説明

回動ゲートピンの取り付け構造

【課題】ゲート溝をキャビティの所望位置に位置決めする際の作業が容易である回動ゲートピンの取り付け構造を提供する。
【解決手段】回動ゲートピン2は受け板14の外側から回動位置を調節可能とする位置決め機構76を有し、ガイド部材56は、回動ゲートピン2のガイド溝68に係合する係合部材80と、係合部材80を受け板14に固定する固定部材58とを備え、回動ゲートピン2を受け板14に装着する際に、位置決め機構76により型閉め時のゲート74の位置を所定位置に位置決めした状態で係合部材80を固定部材58により固定可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形金型で成形される成形品のゲートをカットする回動ゲートピンの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形金型で成形される成形品は、溶融した樹脂をゲート溝を経由してキャビティに充填し、充填された樹脂が冷却されることで成形される。そのため、充填された樹脂が冷却された段階では、キャビティで成形された成形品とゲート溝で冷却された樹脂とが繋がっている。
【0003】
ゲート溝で冷却された樹脂を効率よく取り外す方法としては、ゲート溝を回転させることでゲート溝に形成された樹脂を成形品から切断する方法が知られている。この方法を実現するための射出成形金型としては、例えば特許文献1に記載されている射出成形金型が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3713452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のものでは、回転軸の端面にゲート溝が形成されており、回転軸には外周面に回転軸の軸線に対して傾斜する溝が形成されている。また、回転軸は、受け板に固定された円筒状の固定スリーブ及び鋼球を介して受け板に装着されており、受け板の移動に伴って鋼球が溝を案内し、回転軸を回転させるようになっている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、固定スリーブが受け板に固定されているため、固定スリーブ側では回転軸のゲート溝を所定位置に位置決めすることが困難である。従って、従来は、ゲート溝を成形する際に、ゲート溝が設けられていない回転軸を一旦金型に装着させ、キャビティと連通する回転軸の端面にゲート溝位置を示す印をつけた後に回転軸を金型から取り外し、この印に沿ってゲート溝を形成する必要がある。このように、従来の装置では、回転軸の端面にゲート溝を形成する際の工程が煩雑であった。
【0007】
また、上記特許文献1の構成では、ゲート溝が形成された回転軸を金型に装着した際に、型閉じした際のゲート溝の位置(回転軸の回転角度)にずれがあった場合、その調整のためには、固定スリーブの軸方向の位置を変更させて、鋼球と回転軸の溝との係合位置を変更する必要があった。
【0008】
具体的には、回転軸の型閉じした際のゲート溝の位置を調節する場合、固定スリーブを受け板から取り外し、固定スリーブと受け板との間にスペーサーを挿入するか、固定スリーブの受け板との当接面を切削する等の加工が必要となる。このように、特許文献1における回転軸の構成では、回転軸を金型に装着する際の位置決め作業が煩雑であった。
【0009】
本発明は、金型に回動ゲートピンを装着する際に、ゲート溝をキャビティの所望位置に位置決めする際の作業が容易である回動ゲートピンの取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、キャビティを形成する固定型及び可動型と、キャビティに溶融樹脂を注入するゲートと、型開き及び型閉めの際に移動する受け板とを有する金型に用いられ、ゲートが円柱状の回動ゲートピンの端面に形成され、回動ゲートピンの外周面に螺旋状にガイド溝が設けられ、ガイド溝が受け板に設けられたガイド部材によりガイドされ、受け板の移動に伴って回動自在となっているものにおいて、回動ゲートピンを受け板に位置決めする際の回動ゲートピンの位置決め構造であって、回動ゲートピンは受け板の外側から回動位置を調節可能とする位置決め機構を有し、ガイド部材は、回動ゲートピンのガイド溝に係合する係合部材と、係合部材を保持すると共に回動ゲートピンの軸線を中心として回動自在に受け板に装着される保持体と、保持体を受け板に固定する固定部材とを備え、回動ゲートピンを受け板に装着する際に、位置決め機構により型閉め時のゲートの位置を所定位置に位置決めした状態で保持体を固定部材により固定可能としたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、回動ゲートピンは受け板の外側から回動位置を調節可能とする位置決め機構を有しており、位置決め機構により型閉め時のゲートの位置を所定位置に位置決めした状態で保持体を固定することができる。