説明

商品販売データ処理装置

【課題】 買物客の操作によりチェックアウト業務を完了させるセルフチェックアウト式の商品販売データ処理装置において、稼働率の大幅な向上が図れることを目的とする。
【解決手段】 買物客によるチェックアウト業務の操作に要した時間を計り、その計時が規定時間内であるか否かを判定し、この判定結果が規定時間内の場合に買物客に特典を供与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、買物客の操作によりチェックアウト業務を完了させるセルフチェックアウト式の商品販売データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量販店や小売店等では、店舗におけるチェックアウトの業務を支援するシステムとして、POS(Point Of Sales)システムが利用される。このPOSシステムでは、商品に固有の商品コードが割り当てられ、その商品コードに対応するバーコードが商品に付される。さらに、店舗のレジカウンタにPOS端末が設置され、そのPOS端末のスキャナにより、買物客によって持ち込まれる商品のバーコードが読取られる。この読取りにより、商品名や販売価格などの商品販売データが判別される。
【0003】
POS端末には、キャッシャと称される店員が操作してチェックアウト業務を行う有人チェックアウト式のものと、買物客が自ら操作して自身のチェックアウト業務を完了させるセルフチェックアウト式のものとがある。
【0004】
セルフチェックアウト式のPOS端末は、設置場所の占有面積が有人チェックアウト式のものに比べて小さくてすむ、キャッシャの数を減らすことができて人件費の削減が図れる、買物のプライバシーが守れるなどの利点がある。
【0005】
反面、セルフチェックアウト式のPOS端末は、使い方が分からない、時間がかかりそう、操作が難しそうなどの理由で買物客にとって利用し難い面があり、初めのうちは好奇心で利用していた買物客も、そのうち面倒になって利用しなくなるなど、稼働率がなかなか上がらないという問題がある。
【0006】
対策として、セルフチェックアウト式のPOS端末を利用した買物客に対し、購入金額や購入商品数に応じたサービスポイントを供与する例がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2006―330809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サービスポイントの採用によって買物客の関心をある程度は引くことができるが、まだまだ不十分なようで、稼働率がなかなか上がらないのが実状である。
【0008】
この発明は、上記の事情を考慮したもので、買物客の操作によりチェックアウト業務を完了させるセルフチェックアウト式の商品販売データ処理装置において、稼働率の大幅な向上が図れることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明の商品販売データ処理装置は、買物客の操作によりチェックアウト業務を完了させるものであって、買物客によるチェックアウト業務の操作に要した時間を計る計時手段と、この計時手段の計時が規定時間内であるか否かを判定する判定手段と、この判定手段の判定結果が規定時間内のとき、買物客に特典を供与する供与手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
この発明の商品販売データ処理装置によれば、チェックアウト業務に必要な操作を買物客にゲーム感覚で実行させることができ、これにより買物客の関心を高めることができて稼働率の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、セルフチェックアウト式の商品販売データ処理装置であるPOS(Point Of Sales)端末の外観を示している。
【0012】
1は本体で、ディスプレイ2、スキャナ3、カード挿入口4、レシート発行口5、硬貨投入口6、硬貨排出口7、紙幣投入口8、紙幣排出口9、および手持式スキャナ10を備えている。この本体1の左側にまだ精算していない商品を置くための商品載置台11が設けられ、本体1の右側に精算済みの商品を置くための商品載置台12が設けられている。
【0013】
上記ディスプレイ2は、買物客のタッチ操作による情報入力機能を有するタッチパネル式の液晶表示器で、買物客に操作方法を知らせるための案内メッセージ、バーコードが付されていない商品の情報を入力するための情報入力画面、スキャナ3や手持式スキャナ10のバーコード読取りに基づく情報を表示する読取情報表示画面、購入代金を支払う支払作業に際しての合計購入金額・預かり金額・釣り銭額などの精算画面を表示する。
【0014】
