説明

回復装置及び画像形成装置

【課題】吐出面とキャップ部材の開口端面との隙間に入り込んだインクを長手方向一端側に集めることができ、キャップ部材を長手方向に短くでき、かつ、キャップ部材からインクがたれ落ちるのを抑制することができる回復装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】吸引キャップ82Kの長手方向他端側がノズル面34aから離間する方向に回動させる回動機構と、吸引キャップ82Kをノズル面34aに対して直交する方向に移動させる移動機構とを備え、回動機構を駆動させて、吸引キャップ82Kを回動させた後、移動機構を駆動して吸引キャップ82Kをノズル面34aから離間させる。吸引キャップ82Kがノズル面34aから離間した後、吸引ポンプ201を駆動して、吸引キャップ82Kに付着したインクを吸引排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出手段の回復装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク吐出手段たる液吐出ヘッドの吐出面たる複数の吐出口が形成されたノズル面を下方に向かせて、ノズル面と対向する記録媒体上に上記複数のノズルからインク滴を滴下して画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置が知られている。インクジェット方式の画像形成装置においては、ノズルからインク溶媒が蒸発し、吐出口のインク粘度が上昇したり、吐出口にゴミが付着してしまったりして目詰まりを起こし正常なインク吐出を行えず、画像不良が生じるおそれがある。そこで、次のような画像形成装置が知られている。すなわち、この画像形成装置は吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出してインク吐出機能の回復を図る回復装置を備えている。回復装置はノズル面を下方から覆うためのキャップ部材を有する。このキャップ部材には上方に開口した凹部空間が形成されている。開口の大きさはノズル面において吐出口が形成されている領域をカバーする大きさである。開口を介してノズル面に対向することになる凹部空間の底面部に吸引孔が形成されている。この吸引孔に吸引手段たる吸引ポンプに接続されている。そして、このキャップ部材を、上記開口の回りの開口端面がノズル面に密着して上記領域を密閉する位置と、この位置から退避してノズル面を開放する位置との間で移動させる接離手段を有している。
回復装置によるインク吐出機能の回復を図るときは、上記開口端面をノズル面に密着させて上記領域を密閉した状態で、ノズル面とキャップ部材の凹部空間とにより形成される内部空間の空気を吸引ポンプで吸引する。これにより、吐出口からインクともに、吐出口に付着したゴミなどが強制的に吸引排出され、インク吐出機能の回復が図られる。
【0003】
吸引ポンプの吸引によって吸い出されたインクは、キャップ部材の底面部に滴下し、吸引孔に向かって底面部を流れる。この底面部を流れるインクに吐出口から吸い出されたインクが滴下するとインクが飛び散り、ノズル面やノズル面とキャップ部材との密着部の端に付着する。吸引動作が終了して、ノズル面からキャップ部材の離間を開始すると、ノズル面と開口端面との間に僅かな隙間が生じる。すると、ノズル面と開口端面との密着部の端に付着したインクが、毛細管現象によって、ノズル面と開口端面との間の僅かな隙間に入り込んで、ノズル面とキャップ部材の開口端面との間にインク膜を形成する。さらにキャップ部材を離間させていくと、インク膜が引き延ばされながら、キャップ部材の開口端面のある箇所に凝集していく。そして、さらにキャップ部材を移動させると、インク膜がノズル面から離れ、開口端面のある箇所に半球状のインク滴が残存してしまう。装置の小型化によって、吐出口と、上記密着部との距離が非常に近くなっている。このため、次の回復動作時に、キャップ部材の開口端面をノズル面に密着させたとき、前回の回復動作時に開口端面に付着した半球状のインク滴(以下、前回のインク滴という)がつぶれて、インクが吐出口に流れ込んでしまう場合がある。
【0004】
カラーのインクジェット方式の画像形成装置においては、Y用液吐出ヘッド、M用液吐出ヘッド、C用液吐出ヘッド、K用液吐出ヘッドと順番に回復動作を行う。そのため、例えば、Y用液吐出ヘッドの回復動作のときにキャップ部材の開口端面に付着したY色インクが、M用液吐出ヘッドのノズル面にキャップ部材の開口端面を密着させたとき、Y色のインク滴がつぶれて、M用液吐出ヘッドの吐出口に入り込むおそれがある。その結果、混色が生じてしまうおそれがある。
【0005】
特許文献1には、吸引孔をキャップ部材の長手方向の一端側に設けて、吸引孔側を回転中心にしてキャップ部材を回動させることで、キャップ部材をノズル面から接離させる画像形成装置が記載されている。キャップ部材を回動させてノズル面から離間させることで、ノズル面からキャップ部材を離間させる際、吸引孔から遠い方の長手方向の他端側から順にノズル面から離間する。その結果、ノズル面と開口端面との隙間に入り込んだインクは、キャップ部材をノズル面から離間させる際に、毛細管現象などによりノズル面と開口端面との隙間が狭い方へ凝集する。その結果、この隙間が最も狭い吸引孔から近い方の開口端面の長手方向一端側にノズル面と開口端面との隙間に入り込んだインクが集められる。
【0006】
特許文献1に記載のように、キャップ部材を回動させてノズル面から離間させることで、開口端面の長手方向一端側にノズル面と開口端面との隙間に入り込んだインクを集めることができる。これにより、長手方向一端側のノズル面とキャップ部材との密着部を、吐出口から遠ざけておけば、次の液吐出ヘッドのノズル面にキャップ部材の開口端面を密着させたとき、キャップ部材の開口端面の長手方向一端側に付着した前回のインク滴が、つぶれてもノズルに流れ込むことが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−94670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置においては、長手方向一端側のノズル面とキャップ部材との密着部を吐出口から遠ざける必要があり、液吐出ヘッドやキャップ部材が長手方向に長くなってしまうという問題があった。
【0009】
