭の度合い若しくは酒臭の度合いに対応づけられた濃度をいう。
【0030】
分類結果表示手段52は、第1の分類手段71または第2の分類手段72により得られた結果(レベル)を表示するものであり、例えば、口臭の測定において、口臭の度合いを6ランクに分け、レベル「3」に分類された場合には、図7(a)に示したように、「3」を表示した数値52aと共に該数値52aに対応するグラフ52b等を表示する。また、例えば、酒臭の測定において、酒臭の度合いを6ランクに分け、レベル「4」に分類された場合には、図7(b)に示したように、「4」を表示した数値52a及び該数値52aに対応するグラフ52bを表示する。なお、分類結果表示手段52による表示と共に、表示手段51による表示を行ってもよい(図7(b)では、酒臭の度合いのレベル「4」と共にエチルアルコールの濃度「0.15mg/l」を表示した例を示している)。
【0031】
この分類結果表示手段52は、濃度表示手段51と同じように、液晶表示装置や蛍光表示装置などの公知のデバイスを用いことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の呼気濃度測定器の斜視図である。
【図2】図1のケース本体と蓋体を分離した斜視図である。
【図3】図1の半導体ガスセンサーの一部切断斜視図である。
【図4】図1の構成図である。
【図5】図1の呼気中の還元性ガスまたはエチルアルコールの濃度と半導体素子の抵抗比との関係を示した図である。
【図6】図1の変形例を示した構成図である。
【図7】図6の分類結果表示手段を示した部分図であり、図7(a)は分類結果表示手段による口臭の度合いを表示した表示例を、図7(b)は分類結果表示手段による酒臭の度合いと共に濃度表示手段によるエチルアルコールの濃度を表示した表示例を、それぞれ示している。
【符号の説明】
【0033】
A 呼気濃度測定器
1 半導体ガスセンサー
11 半導体素子
2 測定手段
31 第1の演算手段
32 第2の演算手段
4 切替手段
51 濃度表示手段
52 分類結果表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口臭の原因となる呼気中の還元性ガスあるいは飲酒による呼気中のエチルアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子を有する半導体ガスセンサーと、
前記半導体素子の前記電気抵抗を測定する測定手段と、
この測定手段により測定された前記電気抵抗の値を用いて前記呼気中の還元性ガスの濃度を演算する第1の演算手段と、
前記測定手段により測定された前記電気抵抗の値を用いて前記呼気中のエチルアルコールの濃度を演算する第2の演算手段と、
前記呼気中の還元性ガスの濃度を測定する場合と前記呼気中のエチルアルコールの濃度を測定する場合とで前記第1の演算手段と前記第2の演算手段とを切り替える切替手段と、
この切替手段により切り替えられた前記第1の演算手段または前記第2の演算手段により演算した結果を表示する濃度表示手段とを備えていることを特徴とする呼気濃度測定器。
【請求項2】
呼気中の還元性ガスの濃度に対し、あらかじめ定められた還元性ガスの濃度の値と比較して口臭の度合いに分類する第1の分類手段と、
呼気中のエチルアルコールの濃度に対し、あらかじめ定められたエチルアルコールの濃度の値と比較して飲酒による酒臭の度合いに分類する第2の分類手段と、
前記第1の分類手段または前記第2の分類手段により得られた結果を表示する分類結果表示手段とを有していること特徴とする請求項1記載の呼気濃度測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−25113(P2009−25113A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187890(P2007−187890)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(591286764)株式会社トップランド (7)
【Fターム(参考)】