上記スキャナ3は、買物客が手持ちで翳す商品のバーコードを光学的に読取る。カード挿入口4には、買物客のポイントカードや精算用のICカードが挿入される。レシート発行口5は、チェックアウト業務の完了時にプリントされるレシートの発行口である。硬貨投入口6は、精算用の硬貨の投入口である。硬貨排出口7は、釣り硬貨の返却口である。紙幣投入口8は、精算用の紙幣の投入口である。紙幣排出口9は、釣り紙幣の返却口である。手持式スキャナ10は、買物客が手持ちで商品のバーコードを読取る場合に使用される。
【0015】
このような構成のPOS端末の制御回路を図2に示している。
CPU(Central Processing Unit)20に、上記ディスプレイ2、上記スキャナ3、上記手持式スキャナ10、商品登録処理に必要なオペレーティングシステム(OS)およびアプリケーションプログラムが格納されたハードディスクドライブ(HDD)21、データ記憶用のRAM22、計時用のタイマ23、レシート発行用のプリンタ24、上記カード挿入口4に挿入されるカードに対するデータの読取りおよび書込みを行うカードリーダライタ25、上記硬貨投入口6へ投入される硬貨を処理する硬貨投入ユニット26、上記硬貨排出口7への排出硬貨を処理する硬貨排出ユニット27、上記紙幣投入口8へ投入される紙幣を処理する紙幣投入ユニット28、上記紙幣排出口9への排出紙幣を処理する紙幣排出ユニット29、商品載置台11に載置される商品の重量を計る未精算側計量ユニット31、および商品載置台12に載置される商品の重量を計る精算済側計量ユニット32などが接続されている。
【0016】
そして、CPU20は、本発明に関わる主要な機能として、次の(1)〜(3)の手段を有している。
(1)買物客によるチェックアウト業務の操作に要した時間を上記タイマ23により計る計時手段。チェックアウト業務は、商品のバーコードをスキャナ3または手持式スキャナ10で読取る読取作業、またはバーコードがない商品の情報をディスプレイ2で入力する入力作業、この読取りまたは入力が済んだ商品を袋詰めする袋詰作業、および購入代金を支払う支払作業を含んでいる。
【0017】
(2)上記計時手段の計時が規定時間内であるか否かを判定する判定手段。
【0018】
(3)上記判定手段の判定結果が規定時間内のとき、買物客に特典を供与する供与手段。
【0019】
つぎに、上記の構成の作用を図3のフローチャートおよび図4のタイムチャートを参照しながら説明する。
商品のバーコードがスキャナ3または手持式スキャナ10で読取られたとき(ステップ101のYES)、またはバーコードが付されていない商品の情報がディスプレイ2の情報入力画面で入力されたとき(ステップ102のYES)、タイマ23によるタイムカウントtが開始されるとともに(ステップ103)、上記の読取りまたは入力が済んだ商品の袋詰作業の開始が判定される(ステップ104)。
【0020】
袋詰作業の開始前は右側の商品載置台12に袋やカゴぐらいしか置かれないので精算済側計量ユニット32の計量値が零に近く、袋詰作業が開始されて商品載置台12に商品が置かれると精算済側計量ユニット32の計量値が零から変化する。この変化が袋詰作業の開始として判定される。
【0021】
袋詰作業が開始されると(ステップ104のYES)、それまでのタイマ23のタイムカウントt、つまり上記バーコード読取りまたは情報入力の開始から袋詰作業の開始までの時間(秒)が、スキャン時間t1としてRAM22に記憶される(ステップ105)。この記憶に伴い、タイムカウントtが一旦クリアされて再び開始されるとともに(ステップ106,107)、支払作業の開始が判定される(ステップ108)。支払作業の開始は、ディスプレイ2のタッチ操作によって締め処理が指定されたときである。
【0022】
支払作業が開始されないまま(ステップ108のNO)、2つ目の商品についてのバーコード読取りがあったとき(ステップ109のYES)、または情報入力があったとき(ステップ110のYES)、それまでのタイマ23のタイムカウントt、つまり袋詰作業の開始から次のバーコード読取りまたは情報入力までの時間(秒)が、アイドル時間t2としてRAM22に記憶される(ステップ111)。この記憶に伴い、タイムカウントtが一旦クリアされて再び開始され(ステップ112,113)、再び支払作業の開始が判定される(ステップ108)。
【0023】
このように、支払作業が開始されないうちは、買物客が購入しようとする全ての商品についてのスキャン時間t1およびアイドル時間t2がそれぞれ計時されて記憶される。
【0024】
支払作業が開始されると(ステップ108のYES)、それまでのタイマ23のタイムカウントt、つまり袋詰め作業の開始から支払作業開始までの時間(秒)が、アイドル時間t2としてRAM22に記憶される(ステップ114)。この記憶に伴い、タイムカウントtが一旦クリアされて再び開始されるとともに(ステップ115,116)、支払作業の終了が判定される(ステップ117)。支払作業の終了は、買物客による合計購入金額の支払いが完了したときである。
【0025】
