説明

噴射パターン可変ヘッド

【課題】 噴射角を広狭に調整可能で、且つ部品点数が少なく、その組み立てが容易で安価な噴射パターン可変ヘッドを提供する。
【解決手段】 内容物が通過する複数の放射状流路の形成された旋回面と、該旋回面に対向する平面との相対距離を可変することによって、内容物の噴射拡散角度を調節する噴射パターン可変ヘッドであって、
円筒状の溝部及び該溝部内に同心状の円筒部を備えた、内容物の充填された容器に結合されるヘッド本体(6-1)と、前記円筒状の溝部に結合される中空の円筒部を備えた噴口部材(6-2)と、前記噴口部材を回動することによって前記放射状流路の形成された旋回面と、該旋回面に対向する前記ヘッド本体の前記円筒部の先端平面との相対距離を可変する噴射パターン可変ヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少ない部品による簡単な構成の、エアゾール及びポンプに適用可能な噴射角を広狭調整可能にする噴射パターン可変ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器用の噴射角を広狭調整可能な噴射ボタンとしては以下のものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
上記特許文献1に記載のエアゾール容器用噴射ボタンの説明を以下にする。
図1乃至図3を基に本発明の実施の形態の一例によるエアゾール容器用噴射ボタンを説明する。エアゾール容器1の頂部に設けられたマウンティングキャップ2には弁機構が設けられ、そのステム3が押し下げ操作により内容物を噴射させるように上方付勢状態で突出している。噴射ボタン10は、その上面12が押し下げ操作部として機能すると共に、内部には基端部13aでステム3に嵌着して上方へ延びると共に縦方向流路13bが形成された縦方向ノズル部13及びその上端部に略直交方向へ連通する横方向管部15aを備えた横方向ノズル部15とを有するノズルが形成されている。
【0003】
横方向ノズル部15における噴射ボタン10の外周面前部11aに開口する前部には、噴口部として中心部に横向きの噴射口16aを有する噴口部材16が嵌入され、その環状爪部16dが横方向管部15aの凹部に係止されるようになっている。また、横方向管部15aには、その周面にスライド棒20がそのフランジ状のシール部29でガイドされてスライド可能に収納されている。スライド棒20の直径は、横方向管部15aの内周面の内径よりも小さく設定され、スライド棒20の周囲に環状の横方向流路28を形成している。スライド棒20の直径を小さくされた後方部分には、その段差面と噴射ボタン10の外周面後部11b間で圧縮されてコイルばね27が装着されている。
【0004】
噴射口16aの後端周辺面16bには、中心部の噴射口16aに連通する複数の放射状流路18が形成されている。一方、スライド棒20は、放射状流路18の遠心側端部18aよりも中心寄りに位置する外径を有することにより、前進位置でその前端面21が放射状流路18に当接してその遠心側端部18aを残して閉鎖する。
【0005】
外周面後部11bから背後に向けて突出したスライド棒20の後端部では係合部26が膨出され、つまみ30の中央部には、係合部26を相互に回転自在に遊嵌させる縦溝31が形成され、その前端の環状の係止部31aで係合部26を係止している。このようにスライド棒20に取付けられたつまみ30の前端面33は、円筒状噴射ボタン10の外周面11、即ち外周面後部11bの曲率に対応してスライド棒20に対して両側に長手方向へ円弧状に形成されている。前端面33の長手方向の両側の端部33aはカム面として機能する外周面後部11bに対する従動部として機能する。外周面後部11bにおけるスライド棒20に対して上下両側の端部33aに対応する位置には、両端部33aを係合させる凹部11cが形成されている。
【0006】
このように構成されたエアゾール容器用噴射ボタンの動作は次の通りである。図3に示すように、つまみ30が横方向を向いた通常位置では、その前端面33が外周面後部11bに接面してスライド棒20が前進位置を占め、その前端面21が噴射口16aの後端周辺面16bにばね力で圧接している。噴射ボタン10の上面12を押し下げ操作すると、内容物が縦方向流路13bからスライド棒20の周囲の断面環状の横方向流路28を経由して放射状流路18の遠心側端部18aに流入する。この放射状流路を通過することにより噴射口16a内で回転力を生じ、広い拡散角で噴射される。
【0007】
つまみ30を通常位置から90°回転操作すると、図1に示すように、その長手方向が上下方向を向いて前端面33の両側の端部33aが凹部11cに係合して、切換位置に設定される。その過程で、端部33aがばね力に抗して外周面後部11bの曲面に沿って従動して徐々に後退し、スライド棒20は最大ストロークの後退位置を占める。これにより、前端面21が放射状流路18から離間し、その全域及び噴射口16aに直接内容物が流入し、内容物の放出流の回転力が抑制されて噴射角が狭くなる。
【特許文献1】特開2002−173184号公報図1〜3 (0007)〜(0012)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のエアゾール容器用噴射ボタンでは、
