説明

噴射装置、および噴射器

【課題】直噴射と霧噴射とを切り換え可能とする噴射器において、直噴射の場合には噴射圧を小さくして患部からの跳ね返りを少なくするとともに、霧噴射の場合には、十分な噴射圧を確保して完全なミスト状態を得る。
【解決手段】噴射口400aから水虫薬等の液体を、直線状に噴射する直噴射と、ミスト状に噴射する霧噴射とを切り換え自在とする噴射装置300において、直噴射としたとき圧を高めることなく液体を直圧で直ちに噴射し、霧噴射としたとき圧を高めてから蓄圧で一気に噴射する。例えば、ノズル部材400を有するボタン部材500をステム部材16まわりに回動して直噴射位置または霧噴射位置とし、直噴射と霧噴射とを切り換えてノズル部材400の噴射口400aから液体を噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器内の、例えば水虫薬などの液体を、噴射口から患部に向けて噴射する噴射器に関する。および、そのような噴射器において、容器の口部に取り付けて容器内の液体を外部に向けて噴射する、ポンプ式の噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、噴射器の中には、容器内の液体を噴射口から、直線状に噴射する直噴射と、ミスト状に噴射する霧噴射とを選択可能とし、使用目的に応じて使い分け、狭い範囲に集中的に塗布したい場合には容器内の液体を外部に向けて直噴射し、広い範囲に均一に塗布したい場合には、霧噴射するものがある。
【0003】
このような噴射器には、直噴射のときと霧噴射のときとで共通の1つのノズル部材とともに、直噴射通路と霧噴射通路の2つの噴射通路を備えるものと、直噴射用の噴射口を有するノズル部材および霧噴射用の噴射口を有するノズル部材の2つのノズル部材とともに、直噴射のときと霧噴射のときとで共通の1つの噴射通路を備えるものとがあった。前者では、例えば、ノズル部材を有するボタン部材をステム部材まわりに回動して直噴射位置または霧噴射位置とし、直噴射と霧噴射とを切り換えてノズル部材の噴射口から液体を噴射していた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−144987号公報
【特許文献2】実開昭62−136255号公報
【特許文献3】実開昭62−136258号公報
【特許文献4】実開昭62−136259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この種の従来の噴射器は、いずれも、直噴射のときには噴射圧が高く、患部に当てたとき跳ね返りがあったり、霧噴射のときには、噴射圧が不足して完全なミスト状態を確保できなかったりする問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、直噴射と霧噴射とを切り換え可能とする噴射器において、直噴射の場合には噴射圧を小さくして患部からの跳ね返りを少なくするとともに、霧噴射の場合には、十分な噴射圧を確保して完全なミスト状態を得ることができる噴射装置、およびそれを容器に取り付けて備える噴射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、上述した目的を達成すべく、この発明の第1の態様は、噴射口から水虫薬等の液体を、直線状に噴射する直噴射と、ミスト状に噴射する霧噴射とを切り換え自在とする噴射装置において、直噴射としたとき圧を高めることなく液体を直圧で直ちに噴射し、霧噴射としたとき圧を高めてから蓄圧で一気に噴射することを特徴とする。例えば、操作部材であるボタン部材に、噴射口を有するノズル部材を設けて、そのノズル部材を有するボタン部材を、液噴出管であるステム部材まわりに回動して直噴射位置または霧噴射位置とし、直噴射と霧噴射とを切り換えてノズル部材の噴射口から液体を噴射する。
【0008】
