噴射キャップ
【課題】面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができ、また、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純で、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器に残留するガスをガス抜きすることができる噴射キャップを提供する。
【解決手段】エアゾール容器3のステム3bに装着されるボタン部7が、通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とに選択移動可能にキャップ本体部5に一体形成されると共に、ボタン部7は、通常噴射位置に位置した状態でキャップ本体部5をエアゾール容器3に装着するとステム3bに接続される通常噴射用ステム装着部7aと、ガス抜き用噴射位置に位置した状態でキャップ本体部5をエアゾール容器3に装着するとステム3bに接続されるガス抜き用ステム装着部7bと、ボタン部7がガス抜き用噴射位置に位置したときのボタン部7の動きを規制する係合機構43,45と、を設けた。
【解決手段】エアゾール容器3のステム3bに装着されるボタン部7が、通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とに選択移動可能にキャップ本体部5に一体形成されると共に、ボタン部7は、通常噴射位置に位置した状態でキャップ本体部5をエアゾール容器3に装着するとステム3bに接続される通常噴射用ステム装着部7aと、ガス抜き用噴射位置に位置した状態でキャップ本体部5をエアゾール容器3に装着するとステム3bに接続されるガス抜き用ステム装着部7bと、ボタン部7がガス抜き用噴射位置に位置したときのボタン部7の動きを規制する係合機構43,45と、を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に収容されている内容物を噴射するために、エアゾール容器に装着される噴射キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
液状や粉状の内容物と液化ガスとが充填されたエアゾール容器に噴射キャップを装着した構成を成し、噴射キャップのボタン部を押下操作することにより、液化ガスの圧力で防虫剤や消毒剤等の内容物を霧状に噴射させるエアゾール製品が知られている。
一般に、エアゾール製品を使用するユーザは、内容物が噴射されず噴射口からの噴射音がなくなると、内容物を使い切った状態と判断し、そのままゴミとして処理することが多い。
【0003】
しかしながら、ユーザがエアゾール製品を使い切ったと判断しても、実際にはエアゾール容器内に内容物放出用の液化ガスが残留している場合があり、この液化ガスを残留させたままゴミとして処理すると、収集処理過程で圧縮された際にエアゾール容器が破裂し、火気類等に引火し火災に至る場合がある。
【0004】
このような事態を回避すべく、近年ではユーザがエアゾール容器内から残留ガスを完全に排出させてから廃棄することができるように、残留ガスのガス抜き機構を備えた様々な構成の噴射キャップが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、エアゾール容器に装着されるカバーキャップ本体に、1組の開放板とガス抜き孔とを設け、一度カバーキャップをエアゾール容器から取り外し、開放板を交差させた状態で再度カバーキャップ本体をエアゾール容器に装着させることによって、エアゾール容器のステムを開放状態に維持し、ガス抜き孔から残留ガスを放出させるガス抜き機構を備えた噴射キャップが記載されている。
【0006】
また特許文献2には、噴射キャップとしてエアゾール容器に装着される操作釦に、通常使用時において装着される内容物放出用凹部とは反対側の天面にガス抜き時において装着されるガス抜き用凹部を設け、ガス抜き状態に移行させる際には一度、操作釦の内容物放出用凹部をエアゾール容器のステムから取り外して操作釦を逆さまにした後、再度、ステムに操作釦のガス抜き用凹部を装着させることによって、エアゾール容器のステムを開放状態に維持してガス抜きをする操作釦が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−173185号公報
【特許文献2】特開2004−123167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の噴射キャップの場合は、ステムを押下するボタンとキャップ本体とを別部材から構成するタイプであり、エアゾール容器に装着する噴射キャップが複数部品による組み立て品となるため、生産性の低下や、製造コストの高額化を招くことがある。
【0009】
また、特許文献2に記載の操作釦の場合には、一度、エアゾール容器のステムに装着されている操作釦をエアゾール容器から取り外してから、操作釦の上下を逆さにして再装着するだけでなく、再装着時には、操作釦のガス抜き用凹部にステムが嵌合するように、エアゾール容器に対する操作釦の取り付け位置をユーザ自身が通常使用時とは異なる装着位置にずらさなければならならない。このため、ガス抜き時の操作釦の付け替え操作が煩雑になり、付け替え操作をユーザが理解し難く、ガス抜き時の操作釦の付け替え操作ができないユーザが発生するという虞があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができ、また、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純で、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器に残留するガスをガス抜きすることができる噴射キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することのできる本発明は、エアゾール容器のキャップ取付け部に嵌合装着されるキャップ本体部と、前記エアゾール容器のステムに挿着されて前記ステムを押下することにより前記エアゾール容器の内容物を噴射するボタン部と、前記ボタン部を前記キャップ本体部上で通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とに選択移動可能に前記キャップ本体部に連結した移動機構部とが一体形成され、
前記ボタン部は、前記通常噴射位置に位置した状態で前記キャップ本体部をエアゾール容器に装着したときに前記ステムに接続される通常噴射用ステム装着部と、前記ガス抜き用噴射位置に位置した状態で前記キャップ本体部をエアゾール容器に装着したときに前記ステムに接続されるガス抜き用ステム装着部と、前記ボタン部が前記ガス抜き用噴射位置に位置したときのボタン部の動きを規制する係合機構と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、噴射キャップの構成要素となっているボタン部とキャップ本体部とが一体形成されているため、キャップ本体部とボタン部とを別部品で構成する噴射キャップと比較すると、面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができる。
