説明

噴射装置

【課題】構造物の表層の剥離若しくはその表面の洗浄をより効果的に行なう噴射装置を提供すること。
【解決手段】構造物の表面に水又は懸濁水を噴射する噴射ユニットを有する噴射装置において、前記噴射ユニットを回動自在に支持する支持ユニットと、前記支持ユニットに支持された前記噴射ユニットを、直線軌道上で往復移動させる移動手段と、前記噴射ユニットがその往復移動の一方の折り返し位置に到達した時に、前記噴射ユニットの水又は懸濁水の噴射方向が、前記直線軌道と直交する直交方向から角度+θの方向となるように前記噴射ユニットの回動位置を設定する第1設定手段と、前記噴射ユニットがその往復移動の他方の折り返し位置に到達した時に、前記前記噴射ユニットの水又は懸濁水の噴射方向が、前記直交方向から角度−θの方向となるように前記噴射ユニットの回動位置を設定する第2設定手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の天井や壁等を含む構造物の付着物若しくはその表層の剥離、或いは、当該構造物の表面を洗浄する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昭和49年頃までの建築物では、天井や壁に耐火材、断熱材或いは吸音材として、アスベスト含有物(例えば、アスベストと結合剤とを混合したもの。)が多用されていた。しかし、近年に至ってアスベストが人体の健康を損なう畏れがあることが指摘され、既設建築物におけるアスベスト含有物の除去が急務となっている。このような建築物の構造物の表層を剥離若しくはその表面を洗浄する装置として、例えば、特許文献1には圧力水を付着物に噴射し、噴射位置を順次移動していくことで付着物を剥離粉砕する装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平1−165875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、表層の剥離等の作業をより短時間で終了させるためには、当該剥離等をより効果的に行なう必要がある。特許文献1のように水を噴射することで付着物の剥離を行なう場合、水の噴射方向を付着面に対して垂直な方向とすると、付着物が微細に粉砕して剥離する。このため、付着物を完全に剥離するためには同じ箇所に水を噴射する時間が長くなる傾向にあり、また、水の噴射圧をより高圧にする必要がある。噴射圧を高圧にすると、作業空間内に水、付着物粉が霧状に散乱して作業効率を低下させる場合がある。
【0005】
一方、水の噴射方向を付着面に対して垂直な方向から傾斜した方向とすると、木の皮を剥ぐようにして付着物を剥離することができ、付着物を塊として剥離し易い。このため、付着物の剥離時間を短縮することができ、また、水の噴射圧をより低圧とすることができる。しかし、付着物と建築物の壁面等との付着状態は付着物の各部位によって異なり、噴射方向により剥れ易い部位と剥れ難い部位とが存在する。したがって、噴射位置を順次移動していった際、付着物が残存する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、構造物の表層の剥離若しくはその表面の洗浄をより効果的に行なう噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、構造物の表面に水又は懸濁水を噴射する噴射ユニットを有する噴射装置において、前記噴射ユニットを回動自在に支持する支持ユニットと、前記支持ユニットに支持された前記噴射ユニットを、直線軌道上で往復移動させる移動手段と、前記噴射ユニットがその往復移動の一方の折り返し位置に到達した時に、前記噴射ユニットの水又は懸濁水の噴射方向が、前記直線軌道と直交する直交方向から角度+θの方向となるように前記噴射ユニットの回動位置を設定する第1設定手段と、前記噴射ユニットがその往復移動の他方の折り返し位置に到達した時に、前記前記噴射ユニットの水又は懸濁水の噴射方向が、前記直交方向から角度−θの方向となるように前記噴射ユニットの回動位置を設定する第2設定手段と、を備えたことを特徴とする噴射装置が提供される。
