説明

噴霧盤及び噴霧乾燥装置

【課題】噴霧用コロや取付板等の摩耗を抑制しながら,造粒される微粒子の粒径の均一化を実現できる噴霧盤及び噴霧乾燥装置を提供する。
【解決手段】回転することにより原液を回転中心軸Po側から周縁部外側に噴霧させる噴霧盤42において,回転中心軸Poの周囲に,複数の噴霧用コロ73を備えた。回転中心軸Po及び噴霧用コロ73の中心軸Prは,上下方向に向け,噴霧用コロ73は,下縁部から上方に向かうに従い外径が小さくなるように形成された絞り部101を有するとした。さらに,隣り合う噴霧用コロ73の下縁部同士を密着させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,噴霧盤及び噴霧乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば酸化鉄等の金属の微粒子,あるいはセラミックスの微粒子等を造粒する装置として,遠心式の噴霧乾燥装置が知られている(特許文献1,2参照)。かかる噴霧乾燥装置は,原液を噴霧する噴霧機(ロータリーアトマイザ)と,乾燥用のガスを供給する乾燥用ガス供給口とを備えている。噴霧機は,原料の粉体と液体からなるスラリー状の原液を,回転する噴霧盤の内側に供給し,遠心力によって噴霧盤の周囲に,無数の液滴状にして噴霧するように構成されている。こうして噴霧された原液の液滴を,乾燥用ガスに接触させることにより,液滴に含まれる液体が蒸発し,液滴に含まれる粉体が焼結することで,固体状の微粒子が造粒される。
【0003】
噴霧盤としては,略円形の下取付板と上取付板との間に,複数の噴霧用コロを所定間隔を空けて備えたものが知られている。かかる構成においては,噴霧盤に供給された原液が,噴霧用コロ同士の間に形成された隙間を通じて,外側に排出されるようになっている。また,噴霧用コロとしては,円柱状の他,下縁部から上縁部に向かうに従い外径が小さくなる円錐台状のものが提案されている。さらには,外径の変化率が下縁部から上縁部に向かうに従い次第に小さくなるように湾曲した形状などが提案されている。
【0004】
【特許文献1】実公昭61−10767号公報
【特許文献2】特開平9−131550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,従来の噴霧盤にあっては,原液の接触により噴霧用コロや下取付板が激しく摩耗することがあった。また,近年,微粒子の粒径の均一化が求められており,そのためには,噴霧盤の回転数を高くすれば良いことが知られているが,一方では,噴霧盤の回転数を高くするほど,原液の流れが速くなり,噴霧盤が原液によって激しく擦られることになるため,噴霧用コロや下取付板が短時間で摩耗してしまい,噴霧盤の寿命が短くなる問題があった。そのため,粒径の均一化に限界があった。
【0006】
本発明は,上記の点に鑑みてなされたものであり,噴霧用コロや取付板等の摩耗を抑制しながらも,造粒される微粒子の粒径の均一化を実現できる噴霧盤及び噴霧乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため,本発明によれば,回転することにより原液を回転中心軸側から周縁部外側に噴霧させる噴霧盤であって,前記回転中心軸の周囲に,複数の噴霧用コロを備え,前記回転中心軸及び前記噴霧用コロの中心軸は,上下方向に向けられ,前記噴霧用コロは,下縁部から上方に向かうに従い外径が小さくなるように形成された絞り部を有し,隣り合う噴霧用コロの下縁部同士が密着させられていることを特徴とする,噴霧盤が提供される。
【0008】
前記噴霧用コロは,前記絞り部の上方において,下方から上縁部に向かうに従い外径が大きくなるように形成しても良い。また,前記噴霧用コロの下縁部に切り欠き部を設け,前記切り欠き部に,隣り合う他の噴霧用コロの下縁部をかみ合わせるようにしても良い。さらに,前記噴霧用コロの下縁部の両側に切り欠き部をそれぞれ設け,前記切り欠き部同士を互いに密着させるようにしても良い。
【0009】
前記回転中心軸を中心として回転可能な取付板を備え,前記噴霧用コロは,前記取付板の上面周縁部に取り付け,前記噴霧用コロの下縁部は,前記取付板の上面に密着させても良い。
【0010】
また,本発明によれば,上記のいずれかの噴霧盤と,前記噴霧盤に原液を供給する原液供給機構と,前記噴霧盤から噴霧された原液を乾燥させる乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給口とを備えることを特徴とする,噴霧乾燥装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,噴霧用コロの下縁部同士を密着させて備えることにより,下縁部同士を離隔させる場合よりも,噴霧用コロ同士の間の隙間を狭くすることができ,噴霧盤に取り付けられる噴霧用コロの個数を増加させることができる。これにより,原液が付着する濡れ面積を大きくし,噴霧される液滴の粒径の均一性を向上させることができる。即ち,造粒される微粒子の粒径の均一性を向上させることができる。噴霧盤の回転数を高くしなくても,液滴の粒径の均一化,微粒子の粒径の均一化を実現できる。従って,低い回転数で造粒を行うことにより,噴霧用コロや取付板等が原液によって擦られることを抑制でき,噴霧用コロや取付板等の摩耗を防止できる。
【0012】
また,噴霧用コロの下縁部を取付板の周縁部に密着させることにより,噴霧用コロの間の隙間において,取付板に原液が接触することを防止でき,これにより,取付板が摩耗することを防止できる。噴霧盤の回転数を高くした場合でも,取付板の周縁部の摩耗を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下,本発明にかかる実施形態を,酸化鉄の微粒子を造粒する遠心式の噴霧乾燥装置に基づいて説明する。図1に示すように,噴霧乾燥装置1は,チャンバー2と,チャンバー2の内部に微粒子の原料である原液を噴霧する噴霧機(ロータリーアトマイザ)3とを備えている。さらに,噴霧機3によって噴霧された液滴状の原液を乾燥させる乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給口5,チャンバー2の内部から乾燥用ガスを排気する排気口6,チャンバー2の内部から微粒子を排出させる微粒子排出口7を備えている。
【0014】