また、エアゾール容器に残留するガスをガス抜きする際には、一旦、噴射キャップをエアゾール容器から取り外して、キャップ本体部上のボタン部の位置を、通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に変更した後に、再度、噴射キャップをエアゾール容器に取り付ける作業が必要となるが、ボタン部の位置がガス抜き用噴射位置に切り替えられた噴射キャップは、通常使用時と同様に噴射キャップをエアゾール容器に取り付けるだけで、ボタン部のガス抜き用ステム装着部がエアゾール容器のステムに接続され、噴射キャップ自体のエアゾール容器への取り付け操作自体は通常時と変わらない。
そのため、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純になり、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器に残留するガスをガス抜きすることができる。
【0013】
また、一度噴射キャップをエアゾール容器から取り外さない限り通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に切り替えることができないので、ユーザは通常使用時とガス抜き時を確実に区別することができる。したがって、誤操作による無駄な噴射が行われることを防止することができる。
【0014】
また、本発明において、前記係合機構は、前記通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とを結ぶキャップ前後方向へのボタン部の変位を規制する第1の係合機構と、前記キャップ前後方向と直交する方向への変位を規制する第2の係合機構と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、ボタン部をガス抜き用噴射位置に保持する係合機構は、ボタン部の前後移動方向への変位を規制する第1の係合機構と、前記前後移動方向に直交する方向への変位を規制する第2の係合機構とを備えていて、直交する2方向の変位を個別に規制する構成になっているため、各係合機構は例えば突起と凹部との係合によって一方向への位置を規制する単純な係合構造であっても、しっかりとボタン部を位置規制することが可能になり、各係合機構の構造の単純化によって、噴射キャップの成形性を向上させることができる。
【0016】
また本発明において、前記移動機構部は、基端が第1の可撓ヒンジ部により回動可能に前記キャップ本体部に連結された連節片と、この連節片の先端を回動可能に前記ボタン部に連結する第2の可撓ヒンジ部とを備え、前記連節片の回動挙動により前記ボタン部の通常噴射位置又はガス抜き用噴射位置への選択移動が許容されることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、ボタン部を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させる移動機構部は、連節片の回動挙動に伴う該連節片の先端の移動軌跡に沿ってボタン部が移動するリンク機構を構成しているため、連節片や各可撓ヒンジ部の強度を適正に設定しておくだけで、別にガイド機構等を設けなくとも、安定したボタン部の移動動作を確保することができ、ユーザによる移動操作を容易にすることができる。
【0018】
また、本発明において、前記ボタン部を前記通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させるために押圧する前記ボタン部上の部位には、滑り防止用の凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、ユーザがボタン部をガス抜き用噴射位置に移動操作する際、ボタン部を押圧するユーザの手指がボタン部の表面で滑って操作がし辛いという不都合の発生を抑止して、ボタン部のガス抜き用噴射位置への移動を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による噴射キャップによれば、噴射キャップの構成要素となっているボタン部とキャップ本体部とが一体形成されているため、キャップ本体部とボタン部とを別部品で構成する噴射キャップと比較すると、面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができる。
また、エアゾール容器に残留するガスをガス抜きする際には、一旦、噴射キャップをエアゾール容器から取り外して、キャップ本体部上のボタン部の位置を、通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に変更した後に、再度、噴射キャップをエアゾール容器に取り付ける。このため、ボタン部の位置がガス抜き用噴射位置に切り替えられた噴射キャップは、通常使用時と同様に、噴射キャップをエアゾール容器に取り付けるだけで、ボタン部のガス抜き用ステム装着部がエアゾール容器のステムに接続され、噴射キャップ自体のエアゾール容器への取り付け操作自体は通常時と変わらない。
したがって、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純になり、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器に残留するガスをガス抜きすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る噴射キャップの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る噴射キャップの一実施形態でボタン部が通常噴射位置に位置しているときの斜視図、図2は図1に示した噴射キャップの正面図、図3は図1に示した噴射キャップの背面図、図4は図1に示した噴射キャップの平面図、図5は図1に示した噴射キャップの底面図、図6は図1に示した噴射キャップをエアゾール容器に装着した状態の縦断面図である。
【0022】
また、図7は本発明に係る噴射キャップの一実施形態でボタン部がガス抜き用噴射位置に位置しているときの斜視図、図8は図7に示した噴射キャップの平面図、図9は図1に示した噴射キャップのキャップ本体の一部を切り欠いて、ボタン部に装備されて第2の係合機構を構成する係合部の位置を示した斜視図、図10は図9に示したA部の拡大図、図11は図8に示した噴射キャップにおいてキャップ本体の上面壁を切除して、図10に示した係合部とキャップ本体の係止部との係合状態を示した平面図、図12は図11のB部の拡大図、図13は図7に示した噴射キャップの底面図、図14は図7に示した噴射キャップをエアゾール容器に装着した状態の縦断面図である。
【0023】
本実施形態の噴射キャップ1は、エアゾール容器3(図6参照)に収容されている内容物を噴射するために、エアゾール容器3に装着される。