また、シリンダ部材内に入れて軸方向に往復動自在とし、シリンダ部材内に圧力室を形成する一方、管状のステム部材の中心に貫挿して先端をステム部材から突出するピストン部材と、第1連通孔と第2連通孔を有し、ステム部材の先端に被せてピストン部材の先端を押し当てることにより第2連通孔を塞ぎ、ステム部材の先端との間に第1連通孔に通ずる第1空間を区画するキャップ型の中間部材と、直噴射を行うとき液体を通過する直噴射通路と霧噴射を行うとき液体を通過する霧噴射通路とを有し、中間部材を介してステム部材まわりに回動自在に取り付けたとき、中間部材との間に霧噴射通路に通ずる第2空間を区画し、直噴射位置としたとき直噴射通路を第1連通孔を介して第1空間と連通するボタン部材とを備える。
【0009】
ボタン部材には、周面に開口してノズル部材を取り付けるノズル部材収納穴と、そのノズル部材収納穴の中心に外向きに突出して形成するセンターポールと、そのセンターポールの中心を内部から外向きに貫通する直噴射通路と、センターポールのまわりで内部からノズル部材収納穴に貫通する霧噴射通路とを備えるとよい。
【0010】
このとき、ボタン部材を直噴射位置としてステム部材を押し込むときのストロークを、ボタン部材を霧噴射位置としてステム部材を押し込むときのストロークより小さく規制するとよい。
【0011】
ボタン部材を所定の回動位置としてステム部材を押し込むときのストロークは、ボタン部材を別の回動位置としてステム部材を押し込むときのストロークより小さく規制するとよい。
【0012】
また、上述した目的を達成すべく、この発明の第2の態様は、噴射器において、容器に取り付けて以上のような噴射装置を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の第1の態様によれば、ノズル部材の噴射口から液体を直噴射または霧噴射で噴射する噴射装置において、直噴射としたとき液体を直圧で噴射し、霧噴射としたとき蓄圧で噴射するので、直噴射の場合には噴射圧を小さくして患部からの跳ね返りを少なくするとともに、霧噴射の場合には、十分な噴射圧を確保して完全なミスト状態を得ることができる。
【0014】
ここで、ノズル部材を有するボタン部材をステム部材まわりに回動して直噴射位置または霧噴射位置とすることにより直噴射と霧噴射とを切り換えてノズル部材の噴射口から液体を噴射するようにすると、作動を確実として直噴射と霧噴射の切り換えを正確に行うことができる。
【0015】
また、シリンダ部材内に入れて軸方向に往復動自在とし、シリンダ部材内に圧力室を形成する一方、管状のステム部材の中心に貫挿して先端をステム部材から突出するピストン部材と、第1連通孔と第2連通孔を有し、ステム部材の先端に被せてピストン部材の先端を押し当てることにより第2連通孔を塞ぎ、ステム部材の先端との間に第1連通孔に通ずる第1空間を区画するキャップ型の中間部材と、直噴射を行うとき液体を通過する直噴射通路と霧噴射を行うとき液体を通過する霧噴射通路とを有し、中間部材を介してステム部材まわりに回動自在に取り付けたとき、中間部材との間に霧噴射通路に通ずる第2空間を区画し、直噴射位置としたとき直噴射通路を第1連通孔を介して第1空間と連通するボタン部材とを備えるようにすると、作動を確実として直噴射と霧噴射の切り換えを正確に行うことができる。
【0016】
さらに、ボタン部材には、周面に開口してノズル部材を取り付けるノズル部材収納穴と、そのノズル部材収納穴の中心に外向きに突出して形成するセンターポールと、そのセンターポールの中心を内部から外向きに貫通する直噴射通路と、センターポールのまわりで内部からノズル部材収納穴に貫通する霧噴射通路とを備えると、従来の構成を大きく変更することなく、直噴射と霧噴射の切り換えを簡単に行うことができる。
【0017】
このとき、ボタン部材を直噴射位置としてステム部材を押し込むときのストロークを、ボタン部材を霧噴射位置としてステム部材を押し込むときのストロークより小さく規制すると、直噴射の場合には、ストロークを小さく規制した分、噴射圧を小さくして一層患部からの跳ね返しを少なくするとともに、吐出量を少なくして患部からの液垂れを防止することができる。
【0018】
この発明の第2の態様によれば、噴射器において、容器に取り付けて以上のような噴射装置を備えるので、直噴射の場合には噴射圧を小さくして患部からの跳ね返りを少なくするとともに、霧噴射の場合には、十分な噴射圧を確保して完全なミスト状態を得ることができる噴射器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、この発明に係る噴射装置を容器に取り付けて備える往復ポンプ式の噴射器の外観を示す。