そのため、型閉め時のゲートの位置の調節が容易となる。
【0012】
また、本発明において、ガイド部材の保持体は、回動ゲートピンの外周面に装着される内環リングと、内環リングの外周面に所定の間隔をなして装着される外環リングとからなり、外環リングは、内環リングの基端縁を覆う小径部を有し、内環リングが外環リングに挿入された際に内環リングの先端縁が外環リングの先端縁から前方に突出し、固定部材は外環リングの基端縁を受け板側に向けて締め付け固定することにより内環リングを位置決め固定することが好ましい。これによれば、ガイド部材の保持体は内環リングと外環リングとの二重構造であるため、内環リングと外環リングとの間に所定の間隔が形成されている。そのため、回動ゲートピンを挿入する可動型の貫通孔の中心と受け板の貫通孔の中心とがずれている場合であっても、外環リングと内環リングとの間隔によって前記ずれを修正することができる。
【0013】
また、内環リングと外環リングとは、異なる硬度の材質で形成されていてもよい。これにより、高い硬度の材料のリングが低い硬度の材料のリングに食い込みやすくなり、係合部材の位置ずれを抑制することができる。
【0014】
また、内環リングの基端縁に設けられ外環リングの小径部の当接面と当接する被当接面を有し、当接面と被当接面は、いずれか一方又は両方が粗面であってもよい。これにより、外環リングの当接面と内環リングの被当接面との間の摩擦係数が増大するため、型閉め時のゲートの位置を調節する際に、内環リングと外環リングとを確実に位置決め固定させることができる。
【0015】
また、ガイド溝は、回動ゲートピンの軸線に対して対称となるように二条に形成され、係合部材は、二条のガイド溝と係合するように2か所に設けられていてもよい。これによれば、二条に形成されたガイド溝が回動ゲートピンの軸線に対して対称となるように形成されているため、回動ゲートピンの回動時に各係合部材にかかるトルクが均等になる。そのため、回動ゲートピンの回動をスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の射出成形金型の断面図。
【図2】図1に示す射出成形金型の断面矢視図。
【図3】本実施形態の受け板の上面図。
【図4】(a)は本実施形態の回動ゲートピンの側面図、(b)は本実施形態の回動ゲートピンの基端部側から見た図。
【図5】本実施形態のガイド部材の上面図。
【図6】図5に示すガイド部材の断面矢視図。
【図7】本実施形態の回動ゲートピンの調節の説明図。
【図8】(a)は本実施形態の成形体の成形工程を示す断面図、(b)は本実施形態の成形体の成形工程を示すゲート付近の説明図。
【図9】(a)は本実施形態のゲートの切断工程を示す断面図、(b)は本実施形態のゲートの切断工程を示すゲート付近の説明図。
【図10】(a)、(b)は本実施形態の成形体の取り出し工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1〜図6を参照して、本発明の回動ゲートピン2の取り付け構造について説明する。図1は、回動ゲートピン2を取り付けた射出成形金型4を示す断面図である。射出成形金型4は、固定側取付板6と、可動側取付板8とを有する。また、射出成形金型4は、固定側取付板6に固定される固定型10と、固定型10と共に後述のキャビティを形成する可動型12と、可動型12を支持する受け板14と、この受け板14に当接されると共に可動側取付板8の両端に対峙するように設けられ、突き出し作動用の空間aを形成させるスペーサーブロック16a、16bとを有する。
【0018】
