説明

噴射ノズル多設型掘進機

【課題】超高圧噴射ノズルを多く設置することができ、もって、小中規模な障害物だけでなく、多くの数の超高圧噴射ノズルを必要とする大規模な障害物に対しても粉砕しつつ推進することができ、さらには、超高圧噴射ノズル単位で各超高圧噴射ノズルの稼動・不稼動の制御を行い、地山の広狭、硬軟、切断すべき障害物の形状、大小に応じて稼動させる超高圧噴射ノズルの数を増減させることができる、噴射ノズル多設型掘進機を得る。
【解決手段】超高圧メインシャフト7及び超高圧複合スイベル8が接続された回転軸2を有するシールド本体部3と、複数の超高圧噴射ノズル10を有するカッターヘッド部4とを備えた噴射ノズル多設型掘進機1であって、複数の超高圧噴射ノズル10は、各々、回転軸2を経由した超高圧噴射ノズルラインを有しており、回転軸2には、超高圧噴射ノズルラインが有するラインの切換を制御する切換手段9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ノズルを多設することができる掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、様々な掘進機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。掘進機の回転軸には、超高圧メインシャフト、超高圧スイベル及び超高圧三連ロータリージョイントが配置されており、これらを経由して、掘進機面盤部に設置されている超高圧噴射ノズルまでのノズルラインが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−169888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来におけるノズルライン接続方式は、超高圧噴射ノズルの設置数が多い場合には、構造上限度があるために対応することが困難であり、超高圧噴射ノズルの設置数が少ない場合にしか対応することができなかった。また、従来における掘進機では、掘進機面盤部に設置されている超高圧噴射ノズルの稼動・不稼動の制御を各超高圧噴射ノズル単位で行うことが極めて困難で、掘進機の作動中は常に全ての超高圧噴射ノズルを障害物の形状、大きさ等に応じた切断条件に細かく柔軟に即応させることができなかった。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、特に大口径の掘進機に必要となる超高圧噴射ノズルを多く設置することができ、もって、小中規模な障害物だけでなく、多数の超高圧噴射ノズルを必要とする大規模な障害物に対しても粉砕しつつ推進することができ、さらには、超高圧噴射ノズル単位で各超高圧噴射ノズルの稼動・不稼動の制御を行い、障害物の大小・形状、地山の広狭、硬軟に応じて稼動させる超高圧噴射ノズルの数を増減させることができる、噴射ノズル多設型掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、超高圧メインシャフト及び超高圧複合スイベルが接続された回転軸を有するシールド本体部と、前記シールド本体部に対して回転可能な、複数の超高圧噴射ノズルを有するカッターヘッド部とを備えた噴射ノズル多設型掘進機であって、前記複数の超高圧噴射ノズルは、各々、前記回転軸を経由しこの回転軸内に保護される構造で延設された超高圧噴射ノズルラインを有しており、前記超高圧噴射ノズルラインは、複数のラインを有しており、前記回転軸には、前記超高圧噴射ノズルラインが有するラインの切換を制御する切換手段が設けられていることを特徴とする噴射ノズル多設型掘進機を提供する。
【0007】
また、前記切換手段は、前記超高圧メインシャフトと前記超高圧複合スイベルとの間において前記回転軸に設けられているのが好ましい。
【0008】
また、前記超高圧噴射ノズルラインは、超高圧水ラインとスラリーラインとを有することができ、更に掘進機面盤部に臨む噴射ノズルを面盤面内で移動させる油圧ラインを有することができる。
【0009】
さらに、前記切換手段は、前記各超高圧噴射ノズルに対して稼動・不稼動の制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超高圧メインシャフト及び超高圧複合スイベルが接続された回転軸を有するシールド本体部と、前記シールド本体部に対して回転可能な、複数の超高圧噴射ノズルを有するカッターヘッド部とを備えた噴射ノズル多設型掘進機であって、前記複数の超高圧噴射ノズルは、各々、前記回転軸を経由した超高圧噴射ノズルラインを有しており、前記超高圧噴射ノズルラインは、障害物切断時の研摩材を分散したスラリーライン、超高圧水ジェットを噴射したりこれに地盤改良材を混入噴射する超高圧ライン、噴射ノズルを移動させる油圧ラインなど複数のラインを有しており、前記回転軸には、前記超高圧噴射ノズルラインが有するラインの切換を制御する切換手段が設けられているため、大口径の掘進機に必要な超高圧噴射ノズルを多く設置することができ、もって、小中規模な障害物だけでなく、多くの数の超高圧噴射ノズルを必要とする大規模な障害物に遭遇してもそれを粉砕しつつ推進することができ、さらには、超高圧噴射ノズル単位で各超高圧噴射ノズルの稼動・不稼動の制御を行い、地山の広狭、硬軟に応じて稼動させるべき超高圧噴射ノズル数とライン機能を自在に増減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本発明にかかる噴射ノズル多設型掘進機の実施の一形態に適用可能なシールド本体部を示す前面図であり、図1(b)は、本発明にかかる噴射ノズル多設型掘進機の実施の一形態を示す部分断面側面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる超高圧噴射ノズルライン及び切換手段を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる噴射ノズル多設型掘進機を実施するための最良の形態について図面を参照しながら述べる。図1(a)には、本発明にかかる噴射ノズル多設型掘進機のシールド本体部の前面図を示し、図1(b)には、本発明にかかる噴射ノズル多設型掘進機の部分断面側面図を示している。また、図2には、超高圧噴射ノズルライン及び切換手段を示す概略図を示している。
