説明

噴霧乾燥によるナノ粒子の製造方法

加熱されるチャンバー内に化合物の溶液を噴霧することによって化合物のナノ粒子が製造される。得られる製品は化合物のナノ粒子の自由に流れる混合物を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対するクロスリファレンス)
本出願は、1999年12月20日出願の米国仮特許出願第60/172573号の米国特許法第119条第e項の利益を主張する2000年12月19日出願の国際出願第PCT/US00/34606号の国内段階である米国特許出願第10/168520号の一部継続である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医薬、食品及び化粧品の用途分野において有用な化合物のナノ粒子を製造するための方法に関する。特に、本発明は、溶媒と溶質を含有する溶液を空のチャンバー中で噴霧乾燥させてナノ粒子を形成する技術を利用したナノメートル粒子の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
水溶解度の低い化合物の粒子は、セラミック、塗料、インク、染料、潤滑剤、医薬、食品、農薬、殺虫剤、防かび剤、肥料、クロマトグラフィーカラム、化粧品、ローション、軟膏、及び洗剤を含む様々な応用分野で一般的に使用されている。粒子の水性ディスパージョンは、多くの場合、有機溶媒に伴う可燃性及び毒性のような危険を避けるために使用されている。そのようなディスパージョンは典型的には広い範囲の粒径を有している。
【0004】
多くの場合、製品性能は粒径分布を制御することによって改善することができる。一般に、より小さい化合物粒子は同化合物の大きな粒子よりも速く溶解する。従って、粒径の制御は溶解速度の制御において重要である。
【0005】
ナノメートル範囲の粒径を得ることはしばしば化合物の効力を高めるために有用である。これは、実際に水不溶性か又は難溶性である化合物については特にしかりである。ナノメートル粒子は、大きな比表面積をもたらし、医薬物質の溶解速度及びバイオアベイラビリティ、食品成分の消化率、並びに化粧品成分の機能的効能を増大せしめる。実際に不溶性か又は難溶性薬剤物質の粒径を低減させると溶解速度を増大させ、その結果そのバイオアベイラビリティを増大させることが示されている。
【0006】
ナノメートル粒径材料を製造するために知られている方法は限られている。Liversidge等の米国特許第5145684号は界面活性剤の存在下で湿式粉砕によって水不溶性薬剤のナノ粒子を形成する方法を開示している。湿式ビーズ粉砕では、水性媒質に懸濁された材料を、ガラス、ポリマー、アルミニウム、ジルコニウム又は他の金属ビーズを使用して粉砕する。粉砕プロセスはローラーミル、振動ミル又は高エネルギー機械ミルで実施することができる。液体ディスパージョン媒質と上述の粒子からなるディスパージョンは、安定であると記載されている。Bosch等の米国特許第5510118号は高圧均質化により薬剤のナノ粒子を形成する方法を開示している。この方法では、材料の懸濁液が、高圧をかけて狭いオリフィスを強制して通過させる。懸濁液にかけられた高剪断力が懸濁液の粒径を低減させる。
【0007】
湿式ビーズ粉砕については、ローラー又は振動ミルのバッチサイズがミル上の容器サイズによって制限されている。高エネルギー機械粉砕は、短時間でナノメートル粒子を得ることができる連続プロセスである。しかしながら、ビーズが金属チャンバーと激しく衝突するので、粉砕した材料にガラス又は金属の汚染が生じる虞がある。
【0008】
Bosch等によって記載されている高圧均質化は分散系、つまりエマルション又はリポソームにおける液球サイズを低減させるために通常は使用される。固形材料に対する高圧均質化の成功は材料の物理的性質に依存している。
【0009】
Iwasaki等の米国特許第4851421号は、0.5mm以下の粒径を有する剛性媒体を用いて殺菌性物質の分散液を湿式粉砕することによって形成される0.5ミクロン以下の粒径を持つ粒子を含んでいる微粉末を開示している。殺菌性物質には、水不溶性である殺菌剤、除草剤、殺虫剤、ダニ殺虫剤(miticides)及びダニ用殺虫剤(tickicides)が含まれる。Iwasaki等はまた得られた殺菌性微粉末が植物の表面を通して、また昆虫体内及び微生物細胞中により速やかに浸透しうることを開示している。
【0010】
