説明

商品保護材

【課題】収容する商品と物品とをきちんと区分して収納し、なおかつ商品に対する輸送時の振動や外部からの衝撃から保護し、また組み立てた商品保護材の反発力により収容箱を傷めることのない、商品保護材を提供する。
【解決手段】商品と少なくとも1つの商品以外の物品を収容箱に収納する際に、前記商品および物品と一緒に前記収容箱に収納される商品保護材であって、商品保護材は、少なくとも商品の6方向(上・下・左・右・前・後)を保護可能な6つの平面を有するように1枚のシートを折り曲げて組み立てられると共に、該平面の外側に突出する緩衝片を少なくとも1箇所有しており、また前記収容箱を2つ以上の領域に区画し、さらに折り曲げて組み立てた際の反発力を制するためのロック機構を有することを特徴とする、商品保護材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト容器やレフィル容器,化粧皿などの粉体固形化粧品(ファンデーションやアイシャドウなど)や、衝撃に弱い構造を有する割れ物や日用品、雑貨品などと、それに付随する物品(化粧筆や説明書、別添部品等)とを同一の収容箱に収容する際に、それらの商品や物品と一緒に収容される商品保護材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体を固めて用いる、ファンデーションやアイシャドウ等の粉体固形化粧品等は、輸送時の振動や外部からの衝撃に対して非常に弱く、商品を収容する箱には、緩衝効果を有する材料と同梱されることが行われる(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、それらの商品と同梱されるものとして、化粧筆やパフ、使用説明書、その他当該商品の有する機能を利用せしめるための別添部品などがあり、これらの収容方法として、商品を収容箱に入れた隙間に物品を入れたりする場合や、商品と物品とをきちんと区分けして収容する必要がある場合には、収容箱を区画するような別部材を入れたり(例えば特許文献3参照)、収容箱の一部を利用して収容エリアを区画することが行われてきた。
【特許文献1】特公平7−5145号公報 (第2図)
【特許文献2】特開2007−20773号公報 (第10図)
【特許文献3】特開2004−123165号公報 (第2図)
【特許文献4】実開平2−117328号公報 (第1図)
【特許文献5】特許第3653145号公報 (第1図)
【特許文献6】特開2004−189273号公報 (第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1にあるような緩衝用シートでは、特定の方向にのみ緩衝効果を奏するに過ぎず、保護されていない方向からの衝撃には緩衝効果を有さない。また特許文献1にある緩衝シートを利用して商品以外にも物品(化粧筆や説明書)を同梱させる場合には、収容箱の高さ方向を大きくし、緩衝シートと収容箱の間に出来た隙間に物品を収容することになる。しかし緩衝シートの厚みが大きくなる(緩衝効果向上)と、緩衝シートの折り曲げ方向とは反対向きに反発力が増し、その反発力により物品を収容箱に押し付けることになり、結果として収容箱に物品の跡が傷の形で出てしまう場合があり好ましくない。
【0005】
また特許文献2では、商品を収納し得ても、物品を収納するという構造ではないため、物品を収納しにくくなっていたり、収納したとしても、物品が箱の中で自由に動きまわってしまい商品と物品との擦れ傷が発生したり、物品が存在することにより本来の緩衝効果が得られない場合もあった。
【0006】
さらに特許文献3では、収容箱を2つに区分できるが、商品を衝撃から守るという点か
らは不十分であった。
【0007】
そこで本発明は、商品の保護材であって、収容する商品と物品とをきちんと区分して収納し、なおかつ商品に対する輸送時の振動や外部からの衝撃から保護し、また組み立てた商品保護材の反発力により収容箱を傷めることのない、商品保護材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明者が鋭意研究した結果、商品と少なくとも1つの商品以外の物品を収容箱に収納する際に、前記商品および物品と一緒に前記収容箱に収納される商品保護材であって、商品保護材は、少なくとも商品の6方向(上・下・左・右・前・後)を保護可能な6つの平面を有するように1枚のシートを折り曲げて組み立てられていると共に、該平面の外側に突出する緩衝片を少なくとも1箇所有しており、また前記収容箱を2つ以上の領域に区画し、さらに折り曲げて組み立てた際の反発力を制するためのロック機構を有するという構成をとる。
また当該商品保護材の緩衝片が、商品保護材の折り曲げ部に設けており、組立が容易である。
当該商品保護材によって区画される領域が2つであるのが使用上や組み立て上便利である。また当該商品保護材によって保護される商品が、粉体固形化粧料等の衝撃に弱いものであると、本発明の恩恵を受けやすい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、収容する商品と物品とをきちんと区分して収納するため、輸送時の振動や取り扱い時に商品と物品とが擦れて傷をつけてしまうことなどない。さらに外部からの衝撃に対しても商品保護材及び商品保護材に設けた緩衝片により緩衝作用を有するため商品を保護できる。また商品保護材を組み立てた場合に、組立形状を維持するロック機構を有するため、その反発力により物品を収容箱に押し付けて傷めてしまうということもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。尚、以下に述べる実施例は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0011】
