噛合チェーン式進退作動ユニット
【課題】ユニット内のスペースを有効利用してユニットを小型化すると同時に一対の噛合チェーンの剛直状態を維持しつつチェーン駆動音を低減するとともに取り付け時における手間の増大が回避される噛合チェーン式進退作動ユニットを提供すること。
【解決手段】相互に噛み合って一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーン１１０、チェーン収納用溝１２１とチェーン誘導用溝１２２とが設けられたチェーン案内プレート１２０、チェーン案内プレート１２０に形成されて噛合チェーン１１０の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝１２３に収容されるとともに一対の噛合チェーン１１０の一方に係合して駆動する駆動用スプロケット１３０などで構成された噛合チェーン式進退作動ユニット１００。
【解決手段】相互に噛み合って一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーン１１０、チェーン収納用溝１２１とチェーン誘導用溝１２２とが設けられたチェーン案内プレート１２０、チェーン案内プレート１２０に形成されて噛合チェーン１１０の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝１２３に収容されるとともに一対の噛合チェーン１１０の一方に係合して駆動する駆動用スプロケット１３０などで構成された噛合チェーン式進退作動ユニット１００。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、引戸などの被作動対象を進退駆動させる進退作動ユニットであって、特に、噛合チェーンを進退動作の駆動媒体として採用した噛合チェーン式進退作動ユニットに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、進退作動装置として、一対の帯体からなる作動部を進退自在に駆動させて被作動物を作動させるもの（例えば、特許文献１および特許文献２参照。）や、規制部材を有する帯体を含むとともに剛性を有する柱状部材を進退駆動させて被作動物を作動させるもの（例えば、特許文献３参照。）がある。
また、噛合チェーンを駆動媒体として上下方向に被昇降物を搬送する噛合チェーン式昇降装置がある（例えば、特許文献４参照。）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開平１０−１２９１号公報（段落［００１３］、図２）
【特許文献２】特開平１０−１７５７９６号公報（段落［００３８］、図１４）
【特許文献３】特開平１０−７８０９５号公報（段落［００３８］、図５）
【特許文献４】特開２００９−１３９８号公報（特許請求の範囲、図１）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、特許文献１に開示された進退作動装置では、円形の繰出体に動力を供給する入力軸がこの繰出体に交差しているため、進退作動装置の厚み方向、すなわち繰出体の厚み方向に沿った装置サイズを小さくすることが困難であるという問題点があった。
また、特許文献２に開示された進退作動装置でも、特許文献１と同様に進退作動装置の厚み方向の装置サイズを小さくすることが困難であるという問題点があった。
また、特許文献３に開示された進退作動装置では、一対のチェーンの剛直状態を維持する規制部材が必要となるため、部品点数の増大を回避して装置を小型化することが困難になるという問題点があった。
加えて、特許文献３に開示された進退作動装置では、駆動媒体が噛合チェーンでなく、規制部材によって屈折が防止される帯体すなわちチェーンであるため、一対のチェーンだけでその剛直状態を維持して被作動物を作動させることが困難であるとともに剛直化した一対のチェーンに生じるがたつき、すなわち振動を回避して噛合チェーンの振動騒音の低減および円滑な噛合チェーンの走行を実現することが困難になるという問題点があった。
【０００５】
また、特許文献４に開示された噛合チェーン式昇降装置では、スプロケットを含む仮想平面方向に沿ってスプロケットから離れた領域に駆動モータが配置されているため、ベースプレート上の部品配置領域を有効利用するとともに装置サイズを小さくすることが困難であるという問題点があった。
加えて、特許文献４に開示された噛合チェーン式昇降装置では、ボールねじを含んでベースプレート上に固定配置された直動ユニットを介してスプロケットを駆動する場合、ボールネジ、このボールネジの一端に接続された駆動モータ、および減速機を含む駆動源の長さがこれら構成部品全体のサイズと略等しくなるため、駆動源のサイズを小さくして装置全体のサイズを小さくすることが困難であるとともにこの駆動源の設置スペースをベースプレート上に確保しなければならないというレイアウト上の厄介な問題点があった。
【０００６】
また、特許文献４に開示された噛合チェーン式昇降装置では、スプロケットを含む仮想平面方向に沿ってスプロケットから離れた領域に駆動モータなどの駆動源が配置されているため、駆動源およびこの駆動源によって駆動されるスプロケットの取り付け時に正確に駆動源などを位置決めする手間の増大を回避することが困難になるという問題点があった。
【０００７】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、ユニット内のスペースを有効利用してユニットのサイズを小型化すると同時に一対の噛合チェーンの剛直状態を維持しつつチェーン駆動時におけるチェーン駆動音の低減および円滑なチェーン駆動を実現するとともに駆動源の取り付け時における手間の増大が回避される噛合チェーン式進退作動ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１に係る本発明は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝および該チェーン収納用溝に連接されて一対の噛合チェーンを剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝が設けられたチェーン案内プレートと、該チェーン案内プレートに形成されて噛合チェーンの側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容されているとともに前記一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、該駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とを備えた噛合チェーン式進退作動ユニットであって、前記駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートが、前記一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられ、前記駆動源が、前記チェーン案内プレートの厚み方向に沿って前記仮想平面からずらした位置で前記チェーン案内プレートに固定配置され、前記駆動源の駆動軸が、前記チェーン案内プレートに沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【０００９】
請求項２に係る本発明は、請求項１に記載の構成に加えて、前記駆動用スプロケット収容溝が、前記一対の噛合チェーンの剛直位置に開口していることにより、前述した課題を解決したものである。
【００１０】
請求項３に係る本発明は、請求項１または請求項２に記載の構成に加えて、前記分岐方向に沿った駆動源のサイズが、前記分岐方向に沿ったチェーン案内プレートのサイズより小さいことにより、前述した課題を解決したものである。
【００１１】
請求項４に係る本発明は、請求項１乃至請求項３のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記駆動源が、前記駆動軸を駆動する駆動モータと、前記駆動軸の回転速度を減速する減速機とを備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【００１２】