【0008】
本発明の噴射装置は、前記移動手段を備えたことにより、前記噴射ユニットを往復移動させ、水又は懸濁水の噴射位置を往復移動する。その際、前記第1設定手段と前記第2設定手段とを備えたことにより、噴射角度が往復移動方向と直交する方向から傾斜した方向とされ、かつ、前記噴射ユニットの往路と復路とで噴射角度が反転する。これにより、水又は懸濁水の噴射方向を構造物表面に対して垂直な方向から傾斜した方向とし、かつ、前記噴射ユニットの往路と復路とで噴射角度が反転するので、剥離残しが少なく、かつ、塊として表層を剥離でき、或いは、洗浄の腰が少なくなり、構造物の表層の剥離若しくはその表面の洗浄をより効果的に行なうことができる。
【0009】
本発明においては、前記支持ユニットは、前記第1及び第2設定手段による前記噴射ユニットの回動を許容する一方、前記移動手段による前記前記噴射ユニットの移動中に、前記第1又は第2設定手段により設定された回動位置を維持するように前記噴射ノズルを支持する構成とすることができる。
【0010】
この構成によれば、前記噴射ユニットの往路と復路とで、それぞれ設定された噴射角度を維持できる。
【0011】
また、本発明においては、前記第1及び第2設定手段は、前記噴射ユニットの回動中心から離間した部位において前記噴射ユニットに当接する当接部材である構成とすることができる。
【0012】
この構成によれば、より簡易な構成で前記噴射ユニットの往路と復路とで噴射角度を反転させることができる。
【0013】
上記構成からなる本発明は、建築物の天井、壁等の構造物の表面に付着した付着物或いは当該構造物の表層の剥離、特に、アスベスト含有吹付耐火被覆材、放射性物質、ダイオキシン等の人体に害を与える畏れがある危険物を有する付着物、表層の剥離、或いは、放射化等により人体に害を与える畏れがある建築物の天井、壁等の構造物の表面の洗浄、に好適である。
【発明の効果】
【0014】
以上述べた通り、本発明によれば、構造物の表層の剥離若しくはその表面の洗浄をより効果的に行なう噴射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る噴射装置Aを採用したシステムBの構成図である。システムBは既設建築物の天井、壁等に施工された、アスベスト含有吹付耐火被覆材に代表されるアスベスト含有物を除去するシステムである。
【0016】
室1はアスベスト含有物が天井、壁に施工された既設建築物の一室である。室1には、隣接して仮設の作業室2及び3が設けられている。室1内にはアスベスト含有物の除去作業を行なうロボット4が配設されている。ロボット4は、走行部4a(ここではクローラー)と、多関節アーム4bと、土工板4cと、を備える。ロボット本体の上部にはビデオカメラ4dが設けられており、多関節アーム4bの先端部周辺を撮影可能となっている。
【0017】
多関節アーム4bの先端には、選択的に噴射装置Aとバケット4eが装着可能となっている。アスベスト含有物の剥離作業時には噴射装置Aを多関節アーム4bの先端に装着する。剥離されて床上に散乱したアスベスト含有物は土工板4cにより集められる。
【0018】
剥離したアスベスト含有物の回収時には、バケット4eを多関節アーム4bの先端に装着する。床上のアスベスト含有物はバケット4eによりを掬い上げられ、ホッパ5に投入される。ホッパ5に投入されたアスベスト含有物は作業室3内の圧送装置6により回収装置7に圧送され、回収装置7にて回収袋に袋詰されて回収されることになる。
【0019】
作業室2内には、ロボット4を遠隔操作するための制御装置8とテレビモニタ8aが配設されている。テレビモニタ8aにはビデオカメラ4d及び室1内の各所を撮影するビデオカメラ9により撮影された映像が表示される。作業者は作業室2内にてテレビモニタ8aに表示された映像を見ながらロボット4の遠隔操作を行い、アスベスト含有物の除去作業を行なう。
【0020】
