説明

商品ピッキング制御システム

【課題】逐次受注高速出荷方式において、在庫商品を効率的に出荷することができる商品ピッキング制御システムを実現する。
【解決手段】コンベアをループ軌道として、ループ軌道から分岐したアイランドを設け、当該アイランドでピッキング処理をするシステムとし、ループ軌道へのピッキングボックスのスタートを制御する際に、各アイランド毎のボックスの受け入れ許容値と、当該アイランドのボックスの入数と、出数と、アイランドへの分配重み付け率とを関係付けて記憶させておき、アイランドへのスタート個数から入数を減算した値を前記分配重み付け比率と乗算し、その値が小さいアイランドに優先的にボックスをスタートさせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需用者から注文を受け付けて在庫商品を効率的に出荷するための商品ピッキング制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の逐次受注高速出荷が要求される商品ピッキングシステムでは、注文伝票を貼付したボックスをベルトコンベア上で移動させ、注文伝票の該当商品の在庫棚からピッキングした注文商品をベルトコンベア上のボックスに収納し、全ての注文商品が収納されるとボックスから注文商品群を取り出して梱包して注文元の需用者に配送するのが一般的であった。
【0003】
したがって、効率的に商品をピッキングするためには、ベルトコンベアの軌道上に需要予測に基づいて商品棚を配置することでコンベアの滞留が極力生じないように工夫する必要があった。
【0004】
しかし直線的なコンベア軌道では、前方を移動するボックスでピッキング処理を行っている間は、その後に続くボックスの処理を行うことができないため、コンベア軌道上でボックスの滞留を生じてしまう可能性があった。
【0005】
このような点に鑑みて、コンベアをループ軌道にしてその周囲に商品棚をアイランド状に配置するセル・アンド・バイパス方式が提案されていた。この方式では、ボックスはループ軌道を移動しながらピッキングすべき商品のあるアイランドに収容されるため、ループ軌道上の後続のボックスは前のボックスのピッキング処理によって滞留することなく処理が可能となっていた。そしてアイランド毎にピッキング可能なボックス数が決まっており、その数に達するまではボックスはループ軌道上で巡回滞留することはない。
【特許文献1】特開2000−95312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、このようなアイランド方式では、アイランドヒット率(当該アイランドでピッキングすべき商品のある確率)を調整する必要が生じてきた。
【0007】
たとえば、1時間で1000ボックスのオーダーが開始されたとすると、ループ軌道上の最初のアイランドで1000ボックスの全ての処理を行うことは非合理的であるため、アイランド毎に25%程度のヒット率となるようにアイランド毎のピッキング商品の配置替えを行ってやらなければならなかった。
【0008】
具体例で説明すると、オーダースタートポイントからみてホットコーヒー用のコーヒー豆が2番目のアイランドにあり、アイスコーヒーのパックが4番目のアイランドにあるような場合、夏の季節はアイスコーヒー、冬の季節はホットコーヒーの需要が多くなるはずなので、夏と冬ではこれらの商品の配置換えをしてやらなければならない。
【0009】
季節毎の配置換えであれば上記のように人手によって配置換えを行うことで対応可能であるが、最近は1日の中で需要変動が生じるようになってきている。
【0010】
たとえば、コンビニエンスストア等の注文に対応するためには、朝は牛乳や乳製品の需要が大きく、昼過ぎはチョコレート等の菓子系の商品の需要が大きくなるという特性を把
握していなければならなかった。具体的には朝の時間帯で1番目のアイランドにピッキング商品としての牛乳が配置されていた場合、牛乳を必要とするボックス数が1番目のアイランドの処理能力を超えてしまった場合、ループ軌道上に牛乳を必要とするボックスばかりが巡回し、その後の別の商品のためのボックスをスタートさせられないという事態が生じていた。昼過ぎにはこのような事態は解消するのであるが、朝だけのために1番目のアイランドを延長してその処理能力を上げることはスペースの確保や昼過ぎからのピッキング効率から考えても合理的ではなかった。
【0011】
