説明

呼気試験を用いてシトクロムP4502C19アイソザイム活性を評価する方法及び組成物

本発明は概して、個々の哺乳類被験体において呼気分析によって、13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム(CYP2C19)基質化合物の静脈内投与又は経口投与時に被験体が吐き出した13COの相対量を求めることにより、CYP2C19関連代謝能を求めると共に評価する方法に関する。本発明は、呼気中の代謝物13COを用いて被験体におけるCYP2C19の酵素活性を評価して、個々の被験体を表現型決定する、及び薬物の選択、最適投与量、及び薬物投与のタイミングを求める非侵襲的なin vivo分析として有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CYP2C19遺伝子は、染色体10(10q24.1−q24.3)にマッピングされ、490個のアミノ酸から成るミクロソームタンパク質をコードする9個のエクソンを含有する。CYP219は主にヒト肝臓において、また僅かに幾つかの肝外組織(例えば、腸壁)において発現される。肝シトクロムP450(CYP)2C19は、汎用されている薬物、例えばプロトンポンプ阻害剤(オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、及びパントプラゾール)、ジアゼパム、フェニトイン、プログアニル、クロピドグレル、ボリコナゾール、ネルフィナビル、並びにシクロホスファミドの代謝において重要な酵素である(非特許文献1)。CYP2C19遺伝子における遺伝的多型及び非遺伝的要因(例えば、薬物相互作用)の結果として、CYP2C19のin vivo活性のみならずin vitro活性においても大きな個体間変動が見られる。この変動は、この酵素によって代謝される多数の薬物に対するクリアランス及び反応における実質的な差異のかなりの部分を占めている。したがって、CYP2C19活性における個体間変動の機構及び原因の特定、並びにそれらを予め予測する手段の開発は、療法をその基質に最適化するのに重要である。
【0002】
疾患の診断及び治療に対する従来の医学的アプローチは、臨床データのみに基づくか、又は診断試験と併せて行なわれる。これらの伝統的慣行は多くの場合、処方薬療法の有効性に最適ではない治療選択、又は個々の被験体に対する副作用の可能性の最小化をもたらす。治療特異的診断(セラノスティクス(theranostics)としても知られている)は、疾患の診断、正確な治療レジームの選択、及び被験体の反応のモニタリングに有用な試験を提供する新たな医学技術分野である。つまり、セラノスティクスは個々の被験体における薬物反応、即ち個々に応じた医薬を予測及び評価するのに有用である。セラノスティック試験は、治療に対してその治療が特に有効である可能性の高い被験体を選択するか、又は最小限の遅延で治療を変更することができるように、個々の被験体において早期の目的とする治療有効性の適応をもたらすのに有用である。セラノスティック試験は任意の適切な診断試験様式、例えば、限定されるものではないが、非侵襲的呼気試験、免疫組織化学試験、臨床化学、免疫分析、細胞ベース技術、及び核酸試験で開発してもよい。
【0003】
当該技術分野では、被験体の表現型又は薬物代謝能を明確にして医師が個々に療法を合わせるのを可能にし、それにより低代謝型において薬物関連の潜在毒性を回避し有効性を向上する、信頼性のあるセラノスティック試験の必要性がある。したがって、当該技術分野では個々に適した薬物選択及び投与量を求めるために、シトクロムP450酵素(CYP)等の薬物代謝酵素の代謝活性を評価するのに有用な新規の診断分析を開発する必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Desta, Z. et al., Clin. Pharmacokinet., 41:913-58, 2002
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも一特定位置に組み込まれた検出可能な同位体で標識されたCYP2C19基質化合物を用いてCYP2C19活性を評価する診断的、非侵襲的なin vivo表現型試験に関する。本発明は、例えば、哺乳類被験体の呼気中に安定な同位体標識CO(例えば、13CO)が放出されるようにCYP2C19酵素−基質相互作用を利用する。安定な同位体標識COのその後の定量化により、基質の薬物動態の間接的な決定及びCYP2C19の酵素活性(即ち、CYP2C19関連代謝能)の評価が可能になる。
【0006】
一態様では、本発明は、CYP2C19関連代謝能を求めるための調製物であって、有効成分として炭素原子又は酸素原子の少なくとも1つが同位体で標識されるCYP2C19基質化合物を含み、哺乳類被験体への投与後に同位体標識COを生成可能である、CYP2C19関連代謝能を求めるための調製物を対象とする。当該調製物の一実施形態では、同位体は13C、14C、及び18Oから成る群から選択される少なくとも1つの同位体である。
【0007】
別の態様では、本発明は、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求める方法であって、有効成分として炭素原子又は酸素原子の少なくとも1つが同位体で標識されるシトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を含む調製物(哺乳類被験体への投与後に同位体標識COを生成可能である)を哺乳類被験体に投与すること、及び被験体の体内から排出される同位体標識代謝物の排出パターンを測定することを含む、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求める方法を対象とする。特定の実施形態では、同位体標識代謝物は、呼気中の同位体標識COとして体内から排出される。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、哺乳類被験体におけるシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求める方法であって、有効成分として炭素原子又は酸素原子の少なくとも1つが同位体で標識されるシトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を含む調製物(哺乳類被験体への投与後に同位体標識COを生成可能である)を哺乳類被験体に投与すること、被験体の体内から排出される同位体標識代謝物の排出パターンを測定すること、及び被験体で得られた排出パターンを評価することを含む、哺乳類被験体におけるシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求める方法を対象とする。