チャンバー2は,例えば略円筒状に形成された側壁部2a,側壁部2aの上部を閉塞する天井部2b,側壁部2aの下方に形成された絞り部2cを備えている。絞り部2cは,側壁部2aの下端部から下方に向かうに従い次第に内径が小さくなるように,即ち,漏斗状に形成されている。また,チャンバー2の内部空間のうち,上部(側壁部2a側)は,噴霧液の乾燥が行われる乾燥室10となっており,下端部(絞り部2cの下部側)は,造粒された微粒子を貯留するための貯留部11になっている。
【0015】
天井部2bの中央部には,略円形の開口21が形成されている。開口21の下方には,開口21の周囲を囲むように筒状に形成された筒状壁22が設けられている。また,開口21の上方には,開口21の上方及び外周囲を囲むように形成された筐体23が設けられている。筐体23の天井面中央部には,噴霧機3を支持するための支持体25が設けられている。また,筐体23には,筐体23の内部に乾燥用ガスを導入する乾燥用ガス導入路26が接続されている。
【0016】
筒状壁22は,開口21の周縁から下方に向かうに従い次第に内径が小さくなるように,漏斗状に形成されている。支持体25は,筒状壁22の内側に設けられている。支持体25は,下方に向かうに従い次第に外径が小さくなるように,漏斗状に形成されている。筒状壁22の内周面と支持体25の外周面との間には,筒状の隙間28が形成されている。この隙間28の下端部に形成された略円環状の開口が,乾燥用ガス供給口5となっている。かかる構成において,乾燥用ガス導入路26から筐体23の内部に導入された乾燥用ガスは,隙間28,乾燥用ガス供給口5を通じて,チャンバー2の内部(乾燥室10)に供給されるようになっている。即ち,乾燥用ガス導入路26,隙間28,乾燥用ガス供給口5からなる乾燥用ガス供給路30が構成されている。
【0017】
噴霧機3は,回転軸41,噴霧盤42,原液を供給する原液供給機構43を備えており,チャンバー2の天井部2bにおいて,筐体23及び支持体25によって支持されている。
【0018】
回転軸41は,支持体25の内部を貫通するようにして備えられている。回転軸41の中心軸,即ち回転中心軸Poは,略鉛直方向(上下方向)に向けられている。また,支持体25の内部に設けられている軸受け45によって,回転中心軸Poを回転中心として,支持体25及び原液供給機構43に対して回転可能に保持されている。
【0019】
噴霧盤42は,支持体25の下方において,回転軸41の下端部に取り付けられており,回転軸41と一体的に,回転中心軸Poを回転中心として回転するようになっている。この噴霧盤42の構成については,後に詳細に説明する。
【0020】
原液供給機構43は,図示しない原液供給源に接続された原液送液管51と,原液送液管51によって供給された原液を噴霧盤42の内部に向かって分散させて供給する液分配器52とを備えている。原液送液管51は,支持体25の上部から支持体25の内部に挿入されている。原液送液管51の下流端部は,液分配器52の上部に接続されている。液分配器52は,支持体25の内部において,支持体25の下端部に取り付けられている。液分配器52の下部には,原液を吐出させる複数,例えば4つのノズル53が,噴霧盤42の上方において,回転軸41の周囲を囲むようにして設けられている。
【0021】
図2及び図3に示すように,各ノズル53は,後に詳細に説明する噴霧盤42に設けられた隙間91の上方に配設されており,隙間91を介して後述する隆起部82の外周面に向かって原液を吐出するように指向している。また,平面視において,噴霧盤42の回転方向Wに対して逆方向に向かって原液を吐出する方向に指向している。
【0022】
なお,本実施形態において,原液供給機構43によって供給される原液は,酸化鉄の粉体を水等の液体に混合(分散)させたスラリー状の流体である。原液に含まれる酸化鉄の粉体は,約1μm程度の大きさである。原料の粘度は,例えば約260cP(約0.26Pa・s)程度である。なお,原料の粘度が低いほど,原料は噴霧盤42において細かく噴霧される。即ち,原料の液滴を小さくすることができ,ひいては,液滴を乾燥することにより焼結される微粒子を小粒径化できる。
【0023】
図1に示すように,排気口6は,乾燥室10の下部付近においてチャンバー2の側面に,例えば絞り部2cにおいて開口されている。また,排気口6は,排気路61を通じてサイクロン62に接続されている。
【0024】
微粒子排出口7は,絞り部2cの下端部に設けられている。また,微粒子排出口7には,微粒子排出口7を開閉する開閉機構65が設けられている。
【0025】
次に,噴霧盤42の構成について,図2〜図7を参照しながら詳細に説明する。図2及び図3に示すように,噴霧盤42は,下方に設けられた下取付板71,下取付板71の上方に設けられた上取付板72,下取付板71と上取付板72との間に設けられた複数(例えば24個)の噴霧用コロ(ピン)73,及び,下取付板71に対して上取付板72と噴霧用コロ73を固定させるためのボルト75を備えている。
【0026】
下取付板71は,例えば略円板状に形成された板状部81と,板状部81の中央部から上方に突出するように設けられた隆起部82とを備えており,回転軸41の下端部に固定されている。下取付板71の材質は,例えばSUS304等の鋼材等である。
【0027】
図4に示すように,板状部81の上面81aは,平面視において隆起部82を囲むように,略円環状に形成されており,また,略水平に配置されている。上面81aの周縁部には,噴霧用コロ73の下端部を保持するためのコロ保持溝85が設けられている。このコロ保持溝85は,複数(噴霧用コロ73の個数と同じ数)の略円形の凹部85aを,周方向において互いに両側の部分をそれぞれ重ね合わせた状態で,環状に並べて連結させたような形状をなしている。また,図3に示すように,上面81aから所定の深さを有する凹状に形成されている。
【0028】
また,板状部81には,ボルト75の頭部75a側を保持するためのボルト保持穴86が,複数(噴霧用コロ73の個数と同じ数)設けられている。このボルト保持穴86は,図3に示すように,コロ保持溝85の下方において,各凹部85aにそれぞれ対応させて設けられている。各ボルト保持穴86は,板状部81の下面から所定の高さ(深さ)まで形成され頭部75aが挿入させられる頭部保持部86a,頭部保持部86aの内面(上面)とコロ保持溝85の底面との間を貫通するように設けられ,ボルト75の本体75bが通されるボルト本体保持部86bとを備えている。
【0029】