また、特許文献1に記載の画像形成装置においては、キャップ部材を回動させることで、キャップ部材の接離を行っているため、キャップ部材の回動範囲が大きくなってしまう。特許文献1に記載の画像形成装置においては、ノズル面が水平面に対して傾いているため、キャップ部材をノズル面から完全に離間させたとき、キャップ部材が大きく傾くことがない。しかし、ノズル面が水平面と平行な場合、キャップ部材をノズル面から完全に離間させたとき、キャップ部材の長手方向他端側へキャップ部材が大きく傾斜してしまう。その結果、キャップ部材の開口端面の長手方向一端側に集められたインクが、キャップ部材の長手方向他端側へ流れていき、最終的にキャップ部材の長手方向他端側から外部へインクがたれ落ちてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、吐出面とキャップ部材の開口端面との隙間に入り込んだインクを長手方向一端側に集めることができ、キャップ部材を長手方向に短くでき、かつ、キャップ部材からインクがたれ落ちるのを抑制することができる回復装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、インクを吐出するための吐出口を有し、記録媒体に向けて前記吐出口からインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成するインク吐出手段の前記吐出口が形成された吐出面をキャッピングするキャップ部材と、前記キャップ部材に設けられた吸引孔に接続され、前記吐出口からインクを吸引する吸引手段とを備えた回復装置において、前記吸引孔は、前記キャップ部材の長手方向一端側に設けられており、前記キャップ部材の長手方向他端側が前記吐出面から離間する方向にキャップ部材を回動させる回動機構と、前記キャップ部材を前記吐出面に対して直交する方向に移動させる移動機構とを備え、前記回動機構を駆動させて、キャップ部材を回動させた後、前記移動機構を駆動して前記キャップ部材を前記吐出面から離間させる接離手段と、前記キャップ部材が前記吐出面から離間した後、前記吸引手段を駆動して、キャップ部材に付着したインクを吸引排出するよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の回復装置において、前記キャップ部材が前記吐出面をキャッピングしたときのキャップ部材内の圧力を検知する圧力検知手段を有し、前記接離手段は、前記吸引手段による前記吐出口からのインク吸引後、前記圧力検知手段の検知した圧力値が設定値となったとき、キャップ部材の離間動作を開始するよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の回復装置において、前記キャップ部材に大気と連通可能な開閉弁を有し、前記接離手段は、前記吸引手段による前記吐出口からのインク吸引後、前記開閉弁が閉じた状態から開いた状態に切り替わった後に、キャップ部材の離間動作を開始するよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1の回復装置において、前記吸引手段による前記吐出口からのインク吸引後の経過時間をカウントするカウント手段を備え、前記接離手段は、前記カウント手段によるカウントが設定時間を経過したら、キャップ部材の離間動作を開始するよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかの回復装置において、前記キャップ部材を保持する保持部材と、前記保持部材に保持されたキャップ部材を吐出面側に付勢する付勢手段とを備え、前記回動機構は、前記保持部材を回動させるよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかの回復装置において、前記吐出面が水平面に対して平行であることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、インクを吐出するための吐出口を有し、記録媒体に向けて前記吐出口からインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成するインク吐出手段と、前記液吐出手段の性能を回復するための回復手段とを備えた画像形成装置において、前記回復手段として請求項1乃至6いずれかの回復装置を用いたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、回動機構を駆動させて、キャップ部材の長手方向他端側が吐出面から離間する方向に回動させた後、移動機構を駆動してキャップ部材を吐出面から離間させるので、次の効果を得ることができる。すなわち、まず、キャップ部材を回動させて、キャップ部材を吐出面に対して僅かに傾かせる。キャップ部材を吐出面に対して僅かに傾かせると、キャップ部材と吐出面との間に僅かな隙間が生じ、この僅かな隙間に、吐出面とキャップ部材の開口端面との密着部の端に付着したインクが、毛細管現象によって入り込んで、吐出面とキャップ部材の開口端面との間にインク膜を形成する。次に、移動機構でキャップ部材を吐出面に対して直交する方向に移動させて、キャップ部材を吐出面から離間させる。このとき、キャップ部材は、吐出面に対してキャップ部材の長手方向他端側が吐出面から離間する方向に傾いているので、開口端面と吐出面との隙間が、キャップ部材の長手方向他端側から順に小さくなる。よって、移動機構でキャップ部材を吐出面に対して直交する方向に移動させて、キャップ部材を吐出面から離間させると、吐出面とキャップ部材の開口端面との隙間に形成されたインク膜が、毛細管現象により、キャップ部材の長手方向一端側へ移動し、最終的にキャップ部材の長手方向一端側に集められる。
そして、移動機構によるキャップ部材の離間動作が終了したら、吸引手段を駆動して、キャップ部材に付着したインク滴を吸引排出する。これにより、キャップ部材の長手方向一端側の開口端面に集められたインク滴が吸引孔から吸引され、キャップ部材の長手方向一端側の開口端面のインク滴が除去される。しかも、本発明によれば、吸引孔がキャップ部材の長手方向一端側に設けられており、長手方向一端側の開口端面と吸引孔との距離が近い。よって、長手方向一端側の開口端面に、インク滴を吸い込むのに十分な吸引力が働き、長手方向一端側の開口端面に集められたインク滴を確実に吸引することができる。このように、キャップ部材の長手方向一端側の開口端面のインク滴を除去するので、次の液吐出ヘッドの吐出面にキャップ部材を当接させるとき、キャップ部材の長手方向一端側の開口端面にインク滴が存在しない。よって、前回のインク滴が吐出口へ流れ込むことがない。その結果、前回のインク滴が吐出口へ流れ込まないように、長手方向一端側の吐出面とキャップ部材との密着部を吐出口から遠ざける必要がなくなり、長手方向一端側の吐出面とキャップ部材との密着部を吐出口に近づけることが可能となる。よって、特許文献1に記載のものに比べてキャップ部材を長手方向に短くすることが可能となる。