特定の実施形態では、当該方法は被験体で得られた排出パターン又はそれから得られた薬物動態パラメータを、正常なシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を有する健常な被験体での対応する排出パターン又はパラメータと比較することをさらに含む。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、哺乳類被験体におけるシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝性障害の存在、非存在、又は程度を求める方法であって、有効成分として炭素原子又は酸素原子の少なくとも1つが同位体で標識されるシトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を含む調製物(哺乳類被験体への投与後に同位体標識COを生成可能である)を哺乳類被験体に投与すること、被験体の体内から排出される同位体標識代謝物の排出パターンを測定すること、及び被験体で得られた排出パターンを評価することを含む、哺乳類被験体におけるシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝性障害の存在、非存在、又は程度を求める方法を対象とする。
【0010】
さらに別の実施形態では、本発明は、被験体の予防的処置又は治療的処置を選択する方法であって、(a)被験体の表現型を求めること、(b)被験体の表現型に基づいて被験体に被験体クラスを割り当てること、及び(c)被験体クラスに基づいて予防的処置又は治療的処置を選択することを含み、被験体クラスが、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能の対照標準レベルより少なくとも約10%低いレベルのシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を示す2以上の個体を含む、被験体の予防的処置又は治療的処置を選択する方法を対象とする。特定の実施形態では、被験体クラスは、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能の対照標準レベルより少なくとも約10%高いレベルのシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を示す2以上の個体を含む。別の実施形態では、被験体クラスは、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能の対照標準レベルの少なくとも約10%以内のレベルのシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を示す2以上の個体を含む。一実施形態では、処置は薬物を投与すること、薬物投与量を選択すること、及び薬物投与のタイミングを選択することから成る群から選択される。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を評価する方法であって、13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を哺乳類被験体に投与すること、被験体が吐き出した13COを測定すること、及び測定された13COからシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求めることを含む、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を評価する方法を対象とする。一実施形態では、13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物は、13C標識パントプラゾール又は13C標識オメプラゾールである。一実施形態では、13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物は非侵襲的に静脈内投与又は経口投与される。一実施形態では、吐き出された13COは分光学的に、例えば赤外分光法により、又は質量分析器を用いて測定される。特定の実施形態では、吐き出された13COは、投与量反応曲線を作成するために少なくとも3つの期間にわたって測定され、且つシトクロム2C19アイソザイム関連代謝活性は曲線下面積から求められる。別の実施形態では、吐き出された13COは、ベースラインを超える増分(delta over baseline)(DOB)を算出するために少なくとも3つの期間にわたって測定され、且つシトクロム2C19アイソザイム関連代謝活性はDOBから求められる。別の実施形態では、吐き出された13COは、投与量回収率(percentage dose recovery)(PDR)を算出するために少なくとも3つの期間にわたって測定され、且つシトクロム2C19アイソザイム関連代謝活性はPDRから求められる。一実施形態では、吐き出された13COは、少なくとも2つの異なる投与量の13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物について測定される。別の実施形態では、吐き出された13COは、少なくとも以下の時点:13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を摂取する前の時点t13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物が被験体の血流に吸収された後の時点t;及び第1の排出相中の時点t中に測定される。一実施形態では、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能は、以下の等式:傾き=[(δ13CO−(δ13CO]/(t−t)(式中、δ13COは吐き出された13COの量である)に従って算出される、t及びtの時点でのδ13COの傾きから求められる。特定の実施形態では、少なくとも1つのシトクロムP450 2C19アイソザイム調節剤、例えばシトクロムP450 2C19阻害剤又はシトクロムP450 2C19誘導剤が、13C標識シトクロムP450 2D6アイソザイム基質化合物を投与する前に被験体に投与される。
【0012】
