説明

器官表面画像の表示装置及び方法

【課題】 断層撮影によって得られた形状データから、器官表面の画像を生成する。
【解決手段】被験者データ記憶部13及び脳形状データ記憶部11を有する。脳表データ生成部21は、脳表面上の点を基点とし、3Dの脳形状を示す脳形状データに基づいて基点から脳内部へ向かうベクトルを生成し、生成したベクトルの方向の被験者データの値に基づいて、基点に割り当てる値を定めて、脳表に被験者データの値を有する3D脳表データを生成する。2D画像生成部23は、3D脳表データを2次元表示した2D画像を生成し、表示制御部27が2D画像を表示装置3へ表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器官の断層画像データから器官表面の画像を生成して表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳や心臓の表面の画像を2次元的に表示する技術がある。例えば、非特許文献1には、脳表の3次元データから2次元平面へ投影した脳表画像を表示することが記載されている。
【非特許文献1】位置合わせされた複数医療用画像を臨床応用するための画像処理、外山比南子、小林昭央、上村幸司、MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.16、No3、May、1988、p196−200
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記非特許文献1には、脳表の3次元データの生成方法は記載されていない。
【0004】
一般に、脳や心臓などの体内の器官は、CTやMRIなどの断層撮影によりその形状に関するデータを得ることは比較的容易である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、断層撮影によって得られた形状データから、器官表面の画像を生成することである。
【0006】
本発明の別の目的は、断層撮影によって得られた形状データから、3次元の器官表面データを生成して、この3次元の器官表面データから2次元の器官表面画像を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施態様に従う器官表面画像の表示装置は、被験者の体内の器官を断層撮影して得られた被験者データを記憶した第1の記憶部と、前記器官の3次元形状を示す3次元形状データを記憶した第2の記憶部と、前記3次元形状データが示す前記器官の3次元形状の表面上の点を基点とし、前記3次元形状データに基づいて前記基点から前記器官の内部へ向かうベクトルを生成し、前記生成したベクトルの方向の前記被験者データの値に基づいて、前記基点に割り当てる値を定めて、前記器官の3次元形状の表面に被験者データの値を有する第1の3次元器官表面データを生成する3次元器官表面データ生成手段と、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第1の3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の被験者データを2次元表示した第1の2次元器官画像を生成する2次元器官画像生成手段と、前記2次元器官画像生成手段により生成された第1の2次元器官画像を表示装置へ表示させる表示制御手段と、を備える。
【0008】
好適な実施形態では、前記3次元器官表面データ生成手段は、前記基点を中心とした所定形状の領域を定め、前記所定形状の領域内の前記器官の3次元形状データに基づいて、前記ベクトルの方向を定めてもよい。
【0009】
好適な実施形態では、前記3次元器官表面データ生成手段は、前記所定形状の領域内の前記器官の3次元形状データにおける器官領域の分布に基づいて、前記ベクトルの方向を定めてもよい。
【0010】
好適な実施形態では、前記3次元器官表面データ生成手段は、前記基点から前記ベクトルの方向へ、所定距離だけ離れた点の前記被験者データの値を前記基点に割り当ててもよい。
【0011】
好適な実施形態では、前記3次元器官表面データ生成手段は、前記ベクトルの方向へ前記基点から所定距離までの点の前記被験者データの値の平均値または中央値を前記基点に割り当ててもよい。
【0012】
好適な実施形態では、前記器官内に設定されたVOI(Volume of Interest)を示すVOIデータを記憶した第3の記憶部をさらに備え、前記3次元器官表面データ生成手段は、前記VOIデータに基づいて、前記器官の3次元形状の表面上に前記VOIを割り当てた、第2の3次元器官表面データを生成し、前記2次元画像生成手段は、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第2の3次元器官表面データに基づいて、前記器官表面に割り当てられたVOIを2次元表示した第2の2次元器官画像を生成し、前記表示制御手段は、前記第1の2次元器官画像と前記第2の2次元器官画像とを重ねて表示させるようにしてもよい。
【0013】
好適な実施形態では、前記器官の血流の増加または減少を示すデータに基づいて算出されたZ値データを記憶した第4の記憶部をさらに備え、
