説明

噴霧装置及び噴霧方法

【課題】噴霧軌跡の柔軟な設定、又は噴霧空間内の噴霧ムラの低減が可能な噴霧装置、及び噴霧方法を提供すること。
【解決手段】加圧水をノズル先端から噴出しファンによる気流にのせて霧を放出する送風手段を備えた噴霧装置において、前記送風手段の縦回転軸の仰角を調整可能な仰角調整手段を設けることによって、噴霧軌跡をより柔軟に設定することを可能とした。また、前記縦回転の回転速度、又は送風手段の風量、水圧若しくは水量、のうち少なくとも何れかを、前記縦回転の旋回角度に応じて調整しながら噴霧することにより、噴霧空間内の噴霧ムラの低減を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル先端から加圧水を霧状に空中に噴出し、送風機の気流でもって噴霧する噴霧装置であって、より詳細には、空間の湿度調整、気化熱による冷却効果を利用した熱中症対策、浮遊粉塵の沈降、消臭材・芳香剤の散布に利用する噴霧装置及び該噴霧装置を用いた噴霧方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の噴霧装置(ミストファン)は、送風扇の前面に、該送風扇の羽根径に見合うサイズのリング状の送液管を配置し、該送液管に適宜数の噴出口と液体を供給する液体供給口とを設け、該送液管中の液体に一定以上の圧力をかけ、該送液管中の液を前記噴出口から噴霧させ、これによって霧化したミストを送風扇の風圧で空間内に拡散させる様に構成されている。
【0003】
また、上記噴霧装置に類似する構造を備えた装置として、降雪機が知られている。特許文献2に記載の降雪機は、円筒状のケーシング内に固定したノズルの筒内に一方側から加圧水と加圧空気を同時に送り込み、ノズル先端より水と空気を霧状に噴出させ、同時にノズル外筒外周に設けた送風羽根を動力をもって回転させ風を起こし、噴出した水と空気を空中に飛ばし降雪させる様に構成されている。
【0004】
また、特許文献3に記載の降雪機は、車体の荷台の上に降雪機構部を備えたものであり、該降雪機構部が、縦軸廻り及び水平軸廻りに旋回作動することで、噴出角度及び噴出方向を調整し、降雪するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録3068525号公報
【0006】
【特許文献2】特開平06−129740号公報
【0007】
【特許文献3】実開平06−51765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の噴霧器又は降雪機では、以下の様な問題のうち、少なくとも一つの問題を有する。
(1)従来の噴霧装置で全周方向に噴霧するためには、両回転機構を同時且つ連続的に操作しなければならず、手動による操作が困難である。
(2)両回転機構を自動制御するためには、それぞれの機構に駆動装置と制御回路を設ける必要があり、構造が複雑となって、故障率や製造コストが増加する。
(3)両回転機構を自動制御したとしても、噴霧軌跡がある程度限られるため、望まない箇所にまで噴霧される可能性がある。
(4)噴霧作業を行う場合、霧を放出する方向の空間の広さに差異があると、噴霧ムラが生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべくなされた本願発明は、加圧水をノズル先端から噴出し、ファンによる気流にのせて霧を放出する送風手段を備えた噴霧装置であって、前記送風手段を縦回転する、第一の回転手段と、前記送風手段を横回転する、第二の回転手段と、前記第一の回転手段の回転軸の仰角を調整する、仰角調整手段と、前記各手段の動作を制御する、制御手段と、を備えたことを特徴とする、噴霧装置を提供するものである。
【0010】
また、前記発明において、前記制御手段が、前記第一の回転手段の回転速度、前記送風手段の風量、又は加圧水の水圧若しくは噴霧水量、のうち少なくとも何れかを、前記第一の回転手段の旋回角度に応じて調整するよう構成してもよい。
【0011】
また、本願発明は、前記発明に記載の噴霧装置を用いた噴霧方法であって、
噴霧空間内に複数の湿潤計を間隔を空けて設置し、前記湿潤計の測定値に基づいて、前記第一の回転手段の回転速度、前記送風手段の風量、又は加圧水の水圧若しくは噴霧水量を調整しながら噴霧することを特徴とする、噴霧方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、下記の効果のうち、少なくとも何れかを得ることができる。
(1)従来の噴霧装置よりも柔軟な噴霧軌跡の設定が可能となる。
(2)噴霧空間内の噴霧ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明の噴霧装置の正面概略図。
【図2】本願発明の噴霧装置の左側面概略図。
【図3】第1実施例に係る噴霧装置の使用例を示すトンネル内の縦断面図。
【図4】第2実施例に係る噴霧装置の使用例を示すトンネル内の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面を参照しながら、本願発明に係る噴霧装置及び噴霧方法の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
<1>全体構成
図1は、本願発明に係る噴霧装置の正面概略図である。