【0020】
図中符号100は、容器である。容器100は、プラスチック材料でボトル形状につくり、図示しないが、その口部100a外周には雄ネジを設け、この例では、内部に内容物として、液体である水虫薬を収納してなる。
【0021】
その容器100の口部100aには、外周の雄ネジにキャップ部材200をねじ付けてポンプ式噴射装置300を取り付ける。噴射装置300には、ノズル部材400を有するボタン部材500を設ける。そして、ボタン部材500には、透明なトップキャップ600を被せてキャップ部材200にはめ付けてなる。
【0022】
ところで、キャップ部材200には、上縁外周に、直噴射位置を示す第1の印200aと霧噴射位置を示す第2の印200bを設ける。また、ボタン部材500には、ノズル部材400位置を通る縦の指示線500aを設ける。
【0023】
図2には、ポンプ式噴射装置300の縦断面を示す。
図示するとおり、噴射装置300は、大まかに、シリンダ部材10内にピストン部材12を入れ、シリンダ部材10に上述したキャップ部材200を被せるとともに、ピストン部材12を管状のステム部材16に貫挿して先端をステム部材16から突出し、ステム部材16の先端に中間部材14を被せてその中間部材14を介してステム部材16に上述したボタン部材500を取り付けて構成する。
【0024】
詳しくは、シリンダ部材10には、鍔部10aを設けるとともに、底部に入口10bを有する。そして、シリンダ部材10の下部に、第1筒部材20を被せる。第1筒部材20は、倒立吸込み口20aをあけ、弁座20bを有する。その第1筒部材20内には、第2筒部材22を連結する。第2筒部材22は、内部にボール弁21を収納して正立吸込み口22aと横孔22bと外周面の複数の縦溝22cと弁座22dを有する。第2筒部材22には、正立吸込み口22aと連通してパイプ部材23を連結する。
【0025】
これにより、倒立吸込み口20aおよび正立吸込み口22aから横孔22bを通して縦溝22cを通過し、入口10bに達する吸込み通路24を形成する。そして、倒立吸込み口20aと横孔22b間は、重力により落下したボール弁21で弁座22dを開閉自在に塞ぐようにする。
【0026】
シリンダ部材10内には、コイル状のスプリング25を入れてから、前述のピストン部材12を挿入する。ピストン部材12は、中段の肩部12aより上を若干小径とし、下部の大径部12bの軸心に吸込み通路12cを設けるとともに、その吸込み通路12cから径方向に貫通して入口孔12dを設け、その入口孔12dを開閉自在に大径部12bまわりに弾性弁26を取り付ける。また、小径部12eのまわりには、肩部12a上に載せて弾性出口弁27を取り付ける。そして、ピストン部材12は、シリンダ部材10内に入れて軸方向に往復動自在とし、ピストン部材12と弾性弁26と弾性出口弁27とで区画してシリンダ部材10内に圧力室28を形成する。
【0027】
ピストン部材12の小径部12eは、管状のステム部材16の中心に貫挿し、先端をステム部材16から突出してなる。それから、前述のキャップ部材200内にシール部材29を入れてそのキャップ部材200をシリンダ部材10に被せ、鍔部10aに上から抱き付かせる。キャップ部材200には、その頂部から上向きにまっすぐに係止突起200cを立てる。
【0028】
その後、ステム部材16の先端に、中間部材14を被せるように取り付ける。中間部材14は、鍔付きのキャップ型をなし、鍔部とそれから筒状に立ち上がる筒部と頂部とで構成する。そして、筒部に周面に開口する第1連通孔14aをあけ、頂部に頂面に開口する第2連通孔14bをあけてなる。その第2連通孔14bの周縁には、係合筒部14cを設けて、スプリング25で押し上げるピストン部材12の先端を押し込むことにより第2連通孔14bを塞ぎ、ステム部材16の先端との間に第1連通孔14aに通ずる第1空間30を区画する。鍔部の溝14dには、キャップ部材200の係止突起200cを挿入してキャップ部材200で中間部材14をまわり止めする。
【0029】