図3に示すように,隆起部82の外周面は,下方に向かうに従い次第に外径が大きくなるように形成された,末広がり状の面になっている。隆起部82の外径の変化率は,下方に向かうに従い次第に大きくなるように構成されている。図示の例では,隆起部82の外周面は,例えば,回転中心軸Poを中心として円弧を回転させた回転体に沿った曲面状になっている。なお,隆起部82の上端部においては,上方に向かうに従い外径が若干大きくなるように形成されている。隆起部82の内側の空間は,回転軸41の下端部が挿入させられる挿入穴82aとなっている。
【0030】
上取付板72は,略円形の平板状に形成されており,下取付板71の上面81aと略平行に配置されている。上取付板72の中央部には,略円形の開口91が設けられている。開口91は,回転軸41の外径,また,隆起部82の上部の外径よりも大きく形成されている。回転軸41と隆起部82の上端部は,開口91の内側に配置されている。隆起部82の上端部外周面と開口91の内周面との間には,略円環状の隙間92が形成されている。前述した液分配器52のノズル53は,隙間92に向かって上方から原液を吐出するように備えられている。なお,上取付板72の材質は,例えばSUS304等の鋼材等である。
【0031】
上取付板72の下面72aの周縁部には,噴霧用コロ73の上端部を保持するためのコロ保持穴95が,周方向に沿って複数個(噴霧用コロ73の個数と同じ数),等間隔を空けて並べて設けられている。各コロ保持穴95は,略円形をなしており,また,図3に示すように,下面72aから所定の深さを有する凹状に形成されている。
【0032】
また,上取付板72には,ボルト本体75bの先端部を保持するためのボルト保持穴96が,複数(噴霧用コロ73の個数と同じ数)設けられている。このボルト保持穴96は,各コロ保持穴95の上方にそれぞれ設けられている。ボルト保持穴96の内面には,ボルト本体75bの外周面に形成された雄ねじ溝と螺合する雌ねじ溝が形成されている。
【0033】
次に,噴霧用コロ73について説明する。図5及び図6に示すように,噴霧用コロ73は,高さに応じて外周面の外径が異なる筒状をなしている。噴霧用コロ73の外周面の外径は,下縁部において最も大きく,上縁部と下縁部との間において最も小さくなるように形成されている。例えば,噴霧用コロ73の下縁部側から上方に向かうに従い次第に外径が小さくなるように形成された下部絞り部101,上下方向においてほぼ一定の外径で形成された円筒部102,及び,円筒部102の上端部から上方に向かうに従い次第に外径が大きくなるように形成された上部絞り部103が,下方から上方に向かう方向においてこの順に連続的に設けられた構成になっている。さらに,噴霧用コロ73の下縁部(下部絞り部101の下縁部)の外面には,平面視において略円弧状をなす切り欠き部105が設けられている。また,噴霧用コロ73の下面(下部絞り部101の下方)には,前述したコロ保持穴85に挿入される被保持部111が設けられている。噴霧用コロ73の上面(上部絞り部103の上方)には,前述したコロ保持穴95に挿入される被保持部112が設けられている。噴霧用コロ73の内側の空間は,ボルト本体75bが通されるボルト用孔113になっている。なお,噴霧用コロ73の材質としては,例えば炭化シリコン(SiC)等が用いられる。
【0034】
下部絞り部101は,被保持部111と円筒部102との間に形成されている。図示の例では,下部絞り部101は,噴霧用コロ73の高さ方向における中間の高さよりも上方まで形成されている。下部絞り部101の外周面は,下端部(被保持部111側)において最も大きい外径dを有し,上端部(円筒部102側)においては,円筒部102とほぼ同じ外径dを有している。下部絞り部101における外径の変化率は,下方から上方に向かうに従い次第に減少し,下部絞り部101の上端部の外周面と円筒部102の外周面とは,連続的な円滑な曲面状に繋がっている。
【0035】
噴霧用コロ73を側方からみた側面視(図6)においては,下部絞り部101の外周面の輪郭は,下方から上方に向かうに従い次第に噴霧用コロ73のコロ中心軸Pr側に近づくように湾曲しており,また,円弧Aに沿うように,即ち,曲率半径ρを有するように丸みを付けた(Rを取った)状態になっている(但し,切り欠き部105が形成されている部分を除く)。換言すれば,下部絞り部101の外周面は,コロ中心軸Prを中心として円弧Aを回転させた回転体に沿った曲面状になっている。
【0036】
また,側面視において,下部絞り部101の下縁における円弧Aの接線をLT1とし,噴霧用コロ73の径方向に沿った直線をLとし,接線LT1と直線Lとがなす鋭角側の角度(即ち,噴霧用コロ73を下取付板71に取り付けた場合に,下部絞り部101の下縁部の外周面と上面81aがなす角度)をαとした場合,この角度αは60°以下程度であっても良いし,0°になるようにしても良い。一方,下部絞り部101の上端における円弧Aの接線LT2は,コロ中心軸Prと平行になっている。
【0037】
円筒部102は,下部絞り部101と上部絞り部103との間に形成されている。円筒部102の外周面は,円筒部102の下端部(下部絞り部101側)から円筒部102の上端部(上部絞り部103側)まで,一定の外径dを有している。側面視においては,円筒部102の外周面は,接線LT2と同一の直線上に位置している。また,図示の例では,円筒部102の下端から上端までの高さは,上部絞り部103の下端から上縁までの高さよりも高く(長く)形成されている。
【0038】
上部絞り部103は,円筒部102と被保持部112との間に形成されている。上部絞り部103の外周面は,上部絞り部103の下端部(円筒部102側)において外径dを有し,上部絞り部103の上端部(被保持部112側)においては外径d(d<d<d)を有している。上部絞り部103の下端部の外周面と円筒部102の外周面とは,連続的な円滑な曲面状に繋がっており,上部絞り部103における外径の変化率は,下方から上方に向かうに従い次第に増大している。
【0039】
図6に示すように,噴霧用コロ73を側方からみた側面視においては,上部絞り部103の外周面の輪郭は,いずれの方向からみても,下方から上方に向かうに従い次第に噴霧用コロ73のコロ中心軸Pr側から外周囲側に離れるようにそれぞれ湾曲しており,また,円弧Aに沿うように,即ち,曲率半径ρ(図示の例ではρ<ρ)を有するように丸みを付けた(Rを取った)状態になっている。換言すれば,下部絞り部101の外周面は,コロ中心軸Prを中心として円弧Aを回転させた回転体に沿った曲面状になっている。
【0040】