また、キャップ部材の長手方向一端側の吐出面からの離間は、回動機構と移動機構とで行うので、回動機構によるキャップ部材の回動は、キャップ部材が、キャップ部材の長手方向他端側にわずかに傾く程度でよい。よって、特許文献1に記載の画像形成装置のように、キャップ部材を回動させてキャップ部材を吐出面から完全に離間させるものに比べて、離間時のキャップ部材の傾きが小さくて済む。その結果、吐出面が水平面に対して平行なインク吐出手段であっても、キャップ部材の長手方向一端側の開口端面に集まったインクが、キャップ部材の長手方向他端側のへ流れて、キャップ部材からたれ落ちるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キャップ部材の長手方向一端側の開口端面に吐出面とキャップ部材との密着部に付着したインクを集めることができる。また、特許文献1に記載のものに比べてキャップ部材を長手方向に短くすることができるとともに、キャップ部材からインクがたれ落ちるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェットプリンタの概略構成を示す正面図。
【図2】同インクジェットプリンタの画像形成部を上方から見た図
【図3】同インクジェットプリンタにおける吸引キャップの移動機構の側面説明図。
【図4】キャップカムの概略構成図。
【図5】同インクジェットプリンタにおける吸引キャップの回動機構の側面説明図。
【図6】従来の回復装置を示す概略構成図。
【図7】吸引キャップの離間動作を説明する図。
【図8】変形例1の回復装置の概略構成図。
【図9】変形例2の回復装置の概略構成図。
【図10】インクジェットプリンタにおける制御ブロック図。
【図11】吸引キャップの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態として、インクジェットプリンタ(以下、プリンタ)について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの概略構成を示す正面図であり、図2は、画像形成部を上方から見た図である。
このプリンタは、図示しない駆動手段により用紙の搬送方向に対して横切る方向(以下、主走査線方向)に移動可能に保持されたキャリッジ33と、記録媒体たる用紙を積載するための給紙トレイ2と、画像が形成された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。
【0016】
キャリッジ33は、フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持され、図2に示すように、主走査モータ210によってタイミングベルト211を介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0017】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する4個のインク吐出手段たる液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34K(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を有している。各液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34Kには、主走査方向と交叉する方向に配列され複数の吐出口たるノズル孔が設けられている。各液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34Kは、インク滴吐出方向が下方となるようにキャリッジ33に取り付けられている。
【0018】
液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34Kとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、液吐出ヘッドとしては、複数のノズル孔が主走査方向と交叉する方向に配列されたノズル列を複数列有した構成であってもよい。また、ノズル列を複数列有し、各ノズル列から異なる色の液滴を吐出する構成として、一つの液吐出ヘッドで各色のインク滴を吐出する構成でもよい。
【0019】
キャリッジ33には、各色の液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34Kに対応する色のインクを供給するための4個サブタンク35Y,35M,35C,35Kを搭載している。この各色のサブタンク35Y,35M,35C,35Kにはそれぞれインク供給チューブ36を介して、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10Y,10M,10C,10Kから各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられ、また、インク供給チューブ36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに係止部材25にて保持されている。
【0020】
キャリッジ33の走査方向一方側(図中右側)の非印字領域には、記録ヘッド34のインク吐出口の状態を維持し、回復するための回復手段たる回復装置を含む維持回復機構81を配置している。
この維持回復機構81には、液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34Kの各ノズル面をキャピングするためのキャップ部材(以下「キャップ」という。)82Y,82M,82C,82K(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。また、印字領域側に配置されたキャップ82Kには、不図示の吸引ポンプが接続されており、キャップ82Kで記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズル孔からインクを吸引し、増粘したインクや気泡を排出する回復動作が行われるようになっている。すなわち、キャップ82Kは、液吐出ヘッド34Kの保湿を行う保湿キャップの機能のほかに、記録ヘッド34(液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34K)からインク吸引を行うための吸引キャップとしての機能も有している。他のキャップ82C〜82Yは、液吐出ヘッド34C〜34Yの保湿を行う保湿キャップの機能しか有していない。以下、キャップ82Kを他のキャップ82C〜82Yと区別したいときは、吸引キャップ82Kという。この維持回復機構81による回復動作で生じる廃液(吸引されたインク、ワイパーブレード83に付着して不図示のワイパークリーナで除去されたインク、第1空吐出受け84に空吐出されたインク)は図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
【0021】
また、キャリッジ33の走査方向他方側(図中左側)の非印字領域には、記録中などに増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける第2空吐出受け88を配置し、この第2空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った4つの開口部89などを備えている。