別の実施形態では、本発明は医学的症状を予防又は治療するための化合物の有効性を求めるための臨床試験に採用する哺乳類被験体を選択する方法であって、(a)13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を被験体に投与すること、(b)被験体の体内から排出される同位体標識代謝物の代謝物排出パターンを測定すること、(c)被験体で得られた代謝物排出パターンを対照標準排出パターンと比較すること、(d)被験体を、得られた代謝物排出パターンに基づいて低代謝型、中間代謝型、高代謝型、及び超高速代謝型から成る群から選択される代謝表現型によって分類すること、及び(e)上記臨床試験に採用する工程(d)で高代謝型に分類された被験体を選択することを含む、医学的症状を予防又は治療するための化合物の有効性を求めるための臨床試験に採用する哺乳類被験体を選択する方法を対象とする。特定の実施形態では、被験体の体内から排出される同位体標識代謝物は、呼気中の同位体標識COである。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物、及び被験体における13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物代謝の求め方を記載する当該基質に添付の説明書を含むキットを対象とする。特定の実施形態では、キットは少なくとも3つの呼気採取袋をさらに含む。別の実施形態では、キットはシトクロムP450 2C19調節剤をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】PtzO13CH呼気試験の8人のボランティアに関する呼吸曲線(ベースラインを超える増分(DOB))対時間(左パネル)及び投与量回収率(PDR)曲線対時間(右パネル)を示す図である。
【図2】1(EM)であった10人の被験体、2或いは3(IM)であった9人の被験体、及び2(PM)であった1人の被験体に関する呼吸曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1979年のメフェニトインの最初の低代謝型(PM)の発見、及びその後のこの表現型に関する遺伝学的基礎の実証は、(S)−メフェニトイン4−水酸化(CYP2C19)の個体間変動、及びこの酵素がヒト薬物代謝において果たす役割に関する遺伝学的基礎の広範な調査を促してきた。(S)−メフェニトイン(又は他のCYP2C19基質)を代謝する能力に基づいて、個体はCYP2C19の高代謝型(EM)又は低代謝型(PM)に分類することができる。現在では、CYP2C19基質の薬物動態における高い個体間の人種間変動は、主にCYP2C19遺伝子における多型によるものであることが確立されている(Goldstein, J., Br. J. Clin. Pharmacol., 52:349-55, 2001)。25種を超えるCYP2C19の対立遺伝子及び対立遺伝子変異体が記載されている。これらの変異体の大部分は、酵素機能の完全欠損を引き起こすヌル対立遺伝子(例えば、CYP2C192、3、4、5、6、7、及び8)であり(De Morais, S. et al., Mol. Pharmacol., 46:594-8, 1994、De Morais, S. et al., J. Biol. Chem., 1994; 269:15419-22、Ibeanu, G. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 286:1490-5, 1998、Ibeanu, G. et al., Pharmacogenetics, 8:129-35, 1998、Ibeanu, G. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 290:635-40, 1999、Ferguson, R. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 284:356-61, 1998)、他は活性の低減を引き起こすもの(例えば、9、11、13)或いは活性の増大を引き起こすもの(CYP2C1917)である(Sim, S. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 79:103-13, 2006)。これらの変異体の中でも、最もよく見られる機能的に関連する対立遺伝子は、CYP2C192(CYP2C19m1)及びCYP2C193(CYP2C19m2)である。どちらの変異体においても、ヘム部分に結合不能な短縮不活性酵素又は短縮タンパク質を生じる、未成熟終止コドンが生じる。CYP2C192は、CYP2C19のエクソン5における単一塩基対G681A変異である。CYP2C193は、未成熟終止コドンを生じる、CYP2C19のエクソン4における単一塩基対G636A変異である。幾つかの研究により、これらの共通対立遺伝子の分布が異なる集団によって異なることが示されている。例えば、CYP2C192の頻度はアフリカ系アメリカ人、中国人、及び白人でそれぞれ約17%、30%、及び約15%であると報告されており、CYP2C193対立遺伝子は、白人(0.04%)及び黒人(0.4%)よりもアジア人(約5%)において頻度が高いことが示された。これら2つの対立遺伝子は、アジア人及びアフリカ黒人の集団において、PMのほぼ全てを占める。CYP2C192は、アジア人及び白人では、PMに関与する変異型対立遺伝子のおよそ75%〜85%を占めている。CYP2C193は、白人集団においては極めてまれであるが、アジア人では残りの欠陥対立遺伝子のほぼ全てを占めている。したがって、PM頻度にはかなりの人種間不均一性がある。(表現型及び遺伝子型により求めた)CYP2C19低代謝型の集団分布により、アジア人集団はCYP2C19低代謝型の高い発生率(或る研究では最大で25%)を有するが、東部メラネシアのバヌアツ島(38%〜70%)を除く他の集団では8%未満であることが示される(Desta, Z. et al., Clin. Pharmacokinet., 41:913-58, 2002)。
【0016】
遺伝的多型だけでなく、他の因子もCYP2C19の活性における個体間変動に寄与している。これらの因子としては、CYP2C19活性に影響を与える阻害剤薬物又は誘導剤薬物又は他の化学物質への曝露が挙げられる。例えば、オメプラゾール、メクロベミド(meclobemide)、チクロピジン、クロピドグレル、フルボキサミン、及び経口避妊薬等の薬物が有意にCYP2C19活性を損なうことが知られている一方で、リファンピン、エファビレンツ、リトナビル、及びセイヨウオトギリソウはその基質のクリアランスを高める。また、老化、妊娠、癌、炎症性肝疾患はヒトではin vivoでCYP2C19の活性を低下させると思われる。