側面視において,上部絞り部103の下端における円弧Aの接線は,接線LT2と同一の直線になっている。また,図6に示す例では,側面視において,上部絞り部103の上縁における円弧Aの接線LT3は,直線Lと略平行になっている。即ち,噴霧用コロ73を上取付部材72に取り付けた場合に,接線LT3と下面72aが略平行になるように構成されている。なお,接線LT3は,直線Lに対して所定の角度をなすように傾斜させても良い。
【0041】
切り欠き部105は,前述のように円弧Aの回転体状に形成された外周面を有する下部絞り部101の一部分に,図示の例ではコロ中心軸Prに対して左側に設けられており,下部絞り部101の下端から所定の高さまでの部分を切り取るようにして形成されている。図5に示すように,切り欠き部105は,下部絞り部105の外周縁からコロ中心軸Pr側に向かって凹状に窪んだ形状に形成されている。また,切り欠き部105の内側面は,下部絞り部105の下縁部の外径dとほぼ同じ直径d’を有する円筒面に沿った形状になっており,また,コロ中心軸Prと略平行になっている。即ち,平面視において,切り欠き部105の内側面は,曲率半径d’/2の略円弧状に湾曲した形状になっている。
【0042】
被保持部111は,下部絞り部101の下端から下方に突出させて設けられており,下部絞り部105の下縁とほぼ同じ外径dを有している。なお,切り欠き部105は,被保持部111にも形成されており,下部絞り部101の外面から被保持部111の下面まで切り取るようにして形成されている。
【0043】
被保持部112は,上部絞り部103の上端から上方に突出させて設けられており,上部絞り部103の上縁とほぼ同じ外径dを有している。
【0044】
ボルト用孔113は,被保持部111の下面中央部から被保持部112の上面中央部まで,コロ中心軸Prに沿って貫通させられている。
【0045】
図7及び図8に示すように,下取付板71において,噴霧用コロ73は,被保持部111がコロ保持溝85のいずれかの凹部85aに挿入された状態で,また,コロ中心軸Prが上面81aと略垂直に(上下方向に)向けられた状態で備えられる。被保持部111は,噴霧盤42の回転方向Wにおいて前側になる部分が,回転方向Wにおいて前方に隣接する他の凹部85a内に突出するように備えられる。切り欠き部105は,回転方向Wにおいて後方になる側に配置され,回転方向Wにおいて後方に隣接する別の凹部85aに対向するように向けられる。
【0046】
回転方向Wにおいて噴霧用コロ73(以下,説明の便宜のため「噴霧用コロ73A」という。)の前方には,他の噴霧用コロ73(以下,「噴霧用コロ73B」という。)が隣接させて備えられ,この噴霧用コロ73Bの切り欠き部105が,噴霧用コロ73Aの下部とかみ合わせられる。即ち,噴霧用コロ73Aの被保持部111の外周面と下部絞り部101の下縁が,噴霧用コロ73Bの切り欠き部105の内面に沿って密着させられる。
【0047】
一方,回転方向Wにおいて噴霧用コロ73Aの後方には,別の噴霧用コロ73(以下,「噴霧用コロ73C」という。)が隣接させて備えられる。噴霧用コロ73Cの下部は,噴霧用コロ73Aの切り欠き部105とかみ合わせられる。即ち,噴霧用コロ73Cの被保持部111の外周面と下部絞り部101の下縁が,噴霧用コロ73Aの切り欠き部105の内面に沿って密着させられる。
【0048】
こうして,下取付板71の上面81aには,コロ保持溝85の各凹部85aに噴霧用コロ73の被保持部111がそれぞれ挿入されることにより,複数の噴霧用コロ73が,回転軸41を囲むようにして,下取付板71の周縁部に沿って取り付けられる。また,隣り合う噴霧用コロ73の下縁部同士が,切り欠き部105において互いにかみ合わせられた(オーバーラップさせられた)状態で備えられる。下部絞り部101の下縁より上方においては,隣り合う噴霧用コロ73の外周面同士の間には,それぞれ隙間115が形成される。コロ保持溝85は,各凹部85aに被保持部111がそれぞれ挿入され,隣り合う被保持部111同士が互いに密着した状態で備えられることにより,原液が侵入しないように塞がれた状態になる。
【0049】
一方,上取付部材72においては,各噴霧用コロ73は,被保持部112がコロ保持穴95にそれぞれ挿入された状態で備えられる。各コロ保持穴95は,被保持部112がそれぞれ挿入されることにより,原液が侵入しないように塞がれた状態になる。
【0050】
また,各噴霧用コロ73のボルト用孔113の下方には,ボルト本体保持部86bがそれぞれ配置され,ボルト用孔113の上方には,ボルト保持穴96がそれぞれ配置される。即ち,頭部保持部86a,ボルト本体保持部86b,ボルト用孔113,ボルト保持穴96が,下方からこの順に一列に並んで連通した状態になる。
【0051】
各ボルト75は,ボルト本体75bの先端部から,各頭部保持部86aを通じて,ボルト本体保持部86b,ボルト用孔113に挿入され,ボルト保持穴96の雌ねじ溝に螺合される。即ち,噴霧用コロ75が板状部81と上取付板72との間に挟まれた状態で,各ボルト75の頭部75aの上面が各頭部保持部86aの下面にそれぞれ当接され,かつ,ボルト本体75bの先端部が各ボルト保持穴96にそれぞれ固定されることにより,板状部81,上取付板72,複数の噴霧用コロ73,複数のボルト75が互いに連結され,一体的に組み立てられた状態になる。
【0052】
上記のようにして,各噴霧用コロ73は,被保持部111,112がコロ保持溝85,コロ保持穴95によってそれぞれ保持され,板状部81と上取付板72との間に挟まれた状態で支持される。即ち,各噴霧用コロ73の下部絞り部101,円筒部102,上部絞り部103のみが,板状部81と上取付板72との間でそれぞれ露出された状態で支持される。また,各噴霧用コロ73は,回転軸41を囲むようにして,切り欠き部105において互いにかみ合わせられた状態で,周方向に沿って並べて備えられる。
【0053】
このように,噴霧用コロ73は,各噴霧用コロ73の下縁部同士を密着させた状態で並べられており,また,各噴霧用コロ73の下縁部は,下取付板71の上面81aの周縁部に密着させられている。即ち,下取付板71の上面81aの周縁部は,噴霧用コロ73の下端部によって覆われている。従って,後に詳細に説明する造粒工程時に,各噴霧用コロ73の間において,下取付板71の表面に原液が接触しないようになっている。これにより,下取付板71の周縁部が原液によって摩耗することを防止できる。また,各噴霧用コロ73の下縁部同士を離隔させて備える場合よりも,噴霧用コロ73同士の間の隙間115を狭くし,噴霧盤42に取り付けられる噴霧用コロ73の個数を増加させることができる。従って,各噴霧用コロ73の外周面において原液が付着する面積を合計した総面積(濡れ面積)を大きくすることができる。従って,原液を効率的に噴霧でき,また,噴霧される液滴の粒径の均一性を向上させることができる。