本発明者はこのような点に着目して研究した結果、アイランド毎の受け入れ許容値と、そのときの在席ボックス数と、当該アイランドへのボックスの分配比率とに相関関係があることに気づいた。
【0012】
本発明はこのような点に着目し、逐次受注高速出荷方式において、在庫商品を効率的に出荷することができる商品ピッキング制御システムを実現することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明では、以下の手段を採用した。
【0014】
本発明の第一は、注文に応じた商品を収納するボックスの移動を開始するオーダースタートポイントと、当該オーダースタートポイントから敷設されたコンベアのループ軌道と、ループ軌道から分岐されて商品のピッキングを行いその後にループ軌道に復帰させるアイランドと、ループ軌道から注文商品が収納されたボックスを回収するエンドポイントとからなる商品ピッキング制御システムであって、前記オーダースタートポイントにおける待ちボックスのボックスIDと、ボックスID毎のピッキング商品のアイランドIDとが関係付けられて記憶された搬送制御テーブルと、アイランド毎のボックスの受け入れ許容値と、当該アイランドのボックスの入数と、出数と、アイランドへの分配重み付け率とが関係付けられて記憶されたアイランドテーブルと、前記アイランドテーブルを参照して、当該アイランドへのスタート個数から入数を減算して得られた搬送中数を前記分配重み付け比率と乗算して受け入れ可能指数とし、その値が小さいアイランドに対して優先的に搬送制御テーブルの中からボックスを選択してループ軌道にスタートさせるようにした商品ピッキングシステムである。
【0015】
このように、本発明では、ループ軌道を搬送中のボックス数に各アイランドの分配重み付け比率を乗算して次のオーダースタート時にどのアイランドに対するボックスを優先的にスタートさせるかを制御するようにした。そのため、アイランド毎のボックスの偏在が防止され、ループ軌道を回流し続けるボックスが生じない。
【0016】
本発明の第二は、前記制御部は、前記受け入れ可能指数の代わりに、前記アイランドテーブルを参照して、在席数と搬送中数を加算した値から受け入れ許容値を除算してこれを新たな受け入れ可能指数とし、この新たな受け入れ可能指数の小さいアイランドに対して優先的に搬送制御テーブルの中からボックスを選択してループ軌道にスタートさせるようにしたものである。
【0017】
このように、アイランド毎の在席数を考慮することにより、アイランドでボックスが滞留してしまうことを防止できる。
【0018】
本発明の第三は、前記アイランドテーブルにはしきい値が設定されており、前記の受け入れ許容値に対する在席数の比率が当該しきい値を越えたときに前記制御部は当該アイランドへのボックスのスタートを停止するようにしたものである。
【0019】
このようにしきい値を設けることにより、特定のアイランド毎へのボックスのスタートを抑止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、逐次受注高速出荷方式において、在庫商品を効率的に出荷することができる商品ピッキング制御システムが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を図を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明のシステム構成を示す図、図2はコンベアの敷設構成図、図3は搬送制御テーブルの説明図、図4はアイランドテーブルの説明図である。
【0023】
同図に示すように、本システムは、中央制御装置(CPU)およびメインメモリ(MM)を中心にバス(BUS)で接続されたハードディスク装置(HD)、ディスプレイ装置(DISP)等を有しており、当該ハードディスク装置にはオペレーティングシステム(OS)の他にアプリケーションプログラム(APL)、搬送制御テーブル、アイランドテーブル等が設けられている。
【0024】
搬送制御テーブルは、具体的にはオーダースタートテーブルと搬送テーブルとからなる。前者のオーダースタートテーブルは伝票IDとアイランドID(IR−1〜4)が関連つけられたテーブルである。図2に示すオーダースタートポイントにおいて、伝票のバーコードが光センサによって読み取られて搬送ボックスと関連付けられることによって、前記オーダースタートテーブルがボックスID(BOX−ID)と関連付けられて搬送テーブルとなる。つまり、本実施形態では、オーダースタートテーブルと搬送テーブルとを総称して搬送制御テーブルということにする。