欧州出願公開第0411629号は、平均径が2〜3μm未満である難溶性薬剤の超微粒子が、糖及び糖アルコールから選択される粉砕助剤の存在下で薬剤を粉砕することによって得られる方法を記載している。上記糖又は糖アルコールの重量比は薬剤1部に対して2.5〜50重量部であり、微粉化薬剤は1μm未満の平均径を有している。
【0011】
噴霧乾燥法では、固形粒子のディスパージョンを、流れている温風中に微細に噴霧して、その材料の所望の粉末を得る。この技術の従来の方式は粒径を減少させない。
【0012】
噴霧乾燥は、高度に分散された液体と十分な体積の熱風を混合して蒸発を生じさせて液滴を乾燥させることからなる。典型的な噴霧乾燥法では、供給液体は、それがポンプ移送可能で微細化できる限り、溶液、スラリー、エマルション、ゲル又はペーストとできる。供給溶液は、濾過された温風の流れ中に噴霧される。その温風は蒸発のための熱を供給し、乾燥した製品を捕集装置まで運ぶ。温風は水分と共に排気される。
【0013】
噴霧乾燥された粉末粒子は均質で、ほぼ球状であり、サイズも殆ど均一である。ラクトース、マンニトール及び小麦粉が直接圧縮錠剤化製剤での使用のために噴霧乾燥される。
【0014】
噴霧乾燥はまたドラッグデリバリーのために活性剤をマイクロカプセル化するために過去に用いられている。この噴霧乾燥の使用は、活性剤と活性剤の周りにマトリックス又はシェルを形成することができる共成分の混合溶液を噴霧することを含む。PCT出願の国際公開第96/09814号は、噴霧乾燥微粒子を形成するためのかかる方法を記載している。記載された一実施態様は、低分子量薬剤とラクトースを含有する微粒子に関する。一実施例では、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)及びラクトースを噴霧乾燥して微粒子(ADH0.1%w/w;ラクトース99.9%w/w)を形成している。その微粒子は4−5μmの粒径で、なめらかで球状であり、空気を含んでいた。
【0015】
既知の技術が存在しているにもかかわらず、製造規模まで簡便にスケールアップできる化合物のナノメートル粒子の製造方法に対する必要性が当該分野でなお存在している。
【発明の概要】
【0016】
ここに開示された本発明の実施態様は、噴霧乾燥技術を用いてナノメートル粒子を形成することができるという発見に基づいている。化合物のナノメートル粒子は、化合物の溶液を空の加熱チャンバー中に噴霧することによって製造される。得られた生成物は3μm以下の平均径を有するナノメートルサイズの粒子を含む。
【0017】
本発明の一実施態様は、化粧品、食品及び医薬品用途に有用な化合物のナノ粒子を製造する方法に関する。本発明のこの実施態様は、ナノ粒子の形態の薬剤化合物の投与が使用者に対する薬剤化合物のバイオアベイラビリティを大きく増加させるので、薬剤物質に特に有用である。
【0018】
本発明の一実施態様は、ナノ粒子の大規模生産を可能にする。
【0019】
本発明の一実施態様は、更に、化合物の溶液を空の加熱チャンバー中に噴霧することによって化合物のナノ粒子を生成する方法を提供し、ここで、噴霧乾燥プロセス中にチャンバー内に担体又は賦形剤分子が存在する必要はない。
【0020】
本発明の一実施態様では、化合物のナノ粒子は、化合物の溶液を、チャンバー内に担体が含まれた加熱された流動床中に噴霧することによって製造される。
【0021】
本発明のある実施態様では、不活性担体又は賦形剤分子が、噴霧乾燥される化合物を含む溶液中に含められる。そのようにすることは化合物の粒径に影響を及ぼさないが、得られた粒状材料の分散性と湿潤性を高める。適切な担体の例には、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。
【0022】
本発明の他の実施態様は、経口胃腸デリバリー、口腔デリバリー、舌下デリバリー、肺内デリバリー、経鼻デリバリー、膣内デリバリー、直腸デリバリー、眼内デリバリー、耳デリバリー、表皮デリバリー、真皮デリバリー又は非経口デリバリーを介して使用者に投与するのに適したナノ粒子の製剤を提供する。
【0023】
本発明の実施態様の方法を使用して形成されるナノ粒子は、錠剤、カプセル剤、粉剤、懸濁剤、エマルション、ポリマー薄膜及び座剤の形態で使用者に投与されうる。
【0024】