【0022】
先の図1に示すように、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を1枚ずつ分離給送する給紙部が設けられている。給紙部は、半月コロ(給紙コロ)43と、給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44とを備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0023】
この給紙部から給紙された用紙42は、用紙42を第1案内部材45と、カウンタローラ46と、第2案内部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とによって、搬送ベルトへ搬送される。
【0024】
搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されている。搬送ベルト51は、不図示の副走査モータによって搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。搬送ローラ52は搬送ベルトを周回させる役目の他にアースローラの役目も担っており、搬送ベルト51の中抵抗層(裏層)と接触配置され接地している。
【0025】
搬送ベルト51は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40[μm]程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
【0026】
搬送ベルト51は、帯電手段である帯電ローラ56によって表面が帯電せしめられている。帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に所定の押圧力をかけている。
【0027】
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応して走査ガイド部材57を配置している。この走査ガイド部材57は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ52とテンションローラ53)の接線よりも記録ヘッド34側に突出させることで搬送ベルト51の高精度な平面性を維持するようにしている。
【0028】
記録ヘッド34で画像を形成された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62と、排紙コロ63と、排紙トレイ3とを備えている。ここで、排紙ローラ62と排紙コロ63との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
【0029】
また、本プリンタには、記録媒体反転手段たる両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0030】
図示しないパーソナルコンピュータ等の外部機器から通信ケーブル等を介して画像情報である画像データを受信すると、半月コロ43が回転して給紙トレイ2から用紙42が1枚分離給紙される。給紙された用紙42は、第1案内部材45で略鉛直上方に案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を第2案内部材47で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加される。これにより、帯電ローラ56によって搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電される。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着し、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。用紙42が、キャリッジ33の記録ヘッド34と対向する位置まで搬送したら、搬送ベルト51の周回移動を停止する。
【0031】
画像信号入力前は、先の図2に示す維持回復機構81上に、キャリッジ33が位置している(以下、ホームポジションという)。また、画像信号入力前は、キャリッジ33がホームポジションに位置して液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34Kとキャップ部材82Y,82M,82C,82Kとが当接して吐出口を湿潤状態に保っている。画像信号が入力されると、キャップ部材82Y,M,C,Kが下降し、キャリッジ33の主走査線方向の移動を開始する。そして、各色に対応する液吐出ヘッド34Y,M,C,Kが第1空吐出受け84に位置するたびにキャリッジ33の移動を停止し、第1空吐出受け84に向けてインクを数滴吐出する。各色の液吐出ヘッド34Y,M,C,Kの空吐出が完了したら、再びキャリッジ33の主走査線方向の移動を開始する。そして、キャリッジ33が画像信号に応じて用紙42上を主走査線方向に移動しながら、停止した用紙42の所定箇所に所定のインク液を吐出して記録ヘッド34が用紙へ記録可能な副走査線方向の範囲分の画像を用紙42に形成する。副走査線方向所定範囲分の画像を形成したら、必要に応じ、キャリッジ33を第2空吐出受け88の位置に移動させ、第2空吐出受け88に数滴空吐出する。また、搬送ベルト51を所定時間駆動させ、用紙42を副走査線方向所定範囲分排紙方向に移動させて停止する。搬送ベルト51の移動が停止したら、上述同様、キャリッジ33が画像信号に応じて用紙42上を主走査線方向に移動しながら一行分の画像を形成する。このような工程を所定回数繰り返し行い、用紙42に所望の画像をプリントする。用紙42の搬送と停止とを繰り返して用紙に画像を形成しているとき、用紙42は搬送ベルト51に静電吸着しているので、用紙42を安定して記録ヘッド34と対向する位置に搬送することができる。また、先端加圧コロ49などによって用紙42を搬送ベルト51に押し付けているので、用紙42を搬送ベルト51に確実に静電吸着させることができる。所望の画像が形成された用紙42は、画像データ終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けたら、画像形成を終了し、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。また、画像形成が終わったら、キャリッジ33を再び維持回復機構81上のホームポジションに移動させる。そして、キャップ82を上昇させて記録ヘッド34のノズルを保湿する。
【0032】
例えば、プリンタに予めクリーニングモード選択ボタンなどの選択手段がついており、ユーザがプリントされた画像を見て、画像の劣化を確認した場合、ユーザによりクリーニングモードが実行される。また、プリント枚数が一定数越えたときにクリーニングモードが実行される。