さらに、射出成形金型4は、固定型10と可動型12とで形成されるキャビティ18と、固定型10を貫通するように設けられキャビティ18と連通する連通孔20を有するスプルー22と、可動型12及び受け板14を貫通する円筒状の回動ゲートピン2とを有する。
【0019】
また、突き出し作動用の空間aに設けられ可動側取付板8と当接される第1エジェクタープレート24aと、突き出し作動用の空間aに設けられ第1エジェクタープレート24aに隣設される第2エジェクタープレート24bとを備えている。
【0020】
また、射出成形金型4には、キャビティ18まで延びる第1エジェクタピン26が第2エジェクタープレート24bに取り付けられている。
【0021】
図1〜図3に示すように、固定型10と可動型12と受け板14には、それぞれの角部近傍に、これらを連通する第1貫通孔28が複数形成されている。また、固定型10と可動型12に形成されている第1貫通孔28には、第1貫通孔28の内周側に当接されたガイドブシュ30a、30bが設けられている。この第1貫通孔28及びガイドブシュ30a、30bには円柱状のガイドピン32が挿通されている。ガイドピン32は受け板14に取り付けられており、可動型12がガイドピン32に案内されて図中で上下に摺動する。
【0022】
リターンピン34は第2エジェクタープレート24bに固定され、このリターンピン34は受け板14と可動型12との間を貫通して設けられている。また、このリターンピン34の外周には、バネ36が取り付けられている。バネ36の一端は、第2エジェクタープレート24bに当接され、バネ36の他端は、可動型12に当接されている。
【0023】
固定型10には溶融樹脂を流入させるための連通孔20が形成されたスプルー22が装着されている。また、図1及び図2に示すように、可動型12には固定型10と対向する側に窪み38が設けられ、この窪み38に入れ子40が装着されている。入れ子40の固定型10側には、凸部42が設けられ、この凸部42と固定型10との間にキャビティ18が形成されている。
【0024】
また、射出形成金型4には、固定型10と可動型12を着脱自在に接続するパーティングロック44が備えられている。可動型12を固定型10から離れる方向に引張る際に、パーティングロック44と固定型10との摩擦抵抗よりも引張る力が弱いときは、固定型10と可動型12とが閉じた状態となる。一方、可動型12を固定型10から離れる方向に引張る際に、パーティングロック44と固定型10との摩擦抵抗よりも引張る力が強いときは、固定型10と可動型12とが開くようになっている。
【0025】
また、図1〜図3に示すように、可動型12には、表裏を連通する第2貫通孔46がその側縁近傍に設けられている。第2貫通孔46には、固定型10側にザグリ部46aが設けられている。この第2貫通孔46には、ショルダーボルト48が挿入されており、ショルダーボルト48は受け板14に螺合されている。このショルダーボルト48は、第2貫通孔46のザグリ部46aとショルダーボルトの頭部48aとの間が一定の間隔bとなるように取り付けられている。
【0026】
図1に示すように、可動型12と受け板14と入れ子40には、回動ゲートピン2を挿通可能とするゲートピン貫通孔50が連通されている。このゲートピン貫通孔50は、入れ子40で形成されている第1ゲートピン貫通孔50aと、可動型12で形成されている第2ゲートピン貫通孔50bと、受け板14で形成されている第3ゲートピン貫通孔50cとからなる。また、第2ゲートピン貫通孔50bであって可動型12の窪み38と隣接する側では、第2ゲートピン貫通孔50bが拡径されたフランジ挿入部52が形成されている。
【0027】
図1〜図4に示すように、受け板14の可動型12と近接する側であって、回動ゲートピン2の近傍には、可動型12から離れるにつれて階段状に狭くなる凹部54(54a、54b)が形成されている。この凹部54はゲートピン貫通孔50と連通している。この凹部54の狭くなる側に該当する小径部54aには、回動ゲートピン2を挿通する環状のガイド部材56が挿入されている。このガイド部材56が保持体に相当する。また、この凹部54の広くなる側に該当する大径部54bには、ガイド部材56を保持するための固定部材58が挿入されている。固定部材58は、六角ネジ60によってガイド部材56を位置決め固定している。
【0028】