本発明の一実施態様は、プロセシング中に界面活性剤の存在下で安定なナノ粒子を形成することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は化合物のナノ粒子の製造方法に関する。該方法は、溶媒中の化合物の溶液を、上記溶液からの実質的な量の溶媒の除去を可能にする条件下で空のチャンバー中に噴霧することを含み、3μm以下の平均径を有するナノメートルサイズの粒子が形成される。
【0026】
本発明の方法は、一般に、化合物の溶液を、化合物のナノ粒子が形成されるように加熱チャンバー中に噴霧することによって実施される。この方法では、ナノサイズ化される化合物は適当な溶媒と混合されて、化合物の溶液が形成される。ついで、化合物の溶液は、溶液からの実質的な量の溶媒の除去を可能にする条件下で加熱チャンバー中に噴霧される。この方法によって生成されるナノ粒子は対象の化合物のみを含んでいる。
【0027】
本発明の更なる実施態様は、化合物の溶液が担体粒子の流動床に噴霧される、化合物のナノ粒子の生成方法を提供する。流動床は約20℃から約80℃、好ましくは約25℃から約50℃の温度に維持される。本発明の他の実施態様では、加熱された流動床は約27℃から約48℃の間の温度に維持される。流動床中の担体の粒径は約10μmから約3mmの範囲とできる。この方法では、化合物の溶液は、化合物の安定なナノ粒子が担体粒子との混合物中に形成されるように、担体粒子の流動床上に噴霧される。
【0028】
本発明の他の実施態様では、不活性な担体又は賦形剤分子が、噴霧乾燥される化合物を含む溶液と混合される。この混合物は加熱チャンバー中に噴霧される。この方法で形成されるナノ粒子は化合物と担体の混合物を含む。この方法によって形成されるナノ粒子中の化合物の量は1重量%未満から99重量%以上まで変動しうる。ナノ粒子の残りは担体からなる。
【0029】
本発明の一実施態様では、1部の化合物が約1から約100重量部の担体と組み合わされる。本発明の他の実施態様では、2.5部の化合物が約20重量部の担体と組み合わされる。本発明の更なる実施態様では、5部の化合物が約10重量部の担体と組み合わされる。
【0030】
開示された方法によって形成されるナノ粒子は約50nmから約3000nmの範囲の平均粒径(平均径としても知られる)を有している。本発明のある実施態様では、化合物の粒径は約50nmから約1000nmの範囲である。他の実施態様では、化合物の粒径は約200nmから約900nm、最も好ましくは約300nmから約800nmの範囲である。
【0031】
得られたナノ粒子は安定で、認めうるほど凝集も凝塊化もしない。化合物は水溶性であり得、又は水難溶性又は実質的に水不溶性であるものでありうる。ナノ粒子は高いバイオアベイラビリティを示す医薬、化粧料及び食品組成物に処方することができる。
【0032】
安定であるとは、ナノ粒子ディスパージョンが少なくとも15分間、好ましくは調製後少なくとも2日以上裸眼で確認できる凝集又は粒状凝塊を示さないことを意味する。
【0033】
本発明の方法は、好ましくは診断薬、医薬、食品及び化粧品の用途分野のための材料に用いることができる。粒状懸濁剤として製剤化に適した栄養剤の例には、βカロテン、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンE、及びビタミンKが含まれる。
【0034】
ここに記載された方法は、水溶性の化合物、つまり化合物が10mg/mlを超える濃度で水に可溶性である場合に使用することができる。水溶性化合物から生成されるナノ粒子は、迅速な溶解と吸収の必要性があり、溶解に利用できる体液が少ない経粘膜、舌下、口腔、直腸、膣内経路のデリバリーに特に適している。
【0035】
本発明の目的に対して、「水難溶性又は実質的に水不溶性」なる語句は、化合物が10mg/ml以下、好ましくは5mg/ml以下、最も好ましくは約1mg/ml未満の濃度で特に20℃で水に溶解することを意味する。大きな粒子の形態で存在している場合、これらの化合物は、典型的には、一般的な固形製剤の形態で投与される場合、消化管では不十分にしか吸収されない。
【0036】