その中間部材14上には、前述のボタン部材500を取り付ける。ボタン部材500は、頂面に指掛け部500bを有する。また、ボタン部材500には、周面に開口するノズル部材収納穴500cと、そのノズル部材収納穴500cの中心に外向きに突出して形成するセンターポール500dと、そのセンターポール500dの中心を内部から外向きに貫通する直噴射通路35と、センターポール500dのまわりで内部からノズル部材収納穴500cに貫通する霧噴射通路36とを備える。直噴射通路35は、直噴射するとき液体を通過し、また霧噴射通路36は、霧噴射するとき液体を通過する。
【0030】
ボタン部材500のノズル部材収納穴500cには、圧入することによりノズル部材400を取り付ける。ノズル部材400は、図3に示すように、キャップ状で、頂部50と筒部60とからなる。頂部50には、中心に上述の噴射口400aを有する。頂部50の内面には、その噴射口400aを中心とする円形の中心凹部400cと、それから接線方向にのびる4つの凹溝状のスクリュ400bを設ける。一方、筒部60には、外周面に周方向の外周突起61を形成し、内周面に4つの軸方向の膨出部62を設ける。これにより、ノズル部材400をノズル部材収納穴500c内に圧入したとき、センターポール500dの外周に膨出部62を当ててそれらの間に液通路となるスペースを確保するとともに、ボタン部材500に外周突起61を食い込ませて抜け止めする。
【0031】
そして、ノズル部材400を有するボタン部材500を、中間部材14を介してステム部材16上に回動自在に取り付け、ステム部材16まわりに回動することにより図1に示す指示線500aをキャップ部材200の第1の印200aに合わせて直噴射位置とし、または第2の印200bに合わせて霧噴射位置として、ノズル部材400の噴射口400aから液体を直線状に噴射する直噴射と、ミスト状に噴射する霧噴射とを切り換え自在とする。
【0032】
この中間部材14上にボタン部材500を取り付けたとき、中間部材14との間に霧噴射通路36に通ずる第2空間31を区画し、さらにそのボタン部材500を直噴射位置としたときは直噴射通路35を第1連通孔14aを介して第1空間30と連通する。
【0033】
ところで、ボタン部材500には、逃げ溝500eを設け、キャップ部材200には、ボタン部材500を霧噴射位置としたとき逃げ溝500eに入り込むリブ200dを形成する。そして、ボタン部材500を霧噴射位置としてステム部材16を押し込むときには、リブ200dが逃げ溝500e内に入り込み、ボタン部材500を深く押し込み可能とするが、ボタン部材500を直噴射位置としてステム部材16を押し込むときには、ボタン部材500をリブ200dに押し当て、ボタン部材500を深く押し込むことができないようにする。これにより、ボタン部材500を直噴射位置としてステム部材16を押し込むときのストロークを、ボタン部材500を霧噴射位置としてステム部材16を押し込むときのストロークより小さく規制する。
【0034】
ボタン部材500には、透明なトップキャップ600を被せ、キャップ部材200にはめ付ける。そして、以上のようにして組み立てた噴射装置300は、パイプ部材23の先端を口部100aから容器100内に入れ、容器100内の底部に向けてのばし、図4に示すように口部100aにキャップ部材200をねじ付けて口部100aとシリンダ部材10の鍔部10aとの間でパッキン37を圧縮し、容器100の口部100aに取り付けてなる。
【0035】
いま、この噴射器を正立状態で使用して容器100内の水虫薬を噴射口400aから直噴射し、患部に集中的に塗布したいときは、トップキャップ600を外してステム部材16を中心としてボタン部材500を回動し、図1に示すようにボタン部材500の指示線500aをキャップ部材200の第1の印200aに合わせ、ボタン部材500を直噴射位置として図4に示すように第1連通孔14aと直噴射通路35とを一致し、直噴射通路35を通して噴射口400aを第1空間30に連通する。
【0036】
もちろん、指示線500aは、縦線に限らず、矢印などでもよく、また第1の印200aも、キャップ部材200の上縁外周に限らず、適宜の印をその他の適宜の位置に設けてもよい。また、表示に限らず、もしくは表示とともに、クリック感によりボタン部材500の回動位置を確認するようにしてもよい。