この噴射キャップ1は、図6に示すように、エアゾール容器3のキャップ取付け部3aに嵌合装着されるキャップ本体部5と、エアゾール容器3のステム3bに挿着されてステム3bを押下することによりエアゾール容器3の内容物を噴射するボタン部7と、ボタン部7をキャップ本体部5上で通常噴射位置(図6に示したボタン部7の装着位置)とガス抜き用噴射位置(図14に示したボタン部7の装着位置)とに選択移動可能にキャップ本体部5に連結した移動機構部9とが樹脂により一体形成されている。
【0024】
キャップ本体部5は、図1及び図6に示すように、エアゾール容器3のキャップ取付け部3aに嵌合する略円筒状の下部筒状部11と、この下部筒状部11の対向位置から上方に延出してボタン部7が収容される溝状空間13を形成する一対の対向隆起部15とを備えている。
【0025】
各対向隆起部15は、図5に示すように、下方側が開放した中空構造になっている。各対向隆起部15の互いに対向する内壁部15a,15a間の空間が、前述の溝状空間13となっている。
各内壁部15aの前端側の領域(図5では左端側の領域)L1には、溝状空間13の幅を狭める内部対向壁15bが一体形成されている。この内部対向壁15bと内壁部15aとの間は中空部となっている。また、内部対向壁15bの内壁面の一部は、後述する第2の係合機構45の係止部15iとして機能する。
【0026】
ボタン部7には、図6に示すようにボタン部7が通常噴射位置に位置した状態でキャップ本体部5をエアゾール容器3に装着するとステム3bに接続される通常噴射用ステム装着部7aと、図14に示すようにボタン部7がガス抜き用噴射位置に位置した状態でキャップ本体部5をエアゾール容器3に装着するとステム3bに接続されるガス抜き用ステム装着部7bと、通常噴射用ステム装着部7aに連通してステム3bから供給されるエアゾール容器3の内容物の噴射を行う噴射ノズル部7cと、が設けられている。
【0027】
通常噴射用ステム装着部7aとガス抜き用ステム装着部7bは、略有頭円筒状のボタン本体7dの下面側に装備されている。ボタン本体7dの上面は、ユーザが手指を押下し易いように、図6に示す凹湾曲面7eに形成されている。
ガス抜き用ステム装着部7bには、ガス抜き用ステム装着部7bを外部に連通させ、ステム3bからガス抜き用ステム装着部7bに流入する残留ガスを外部に逃がす排出孔が装備されている。
【0028】
移動機構部9は、図6及び図14に示すように、基端が第1の可撓ヒンジ部31により回動可能にキャップ本体部5の前端に連結された連節片33と、この連節片33の先端を回動可能にボタン部7に連結する第2の可撓ヒンジ部35とを備えている。本実施の形態の場合、連節片33は、図6及び図9に示すように、途中に略90゜の屈曲部を有したL字形の連節棒である。
この移動機構部9は、第1の可撓ヒンジ部31を回転支点とした連節片33の回動挙動によりボタン部7の通常噴射位置又はガス抜き用噴射位置への選択移動を許容する。
【0029】
エアゾール容器3から取り外された状態の噴射キャップ1において、図4に矢印Xで示すように、ボタン部7の背面部7fを前面側に押すと、その押圧力がボタン部7及び第2の可撓ヒンジ部35を介して伝達される連節片33が、第1の可撓ヒンジ部31を支点に前方側に回動して、連節片33の先端側の移動軌跡に沿ってボタン部7の前方への移動が始まる。
そして、ボタン部7の前方への移動が所定長に達して、図8に示すようにボタン部7がガス抜き用噴射位置に到達すると、ボタン部7が係合機構41により、キャップ本体部5に位置決め固定される。
【0030】
係合機構41は、図9に示すように、通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とを結ぶキャップ前後方向(図9の矢印M方向)へのボタン部7の変位を規制する第1の係合機構43と、キャップ前後方向と直交する方向への変位を規制する第2の係合機構45とで構成されている。
【0031】
第1の係合機構43は、図4及び図8に示したように、ボタン部7のボタン本体7dの下端両側に張り出して形成されたフランジ部7gに形成された係合部7hと、キャップ本体部5の内壁部15aから溝状空間13内に突出して装備された係止部15hとで構成されている。
係合部7hは、内壁部15aに対向する側に開口する凹部である。係止部15hは、ボタン部7がガス抜き用噴射位置に移動した時に係合部7hに係合する突起である。
【0032】
第2の係合機構45は、図9〜図12に示したように、ボタン部7のボタン本体7dの前端側の両側に上方に向かって隆起形成された一対の係合部7i,7iと、キャップ本体部5の内部対向壁15bの内壁面の一部領域である係止部15i,15iとで構成されている。
【0033】
ボタン部7の係合部7iは、図10に示すように上方に向かって隆起形成された半円板状の隆起物で、ボタン部7が移動した時に、図11及び図12に示すように、内部対向壁15bと内壁部15aとの成す空間15c内に進入し、内部対向壁15bの一部領域である係止部15iの上に重なる。その結果、一対の係合部7iが、一対の係止部15iを挟んだ形態となって、キャップ前後方向と直交する方向(図12の矢印Y方向)へのボタン部7の変位を規制する。
【0034】
本実施の形態の噴射キャップ1の場合、図6に示すように、ボタン部7が通常噴射位置に位置するときには、移動機構部9上の各部31,33,35の弾性復元力で、ボタン部7が通常噴射位置に保持される。
一方、図14に示すようにボタン部7がガス抜き用噴射位置に位置替えされたときには、係合機構41を構成している各係合機構43、45の係合動作により、ボタン部7がガス抜き用噴射位置に保持される。
【0035】
本実施の形態の噴射キャップ1の場合、ボタン部7を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させるために押圧するボタン部7上の部位である背面部7fには、図3及び図4に示したように、滑り防止用の凹凸51が形成されている。
【0036】
以上に説明した噴射キャップ1では、噴射キャップ1の構成要素となっているボタン部7とキャップ本体部5とが一体形成されているため、キャップ本体部とボタン部とを別部品で構成する従来の噴射キャップと比較すると、面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
また、本実施の形態の噴射キャップ1の場合、エアゾール容器3に残留するガスをガス抜きする際には、一旦、噴射キャップ1をエアゾール容器3から取り外して、キャップ本体部5上のボタン部7の位置を、通常噴射位置から図8に示したガス抜き用噴射位置に変更した後に、再度、噴射キャップ1をエアゾール容器3に取り付ける作業が必要となる。しかしながら、本実施形態のように、キャップ本体部5に対してボタン部7の位置がガス抜き用噴射位置に切り替えられる構成であれば、噴射キャップ1を、通常使用時と同様にエアゾール容器3に取り付けることができる。これにより、ボタン部7のガス抜き用ステム装着部7bがエアゾール容器3のステム3bに接続され、噴射キャップ1自体のエアゾール容器3への取り付け操作自体は通常時と変わらない操作で行うことができる。
【0038】