水に不溶性か難溶性である薬剤は、3000nm以下の粒径を使用して製剤化すると有意な恩恵を有しうる。ナノ粒子を使用する製剤に適した有用な薬剤クラスには、タンパク質、ペプチド、活性剤、鎮痛剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗アレルギー剤、抗不整脈薬、抗生物質、抗凝血剤、抗痙攣剤/抗てんかん薬、抗うつ剤、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗ムスカリン様作用薬、抗抗酸菌薬、抗新生物薬、免疫抑制剤、抗甲状腺薬、抗ウイルス剤、抗不安鎮痛剤、収斂剤、βアドレナリン受容体遮断薬、造影剤、コルチコステロイド、咳止め薬、診断薬、画像診断剤、利尿薬、ドーパミン作動薬、止血薬、免疫薬、脂質調節剤、筋弛緩薬、副交感神経興奮薬、副甲状腺カルシトニン、プロスタグランジン、放射性医薬品、性ホルモン、睡眠補助薬、興奮剤、交感神経様作用薬、甲状腺剤、血管拡張剤及びキサンチンが含まれる。欠乏症、アルコール依存症、薬物乱用、及び多くの他のものの治療も適切な薬剤の粒状懸濁液の静脈投与で改善され得る。ナノ粒子を使用する他の医療用途分野は当業者には明らかであろう。
【0037】
難溶性又は実際に不溶性の薬剤の好ましいクラスはステロイド類、特に神経活性ステロイド類、例えば3a-ヒドロキシ-3b-メチル-5a-プレグナン-20-オン(ガナキソロン)、3a-ヒドロキシ-3b-トリフルオロメチル-l9-ノル-5b-プレグナン-20-オン、2b-エチニル-3a-ヒドロキシ-5a-プレグナン-20-オン、及び3a,21-ジヒドロキシ-3b-トリフルオロメチル-19-ノル-5b-プレグナン-20-オンである。
【0038】
僅かに水溶性の薬剤の特定の例は、冠拡張薬、例えばニフェジピン、二カルジピン、ニモジピン、ジピリダモール、ジイソピラミド、乳酸プレニラミン、及びエフロキサート;降圧剤、例えばジヒドロエルゴトキシン及びプラゾシン;ステロイド性抗炎症剤、例えばコルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、フルオシノロンアセトニド;非ステロイド性抗炎症剤、例えばインドメタシン、ナプロキセン、及びケトプロフェン;精神神経剤、例えばフェニトイン、フェナセトアミド(phenacetamide)、エチルフェナセトアミド、エトトイン、 プリミドン、フェンスクシミド、ジアゼパン、ニトラゼパム、及びクロナゼパム;心臓病薬、例えばジゴキシン、ジギトキシン、及びユビデカレノン;利尿薬、例えばスピロノラクトン、トリアムテレン、クロルタリドン、ポリチアジド、及びベンズチアジド;化学療法剤、例えばグリセオフルビン、ナリジクス酸、及びクロラムフェニコール;骨格筋弛緩薬、例えばクロルゾキサゾン、フェンプロバメート、及びカリソプロドール;抗けいれん薬、例えばエトミドリン; 神経活性ステロイド及び神経活性セミカルバゾンでここに更に記載したもの、抗ヒスタミン剤、例えばジフェンヒドラミン、プロメタジン、メキタジン(mequitezine)、ビスベンチアミン(bisbenthiamine)、及びフマル酸クレマスチンである。
【0039】
難溶性及び可溶性薬剤の特定の例は心血管作動薬、例えば塩酸タムスロシン(tamsulosen)、リシノプリル、マレイン酸エナラプリル及び酒石酸メトプロロール;中枢及び末梢神経系剤、例えば酒石酸ゾルピデム、塩酸フルオキセチン、シュウ酸エスシタロプラム、塩酸シクロベンザプリン、フマル酸クエチアピン(queliapine)、臭化水素酸エレトリプタン(elitriptan)、及びコハク酸スマトリプタン;呼吸器作用薬、例えば硫酸アルブテロール;抗糖尿病薬、例えばマレイン酸ロシグリタゾン及びグリメピリド;抗ヒスタミン剤、例えば塩酸セチリジド(cetirizide)及び 塩酸フェキソフェナジン;及び破骨細胞媒介骨吸収抑制剤、例えばアレンドロン酸ナトリウム及びリセドロン酸ナトリウムである。
【0040】
ナノサイズ化に適した他の化合物には、抗高脂血薬、及びスタチン類、アトルバスタチンカルシウム、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンナトリウム、ロスバスタチンカルシウム、及びフルバスタチン(flumastatin)ナトリウム、及びフェノフィブラートが含まれる。
【0041】
本発明の実施態様によってプロセシングされる化合物は、水性溶媒、非水性溶媒、又は水性溶媒の混合物、非水性溶媒の混合物、並びに非水性及び水性溶媒の混合物を含む混合溶媒の何れかに溶解させることができる。有用な非水性溶媒には、アルコール、ハロゲン化アルカン、ジアルキルケトン及び芳香族溶媒が含まれる。有用な非水性溶媒の例には、エタノール、好ましくは95%エタノール、メタノール、イソプロパノール、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン及びトルエンが含まれる。有用な水性溶媒の例には水が含まれる。