請求項１に係る本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝および該チェーン収納用溝に連接されて一対の噛合チェーンを剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝が設けられたチェーン案内プレートと、このチェーン案内プレートに形成されて噛合チェーンの側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容されているとともに一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、この駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とを備えたことによって、一対の噛合チェーンのみでその剛直状態を維持すると同時に部品点数を回避して剛直方向および分岐方向に一対の噛合チェーンを案内し、一対の噛合チェーンの端部に固定接続された被作動対象を剛直方向に進退自在に作動させるとともに円滑なチェーン駆動を実現し、駆動用スプロケットを駆動用スプロケット収納溝に収容しないでユニット内に設置する場合に比べてチェーン案内プレートおよび駆動用スプロケット全体が占めるスペースを駆動用スプロケットの厚み方向に沿って小さくしてユニットを小型化することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
すなわち、本請求項１に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートが一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられていることにより、駆動用スプロケットの厚み方向に沿って相互にずれた位置で配置されることで生じる駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートの設置スペースの増大が回避されるとともにユニット内のスペースが有効利用されるため、駆動用スプロケットの厚み方向に沿ったユニットサイズの増大を回避してユニットをより一層小型化することができる。
さらに、本請求項１に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、駆動源がチェーン案内プレートの厚み方向に沿って仮想平面からずらした位置でチェーン案内プレートに固定配置されていることにより、駆動用スプロケットに駆動源を取り付ける取り付け時に駆動源および駆動用スプロケットの相対位置が正確に位置決めされるため、駆動源の取り付け時に精度良く駆動源を位置決めする手間の増大を回避することができる。
さらに、本請求項１に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、駆動源の駆動軸がチェーン案内プレートに沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることにより、駆動源の駆動軸が駆動用スプロケットに交差している場合に比べて駆動用スプロケットの厚み方向に沿って駆動軸の長さより近づけて駆動源がチェーン案内プレートに固定配置されるため、駆動用スプロケットの厚み方向に沿ってユニットをより一層薄く形成して小型化することができる。
【００１３】
そして、本請求項２に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、請求項１に記載の噛合チェーン式進退作動ユニットが奏する効果に加えて、駆動用スプロケット収容溝が一対の噛合チェーンの剛直位置に開口していることにより、噛合チェーンおよび駆動用スプロケット間のコーダルアクションに起因した上下動（脈動）、振動、騒音、速度変動の発生が回避されるため、チェーン駆動時における噛合チェーンの振動騒音をより一層低減するとともに安定したチェーン駆動を実現することができる。
【００１４】
そして、請求項３に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、請求項１または請求項２に記載の噛合チェーン式進退作動ユニットが奏する効果に加えて、分岐方向に沿った駆動源のサイズが分岐方向に沿ったチェーン案内プレートのサイズより小さいことにより、分岐方向に沿ってチェーン案内プレートのサイズより小さい領域内で駆動源の設置スペースが十分に確保されるため、ユニット内のスペースを有効利用してユニットをより一層小型化することができる。
【００１５】
そして、請求項４に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、請求項１ないし請求項３のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動ユニットが奏する効果に加えて、駆動源が駆動軸を駆動する駆動モータと駆動軸の回転速度を減速する減速機とを備えていることにより、駆動モータおよび駆動用スプロケット間に同期歯車を設置しなくても駆動用スプロケットが駆動されるため、部品点数」の増大を回避してユニットを一層小型化するとともにユニット組み立て時に駆動モータおよび駆動用スプロケットの回転調整を回避して噛合チェーンの円滑な走行を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの全体斜視図。
【図２】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの平面図。
【図３】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの正面図。
【図４】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの背面図。
【図５】図４に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図。
【図６】噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットは、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝およびこのチェーン収納用溝に連接されて一対の噛合チェーンを剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝が設けられたチェーン案内プレートとこのチェーン案内プレートに形成されて噛合チェーンの側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容されているとともに一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットとこの駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とを備え、駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートが一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられ、駆動源がチェーン案内プレートの厚み方向に沿って仮想平面からずらした位置でチェーン案内プレートに固定配置され、駆動源の駆動軸がチェーン案内プレートに沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続され、一対の噛合チェーンのみでその剛直状態を維持すると同時に一対の噛合チェーンの端部に固定接続された被作動対象を進退自在に作動させるとともに円滑なチェーン駆動を実現し、駆動用スプロケットを駆動用スプロケット収納溝に収容しないでユニット内に設置する場合に比べてチェーン案内プレートおよび駆動用スプロケット全体が占めるスペースを小さくしてユニットを小型化し、駆動用スプロケットの厚み方向に沿ったユニットサイズの増大を回避して装置をより一層小型化し、駆動源の取り付け時に精度良く駆動源を位置決めする手間の増大を回避し、駆動用スプロケットの厚み方向に沿ってユニットをより一層小型化するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【００１８】