クリーニングモードが実行されると、液吐出ヘッド34Kが吸引キャップ82K上に位置するようにキャリッジ33を移動させる。次に、吸引キャップ82Kを上昇させて、液吐出ヘッド34Kと当接させ、不図示の吸引手段たる吸引ポンプで気泡や吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出す。吸引動作が終了すると、吸引キャップ82Kを下降させると同時に、ワイパーブレード44を上昇させる。ワイパーブレード83が上昇したら、キャリッジ33を移動させて、液敵吐出ヘッド34Kをワイパーブレード83と摺擦させる。このキャリッジ33の移動により、ワイパーブレード83は、K色の液吐出ヘッド34Kと摺擦し付着したインク滴を除去する。液吐出ヘッド34Kのインク滴を除去したら、ワイパーブレード83を下降させる。ワイパーブレード83が下降したら、キャリッジ33を移動させて、液吐出ヘッド34Kを第1空吐出受け83上に位置させる。液吐出ヘッド34Kが第1空吐出受け83上に位置したら、第1の空吐出受け83に空吐出を行う。このような一連の動作が他の色の液吐出ヘッド34C,34M,34Yにも同様に行われることで、各色の液吐出ヘッド34Y,M,C,Kの吐出不良と各色の液吐出ヘッドに付着したインク滴をクリーニングすることができる。
【0033】
以下に、本実施形態の特徴点である回復手段たる回復装置について説明する。
回復装置は、吸引キャップ82K、吸引キャップ82Kを上下方向(ノズル面に対して直交する方向)に移動させる後述する移動機構、吸引キャップ82Kを回動させる後述する回動機構、吸引手段たる不図示の吸引ポンプなどを備えている。
【0034】
図3は吸引キャップ82Kの移動機構の側面説明図である。
吸引キャップ82Kの移動機構は、吸引キャップ保持機構であるキャップホルダ112Aを備えている。キャップホルダ112Aは、吸引キャップ82Kを昇降可能に保持する保持部材たるホルダ151と、ホルダ151の底面と吸引キャップ82Kの底部との間に介装されて吸引キャップ82Kの副走査方向(記録ヘッド34のノズルの並び方向)両端部付近を上方に付勢する付勢手段たる2個のスプリング152とを有している。また、ホルダ151を保持し、フレーム111に上下方向に移動可能に支持されたスライダ153とを有している。吸引キャップ82Kは両端部に設けたガイドピン150aを有しており、これらガイドピン150aは、ホルダ151の図示しないガイド溝に上下動可能に挿通されている。また、吸引キャップ82Kの底面中央部には、ガイド軸150bが設けられており、ホルダ151に上下動可能に挿通している。これにより、吸引キャップ82Kは、ホルダ151に対して上下動可能に装着される。スライダ153は、副走査方向両端(図中左右端)にそれぞれ2個のガイドピン154、155が設けられたおり、これらガイドピン154、155は、フレーム111に形成した不図示の上下方向に延在するガイド溝に摺動可能に嵌合している。スライダ153の下面の略中央部には、カムピン157が設けられており、このカムピン157は、図4に示すように、キャップカム122Aのカム溝122aに嵌合している。キャップカム122Aは、不図示の移動モータが接続されたカム軸に固定されている。図示しないモータが回転しカム軸121が回転すると、キャップカム122Aが回転しその回転によってスライダ153が上下動する。スライダ153が上下動することで、スライダ153に保持されているホルダ151およびホルダ151に保持されている吸引キャップ82Kが、ノズル面34aに対して直交する方向である上下方向に移動する。
【0035】
図11は、吸引キャップ82Kの斜視図である。吸引キャップ82Kの短手方向(主走査方向)中央で、吸引キャップ82Kの長手方向(副走査方向)の一端側(図中左側)に吸引孔82aが設けられている。この吸引孔82aには、スライダ153及びホルダ151を挿通して這い回されたチューブ119の一端が接続している。チューブ119の他端は、不図示の吸引ポンプに接続されている。吸引キャップ82Kの上端部には、ゴムなどで構成されたニップ部82nが設けられている。
【0036】
図5は、吸引キャップ82Kの回動機構の側面説明図である。
図5に示すように、ホルダ151の長手方向の一端側(図中左側)に軸部151cが、短手方向に延びており、スライダ153に回転自在に支持されている。また、ホルダ151の長手方向の一端側(図中左側)に第1支持部151aが設けられており、ホルダ151の長手方向他端側(図中右側)に第2支持部151bが設けられている。第1支持部151aは、スライダ153の第1貫通孔153aに貫通しており、第2支持部151bは、スライダの第2貫通孔153bに貫通している。スライダ153の第2貫通孔153bは、第1貫通孔153aよりも径が大きくなっており、第1貫通孔153aの下端部よりも第2貫通孔153bの下端部の方が、下方に位置している。ホルダ151の底面の長手方向他端側には、下方へ延びる当て部151dが設けられており、図5に示すように、記録ヘッド34をキャッピングしているときは、当て部151dの先端が、支持台158に乗っている。
ホルダ151は、長手方向一端側が、軸部151cを介してスライダ153に支持されており、長手方向他端側が、当て部151dを介して支持台158に支持されている。支持台158は、不図示のアクチュエータによって図中矢印方向(副走査方向)に移動可能となっている。支持台を図中右側へ移動させると、当て部151dと支持台158とが離間して、吸引キャップ82Kの長手方向他端側が、当て部151dを介して支持台158に支持されなくなる。すると、ホルダ151が図中時計回りに回動して、第2支持部151bがスライダ153の第2貫通孔153bの下端に当接する。ホルダ151が、回動することでホルダ151に保持されている吸引キャップ82Kが回動する。
【0037】
図10は、本インクジェットプリンタにおける制御ブロック図である。
同図において制御手段たる制御部200は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリたるRAM(Random Access Memory)、一時記憶手段たるROM(Read Only Memory)等を有している。制御部200は、装置全体の制御を司るものであり、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、本プリンタ100の特徴点に関連する機器やセンサだけを示している。制御部200は、RAM内に記憶している制御プログラムに基づいて、各手段の機能を実現している。具体的には、制御部200は、吸引ポンプ201、キャップ82Kを上下動させるための移動モータ202、支持台158を移動させるためのアクチュエータ203などを制御している。
【0038】