支払作業が終了すると(ステップ117のYES)、それまでのタイマ23のタイムカウントt、つまり支払作業の開始から終了までの時間(秒)が、支払時間t3としてRAM22に記憶される(ステップ118)。この記憶に伴い、タイムカウントtが一旦クリアされて再び開始される(ステップ118,119)。そして、1つのチェックアウト業務におけるRAM22内の各スキャン時間t1を合計した合計スキャン時間t1xが求められるとともに、1つのチェックアウト業務におけるRAM22内の各アイドル時間t2を合計した合計アイドル時間t2xが求められる(ステップ120)。
【0026】
続いて、今回の購入の対象となった商品の数が判別され(ステップ121)、その商品数とハードディスクドライブ21に予め記憶されている図5の規定時間設定テーブルとの対照により、スキャン規定時間taおよびアイドル規定時間tbが可変設定される(ステップ122)。すなわち、商品数が“1”の場合は、スキャン規定時間taとして“ta1”が選定され、アイドル規定時間tbとして“tb1”が選定される。商品数が“2”の場合は、スキャン規定時間taとして“ta2(>ta1)”が選定され、アイドル規定時間tbとして“tb2(>tb1)”が選定される。商品数が“3”の場合は、スキャン規定時間taとして“ta3(>ta2)”が選定され、アイドル規定時間tbとして“tb3(>tb2)”が選定される。
【0027】
そして、合計スキャン時間t1xが上記スキャン規定時間ta内であるか否かが判定されるとともに(ステップ123)、合計アイドル時間t2xがアイドル規定時間tb内であるか否かが判定される(ステップ124)。さらに、1つのチェックアウト業務におけるRAM22内の支払時間t3がハードディスクドライブ21に予め記憶されている支払規定時間tc内であるか否かが判定される(ステップ125)。
【0028】
チェックアウト業務の完了に際し、上記判定結果が全て肯定で規定時間内であれば(ステップ123のYES、ステップ124のYES、ステップ125のYES)、図6に示すレシートRが発行される(ステップ126)。このレシートRは、今回のチェックアウト業務に関わる通常の販売情報が記録された領域R1を有するとともに、規定時間であるスキャン規定時間ta、アイドル規定時間tb、支払規定時間tcがそれぞれ記録され且つ実績時間である合計スキャン時間t1x、合計アイドル時間t2x、支払時間t3がそれぞれ記録された領域R2を有し、さらに、買物客への特典として“割引券引換”の文字が記録された領域R3を有している。このレシートRにより、規定時間および実績時間が報知されるとともに、特典を供与する状態にある旨が報知される。
【0029】
レシートRとしては、図6のものに限らず、図7に示すように、領域R2の上部に“商品数4でのチャレンジ結果”という文言が記録されるとともに、“割引券引換”の文字の近くに“おめでとうございます”という文言が記録されるものでもよい。
【0030】
買物客は、このレシートRをサービスカウンタの店員に提示することにより、次の買物で有効となる割引券を受け取ることができる。
【0031】
この割引券を供与することにより、セルフチェックアウト式のPOS端末を積極的に利用しようとする意識を買物客に抱かせることができ、稼働率の向上が図れる。
【0032】
上記判定結果のうち少なくともいずれか1つが否定で規定時間内でない場合(ステップ123のNO、またはステップ124のNO、またはステップ125のNO)、通常の販売情報が記録される領域R1、および規定時間と実績時間が記録される領域R2のみ有して、“割引券引換”の文字が記録される領域R3を有しない特典なしのレシートRが発行される。
【0033】
特典なしのレシートRには、領域R2に“割引券引換”の文字が記録されず、その代わりに、“残念でした”“もう少しです”“あと一歩です”“もう少しがんばりましょう”などの文言が記録される。
【0034】
こうして、チェックアウト業務の操作に要した時間が規定時間内に収まらなかった場合は割引の特典を供与しないことにより、次回の利用時には特典を得たいという積極的な利用の気持ちを買物客に抱かせることができて、買物客にゲーム感覚の楽しみを与えることができる。しかも、利用が増えるに従って買物客の熟練度が増してチェックアウト業務が速くなるので、多くの利用者がセルフチェックアウト式のPOS端末に並ぶ事態となっても、利用者の待ち時間をできるだけ短くすることができる。これらの点でも稼働率の向上が見込める。また、チェックアウト業務が速くなれば、店舗内の買物客の回転が速くなり、売上げ向上に大きく貢献できる。
【0035】
なお、上記実施形態では、規定時間および実績時間をレシートRへの記録によって報知したが、それに加え、規定時間および実績時間をディスプレイ2での表示によって買物客に報知する構成としてもよい。
【0036】
特典としては、割引券への引換えに限らず、カード挿入口4に挿入される買物客のポイントカードに販売促進用のサービスポイントを加算してもよい。
【0037】
また、利用があった時点で無条件にサービスポイントを供与し、その上で、チェックアウト業務の操作に要した時間が規定時間内に収まることを条件に割引券を供与する構成としてもよい。