前記3次元器官表面データ生成手段は、前記Z値データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に割り当てるZ値を定めて、前記器官の3次元形状の表面にZ値データの値を有する第3の3次元器官表面データを生成し、前記2次元器官画像生成手段は、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第3の3次元器官表面データに基づいて、前記器官表面のZ値分布を2次元表示した第3の2次元器官画像を生成し、前記表示制御手段は、前記第1の2次元器官画像と前記第3の2次元器官画像とを重ねて表示させるようにしてもよい。
【0014】
別の好適な実施形態では、前記器官内に設定されたVOI(Volume of Interest)を示すVOIデータを記憶した第3の記憶部と、前記器官の血流の増加または減少を示すデータに基づいて算出されたZ値データを記憶した第4の記憶部と、をさらに備え、前記3次元器官表面データ生成手段は、前記VOIデータに基づいて、前記器官の3次元形状の表面上に前記VOIを割り当てた、第2の3次元器官表面データと、前記Z値データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に割り当てるZ値を定めて、前記器官の3次元形状の表面にZ値データの値を有する第3の3次元器官表面データとを生成し、前記2次元画像生成手段は、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第2の3次元器官表面データに基づいて、前記器官表面に割り当てられたVOIを2次元表示した第2の2次元器官画像と、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第3の3次元器官表面データに基づいて、前記器官表面のZ値分布を2次元表示した第3の2次元器官画像とを生成し、前記表示制御手段は、前記第1の2次元器官画像と、前記第2の2次元器官画像と、前記第3の2次元器官画像とを重ねて表示させてもよい。
【0015】
好適な実施形態では、前記器官は、脳または心臓であってもよい。
【0016】
好適な実施形態では、前記被験者データは、MRI(Magnetic Resonace Imaging)データ、CT(Computed Tomography)データ、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)データ、及びPET(Positron Computed Tomography)データのうちのいずれかであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態であって、本発明を脳表表示に適用した脳表表示装置について、図面を参照して説明する。以下の実施形態では、脳表表示について説明するが、本発明は、脳以外の器官の表面の表示を行う装置に対しても適用可能である。
【0018】
図1は、本実施形態に係る脳表表示装置1の構成図である。
【0019】
脳表表示装置1は、例えばプロセッサ及びメモリを備えた汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する脳表表示装置1内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0020】
脳表表示装置1は、脳形状データ記憶部11と、被験者データ記憶部13と、VOIデータ記憶部15と、Z値データ記憶部17と、3D(3次元)脳表データ記憶部19と、脳表データ生成部21と、2D(2次元)画像生成部23と、脳断面画像生成部25と、表示制御部27と、脳形状データ生成部31とを有する。
【0021】
被験者データ記憶部13は、被験者の身体の一部、本実施形態では脳を断層撮影して得られた被験者データ130を記憶する。被験者データ130は、例えば、MRI撮影装置で被験者の脳を断層撮影したMRIデータ、あるいは、CT撮影装置で被験者の脳を断層撮影したCTデータのなどの脳形状を示す画像データでよい。さらに、被験者データは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)撮影装置で撮影して得られたSPECTデータ、あるいはPET(Positron Computed Tomography)撮影装置で撮影して得られたPETデータでもよい。被験者データ記憶部13には、同じデータ構造を有する複数の被験者の被験者データ130を記憶していても良い。被験者データ130は、予め標準脳に正規化されていてもよいし、被験者の個人脳のデータそのままでも良い。被験者データ130はボクセル形式のデータであって、データ構造の一例を図2Aに示す。
【0022】
同図に示すように、被験者データ130は、例えば、被験者の頭の左右方向をX軸、前後方向をY軸、上下方向をZ軸としたとき、Z軸方向にN枚のX−Y断面の画像データからなる。各画像データに含まれるボクセル値は、各画像の画素値と対応する。
【0023】
脳形状データ生成部31は、被験者データ記憶部13に記憶されている被験者データ130に基づいて、脳の3D形状を示す脳形状データを生成し、脳形状データ記憶部11に格納する。脳形状データ生成部31は、個人脳の被験者データ130に対しては、それぞれの被験者データ130について脳形状データを生成する。脳形状データ生成部31は、標準脳に正規化された被験者データ130に対しては、いずれか一つの被験者データ130について脳形状データを生成する。