【0025】
搬送制御テーブルは、図3に示すように、各伝票ID毎にどのアイランドにピッキングすべき商品が存在するかのフラグが設定可能となっている。すなわち、ピッキングすべき商品が存在するアイランドIDに「1」が設定されるようになっている。
【0026】
また、光センサは、オーダースタートテーブルと各アイランド部に設けられており、これらの光センサはバスに接続されている。これによって中央制御装置(CPU)はオーダースタートポイントとアイランド部でのボックスの配置および通過を検出できるようになっている。
【0027】
中央制御装置(CPU)は、ボックスを任意の順番に並び替えてループ軌道にスタートさせることが可能となっており、アイランドテーブルの登録内容にしたがってボックスをループ軌道に送り出すようになっている。
【0028】
アイランドテーブルには、アイランドID(ここではIR−1〜4)と、受け入れ許容値と、オーダースタート数と、入数と、出数と、搬送中数と、当該アイランドの分配重み付け率とが関係付けられて登録されている。
【0029】
ここで、受け入れ許容値とは、当該アイランドに受け入れることの可能なボックスの最大値を意味している。スタート数とはスタートポイントから当該アイランドに向かってスタートされたボックス数を意味している。入数は当該アイランドに入ったボックス数のカウンタ値、出数は当該アイランドから出たボックス数のカウンタ値、搬送中数はループ軌道を当該アイランドに向かって搬送中のボックス数をそれぞれ意味している。なお、当該アイランドの在席数は入数から出数を減算することにより算出される。また、搬送中数は
スタートされたボックス数から入数を減算することにより算出される。
【0030】
これらのスタートしたボックス数、入数、出数はそれぞれ前述の光センサによってカウントされる。
【0031】
分配重み付け率は任意に設定可能であるが、当該ループ軌道に4カ所のアイランドを設けている場合にはそれぞれ25%とすることがボックス流通を平準化することができて好ましい。ただし、扱う商品の需要予測、アイランド毎のピッキングスタッフの熟練度等によって変化させてもよい。
【0032】
また、アイランドテーブルには、ボックスの受け入れ許容値に対してしきい値が設定されており、前記の在席数がしきい値を越えたときに中央制御装置(CPU)は当該アイランドへのボックスのスタートを停止する制御を行うようになっている。
【0033】
本実施形態において、アイランドテーブルが図4の状態とすると、受け入れ許容値は第1アイランド(IR−1)が30個、第2アイランド(IR−2)が50個、第3アイランド(IR−3)が70個、第4アイランド(IR−4)が90個となっている。
【0034】
前記受け入れ許容値は、ループ軌道上のオーダースタートポイントから各アイランドまでの搬送中のボックス数を考慮して設定されている。たとえば、第1アイランド(IR−1)はオーダースタートポイントからみて最初のアイランドであるため、第1アイランド(IR−1)そのものの受け入れ数である30個が受け入れ許容値として設定される。また、第2アイランド(IR−2)は、このアイランドまでのループ軌道に20個のボックスが搬送可能で、このアイランド自身で30個のボックスが受け入れ可能であるとすると、第2アイランド(IR−2)の受け入れ許容値は20+30=50個となる。同様に、第3アイランド(IR−3)は、このアイランドまでのループ軌道中に40個のボックスが搬送可能で、このアイランド自身で30個のボックスが受け入れ可能であるとすると、第3アイランド(IR−3)の受け入れ許容値は40+30=70個となる。
【0035】
また、第4アイランド(IR−4)は、このアイランドまでのループ軌道中に60個のボックスが搬送可能で、このアイランド自身で30個のボックスが受け入れ可能であるとすると、第4アイランド(IR−4)の受け入れ許容値は60+30=90個となる。
【0036】
この搬送制御テーブルは、しきい値は85%に設定されており、前記受け入り許容値に対するしきい値以上のボックスを各アイランドに送り出さないよう中央制御装置(CPU)は搬送制御テーブルを参照しながらボックスの送り出し順を制御する。また、このときにアイランドテーブルから得られた受け入れ可能指数の小さいアイランドに対して順番にオーダースタートポイントからボックスを送り出す。
【0037】
次に、受け入れ可能指数の算出方法を説明する。
【0038】