【0037】
その後、容器100を載置台上に載せた状態で指掛け部500bに手のひらを当てたり、または容器100を手で持って指掛け部500bに指を掛けたりしてボタン部材500を押し込み、スプリング25に抗して中間部材14を介してステム部材16を押し下げ、弾性出口弁27を押し込んで圧力室28の圧力を上昇し、やがてピストン部材12をシリンダ部材10内に押し入れる。
【0038】
すると、ピストン部材12と弾性出口弁27との間を開き、圧力室28の圧力の上昇とともに、圧力室28の水虫薬をピストン部材12と弾性出口弁27との間から、ピストン部材12とステム部材16との間の吐出通路32を通して第1空間30に入れ、図5に示すように圧を高めることなく直圧で直ちに第1連通孔14aより直噴射通路35に導き、直噴射通路35を通して水虫薬を噴射口400aから外部へとまっすぐに直噴射する。このときは、ボタン部材500をリブ200dに当てて止める。
【0039】
そして、圧力室28の圧の低下とともにスプリング25の付勢力でシリンダ部材10内からピストン部材12を押し出し、やがて弾性出口弁27との間を塞ぐ。それから、ボタン部材500から手を離すと、スプリング25の付勢力でピストン部材12を復帰して弾性出口弁27を介してステム部材16を押し上げ、中間部材14を介してボタン部材500を押し上げる。
【0040】
すると、ピストン部材12の押し上げとともに圧力室28を負圧化し、図6に示すように弾性弁26を弾性変形して入口孔12dを開き、容器100内の水虫薬をパイプ部材23を介して正立吸込み口22aから吸い上げ、横孔22bから吸込み通路24を通して入口10bよりシリンダ部材10内に入れ、吸込み通路12cを通して入口孔12dから圧力室28に吸い込む。
【0041】
弾性出口弁27がシール部材29に突き当たる位置まで復帰して圧力室28がほぼ大気圧となると、図4に示す状態に戻り、弾性弁26が元の形状に復する。そして、ボタン部材500を再度押し込むと、再び容器100内の水虫薬を噴射口400aからまっすぐ直噴射する。
【0042】
また、噴射器を倒立状態で使用して噴射口400aから直噴射したいときは、図7に示すように噴射器を逆さにする。すると、重力により、容器100内の水虫薬が口部100a側に移動するとともに、ボール弁21が落下して弁座20bを開閉自在に塞ぐこととなる。この状態で、指掛け部500bに指を掛けてボタン部材500を押し込み、スプリング25に抗して中間部材14を介してステム部材16を押し込み、弾性出口弁27を押し上げて圧力室28の圧力を高め、ピストン部材12をシリンダ部材10内に押し入れる。
【0043】
すると、ピストン部材12と弾性出口弁27との間を開き、圧力室28の圧力の上昇とともに、圧力室28の水虫薬をピストン部材12と弾性出口弁27との間から、ピストン部材12とステム部材16との間の吐出通路32を通して第1空間30に入れ、図8に示すように圧を高めることなく直圧で直ちに第1連通孔14aより直噴射通路35に導き、直噴射通路35を通して水虫薬を噴射口400aから外部へとまっすぐに直噴射する。このときも、ボタン部材500は、リブ200dに当てて止める。
【0044】
そして、圧力室28の圧の低下とともにシリンダ部材10内からピストン部材12を押し出し、やがて弾性出口弁27との間を塞ぐ。それから、ボタン部材500から手を離すと、スプリング25の付勢力でピストン部材12を押し出して弾性出口弁27を介してステム部材16を下降し、中間部材14を介してボタン部材500を押し下げる。
【0045】
そして、ピストン部材12の下降とともに圧力室28を負圧化し、図9に示すように弾性弁26を弾性変形して入口孔12dを開くとともに、ボール弁21を開いて容器100内の水虫薬を倒立吸込み口20aから吸い込み、横孔22bから吸込み通路24を通して入口10bよりシリンダ部材10内に入れ、吸込み通路12cを通して入口孔12dから圧力室28に吸い込む。
【0046】