図6は、従来の回復装置を示す概略構成図であり、(a)は、従来の回復装置による回復動作時の様子を説明する図であり、(b)は、回復動作後の様子を説明する図である。
図6に示すように、従来の回復装置は、吸引キャップ82Kの長手方向中央部に吸引孔82aが設けられ、移動機構のみを備えており、回動機構は、備えていなかった。このため、従来の回復装置においては、図6(a)に示すように、吸引キャップ82Kのニップ部82n先端(以下、開口端面82bという)を記録ヘッド34のノズル面34aに密着させて、吸引動作を行った後、図6(b)に示すように開口端面82bがノズル面34aと水平を維持した状態で吸引キャップ82Kを下方へ移動させて、吸引キャップ82Kをノズル面34aから離間させていた。
【0039】
吸引ポンプ201により吸引キャップ82K内部を負圧にして、記録ヘッド34のノズル孔からインクが吐出すると、吐出したインクは、吸引キャップ82Kの底面に滴下して、吸引孔82aに向かって底面を流れる。この底面を流れるインクにノズル孔からインクが滴下されるため、インクの飛び散りが起こる。飛び散ったインクは、ノズル面34aや吸引キャップ82Kの開口端面82bとノズル面34aと密着部の端に付着する。吸引動作終了後、吸引キャップ82Kを下方へ移動させると、ノズル面34aと開口端面82bとの間に僅かな隙間ができる。上記密着部の端に付着したインクは、毛細管現象によってこの僅かな隙間に入り込み、インク膜を形成する。さらに吸引キャップ82Kを下方へ移動させると、インク膜が上下に引き延ばされながら、開口端面82bのある箇所に凝集していく。ノズル面34aは、撥水加工が施されているため、さらに吸引キャップ82Kを下方へ移動させると、インク膜がノズル面34aから離れ、図6(b)に示すように、開口端面82bのある箇所に半球状のインク滴が残存してしまう。このように、開口端面82bにインク滴が残存した状態で、次の記録ヘッド34の回復動作を行うべく、吸引キャップ82Kの開口端面82bを次の記録ヘッド34のノズル面34aに密着させたとき、インク滴がつぶれて、ノズル孔に流れて込んでしまう。その結果、混色が起きてしまうおそれがある。
【0040】
そこで、吸引キャップ離間後に、吸引ポンプ201を駆動して、開口端面82bに付着したインク滴を吸い取ることも考えられる。しかしながら、開口端面82bに残存するインク滴の位置は、ランダムであり、吸引孔82aから遠く、吸引力が他の部分よりも弱い吸引キャップ82Kの長手方向端部の開口端面82bにインク滴が残存した場合、インクを吸引することができず、残存してしまうおそれがあった。
そこで、本発明においては、回動機構を設けて、回動機構で吸引キャップ82Kを回動させてから、吸引キャップ82Kを下方へ移動させて吸引キャップ82Kをノズル面34aから離間させるようにし、インク滴の残存箇所をコントロールにしている。以下に、具体的に説明する。
【0041】
図7は、吸引キャップ82Kの離間動作を説明する図である。
吸引キャップ82Kが離間位置にあるときは、図7(c)に示すように、ホルダ151の長手方向他端側(図中右側)は、第2支持部151bを介してスライダ153の第2貫通孔153bに支持されている。また、ホルダ151が、長手方向他端側(図中右側)に傾いており、ホルダ151に保持された吸引キャップ82Kが同様に長手方向他端側(図中右側)に傾いている。回復動作を行うべく、記録ヘッド34が吸引キャップ82Kと対向する位置まで移動すると、制御部200は、移動モータ202の駆動を開始して、移動機構によりスライダ153とホルダ151と吸引キャップ82Kとを上方へ移動させる。そして、吸引キャップ開口端面82bの長手方向一端側(図中左側)がノズル面34aに当接すると、制御部200は、移動モータ202の駆動を停止する。このときの様子は、図7(b)に示すような状態となっており、吸引キャップ開口端面82bの長手方向一端側(図中左側)が少なくともノズル面34aに当接し、吸引キャップ開口端面82bの長手方向他端側(図中右側)がノズル面34aから離間している。図7(b)に示すような状態となったら、制御部200は、アクチュエータ203を駆動させて、支持台158を図中左側へ移動させる。すると、支持台158の先端の傾斜面158aに当て部151dの先端が当接する。さらに支持台158を図中左側へ移動させていくと、当て部151dが傾斜面158aに案内されて、上方へ移動する。その結果、ホルダ151が軸部151cを回転の中心として図中反時計回りに回転し、ホルダ151に保持された吸引キャップ82Kも同様に図中反時計回りに回転する。そして、当て部151dの先端が支持台158に乗ると、図7(a)に示すように、吸引キャップ開口端面82bの長手方向他端側(図中右側)がノズル面34aに密着する。
【0042】
図7(a)に示す状態となったら、制御部200は、吸引ポンプ201による吸引を開始する。吸引動作が終了したら、制御部200は、アクチュエータ203を駆動させて、支持台158を図中右側へ移動させる。支持台158が図中右側へ移動すると、当て部151dの先端が支持台158の先端の傾斜面158aに案内されて下方へ移動し、ホルダ151が軸部151cを回転の中心として図中時計回りに回転する。すると、図中右側のスプリング152が伸長していき、吸引キャップ開口端面82bの長手方向他端側(図中右側)のノズル面34aとの密着力が低下していく。そして、当て部151dが支持台158から離間すると、図中右側のスプリング152が自由長になり、吸引キャップ82Kが図中時計回り(吸引キャップ82Kの長手方向他端側がノズル面34aから離間する方向)に回転して、吸引キャップ開口端面82bの長手方向他端側(図中右側)がノズル面34aから離間する(図7(b)参照)。このとき、吸引キャップ開口端面82bとノズル面34aとのわずかな隙間にインクが入り込み、インク膜が形成される。次に、制御部200は、移動モータ202を駆動させて、移動機構により、吸引キャップ82Kをホルダ151とスライダ153とともに下方へ移動させる。このとき、吸引キャップ82Kは、ノズル面に対して吸引キャップの長手方向他端側(図中右側)がノズル面から離間する方向に傾いているので、開口端面82bとノズル面34aとの隙間が、吸引キャップ82Kの長手方向他端側から順に小さくなる。よって、吸引キャップ82Kをホルダ151とスライダ153とともに下方へ移動させると、開口端面82bとノズル面82bとの隙間に形成されたインク膜が、毛細管現象によりより隙間の狭い長手方向一端側(図中左側)へ移動する。そして、開口端面82bとノズル面34aとの隙間が最も狭い長手方向一端側(図中左側)の開口端面82bにインクが集められる。そして、図7(c)に示すように、吸引キャップ82Kを記録ヘッド34から完全に離間させたら、制御部200は、吸引ポンプ201を駆動して、吸引キャップ82Kに付着したインクを除去する。本実施形態においては、吸引孔82aを長手方向一端側(図中左側)に設けており、長手方向一端側(図中左側)の開口端面82bと吸引孔82aとの距離が近い。よって、長手方向一端側(図中左側)の開口端面82bにインク滴を吸い込むのに十分な吸引力が働き、長手方向一端側(図中左側)の開口端面82bに集められたインク滴を確実に吸引することができる。これにより、次の記録ヘッド34のノズル面34aに吸引キャップ82Kを当接させるとき、吸引キャップ82Kの長手方向一端側の開口端面82bにインク滴が存在しない。よって、前回のインク滴がノズル孔へ流れ込むことがない。その結果、混色を抑制することができる。