【0042】
化合物を溶解させるために使用することができる更なる溶媒には、限定されるものではないが、アセトニトリル、1-ブタノール、2-ブタノール、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ヘキサン、メタノール、2-メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルアセトアミド、1-プロパノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン、トルエンが含まれる。
【0043】
噴霧される化合物の溶液は、得られたナノメートル粒子産物からの化合物の放出プロファイルを変更する他の物質を含んでいてもよい。これらの他の物質には表面改質剤及び界面活性剤が含まれる。
【0044】
ナノ粒子からの化合物の放出プロファイルを変更する物質は、噴霧された溶液の粘度を低下させ、「凝集体」の形成を防ぐためにプロセシング中における溶媒湿潤を改善するために、あるいは難溶性活性剤の動物の体による吸収と取り込みを改善するために、更なる成分として使用することができる。ナノ粒子からの化合物の放出プロファイルを変更する有用な物質の例には、ゼラチン、カゼイン、レシチン、アカシアガム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドン、ドキュセートナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0045】
本発明の実施態様の方法は、ウルスター(Wurster)型カラムを使用する上部スプレー又は底部スプレーのためのインサート、又はローターディスクを使用するタンジェンシャルスプレーを備えた商業的に入手できる装置を用いて実施することができる。スプレー装置の設計と操作は、粒径及び粒径分布、バルク及び粒子密度、多孔性、水分含量、流動性及びもろさのような最終産物の多くの特性を変えうる。本発明では、スプレー装置の設計と操作は、化合物の乾燥粒子が3ミクロン以下、好ましくは2ミクロン以下、より好ましくは1ミクロン以下の平均粒径を有することを担保するようなものでなければならない。条件の例を以下の特定の装置に対して提供する。この手引きに鑑みて、当業者であれば、当該分野で利用できる他のスプレー装置の組合せを用いて同様の結果を達成するために装置及びプロセスパラメータを調節することができるであろう。
【0046】
他の適切な装置は当業者には明らかであろう。適切な装置は、以下に記載する複数の機能を有していなければならない。例としては、ウルスター流動床造粒コーター(例えばGlatt社又はPowrex・Corporation製作のもの)が挙げられる。容器の中心部に円筒状のウルスターカラムセットを有している装置を典型的には用いて、上流方向のガス流れ(ジェット流)によって単一方向に微細粉末又は造粒粒子を流動化させてカラムを通し、コーティングのために底部のジェットノズルからバインダーの微細液滴又はバインダーと界面活性剤のものを主題粒子に噴霧して(底部噴霧法)、造粒と乾燥を実施する。
【0047】
上述の装置に加えて、撹拌転動流動床型の多機能複合造粒コーター(例えばSPIR-Aフロー造粒コーター(Freund・Industrial社製)及びNew・Marumerizer(Fuji・Paudal社製))、転動流動床型の多機能複合造粒コーター(例えばMultiplex(Powrex・Corporation社製))及び他の装置をまた使用することができる。これらの多機能複合造粒コーターの噴霧方法には、液滴が上部から噴霧される上部噴霧法、液滴が底部の側方から噴霧される中央噴霧(タンジェンシャル噴霧)法、及び底部噴霧法が含まれる。
【0048】
本発明の一実施態様では、化合物の溶液の液滴はジェットノズルから空のチャンバー内に噴霧される。ガス流を加熱して、噴霧された溶液から溶媒を蒸発させる。この装置の使用により複数のナノメートルサイズの粒子が製造される。
【0049】
本発明の実施態様の方法を実施するために有用なベンチトップシステムはFluidAirモデル002である。本発明の一実施態様では、FluidAirモデル002を使用し、次の条件を使用してナノ粒子を生成した:入り口空気温度75−80℃、出口空気温度25−34℃、生成物温度32−47℃、及び噴霧速度2.2−4.8g/分。
【0050】