図1は本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。本実施の形態では収容箱1に商品2としてコンパクトケース、および物品3として化粧筆を収納する例を示しており、商品2と物品3と一緒に本願発明の商品保護材4とを収容箱1に収納している。商品保護材4には緩衝片4sが設けられている。
【0012】
図2は本願発明の商品保護材4の展開図を示している。商品保護材4は、1枚のシートから製作され、商品の前面を保護する前面部4a、底面を保護する底面部4b、背面を保護する背面部4c、上面を保護する上面部4d、右側面を保護する右側面部4e、左側面を保護する左側面部4fを有する。この時前面部4a及び背面部4cの高さは商品2が入る高さとするが、右側面部4e、左側面部4f(今後、左右の区別を特に必要としない場合には単に「側面部4e,4f」とする)の高さは、上面部4dを越える高さであって、収容箱に収まる高さである。またこの例では、前面部4aに1箇所、背面部4cに2箇所、上面部4dの辺の内、背面部4cとの境界に形成される辺とは反対側の辺にも1箇所、緩衝片4sが設けられている。
【0013】
図2の商品保護材4を、点線で示した箇所で折り曲げることで、商品保護材4を組み立てるが、通常折り曲げても素材のもつ弾性力により再度開こうとする力が働く。この弾性力を抑えるために、側面部4e,4f、上面部4dの形状により組み立てた商品保護材4が再度開くことを防止するロック機構を形成する。具体的には側面部4e,4fの形状において、底面部4bから上面部4dを越える高さまで幅を狭くし、側面部4e,4fの先端にそれぞれ2箇所の凸部4xを儲け、略T字状となる様に形成する。また上面部4dの形状では、側面部側の辺において、側面部4e,4fの幅を狭くした部分が入る長さの凹部4Yを形成する。そうして組み立てると図3に示されるように、上面部4dの凹部4yに側面部4e,4fが入り、凸部4xが上面部を抑えることになる。こうして商品保護材4は弾性力を抑え、組み立てた形状を維持することができるとともに、収容箱を2つの区分にきちんと分けることもできる。尚、4つの緩衝片4sについては、商品保護材を組み立てた際にも折り曲げないことで、正面部4a背面部4cから突出することになる。
【0014】
商品保護材4は、ロック機構により組み立てた形状を維持するため、上面部4dの上に載置する物品3を上に押し上げて収容箱に押し付けようとする力が働かないため、収容箱を傷めることはない。また商品を6方向(上・下・左・右・前・後)を保護することが可能である。
【0015】
商品保護材4の材質は、適度な強度や弾性を有し、形状を維持できるものであれば、特に制限するものではなく、合成樹脂や紙類等、化粧品や文具等の日用品の包装に用いられるものが使用できる。加工のしやすさや重量、費用面から、発泡スチレン(スチレンペーパー)が好ましく例示できる。
【0016】
図4は、本発明の商品保護材4に商品2と物品3を組み合わせ収容箱1に収納する様子を示している。
【0017】
図5は、本発明の商品保護材4の第2の実施形態を示す。この例では先の実施例よりも多くの緩衝片4sを形成している例を示す。この例による緩衝片4sであれば、いかなる方向からの外部衝撃であっても、商品への振動が伝わりにくく、耐衝撃性が向上するため好ましい。
【0018】
尚、緩衝片4sは必ずしも全ての辺に設ける必要もなく、また辺上に1つであっても良いし、複数個設けても良い。緩衝片4sを設けることによって、収容箱1を含めた全体サイズが大きくなるため、商品の保護の必要性と、収容箱1を含めた全体の大きさを考慮して決めれば良い。図5の場合には6つの方向(前・後・上・下・左・右)の内、上面部4d側以外全てに設けている。但し上面側は側面部(4e,4f)が緩衝片の代わりにもなり、商品の保護という点では結果として6方向守られている。
【0019】
図6は図5の展開図である。図5では確認が困難であった背面側にも緩衝片が存在することが判る。
【0020】
図7は本発明の第3の実施形態であって、収容箱1を3つに区分する例を示している。2階部分の前面側には第2前面部4g、2階部分の上面には第2上面部4h、2階部分の背面側には第2背面部4iが設けられている。側面部4e,4fは高さ方向に伸び、第2上面部4hにも2ケ所の凹部4yを設けている。必要により側面部には上面部を支える保持部4zを設けることもできる。またこの様な例の場合においても、緩衝片4sが任意の箇所に設けられている。
この実施形態においても、1階部分、2階部分とも6方向(上・下・左・右・前・後)を保護する構造になっている。この例においても緩衝片を設けることにより緩衝効果を向上させることが出来る(図示しない)。
【0021】
図示はしないが、上記実施例では収容箱1を上方向(2階、3階構造)に区分する例を示したが、これは横方向に区分する方法であってもよい。
【0022】
本発明の商品保護材4を使用する商品に特に制限はなく、化粧品、日用品、文具、等あらゆる分野での利用が可能である。中でも化粧品の、とりわけ衝撃に弱い粉体固形化粧料であると、本発明の効果が顕著である。
【0023】
次に本発明の実施例および比較例を挙げ、落下試験を実施し、本発明品による商品の緩衝効果について説明する。