次に、噴射装置Aの構成について説明する。図2(a)は噴射装置Aの正面図、図(b)は噴射装置Aの平面図、図3は図2(a)の線X−Xに沿う噴射装置Aの断面図である。なお、以下の説明において上下方向、左右方向、奥行き方向と言うときは、説明の便宜上、図2(a)の正面図を基準とする。
【0021】
噴射装置Aは、フレーム10と、室1の天井、壁といったアスベスト含有物の付着面に水又は懸濁水を噴射する噴射ユニット20と、噴射ユニット20を支持する支持ユニット30と、支持ユニット30を直線軌道上で往復移動させることにより、噴射ユニット20を直線軌道上で往復移動させる移動機構40と、を備える。
【0022】
フレーム10は一対の正面板11a、11bと、正面板11aの上部、下部に各一端がそれぞれ接続され、正面板11aの背後に延びる一対の部材12aと、正面板11bの上部、下部に各一端がそれぞれ接続され、正面板11bの背後に延びる一対の部材12bと、部材12a及び部材12b間でこれらの他端に接続された部材13a、13bと、部材12a間に接続された部材14a、15aと、部材12b間に接続された、部材14a、15aに相当する部材(不図示)と、を備える。
【0023】
噴射ユニット20は、フラットノズル型の噴射ノズル21と、噴射ノズル21に取り付けられた断面コの字型のブラケット22と、を備える。噴射ノズル21の後部には分岐配管23が接続されており、配管23aからは水(例えば水道水)が噴射ノズル21に圧送され、配管23bからは研削材(例えば、重曹や炭酸カルシウム等の粉体)が高圧空気により圧送される。つまり、本実施形態では水に研削材を混合した懸濁水を噴射ノズル21から噴射するが、水を噴射してもよい。噴射圧力は例えば30乃至140kgf/cm2である。研削材を混入することによりアスべスト含有物の剥離効果を促進することができる。
【0024】
移動機構40は、正面板11a及び11b間に接続された上下の案内棒41a、41bと、正面板11a及び11bにそれぞれ回転自在に支持されたプーリ42a、42bと、プーリ42a及び42b間に巻き回された無端ベルト43と、正面板11aに支持され、プーリ42aを回転駆動するモータ44と、を備える。モータ44aは例えば油圧モータであり、その回転方向により無端ベルト43の走行方向を切り換えることができる。なお、本実施形態では支持ユニット30を往復移動させる移動機構40としてベルト伝動機構を採用したが、他の往復移動機構を用いてもよい。
【0025】
支持ユニット30は噴射ユニット20を回動自在に支持する板状の支持部材31を備える。図6(b)は支持部材31の平面図である。支持部材31は噴射ユニット20の回動中心となる穴31aと、穴31aを中心とした円弧状の長穴31bと、を備える。長穴31bは噴射ユニット20の回動範囲を規制する。
【0026】
図1乃至図3に戻り、図3に示すように、噴射ノズル21の底部には先端にねじが形成された軸体21a、21bが植設されており、軸体21a、21bはブラケット22に設けた穴を通過して穴31a、長穴31bを挿通している。軸体21aは噴射ユニット20の回動中心となる。また、軸体21bが長穴31bを挿通することで、噴射ユニット20の回動範囲が規制されることになる。
【0027】
軸体21a、21bの各先端には締結用のナット31cがそれぞれ2つずつ螺着されている。ナット31cと支持部材31の底面との間には、平ワッシャ31d、及び、スプリングワッシャ31eが介装されている。スプリングワッシャ31eは皿形状のバネ材であり、支持部材31に対する噴射ユニット20の締結力を一定に維持する。
【0028】
支持部材31の下方には、一対の部材32を介して支持部材31に接続されたローラ支持部材33が設けられている。案内棒41aは支持部材31とローラ支持部材33との間、及び、部材32間で囲包された空間を通過している。ローラ支持部材33は4つのローラ33aを回転自在に支持する。4つのローラ33aは、案内棒41aの両側(噴射装置Aの奥行き方向の両側)にそれぞれ2つずつ配設されており、噴射装置Aの上下方向を回転軸方向としている。4つのローラ33aの周面はそれぞれ案内棒41aに当接している。