そして、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットは、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても進退動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても進退動作に何ら支障はない。
また、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットは、一対の噛合チェーンの剛直方向が設置面に対して垂直となるように設置されて垂直方向に引戸などの被作動対象を進退自在に作動させてもよいし、一対の噛合チェーンの剛直方向が設置面に対して水平となるように設置されて水平方向に引戸などの被作動対象を進退自在に作動させてもよい。
そして、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットによって引戸などの被作動対象を作動させる場合には、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットおよび平板状の引戸を含む開閉装置全体の厚みおよび長さを小さくして開閉装置全体のサイズを小型化してもよい。
【００１９】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットで用いられる一対の噛合チェーンは、例えば、チェーン幅方向に１列の単列であるもの、チェーン幅方向に２列以上の複列であるものなど何れであっても構わないが、チェーン幅方向に２列以上の複列であるものを採用する場合には、一対の噛合チェーンの一方を構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートが、これに対向する他方の噛合チェーンを構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状に多重かつ強固に噛み合うため、噛合チェーンのチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を実現することができるので、より好ましい。
【００２０】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットで用いられる一対の噛合チェーンは、ローラを有していないもの、すなわち、ブシュのみを有するもの、ローラを有するものなど何れであっても構わないが、ブシュのみを有するものを採用する場合には、チェーン部品点数が低減して、チェーン重量の軽量化を図ることができる。
【実施例】
【００２１】
以下、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニット１００を図面に基づいて説明する。
ここで、図１は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの全体斜視図であり、図２は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの平面図であり、図３は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの正面図であり、図４は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの背面図であり、図５は、図４に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図であり、図６は、噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図である。
【００２２】
まず、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニット１００は、図１に示すように、一対の噛合チェーン１１０の端部に引戸などの被作動対象を固定接続して一対の噛合チェーン１１０の剛直方向に被作動対象を進退作動させるために設置されるものである。
【００２３】
そして、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００は、図１乃至図５に示すように、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーン１１０と、相互に分岐した噛合チェーン１１０を案内して収納するチェーン収納用溝１２１およびこのチェーン収納用溝１２１に連接されて一対の噛合チェーン１１０を剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝１２２が設けられたチェーン案内プレート１２０と、このチェーン案内プレート１２０に形成されて噛合チェーン１１０の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝１２３に収容されているとともに一対の噛合チェーン１１０の一方に係合して一対の噛合チェーン１１０を進退自在に駆動する駆動用スプロケット１３０と、この駆動用スプロケット１３０に駆動力を供給する駆動源１４０とを基本的な装置構成として備え、一対の噛合チェーン１１０のみでその剛直状態を維持すると同時に部品点数を回避して剛直方向および分岐方向に一対の噛合チェーンを案内し、一対の噛合チェーン１１０の端部に固定接続された引戸などの被作動対象を進退自在に作動させるとともに円滑なチェーン駆動を実現し、駆動用スプロケット１３０を駆動用スプロケット収納溝１２３に収容しないでユニット内に設置する場合に比べてチェーン案内プレート１２０および駆動用スプロケット１３０全体が占めるスペースを小さくしてユニットを小型化するようになっている。
さらに、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図２に示すように、駆動用スプロケット１３０およびチェーン案内プレート１２０が一対の噛合チェーン１１０の剛直方向および分岐方向を含む仮想平面Ｓ内に設けられていることにより、駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿って相互にずれた位置で配置されることで生じるチェーン案内プレート１２０および駆動用スプロケット１３０の設置スペースの増大が回避されるとともにユニット内のスペースが有効利用されるため、駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿ったユニットサイズの増大を回避してユニットをより一層小型化することができる。
【００２４】
さらに、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図２に示すように、駆動源１４０がチェーン案内プレート１２０の厚み方向に沿って仮想平面Ｓからずらした位置でチェーン案内プレート１２０に固定配置されていることにより、駆動用スプロケット１３０に直交ギア１５０を介して駆動源１４０を取り付ける取り付け時に駆動源１４０および駆動用スプロケット１３０の相対位置が正確に位置決めされるため、噛合チェーン式進退作動ユニット１００が、駆動源１４０の取り付け時に精度良く駆動源１４０を位置決めする手間の増大を回避するようになっている。
【００２５】
さらに、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、駆動源１４０の駆動軸１４１がチェーン案内プレート１２０に沿って配置されているとともに直交ギア１５０を介して駆動用スプロケット１３０に接続されていることにより、駆動源１４０の駆動軸１４１が駆動用スプロケット１３０に交差している場合に比べて駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿って駆動軸１４１の長さより近づけて駆動源１４０がチェーン案内プレート１２０に固定配置されるため、駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿って噛合チェーン式進退作動ユニット１００の幅Ｗが狭められて一層薄く形成されて小型化されるようになっている。
【００２６】