本願発明に係る噴霧装置は、加圧水をノズル先端から噴出し、ファンによる気流にのせて霧を放出する送風手段と、前記送風手段を縦回転する第一の回転手段と、前記送風手段を横回転する第二の回転手段と、前記第一の回転手段の回転軸の仰角を調整する仰角調整手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段と、を少なくとも備える。
【0016】
<2>送風手段
送風手段は、霧の生成及び放出を行うための装置である。
送風手段は、加圧水を噴出する少なくとも一つのノズル1と、前記ノズル1の先端から霧状に噴出した水を気流に乗せて噴霧するためのファン2と、を少なくとも含む。
ノズル1は、ポンプ(図示せず)によって加圧された圧力水を、ファン2の送風面に噴出するための部材であり、数量、形状、その他の諸条件は、使用状況に応じて適宜選択することができる。
ファン2は、筒状のケーシングの内部に、回転可能に取り付けてあるブレードと、整流板と、を備え、前記ブレードの回転でもって生成した風を整流板によって整流して気流を発生させる。ブレード及び整流板の数、形状、その他の諸条件は、使用状況に応じて適宜選択することができる。
ノズル1より噴出する水には、飲料水、生食水、その他の水分、又は消臭材・芳香剤などが含まれる。
【0017】
<3>第一の回転手段
第一の回転手段は、送風手段を縦回転するための装置である。
第一の回転手段は、前記ファン2の側面から水平方向に延出するように設けた二つの軸部材3と、該軸部材3の一方に取り付けて、該軸部材3を回転(旋回)可能に構成した駆動装置4と、によって少なくとも構成する。
駆動装置4は、減速機付きのモータ等を採用することができる。
駆動装置4を駆動することによって、前記軸部材3の軸方向(第一の回転軸31)を介して前記ファン2を縦方向に回転させることができる。
また、リミットスイッチなどの回転角度調整機構を設けることで、前記ファン2を自動で往復運動(いわゆる首振り運動)させることもできる(図2)。
また、第一の回転手段には、変速機構等のその他周知の機構を適宜設けておいてもよい。
【0018】
<4>第二の回転手段、仰角調整手段
第二の回転手段は、送風手段を横回転(水平旋回)するための装置である。
仰角調整手段は、前記軸部材3を、鉛直軸方向に向けて傾斜させ、仰角を形成するための装置である。
第二の回転手段及び仰角調整手段は、前記軸部材3の両外端から下方に向けて半円弧の軌跡を描くように湾曲形成してなる支持具5と、前記支持具5を該支持具5の軸方向に沿って摺動自在に構成した受け具6と、前記受け具6を回転自在に軸着する基台7と、によって構成する。
【0019】
(1)第二の回転手段としての機能
受け具6は、ロックボルト61によって基台7に締結固定されており、該ロックボルト61を緩めることによって、受け具6が基台7上をロックボルト61の軸回りに水平旋回可能に構成してある。上記の構成により、受け具6の旋回運動と連動して、送風手段(ファン2)を基台7上で水平旋回させることができる。前記水平旋回は手動・自動を問うものではない。
【0020】
(2)仰角調整手段としての機能
前記したとおり、支持具5は半円弧状の部材であるため、支持具5が受け具6内部を支持具5の軸方向に沿って摺動させることによって、前記軸部材3が鉛直軸方向に向けて徐々に傾斜することとなり、送風手段(ファン2)の噴霧方向に仰角をつけることができる。
前記ロックボルト61を受け具6に締結してある場合には、支持具5は受け具6と基台7とで押圧挟持され、摺動が制限される。一方、ロックボルト61を緩めると前記挟持状態が解放されるため、支持具5を軸方向に任意摺動させることができる。前記摺動作業は手動・自動を問うものではない。
前記支持具5は、送風手段に仰角をつけて稼働する際の安定性をより確保するため、基台7上に複数個設け、互いに間隔を空けて配置したほうが望ましい(図2)。
【0021】
<5>制御手段
制御手段は、前記の各手段(第一の回転手段、第二の回転手段、及び仰角調整手段)や、ポンプ(図示せず)等のその他の搭載装置の動作を制御するための装置である。
制御手段は、前記の各手段及びその他の搭載装置のON/OFFを制御可能な機能を少なくとも有する制御盤8によって構成することができる。
【0022】
<6>使用方法
本願発明に係る噴霧装置の使用例を、図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施例の噴霧装置をトンネルA内周の打設コンクリートの湿潤管理の為に用いた場合のモデル図(縦断面図)である。
この場合、噴霧装置は、前記第一の回転軸31の軸方向が、トンネルの長手方向を向くように車両Bの荷台などに設置しておく。
前記第一の回転軸31の軸方向を水平に保持した状態(θ=0°)で噴霧装置を作動させると、ファン2は、該ファン2の直上を経由してトンネルAの周方向に往復旋回運動を行いながら噴霧することとなる。その状態のまま車両Bを所定の速度で走行させることにより、打設コンクリートの周面に対して噴霧することが可能となる。
また、作業員や作業装置などの障害物Cによって車両Bの進行が困難な場合には、前記の仰角調整手段により、車両の前方側或いは後方側へと送風手段を傾斜させて仰角θをつけることによって、噴霧軌跡を調整し、所望の箇所へと噴霧することが可能となる。
【実施例2】
【0023】