すなわち、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純になり、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器3に残留するガスをガス抜きすることができる。一方、一度噴射キャップ1をエアゾール容器3から取り外さない限りガス抜き用噴射位置に切り替えることができないので、通常使用時とガス抜き時を確実に区別することができる。したがって、誤操作による無駄な噴射が行われることを防止することができる。
【0039】
また、本実施の形態の噴射キャップ1の場合、ボタン部7を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させる移動機構部9は、連節片33の回動挙動に伴う連節片33の先端の移動軌跡に沿ってボタン部7が移動するリンク機構を構成しているため、連節片33や各可撓ヒンジ部31,35の強度を適正に設定しておくだけで、他にガイド機構等を設けなくとも、安定したボタン部7の移動動作を確保することができ、ユーザによる移動操作を容易にすることができる。
【0040】
また、本実施形態の噴射キャップ1では、ボタン部7が通常噴射位置に位置している時には、ボタン部7をキャップ本体部5に連結している移動機構部9上の各部31,33,35の弾性復元力で、その通常噴射位置への維持が実現されており、ボタン部7を通常噴射位置に止めておくための専用の係合機構が不要なため、その分、ボタン部7やキャップ本体部5の構造を単純にすることができる。
【0041】
また、ボタン部7をガス抜き用噴射位置に移動させた時には、移動機構を構成している各可撓ヒンジ部31,35や連節片33の弾性変形に伴い、ボタン部7を元の位置に戻す弾性復元力が作用することが考えられるが、ボタン部7をガス抜き用噴射位置に維持する係合機構41を設けたことで、移動機構部9から作用する弾性復元力に拘わらず、ボタン部7を確実にガス抜き用噴射位置に位置決めすることが可能になり、ユーザの取り扱い性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態の噴射キャップ1の場合、ボタン部7をガス抜き用噴射位置に保持する係合機構41には、ボタン部7の前後移動方向への変位を規制する第1の係合機構43と、前後移動方向に直交する方向への変位を規制する第2の係合機構45とを備えていて、直交する2方向の変位を個別に規制する構成になっているため、各係合機構43,45は実施形態のように突起と凹部との係合によって一方向への位置を規制する単純な係合構造であっても、しっかりとボタン部7を位置規制することが可能になり、各係合機構43,45の構造の単純化によって、噴射キャップ1の成形性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の噴射キャップ1の場合、ボタン部7を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させるために押圧するボタン部7上の部位には、滑り防止用の凹凸51が形成されている。
そのため、ユーザがボタン部7をガス抜き用噴射位置に移動操作する際、ボタン部7を押圧するユーザの手指がボタン部7の表面で滑って操作がし難いという不都合の発生を抑止して、ボタン部7のガス抜き用噴射位置への移動を容易にすることができる。
【0044】
なお、本発明に係る噴射キャップにおいて、ボタン部を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動可能に支持する移動機構部の具体的な構成は、上記実施の形態に示したリンク機構に限らない。2節以上のリンク機構を構成することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る噴射キャップの一実施の形態でボタン部が通常噴射位置に位置しているときの斜視図である。
【図2】図1に示した噴射キャップの正面図である。
【図3】図1に示した噴射キャップの背面図である。
【図4】図1に示した噴射キャップの平面図である。
【図5】図1に示した噴射キャップの底面図である。
【図6】図1に示した噴射キャップをエアゾール容器に装着した状態の縦断面図である。
【図7】本発明に係る噴射キャップの一実施の形態でボタン部がガス抜き用噴射位置に位置しているときの斜視図である。
【図8】図7に示した噴射キャップの平面図である。
【図9】図1に示した噴射キャップのキャップ本体の一部を切り欠いて、ボタン部に装備されて第2の係合機構を構成する係合部の位置を示した斜視図である。
【図10】図9に示したA部の拡大図である。
【図11】図8に示した噴射キャップにおいてキャップ本体の上面壁を切除して、図10に示した係合部とキャップ本体の係止部との係合状態を示した平面図である。
【図12】図11のB部の拡大図である。
【図13】図7に示した噴射キャップの底面図である。
【図14】図7に示した噴射キャップをエアゾール容器に装着した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1:噴射キャップ、3:エアゾール容器、3a:キャップ取付け部、3b:ステム、5:キャップ本体部、7:ボタン部、7a:通常噴射用ステム装着部、7b:ガス抜き用ステム装着部、7c:噴射ノズル部、7d:ボタン本体、7e:凹湾曲面、7f:背面部、7g:フランジ部、7h:係合部、7i:係合部、9:移動機構部、11:下部筒状部、13:溝状空間、15:対向隆起部、15a:内壁部、15b:内部対向壁、31:第1の可撓ヒンジ部、33:連節片、35:第2の可撓ヒンジ部、41:係合機構、43:第1の係合機構、45:第2の係合機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に収容されている内容物を噴射するために、エアゾール容器に装着される噴射キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
液状や粉状の内容物と液化ガスとが充填されたエアゾール容器に噴射キャップを装着した構成を成し、噴射キャップのボタン部を押下操作することにより、液化ガスの圧力で防虫剤や消毒剤等の内容物を霧状に噴射させるエアゾール製品が知られている。
一般に、エアゾール製品を使用するユーザは、内容物が噴射されず噴射口からの噴射音がなくなると、内容物を使い切った状態と判断し、そのままゴミとして処理することが多い。
【0003】
しかしながら、ユーザがエアゾール製品を使い切ったと判断しても、実際にはエアゾール容器内に内容物放出用の液化ガスが残留している場合があり、この液化ガスを残留させたままゴミとして処理すると、収集処理過程で圧縮された際にエアゾール容器が破裂し、火気類等に引火し火災に至る場合がある。
【0004】