さらに、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図５に示すように、駆動用スプロケット収容溝１２３が一対の噛合チェーン１１０の剛直位置に開口していることにより、噛合チェーン１１０および駆動用スプロケット１３０間のコーダルアクションに起因した上下動（脈動）、振動、騒音、速度変動の発生が回避されるため、噛合チェーン式進退作動ユニット１００が、チェーン駆動時における噛合チェーン１１０の振動騒音をより一層低減するとともに安定したチェーン駆動を実現するようになっている。
【００２７】
また、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図２に示すように、一対の噛合チェーン１０の分岐方向に沿った駆動源１４０のサイズが分岐方向に沿ったチェーン案内プレート１２０のサイズ、すなわち長さＬより小さいことにより、分岐方向に沿ってチェーン案内プレート１２０のサイズより小さい領域内で駆動源１４０の設置スペースが十分に確保されるため、噛合チェーン式進退作動ユニット１００が、その内部のスペースを有効利用してより一層小型化されるようになっている。
【００２８】
また、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図２ないし図５に示すように、駆動源１４０が、駆動軸１４１を駆動する駆動モータ１４２と駆動軸１４１の回転速度を減速する減速機１４３とを備えていることにより、駆動モータ１４２および駆動用スプロケット１３０間に同期歯車を設置しなくても回転軸１３１を介して駆動用スプロケット１３０が駆動されるため、噛合チェーン式進退作動ユニット１００が、部品点数の増大を回避してユニットを小型化するとともにユニット組み立て時に駆動モータ１４３および駆動用スプロケット１３０の回転調整を回避して噛合チェーン１１０の円滑な走行を実現するようになっている。
【００２９】
また、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００で用いた一対の噛合チェーン１１０は、図６に示すように、所謂、チャックチェーンと称するものであって、フック部を有する内歯プレート１１１と、この内歯プレート１１１に対してチェーン長手方向に半ピッチ分ずらして重なり合うとともにフック部を有する外歯プレート１１２と、内歯プレート１１１同士をチェーン幅方向に連結固定するブシュ１１３と、このブシュ１１３に外嵌されるローラ１１４と、外歯プレート１１２同士をチェーン幅方向に連結固定する連結ピン１１５とを備えており、前述したチェーン案内プレート１２０に沿って分岐方向から剛直方向へ偏向しながら相互に噛み合わせて一体に自立状態で進退動作するとともに剛直方向から分岐方向へ偏向しながら相互に噛み外れて分岐するように配置されている。
【００３０】
そして、一対の噛合チェーン１１０の一方を構成する内歯プレート１１１と外歯プレート１１２とが、これに対向する他方の噛合チェーン１１０を構成する内歯プレート１１１と外歯プレート１１２とに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状、所謂、チャック状に多重かつ強固に噛み合うようになっており、被作動対象を含めた全荷重を支持しながら自立状態で進退作動する噛合チェーン１１０にチェーン幅方向の片側に偏荷重が負荷された場合であっても過負荷状態の噛合チェーン１１０のチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を確保して不慮のチェーン切断を回避するようになっている。
【００３１】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーン１１０と、相互に分岐した噛合チェーン１１０を案内して収納するチェーン収納用溝１２１およびこのチェーン収納用溝１２１に連接されて一対の噛合チェーン１１０を剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝１２２が設けられたチェーン案内プレート１２０と、このチェーン案内プレート１２０に形成されて噛合チェーン１１０の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝１２３に収容されているとともに一対の噛合チェーン１１０の一方に係合して一対の噛合チェーン１１０を進退自在に駆動する駆動用スプロケット１３０と、この駆動用スプロケット１３０に駆動力を供給する駆動源１４０とを基本的な装置構成として備え、駆動源１４０がチェーン案内プレート１２０の厚み方向に沿って仮想平面Ｓからずらした位置でチェーン案内プレート１２０に固定配置され、駆動源１４０の駆動軸１４１がチェーン案内プレート１２０に沿って配置されているとともに直交ギア１５０を介して駆動用スプロケット１３０に接続されていることにより、一対の噛合チェーン１１０のみでその剛直状態を維持すると同時に一対の噛合チェーン１１０の端部に固定接続された被作動対象を剛直方向に進退自在に作動させると同時に円滑なチェーン駆動を実現し、駆動用スプロケット１３０を駆動用スプロケット収納溝１２３に収容しないでユニット内に設置する場合に比べてチェーン案内プレート１２０および駆動用スプロケット１３０全体が占めるスペースを小さくしてユニットを小型化するともに、駆動源１４０の取り付け時に精度良く駆動源１４０を位置決めする手間の増大を回避し、駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿ってユニットの幅Ｗを狭めて一層小型化させることができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【００３２】
１００ ・・・ 噛合チェーン式進退作動ユニット
１１０ ・・・ 噛合チェーン
１１１ ・・・ フック状内歯プレート
１１２ ・・・ ブシュ
１１３ ・・・ 内リンクユニット
１１４ ・・・ フック状外歯プレート
１１５ ・・・ 連結ピン
１２０ ・・・ チェーン案内プレート
１３０ ・・・ 駆動用スプロケット
１３１ ・・・ 回転軸
１４０ ・・・ 駆動源
１４１ ・・・ 駆動軸
１４２ ・・・ 駆動モータ
１４３ ・・・ 減速機
１５０ ・・・ 直交ギア
Ｌ ・・・噛合チェーン式進退作動装置１００の長さ
Ｓ ・・・一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面
Ｗ ・・・噛合チェーン式進退作動装置１００の幅
【技術分野】
【０００１】
本発明は、引戸などの被作動対象を進退駆動させる進退作動ユニットであって、特に、噛合チェーンを進退動作の駆動媒体として採用した噛合チェーン式進退作動ユニットに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、進退作動装置として、一対の帯体からなる作動部を進退自在に駆動させて被作動物を作動させるもの（例えば、特許文献１および特許文献２参照。）や、規制部材を有する帯体を含むとともに剛性を有する柱状部材を進退駆動させて被作動物を作動させるもの（例えば、特許文献３参照。）がある。
また、噛合チェーンを駆動媒体として上下方向に被昇降物を搬送する噛合チェーン式昇降装置がある（例えば、特許文献４参照。）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開平１０−１２９１号公報（段落［００１３］、図２）
【特許文献２】特開平１０−１７５７９６号公報（段落［００３８］、図１４）
【特許文献３】特開平１０−７８０９５号公報（段落［００３８］、図５）
【特許文献４】特開２００９−１３９８号公報（特許請求の範囲、図１）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、特許文献１に開示された進退作動装置では、円形の繰出体に動力を供給する入力軸がこの繰出体に交差しているため、進退作動装置の厚み方向、すなわち繰出体の厚み方向に沿った装置サイズを小さくすることが困難であるという問題点があった。
また、特許文献２に開示された進退作動装置でも、特許文献１と同様に進退作動装置の厚み方向の装置サイズを小さくすることが困難であるという問題点があった。
また、特許文献３に開示された進退作動装置では、一対のチェーンの剛直状態を維持する規制部材が必要となるため、部品点数の増大を回避して装置を小型化することが困難になるという問題点があった。