【0024】
脳形状データ生成部31は、例えば、図3に示すフローチャートに従って脳形状データを生成する。図4は、図3のフローチャートに従って脳形状データを生成する過程を示す。
【0025】
まず、脳形状データ生成部31は、被験者データ記憶部13から被験者データ130を読み出して(S1)、被験者データ130の各ボクセル値(図4(a))に対して、所定の画像処理を施して灰白質領域を示すボクセル(図4(b))を抽出する(S2)。ここでは、たとえば、SPM(Statistical Parametric
Mapping)で使用可能な"Gaussian
mixture model"と"prior probability maps"を利用したsegmentation法を用いることができる。
【0026】
脳形状データ生成部31は、ステップS2で抽出した灰白質領域のデータを平滑化する(図4(c))(S3)。
【0027】
脳形状データ生成部31は、ステップS3で平滑化されたボクセルデータを、所定の閾値(例えば最大値の20%)で白黒に2値化して、白領域と黒領域の2値化画像(図4(d))を生成する(S4)。
【0028】
脳形状データ生成部31は、この2値化画像の内部で、白領域に囲まれている黒領域を白領域に替えて、脳形状データ(図4(d))を生成する(S5)。
【0029】
そして、脳形状データ生成部31は、脳形状データ110を脳形状データ記憶部11に格納する(S6)。
【0030】
脳形状データ記憶部11は、脳の3D形状を示す脳形状データ110を記憶する。脳形状データ記憶部11は、例えば、脳形状データ生成部31が生成した脳形状データ110を記憶する。
【0031】
脳形状データ110は、被験者データ130の脳実質(白質及び灰白質部分)を示す脳形状を示すデータである。脳形状データ110は、被験者データ130と同じデータ構造を有している。脳形状データ110のデータ構造の一例を図2Bに示す。
【0032】
同図に示すように、脳形状データ110は、脳領域(脳実質に相当する領域)のボクセルに「1」、それ以外のボクセルには「0」がセットされている。ここで、「0」がセットされているボクセルと接している「1」がセットされているボクセルが、脳形状データ110における脳の表面を表している。
【0033】
次に、VOIデータ記憶部15は、予め定められた関心領域を示すVOIデータ150が記憶されている。VOIデータ150は、被験者データ130と同じデータ構造を有している。つまり、VOIデータ150のデータ構造は、図2Bの脳形状データ110と同様に、「0」と「1」のボクセル値を有する。すなわち、VOIデータ150は、VOI領域のボクセルには「1」、それ以外のボクセルには「0」がセットされている。互いに異なる複数のVOIが設定されているときは、VOIデータ記憶部15に、VOI別に生成されたVOIデータ150を格納するようにしてもよい。あるいは、一つのVOIデータ150に、複数のVOIに関する情報を各VOIが識別可能に格納しても良い。たとえば、第1のVOIが設定されているボクセルには「1」、第2のVOIが設定されているボクセルには「2」、・・・というように設定しても良い。
【0034】
なお、VOIデータ150が、標準脳に対して定められたVOIのデータであれば、すべての標準脳の被験者データ130に共通で使用することができる。また、VOIそのものは、医師等がマニュアルで設定しても良いし、画像から特定の領域を抽出することによって自動的に設定したものであっても良い。また、複数のVOIは、それらの一部の領域が互いに重複するように設定することもできる。
【0035】
Z値データ記憶部17は、被験者の脳の血流の増減を示すデータ、たとえばSPECTデータ、あるいはPETデータに基づいて算出されたZ値データ170を記憶する。Z値データ170は、被験者データ130と同じデータ構造を有していて、各ボクセルにはそれぞれのZ値がセットされている。Z値データ170は、標準脳に正規化されたSPECTデータ等に基づいて算出されたもので良いし、個人脳のSPECTデータ等に基づいて算出されたもので良い。
【0036】
3D脳表データ記憶部19は、脳表データ生成部21が生成した被験者データ130に基づく3D脳表データ(被験者脳表データ)191、VOIデータ150に基づくVOIの3D脳表データ(VOI脳表データ)193、及びZ値データ170に基づくZ値の3D脳表データ(Z値脳表データ)195が格納される。
【0037】
脳表データ生成部21は、脳形状データ110及び被験者データ130に基づいて、3Dの被験者脳表データ191を生成する。被験者脳表データ191は、脳形状データ110により定まる3Dの脳表に、被験者データ130に基づく値を割り当てたものである。つまり、被験者脳表データ191は、脳の3次元的な形状の表面に、断層画像のボクセル値を割り当てたものである。
【0038】
また、脳表データ生成部21は、脳形状データ110が示す3D脳表に脳内のVOIを割り当てたVOI脳表データ193を生成する。
【0039】