エアゾール容器用の噴射角を広狭に調整可能であるが、部品点数が多く必要であると共に、その組み立てにも多くの手順が必要で高価になるという問題点があった。
【0009】
本発明の課題(目的)は、噴射角を広狭に調整可能で、且つ部品点数が少なく、その組み立てが容易で安価な噴射パターン可変ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、内容物が通過する複数の放射状流路の形成された旋回面と、該旋回面に対向する平面との相対距離を可変することによって、内容物の噴射拡散角度を調節する噴射パターン可変ヘッドであって、
円筒状の溝部及び該溝部内に同心状の円筒部を備えた、内容物の充填された容器に結合されるヘッド本体と、前記円筒状の溝部に結合される中空の円筒部を備えた噴口部材と、
前記噴口部材を回動することによって前記放射状流路の形成された旋回面と、該旋回面に対向する前記ヘッド本体の前記円筒部の先端平面との相対距離を可変することを特徴とする。(請求項1)
【0011】
前記ヘッド本体の円筒状の溝部と前記噴口部材の中空の円筒部との結合手段として、
ヘッド本体を構成する材質は、噴口部材の材質よりも柔らかな材質とすると共に、結合される噴口部材の中空の円筒部の外側にねじを形成することを特徴とする。(請求項2)
前記ねじは、多条ねじで形成されることを特徴とする。(請求項3)
前記噴口部材には、当該噴口部材をヘッド本体に対して相対的に回転させるためのハンドルが備えられていることを特徴とする。(請求項4)
前記噴口部材を回転範囲を規制する規制部材を備えることを特徴とする。(請求項5)
前記噴射パターン可変ヘッドは、エアゾールタイプ若しくはポンプタイプの容器に取付け可能である。(請求項6)
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜6に記載の発明は、部品点数が少なく、その組み立てが容易で安価な噴射パターン可変ヘッドが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
従来のエアゾール容器用噴射ボタンでは、噴射パターンの調整を、スライド棒20が前進位置ではその前端面21が放射状流路18に当接してその遠心側端部18aを残して閉鎖した状態では、内容物を縦方向流路13bからスライド棒20の周囲の断面環状の横方向流路28を経由して放射状流路18の遠心側端部18aに流入する際に、この放射状流路を通過することにより噴射口16a内で回転力が生じて広い拡散角で噴射される第1の状態と、スライド棒20が後退位置では前端面21が放射状流路18から離間し、その全域及び噴射口16aに直接内容物が流入し、内容物の放出流の回転力が抑制されて噴射角が狭くなる第2に状態の間で調整していた。
【0014】
本発明にける噴射パターンの可変の基本的原理としては図1〜3に示した従来の噴射ボタンと同様であるが、その実現手段において大きく異なっている。
以下、図4及び5を用いて詳細に説明する。
本発明の噴射パターン可変ヘッドの特徴は、ヘッド本体部と噴口部材の2つの部品で構成できることである。
【0015】
図4は、ヘッド本体部を示し、(A)はその正面図、(B)はa−a’面で切断した際の断面図である。
4−1は、後述のヘッド部材が挿入される円筒型の溝部である。
図5は、噴口部材であって、(A)はその正面図、(B)はその側面図、(C)はa−a’面で切断した際の断面図であり、(D)は裏面図である。
図5の(D)においては、円筒形の溝部の内壁に複数の放射状流路が形成されている。
図5の(B)及び(C)より理解できる様に、噴口部材の円筒部5−1にはねじ(雄ねじ)5−2が形成されると共に、当該噴口部材を回転させるための噴射パターン調整用ハンドル5−3が形成されている。
【0016】
図5の噴口部材が、図4のヘッド本体の円筒型の溝部に挿入されて本発明の噴射パターン可変ヘッドが構成される。
噴口部材のヘッド本体の円筒型の溝部への挿入は、噴口部材の円筒部に形成されたネジの直径よりも若干小さく形成された溝部へ押し込むことによって、溝部の内部が挿入された円筒部のねじによって変形するようになっている。
そのために、噴口部材の材質をヘッド本体の材質よりも硬い材料を使用する。
具体的には、噴口部材は、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ナイロン等の材料を使用すると共に、ヘッド部材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の材料を使用する。
【0017】
次に、噴口部材がヘッド本体の円筒型の溝部へ挿入された状態で、どのように噴射パターンが可変できるかを図6及び7を使用して以下に説明する。
図6は、本発明の噴射パターン可変ヘッドの噴射パターン調整用ハンドルを上方に回転させた状態を示している。
図6の(A)は正面図であり、(B)はその上面図であり、(C)はa−a’面で切断した際の断面図である。
【0018】
図6の(C)から理解できるように、噴射パターン調整用ハンドルを上方に回転させることによって、当該噴射パターン調整用ハンドル部に一体に形成されている円筒部5−1に形成されたネジの作用によって、噴口部材が円筒型の溝部4−1内方向に後退して、放射状の通路のみを残して閉鎖された状態になって、この状態では、内容液がこの放射状流路を通過することにより噴射口内で回転力が生じて広い拡散角で噴射される。