このような事態を回避すべく、近年ではユーザがエアゾール容器内から残留ガスを完全に排出させてから廃棄することができるように、残留ガスのガス抜き機構を備えた様々な構成の噴射キャップが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、エアゾール容器に装着されるカバーキャップ本体に、1組の開放板とガス抜き孔とを設け、一度カバーキャップをエアゾール容器から取り外し、開放板を交差させた状態で再度カバーキャップ本体をエアゾール容器に装着させることによって、エアゾール容器のステムを開放状態に維持し、ガス抜き孔から残留ガスを放出させるガス抜き機構を備えた噴射キャップが記載されている。
【0006】
また特許文献2には、噴射キャップとしてエアゾール容器に装着される操作釦に、通常使用時において装着される内容物放出用凹部とは反対側の天面にガス抜き時において装着されるガス抜き用凹部を設け、ガス抜き状態に移行させる際には一度、操作釦の内容物放出用凹部をエアゾール容器のステムから取り外して操作釦を逆さまにした後、再度、ステムに操作釦のガス抜き用凹部を装着させることによって、エアゾール容器のステムを開放状態に維持してガス抜きをする操作釦が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−173185号公報
【特許文献2】特開2004−123167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の噴射キャップの場合は、ステムを押下するボタンとキャップ本体とを別部材から構成するタイプであり、エアゾール容器に装着する噴射キャップが複数部品による組み立て品となるため、生産性の低下や、製造コストの高額化を招くことがある。
【0009】
また、特許文献2に記載の操作釦の場合には、一度、エアゾール容器のステムに装着されている操作釦をエアゾール容器から取り外してから、操作釦の上下を逆さにして再装着するだけでなく、再装着時には、操作釦のガス抜き用凹部にステムが嵌合するように、エアゾール容器に対する操作釦の取り付け位置をユーザ自身が通常使用時とは異なる装着位置にずらさなければならならない。このため、ガス抜き時の操作釦の付け替え操作が煩雑になり、付け替え操作をユーザが理解し難く、ガス抜き時の操作釦の付け替え操作ができないユーザが発生するという虞があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができ、また、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純で、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器に残留するガスをガス抜きすることができる噴射キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することのできる本発明は、エアゾール容器のキャップ取付け部に嵌合装着されるキャップ本体部と、前記エアゾール容器のステムに挿着されて前記ステムを押下することにより前記エアゾール容器の内容物を噴射するボタン部と、前記ボタン部を前記キャップ本体部上で通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とに選択移動可能に前記キャップ本体部に連結した移動機構部とが一体形成され、
前記ボタン部は、前記通常噴射位置に位置した状態で前記キャップ本体部をエアゾール容器に装着したときに前記ステムに接続される通常噴射用ステム装着部と、前記ガス抜き用噴射位置に位置した状態で前記キャップ本体部をエアゾール容器に装着したときに前記ステムに接続されるガス抜き用ステム装着部と、前記ボタン部が前記ガス抜き用噴射位置に位置したときのボタン部の動きを規制する係合機構と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、噴射キャップの構成要素となっているボタン部とキャップ本体部とが一体形成されているため、キャップ本体部とボタン部とを別部品で構成する噴射キャップと比較すると、面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができる。
また、エアゾール容器に残留するガスをガス抜きする際には、一旦、噴射キャップをエアゾール容器から取り外して、キャップ本体部上のボタン部の位置を、通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に変更した後に、再度、噴射キャップをエアゾール容器に取り付ける作業が必要となるが、ボタン部の位置がガス抜き用噴射位置に切り替えられた噴射キャップは、通常使用時と同様に噴射キャップをエアゾール容器に取り付けるだけで、ボタン部のガス抜き用ステム装着部がエアゾール容器のステムに接続され、噴射キャップ自体のエアゾール容器への取り付け操作自体は通常時と変わらない。
そのため、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純になり、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器に残留するガスをガス抜きすることができる。
【0013】
また、一度噴射キャップをエアゾール容器から取り外さない限り通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に切り替えることができないので、ユーザは通常使用時とガス抜き時を確実に区別することができる。したがって、誤操作による無駄な噴射が行われることを防止することができる。
【0014】
また、本発明において、前記係合機構は、前記通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とを結ぶキャップ前後方向へのボタン部の変位を規制する第1の係合機構と、前記キャップ前後方向と直交する方向への変位を規制する第2の係合機構と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、ボタン部をガス抜き用噴射位置に保持する係合機構は、ボタン部の前後移動方向への変位を規制する第1の係合機構と、前記前後移動方向に直交する方向への変位を規制する第2の係合機構とを備えていて、直交する2方向の変位を個別に規制する構成になっているため、各係合機構は例えば突起と凹部との係合によって一方向への位置を規制する単純な係合構造であっても、しっかりとボタン部を位置規制することが可能になり、各係合機構の構造の単純化によって、噴射キャップの成形性を向上させることができる。
【0016】
また本発明において、前記移動機構部は、基端が第1の可撓ヒンジ部により回動可能に前記キャップ本体部に連結された連節片と、この連節片の先端を回動可能に前記ボタン部に連結する第2の可撓ヒンジ部とを備え、前記連節片の回動挙動により前記ボタン部の通常噴射位置又はガス抜き用噴射位置への選択移動が許容されることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、ボタン部を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させる移動機構部は、連節片の回動挙動に伴う該連節片の先端の移動軌跡に沿ってボタン部が移動するリンク機構を構成しているため、連節片や各可撓ヒンジ部の強度を適正に設定しておくだけで、別にガイド機構等を設けなくとも、安定したボタン部の移動動作を確保することができ、ユーザによる移動操作を容易にすることができる。