【0017】
多くの治療化合物は、同じ疾患の約30%〜60%の患者に有効である。さらに、これらの患者の一部は、米国における主な死因の1つであり、年間推定1000億ドルの経済的影響を有する重度の副作用を被り得る(Lazarou, J. et al., J, Amer. Med. Assoc., 279:1200-1205, 1998)。多くの研究により、薬物に対する薬理学的反応及び毒物学的反応が異なる患者は、少なくとも部分的に、比較的高度に個体の薬物治療に内在する不確実性に寄与する遺伝的多型に起因することが示されている。一塩基変異多型(SNP)(集団の少なくとも1%に見られるDNAの単一の塩基の変異)は、ヒトゲノムにおいて最も頻出する多型である。薬学的に重要なタンパク質をコードする遺伝子の一次ヌクレオチド配列におけるこのような僅かな変化は、そのタンパク質の発現、構造、及び/又は機能における大きな変化として現れ得る。
【0018】
CYP2C19は、表1に要約されるように、プロトンポンプ阻害剤を含む30種近い治療薬の生体内変化に関与する。同位体標識基質の被験体への投与が安定な同位体標識13COの放出を引き起こすような、表1のCYP2C19基質の同位体標識により、本発明の方法に有用な化合物が生じる。
【0019】
【表1】

【0020】
CYP2C19活性を誘導又は阻害することのできる薬剤(即ち、CYP2C19調節剤)を選択する。CYP調節剤は、CYP2C19の酵素活性を誘導する(増大する)か又は阻害する(減少させる)ことができるため本発明に重要である。CYP2C19を阻害及び誘導すると知られる化合物を表1に要約する。
【0021】
当然のことながら、本発明の或る特定の態様、形態、実施形態、変形形態、及び特徴は、本発明の十分な理解をもたらすために様々な詳細度で下記に記載される。本発明は少なくとも一特定位置に組み込まれた同位体で標識されたCYP2C19−基質化合物を用いてCYP2C19活性を評価する診断的、非侵襲的なin vivo表現型試験に関する。本発明は、哺乳類被験体の呼気中に安定な同位体標識CO(例えば、13CO)が放出されるようにCYP2C19酵素−基質相互作用を利用する。安定な同位体標識COのその後の定量化により、基質の薬物動態の間接的な決定、及びCYP2C19の酵素活性(即ち、安定な同位体13C標識CYP2C19基質化合物の経口投与又は静脈内投与、及び市販の計器、例えば、質量分析計又は赤外(IR)分光計を用いた呼気中の13CO12CO比の測定に基づくCYP2C19関連代謝能)の評価が可能になる。
【0022】
CYP2C19遺伝的多型の臨床的関連性は近年実証されている。EMではプロトンポンプ阻害剤(PPI)、例えばオメプラゾール、ランソプラゾール、及びパントプラゾールの投与量のおよそ80%がCYP2C19により除去されるが、PMではCYP2C19のEMよりも約6倍高いこれらの薬物への曝露が観察され、その結果、PMはより強い酸抑制を達成することが十分に確立されている(Furuta, T. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 65:552-561, 1999)。CYP2C19遺伝子型決定がPPIに対する臨床反応に影響を与えるという最初の報告はFuruta et al.によってなされ、1日当たり20mgのオメプラゾールとアモキシシリンとによる治療がCYP2C19のホモ接合性EM、ヘテロ接合性EM、及びPMのそれぞれ28.6%、60%、及び100%でヘリコバクターピロリ(H. pylori)感染の根絶をもたらしたこと、並びにこの治癒率が3つのそれぞれのグループで十二指腸潰瘍及び胃潰瘍の両方の治癒率と類似していたことが示された(Furuta, T. et al., Ann. Intern. Med., 129:1027-30, 1998)。幾つかのその後の研究により、CYP2C19遺伝子変異体を保有する患者は、野生型対立遺伝子を保有する患者よりも良好な反応を示すことが確立されている(Furuta, T. et al., Drug Metab. Pharmacokinet., 20:153-67, 2005)。したがって、逆流疾患及びヘリコバクターピロリ感染の治療のためのPPI誘導前の、CYP2C19の共通の対立遺伝子についての遺伝子型決定は、適切な治療期間及び投与計画を選択するための費用効果的な手段であることが示唆されている。
【0023】
CYP2C19遺伝子型に有意に影響を受ける他の薬物としては、抗血小板薬のクロピドグレル及び抗癌薬のシクロホスファミドが挙げられる。クロピドグレルは、脳卒中、不安定狭心症、心筋梗塞、及び冠動脈ステント留置後の血栓性合併症の予防及び治療に汎用されている薬物である。クロピドグレルは、抗血小板作用を発揮する前にCYP系による活性代謝物への変換を必要とするプロドラッグである。クロピドグレルを受けているかなりの数の患者における抗血小板反応の欠如又は減退は、その臨床用途における主要な問題である。
【0024】
最近の報告では、クロピドグレルは、CYP2C191遺伝子型を保有するボランティアと比較して、CYP2C192を保有する健常なボランティアでは抗血小板作用を有しなかったことが示されている(Hulot, J. et al., Blood, 108:2244-7, 2006)。この見解はクロピドグレル無反応性血小板が、患者に対して深刻な転帰となる血栓事象の危険性があることを示唆している。同様に、シクロホスファミドはシトクロムP450(CYP)酵素による、4−ヒドロキシシクロホスファミドへの代謝活性化を必要とするプロドラッグである。CYP2A6、CYP2B6、CYP2C19、CYP2C9、CYP3A4、及びCYP3A5を含む複数のCYPがこの活性化に関係しているが(Roy, P. et al., Drug Metab. Dispos., 27:655-66, 1997、Rae, J. et al., Drug Metab. Dispos., 30:525-30, 2002)、特に低いシクロホスファミド濃度ではCYP2C19が鍵酵素であると思われる。シクロホスファミドを服用するループス腎炎患者については、CYP2C192が未成熟卵巣障害及び末期腎不全への進行の予測因子であることが見出された(Takada, K. et al., Arthritis Rheum., 50:2202-10, 2004)。
【0025】