回動ゲートピン2の中心には、第3貫通孔62が形成されている。第3貫通孔62には、第2エジェクタピン64が挿入され、連通孔20で形成されたスプルーランナcを押し出すことができる。
【0029】
回動ゲートピン2の基端部66の外周面には、ガイド溝68が螺旋状に設けられている。また、図4に示すように、回動ゲートピン2の端面70には、端面70の内側に形成され第3貫通孔62と連通するランナー72と、端面70の外側に形成されキャビティ18と連通するゲート74とを備える。また、回動ゲートピン2の端面70の基端側には位置決め機構である六角穴76が設けられ、この六角穴76が第3貫通孔62に連通している。この六角穴76には、六角レンチを挿入することができる。
【0030】
回動ゲートピン2の外周面には、フランジ部78が備えられており、このフランジ部78は可動型12のフランジ挿入部52に挿入されている。当該構成により、回動ゲートピン2は回動ゲートピン2の軸線を中心として回動自在となり、かつ回動ゲートピン2の軸線方向で可動型12に対してフランジ部78により位置決めされるように取り付けられる。
【0031】
図5及び図6に示すように、ガイド部材56は、内周側に鋼球をはめ込むことで形成された複数の係合部材80を有する環状の内環リング82と、環状に形成され内環リング82の基端縁84を覆う小径部86を有する外環リング88とからなる。外環リング88は内環リング82を基端側から挿入できるように形成されており、内環リング82を内部に挿入した時に、内環リング82の先端縁90が外環リング88の先端縁から前方に突出するように形成されている。
【0032】
なお、係合部材80は、後述するガイド溝68に係合される部材であれば、その形状は球体に限られず、ピン状の突起であってもよい。
【0033】
内環リング82の基端縁84に設けられた一端面92は放電加工により粗面に形成されている。また、外環リング88は、一端面92と対向する小径部86の内端面94と、固定部材58と当接する外端面96が粗面加工されている。この内端面94が本発明における当接面に該当し、一端面92が被当接面に該当する。
【0034】
図1又は図6に示すように、内環リング82に設けられた係合部材80は、回動ゲートピン2のガイド溝68に係合される。また、外環リング88は、凹部54の大径部54bと固定部材58とに挟まれて保持される。外環リング88の内部には内環リング82が挿入されている。
【0035】
内環リング82の外周側の直径は、外環リング88の内周側の直径よりも0.03〜0.08mm小さい。そのため、外環リング88内に内環リング82を挿入した時に、内環リング82の外周面と外環リング88の内周面との間にクリアランス(間隔)が形成される。
【0036】
内環リング82の中心は、回動ゲートピン2を挿通可能とする第1挿通孔98となっており、外環リング88の中心は、回動ゲートピン2を挿通可能とする第2挿通孔100となっている。外環リング88の外端面96には固定部材58が当接され、六角ネジ60を締めることによって、この固定部材58が小径部54a側に押圧されて、外環リング88及び内環リング82が小径部54aに保持されている。このとき、内環リング82の一端面92と、この一端面92と当接する外環リング88の内端面94とが粗面に形成されているため、内環リング82と外環リング88との間の接触面における摩擦係数が高くなり、確実に両部材が位置決め固定される。
【0037】
また、外環リング88の外端面96と固定部材58の当接面58aも粗面に形成されているため、固定部材58と外環リング88との間の接触面における摩擦係数が高くなり、各部材が確実に位置決め固定される。このように、内環リング82と外環リング88とが、凹部54の小径部54aで固定されている。
【0038】
当該構成により、ガイド溝68は、受け板14に設けられたガイド部材56によりガイドされ、回動ゲートピン2は受け板14の可動型12に対する相対移動に伴って回動するように取り付けられる。
【0039】
次に、回動ゲートピン2の回動方向の位置調整の方法について説明する。本実施形態では、予めランナー72及びゲート74が形成された回転ゲートピン2を、射出成形金型4に装着するものとなっている。
【0040】