加えて、特許文献３に開示された進退作動装置では、駆動媒体が噛合チェーンでなく、規制部材によって屈折が防止される帯体すなわちチェーンであるため、一対のチェーンだけでその剛直状態を維持して被作動物を作動させることが困難であるとともに剛直化した一対のチェーンに生じるがたつき、すなわち振動を回避して噛合チェーンの振動騒音の低減および円滑な噛合チェーンの走行を実現することが困難になるという問題点があった。
【０００５】
また、特許文献４に開示された噛合チェーン式昇降装置では、スプロケットを含む仮想平面方向に沿ってスプロケットから離れた領域に駆動モータが配置されているため、ベースプレート上の部品配置領域を有効利用するとともに装置サイズを小さくすることが困難であるという問題点があった。
加えて、特許文献４に開示された噛合チェーン式昇降装置では、ボールねじを含んでベースプレート上に固定配置された直動ユニットを介してスプロケットを駆動する場合、ボールネジ、このボールネジの一端に接続された駆動モータ、および減速機を含む駆動源の長さがこれら構成部品全体のサイズと略等しくなるため、駆動源のサイズを小さくして装置全体のサイズを小さくすることが困難であるとともにこの駆動源の設置スペースをベースプレート上に確保しなければならないというレイアウト上の厄介な問題点があった。
【０００６】
また、特許文献４に開示された噛合チェーン式昇降装置では、スプロケットを含む仮想平面方向に沿ってスプロケットから離れた領域に駆動モータなどの駆動源が配置されているため、駆動源およびこの駆動源によって駆動されるスプロケットの取り付け時に正確に駆動源などを位置決めする手間の増大を回避することが困難になるという問題点があった。
【０００７】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、ユニット内のスペースを有効利用してユニットのサイズを小型化すると同時に一対の噛合チェーンの剛直状態を維持しつつチェーン駆動時におけるチェーン駆動音の低減および円滑なチェーン駆動を実現するとともに駆動源の取り付け時における手間の増大が回避される噛合チェーン式進退作動ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１に係る本発明は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝および該チェーン収納用溝に連接されて一対の噛合チェーンを剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝が設けられたチェーン案内プレートと、該チェーン案内プレートに形成されて噛合チェーンの側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容されているとともに前記一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、該駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とを備えた噛合チェーン式進退作動ユニットであって、前記駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートが、前記一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられ、前記駆動源が、前記チェーン案内プレートの厚み方向に沿って前記仮想平面からずらした位置で前記チェーン案内プレートに固定配置され、前記駆動源の駆動軸が、前記チェーン案内プレートに沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【０００９】
請求項２に係る本発明は、請求項１に記載の構成に加えて、前記駆動用スプロケット収容溝が、前記一対の噛合チェーンの剛直位置に開口していることにより、前述した課題を解決したものである。
【００１０】
請求項３に係る本発明は、請求項１または請求項２に記載の構成に加えて、前記分岐方向に沿った駆動源のサイズが、前記分岐方向に沿ったチェーン案内プレートのサイズより小さいことにより、前述した課題を解決したものである。
【００１１】
請求項４に係る本発明は、請求項１乃至請求項３のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記駆動源が、前記駆動軸を駆動する駆動モータと、前記駆動軸の回転速度を減速する減速機とを備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【００１２】
請求項１に係る本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝および該チェーン収納用溝に連接されて一対の噛合チェーンを剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝が設けられたチェーン案内プレートと、このチェーン案内プレートに形成されて噛合チェーンの側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容されているとともに一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、この駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とを備えたことによって、一対の噛合チェーンのみでその剛直状態を維持すると同時に部品点数を回避して剛直方向および分岐方向に一対の噛合チェーンを案内し、一対の噛合チェーンの端部に固定接続された被作動対象を剛直方向に進退自在に作動させるとともに円滑なチェーン駆動を実現し、駆動用スプロケットを駆動用スプロケット収納溝に収容しないでユニット内に設置する場合に比べてチェーン案内プレートおよび駆動用スプロケット全体が占めるスペースを駆動用スプロケットの厚み方向に沿って小さくしてユニットを小型化することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
すなわち、本請求項１に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートが一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられていることにより、駆動用スプロケットの厚み方向に沿って相互にずれた位置で配置されることで生じる駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートの設置スペースの増大が回避されるとともにユニット内のスペースが有効利用されるため、駆動用スプロケットの厚み方向に沿ったユニットサイズの増大を回避してユニットをより一層小型化することができる。
さらに、本請求項１に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、駆動源がチェーン案内プレートの厚み方向に沿って仮想平面からずらした位置でチェーン案内プレートに固定配置されていることにより、駆動用スプロケットに駆動源を取り付ける取り付け時に駆動源および駆動用スプロケットの相対位置が正確に位置決めされるため、駆動源の取り付け時に精度良く駆動源を位置決めする手間の増大を回避することができる。
さらに、本請求項１に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、駆動源の駆動軸がチェーン案内プレートに沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることにより、駆動源の駆動軸が駆動用スプロケットに交差している場合に比べて駆動用スプロケットの厚み方向に沿って駆動軸の長さより近づけて駆動源がチェーン案内プレートに固定配置されるため、駆動用スプロケットの厚み方向に沿ってユニットをより一層薄く形成して小型化することができる。
【００１３】