<1>制御手段のその他の実施例
制御手段は、前記第一の回転手段の回転速度、前記送風手段の風量、又は加圧水の水圧若しくは噴霧水量、のうち少なくとも何れかを任意に調節可能に構成してもよい。各条件は作業環境に応じて適宜調整することができる。
【0024】
<2>使用方法
本実施例に係る噴霧装置の使用例を、図4を参照しながら説明する。
図4は、本実施例の噴霧装置をトンネルA内周の打設コンクリートの湿潤管理の為に用いた場合のモデル図(横断面図)である。
新設トンネルの施工現場や、既存トンネルの補修現場等においては、途上に作業装置が設置されていたり、一方の道路は一般車両に解放していたりと、トンネル幅の中央付近を通行できるケースは稀であり、トンネルの横断面に対して偏心する位置(例えば複数車線のトンネルにおける一方の車線)で車両を走行させるケースが想定される。
このような場合、第一の回転手段を定速で旋回運動させると、噴霧空間の体積に対する噴霧量が一定とならず、トンネル壁面が近い側の空間と、トンネル壁面が遠い側の空間とで、湿度のムラが生じる場合がある。
【0025】
そこで、本実施例に係る噴霧装置及びその噴霧方法では、トンネル壁面が近い側の空間と、トンネル壁面が遠い側の空間とで、湿度のムラを低減させるよう、制御手段によって前記第一の回転手段の回転速度、又は前記ファンの風量、加圧水の水圧、若しくは噴霧水量を調整することができる。
【0026】
たとえば、トンネル壁面が遠い側の空間に噴霧する際には、トンネル壁面が近い側の空間と比較して、相対的に縦回転速度を遅くしたり、前記ファンの風量及び加圧水の水圧を高くすることで、噴霧空間の体積に対する噴霧量を増やすことができる。
【0027】
また、トンネル壁面が遠い側の空間に噴霧する際には、トンネル壁面まで霧を確実に到達させるべくファンの風量や加圧水の水圧を相対的に高く設定することで、霧をより遠方へと噴出することができる。
一方、トンネル壁面が近い側の空間では、ファンの風量や加圧水の水圧が大きすぎるとトンネル壁面に付着した水分が飛散する恐れがあるため、ファンの風量や加圧水の水圧を相対的に低く設定することで、前記の問題を回避することができる。
【0028】
前記制御手段の方法は、予め設定してある複数の環境設定からその都度選択するよう構成してもよく、現場でのシミュレーション結果に応じて、施工現場に適した制御方法をその都度設定するように構成してもよい。
【0029】
前記シミュレーション方法の一例について説明する。
まず、トンネルAのある一箇所(入り口など)において、トンネルの内壁面又はその近傍に複数の湿潤計9を間隔を空けて配置し、先の噴霧装置を静置したまま、定速旋回で噴霧作業を行う。
その後、複数の湿潤計9の測定値を集計し、その集計結果に基づいて噴霧量がほぼ均一となるよう計算を行い、制御方法を導出する。
この場合、前記第一の回転手段の回転速度、又は前記ファンの風量、加圧水の水圧若しくは噴霧水量等の各種作動条件は、送風手段の縦回転の角度遷移に応じて分割した噴霧空間(D1〜D4)毎に変更するよう制御することができる。
トンネルの横断面積は、進行方向に応じてほぼ一定であることが一般的であるため、トンネル全長にわたって先のシミュレーション結果に基づく噴霧制御を行うことにより、施工品質が保証された湿潤管理が可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 ノズル
2 ファン
3 軸部材
31 第一の回転軸
4 駆動装置
5 支持具
6 受け具
61 ロックボルト
7 基台
8 制御盤
9 湿潤計
A トンネル
B 車両
C 障害物
θ 仰角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧水をノズル先端から噴出し、ファンによる気流にのせて霧を放出する送風手段を備えた噴霧装置であって、
前記送風手段を縦回転する、第一の回転手段と、
前記送風手段を横回転する、第二の回転手段と、
前記第一の回転手段の回転軸の仰角を調整する、仰角調整手段と、
前記各手段の動作を制御する、制御手段と、
を備えたことを特徴とする、噴霧装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記第一の回転手段の回転速度、前記送風手段の風量、又は加圧水の水圧若しくは噴霧水量、のうち少なくとも何れかを、前記第一の回転手段の旋回角度に応じて調整することを特徴とする、請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
請求項2に記載の噴霧装置を用いた噴霧方法であって、
噴霧空間内に複数の湿潤計を間隔を空けて設置し、
前記湿潤計の測定値に基づいて、前記第一の回転手段の回転速度、前記送風手段の風量、又は加圧水の水圧若しくは噴霧水量を調整しながら噴霧することを特徴とする、噴霧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−212538(P2011−212538A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81312(P2010−81312)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(591075630)株式会社アクティオ (33)
【Fターム(参考)】