【0054】
さらに,切り欠き部105において噴霧用コロ73の下縁部同士をかみ合わせて密着させることにより,切り欠き部105を設けないままで噴霧用コロ73の下端部を隣接させて密着させる場合よりも,コロ中心軸Pr同士の間の距離をより小さくし,隙間115をより狭くすることができる。即ち,図示の例において,隣り合う噴霧用コロ73のコロ中心軸Pr同士の間の距離をBとすると,切り欠き部105を設けない場合は,B≧dの制約があるが,切り欠き部105を設けることにより,B<dにすることができる。従って,各噴霧用コロ73の大きさ(外径)を変えることなく,噴霧盤42に取り付けられる噴霧用コロ73の個数をさらに増加させることができる。あるいは,噴霧盤42に取り付けられる噴霧用コロ73の個数を変えることなく,各噴霧用コロ73の外径を太くすることができる。即ち,濡れ面積をさらに増加させることができる。
【0055】
次に,以上のように構成された噴霧乾燥装置1によって酸化鉄の微粒子を造粒する方法について説明する。先ず,回転軸41の回転により,噴霧盤42を回転軸41と一体的に回転させながら,原液送液管51から液分配器52に原液を供給する。液分配器52においては,各ノズル53にそれぞれ原液が分配され,各ノズル53から噴霧盤42の隙間92に向かって原液がそれぞれ吐出される。
【0056】
各ノズル53から吐出された原液は,隙間92を通じて隆起部82の外周面上に供給される。そして,隆起部82の外周面から板状部81の上面81aに向かって下降しながら,原液が有する粘性により,噴霧盤42と共に回転し,この回転によって遠心力を受けることにより,隆起部82側から上面81aの周縁部,即ち,噴霧用コロ73に向かって流れていく。
【0057】
上面81aから各噴霧用コロ73に到達した原液は,下部絞り部101の下縁部において,内側(回転軸41側)の面に付着する。そして,遠心力を受けることにより,下部絞り部101の外周面に沿って内側から隙間115を通って外側(噴霧盤42の外側)に向かって流れながら,下部絞り部101の下縁部から上方に向かって上昇する。これにより,各噴霧用コロ73の下部絞り部101の外周面,円筒部102の外周面,上部絞り部103の外周面に渡って,原液の液膜が形成される。こうして各噴霧用コロ73の外周面において上下に液膜状に広がった原液は,噴霧用コロ73の隙間115から外側に移動した付近で,遠心力によって各噴霧用コロ73の外周面から離れ,多数の液滴状になって,噴霧盤42の周囲に振り飛ばされる。
【0058】
なお,各噴霧用コロ73における原液の流れ方や液膜の状態,液滴の大きさ等は,原液の比重,粘度,供給流量,噴霧盤42の回転数,噴霧用コロ73の形状等に依存する。例えば噴霧盤42の回転数が多いほど,あるいは,原液の供給流量が多量であるほど,原液は各噴霧用コロ73において,より高い位置まで上昇する。
【0059】
例えば噴霧盤42の回転数が比較的低い場合,あるいは,原液の供給流量が少量である場合は,原液は下部絞り部101の外周面から円筒部102の外周面の下部付近まで上昇し,上部絞り部103には到達しない。このとき形成される原液の液膜の厚さは,高さ方向において異なり,下方ほど厚く,上方に向かうに従い次第に薄くなる。ここで,原液が噴霧用コロ73の外周面から離れる部分における噴霧用コロ73の表面形状と原液に作用する遠心力との関係について考えてみると,噴霧盤42の回転中心軸Poと下部絞り部101の外周面との間の距離は,上方に向かうほど小さくなっているので,噴霧用コロ73に付着した原液に作用する遠心力の大きさは,上方に向かうほど次第に小さくなる。従って,上方に向かうほど,即ち,液膜の厚さが薄いほど,液膜にはより小さな遠心力が働き,より小さな力で液滴化される。その結果,液膜から形成される液滴の大きさは,液膜の位置(高さ)に関わらずほぼ均一になる。
【0060】
また,例えば噴霧盤42の回転数が比較的高い場合,あるいは,原液の供給流量が多量である場合は,原液は上昇し易くなり,上部絞り部103の外周面付近まで上昇することがある。ここで,上部絞り部103においては,上方に向かうほど次第に外径が大きくなっているので,原液の上昇は適度に抑制される。そのため,液膜が上方において過度に厚くなりすぎることを防止できる。従って,この場合も,液膜から形成される液滴の大きさは,液膜の位置(高さ)に関わらずほぼ均一になる。このように,噴霧用コロ73に上部絞り部103を形成することで,噴霧盤42の回転数や原液の供給流量に関わらず,均一な液滴を形成できるようになる。
【0061】
また,各噴霧用コロ73の下縁部が,隣り合う噴霧用コロ73と切り欠き部105において密着した状態になっていることにより,噴霧用コロ73の間において,下取付板71の表面が原液と接触しないので,下取付板71が摩耗することを防止できる。即ち,従来の噴霧盤42のように,噴霧用コロ73の下縁部同士の間が離隔していると,その下縁部同士の間において,原液が下取付板71の上面81aに沿って強い遠心力を受けながら勢い良く流れ,原液中に含まれる粉体によって上面81aが擦られ,摩耗しやすい問題があったが,そのような原液による摩耗を防止できる。
【0062】
こうして噴霧盤42によって原液の液滴を噴霧させる一方で,乾燥用ガスを乾燥用ガス導入路26によって導入し,筐体23の内部,隙間28,乾燥用ガス供給口5を通じて,乾燥室10に供給する。乾燥用ガスは,乾燥用ガス供給口5から噴霧盤42の周囲全体に吐出される。従って,噴霧盤42から噴霧された液滴は,乾燥用ガス供給口5から供給される乾燥用ガスに接触し,乾燥用ガスによって乾燥させられる。即ち,液滴に含まれる液体が蒸発し,液滴に含まれる粉体が焼結することで,酸化鉄からなる固体状の略球状の微粒子が造粒される。
【0063】
造粒された酸化鉄の微粒子は,チャンバー2の内部において落下し,チャンバー2の底部,即ち貯留部11に沈下して貯留される。一方,乾燥用ガスを含むチャンバー2内の雰囲気は,排気口6によってチャンバー2内から排気され,排気路61を通じてサイクロン62に導入される。そして,サイクロン62において,排気に含まれる固体(粉体や微粒子等の異物等)と気体(乾燥用ガス)とが分離された後,それぞれ回収される。
【0064】