そして、本請求項２に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、請求項１に記載の噛合チェーン式進退作動ユニットが奏する効果に加えて、駆動用スプロケット収容溝が一対の噛合チェーンの剛直位置に開口していることにより、噛合チェーンおよび駆動用スプロケット間のコーダルアクションに起因した上下動（脈動）、振動、騒音、速度変動の発生が回避されるため、チェーン駆動時における噛合チェーンの振動騒音をより一層低減するとともに安定したチェーン駆動を実現することができる。
【００１４】
そして、請求項３に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、請求項１または請求項２に記載の噛合チェーン式進退作動ユニットが奏する効果に加えて、分岐方向に沿った駆動源のサイズが分岐方向に沿ったチェーン案内プレートのサイズより小さいことにより、分岐方向に沿ってチェーン案内プレートのサイズより小さい領域内で駆動源の設置スペースが十分に確保されるため、ユニット内のスペースを有効利用してユニットをより一層小型化することができる。
【００１５】
そして、請求項４に係る噛合チェーン式進退作動ユニットによれば、請求項１ないし請求項３のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動ユニットが奏する効果に加えて、駆動源が駆動軸を駆動する駆動モータと駆動軸の回転速度を減速する減速機とを備えていることにより、駆動モータおよび駆動用スプロケット間に同期歯車を設置しなくても駆動用スプロケットが駆動されるため、部品点数」の増大を回避してユニットを一層小型化するとともにユニット組み立て時に駆動モータおよび駆動用スプロケットの回転調整を回避して噛合チェーンの円滑な走行を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの全体斜視図。
【図２】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの平面図。
【図３】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの正面図。
【図４】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの背面図。
【図５】図４に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図。
【図６】噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットは、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝およびこのチェーン収納用溝に連接されて一対の噛合チェーンを剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝が設けられたチェーン案内プレートとこのチェーン案内プレートに形成されて噛合チェーンの側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容されているとともに一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットとこの駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とを備え、駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートが一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられ、駆動源がチェーン案内プレートの厚み方向に沿って仮想平面からずらした位置でチェーン案内プレートに固定配置され、駆動源の駆動軸がチェーン案内プレートに沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続され、一対の噛合チェーンのみでその剛直状態を維持すると同時に一対の噛合チェーンの端部に固定接続された被作動対象を進退自在に作動させるとともに円滑なチェーン駆動を実現し、駆動用スプロケットを駆動用スプロケット収納溝に収容しないでユニット内に設置する場合に比べてチェーン案内プレートおよび駆動用スプロケット全体が占めるスペースを小さくしてユニットを小型化し、駆動用スプロケットの厚み方向に沿ったユニットサイズの増大を回避して装置をより一層小型化し、駆動源の取り付け時に精度良く駆動源を位置決めする手間の増大を回避し、駆動用スプロケットの厚み方向に沿ってユニットをより一層小型化するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【００１８】
そして、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットは、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても進退動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても進退動作に何ら支障はない。
また、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットは、一対の噛合チェーンの剛直方向が設置面に対して垂直となるように設置されて垂直方向に引戸などの被作動対象を進退自在に作動させてもよいし、一対の噛合チェーンの剛直方向が設置面に対して水平となるように設置されて水平方向に引戸などの被作動対象を進退自在に作動させてもよい。
そして、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットによって引戸などの被作動対象を作動させる場合には、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットおよび平板状の引戸を含む開閉装置全体の厚みおよび長さを小さくして開閉装置全体のサイズを小型化してもよい。
【００１９】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットで用いられる一対の噛合チェーンは、例えば、チェーン幅方向に１列の単列であるもの、チェーン幅方向に２列以上の複列であるものなど何れであっても構わないが、チェーン幅方向に２列以上の複列であるものを採用する場合には、一対の噛合チェーンの一方を構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートが、これに対向する他方の噛合チェーンを構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状に多重かつ強固に噛み合うため、噛合チェーンのチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を実現することができるので、より好ましい。
【００２０】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動ユニットで用いられる一対の噛合チェーンは、ローラを有していないもの、すなわち、ブシュのみを有するもの、ローラを有するものなど何れであっても構わないが、ブシュのみを有するものを採用する場合には、チェーン部品点数が低減して、チェーン重量の軽量化を図ることができる。
【実施例】
【００２１】
以下、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニット１００を図面に基づいて説明する。
ここで、図１は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの全体斜視図であり、図２は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの平面図であり、図３は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの正面図であり、図４は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニットの背面図であり、図５は、図４に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図であり、図６は、噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図である。