受け入れ可能指数は、アイランドテーブルの搬送中数に重み付け比率を乗算して算出する。たとえば、第1アイランドの受け入れ可能指数は20×0.25=5、第2アイランドの受け入れ可能指数は0×0.25=0、第3アイランドの受け入れ可能指数は0×0.25=0、第4アイランドの受け入れ可能指数は6×0.25=1.5となる。したがって、中央制御装置(CPU)は、受け入れ可能指数の小さい順、すなわち、第2アイランド→第3アイランド→第4アイランド→第1アイランドの順番でそれぞれのアイランドにピッキングすべき商品のあるボックスをオーダースタートポイントから送り出す。
【0039】
また、前記受け入れ可能指数の代わりに、前記アイランドテーブルを参照して、在席数
(入数−出数)と搬送中数を加算した値から受け入れ許容値を除算してこれを新たな受け入れ可能指数とし、この新たな受け入れ可能指数の小さいアイランドに対して優先的に搬送制御テーブルの中からボックスを選択してループ軌道にスタートさせるようにしてもよい。この例によれば、第1アイランドは((10−5)+20)/30=0.83、第2アイランドは((2−1)+0)/50=0.02、第3アイランドは((1−0)+0)/70=0.014、第4アイランドは((50−4)+6)/90=0.58となる。したがって、この値の小さい順、すなわち第3アイランド→第2アイランド→第4アイランド→第1アイランドの順番でそれぞれのアイランドにピッキングすべき商品のあるボックスをオーダースタートポイントから送り出す。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、逐次受注を受けて商品を出荷する業務に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態のシステム構成を示す図
【図2】実施形態のコンベアの敷設構成図
【図3】実施形態の搬送制御テーブル(スタートポイントテーブル、制御テーブル)の内容を示す説明図
【図4】実施形態のアイランドテーブルの内容を示す説明図
【符号の説明】
【0042】
CPU 中央制御装置
MM メインメモリ
BUS バス
HD ハードディスク装置
OS オペレーティングシステム
APL アプリケーションプログラム
DISP ディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注文に応じた商品を収納するボックスの移動を開始するオーダースタートポイントと、当該オーダースタートポイントから敷設されたコンベアのループ軌道と、ループ軌道から分岐されて商品のピッキングを行いその後にループ軌道に復帰させるアイランドと、ループ軌道から注文商品が収納されたボックスを回収するエンドポイントとからなる商品ピッキング制御システムであって、
前記オーダースタートポイントにおける待ちボックスのボックスIDと、ボックスID毎のピッキング商品のアイランドIDとが関係付けられて記憶された搬送制御テーブルと、
アイランド毎のボックスの受け入れ許容値と、当該アイランドのボックスの入数と、出数と、アイランドへの分配重み付け率とが関係付けられて記憶されたアイランドテーブルと、
前記アイランドテーブルを参照して、当該アイランドへのスタート個数から入数を減算して得られた搬送中数を前記分配重み付け比率と乗算して受け入れ可能指数とし、その値が小さいアイランドに対して優先的に搬送制御テーブルの中からボックスを選択してループ軌道にスタートさせるようにした商品ピッキングシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記受け入れ可能指数の代わりに、前記アイランドテーブルを参照して、在席数と搬送中数を加算した値から受け入れ許容値を除算してこれを新たな受け入れ可能指数とし、この新たな受け入れ可能指数の小さいアイランドに対して優先的に搬送制御テーブルの中からボックスを選択してループ軌道にスタートさせるようにした請求項1記載の商品ピッキングシステム。
【請求項3】
前記アイランドテーブルにはしきい値が設定されており、前記の受け入れ許容値に対する在席数の比率が当該しきい値を越えたときに前記制御部は当該アイランドへのボックスのスタートを停止する請求項2記載の商品ピッキング制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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