【0029】
支持ユニット30の下部には、2つのローラ支持部材34と、一つのローラ支持部材35が設けられている。各ローラ支持部材34はそれぞれ、上下に離間した2つのローラ34aを回転自在に支持する。各ローラ34aは噴射装置Aの奥行き方向を回転軸方向としている。各ローラ34aの周面はそれぞれ案内棒41bに当接している。
【0030】
ローラ支持部材35は、噴射装置Aの奥行き方向に離間した2つのローラ35aを回転自在に支持する。各ローラ35aは噴射装置Aの上下方向を回転軸方向としている。各ローラ35aの周面はそれぞれ案内棒41bに当接している。
【0031】
ローラ33a及び35aは支持ユニット30の、奥行き方向の移動を規制し、ローラ34aは上下方向の移動を規制している。したがって、支持ユニット30は、ローラ33a、34a及び35aを介して、案内棒41a及び41bにより案内されて図2(a)の矢印d1方向(案内棒41a、41bと平行な方向)に円滑に移動可能となっている。
【0032】
なお、支持ユニット30を案内棒41a、41bに摺動させる摺動部の構成としては、このようなローラ33a、34a及び35aを用いた構成の他に様々な構成とすることができ、例えば、単に案内棒41a、41bが挿通する穴を有するスリーブ状の部材とすることもできる。しかし、アスベスト含有物の剥離作業時には、室1内に粉塵が充満する場合が多いため、支持ユニット30の円滑な移動を維持する点でローラの採用は有益である。
【0033】
次に、支持ユニット30の中程には無端ベルト43の一部に支持ユニット30を固定する固定部材36a、36bが配設されている。固定部材36bは支持ユニット30の中間部分37に固定されており、固定部材36aは固定部材36aにボルト締結される。固定部材36aと固定部材36bとの当接面には無端ベルト43の一部が挟持され、これにより支持ユニット30と無端ベルト43の一部とが固定される。しかして、モータ44の駆動によりプーリ42aを回転させ、無端ベルト43を走行させると、その回転方向に応じて支持ユニット30が案内棒41a、41bに沿って図2(a)の矢印d1方向に往復移動することになる。その結果、支持ユニット30に支持された噴射ユニット20が矢印d1方向に往復移動することになる。
【0034】
支持ユニット30の中程には、また、一対のセンサ38が設けられている。センサ38は支持ユニット30と正面板11a又は11bとの近接を検出するセンサであり、例えば、タッチスイッチである。センサ38により、支持ユニット30と正面板11a又は11bとの近接が検出されると、モータ44は回転方向を逆転することで、支持ユニット30の移動を折り返すことになる。
【0035】
次に、正面板11a及び11bの上端には、それぞれ、噴射ユニット20の噴射方向を、直線軌道である噴射ユニット20の往復移動方向と直交する直交方向からある角度の方向に設定する回動位置設定ユニット50、60が固定されている。回動位置設定ユニット50は、ブラケット51とブラケット51に支持されるボルト52とを備える。同様に、回動位置設定ユニット60は、ブラケット61とブラケット61に支持されるボルト62とを備える。ボルト52は正面板11aから正面板11bへ向う方向に突出しており、また、ボルト62は正面板11aから正面板11bへ向う方向に突出している。ボルト52、62の突出量はブラケット51、61との締結位置により調整可能である。
【0036】
回動位置設定ユニット50、60は、噴射ユニット20の往復移動の折り返し時に噴射ユニット20の回動中心(穴31a、軸体21a)から離間した部位において、ボルト52及び62が当接部材としてブラケット22の側面に当接し、噴射ユニット20の回動位置を設定する。
【0037】
次に、係る構成からなる噴射装置Aの作用について説明する。図4乃至図6(a)は噴射装置Aの動作説明図である。まず、図2(b)の状態でモータ44を駆動して支持ユニット30を一方の方向に移動させる。噴射ユニット20が正面板11a又は11bに近接するとボルト52又は62がブラケット22の側面に当接する。この当接後にも支持ユニット30の移動が継続されると、噴射ユニット20の回動中心(軸体21a)は移動するが、ブラケット22の側面にボルト52又は62が当接する結果、噴射ユニット20の回動中心から離間した部位では移動が規制される。