【0038】
さらに、商品数が例えば“1”または“2”のように少ない場合は、特典供与の対象外として特典供与の制御を実行せず、例えば“特典チャレンジのサービスは商品数3からです・次回のチャレンジをお待ちします“などの案内文をディスプレイ2で表示する構成としてもよい。
【0039】
その他、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変えない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施形態の外観を示す斜視図。
【図2】一実施形態の制御回路を示すブロック図。
【図3】一実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【図4】一実施形態の作用を説明するためのタイムチャート。
【図5】一実施形態における規定時間設定テーブルのフォーマットを示す図。
【図6】一実施形態において発行されるレシートを示す図。
【図7】一実施形態において発行されるレシートの変形例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1…本体、2…ディスプレイ、3…スキャナ、4…カード挿入口、5…レシート発行口、6…硬貨投入口、7…硬貨排出口、8…紙幣投入口、9…紙幣排出口、10…手持式スキャナ、11…商品載置台、12…商品載置台、20…CPU、21…ハードディスクドライブ、22…RAM、23…タイマ、24…プリンタ、25…カードリーダライタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
買物客の操作によりチェックアウト業務を完了させるセルフチェックアウト式の商品販売データ処理装置において、
買物客による前記チェックアウト業務の操作に要した時間を計る計時手段と、
前記計時手段の計時が規定時間内であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果が規定時間内のとき、買物客に特典を供与する供与手段と、
を備えることを特徴とする商品販売データ処理装置。
【請求項2】
前記供与手段は、特典として、チェックアウト業務の完了に伴い発行されるレシートに、割引の情報を付加することを特徴とする請求項1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項3】
前記供与手段は、特典として、販売促進用のサービスポイントを供与することを特徴とする請求項1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項4】
前記チェックアウト業務は、商品のバーコードをスキャナで読取る読取作業、またはバーコードがない商品の情報を入力する入力作業、この読取りまたは入力が済んだ商品を袋詰めする袋詰作業、および購入代金を支払う支払作業を含むことを特徴とする請求項1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項5】
前記計時手段は、前記読取作業または前記入力作業の開始から前記袋詰作業の開始までの時間をスキャン時間として計時し、前記袋詰作業の開始から前記読取作業または前記入力作業の開始までの時間をアイドル時間として計時し、前記支払作業の開始から終了までの時間を支払時間として計時し、
前記判定手段は、1つのチェックアウト業務におけるスキャン時間の合計を求めてその合計がスキャン規定時間内であるか否かを判定し、1つのチェックアウト業務におけるアイドル時間の合計を求めてその合計がアイドル規定時間内であるか否かを判定し、1つのチェックアウト業務における支払時間が支払規定時間内であるか否かを判定し、
前記供与手段は、前記判定手段の判定結果が全て肯定で規定時間内の場合に特典を供与する、
ことを特徴とする請求項4に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項6】
前記スキャン規定時間および前記アイドル規定時間は、前記読取作業および前記入力作業の対象となる商品の数に応じて可変設定されることを特徴とする請求項5に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項7】
前記判定手段の判定結果を報知する報知手段、をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の商品販売データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−15524(P2009−15524A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175502(P2007−175502)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】