【0019】
図7は、本発明の噴射パターン可変ヘッドの噴射パターン調整用ハンドル部を測方に回転させた状態を示している。
図7の(A)は正面図であり、(B)はその上面図であり、(C)はa−a’面で切断した際の断面図である。
【0020】
図7の(C)から理解できるように、噴射パターン調整用ハンドル部を上方に回転させることによって、当該噴射パターン調整用ハンドル部に一体に形成されている円筒部5−1に形成されたネジの作用によって、噴口部材が円筒型の溝部4−1外方向に前進して、
放射状流路の前面が離間する状態となるので、内容物の放出流の回転力が抑制されて拡散角度が小さくなる。
【0021】
このように、噴射パターン調整用ハンドルを上方から側方に変化させることによって、内容物の拡散角度を調整することができる。
噴射パターン調整用ハンドルを図6と図7の間の角度にすることによって、内容物の噴射拡散角度を微調整することもできる。
【0022】
なお、図4及び図5の説明では、ヘッド部材に形成された円筒形の溝部の内壁に複数の放射状流路が形成しているが、この放射状流路は、円筒形の溝部内部の円筒部の先端部に形成しても良い。
その場合の図面を図8(B)に示す。
図8における(A)は、図5の(D)に相当する図であり、(C)は図4の(B)に相当する図であり、(D)は図6の(C)に相当する図である。
【0023】
また、ヘッド部材に形成された円筒部に形成する「ねじ」としては「多条ねじ」が望ましい。
「多条ねじ」は1ピッチの間に2条或いは3条のらせんが形成されるねじであって、図9に示す如く、1回転した時に進む距離(リード)が1条ねじの場合には「ピッチ=リード」でるが、多条ねじの場合には、「リードはピッチの条数倍」となるので、少ない回転(図6及び図7の場合は90度)で多くのリード(距離)をかせげるのでより望ましい。
【0024】
本発明の噴射パターン可変ヘッドは、上述の説明からも明らかなように、使用する容器としては、エアゾールタイプでもポンプタイプでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
請求項1〜6に記載の発明は、部品点数が少なく、その組み立てが容易で安価な噴射パターン可変ヘッドが実現できるので産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のエアゾール容器用噴射ボタンの断面を示す図である。
【図2】従来のの噴口部材を示す図である。
【図3】従来の噴射ボタンの通常状態を示す一部破断図である。
【図4】本発明のヘッド本体部を示す図である。
【図5】本発明の噴口部材を示す図である。
【図6】本発明の噴射パターン可変ヘッドの噴射パターン調整用ハンドルを上方に回転させた状態を示す図である。
【図7】本発明の噴射パターン可変ヘッドの噴射パターン調整用ハンドル部を測方に回転させた状態を示す図である。
【図8】放射状流路を円筒形の溝部内部の円筒部の先端部に形成した場合の図である。
【図9】多条ねじのリードとピッチを説明する図である。
【符号の説明】
【0027】
6−1 ヘッド本体部
6−2 噴口部材
6−3 噴口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が通過する複数の放射状流路の形成された旋回面と、該旋回面に対向する平面との相対距離を可変することによって、内容物の噴射拡散角度を調節する噴射パターン可変ヘッドであって、
円筒状の溝部及び該溝部内に同心状の円筒部を備えた、内容物の充填された容器に結合されるヘッド本体と、
前記円筒状の溝部に結合される中空の円筒部を備えた噴口部材と、
前記噴口部材を回動することによって前記放射状流路の形成された旋回面と、該旋回面に対向する前記ヘッド本体の前記円筒部の先端平面との相対距離を可変することを特徴とする噴射パターン可変ヘッド。
【請求項2】
前記ヘッド本体の円筒状の溝部と前記噴口部材の中空の円筒部との結合手段として、
ヘッド本体を構成する材質は、噴口部材の材質よりも柔らかな材質とすると共に、結合される噴口部材の中空の円筒部の外側にねじを形成することを特徴とする請求項1に記載の噴射パターン可変ヘッド。
【請求項3】
前記ねじは、多条ねじで形成されることを特徴とする請求項2に記載の噴射パターン可変ヘッド。
【請求項4】
前記噴口部材には、当該噴口部材をヘッド本体に対して相対的に回転させるためのハンドルが備えられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の噴射パターン可変ヘッド。
【請求項5】
前記噴口部材を回転範囲を規制する規制部材を備えることを特徴とする請求項4に記載の噴射パターン可変ヘッド。
【請求項6】
エアゾールタイプ若しくはポンプタイプの容器に取付け可能な請求項1〜5のいずれか1項に記載の噴射パターン可変ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−15299(P2006−15299A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197917(P2004−197917)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】