【0038】
これにより、噴射ユニット20が回動する。なお、噴射ユニット20の回動範囲は、軸体21bと長穴31bとにより規制されるので、ボルト52又は62のブラケット22の側面に対する当接の衝撃により、噴射ユニット20が過剰に回動してしまうことを防止することができる。
【0039】
図4は噴射ユニット20が正面板11a側の折り返し位置に到達し、噴射ユニット20が水又は懸濁水の噴射を開始してアスベスト含有物の剥離作業を開始した態様を示している。なお、噴射ユニット20の往復移動方向(矢印d1)はアスベスト含有物が付着した壁の付着面と平行とする。これにより、アスベスト含有物が付着した壁の付着面の法線方向d2は噴射ユニット20の往復移動方向と直交する方向と一致する。法線方向d2と噴射ユニット20の水又は懸濁水噴射方向d3とがなす噴射角度θ1はボルト52の突出量により調整でき、好ましくは20度〜30度である。
【0040】
噴射ユニット20が正面板11a側の折り返し位置に到達したことはセンサ38で検出され、これによりモータ44は回転方向を切り換える。すると、噴射ユニット20は正面板11b側へ移動する。噴射ユニット20はやがて図5(a)に示すようにボルト62と当接する。この当接後にも支持ユニット30の移動が継続されると、噴射ユニット20の回動中心(軸体21a)は移動するが、ブラケット22の側面にボルト62が当接する結果、噴射ユニット20の回動中心から離間した部位では移動が規制される。
【0041】
これにより、噴射ユニット20が回動する。この時の回動方向は図5(b)に示すように、噴射ユニット20が正面板11a側の折り返し位置に達した時と逆の方向となる。壁の付着面の法線方向d2と噴射ユニット20の水又は懸濁水噴射方向d3とがなす噴射角度θ2はボルト62の突出量により噴射角度θ1と同じ角度になるように調整する。これにより、噴射ユニット20の移動の往路、復路で噴射角度を反転することができる。
【0042】
噴射ユニット20が正面板11b側の折り返し位置に到達したことはセンサ38で検出され、これによりモータ44は回転方向を切り換える。すると、噴射ユニット20は正面板11a側へ移動する。正面板11a側の折り返し位置に噴射ユニット20が到達すると、再び噴射ユニット20の噴射角度が図4の状態に戻ることになる。以下、上記手順を繰り返すことで噴射ユニット20を往復移動させながら、その移動の往路、復路で噴射角度が反転されることになる。そして、付着面のある領域の剥離作業が終了すると、噴射装置Aを移動させて別の領域の剥離作業に移行していくことになる。
【0043】
このように本実施形態では、水又は懸濁水の噴射方向をアスベスト含有物の付着面に対して垂直な方向から傾斜した方向とし、かつ、噴射ユニット20の往路と復路とで噴射角度が反転するので、付着物の残存が少なく、かつ、塊として付着物を剥離でき、建築物の付着物をより効果的に剥離することができる。
【0044】
つまり、まず、水又は懸濁水の噴射方向を付着面に対して傾けることで、アスベスト含有物を塊として剥離でき、剥離効果を高められ、また、水又は懸濁水の噴射圧を低められる。一方、アスベスト含有物と建築物の壁面等との付着状態はアスベスト含有物の各部位によって異なり、噴射方向により剥れ易い部位と剥れ難い部位とが存在する。本実施形態では、噴射角度を反転して水又は懸濁水を噴射するので、付着状態の相違があっても、より確実にアスベスト含有物を剥離できる。
【0045】
また、噴射ユニット20の往復移動は、例えば、ロボット4の多関節アーム4bの動作や、走行部4aの駆動によっても可能であるが、これであると噴射距離(付着面までの距離)を一定にすることが難しく、剥離状態がまばらとなり易い。本実施形態では、移動機構40を備えたことにより、噴射ユニット20の往復移動方向を付着面と平行にセットすれば、噴射ユニット20の往復移動の際、噴射距離を一定にすることができる。