商業的な大規模のプロセスでは、次の条件を使用してナノ粒子を製造することができる。有用な噴霧速度は、一又は複数の噴霧ノズルを使用して、約25から約50ml/分、好ましくは約30から約45ml/分、最も好ましくは約34から約41ml/分である。入口静圧は約2から約10バール、好ましくは約2.5から約8バール(約250から約800kPa)の範囲に制御されなければならず、約20から約50cfm、好ましくは約25から約45cfmの空気流を許容する。入口温度は約80℃から約100℃、好ましくは約85℃から約90℃とできる。生成物温度は約20℃から約60℃、好ましくは約25℃から約50℃、最も好ましくは約27℃から約48℃にしなければならない。
【0051】
噴霧される化合物の溶液の液滴の径を最小にすることによってプロセス中の主題化合物の集まり(凝集)及び噴霧粒子の凝集を防ぐ必要がある。これは、表面張力を低下させるために化合物の溶液中に適当な界面活性剤を使用し、プロセスに助剤を使用して達成することができる。
【0052】
噴霧に使用される化合物、溶媒、及び任意成分の界面活性剤の濃度/量は、得られる化合物粒子が3μm(つまり、3000nm)以下、好ましくは2μm(つまり、2000nm)、より好ましくは1μm(つまり、1000nm)以下の所望の粒径を有するように場合によっては選択される。
【0053】
粒子は好ましくは3000nm未満、好ましくは約50nmから約2000nm、より好ましくは約50nmから約1000nm、更により好ましくは約200nmから約900nm、最も好ましくは約300nmから約800nmの平均径を有している。
【0054】
混合物中の粒径は、光子相関分光計 (Nicomp C370)を使用するレーザ回折法を含む任意の数の方法によって決定することができる。結果は典型的には体積加重平均径によって報告される。体積加重平均径は次の通りに定義される:
(Σnd)/(Σnd)
ここで、n=直径「d」によって特徴付けられるサイズ間隔中の粒子数。
【0055】
本発明の実施態様によって得られるナノサイズ化化合物は、一又は複数の更なる薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は希釈剤と共に粉末剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、エアロゾル、懸濁剤、シロップ剤、軟膏、座剤等々の形態で製剤化できる。
【0056】
本発明のある実施態様を使用して得られる薬学的組成物は、本発明の化合物の有利な効果を享受できる任意の動物に投与することができる。そのような動物の第一はヒトであるが、本発明はそのように限定されるものではない。
【0057】
本発明のある実施態様を使用して得られる薬学的組成物は、意図された目的を達成する任意の手段によって投与することができる。例えば、投与は、胃腸、鼻腔、肺内、膣内、直腸、真皮、眼内、耳、筋肉内、皮下、及び静脈内経路によりうる。あるいは、もしくは同時に、投与は経口経路によってもよい。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康、体重、ある場合には同時になされている治療の種類、治療の頻度、所望される効果の性質に依存する。
【0058】
単糖類、例えばラクトース又はスクロース、マンニトール又はソルビトール、セルロース調製物及び/又はリン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウム又はリン酸水素カルシウム、並びにバインダー、例えばトウモロコシスターチ、小麦スターチ、米スターチ、ポテトスターチを使用するスターチペースト、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドンのような好適なフィラーを使用することができる。所望される場合、上述のスターチ及びまたカルボキシメチル-スターチ、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及びクロスポビドンのような崩壊剤を加えることができる。助剤はとりわけ流動性調節剤(flow-regulating agents)及び滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸又はその塩、例えばステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム、及び/又はポリエチレングリコールである。胃液に耐性のあるコーティングをつくるために、例えばアセチルセルロースフタレート又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのような適切なセルロース調製物の溶液が使用される。染料又は顔料を、例えば特定のため又は活性化合物用量の組合せを特徴付けるために、錠剤に加えることができる。