【0013】
図1に示すように、掘進機1は、その中心部に回転軸2を有するシールド本体部3と、シールド本体部3に対して回転可能なカッターヘッド部4と、スクリューコンベヤ等を有し切断破砕した障害物泥水を排出する排泥管5と、回転軸2及びカッターヘッド部4を回転駆動させる駆動源としての駆動用モータ6とを主に備えている。
【0014】
推進方向先端部に設けられたカッターヘッド部4は、図1(b)に示すように、複数のビット15が適宜設けられ、また、カッターヘッド部4には、地盤改良材の噴射ノズルや障害物切断用ノズルなどの複数の超高圧噴射ノズル10が設置されており、図示のものは、35個の超高圧噴射ノズル10が設けられており、そのうちの12個の超高圧噴射ノズル10は油圧シリンダー11によって面盤部面に沿って平行に進退移動できるようになっており、そのための油圧シリンダー11は9個配設されている。
【0015】
図2に示すように、複数の超高圧噴射ノズル10は、回転軸2内を並走するホース群に連結される超高圧噴射ノズルラインを有している。超高圧噴射ノズルラインは、二つの超高圧水ライン12a、12bとスラリーライン13とを有する。超高圧水ライン12a、12bは、図示しない供給源に接続している超高圧ジェット水を噴射ノズル側に供給するラインであり、一方、スラリーライン13は、図示しない供給源に接続しているアブレシブスラリー又は地盤改良材を噴射ノズル側に供給するラインであることができる。
【0016】
また、油圧シリンダー11によって移動できる超高圧噴射ノズル10に対する超高圧噴射ノズルラインは、二つの超高圧水ライン12a、12b及びスラリーライン13に加えて油圧ライン14を更に有する。油圧ライン14は、噴射位置や角度を可変にする噴射ノズル移動用の油圧シリンダー11に油圧作動油を供給するラインである。
【0017】
超高圧水ライン12aは、24個のポートを有し、超高圧水ライン12bは、12個のポートを有し、スラリーライン13は、35個のポートを有し、油圧ライン14は、18個のポート(9個のインレットポート及び9個のアウトレットポート)をそれぞれ有する。
【0018】
回転軸2には、超高圧メインシャフト7、超高圧複合スイベル8及び例えば三連であってもよい超高圧多連ロータリージョイント8bが接続されている。超高圧複合スイベル8は、複合スイベル8aと超高圧スイベル8bとから構成される。また、切換手段9が、超高圧メインシャフト7と超高圧複合スイベル8の複合スイベル8aとの間において回転軸2に設けられている。超高圧水ライン12a、12b、スラリーライン13及び油圧ライン14は、回転軸2、超高圧メインシャフト7、超高圧複合スイベル8(複合スイベル8a及び超高圧スイベル8b)、切換手段9及び超高圧多連ロータリージョイント16を経由して超高圧噴射ノズル10に終端している。
【0019】
切換手段9は、超高圧噴射ノズルラインが有する超高圧水ライン12a、12b、スラリーライン13及び油圧ライン14の稼動切換を制御するためのものであり、この切換手段9を介して、各超高圧噴射ノズル10に対するラインの切換が行われるようになっている。また、切換手段9は、各超高圧噴射ノズル10に対して稼動・不稼動の選択的制御を行うことができるようになっている。従って、大口径マシン向けに多数の超高圧噴射ノズルを設置することができ、もって、小中規模な障害物は勿論のこと、掘進中に遭遇し多数の超高圧噴射ノズルを必要とする大規模な障害物に対してもこれを粉砕しつつ推進することができる。また、超高圧噴射ノズル単位で各超高圧噴射ノズルの稼動・不稼動の制御を行い、地山の広狭、硬軟に応じて稼動させる超高圧噴射ノズルの数を増減させることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 掘進機
2 回転軸
3 シールド本体部
4 カッターヘッド部
5 排泥管
6 駆動用モータ
7 超高圧メインシャフト
8 超高圧複合スイベル
8a 複合スイベル
8b 超高圧スイベル
9 切換手段
10 超高圧噴射ノズル
11 油圧シリンダー
12a 超高圧水ライン
12b 超高圧水ライン
13 スラリーライン
14 油圧ライン
15 ビット
16 超高圧多連ロータリージョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高圧メインシャフト及び超高圧複合スイベルが接続された回転軸を有するシールド本体部と、
前記シールド本体部に対して回転可能な、複数の超高圧噴射ノズルを有するカッターヘッド部とを備え、
前記複数の超高圧噴射ノズルは、各々、前記回転軸を経由した超高圧噴射ノズルラインを有しており、
前記超高圧噴射ノズルラインは、複数のラインを有しており、
前記回転軸には、前記超高圧噴射ノズルラインが有するラインの切換を制御する切換手段が設けられていることを特徴とする噴射ノズル多設型掘進機。
【請求項2】
請求項1に記載の噴射ノズル多設型掘進機において、
前記切換手段は、前記超高圧メインシャフトと前記超高圧複合スイベルとの間において前記回転軸に設けられていることを特徴とする噴射ノズル多設型掘進機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の噴射ノズル多設型掘進機において、
前記超高圧噴射ノズルラインは、超高圧水ラインとスラリーラインとを有することを特徴とする噴射ノズル多設型掘進機。
【請求項4】
請求項3に記載の噴射ノズル多設型掘進機において、
前記超高圧噴射ノズルラインは、油圧ラインを更に有することを特徴とする噴射ノズル多設型掘進機。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載の噴射ノズル多設型掘進機において、
前記切換手段は、推進時に遭遇する障害物の大小・形状、地山の広狭、硬軟に応じ前記各超高圧噴射ノズルに対して稼動・不稼動の制御を行うことができることを特徴とする噴射ノズル多設型掘進機。

【図1】
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【図2】
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