【0043】
このように、本実施形態においては、回動機構、移動機構、制御部200などで、吸引キャップ82Kを記録ヘッド34に対して接離する接離手段を構成している。
【0044】
なお、吸引キャップ82Kを図中時計回りに回動させて離間させるようにしても、長手方向一端側(図中左側)の開口端面82bにインクを集めることができる。しかしながら、吸引キャップ82Kを図中時計回りに回動させて離間させるようにした場合、離間後の吸引キャップ82Kが、長手方向他端側(図中右側)に大きく傾いてしまう。その結果、長手方向一端側(図中左側)の開口端面82bに集めたインク滴が、長手方向他端側(図中右側)に流れていき、最終的に長手方向他端側(図中右側)から垂れ落ちるおそれがある。一方、本実施形態においては、回動機構によって吸引キャップ82Kがノズル面34aに対して僅かに傾く程度に吸引キャップ82Kを回動させるだけなので、吸引キャップ82Kをノズル面34aから離間させたときに、長手方向一端側(図中左側)の開口端面82bに集めたインクが、長手方向他端側(図中右側)に流れていくことが抑制される。これにより、長手方向他端側(図中右側)からインクが垂れ落ちるのを抑制することができる。
【0045】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0046】
[変形例1]
図8は、変形例1の回復装置の概略構成図である。
吸引ポンプ201による吸引動作直後は、吸引キャップ内は負圧となっている。吸引キャップ内部が負圧な状態で吸引キャップ82Kを回動させて、吸引キャップ82Kの長手方向他端側(図中右側)をノズル面34aから離間させると、圧力変化が吸引キャップ82Kの長手方向他端側(図中右側)に集中し、吸引キャップ82Kの開口端面82b付近に付着したインクが飛び散り吸引キャップ周囲の部品を汚してしまう。
この変形例1の回復装置は、吸引キャップ内に圧力検知手段たる圧力センサ204を設け、ノズル孔からインクを吸引する吸引動作終了後の吸引キャップ内部の圧力を圧力センサ204で検知し、キャップ内の圧力が大気圧に近い圧力になってから、吸引キャップ82Kの離間動作を開始する。吸引動作終了後の吸引キャップ内部の圧力が負圧のときは、ノズルからインクが徐々に排出され、吸引キャップ内部の負圧が除々に大気圧に近づいていく。そして、演算手段たる制御部200が、圧力センサ204が検知した圧力値と予め実験などによって設定された設定値(大気圧に近い値)とを比較して、圧力値が設定された値となったら、離間動作を開始する。なお、設定値は、実験などによって調べた、離間動作を開始したときに、吸引キャップ82Kの開口端面付近に付着したインクが飛び散らないときの圧力値である。
【0047】
このように、変形例1の回復装置においては、吸引キャップ内の圧力が大気圧に近い値となってから離間動作を開始するので、吸引キャップ82Kの長手方向他端側(図中右側)をノズル面34aから離間させるときの圧力変化が軽減される。これにより、吸引キャップ82Kの開口端面82b付近に付着したインクの飛び散りを抑制することができ、吸引キャップ周囲の部品の汚染を抑制することができる。
【0048】
[変形例2]
図9は、変形例2の回復装置の概略構成図である。
この変形例2の回復装置においては、吸引キャップ82Kに大気と連通する連通口205が設けられており、この連通口205に開閉弁305が設けられている。この開閉弁305には、開閉弁305を駆動する不図示の駆動手段を有している。不図示の駆動手段は、開閉手段たる制御部200によって制御され、開閉弁305の開閉が制御される。
この変形例2の構成は、吸引ポンプ201によるノズル孔のインク吸引動作後、制御部200が不図示の駆動手段を制御して、開閉弁305を閉状態から開状態に切り替える。その結果、吸引キャップ内の圧力が大気圧となる。開閉弁305を閉状態から開状態に切り替わったら、制御部200は、吸引キャップ82Kの離間動作を開始する。この変形例2の回復装置においても、吸引キャップ内の圧力がほぼ大気圧となった状態で、離間動作が行われるので、吸引キャップ82Kの開口端面82bに付着したインクの飛び散りを抑制することができ、吸引キャップ周囲の部品の汚染を抑制することができる。
【0049】
また、変形例1で記載したように、吸引動作終了後の吸引キャップ内部の圧力が負圧のときは、ノズル孔からインクが徐々に排出され、吸引キャップ内部の負圧が大気圧に除々に近づいていく。このため、所定期間経過すれば、吸引キャップ内部が大気圧にまで戻っている。そこで、吸引ポンプ201による吸引動作後、カウント手段たる制御部200で経過時間をカウントし、経過時間が、予め実験などによって求められた吸引キャップ内の圧力が大気圧に近い圧力となる設定時間となったら、接離動作を開始してもよい。このように構成しても、吸引キャップ82Kの開口端面82bに付着したインクの飛び散りを抑制することができ、吸引キャップ周囲の部品の汚染を抑制することができる。
【0050】
以上、本実施形態の回復装置は、インクを吐出するための吐出口たるノズル孔を有し、記録媒体たる用紙42に向けてノズル孔からインクを吐出して用紙42に画像を形成するインク吐出手段たる記録ヘッド34(液吐出ヘッド34Y,34M,34C,34K)のノズル孔が形成されたノズル面34aをキャッピングするキャップ部材たる吸引キャップ82Kと、吸引キャップ82Kに設けられた吸引孔82aに接続され、ノズル孔からインクを吸引する吸引手段たる吸引ポンプ201とを備えている。吸引孔82aは、吸引キャップ82Kの長手方向一端側に設けられている。また、回復装置は、吸引キャップ82Kの長手方向他端側がノズル面34aから離間する方向に回動させる回動機構と、吸引キャップ82Kをノズル面34aに対して直交する方向に移動させる移動機構とを備え、回動機構を駆動させて、吸引キャップ82Kを回動させた後、移動機構を駆動して吸引キャップ82Kをノズル面34aから離間させる接離手段を有している。吸引キャップ82Kがノズル面34aから離間した後、制御手段たる制御部200は、吸引ポンプ201を駆動して、吸引キャップ82Kに付着したインクを吸引排出させている。
【0051】