【0018】
また、本発明において、前記ボタン部を前記通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させるために押圧する前記ボタン部上の部位には、滑り防止用の凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、ユーザがボタン部をガス抜き用噴射位置に移動操作する際、ボタン部を押圧するユーザの手指がボタン部の表面で滑って操作がし辛いという不都合の発生を抑止して、ボタン部のガス抜き用噴射位置への移動を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による噴射キャップによれば、噴射キャップの構成要素となっているボタン部とキャップ本体部とが一体形成されているため、キャップ本体部とボタン部とを別部品で構成する噴射キャップと比較すると、面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができる。
また、エアゾール容器に残留するガスをガス抜きする際には、一旦、噴射キャップをエアゾール容器から取り外して、キャップ本体部上のボタン部の位置を、通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に変更した後に、再度、噴射キャップをエアゾール容器に取り付ける。このため、ボタン部の位置がガス抜き用噴射位置に切り替えられた噴射キャップは、通常使用時と同様に、噴射キャップをエアゾール容器に取り付けるだけで、ボタン部のガス抜き用ステム装着部がエアゾール容器のステムに接続され、噴射キャップ自体のエアゾール容器への取り付け操作自体は通常時と変わらない。
したがって、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純になり、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器に残留するガスをガス抜きすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る噴射キャップの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る噴射キャップの一実施形態でボタン部が通常噴射位置に位置しているときの斜視図、図2は図1に示した噴射キャップの正面図、図3は図1に示した噴射キャップの背面図、図4は図1に示した噴射キャップの平面図、図5は図1に示した噴射キャップの底面図、図6は図1に示した噴射キャップをエアゾール容器に装着した状態の縦断面図である。
【0022】
また、図7は本発明に係る噴射キャップの一実施形態でボタン部がガス抜き用噴射位置に位置しているときの斜視図、図8は図7に示した噴射キャップの平面図、図9は図1に示した噴射キャップのキャップ本体の一部を切り欠いて、ボタン部に装備されて第2の係合機構を構成する係合部の位置を示した斜視図、図10は図9に示したA部の拡大図、図11は図8に示した噴射キャップにおいてキャップ本体の上面壁を切除して、図10に示した係合部とキャップ本体の係止部との係合状態を示した平面図、図12は図11のB部の拡大図、図13は図7に示した噴射キャップの底面図、図14は図7に示した噴射キャップをエアゾール容器に装着した状態の縦断面図である。
【0023】
本実施形態の噴射キャップ1は、エアゾール容器3(図6参照)に収容されている内容物を噴射するために、エアゾール容器3に装着される。
この噴射キャップ1は、図6に示すように、エアゾール容器3のキャップ取付け部3aに嵌合装着されるキャップ本体部5と、エアゾール容器3のステム3bに挿着されてステム3bを押下することによりエアゾール容器3の内容物を噴射するボタン部7と、ボタン部7をキャップ本体部5上で通常噴射位置(図6に示したボタン部7の装着位置)とガス抜き用噴射位置(図14に示したボタン部7の装着位置)とに選択移動可能にキャップ本体部5に連結した移動機構部9とが樹脂により一体形成されている。
【0024】
キャップ本体部5は、図1及び図6に示すように、エアゾール容器3のキャップ取付け部3aに嵌合する略円筒状の下部筒状部11と、この下部筒状部11の対向位置から上方に延出してボタン部7が収容される溝状空間13を形成する一対の対向隆起部15とを備えている。
【0025】
各対向隆起部15は、図5に示すように、下方側が開放した中空構造になっている。各対向隆起部15の互いに対向する内壁部15a,15a間の空間が、前述の溝状空間13となっている。
各内壁部15aの前端側の領域(図5では左端側の領域)L1には、溝状空間13の幅を狭める内部対向壁15bが一体形成されている。この内部対向壁15bと内壁部15aとの間は中空部となっている。また、内部対向壁15bの内壁面の一部は、後述する第2の係合機構45の係止部15iとして機能する。
【0026】
ボタン部7には、図6に示すようにボタン部7が通常噴射位置に位置した状態でキャップ本体部5をエアゾール容器3に装着するとステム3bに接続される通常噴射用ステム装着部7aと、図14に示すようにボタン部7がガス抜き用噴射位置に位置した状態でキャップ本体部5をエアゾール容器3に装着するとステム3bに接続されるガス抜き用ステム装着部7bと、通常噴射用ステム装着部7aに連通してステム3bから供給されるエアゾール容器3の内容物の噴射を行う噴射ノズル部7cと、が設けられている。
【0027】
通常噴射用ステム装着部7aとガス抜き用ステム装着部7bは、略有頭円筒状のボタン本体7dの下面側に装備されている。ボタン本体7dの上面は、ユーザが手指を押下し易いように、図6に示す凹湾曲面7eに形成されている。
ガス抜き用ステム装着部7bには、ガス抜き用ステム装着部7bを外部に連通させ、ステム3bからガス抜き用ステム装着部7bに流入する残留ガスを外部に逃がす排出孔が装備されている。
【0028】
移動機構部9は、図6及び図14に示すように、基端が第1の可撓ヒンジ部31により回動可能にキャップ本体部5の前端に連結された連節片33と、この連節片33の先端を回動可能にボタン部7に連結する第2の可撓ヒンジ部35とを備えている。本実施の形態の場合、連節片33は、図6及び図9に示すように、途中に略90゜の屈曲部を有したL字形の連節棒である。
この移動機構部9は、第1の可撓ヒンジ部31を回転支点とした連節片33の回動挙動によりボタン部7の通常噴射位置又はガス抜き用噴射位置への選択移動を許容する。
【0029】
エアゾール容器3から取り外された状態の噴射キャップ1において、図4に矢印Xで示すように、ボタン部7の背面部7fを前面側に押すと、その押圧力がボタン部7及び第2の可撓ヒンジ部35を介して伝達される連節片33が、第1の可撓ヒンジ部31を支点に前方側に回動して、連節片33の先端側の移動軌跡に沿ってボタン部7の前方への移動が始まる。