この酵素の臨床関連性を考えると、クロピドグレル、シクロホスファミド、及びプロトンポンプ阻害剤等のCYP2C19基質誘導中に療法に失敗する可能性の高い患者のサブグループを、特定及び予測する診断試験を開発するのが重要である。CYP2C19変異体を分析するのに確実な遺伝子型試験は、現在市販されているが(例えば、RocheのAmpliChip)、非遺伝的要因がヒトのin vivoでのCYP2C9活性に重要な作用を有するため、CYP2C19活性の差異を完全には捕らえていない。可変CYP2C19機能の遺伝的要因及び非遺伝的要因の両方を捕らえることができるin vivo表現型試験は、CYP2C19機能(例えば、S−メフェニトイン4−水酸化又はオメプラゾール5−水酸化)に対する遺伝的要因及び非遺伝的要因の役割をよりよく理解する手段となる(Desta, Z. et al., Clin. Pharmacokinet., 41:913-58, 2002)。しかし、投与量調節又は適切な薬物の選択へのこれらの使用は多くの場合、費用がかかり、時間及び資源集約的で、且つ侵襲的である(薬物動態サンプリングを必要とする)ため非常に一部に限定される。したがって、CYP2C19表現型を評価することのできる迅速で簡便且つ非侵襲的な方法が、CYP2C19基質薬物の処方前に必要とされている。
【0026】
哺乳類の肝臓はステロイドの代謝、薬物及び生体異物の解毒、並びに前発癌物質の活性化において主要な役割を果たす。肝臓は酵素系、例えば様々な化学物質をより可溶性の産物に変換するCYP系を含む。CYPは、肝臓の混合機能モノオキシゲナーゼの主タンパク成分に含まれる。CYPには多くのクラスがあり、肝アイソザイム、例えばCYP3A(40%〜60%肝P−450アイソザイム);CYP2D6(2%〜5%肝P−450アイソザイム)、CYP1A2、CYP2Cが挙げられる。CYPの作用により、薬物及び毒素の体内からの排除が促進される。実際に、CYP作用は多くの場合、薬剤排除における律速段階である。CYPはプロドラッグの生理活性代謝物への変換においても役割を果たす。
【0027】
CYPは、量的に最も重要な第1相薬物生体内変化酵素であり、この遺伝子スーパーファミリーの幾つかの成員の遺伝的変異が検査されている。薬物及び環境汚染物質の第1相代謝では、CYPは多くの場合、基質を1つ又は複数の水溶性基(例えば、ヒドロキシル)で修飾し、それにより第2相複合酵素による攻撃に不安定な状態にする。第1相及び特に第2相産物の水溶性が増大することで即時排出が可能になる。結果として、CYPの活性を低減する因子は通常、医薬の作用を長引かせるが、CYP活性を増大する因子は反対の作用を有する。
【0028】
天然13C化合物である13C−グルコースのヒトにおける代謝研究への使用は、1973年に記載されており(Lacroix, M. et al., Science, 181:445-6, 1973)、安定な同位体13C標識化合物が、30年以上にわたって研究所で診断プローブとして汎用されている(Modak, Breath Analysis For Clinical Diagnosis and Therapeutic Monitoring. A. Amann, D Smith (ed). pp 457-478. World Scientific, Singapore (2005). 2005)。低コスト13C−基質の普及、及び以前の定量法(例えば、質量分析検出又は他の複雑な解析的分析)とは対照的な非分散性同位体選択的IR分光分析(NDIRS)の開発に続いて、診断13C安定同位体プローブが、特定の疾患又は特定の酵素の欠損に起因する代謝の病因学的に重大な変化の存在又は非存在についての的確な評価の提供だけでなく、薬物代謝酵素の代謝状態の評価にもますます使用されている。
本発明の方法の臨床応用の選択
1.被験体の標準対照集団との関連付け
本発明の一態様は、生体サンプル(例えば、呼気)中でCYP2C19関連代謝能を求め、それにより個体が異常なCYP2C19の発現又は活性を伴う疾患又は障害に罹患しているか、又は障害を発症する危険性があるかを判断するための診断分析に関する。治療に対する臨床反応と遺伝子発現パターン又は表現型との相関関係を推定するために、治療を受けた個体の集団、即ち、臨床集団に生じる臨床反応に関するデータを得ることが必要である。この臨床データは、臨床試験の結果をレトロスペクティブ解析することにより得ることができる。代替的には、臨床データは1つ又は複数の新規の臨床試験を考案及び実行することにより得ることができる。臨床集団データの解析は、標準対照集団を規定するのに有用であり、同様に臨床試験登録又は治療的処置の選択に関して被験体を分類するのに有用である。臨床集団に含まれる被験体は対象とする医学的症状、例えばCYP2C19PM表現型、CYP2C19IM表現型、CYP2C19EM表現型、又はCYP2C19UM表現型の存在について格付けされているのが好ましい。潜在的被験体の格付けとしては、例えば、標準的な身体検査、又は本発明の呼気試験等の1つ又は複数の試験を挙げることができる。代替的には、被験体の格付けとしては遺伝子発現パターン、例えばCYP2C19対立遺伝子変異体の使用を挙げることができる。例えば、遺伝子発現パターンは、遺伝子発現パターンと表現型又は疾患の感受性若しくは重症度との間に強い相関関係がある場合、格付け基準として有用である。
【0029】
ANOVAは、反応変数が測定され得る1つ又は複数の形質又は変数に起因するか、又はそれと相関するかどうかについて仮説を検証するために使用される。遺伝子発現パターンプロファイル及び/又は表現型特徴を共有する被験体を含むような標準対照集団は、所定の被験体におけるCYP2C19関連代謝能測定レベル、又はCYP2C19代謝物排出パターンを比較する本発明の方法に有用である。一実施形態では、測定されたCYP2C19代謝物の発現パターンと、対照標準集団において観察されたCYP2C19代謝物の発現パターンとの類似性に基づいて、被験体は特定の遺伝子型グループ又は表現型クラスに分類されるか、又は割り当てられる。本発明の方法は、臨床反応とCYP2C19遺伝子若しくはCYP2C19表現型に関する遺伝子型又はハプロタイプ(又はハプロタイプペア)との関連性を特定する診断方法として有用である。さらに、本発明の方法は治療に反応を示す個体若しくは示さない個体、又は代替的には、低いレベルで反応を示し、したがってさらなる治療、即ちより大きな薬物投与量を必要とし得る個体を求めるのに有用である。
2.臨床有効性のモニタリング