まず、図7を参照して、受け板14には、予め凹部54にガイド部材56が装着され、固定部材58によって仮止めされている。この状態から、入れ子40が装着されていない状態で、回転ゲートピン2を第2ゲートピン貫通孔50b及び第3ゲートピン貫通孔50cに挿通し、ガイド溝68に係合部材80を係合させながらフランジ部78がフランジ挿入部52に挿入されるまで回転ゲートピン2を図中において下方に向けて挿入する。
【0041】
次に、この状態から入れ子40を窪み38に装着し、回転ゲートピン2の位置調整を行う。回動ゲートピン2の回動方向の位置調整は、六角穴76に六角レンチfを挿入して回動ゲートピン2を回動させることによって行われる。
【0042】
固定型10と可動型12とが離れ、可動型12と受け板14とが当接された図7に示す状態で、固定部材58を受け板14に仮止めしている六角ネジ60を緩めることによって、ガイド部材56が回転自在となる。このため、六角穴76を回動させることにより、回動ゲートピン2が自在に回動される。六角穴76の回動には、六角レンチfが用いられ、受け板14の外側からゲート74の回動位置を調節することができる。
【0043】
この状態で、ランナー72とゲート74とキャビティ18とが連通するように、回動ゲートピン2の回動位置を調節した後に、六角ネジ60を用いて固定部材58を受け板14に固定する。この固定により、外環リング88が受け板14側に向けて締め付け固定され、内環リング82を位置決め固定することができる。これにより、ランナー72及びゲート74の回動位置の調節が完了する。
【0044】
このとき、内環リング82の外周側の直径は、外環リング88の内周側の直径よりも0.03〜0.08mm小さいため、内環リング82と外環リング88との間にクリアランスが形成されている。そのため、ガイド部材56が固定されていない状態で、外環リング88内に内環リング82を挿入した時に、内環リング82の位置を径方向に多少ずらすことが可能となる。したがって、回動ゲートピン2の射出成形金型4に対する中心位置がずれていた場合であっても、回転ゲートピン2を内環リング82と共に移動させることによって回動ゲートピン2の中心位置を修正することができる。
【0045】
ここで、中心位置の修正は、第1ゲートピン貫通孔50aの中心軸と、第3ゲートピン貫通孔50cの中心軸がずれている場合等に、回動ゲートピン2の位置を調節して回動ゲートピン2の中心位置を調節することを指す。
【0046】
次に、図8(a)〜図9(b)を用いて回動ゲートピン2の動作を説明する。図8(a)では、固定型10と可動型12とが当接された型閉じの状態であって、かつ可動型12と受け板14とが当接された状態を示している。また、図8(b)は、図8(a)に示された状態における回動ゲートピン2の端面70とキャビティ18を示した状態を示している。
【0047】
図8(a)、(b)に示すように、ランナー72とゲート74との回動位置が調節されて、連通孔20とランナー72とゲート74とキャビティ18とが連通されている。そのため、溶融樹脂は連通孔20からランナー72とゲート74とを経由してキャビティ18に注入される。キャビティ18に注入された溶融樹脂は、所定温度で所定時間維持されて成形品dとなる(成形工程)。
【0048】
成形工程の後、図9(a)、(b)に示されるように、可動側取付板8を固定側取付板6から離隔する方向に引張ることによって、受け板14とスペーサーブロック16a、16bが、固定側取付板6から離隔する方向に移動する。また、受け板14の移動と共にショルダーボルト48が移動するが、受け板14及びショルダーボルト48の移動が間隔bと等しくなると、第2貫通孔46のザグリ部46aにショルダーボルト48の頭部48aが当接される。この当接によって、その後の可動側取付板8の引張り力に関わらず、可動型12と受け板14との距離が一定の間隔bとなる。
【0049】
受け板14とスペーサーブロック16a、16bが、固定側取付板6から離隔する方向に移動する際には、固定部材58によって固定されているガイド部材56も受け板14と共に移動する。そのため、係合部材80に対応するようにガイド溝68を有する回動ゲートピン2が反時計回りに回動し、回動ゲートピン2の端面70が回動する。したがって、端面70に形成されているランナー72とゲート74も回動して、ゲート74とキャビティ18との連通が切断される。この切断により、成形工程で形成された樹脂が切断される(切断工程)。
【0050】