回復装置を上記のように構成することで、吸引キャップ82Kの開口端面82bに付着したインクを、吸引キャップ82Kの長手方向一端側に集めることができる。吸引孔82aは、長手方向一端側にあるので、吸引キャップ82Kをノズル面34aから離間させた後の吸引動作によって、吸引キャップ82Kの開口端面82bに付着したインク滴を良好に除去することができる。また、回動のみで吸引キャップ82Kを離間させるものに比べて離間後の吸引キャップ82Kの傾きが小さいので、離間後に、吸引キャップ82Kの長手方向一端側に集めたインク滴が吸引キャップの長手方向他端側に流れて、吸引キャップ82Kの長手方向他端側から垂れ落ちるのを抑制することができる。
【0052】
また、変形例1の回復装置によれば、吸引キャップ82Kがノズル面34aをキャッピングしたときの吸引キャップ内の圧力を検知する圧力検知手段たる圧力センサ204を有している。接離手段は、吸引ポンプ201によるインク吸引後、圧力センサ204の検知した圧力値が設定値となったとき、吸引キャップ82Kの離間動作を開始するよう構成している。このように構成することで、吸引キャップ82Kをノズル面から離間するときのインクの飛び散りを抑制することができ、吸引キャップ周囲の部材をインクで汚染してしまうのを抑制することができる。
【0053】
また、変形例2の回復装置によれば、吸引キャップ82Kに大気と連通可能な開閉弁305を有し、接離手段は、吸引ポンプ201によるインクを吸引後、開閉弁305を閉じた状態から開いた状態に切り替えた後に、吸引キャップ82Kの離間動作を開始するよう構成した。このように構成することでも、吸引キャップ82Kをノズル面から離間するときのインクの飛び散りを抑制することができ、吸引キャップ周囲の部材をインクで汚染してしまうのを抑制することができる。
【0054】
また、吸引ポンプ82Kによるインク吸引後の経過時間をカウント手段たる制御部200がカウントして、カウントが設定時間を経過したら、吸引キャップ82Kの離間動作を開始するよう接離手段を構成してもよい。このように構成することでも、吸引キャップ82Kをノズル面から離間するときのインクの飛び散りを抑制することができ、吸引キャップ周囲の部材をインクで汚染してしまうのを抑制することができる。
【0055】
また、水平面に対して平行のノズル面であっても、吸引キャップ82Kが離間位置にあるときの、キャップ部材の水平面に対する傾きを小さくすることができ、吸引キャップ82Kの長手方向一端側に集めたインク滴が吸引キャップの長手方向他端側に流れて、吸引キャップ82Kの長手方向他端側から垂れ落ちるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0056】
34:記録ヘッド
34a:ノズル面
81:維持回復機構
82K:吸引キャップ
82a:吸引孔
82b:開口端面
111:フレーム
112A:キャップホルダ
119:チューブ
121:カム軸
122A:キャップカム
150a:ガイドピン
150b:ガイド軸
151:ホルダ
151a:第1支持部
151b:第2支持部
151c:軸部
151d:当て部
152:スプリング
153:スライダ
153a:第1貫通孔
153b:第2貫通孔
154:ガイドピン
157:カムピン
158:支持台
158a:傾斜面
200:制御部
201:吸引ポンプ
202:移動モータ
203:アクチュエータ
204:圧力センサ
205:連通口
305:開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための吐出口を有し、記録媒体に向けて前記吐出口からインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成するインク吐出手段の前記吐出口が形成された吐出面をキャッピングするキャップ部材と、
前記キャップ部材に設けられた吸引孔に接続され、前記吐出口からインクを吸引する吸引手段とを備えた回復装置において、
前記吸引孔は、前記キャップ部材の長手方向一端側に設けられており、
前記キャップ部材の長手方向他端側が前記吐出面から離間する方向にキャップ部材を回動させる回動機構と、前記キャップ部材を前記吐出面に対して直交する方向に移動させる移動機構とを備え、前記回動機構を駆動させて、キャップ部材を回動させた後、前記移動機構を駆動して前記キャップ部材を前記吐出面から離間させる接離手段と、
前記キャップ部材が前記吐出面から離間した後、前記吸引手段を駆動して、キャップ部材に付着したインクを吸引排出するよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とする回復装置。
【請求項2】
請求項1の回復装置において、
前記キャップ部材が前記吐出面をキャッピングしたときのキャップ部材内の圧力を検知する圧力検知手段を有し、
前記接離手段は、前記吸引手段による前記吐出口からのインク吸引後、前記圧力検知手段の検知した圧力値が設定値となったとき、キャップ部材の離間動作を開始するよう構成したことを特徴とする回復装置。
【請求項3】
請求項1の回復装置において、
前記キャップ部材に大気と連通可能な開閉弁を有し、
前記接離手段は、前記吸引手段による前記吐出口からのインク吸引後、前記開閉弁が閉じた状態から開いた状態に切り替わった後に、キャップ部材の離間動作を開始するよう構成したことを特徴とする回復装置。
【請求項4】
請求項1の回復装置において、
前記吸引手段による前記吐出口からのインク吸引後の経過時間をカウントするカウント手段を備え、
前記接離手段は、前記カウント手段によるカウントが設定時間を経過したら、キャップ部材の離間動作を開始するよう構成したことを特徴とする回復装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの回復装置において、
前記キャップ部材を保持する保持部材と、前記保持部材に保持されたキャップ部材を吐出面側に付勢する付勢手段とを備え、
前記回動機構は、前記保持部材を回動させるよう構成したことを特徴とする回復装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかの回復装置において、
前記吐出面が水平面に対して平行であることを特徴とする回復装置。
【請求項7】
インクを吐出するための吐出口を有し、記録媒体に向けて前記吐出口からインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成するインク吐出手段と、
前記液吐出手段の性能を回復するための回復手段とを備えた画像形成装置において、
前記回復手段として請求項1乃至6いずれかの回復装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−158808(P2010−158808A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1615(P2009−1615)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】