本発明の方法は、CYP2C19関連代謝能の発現又は活性に対する薬剤(例えば、薬物、化合物)の影響をモニタリングするのに有用であり、基礎薬物スクリーニング及び臨床試験に応用することができる。例えば、CYP2C19関連代謝活性を増大する、本発明のCYP2C19表現型分析により求められる薬剤の有効性を、CYP2C19関連代謝能の減少を示す被験体の臨床試験においてモニタリングすることができる。代替的には、CYP2C19関連代謝活性に対する、本発明のCYP2C19表現型分析により求められる薬剤の有効性を、CYP2C19関連代謝能の増大を示す被験体の臨床試験においてモニタリングすることができる。
【0030】
代替的には、臨床試験中の薬剤のCYP2C19関連代謝能に対する作用を、本発明のCYP2C19表現型分析を用いて測定することができる。このようにして、本発明の方法を用いて測定されたCYP2C19代謝物発現パターンを、被験体の薬剤に対する生理反応の指標となるベンチマークとすることができる。したがって、この被験体の反応状態は、個体の薬剤での治療の前及び治療中の様々な時点で求めることができる。
【0031】
以下の実施例は、本発明の好適な実施形態をより十分に説明するために提示される。これらの実施例は決して、添付の特許請求の範囲で定められる本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
[実施例]
【実施例1】
【0032】
本発明の13CO呼気試験法を用いた、ヒト被験体のパントプラゾール(Ptz)代謝能による分類
半合成プロトンポンプ阻害剤のパントプラゾール(Ptz)は、胃での酸生産を抑制するのに有用である。Ptz代謝は遺伝的に多型である。CYP2C19は、下記に詳述するようにPtz−O−13CHのO−脱メチル化を媒介する。
【0033】
【化1】

【0034】
所与の基質の生体内変化における個々の被験体の見かけ上の表現型及びCYP2C19の総合的意義は、遺伝的要因に加えて、代替的な代謝経路の量的重要性に影響を受ける。例えば、CYP2C19によって優先的に代謝される薬剤である薬理学的阻害剤は、基質代謝における変化の大きさを遺伝的に決定された低代謝型に似せることができるように、酵素活性を修正することができる(即ち、高代謝型から低代謝型への表現型における見かけ上の変化)。CYP2C19の阻害剤を用いて、高代謝型において同時投与されるCYP2C19基質の代謝を有意に変更することができる。このような相互作用は、活性部分に代謝的変換を必要とするプロドラッグの有効性を減少させるか、又は代替的には、治療指数が低いCYP2C19基質に対する毒性を引き起こす可能性がある。非侵襲的な診断的/セラノスティック試験、例えば呼気試験は、個々の被験体のCYP2C19代謝状態を評価するのに有用である。
【0035】
本研究では、個々のヒト被験体(即ち、ボランティア1〜ボランティア8)を、Ptz−O−13CHを代謝するその能力によって分類するために、本発明の13CO呼気試験法を採用した。簡潔には、正常なヒト被験体を4時間〜8時間断食させた後、20mg〜200mgのPtz−O−13CH、及びPtz−O−13CHを胃における酸分解から保護する2.1gの重炭酸ナトリウムを摂取させた。呼気サンプルを薬物摂取前、次いでPtz−O−13CHの摂取後、30分まで5分おきに、90分まで10分おきに採取した。Ptz−O−13CH呼気試験の8人のボランティアに関する、SDによる呼吸曲線(DOB対時間(パネルA)及びSDによるPDR曲線対時間(パネルB))を図1に示す。
【0036】
ボランティアのうち4人は2C19高代謝型(EM)、2人は2C19中間代謝型(IM)、2人は低代謝型(PM)であった。本研究は、特定の時点のDOB値或いはPDR値が、EMをIM及びPMと区別するのに有用であることを実証している。
【0037】
13CO呼気試験を用いたPtz−O−13CH表現型決定手順は、赤外分光法が質量分析検出に取って代わることができるように、既存の表現型決定法に優る幾つかの潜在的利点を有する。呼気試験は、より短い時間内(Ptz投与から1時間以内)で、また比較的安価な計器(UBiT−IR300IR分光光度計;Meretek)を使用する診療所又は他の医療現場において直接、PtzのCYP2C19活性のプローブとしての安全性及び実証された実用性に加えて、表現型決定を可能にする。
【実施例2】
【0038】
本発明の13CO呼気試験法を用いた臨床研究結果
20人の被験体を8時間の夜間絶食の後、午前7時頃にインディアナ大学医学部のGCRCに収容した。ベースライン呼気サンプルを1.2L容アルミニウム裏打ち袋(大塚製薬株式会社、日本、徳島県)に採取した。次に、被験体に100mgのパントプラゾール−13C(98%;Cambridge Isotope Laboratories Inc., Andover, MA)を薬物の胃酸分解を防ぐ2.1gの重炭酸ナトリウム及び水と共に投与した。12個の呼気サンプルを120分間にわたって採取した(2.5分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、40分、50分、60分、90分、及び120分に得た)。全被験体を遺伝子型決定した。被験体のうち10人は1(EM)、9人は2又は3(IM)、1人は2(PM)であった。呼吸曲線を図2に示す。
【0039】
本発明の呼気試験法の一実施形態では、13C標識CYP2C19−基質化合物(0.1mg〜500mg)を被験体に夜間絶食(4時間〜12時間)の後、およそ10秒〜15秒間にわたって摂取させる。呼気サンプルは、13C標識CYP2C19−基質化合物の摂取前、次いで同位体標識基質摂取後、30分まで5分おきに、90分まで10分おきに、その後90分まで30分おきに採取した。呼気サンプルは、被験体に3秒間一時的に息を止めさせてから、サンプル採取袋に息を吹き込ませて採取した。呼気サンプルは、UBiT IR−300分光光度計(Meretek, Denver, Colo.)で分析して呼気中の13CO12CO比を求めるか、又は参照試験所に送る。
均等物
本発明は、本発明の個々の態様の単なる例示として意図される、本出願に記載の特定の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかであるように、本発明の多くの変更形態及び変形形態を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行なうことができる。本明細書中に列挙されるものに加えて、本発明の範囲内にある機能的に同等な方法及び装置は、先の記載から当業者には明らかである。このような変更形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。本発明は、添付の特許請求の範囲が権利を与える全範囲の均等物とともに、このような特許請求の範囲の表現によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求めるための調製物であって、有効成分として炭素原子又は酸素原子の少なくとも1つが同位体で標識されているシトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を含み、哺乳類被験体への投与後に同位体標識COを生成可能である、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求めるための調製物。