さらに、脳表データ生成部21は、脳形状データ110が示す3D脳表にZ値データ170に基づいてZ値を割り当てた3DのZ値脳表データ195を生成する。
【0040】
脳表データ生成部21によって生成された被験者脳表データ191、VOI脳表データ193、及びZ値脳表データ195が3D脳表データ記憶部19に格納される。
【0041】
本実施形態では、脳表データ生成部21は、脳表の形状に応じたベクトルを生成するベクトル生成部211と、ベクトル生成部211で生成したベクトルを用いて脳模型の表面に値を割り当てる値決定部213とを有する。
【0042】
ベクトル生成部211は、脳形状データ110により定まる脳表上の点(ボクセル)を基点として、脳形状データ110に基づいてその基点から脳模型の内部へ向かうベクトルを生成する。例えば、このベクトルは基点における法線を示すベクトルでも良いし、所定の基準点(たとえば、脳形状データ110における脳の重心)へ向かうベクトルでも良い。ベクトルの基点となる脳表上の点は、脳形状データ110において「0」がセットされたボクセルと接する「1」がセットされたボクセルである。ベクトル生成部211は、このようにして定まるすべての基点に対して、図5を用いて以下に説明するような処理を行ってベクトルの方向を定めてもよい。
【0043】
図5は、ある脳表面近傍の脳形状データ110の分布を示す。同図において、ある脳表上の点を基点Oとして、その基点OにおけるベクトルVの算出の様子を示す図である。
【0044】
同図は、脳形状データ110におけるZ=N−1,N,N+1の3つのX−Y平面の一部を示す。3つのX−Y平面内の各ボクセル111(図中、符号は一カ所のみ示す)には、脳形状データ110の値(「0」または「1」)がセットされている。ここでは、Z=NのX−Y平面上のある基点Oを中心とする相対座標で考える。
【0045】
まず、この基点Oを中心とした所定形状の領域の参照空間Rを定める。ここでは、参照空間Rは3×3×3の立方体形状とするが、これ以外の任意の形状でよい。ベクトル生成部211は、この参照空間R内の脳形状データ110が示す脳領域の形状に基づいてベクトルを決定する。たとえば、ベクトル生成部211は、参照空間R内の27ボクセルのうち、脳領域(つまり脳表面及び脳の内部)を構成する点(ボクセル)の分布に従ってベクトルの方向を定める。つまり、脳形状データ110の値が「1」(脳領域)であるボクセルと、値が「0」(脳領域外)であるボクセルの分布によって、ベクトルの方向を定める。例えば、基点Oを中心の相対座標で考えると、値が「1」のボクセルの座標をそれぞれX,Y,Zで加算して、ベクトルの方向を定める。図5の例では、値が「1」のボクセルの相対座標は、Z=N−1の平面では(−1,−1,−1)、(−1,0,−1)、(−1,1,−1)の3点、Z=Nの平面では(−1,−1,0)、(−1,0,0)、(−1,1,0)、(0,−1,0)、(0,0,0)の5点、Z=N+1の平面では(−1,−1,1)、(−1,0,1)、(−1,1,1)、(0,−1,1)、(0,0,1)、(0,1,1)、(1,−1,1)、(1,0,1)、(1,1,1)の9点となる。その結果、これらの座標の合計により求まるベクトルは、V=(−6,−1,6)となる。このベクトルを単位ベクトル化しても良いし、所定の大きさに揃えても良い。
【0046】
値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルが通過する一以上のボクセル、換言すると、そのベクトルの方向に位置する一以上のボクセルの値に基づいて、基点に割り当てる値を決定する。
【0047】
例えば、値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルの方向へ、所定距離だけ離れた点のボクセルの値を基点に割り当ててもよい。つまり、値決定部213は、そのベクトルの長さを所定値に定めて、そのベクトルの終点から最も近いボクセルの値を、ベクトルの基点の値としても良い。このとき、ベクトルの長さは、脳の部位によって異なっても良い。たとえば、頭頂部、側頭部、前頭部、後頭部、基底部などで、それぞれ長さを変えても良い。
【0048】
また、値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルの長さを所定値に定めて、そのベクトルが通過するボクセル(あるいは、通過する領域の近傍のボクセル)の値の平均値、中央値、最大値、2番目に大きな値などを基点に割り当ててもよい。
【0049】
値決定部213は、被験者データ130、VOIデータ150あるいはZ値データ170データのそれぞれに対して、上記のいずれかの割り当てる手法を用いて、被験者脳表データ191、VOI脳表データ193及びZ値脳表データ195を生成しても良い。例えば、被験者脳表データ191を生成する際は、基点から所定距離だけ離れた点の被験者データ130のボクセルの値を基点に割り当てるようにしてもよい。また、Z値脳表データ195を生成する際は、所定の長さに定めたベクトルが通過するボクセルのZ値データ170の値の平均値あるいは中央値を基点に割り当ててもよい。VOI脳表データ193を生成する際は、ベクトルの方向に存在するVOIのうち、基点から最も近いVOIを割り当てても良い。
【0050】