【0059】
経口的に使用することができる他の薬学的調製物には、ゼラチン製の押し込み型カプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトール製の密封軟カプセルが含まれる。押し込み型カプセルは、ラクトースのようなフィラー、スターチのようなバインダー、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムのような滑剤と更に混合されうるナノ粒子活性化合物を含みうる。軟カプセルでは、活性化合物は、好ましくは脂肪油又は流動パラフィンのような好適な液体中に懸濁させられる。また、安定剤を加えることができる。
【実施例】
【0060】
次の実施例は本発明の方法と組成物を説明するためのもので、限定するものではない。通常遭遇し、当業者に自明な他の適切な変更及び様々な条件及びパラメータの適合化も本発明の精神及び範囲内のものである。
【0061】
実施例1
水不溶性化合物をメタノール/アセトンの混合物に溶解させた。3、5、又は15%w/vの化合物として3通りの化合物濃度とした。その溶液を、ウルスター型底部スプレーを装備したFluidAirの研究室規模の流動床システムModel 002中に噴霧した。入口空気温度は約66−83℃に維持した。プロセス中において、出口空気温度をモニターし記録したところ、26−34℃の範囲であった。噴霧速度は2.2−4.8グラム/分の範囲であった。空気噴霧圧は30psiに維持した。3種の得られた材料は、それぞれ3、5、及び15%w/v噴霧溶液に対して772、769、及び777ナノメートルの平均粒径(平均直径)を有していた。
【0062】
実施例2
上記の化合物を、溶媒としてメタノール/アセトン中に溶解させ、成分、ラウリル硫酸ナトリウム(7%w/v)及びヒプロメロース(1%w/v)を加えて、その化合物の5%w/v溶液を得た。同じプロセス条件を維持したところ、得られた材料は743ナノメートルの平均粒径を有していた。その材料は水にさらしたとき高い分散性と湿潤特性を示していた。
【0063】
実施例3
アトルバスタチンをメタノール及び0.6%w/vのドキュセートナトリウムに溶解させた。その溶液を、実施例1及び2に記載したものと本質的に同じプロセス条件を使用して噴霧した。得られた材料は733ナノメートルの平均粒径を有していた。
【0064】
実施例4
噴霧乾燥した化合物粉末を、伝統的な手順によって処方した同じ化合物の製剤と比較して、イヌにおけるそのバイオアベイラビリティについて試験した。最大血漿中濃度及び曲線下血漿面積(plasma area-under-the-curve)濃度に基づいて、ナノ粒径の噴霧乾燥化合物のバイオアベイラビリティは伝統的な(微粒子化)製剤のものより優れていることが測定された。
【0065】
以上、本発明を説明したが、発明又はその任意の実施態様の範囲に影響を与えることなく、広く均等な範囲の条件、製剤、及び他のパラメータを用いてこれを実施することができるものと当業者には理解されるであろう。ここで引用される全ての特許及び刊行物はその全体が出典明示によりここに完全に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の溶媒を用いて化合物の溶液を調製し、
上記溶液からの実質的な量の溶媒の除去を可能にする条件下で該溶液をチャンバー中に噴霧し、上記化合物の粒子が3000nm以下の平均径を有するようにする、
ことを含んでなる粒子の製造方法。
【請求項2】
上記化合物の上記粒子が約1000nmから約2000nmの平均径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記化合物の上記粒子が約1000nm未満の平均径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
得られた化合物の粒子が約50nmから約1000nmの平均径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