切断工程の後、可動側取付板8を固定側取付板6から離隔する方向に引張る力を増加させると、パーティングロック44の連結が解除される。そのため、図10(a)に示すように、固定型10と可動型12とが離れて、スプルーランナcと成形体dが露わになる。
【0051】
図10(b)に示すように、スプルーランナcと成形体dが露わになった状態で、第1エジェクタープレート24aと第2エジェクタープレート24bとを受け板14に近づけることにより、第1エジェクタピン26と第2エジェクタピン64が突き出される。第1エジェクタピン26の突き出しによって、成形体dが射出成形金型4から取り出される。また、第2エジェクタピン64の突き出しによって、固化したスプルーランナcが射出成形金型4から排出される(取り出し工程)。
【0052】
以上のように、本実施形態の回動ゲートピン2の取り付け構造では、受け板14に対してガイド部材56が回動自在であり、固定部材58によって受け板14の外側からガイド部材56を固定することができる。
【0053】
また、回動ゲートピン2は、受け板14の外側から回動位置を調節可能とする六角穴76を有しており、六角穴76により型閉め時のゲート74の位置を所定位置に位置決めすることができる。そのため、型閉め時のゲート74の位置の調節が容易となる。
【0054】
また、ガイド部材56は内環リング82と外環リング88との二重構造であり、内環リング82と外環リング88との間にクリアランスが形成されている。そのため、回動ゲートピン2の中心出しをする際に、内環リング82の径方向への移動によって中心位置を修正することができる。
【0055】
当該中心位置の調整について詳しく説明すると、第3ゲートピン貫通孔50cの中心軸と回動ゲートピン2の中心軸とは一致しているものの、第1ゲートピン貫通孔50aの中心軸と第2ゲートピン貫通孔50bの中心軸と第3ゲートピン貫通孔50cの中心軸とがずれている場合がある。この場合には、内環リング82の回転によって回動ゲートピン2の中心軸を第1ゲートピン貫通孔50aの中心軸に一致させることで、回動ゲートピン2の中心軸が修正される。したがって、第1ゲートピン貫通孔50aの中心軸と第3ゲートピン貫通孔50cの中心軸とがずれている場合においても、回動ゲートピン2の取り付け位置を容易に調節することができる。
【0056】
また、第1ゲートピン貫通孔50aの中心軸と第2ゲートピン貫通孔50bの中心軸と第3ゲートピン36cの中心軸とは一致しているものの、第3ゲートピン貫通孔50cの中心軸と内環リング82の中心とがずれている場合も考えられる。この場合でも、内環リング82の回転によって回動ゲートピン2の中心軸を第3ゲートピン貫通孔50cの中心軸に一致させることで、回動ゲートピン2の中心軸が修正され、回動ゲートピン2の取り付け位置を容易に調節することができる。
【0057】
さらに、内環リング82と回動ゲートピン2の加工精度の影響によって、第1ゲートピン貫通孔50a〜第3ゲートピン貫通孔50cの中心軸と回動ゲートピン2の中心軸とがずれている場合も考えられる。この場合でも、内環リング82の回転によって回動ゲートピン2の中心軸を第3ゲートピン貫通孔50cの中心軸に一致させることで、回動ゲートピン2の中心軸が修正される。そのため、内環リング82と回動ゲートピン2の加工精度の影響による第1ゲートピン貫通孔50aに対する回動ゲートピン2の中心軸のずれを内環リング82で吸収することができる。
【0058】
さらに、また、内環リング82の基端縁84に設けられ外環リング88の小径部86に覆われた一端面92は粗面加工がなされているため、内環リング68と外環リング74との間の摩擦係数が大きい。したがって、両部材を確実に受け板14に位置決め固定することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、回動ゲートピン2のガイド溝68は一条であるが、ガイド溝68は一条に限られず、二条であってもよい。この場合、ガイド溝68は回動ゲートピン2の軸線に対して対称となるように形成され、係合部材80も回動ゲートピン2の回転軸線を中心として対称となるよう2箇所に設ける。
【0060】
当該構成によれば、ガイド溝68の回動によってガイド溝68から係合部材80に伝達されるトルクは回動ゲートピン2の回転軸線を中心として対称に伝達されるため、回動ゲートピン2の回転がスムーズになる。