図6は、VOI脳表データ193生成時のVOI割り当て処理の説明図である。たとえば、同図に示すように、ベクトル生成部211が生成した基点O1から出るベクトルV1の方向にはVOI−AとVOI−Bとが存在するが、最も手前にあるVOI−Aが基点O1に割り当てられる。同様に、基点O2には、ベクトル生成部211が生成したベクトルV2の方向の最も手前にあるVOI−Bが割り当てられる。
【0051】
図1に戻ると、2D画像生成部23は、3D脳表データ記憶部19に格納されている3種類の3D脳表データ191,193,195に基づいて、それぞれの2次元の脳表画像を生成する。例えば、2D画像生成部23は、被験者脳表データ191を2次元平面へ投影した被験者画像を生成し、VOI脳表データ193に基づく脳表でのVOIの分布を2次元平面に示したVOI分布画像を生成し、Z値脳表データ195に基づく脳表でのZ値の分布を2次元平面に示したZ値分布画像を生成する。2D画像生成部23は、3種類の3D脳表データ191,193,195のそれぞれに対して、3D脳表の6面図(正面図、背面図、左右側面図、平面図、底面図)を生成する。
【0052】
脳断面画像生成部25は、脳形状データ110、被験者データ130,VOIデータ150及びZ値データ170に基づいて、脳の断面の被験者画像、VOI分布画像及びZ値分布画像を生成する。例えば、脳断面画像生成部25は、以下のような手順で脳の断面を定め、その断面図に相当する画像を生成する。すなわち、脳断面画像生成部25は、脳形状データ110が示す脳形状を任意の面で切った断面を定める。そして、脳断面画像生成部25は、脳形状データ110でこの断面における脳領域を特定し、脳領域内のすべての点において、断面に対する法線ベクトルを定める。ここで、脳断面画像生成部25は、被験者データ130に対しては、基点からその法線ベクトルの方向へ所定距離の位置にあるボクセルの被験者データ130の値を、各基点に割り当てて、断面の被験者画像を生成する。また、脳断面画像生成部25は、VOIデータ150に対しては、法線ベクトルの方向に存在するVOIのうち、各基点から最も近いVOIをそれぞれの基点に割り当てる。さらに、脳断面画像生成部25は、Z値データ170に対しては、法線ベクトルが通過するボクセルのZ値データ170の値の平均値あるいは中央値を、各基点に割り当てる。
【0053】
本実施形態では、脳断面画像生成部25は、脳の中心を左右に分割した断面について、被験者画像、VOI分布画像及びZ値分布画像をそれぞれ生成する。
【0054】
表示制御部27は、2D画像生成部23及び脳断面画像生成部25が生成した2次元の画像を、表示装置3に表示させるための制御を行う。図7及び図8は、表示制御部27が表示装置3に表示させる画像の一例を示す。
【0055】
図7(a)に示すように、被験者画像は、脳表に割り当てられた被験者データ130の値に応じた白黒画像で表示される。
【0056】
図7(b)は、被験者画像にVOI画像を重ねて表示した表示例を示す。VOI画像でのVOIの表示は、VOIごとに異なる色を用いるなど、VOIが識別できるようにVOIごとに表示態様を替えても良い。また、VOI内を塗りつぶしても良いし、VOIの輪郭だけ表示しても良い。
【0057】
図8(a)は、被験者画像に同一被験者のZ値画像を重ねて表示した表示例を示す。Z値画像は、同図に示すように、Z値の値に応じた表示態様(例えば、値に応じて色を替えるなど)で表示しても良い。
【0058】
図8(b)は、被験者画像にVOI画像及び同一被験者のZ値画像を重ねて表示した表示例である。
【0059】
この他に、異なる被験者の被験者画像を重ねたり、異なる被験者のZ値画像を重ねたりして、被験者間で比較しても良い。
【0060】
次に、上記のような構成を備えた脳表表示装置1の処理手順について、図9〜図14を用いて説明する。
【0061】
まず、脳表表示装置1の全体処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0062】
脳形状データ生成部31が被験者データ記憶部13の被験者データに基づいて、脳形状データを生成して、脳形状データ記憶部11に格納する(S11)。標準脳に正規化された被験者データ130、VOIデータ150及びZ値データ170を用いるときは、標準脳用の脳形状データ110が既に生成されていればステップS11を省略しても良い。
【0063】
脳表データ生成部21は、3種類の3D脳表データ191,193,195を生成して、3D脳表データ記憶部19に格納する(S13)。
【0064】
2D画像生成部23は、3D脳表データ記憶部19に格納されている3D脳表データ191,193,195から、3D脳表を2次元に投影したそれぞれの2次元画像を生成する(S15)。
【0065】
脳断面画像生成部25は、被験者データ130、VOIデータ150及びZ値データ170から、脳を中央で左右に分割したそれぞれの断面画像を生成する(S17)。
【0066】
そして、表示制御部27が、ステップS15及びS17で生成した断面画像を表示装置3に表示させる(S19)。
【0067】
なお、図9の例では、3D脳表データ及び2D画像を生成した後に脳断面画像を生成しているが、脳断面画像を先に生成しても良い。
【0068】