なお、このとき圧力室28の負圧化により細長いパイプ部材23内に充満した水虫薬を吸い込むには大きな負圧力を必要とすることから、その負圧力となる前に図9に示すようにボール弁21が弁座20bより浮き上がり、容器100内の水虫薬は、倒立吸込み口20aから第2筒部材22内に入ることとなる。
【0047】
次に、図示噴射器を使用して容器100内の水虫薬を噴射口400aから霧噴射し、ミスト状として患部の広い範囲に均一に塗布したいときは、ステム部材16を中心としてボタン部材500を回動し、図10に示すようにボタン部材500の指示線500aをキャップ部材200の第2の印200bに合わせ、ボタン部材500を霧噴射位置として図11に示すように第1連通孔14aと直噴射通路35とをずらせて、第1空間30と直噴射通路35との連通を中間部材14で遮断する。
【0048】
このとき、キャップ部材200の第2の印200bも、第1の印200aと同様に、キャップ部材200の上縁外周に限らず、適宜の印をその他の適宜の位置に設けてもよい。また、表示に限らず、もしくは表示とともにクリック感によりボタン部材500の霧噴射位置を認識し得るようにしてもよい。
【0049】
その後、ボタン部材500を押し込み、スプリング25に抗して中間部材14を介してステム部材16を押し下げ、弾性出口弁27を押し込んでピストン部材12をシリンダ部材10内に押し入れる。すると、弾性出口弁27の押し込みとともに圧力室28の圧力を上昇し、やがてその圧力でピストン部材12を押し下げて中間部材14の係合筒部14cとの間に隙間を生じ、圧力室28の水虫薬をピストン部材12と弾性出口弁27との間から、吐出通路32を通して第1空間30に入れ、中間部材14の係合筒部14cとの隙間を通して第2空間31に入れる。そして、霧噴射通路36を通して水虫薬をノズル部材収納穴500cに導き、スクリュ400bでミスト状として図12に示すように噴射口400aから外部へと霧噴射する。
【0050】
この霧噴射のときは、圧力室28の圧力が一定以上となるまで圧力を高めて水虫薬を蓄圧で一気に噴射する。そして、このときは、キャップ部材200のリブ200dがボタン部材500の逃げ溝500eに入り、ボタン部材500の深い押し下げを可能とする。よって、十分な噴射圧を確保して完全なミスト状態を得ることができる。
【0051】
そして、圧力室28の圧の低下とともにスプリング25の付勢力でシリンダ部材10内からピストン部材12を押し出し、やがて弾性出口弁27との間を塞ぐ。それから、ボタン部材500から手を離すと、直噴射の場合と同様に、スプリング25の付勢力でピストン部材12を復帰して弾性出口弁27を介してステム部材16を押し上げ、中間部材14を介してボタン部材500を押し上げる。
【0052】
すると、ピストン部材12の押し上げとともに圧力室28を負圧化し、図13に示すように弾性弁26を弾性変形して入口孔12dを開き、容器100内の水虫薬をパイプ部材23を介して正立吸込み口22aから吸い上げ、横孔22bから吸込み通路24を通して入口10bよりシリンダ部材10内に入れ、吸込み通路12cを通して入口孔12dから圧力室28に吸い込む。
【0053】
そして、弾性出口弁27がシール部材29に突き当たる位置まで復帰して圧力室28がほぼ大気圧となると、図11に示す状態に戻り、弾性弁26が元の形状に戻る。そして、ボタン部材500を再度押し込むと、再び容器100内の水虫薬を噴射口400aからミスト状に霧噴射する。
【0054】
ところで、図示例の噴射器では、ボタン部材500を直噴射位置としてステム部材16を押し込むときはリブ200dに押し当て、そのときのストロークを、ボタン部材500を霧噴射位置としてステム部材16を押し込むときのストロークより小さく規制する。そして、このように直噴射の場合には、ストロークを小さく規制した分、噴射圧を小さくして一層患部からの跳ね返しを少なくするとともに、吐出量を少なくして患部からの液垂れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明に係る噴射装置を備える往復ポンプ式噴射器の、直噴射使用状態における外観斜視図である。
【図2】その噴射器に備える噴射装置の縦断面図である。
【図3】その噴射装置に備えるノズル部材で、(A)は縦断面図、(B)はその右側面図である。