【００２２】
まず、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動ユニット１００は、図１に示すように、一対の噛合チェーン１１０の端部に引戸などの被作動対象を固定接続して一対の噛合チェーン１１０の剛直方向に被作動対象を進退作動させるために設置されるものである。
【００２３】
そして、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００は、図１乃至図５に示すように、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーン１１０と、相互に分岐した噛合チェーン１１０を案内して収納するチェーン収納用溝１２１およびこのチェーン収納用溝１２１に連接されて一対の噛合チェーン１１０を剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝１２２が設けられたチェーン案内プレート１２０と、このチェーン案内プレート１２０に形成されて噛合チェーン１１０の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝１２３に収容されているとともに一対の噛合チェーン１１０の一方に係合して一対の噛合チェーン１１０を進退自在に駆動する駆動用スプロケット１３０と、この駆動用スプロケット１３０に駆動力を供給する駆動源１４０とを基本的な装置構成として備え、一対の噛合チェーン１１０のみでその剛直状態を維持すると同時に部品点数を回避して剛直方向および分岐方向に一対の噛合チェーンを案内し、一対の噛合チェーン１１０の端部に固定接続された引戸などの被作動対象を進退自在に作動させるとともに円滑なチェーン駆動を実現し、駆動用スプロケット１３０を駆動用スプロケット収納溝１２３に収容しないでユニット内に設置する場合に比べてチェーン案内プレート１２０および駆動用スプロケット１３０全体が占めるスペースを小さくしてユニットを小型化するようになっている。
さらに、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図２に示すように、駆動用スプロケット１３０およびチェーン案内プレート１２０が一対の噛合チェーン１１０の剛直方向および分岐方向を含む仮想平面Ｓ内に設けられていることにより、駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿って相互にずれた位置で配置されることで生じるチェーン案内プレート１２０および駆動用スプロケット１３０の設置スペースの増大が回避されるとともにユニット内のスペースが有効利用されるため、駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿ったユニットサイズの増大を回避してユニットをより一層小型化することができる。
【００２４】
さらに、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図２に示すように、駆動源１４０がチェーン案内プレート１２０の厚み方向に沿って仮想平面Ｓからずらした位置でチェーン案内プレート１２０に固定配置されていることにより、駆動用スプロケット１３０に直交ギア１５０を介して駆動源１４０を取り付ける取り付け時に駆動源１４０および駆動用スプロケット１３０の相対位置が正確に位置決めされるため、噛合チェーン式進退作動ユニット１００が、駆動源１４０の取り付け時に精度良く駆動源１４０を位置決めする手間の増大を回避するようになっている。
【００２５】
さらに、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、駆動源１４０の駆動軸１４１がチェーン案内プレート１２０に沿って配置されているとともに直交ギア１５０を介して駆動用スプロケット１３０に接続されていることにより、駆動源１４０の駆動軸１４１が駆動用スプロケット１３０に交差している場合に比べて駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿って駆動軸１４１の長さより近づけて駆動源１４０がチェーン案内プレート１２０に固定配置されるため、駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿って噛合チェーン式進退作動ユニット１００の幅Ｗが狭められて一層薄く形成されて小型化されるようになっている。
【００２６】
さらに、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図５に示すように、駆動用スプロケット収容溝１２３が一対の噛合チェーン１１０の剛直位置に開口していることにより、噛合チェーン１１０および駆動用スプロケット１３０間のコーダルアクションに起因した上下動（脈動）、振動、騒音、速度変動の発生が回避されるため、噛合チェーン式進退作動ユニット１００が、チェーン駆動時における噛合チェーン１１０の振動騒音をより一層低減するとともに安定したチェーン駆動を実現するようになっている。
【００２７】
また、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図２に示すように、一対の噛合チェーン１０の分岐方向に沿った駆動源１４０のサイズが分岐方向に沿ったチェーン案内プレート１２０のサイズ、すなわち長さＬより小さいことにより、分岐方向に沿ってチェーン案内プレート１２０のサイズより小さい領域内で駆動源１４０の設置スペースが十分に確保されるため、噛合チェーン式進退作動ユニット１００が、その内部のスペースを有効利用してより一層小型化されるようになっている。
【００２８】
また、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００では、図２ないし図５に示すように、駆動源１４０が、駆動軸１４１を駆動する駆動モータ１４２と駆動軸１４１の回転速度を減速する減速機１４３とを備えていることにより、駆動モータ１４２および駆動用スプロケット１３０間に同期歯車を設置しなくても回転軸１３１を介して駆動用スプロケット１３０が駆動されるため、噛合チェーン式進退作動ユニット１００が、部品点数の増大を回避してユニットを小型化するとともにユニット組み立て時に駆動モータ１４３および駆動用スプロケット１３０の回転調整を回避して噛合チェーン１１０の円滑な走行を実現するようになっている。
【００２９】
また、本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００で用いた一対の噛合チェーン１１０は、図６に示すように、所謂、チャックチェーンと称するものであって、フック部を有する内歯プレート１１１と、この内歯プレート１１１に対してチェーン長手方向に半ピッチ分ずらして重なり合うとともにフック部を有する外歯プレート１１２と、内歯プレート１１１同士をチェーン幅方向に連結固定するブシュ１１３と、このブシュ１１３に外嵌されるローラ１１４と、外歯プレート１１２同士をチェーン幅方向に連結固定する連結ピン１１５とを備えており、前述したチェーン案内プレート１２０に沿って分岐方向から剛直方向へ偏向しながら相互に噛み合わせて一体に自立状態で進退動作するとともに剛直方向から分岐方向へ偏向しながら相互に噛み外れて分岐するように配置されている。
【００３０】
そして、一対の噛合チェーン１１０の一方を構成する内歯プレート１１１と外歯プレート１１２とが、これに対向する他方の噛合チェーン１１０を構成する内歯プレート１１１と外歯プレート１１２とに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状、所謂、チャック状に多重かつ強固に噛み合うようになっており、被作動対象を含めた全荷重を支持しながら自立状態で進退作動する噛合チェーン１１０にチェーン幅方向の片側に偏荷重が負荷された場合であっても過負荷状態の噛合チェーン１１０のチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を確保して不慮のチェーン切断を回避するようになっている。