次に、ステップS13の3D脳表データ生成処理について、図10のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0069】
脳表データ生成部21が、脳形状データ記憶部11から脳形状データ110を読み込む(S21)。さらに、脳表データ生成部21は、被験者データ記憶部13から被験者データ130を読み込む(S23)。そして、脳表データ生成部21は、脳形状データ110及び被験者データ130から、被験者脳表データ191を生成する(S25)。
【0070】
次に、脳表データ生成部21は、VOIデータ記憶部15からVOIデータ150を読み込む(S27)。そして、脳表データ生成部21は、脳形状データ110及びVOIデータ150から、VOI脳表データ193を生成する(S29)。
【0071】
さらに、脳表データ生成部21は、Z値データ記憶部17からZ値データ170を読み込む(S31)。そして、脳表データ生成部21は、脳形状データ110及びZ値データ170から、Z値脳表データ195を生成する(S33)。
【0072】
なお、図10の例では、被験者脳表データ、VOI脳表データ、Z値脳表データの順に生成しているが、この順序は自由に入れ替え可能である。
【0073】
ここで、ステップS25,S29及びS33についてさらに詳細に説明する。
【0074】
図11は、ステップS25の被験者脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0075】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S41、S43)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0076】
そして、値決定部213が、基点からステップS43で求めたベクトルの方向へ所定距離のボクセルの被験者データ130の値を、その基点に割り当てる(S45)。
【0077】
ステップS41〜S45までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S47)、被験者脳表データ191を生成する。生成された被験者脳表データ191は、脳表データ記憶部19に格納される(S49)。
【0078】
次に、図12は、ステップS29のVOI脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0079】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S51、S53)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0080】
そして、値決定部213が、基点からステップS53で求めたベクトルの方向に存在するVOIのうち、最も基点に近いVOIを選択して、その基点は、脳表における選択されたVOIの領域とする(S55)。ここで、上記ベクトルの方向にVOIが存在しないときは、基点に何れのVOIを割り当てない。
【0081】
ステップS51〜S55までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S57)、VOI脳表データ193を生成する。生成されたVOI脳表データ193は、脳表データ記憶部19に格納される(S59)。
【0082】
図13は、ステップS33のZ値脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0083】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S61、S63)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0084】
そして、値決定部213が、ステップS63で求めたベクトルのベクトル長を所定長さに定め、基点からそのベクトル終点までにベクトルが通過したボクセルのZ値データ170の値を、その起点に割り当てる(S65)。
【0085】
ステップS61〜S65までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S57)、Z値脳表データ195を生成する。生成されたZ値脳表データ195は、脳表データ記憶部19に格納される(S69)。
【0086】
上記のような処理により、脳表表示を行うことができる。なお、上記の実施形態では、脳表表示装置1は、被験者脳表データ、VOI脳表データ及びZ値脳表データを生成しているが、いずれか一つ以上を選択的に生成しても良い。
【0087】
また、上記実施形態では、脳表(脳の表面)表示について説明したが、本発明を脳以外の人体の一部、例えば特定の器官に対して適用し、その器官の表面を表示させることもできる。例えば、脳の代わりに心臓に対しても適用可能である。
【0088】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態に係る脳表表示装置1の構成図である。
【図2】被験者データ130及び脳形状データ110のデータ構造を示す。
【図3】脳形状データの生成処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートに従って脳形状データを生成する過程を示す。