【請求項2】
前記同位体が13C、14C、及び18Oから成る群から選択される少なくとも1つの同位体である、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求める方法であって、有効成分として炭素原子又は酸素原子の少なくとも1つが同位体で標識されるシトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を含む調製物(哺乳類被験体への投与後に同位体標識COを生成可能である)を該哺乳類被験体に投与すること、及び該被験体の体内から排出される同位体標識代謝物の排出パターンを測定することを含む、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求める方法。
【請求項4】
前記同位体標識代謝物が、呼気中の同位体標識COとして体内から排出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
哺乳類被験体におけるシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求める方法であって、有効成分として炭素原子又は酸素原子の少なくとも1つが同位体で標識されるシトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を含む調製物(前記哺乳類被験体への投与後に同位体標識COを生成可能である)を該哺乳類被験体に投与すること、該被験体の体内から排出される同位体標識代謝物の排出パターンを測定すること、及び該被験体で得られた排出パターンを評価することを含む、哺乳類被験体におけるシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求める方法。
【請求項6】
前記被験体で得られた排出パターン又はそれから得られた薬物動態パラメータを、正常なシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を有する健常な被験体での対応する排出パターン又はパラメータと比較することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
哺乳類被験体におけるシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝性障害の存在、非存在、又は程度を求める方法であって、有効成分として炭素原子又は酸素原子の少なくとも1つが同位体で標識されるシトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を含む調製物(前記哺乳類被験体への投与後に同位体標識COを生成可能である)を該哺乳類被験体に投与すること、該被験体の体内から排出される同位体標識代謝物の排出パターンを測定すること、及び該被験体で得られた排出パターンを評価することを含む、哺乳類被験体におけるシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝性障害の存在、非存在、又は程度を求める方法。
【請求項8】
被験体の予防的処置又は治療的処置を選択する方法であって、
(a)前記被験体の表現型を求めること、
(b)前記被験体の表現型に基づいて該被験体に被験体クラスを割り当てること、及び
(c)前記被験体クラスに基づいて予防的処置又は治療的処置を選択することを含み、該被験体クラスが、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能の対照標準レベルより少なくとも約10%低いレベルのシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を示す2以上の個体を含む、被験体の予防的処置又は治療的処置を選択する方法。
【請求項9】
前記被験体クラスが、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能の対照標準レベルより少なくとも約10%高いレベルのシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を示す2以上の個体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被験体クラスが、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能の対照標準レベルの少なくとも約10%以内のレベルのシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を示す2以上の個体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記処置が薬物を投与すること、薬物投与量を選択すること、及び薬物投与のタイミングを選択することから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を評価する方法であって、13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を哺乳類被験体に投与すること、該被験体が吐き出した13COを測定すること、及び該測定された13COからシトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を求めることを含む、シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能を評価する方法。
【請求項13】