【図4】その噴射器の正立での直噴射使用状態の縦断面図である。
【図5】その正立での直噴射状態の縦断面図である。
【図6】その直噴射状態のボタン部材から手を離した状態の縦断面図である。
【図7】その噴射器の倒立での直噴射使用状態の縦断面図である。
【図8】その倒立での直噴射状態の縦断面図である。
【図9】その直噴射状態のボタン部材から手を離した状態の縦断面図である。
【図10】その噴射器の、霧噴射使用状態における外観斜視図である。
【図11】その噴射器における霧噴射使用状態の平面図である。
【図12】その霧噴射状態の縦断面図である。
【図13】その霧噴射状態のボタン部材から手を離した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
100 容器
200 キャップ部材
200a 直噴射位置を示す第1の印
200b 液噴射位置を示す第2の印
200d リブ
300 ポンプ式噴射装置
400 ノズル部材
400a 噴射口
500 ボタン部材
500c ノズル部材収納穴
500d センターポール
500e 逃げ溝
10 シリンダ部材
12 ピストン部材
14 中間部材
14a 第1連通孔
14b 第2連通孔
14c 係合筒部
16 ステム部材
28 圧力室
30 第1空間
31 第2空間
35 直噴射通路
36 霧噴射通路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射口から液体を直線状に噴射する直噴射とミスト状に噴射する霧噴射とを切り換え自在とする噴射装置において、
前記直噴射としたとき液体を直圧で噴射し、前記霧噴射としたとき蓄圧で噴射することを特徴とする、噴射装置。
【請求項2】
ノズル部材を有するボタン部材をステム部材まわりに回動して直噴射位置または霧噴射位置とし、前記直噴射と前記霧噴射とを切り換えて前記ノズル部材の噴射口から液体を噴射することを特徴とする、請求項1に記載の噴射装置。
【請求項3】
シリンダ部材内に入れて軸方向に往復動自在とし、前記シリンダ部材内に圧力室を形成する一方、管状の前記ステム部材の中心に貫挿して先端を前記ステム部材から突出するピストン部材と、
第1連通孔と第2連通孔を有し、前記ステム部材の先端に被せて前記ピストン部材の先端を押し当てることにより前記第2連通孔を塞ぎ、前記ステム部材の先端との間に前記第1連通孔に通ずる第1空間を区画するキャップ型の中間部材と、
直噴射を行うとき液体を通過する直噴射通路と霧噴射を行うとき液体を通過する霧噴射通路とを有し、前記中間部材を介して前記ステム部材まわりに回動自在に取り付けたとき、前記中間部材との間に前記霧噴射通路に通ずる第2空間を区画し、前記直噴射位置としたとき前記直噴射通路を前記第1連通孔を介して前記第1空間と連通する前記ボタン部材と、
を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の噴射装置。
【請求項4】
前記ボタン部材に、周面に開口して前記ノズル部材を取り付けるノズル部材収納穴と、そのノズル部材収納穴の中心に外向きに突出して形成するセンターポールと、そのセンターポールの中心を内部から外向きに貫通する前記直噴射通路と、前記センターポールのまわりで内部から前記ノズル部材収納穴に貫通する前記霧噴射通路と、
を備えることを特徴とする、請求項3に記載の噴射装置。
【請求項5】
前記ボタン部材を前記直噴射位置として前記ステム部材を押し込むときのストロークを、前記ボタン部材を前記霧噴射位置として前記ステム部材を押し込むときのストロークより小さく規制することを特徴とする、請求項3または4に記載の噴射装置。
【請求項6】
容器に取り付けて請求項1ないし5のいずれか1に記載の噴射装置を備えることを特徴とする、噴射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−152276(P2007−152276A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353438(P2005−353438)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】