【図5】基点Oにおけるベクトル生成の説明図である。
【図6】VOI脳表データ19生成時のVOI割り当て処理の説明図である。
【図7】脳表表示画像の一例を示す。
【図8】脳表表示画像の一例を示す。
【図9】脳表表示装置1の全体処理を示すフローチャートである。
【図10】ステップS13の3D脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図11】ステップS25の被験者脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図12】ステップS29のVOI脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図13】ステップS33のZ値脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 脳表表示装置
11 脳形状データ記憶部
13 被験者データ記憶部
15 データ記憶部
17 値データ記憶部
19 脳表データ記憶部
21 脳表データ生成部
23 2D画像生成部
25 脳断面画像生成部
27 表示制御部
31 脳形状データ生成部
110 脳形状データ
130 被験者データ
150 VOIデータ
170 Z値データ
191 被験者脳表データ
193 Z値脳表データ
195 VOI脳表データ
211 ベクトル生成部
213 値決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた被験者データを記憶した第1の記憶部と、
前記器官の3次元形状を示す3次元形状データを記憶した第2の記憶部と、
前記3次元形状データが示す前記器官の3次元形状の表面上の点を基点とし、前記3次元形状データに基づいて前記基点から前記器官の内部へ向かうベクトルを生成し、前記生成したベクトルの方向の前記被験者データの値に基づいて、前記基点に割り当てる値を定めて、前記器官の3次元形状の表面に被験者データの値を有する第1の3次元器官表面データを生成する3次元器官表面データ生成手段と、
前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第1の3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の被験者データを2次元表示した第1の2次元器官画像を生成する2次元器官画像生成手段と、
前記2次元器官画像生成手段により生成された第1の2次元器官画像を表示装置へ表示させる表示制御手段と、を備えた器官表面画像の表示装置。
【請求項2】
前記3次元器官表面データ生成手段は、
前記基点を中心とした所定形状の領域を定め、前記所定形状の領域内の前記器官の3次元形状データに基づいて、前記ベクトルの方向を定めることを特徴とする請求項1記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項3】
前記3次元器官表面データ生成手段は、
前記所定形状の領域内の前記器官の3次元形状データにおける器官領域の分布に基づいて、前記ベクトルの方向を定めることを特徴とする請求項2記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項4】
前記3次元器官表面データ生成手段は、
前記基点から前記ベクトルの方向へ、所定距離だけ離れた点の前記被験者データの値を前記基点に割り当てることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項5】
前記3次元器官表面データ生成手段は、
前記ベクトルの方向へ前記基点から所定距離までの点の前記被験者データの値の平均値または中央値を前記基点に割り当てることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項6】
前記器官内に設定されたVOI(Volume of Interest)を示すVOIデータを記憶した第3の記憶部をさらに備え、
前記3次元器官表面データ生成手段は、前記VOIデータに基づいて、前記器官の3次元形状の表面上に前記VOIを割り当てた、第2の3次元器官表面データを生成し、
前記2次元画像生成手段は、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第2の3次元器官表面データに基づいて、前記器官表面に割り当てられたVOIを2次元表示した第2の2次元器官画像を生成し、
前記表示制御手段は、前記第1の2次元器官画像と前記第2の2次元器官画像とを重ねて表示させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項7】
前記器官の血流の増加または減少を示すデータに基づいて算出されたZ値データを記憶した第4の記憶部をさらに備え、
前記3次元器官表面データ生成手段は、前記Z値データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に割り当てるZ値を定めて、前記器官の3次元形状の表面にZ値データの値を有する第3の3次元器官表面データを生成し、