前記13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物が、13C標識パントプラゾール又は13C標識オメプラゾールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物が非侵襲的に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物が静脈内投与又は経口投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記吐き出された13COが分光学的に測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記吐き出された13COが赤外分光法により測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記吐き出された13COが質量分析器を用いて測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記吐き出された13COが、投与量反応曲線を作成するために少なくとも3つの期間にわたって測定され、且つ前記シトクロム2C19アイソザイム関連代謝活性が曲線下面積から求められる、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記吐き出された13COが、少なくとも2つの異なる投与量の前記13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物について測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記吐き出された13COが、ベースラインを超える増分(DOB)を算出するために少なくとも3つの期間にわたって測定され、且つ前記シトクロム2C19アイソザイム関連代謝活性が前記DOBから求められる、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記吐き出された13COが、少なくとも2つの異なる投与量の前記13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物について測定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記吐き出された13COが、投与量回収率(PDR)を算出するために少なくとも3つの期間にわたって測定され、且つ前記シトクロム2C19アイソザイム関連代謝活性がPDRから求められる、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記吐き出された13COが、少なくとも2つの異なる投与量の前記13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物について測定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記吐き出された13COが、少なくとも以下の時点:前記13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を摂取する前の時点t;該13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物が前記被験体の血流に吸収された後の時点t;及び第1の排出相中の時点t中に測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
前記シトクロムP450 2C19アイソザイム関連代謝能が、以下の等式:傾き=[(δ13CO−(δ13CO]/(t−t)(式中、δ13COは吐き出された13COの量である)に従って算出される、t及びtの時点でのδ13COの傾きから求められる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのシトクロムP450 2C19アイソザイム調節剤が、13C標識シトクロムP450 2D6アイソザイム基質化合物を投与する前に前記被験体に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項28】
前記シトクロムP450 2C19調節剤がシトクロムP450 2C19阻害剤である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記シトクロムP450 2C19調節剤がシトクロムP450 2C19誘導剤である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
医学的症状を予防又は治療するための化合物の有効性を求めるための臨床試験に採用する哺乳類被験体を選択する方法であって
(a)13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物を前記被験体に投与する工程、
(b)前記被験体の体内から排出される同位体標識代謝物の代謝物排出パターンを測定する工程、
(c)前記被験体で得られた代謝物排出パターンを対照標準排出パターンと比較する工程、
(d)前記被験体を、前記得られた代謝物排出パターンに基づいて低代謝型、中間代謝型、高代謝型、及び超高速代謝型から成る群から選択される代謝表現型によって分類する工程、及び
(e)前記臨床試験に採用する工程(d)で高代謝型に分類された前記被験体を選択する工程を含む、医学的症状を予防又は治療するための化合物の有効性を求めるための臨床試験に採用する哺乳類被験体を選択する方法。
【請求項31】
前記被験体の体内から排出される前記同位体標識代謝物が、呼気中の同位体標識COである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物、及び被験体における13C標識シトクロムP450 2C19アイソザイム基質化合物代謝の求め方を記載する該基質に添付の説明書を含むキット。
【請求項33】
少なくとも3つの呼気採取袋をさらに含む、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
シトクロムP450 2C19調節剤をさらに含む、請求項32に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−502194(P2010−502194A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526927(P2009−526927)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/077362
【国際公開番号】WO2008/028116
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509054979)
【出願人】(509054980)
【出願人】(509055002)
【出願人】(509054991)
【Fターム(参考)】