【0024】
<落下試験>
既知のコンパクト容器(W(幅)×D(奥行き)×H(高さ)=53×53×17(mm),材質は蓋がABS,本体がPET)にアルミ製の金皿に打型した粉体固形化粧料を収容した商品と、物品として化粧筆と、本発明の商品保護材とを収容箱(紙製)に収納して落下試験を実施した。尚、粉体化粧料の処方は以下に示したものであり、打型圧力は8kg/cmである。また商品保護材については表1で示すように条件を変えて評価した。
(粉体固形化粧料) (質量%)
タルク 20.0
シリコーン処理マイカ 19.67
シリコーン処理合成マイカ 10.0
板状硫酸バリウム 10.0
雲母チタン 20.0
PMMA 10.0
ベンガラ 0.2
黄酸化鉄 0.4
ジメチコン 3.5
スクワラン 3.0
ワセリン 0.5
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 2.0
ラミナリアオクロロイカエキス 0.1
グリシン 0.01
プロリン 0.01
アラニン 0.01
セイヨウオトギリソウエキス 0.1
オリーブ葉エキス 0.1
甘草エキス 0.1
パラベン 0.2
香料 0.1
合計 100.0
【0025】
落下させる方向としては、底面側を下に向けそのまま落下させる方向(正立方向)と、側面背面側を下に向け落下させる方向(側面方向)との2方向で実施した。落下の高さは50cmで行い、打型品にヒビ・割れが発生するまでに落下させた回数を記録する。50回落下させても割れなかった場合、続けて100cmの高さから落下させ、同様にヒビ・割れが発生するまでに落下させた回数を記録した。それおぞれ同一の条件を3個ずつ行い、各試験の落下回数の平均値により評価した。
落下試験(正立方向)の評価基準
◎:50cm落下をクリアし、100cmの平均落下回数が10回以上
○:50cm落下をクリアし、100cmの平均落下回数が5回以上10回未満
△:50cm落下をクリアし、100cmの平均落下回数が1回以上5回未満
×:50cm落下がクリアできない

落下試験(側面方向)の評価基準
◎:50cm落下の平均落下回数が10回以上
○:50cm落下の平均落下回数が5回以上10回未満
△:50cm落下の平均落下回数が4回以上5回未満
×:50cm落下の平均落下回数が4回未満
【0026】
実施例1〜2、比較例1〜2
【表1】

【0027】
表1から明らかな通り、保護材のない比較例1については、50cmからの正立落下において割れが発生し、また緩衝片がない保護材を使用した比較例2においては、正立落下については50cmからの落下をクリアしたものの、側面落下については、4回の落下をクリアすることができなかった。
【0028】
一方、本発明の実施例1,2は、いずれも50cmからの正立落下をクリアし、底面に緩衝片を有する実施例2については、100cmからの平均落下回数においても10回をクリアした。側面落下については、実施例1,2とも50cm落下の平均落下回数5回をクリアし、緩衝片の効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の商品保護材が適用できる商品としては様々なものがあり、実施形態で示した粉体固形化粧料等の化粧品はもとより、日用品、文具、等あらゆる分野での利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図
【図2】第1の実施形態の展開図
【図3】商品保護材の組立斜視図
【図4】本発明の収容状態を示す斜視図
【図5】本発明の第2の実施形態を示す斜視図
【図6】第2の実施形態の展開図
【図7】本発明の第3の実施形態を示す斜視図
【符号の説明】
【0031】
1 収容箱
2 商品(コンパクト容器)
3 物品(化粧筆)
4 商品保護材
4a 前面部
4b 底面部
4c 背面部
4d 上面部
4e 右側面部
4f 左側面部
4g 第2前面部
4h 第2上面部
4i 第2背面部
4s 緩衝片
4x 凸部
4y 凹部
4z 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品と少なくとも1つの商品以外の物品を収容箱に収納する際に、前記商品および物品と一緒に前記収容箱に収納される商品保護材であって、商品保護材は、少なくとも商品の6方向(上・下・左・右・前・後)を保護可能な6つの平面を有するように1枚のシートを折り曲げて組み立てられると共に、該平面の外側に突出する緩衝片を少なくとも1箇所有しており、また前記収容箱を2つ以上の領域に区画し、さらに折り曲げて組み立てた際の反発力を制するためのロック機構を有することを特徴とする、商品保護材。
【請求項2】
商品保護材の緩衝片が、商品保護材の折り曲げ部に設けてなる、請求項1のいずれかに記載の商品保護材。
【請求項3】
収容箱が商品保護材によって区画される領域が2つである、請求項1または請求項2のいずれかに記載の商品保護材。
【請求項4】
収納される商品が、粉体固形化粧料である、請求項1〜3のいずれかに記載の商品保護材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−78854(P2009−78854A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251073(P2007−251073)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】