【0061】
また、回転ゲートピン2の位置決め機構は、上記実施形態のように六角穴76に限られず、プラスやマイナス等の溝や、工具が装着可能な他の形状であってもよい。このときは、プラスやマイナスの溝はプラスやマイナス等の形状の溝に挿入可能な回転工具を挿入することができる。
【0062】
また、内環リング82の一端面92と外環リング88の内端面94と外端面96の粗面は放電加工により加工しているが、これに限らず、ショットブラスト加工やプレス等により凹凸加工を施してもよく、又は摩擦係数の高い材質で一端面92と内端面94と外端面96の表面をコーティングする等の方法により粗面としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
2…回動ゲートピン、4…射出成形金型、10…固定型、12…可動型、14…受け板、18…キャビティ、56…ガイド部材、58…固定部材、66…基端部、68…ガイド溝、70…端面、74…ゲート、76…位置決め機構(六角穴)、80…係合部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを形成する固定型及び可動型と、前記キャビティに溶融樹脂を注入するゲートと、型開き及び型閉めの際に移動する受け板とを有する金型に用いられ、
前記ゲートが円柱状の回動ゲートピンの端面に形成され、
前記回動ゲートピンの外周面に螺旋状にガイド溝が設けられ、前記ガイド溝が前記受け板に設けられたガイド部材によりガイドされ、前記受け板の移動に伴って回動自在となっているものにおいて、前記回動ゲートピンを前記受け板に位置決めする際の回動ゲートピンの位置決め構造であって、
前記回動ゲートピンは前記受け板の外側から回動位置を調節可能とする位置決め機構を有し、
前記ガイド部材は、前記回動ゲートピンのガイド溝に係合する係合部材と、前記係合部材を保持すると共に前記回動ゲートピンの軸線を中心として回動自在に前記受け板に装着される保持体と、前記保持体を前記受け板に固定する固定部材とを備え、
前記回動ゲートピンを前記受け板に装着する際に、前記位置決め機構により型閉め時の前記ゲートの位置を所定位置に位置決めした状態で前記保持体を前記固定部材により固定可能としたことを特徴とする回動ゲートピンの取り付け構造。
【請求項2】
前記ガイド部材の保持体は、前記回動ゲートピンの外周面に装着される内環リングと、前記内環リングの外周面に所定の間隔をなして装着される外環リングとからなり、
前記外環リングは、前記内環リングの基端縁を覆う小径部を有し、
前記内環リングが前記外環リングに挿入された際に前記内環リングの先端縁が前記外環リングの先端縁から前方に突出し、
前記固定部材は前記外環リングの基端縁を前記受け板側に向けて締め付け固定することにより前記内環リングを位置決め固定することを特徴とする請求項1記載の回動ゲートピンの取り付け構造。
【請求項3】
前記内環リングと前記外環リングとは、異なる硬度の材質で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の回動ゲートピンの取り付け構造。
【請求項4】
前記内環リングの基端縁に設けられ前記外環リングの小径部の当接面と当接する被当接面を有し、前記当接面と被当接面は、いずれか一方又は両方が粗面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の回動ゲートピンの取り付け構造。
【請求項5】
前記ガイド溝は、前記回動ゲートピンの軸線に対して対称となるように二条に形成され、
前記係合部材は、前記二条のガイド溝と係合するように2か所に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の回動ゲートピンの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−218628(P2011−218628A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88687(P2010−88687)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(505191168)株式会社ミスミ (16)
【Fターム(参考)】