【0046】
また、本実施形態ではスプリングワッシャ31eにより支持部材31に対する噴射ユニット20の締結力を一定に維持する構成としている。噴射ユニット20は噴射する水又は懸濁水の圧力によって、移動中、ばたつくことが懸念されるが、噴射ユニット20の締結力を、回動位置設定ユニット50、60による噴射ユニット20の回動を許容する一方、噴射ユニット20の移動中により設定された回動位置を維持するように、ナット31cの締め付け量を調整することで、噴射ユニット20の往路と復路とで、それぞれ設定された噴射角度を維持できる。なお、支持部材31に対する噴射ユニット20の締結力を一定に維持する構成はこれに限られず、種々の構成が採用でき、例えば、軸体21aを樹脂製の軸受にしばり嵌めにて嵌合して噴射ユニット20を回動自在とする構成が挙げられる。
【0047】
また、本実施形態では、噴射角度の設定に、移動機構40による噴射ユニット20の移動と当接部材(ボルト52、62)との当接により行なう構成としたが、例えば、噴射ユニット20の回動用の駆動部(モータ等)を設ける構成としてもよい。但し、本実施形態では移動機構40の駆動力を利用することで、専用の駆動部を不要とし、より簡易な構成で噴射ユニット20の噴射角度を設定・反転させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る噴射装置Aを採用したシステムBの構成図である。
【図2】(a)は噴射装置Aの正面図、(b)は噴射装置Aの平面図である。
【図3】図2(a)の線X−Xに沿う噴射装置Aの断面図である。
【図4】噴射装置Aの動作説明図である。
【図5】(a)及び(b)は噴射装置Aの動作説明図である。
【図6】(a)は噴射装置Aの動作説明図、(b)は支持部材31及びローラ支持部材33の平面図である。
【符号の説明】
【0049】
A 噴射装置
20 噴射ユニット
30 支持ユニット
40 移動機構
50、60 回動位置設定ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に水又は懸濁水を噴射する噴射ユニットを有する噴射装置において、
前記噴射ユニットを回動自在に支持する支持ユニットと、
前記支持ユニットに支持された前記噴射ユニットを、直線軌道上で往復移動させる移動手段と、
前記噴射ユニットがその往復移動の一方の折り返し位置に到達した時に、前記噴射ユニットの水又は懸濁水の噴射方向が、前記直線軌道と直交する直交方向から角度+θの方向となるように前記噴射ユニットの回動位置を設定する第1設定手段と、
前記噴射ユニットがその往復移動の他方の折り返し位置に到達した時に、前記前記噴射ユニットの水又は懸濁水の噴射方向が、前記直交方向から角度−θの方向となるように前記噴射ユニットの回動位置を設定する第2設定手段と、
を備えたことを特徴とする噴射装置。
【請求項2】
前記支持ユニットは、
前記第1及び第2設定手段による前記噴射ユニットの回動を許容する一方、前記移動手段による前記前記噴射ユニットの移動中に、前記第1又は第2設定手段により設定された回動位置を維持するように前記噴射ノズルを支持することを特徴とする請求項1に記載の噴射装置。
【請求項3】
前記第1及び第2設定手段は、
前記噴射ユニットの回動中心から離間した部位において前記噴射ユニットに当接する当接部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−194566(P2008−194566A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29694(P2007−29694)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「緊急アスベスト削減実用化基盤技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】