【００３１】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式進退作動ユニット１００は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーン１１０と、相互に分岐した噛合チェーン１１０を案内して収納するチェーン収納用溝１２１およびこのチェーン収納用溝１２１に連接されて一対の噛合チェーン１１０を剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝１２２が設けられたチェーン案内プレート１２０と、このチェーン案内プレート１２０に形成されて噛合チェーン１１０の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝１２３に収容されているとともに一対の噛合チェーン１１０の一方に係合して一対の噛合チェーン１１０を進退自在に駆動する駆動用スプロケット１３０と、この駆動用スプロケット１３０に駆動力を供給する駆動源１４０とを基本的な装置構成として備え、駆動源１４０がチェーン案内プレート１２０の厚み方向に沿って仮想平面Ｓからずらした位置でチェーン案内プレート１２０に固定配置され、駆動源１４０の駆動軸１４１がチェーン案内プレート１２０に沿って配置されているとともに直交ギア１５０を介して駆動用スプロケット１３０に接続されていることにより、一対の噛合チェーン１１０のみでその剛直状態を維持すると同時に一対の噛合チェーン１１０の端部に固定接続された被作動対象を剛直方向に進退自在に作動させると同時に円滑なチェーン駆動を実現し、駆動用スプロケット１３０を駆動用スプロケット収納溝１２３に収容しないでユニット内に設置する場合に比べてチェーン案内プレート１２０および駆動用スプロケット１３０全体が占めるスペースを小さくしてユニットを小型化するともに、駆動源１４０の取り付け時に精度良く駆動源１４０を位置決めする手間の増大を回避し、駆動用スプロケット１３０の厚み方向に沿ってユニットの幅Ｗを狭めて一層小型化させることができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【００３２】
１００ ・・・ 噛合チェーン式進退作動ユニット
１１０ ・・・ 噛合チェーン
１１１ ・・・ フック状内歯プレート
１１２ ・・・ ブシュ
１１３ ・・・ 内リンクユニット
１１４ ・・・ フック状外歯プレート
１１５ ・・・ 連結ピン
１２０ ・・・ チェーン案内プレート
１３０ ・・・ 駆動用スプロケット
１３１ ・・・ 回転軸
１４０ ・・・ 駆動源
１４１ ・・・ 駆動軸
１４２ ・・・ 駆動モータ
１４３ ・・・ 減速機
１５０ ・・・ 直交ギア
Ｌ ・・・噛合チェーン式進退作動装置１００の長さ
Ｓ ・・・一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面
Ｗ ・・・噛合チェーン式進退作動装置１００の幅
【特許請求の範囲】
【請求項１】
相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝および該チェーン収納用溝に連接されて一対の噛合チェーンを剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝が設けられたチェーン案内プレートと、該チェーン案内プレートに形成されて噛合チェーンの側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容されているとともに前記一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、該駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とを備えた噛合チェーン式進退作動ユニットであって、
前記駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートが、前記一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられ、
前記駆動源が、前記チェーン案内プレートの厚み方向に沿って前記仮想平面からずらした位置で前記チェーン案内プレートに固定配置され、
前記駆動源の駆動軸が、前記チェーン案内プレートに沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることを特徴とする噛合チェーン式進退作動ユニット。
【請求項２】
前記駆動用スプロケット収容溝が、前記一対の噛合チェーンの剛直位置に開口していることを特徴とする請求項１に記載の噛合チェーン式進退作動ユニット。
【請求項３】
前記分岐方向に沿った駆動源のサイズが、前記分岐方向に沿ったチェーン案内プレートのサイズより小さいことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の噛合チェーン式進退作動ユニット。
【請求項４】
前記駆動源が、前記駆動軸を駆動する駆動モータと、前記駆動軸の回転速度を減速する減速機とを備えていることを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動ユニット。
【請求項１】
相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝および該チェーン収納用溝に連接されて一対の噛合チェーンを剛直位置に誘導するチェーン誘導用溝が設けられたチェーン案内プレートと、該チェーン案内プレートに形成されて噛合チェーンの側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容されているとともに前記一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、該駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とを備えた噛合チェーン式進退作動ユニットであって、
前記駆動用スプロケットおよびチェーン案内プレートが、前記一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられ、
前記駆動源が、前記チェーン案内プレートの厚み方向に沿って前記仮想平面からずらした位置で前記チェーン案内プレートに固定配置され、
前記駆動源の駆動軸が、前記チェーン案内プレートに沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることを特徴とする噛合チェーン式進退作動ユニット。
【請求項２】
前記駆動用スプロケット収容溝が、前記一対の噛合チェーンの剛直位置に開口していることを特徴とする請求項１に記載の噛合チェーン式進退作動ユニット。
【請求項３】
前記分岐方向に沿った駆動源のサイズが、前記分岐方向に沿ったチェーン案内プレートのサイズより小さいことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の噛合チェーン式進退作動ユニット。
【請求項４】
前記駆動源が、前記駆動軸を駆動する駆動モータと、前記駆動軸の回転速度を減速する減速機とを備えていることを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動ユニット。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１１−２４１９００（Ｐ２０１１−２４１９００Ａ）
【公開日】平成２３年１２月１日（２０１１．１２．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１１４５７１（Ｐ２０１０−１１４５７１）
【出願日】平成２２年５月１８日（２０１０．５．１８）
【出願人】（０００００３３５５）株式会社椿本チエイン (861)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１２月１日（２０１１．１２．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年５月１８日（２０１０．５．１８）
【出願人】（０００００３３５５）株式会社椿本チエイン (861)
【Ｆターム（参考）】
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