そして、ボタン部7の前方への移動が所定長に達して、図8に示すようにボタン部7がガス抜き用噴射位置に到達すると、ボタン部7が係合機構41により、キャップ本体部5に位置決め固定される。
【0030】
係合機構41は、図9に示すように、通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とを結ぶキャップ前後方向(図9の矢印M方向)へのボタン部7の変位を規制する第1の係合機構43と、キャップ前後方向と直交する方向への変位を規制する第2の係合機構45とで構成されている。
【0031】
第1の係合機構43は、図4及び図8に示したように、ボタン部7のボタン本体7dの下端両側に張り出して形成されたフランジ部7gに形成された係合部7hと、キャップ本体部5の内壁部15aから溝状空間13内に突出して装備された係止部15hとで構成されている。
係合部7hは、内壁部15aに対向する側に開口する凹部である。係止部15hは、ボタン部7がガス抜き用噴射位置に移動した時に係合部7hに係合する突起である。
【0032】
第2の係合機構45は、図9〜図12に示したように、ボタン部7のボタン本体7dの前端側の両側に上方に向かって隆起形成された一対の係合部7i,7iと、キャップ本体部5の内部対向壁15bの内壁面の一部領域である係止部15i,15iとで構成されている。
【0033】
ボタン部7の係合部7iは、図10に示すように上方に向かって隆起形成された半円板状の隆起物で、ボタン部7が移動した時に、図11及び図12に示すように、内部対向壁15bと内壁部15aとの成す空間15c内に進入し、内部対向壁15bの一部領域である係止部15iの上に重なる。その結果、一対の係合部7iが、一対の係止部15iを挟んだ形態となって、キャップ前後方向と直交する方向(図12の矢印Y方向)へのボタン部7の変位を規制する。
【0034】
本実施の形態の噴射キャップ1の場合、図6に示すように、ボタン部7が通常噴射位置に位置するときには、移動機構部9上の各部31,33,35の弾性復元力で、ボタン部7が通常噴射位置に保持される。
一方、図14に示すようにボタン部7がガス抜き用噴射位置に位置替えされたときには、係合機構41を構成している各係合機構43、45の係合動作により、ボタン部7がガス抜き用噴射位置に保持される。
【0035】
本実施の形態の噴射キャップ1の場合、ボタン部7を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させるために押圧するボタン部7上の部位である背面部7fには、図3及び図4に示したように、滑り防止用の凹凸51が形成されている。
【0036】
以上に説明した噴射キャップ1では、噴射キャップ1の構成要素となっているボタン部7とキャップ本体部5とが一体形成されているため、キャップ本体部とボタン部とを別部品で構成する従来の噴射キャップと比較すると、面倒な組み立て作業が不要で、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
また、本実施の形態の噴射キャップ1の場合、エアゾール容器3に残留するガスをガス抜きする際には、一旦、噴射キャップ1をエアゾール容器3から取り外して、キャップ本体部5上のボタン部7の位置を、通常噴射位置から図8に示したガス抜き用噴射位置に変更した後に、再度、噴射キャップ1をエアゾール容器3に取り付ける作業が必要となる。しかしながら、本実施形態のように、キャップ本体部5に対してボタン部7の位置がガス抜き用噴射位置に切り替えられる構成であれば、噴射キャップ1を、通常使用時と同様にエアゾール容器3に取り付けることができる。これにより、ボタン部7のガス抜き用ステム装着部7bがエアゾール容器3のステム3bに接続され、噴射キャップ1自体のエアゾール容器3への取り付け操作自体は通常時と変わらない操作で行うことができる。
【0038】
すなわち、残留ガスのガス抜きのためにユーザが実施する操作が単純になり、ユーザが理解し易いため、ユーザが容易、且つ確実にエアゾール容器3に残留するガスをガス抜きすることができる。一方、一度噴射キャップ1をエアゾール容器3から取り外さない限りガス抜き用噴射位置に切り替えることができないので、通常使用時とガス抜き時を確実に区別することができる。したがって、誤操作による無駄な噴射が行われることを防止することができる。
【0039】
また、本実施の形態の噴射キャップ1の場合、ボタン部7を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させる移動機構部9は、連節片33の回動挙動に伴う連節片33の先端の移動軌跡に沿ってボタン部7が移動するリンク機構を構成しているため、連節片33や各可撓ヒンジ部31,35の強度を適正に設定しておくだけで、他にガイド機構等を設けなくとも、安定したボタン部7の移動動作を確保することができ、ユーザによる移動操作を容易にすることができる。
【0040】
また、本実施形態の噴射キャップ1では、ボタン部7が通常噴射位置に位置している時には、ボタン部7をキャップ本体部5に連結している移動機構部9上の各部31,33,35の弾性復元力で、その通常噴射位置への維持が実現されており、ボタン部7を通常噴射位置に止めておくための専用の係合機構が不要なため、その分、ボタン部7やキャップ本体部5の構造を単純にすることができる。
【0041】
また、ボタン部7をガス抜き用噴射位置に移動させた時には、移動機構を構成している各可撓ヒンジ部31,35や連節片33の弾性変形に伴い、ボタン部7を元の位置に戻す弾性復元力が作用することが考えられるが、ボタン部7をガス抜き用噴射位置に維持する係合機構41を設けたことで、移動機構部9から作用する弾性復元力に拘わらず、ボタン部7を確実にガス抜き用噴射位置に位置決めすることが可能になり、ユーザの取り扱い性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態の噴射キャップ1の場合、ボタン部7をガス抜き用噴射位置に保持する係合機構41には、ボタン部7の前後移動方向への変位を規制する第1の係合機構43と、前後移動方向に直交する方向への変位を規制する第2の係合機構45とを備えていて、直交する2方向の変位を個別に規制する構成になっているため、各係合機構43,45は実施形態のように突起と凹部との係合によって一方向への位置を規制する単純な係合構造であっても、しっかりとボタン部7を位置規制することが可能になり、各係合機構43,45の構造の単純化によって、噴射キャップ1の成形性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の噴射キャップ1の場合、ボタン部7を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させるために押圧するボタン部7上の部位には、滑り防止用の凹凸51が形成されている。
そのため、ユーザがボタン部7をガス抜き用噴射位置に移動操作する際、ボタン部7を押圧するユーザの手指がボタン部7の表面で滑って操作がし難いという不都合の発生を抑止して、ボタン部7のガス抜き用噴射位置への移動を容易にすることができる。