前記2次元器官画像生成手段は、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第3の3次元器官表面データに基づいて、前記器官表面のZ値分布を2次元表示した第3の2次元器官画像を生成し、
前記表示制御手段は、前記第1の2次元器官画像と前記第3の2次元器官画像とを重ねて表示させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項8】
前記器官内に設定されたVOI(Volume of Interest)を示すVOIデータを記憶した第3の記憶部と、
前記器官の血流の増加または減少を示すデータに基づいて算出されたZ値データを記憶した第4の記憶部と、をさらに備え、
前記3次元器官表面データ生成手段は、前記VOIデータに基づいて、前記器官の3次元形状の表面上に前記VOIを割り当てた、第2の3次元器官表面データと、前記Z値データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に割り当てるZ値を定めて、前記器官の3次元形状の表面にZ値データの値を有する第3の3次元器官表面データとを生成し、
前記2次元画像生成手段は、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第2の3次元器官表面データに基づいて、前記器官表面に割り当てられたVOIを2次元表示した第2の2次元器官画像と、前記3次元器官表面データ生成手段により生成された第3の3次元器官表面データに基づいて、前記器官表面のZ値分布を2次元表示した第3の2次元器官画像とを生成し、
前記表示制御手段は、前記第1の2次元器官画像と、前記第2の2次元器官画像と、前記第3の2次元器官画像とを重ねて表示させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項9】
前記器官は、脳または心臓であることを特徴とする請求項1〜8に記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項10】
前記被験者データは、MRI(Magnetic Resonace Imaging)データ、CT(Computed Tomography)データSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)データ、及びPET(Positron Computed Tomography)データのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項11】
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた被験者データを第1の記憶部に記憶し、
前記器官の3次元形状を示す3次元形状データを第2の記憶部に記憶し、
前記3次元形状データが示す前記器官の3次元形状の表面上の点を基点とし、前記3次元形状データに基づいて前記基点から前記器官の内部へ向かうベクトルを生成し、前記生成したベクトルの方向の前記被験者データの値に基づいて、前記基点に割り当てる値を定めて、前記器官の3次元形状の表面に被験者データの値を有する第1の3次元器官表面データを生成し、
前記生成された第1の3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の被験者データを2次元表示した第1の2次元器官画像を生成し、
前記生成された第1の2次元器官画像を表示装置へ表示させる、器官表面画像の表示方法。
【請求項12】
器官表面画像を表示させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに実行されると、
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた被験者データを第1の記憶部に記憶し、
前記器官の3次元形状を示す3次元形状データを第2の記憶部に記憶し、
前記3次元形状データが示す前記器官の3次元形状の表面上の点を基点とし、前記3次元形状データに基づいて前記基点から前記器官の内部へ向かうベクトルを生成し、前記生成したベクトルの方向の前記被験者データの値に基づいて、前記基点に割り当てる値を定めて、前記器官の3次元形状の表面に被験者データの値を有する第1の3次元器官表面データを生成し、
前記生成された第1の3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の被験者データを2次元表示した第1の2次元器官画像を生成し、
前記生成された第1の2次元器官画像を表示装置へ表示させる、ように前記コンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−22602(P2010−22602A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187829(P2008−187829)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000149837)富士フイルムRIファーマ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】