かかる噴霧乾燥装置1によれば,各噴霧用コロ73の下縁部同士を密着させて備えることにより,各噴霧用コロ73の下縁部同士を離隔させる場合よりも,噴霧用コロ73同士の間の隙間115を狭くすることができ,噴霧盤42に取り付けられる噴霧用コロ73の個数を増加させることができる。これにより,噴霧用コロ73に原液が付着する濡れ面積を大きくし,噴霧される液滴の粒径の均一性を向上させることができる。即ち,造粒される微粒子の粒径の均一性を向上させることができる。噴霧盤42の回転数を高くしなくても,液滴の粒径の均一化,微粒子の粒径の均一化を実現できる。従って,低い回転数で造粒を行うことにより,噴霧用コロ73や下取付板71等が原液によって擦られることを抑制でき,噴霧用コロ73や下取付板71等の摩耗を防止できる。即ち,噴霧盤42の寿命を延ばすことができる。
【0065】
また,各噴霧用コロ73の下縁部を下取付板71の上面81aの周縁部にそれぞれ密着させることにより,噴霧用コロ73の間の隙間115において,上面81aに原液が接触することを防止できる。これにより,噴霧用コロ73の間の隙間115において,下取付板71が摩耗することを防止できる。噴霧盤42の回転数を高くした場合でも,下取付板71の周縁部の摩耗を防止できる。
【0066】
また,噴霧用コロ73に切り欠き部105を形成し,切り欠き部105において噴霧用コロ73同士を密着させることにより,切り欠き部105を設けない場合よりも,噴霧用コロ73同士の間の隙間115をさらに狭くすることができる。従って,各噴霧用コロ73の外径を変えることなく,噴霧盤42に取り付けられる噴霧用コロ73の個数をさらに増加させることができる。あるいは,噴霧盤42に取り付けられる噴霧用コロ73の個数を変えることなく,各噴霧用コロ73の外径を太くすることができる。即ち,濡れ面積をさらに増加させることができる。
【0067】
以上,本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
以上の実施形態においては,噴霧用コロ73は,円弧Aの回転体状の外周面をなす下部絞り部101,円筒部102,及び,円弧Aの回転体状の外周面をなす上部絞り部103を有する構成としたが,噴霧用コロ73の形状はかかるものに限定されない。
【0069】
例えば,上部絞り部103や円筒部102は必ずしも設けなくても良い。例えば図9に示す噴霧用コロ130のように,噴霧用コロ130の下縁部から上縁部まで総てを下部絞り部101にしても良い。即ち,噴霧用コロ130の下縁部から上縁部まで,上方に向かうほど次第に外径が小さくなる形状にしても良い。
【0070】
また,上部絞り部103の曲立半径ρを大きくしても良い。例えば図10に示す噴霧用コロ131のように,噴霧用コロ131の中間部の高さを中心として上下対称な形状(鼓型)をなすように,即ち,円筒部102を省略し,下部絞り部101と上部絞り部103を対称な形状(ρ=ρ)にしても良い。なお,この場合,上部絞り部103の上縁部や被保持部112にも,切り欠き部105と対称な切り欠き部132を設け,隣り合う噴霧用コロ131の上縁部と切り欠き部132とをかみ合わせて密着させるようにしても良い。
【0071】
以上の実施形態では,下部絞り部101の外周面の形状は,円弧Aを回転させた回転体状であるとしたが,かかるものに限定されない。例えば,側面視における下部絞り部101の外周面の輪郭が,上方に向かうに従い次第にコロ中心軸Pr側に近づくように湾曲した下に凸の二次曲線に沿った形状になるようにしても良い。即ち,下に凸の二次曲線の一部を,コロ中心軸Prを中心として回転させた回転体状にしても良い。
【0072】
以上の実施形態では,切り欠き部105の形状は平面視において略円弧状であるとしたが,切り欠き部105の形状はかかるものに限定されない。また,切り欠き部105は複数設けても良い。例えば図11及び図12に示す噴霧用コロ140のように,平面視において略直線状をなす切り欠き部141を両側に2つ備えても良い。図11及び図12に示す例では,噴霧用コロ140の切り欠き部141は,平面視においてコロ中心軸Prを挟んで反対側にそれぞれ設けられており,互いに面対称に形成されている。各切り欠き部141の側面は,それぞれコロ中心軸Prと略平行な平面になっており,また,噴霧用コロ140を下取付板71に取り付けたとき,それぞれ下取付板71の半径方向に沿って配置されるようになっている。この場合も,隙間115の狭化,噴霧用コロ140の個数の増加,噴霧用コロ140の外径の増大,濡れ面積の増加を図ることができる。
【0073】
また,切り欠き部105は必ずしも設けなくても良い。この場合も,噴霧用コロ73の下縁部同士を隣り合わせて密着させることにより,噴霧用コロ73同士の間の隙間115を狭くして,噴霧用コロ73の数を増やし,濡れ面積を増やすことができる。また,隙間115における下取付板71の摩耗を防止でき,回転盤42の寿命を延ばすことができる。
【0074】
また,噴霧用コロ73の材質は,炭化シリコンに限定されず,例えば機械構造用炭素鋼(例えばS45C)等の金属等を用いても良い。
【0075】
以上の実施形態においては,原液に含まれる粉体及び造粒される微粒子は,酸化鉄であるとしたが,粉体や微粒子はかかるものに限定されず,酸化鉄以外の金属,あるいは,セラミックスなどであっても良い。また,本発明は,例えば医薬品,食料品等の乾燥や造粒工程に用いられる噴霧乾燥装置に適用することもできる。
【実施例】
【0076】
本発明者らは,以下に示す5種類の互いに異なる構成を有する噴霧盤T1,T2,T3,T4,T5を試作し,各噴霧盤T1,T2,T3,T4,T5を用いてそれぞれ造粒試験を行った。
【0077】
(噴霧盤T1)
噴霧盤T1は,従来用いられていた噴霧盤と同様のものであり,図13に示すように,下縁部から上縁部に向かうに従い外径が小さくなる下部絞り部101のみの形状をなす噴霧用コロ130’を用いた。切り欠き部は形成しなかった。即ち,この噴霧用コロ130’は,切り欠き部105を形成していない点を除いて,上述した噴霧用コロ130(図9)とほぼ同様の構成を有するものである。なお,下部絞り部101の高さは約16.7mm,下部絞り部101の下縁の外径は約16.9mm,下部絞り部101の上縁の外径は約8mm,曲率半径ρは33.5mmとした。材質はS45Cとした。これらの噴霧用コロ130’を,下取付板71と上取付板71との間に挟んで備え,噴霧盤T1とした。噴霧盤T1においては,隣り合う噴霧用コロ130’の下縁部を互いに密着させず,各下縁部の間に所定の間隔を空けるようにして,下取付板71の上面81aの周縁部に24個並べて備えた。上面81aの外径は150mmとし,各噴霧用コロ130’のコロ中心軸Prは,回転中心軸Poを中心とした直径約133mmの円上に配置した。
【0078】
(噴霧盤T2)