【0044】
なお、本発明に係る噴射キャップにおいて、ボタン部を通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動可能に支持する移動機構部の具体的な構成は、上記実施の形態に示したリンク機構に限らない。2節以上のリンク機構を構成することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る噴射キャップの一実施の形態でボタン部が通常噴射位置に位置しているときの斜視図である。
【図2】図1に示した噴射キャップの正面図である。
【図3】図1に示した噴射キャップの背面図である。
【図4】図1に示した噴射キャップの平面図である。
【図5】図1に示した噴射キャップの底面図である。
【図6】図1に示した噴射キャップをエアゾール容器に装着した状態の縦断面図である。
【図7】本発明に係る噴射キャップの一実施の形態でボタン部がガス抜き用噴射位置に位置しているときの斜視図である。
【図8】図7に示した噴射キャップの平面図である。
【図9】図1に示した噴射キャップのキャップ本体の一部を切り欠いて、ボタン部に装備されて第2の係合機構を構成する係合部の位置を示した斜視図である。
【図10】図9に示したA部の拡大図である。
【図11】図8に示した噴射キャップにおいてキャップ本体の上面壁を切除して、図10に示した係合部とキャップ本体の係止部との係合状態を示した平面図である。
【図12】図11のB部の拡大図である。
【図13】図7に示した噴射キャップの底面図である。
【図14】図7に示した噴射キャップをエアゾール容器に装着した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1:噴射キャップ、3:エアゾール容器、3a:キャップ取付け部、3b:ステム、5:キャップ本体部、7:ボタン部、7a:通常噴射用ステム装着部、7b:ガス抜き用ステム装着部、7c:噴射ノズル部、7d:ボタン本体、7e:凹湾曲面、7f:背面部、7g:フランジ部、7h:係合部、7i:係合部、9:移動機構部、11:下部筒状部、13:溝状空間、15:対向隆起部、15a:内壁部、15b:内部対向壁、31:第1の可撓ヒンジ部、33:連節片、35:第2の可撓ヒンジ部、41:係合機構、43:第1の係合機構、45:第2の係合機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のキャップ取付け部に嵌合装着されるキャップ本体部と、前記エアゾール容器のステムに挿着されて前記ステムを押下することにより前記エアゾール容器の内容物を噴射するボタン部と、前記ボタン部を前記キャップ本体部上で通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とに選択移動可能に前記キャップ本体部に連結した移動機構部とが一体形成され、
前記ボタン部は、前記通常噴射位置に位置した状態で前記キャップ本体部をエアゾール容器に装着したときに前記ステムに接続される通常噴射用ステム装着部と、前記ガス抜き用噴射位置に位置した状態で前記キャップ本体部をエアゾール容器に装着したときに前記ステムに接続されるガス抜き用ステム装着部と、前記ボタン部が前記ガス抜き用噴射位置に位置したときのボタン部の動きを規制する係合機構と、を有することを特徴とする噴射キャップ。
【請求項2】
前記係合機構は、前記通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とを結ぶキャップ前後方向へのボタン部の変位を規制する第1の係合機構と、前記キャップ前後方向と直交する方向への変位を規制する第2の係合機構と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の噴射キャップ。
【請求項3】
前記移動機構部は、基端が第1の可撓ヒンジ部により回動可能に前記キャップ本体部に連結された連節片と、この連節片の先端を回動可能に前記ボタン部に連結する第2の可撓ヒンジ部とを備え、前記連節片の回動挙動により前記ボタン部の通常噴射位置又はガス抜き用噴射位置への選択移動が許容されることを特徴とする請求項1または2に記載の噴射キャップ。
【請求項4】
前記ボタン部を前記通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させるために押圧する前記ボタン部上の部位には、滑り防止用の凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の噴射キャップ。
【請求項1】
エアゾール容器のキャップ取付け部に嵌合装着されるキャップ本体部と、前記エアゾール容器のステムに挿着されて前記ステムを押下することにより前記エアゾール容器の内容物を噴射するボタン部と、前記ボタン部を前記キャップ本体部上で通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とに選択移動可能に前記キャップ本体部に連結した移動機構部とが一体形成され、
前記ボタン部は、前記通常噴射位置に位置した状態で前記キャップ本体部をエアゾール容器に装着したときに前記ステムに接続される通常噴射用ステム装着部と、前記ガス抜き用噴射位置に位置した状態で前記キャップ本体部をエアゾール容器に装着したときに前記ステムに接続されるガス抜き用ステム装着部と、前記ボタン部が前記ガス抜き用噴射位置に位置したときのボタン部の動きを規制する係合機構と、を有することを特徴とする噴射キャップ。
【請求項2】
前記係合機構は、前記通常噴射位置とガス抜き用噴射位置とを結ぶキャップ前後方向へのボタン部の変位を規制する第1の係合機構と、前記キャップ前後方向と直交する方向への変位を規制する第2の係合機構と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の噴射キャップ。
【請求項3】
前記移動機構部は、基端が第1の可撓ヒンジ部により回動可能に前記キャップ本体部に連結された連節片と、この連節片の先端を回動可能に前記ボタン部に連結する第2の可撓ヒンジ部とを備え、前記連節片の回動挙動により前記ボタン部の通常噴射位置又はガス抜き用噴射位置への選択移動が許容されることを特徴とする請求項1または2に記載の噴射キャップ。
【請求項4】
前記ボタン部を前記通常噴射位置からガス抜き用噴射位置に移動させるために押圧する前記ボタン部上の部位には、滑り防止用の凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の噴射キャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−1045(P2010−1045A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160495(P2008−160495)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】
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