得られた化合物の粒子が約300nmから約800nmの平均径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化合物が実質的に水不溶性である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一種の非水性溶媒を含む液体媒体中に噴霧前に化合物を溶解させる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一種の水性溶媒を含む液体媒体中に噴霧前に化合物を溶解させる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
チャンバーが、担体粒子の加熱流動床を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
溶液に担体分子を加えることを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記化合物が、タンパク質、ペプチド、活性剤、鎮痛剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈薬、抗生物質、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗ムスカリン様作用薬、抗抗酸菌薬、抗新生物薬、免疫抑制剤、抗甲状腺薬、抗ウイルス剤、抗不安鎮痛剤、収斂剤、βアドレナリン受容体遮断薬、造影剤、コルチコステロイド、咳止め薬、診断薬、画像診断剤、利尿薬、ドーパミン作動薬、止血薬、免疫薬、脂質調節剤、筋弛緩薬、副交感神経興奮薬、副甲状腺カルシトニン、プロスタグランジン、放射性医薬品、性ホルモン、抗アレルギー剤、興奮剤、交感神経様作用薬、甲状腺剤、血管拡張剤及びキサンチンから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記担体が、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
上記噴霧が、ウルスター型カラムを使用する頂部スプレー(a)、ウルスター型カラムを使用する底部スプレー(b)、又はロータディスクを使用するタンジェンシャルスプレー(c)のためのインサートを装備した装置において一又は複数のスプレーノズルからなされる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
化合物の上記溶液が、得られた粒子からの化合物の放出プロファイルを変更させる一又は複数の他の物質を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記一又は複数の他の物質が表面改質剤又は界面活性剤である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記一又は複数の他の物質が、ゼラチン、カゼイン、レシチン、アカシアガム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記粒子を薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせて薬学的組成物を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記組成物が使用者に投与される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記投与が、経口胃腸デリバリー、口腔デリバリー、舌下デリバリー、肺内デリバリー、経鼻デリバリー、膣内デリバリー、直腸デリバリー、眼内デリバリー、耳デリバリー、表皮デリバリー、真皮デリバリー又は非経口デリバリーを介してなされる請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2009−537633(P2009−537633A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512077(P2009−512077)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/012069
【国際公開番号】WO2007/136830
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508346664)
【Fターム(参考)】