図14に示すように,中間部の高さを中心として上下対称な形状(鼓型)の噴霧用コロ131’を用いた。切り欠き部は形成しなかった。即ち,この噴霧用コロ131’は,切り欠き部105を形成していない点を除いて,上述した噴霧用コロ131(図10)とほぼ同様の構成を有するものである。なお,下部絞り部101の下縁から上部絞り部103の上縁までの高さは約18.6mm,下部絞り部101の下縁の外径(上部絞り部103の上縁の外径)は約17.3mm,曲率半径ρは11.5mmとした。材質はS45Cとした。これらの噴霧用コロ131’を,下取付板71と上取付板71との間に挟んで備え,噴霧盤T2とした。噴霧盤T2においては,噴霧用コロ131’を,隣り合う噴霧用コロ131’の下縁部を互いに密着させるようにして,また,隣り合う噴霧用コロ131’の上縁部を互いに密着させるようにして,周縁部に24個並べて備えた。上面81aの外径は150mmとし,各噴霧用コロ131’のコロ中心軸Prは,回転中心軸Poを中心とした直径約133mmの円上に配置した。
【0079】
(噴霧盤T3)
噴霧盤T3においては,図15に示すように,下部絞り部101,円筒部102,上部絞り部103,切り欠き部105,被保持部111,112を有する噴霧用コロ145を用いた。この噴霧用コロ145は,被保持部111の外径が下部絞り部101の下端の外径より小さく形成されている点を除いて,上述した噴霧用コロ73(図6)とほぼ同様の構成を有するものである。なお,下部絞り部101の下縁から上部絞り部103の上縁までの高さは約18.2mm,下部絞り部101の下縁から下部絞り部101の上端(円筒部102の下端)までの高さは約11.1mm,下部絞り部101の下縁の外径(d)は約20.35mm,円筒部102の外径(d)は約8mm,上部絞り部103の上縁の外径(d)は約14mm,下部絞り部101の曲率半径(ρ)は約13mm,上部絞り部103の曲率半径(ρ)は約2.5mm,切り欠き部105の曲率半径(d’/2)は約10.25mmとした。材質はS45Cとした。これらの噴霧用コロ145を,下取付板71と上取付板71との間に挟んで備え,噴霧盤T3とした。噴霧盤T3の下取付板71においては,図16に示すように,切り欠き部105において隣り合う噴霧用コロ同士を互いに密着させ,さらに,平面視において下部絞り部101の下縁部の一部が,上面81aの周縁よりも外側に突出するようにして備えた。こうして,下取付板71の周縁部に24個の噴霧用コロ145を並べて備えた。上面81aの外径は150mmとし,各噴霧用コロ145のコロ中心軸Prは,回転中心軸Poを中心とした直径約133mmの円上に配置した。
【0080】
(噴霧盤T4)
図11に示したように,下部絞り部101,円筒部102,上部絞り部103,被保持部111,112を有するとともに,平面視において略直線状の2つの切り取り部141を備えた噴霧用コロ140を用いた。被保持部111の外径は,下部絞り部101の下端の外径より小さく形成した。なお,下部絞り部101の下縁から上部絞り部103の上縁までの高さは約18.2mm,下部絞り部101の下縁から下部絞り部101の上端(円筒部102の下端)までの高さは約11.1mm,下部絞り部101の下縁の外径(d)は約26mm,円筒部102の外径(d)は約8mm,上部絞り部103の上縁の外径(d)は約14mm,下部絞り部101の曲率半径(ρ)は約11.2mm,上部絞り部103の曲率半径(ρ)は約2.5mmとした。材質はS45Cとした。これらの噴霧用コロ140を,下取付板71と上取付板71との間に挟んで備え,噴霧盤T4とした。噴霧盤T4の下取付板71においては,図12に示したように,各切り欠き部141を下取付板71の半径方向に沿って備え,隣り合う噴霧用コロ140同士を切り欠き部141において互いに密着させ,さらに,平面視において下部絞り部101の下縁部の一部が,上面81aの周縁よりも外側に突出するようにして備えた。上面81aの外径は150mmとし,各噴霧用コロ140のコロ中心軸Prは,回転中心軸Poを中心とした直径約133mmの円上に配置した。
【0081】
(噴霧盤T5)
図17に示すように,下部絞り部101,円筒部102,上部絞り部103,切り欠き部105,被保持部111,112を有する噴霧用コロ147を用いた。この噴霧用コロ147は,上記噴霧盤T3の噴霧用コロ145と同様に,被保持部111の外径が下部絞り部101の下縁の外径より小さくなっている。ただし,材質はSiCとした。また,下部絞り部101の下縁部に,平面視において略直線状をなす切断部148を設けた。なお,下部絞り部101の下縁から上部絞り部103の上縁までの高さは約18.2mm,下部絞り部101の下縁から下部絞り部101の上端(円筒部102の下端)までの高さは約11.1mm,下部絞り部101の下縁の外径(d)は約20.35mm,円筒部102の外径(d)は約8mm,上部絞り部103の上縁の外径(d)は約13.5mm,下部絞り部101の曲率半径(ρ)は約13mm,上部絞り部103の曲率半径(ρ)は約2.5mm,切り欠き部105の曲率半径(d’/2)は約10.25mmとした。これらの噴霧用コロ147を,下取付板71と上取付板71との間に挟んで備え,噴霧盤T5とした。噴霧盤T5の下取付板71においては,図18に示すように,隣り合う噴霧用コロ147同士を切り欠き部105において互いに密着させ,また,平面視において切断部148が上面81aの周縁の内側に沿って近接させて備えられるようにした。即ち,図16に示した噴霧盤T3において,上面81aの周縁から外側に突出していた下縁部の一部を,上面81aの周縁に沿って切断したような構成にした。上面81aの外径は150mmとし,各噴霧用コロ147のコロ中心軸Prは,回転中心軸Poを中心とした直径約133mmの円上に配置した。
【0082】
(造粒試験)
原液の粘度は,約260cP(約0.26Pa・s)程度とし,かかる原液を上記噴霧盤T1〜T5の回転によってそれぞれ噴霧し,約900℃の大気雰囲気中で加熱し,造粒を行った。そして,造粒された微粒子の粒度分布(粒径分布)を,マイクロトラック(粒度分析測定装置)によってそれぞれ測定した。また,各噴霧盤T1〜T5の回転数を13000rpmにした場合,15000rpmにした場合,17000rpmにした場合について,それぞれ造粒及び測定を行った。その結果を図19,図20及び図21に示す。また,各粒度分布から平均粒径(D50),及び,シャープネス((D84−D16)/2)をそれぞれ算出した。その結果を図22及び図23に示す。なお,D50は,造粒された微粒子の全体積を100%として粒径に対する累積割合を求めたときの累積割合が50%となる粒径(体積平均粒径)である。また,D84は,造粒された微粒子の全体積を100%として粒径に対する累積割合を求めたときの累積割合が84%となる粒径である。D16は,造粒された微粒子の全体積を100%として粒径に対する累積割合を求めたときの累積割合が16%となる粒径である。シャープネスは,粒径のばらつきを評価するための値であり,この値が小さいほどばらつきが少ない(狭分布である)といえる。
【0083】
図22より,噴霧盤T1〜T5の回転数が高いほど平均粒径が小さくなることがわかる。また,図23より,回転数が高いほどシャープネスが大きくなることがわかる。さらに,図23から明らかなように,従来型の噴霧盤T1を用いた場合は,改良型の噴霧盤T2〜T5を用いた場合と比較して,シャープネスが大きく,特に,回転数が低いほどシャープネスが大きくなる。これに対し,噴霧盤T2〜T5を用いた場合では,回転数が低いときも,シャープネスが噴霧盤T1の場合より小さいことがわかる。即ち,噴霧盤T2〜T5によれば,回転数に関わらず,粒径のばらつきを小さくできると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は,例えば酸化鉄の微粒子の造粒に用いられる噴霧盤及び噴霧乾燥装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態にかかる噴霧乾燥装置の構成を説明する概略側面図(部分断面図)である。
【図2】噴霧盤の構成を説明する概略平面図である。
【図3】噴霧盤の構成を説明する概略縦断面図であり,図2におけるI−I線による断面図である。
【図4】下取付板の平面図である。
【図5】噴霧用コロの平面図である。
【図6】噴霧用コロの側面図である。
【図7】噴霧用コロを噴霧盤に取り付けた状態を説明する概略側面図である。
【図8】噴霧用コロを噴霧盤に取り付けた状態を説明する説明図であり,図7におけるII−II線による横断面図である。
【図9】円筒部と上部絞り部を省略した実施形態にかかる噴霧用コロの側面図である。
【図10】鼓型にした実施形態にかかる噴霧用コロの側面図である。
【図11】切り取り部を2つ設けた実施形態にかかる噴霧用コロ(実施例の試験で噴霧盤T4に備えた噴霧用コロ)の側面図である。
【図12】切り取り部を2つ設けた噴霧用コロを噴霧盤に取り付けた状態を説明する説明図(実施例の試験で用いた噴霧盤T4の構成を説明する説明図)である。
【図13】実施例の試験で用いた噴霧盤T1の構成を説明する側面図である。
【図14】実施例の試験で用いた噴霧盤T2の構成を説明する側面図である。
【図15】実施例の試験で噴霧盤T3に備えた噴霧用コロの側面図である。
【図16】実施例の試験で用いた噴霧盤T3の構成を説明する説明図である。
【図17】実施例の試験で噴霧盤T5に備えた噴霧用コロの側面図である。
【図18】実施例の試験で用いた噴霧盤T5の構成を説明する説明図である。
【図19】実施例の試験において,各噴霧盤T1〜T5の回転数を13000rpmにしたときに造粒された微粒子の粒度分布を示すグラフである。
【図20】実施例の試験において,各噴霧盤T1〜T5の回転数を15000rpmにしたときに造粒された微粒子の粒度分布を示すグラフである。
【図21】実施例の試験において,各噴霧盤T1〜T5の回転数を17000rpmにしたときに造粒された微粒子の粒度分布を示すグラフである。
【図22】実施例の試験結果において,各噴霧盤T1〜T5の回転数と平均粒径との関係を示したグラフである。
【図23】実施例の試験結果において,各噴霧盤T1〜T5の回転数とシャープネスとの関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0086】
Po 回転中心軸
Pr コロ中心軸
1 噴霧乾燥装置
3 噴霧機
5 乾燥用ガス供給口
41 回転軸
42 噴霧盤
43 原液供給機構
71 下取付板
72 上取付板
73 噴霧用コロ
81 板状部
81a 上面
101 下部絞り部
102 円筒部
103 上部絞り部
105 切り欠き部
115 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することにより原液を回転中心軸側から周縁部外側に噴霧させる噴霧盤であって,
前記回転中心軸の周囲に,複数の噴霧用コロを備え,
前記回転中心軸及び前記噴霧用コロの中心軸は,上下方向に向けられ,
前記噴霧用コロは,下縁部から上方に向かうに従い外径が小さくなるように形成された絞り部を有し,
隣り合う噴霧用コロの下縁部同士が密着させられていることを特徴とする,噴霧盤。
【請求項2】
前記噴霧用コロは,前記絞り部の上方において,下方から上縁部に向かうに従い外径が大きくなるように形成されていることを特徴とする,請求項1に記載の噴霧盤。
【請求項3】
前記噴霧用コロの下縁部に切り欠き部が設けられ,
前記切り欠き部に,隣り合う他の噴霧用コロの下縁部がかみ合わせられていることを特徴とする,請求項1又は2に記載の噴霧盤。
【請求項4】
前記噴霧用コロの下縁部の両側に切り欠き部がそれぞれ設けられ,
前記切り欠き部同士が互いに密着させられていることを特徴とする,請求項1又は2に記載の噴霧盤。
【請求項5】
前記回転中心軸を中心として回転可能な取付板を備え,
前記噴霧用コロは,前記取付板の上面周縁部に取り付けられており,
前記噴霧用コロの下縁部は,前記取付板の上面に密着させられていることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の噴霧盤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の噴霧盤と,
前記噴霧盤に原液を供給する原液供給機構と,
前記噴霧盤から噴霧された原液を乾燥させる乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給口とを備えることを特徴とする,噴霧乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−268413(P2007−268413A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97247(P2006−97247)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【出願人】(000224802)DOWA IPクリエイション株式会社 (96)
【Fターム(参考)】