説明

回復装置及び画像形成装置

【課題】吸引回復時に吐出不良の原因となるヘッド内部へのインクの引き込みを抑制することができる。
【解決手段】吸収体201の吸収体の上面の一部であって吐出孔が設けられていない吐出面に対向するように吸収材の突起部201−1が設けられている。そして、この吸収体201には、キャップ部材202を液滴吐出ヘッド301の吐出面302に密閉したとき突起部201−1と対向する吐出面302の間にギャップ201−2が存在している。このギャップ201−2は、吐出孔が設けられている吐出面に対向する吸収体と吐出面との間のギャップより小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出手段の回復装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク吐出手段の液滴吐出ヘッドの吐出面に複数の吐出口が形成されたノズル面を下方に向かせて、ノズル面と対向する記録媒体上に複数の吐出口からインク滴を滴下して画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置が知られている。このインクジェット方式の画像形成装置においては、吐出口からインク溶媒が蒸発し、吐出口のインク粘度が上昇したり、吐出口に紙片やゴミなどの異物が付着してしまったりして目詰まりを起こし正常なインク吐出を行えず、画像不良が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、次のような画像形成装置が知られている。その画像形成装置は、吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出してインク吐出機能の回復を図る回復装置を備えている。この回復装置はノズル面を下方から覆うためのキャップ部材を有している。このキャップ部材には上方に開口した凹部空間が形成されている。開口の大きさはノズル面において吐出口が形成されている領域をカバーする大きさである。開口を介してノズル面に対向することになる凹部空間の底面部に吸引孔が形成されている。この吸引孔には吸引手段としての吸引ポンプが接続されている。そして、このキャップ部材を、上記開口の回りの開口端面がノズル面に密着して上記領域を密閉する位置と、この位置から退避してノズル面を開放する位置との間で移動させる接離手段を有している。
【0004】
このような構成を有する回復装置によるインク吐出機能の回復を図るときは、上記開口端面をノズル面に密着させて上記領域を密閉した状態で、ノズル面とキャップ部材の凹部空間とにより形成される内部空間の空気を吸引ポンプで吸引する。これにより、吐出口からインクとともに、吐出口に付着したゴミなどの異物が強制的に吸引排出され、インク吐出機能の回復が図られる。
【0005】
このような回復装置として特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1のインクジェット記録装置において、吐出面に密着させるためのキャップ部材の凹部空間内部に、接触吸収体と弾性吸収体が内蔵されている。接触吸収体は、キャップ部材の開口端面を吐出面に密着させてキャップ部材内部を密閉状態にしようとしたとき、吐出口が設けられている領域以外の吐出面に当接して吐出面のインクを吸収する吸収体である。そして、弾性吸収体は、接触吸収体が適度な圧接力で圧接するように接触吸収体に押圧を付与する吸収体である。この2つの吸収体を重ねて2層構造にしてキャップ部材の凹部空間内部に内蔵された状態において、吐出面と当接する接触吸収体の上面は、キャップ部材の開口端面より吐出面側へ突出しており、面高差が存在している。これは、キャップ部材の開口端面を吐出面に密着させてキャップ部材の内部を密閉状態としたときキャップ部材の開口端面を吐出面に密着させたときに、接触吸収体が吐出面から押圧されてキャップ部材の内側へ押され、吐出面からの押圧力を弾性吸収体へ伝えるためである。そして、吐出口が設けられている領域以外の吐出面に対向する位置に設けられた接触吸収体は、吐出面からの押圧力に反発しようとする弾性吸収体からの押圧によって吐出面に適度な圧接力で当接される。これにより、吐出面と接触吸収体との間の当接における圧接力が過度とならないようにし、当接面の損傷を防いでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1においては、キャップ部材を吐出面に密着させようとする時上記面高差の接触吸収体をキャップ部材の内部に押し込み、更に弾性吸収体の弾性力以上の押圧力でキャップ部材を吐出面に押圧し続けなければならない。この状態をインク等の吸引排出が完了するまで維持しなければならず、構造上の経時変化によって密閉状態の維持確保が困難となり密閉状態とならず回復処理における吸引不良を起こすという不具合があった。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、回復処理における吸引不良を防止できる回復装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液滴を吐出孔から吐出する液滴吐出ヘッドの吐出面を、該吐出面に付着したインクを吸収する吸収体を内蔵するキャップ部材で密閉し、密閉空間内のインクを吸引排出させ、前記吐出孔の吐出状態を回復させる回復装置において、前記吸収体は前記キャップ部材の内部に設けられ、前記吸収体は前記吐出面を前記キャップ部材で密閉したときに、前記吐出孔が設けられている前記吐出面に第1のギャップを介して対向する第1の吸収部と、前記吐出孔が設けられていない前記吐出面に第2のギャップを介して対向する第2の吸収部とを有し、前記第1のギャップが前記第2のギャップより大きいことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の回復装置において、前記吸収体は、前記吐出孔を通過した後であって前記吐出面をワイピングするブレードが移動してくる方向の上流側の前記キャップ部材の内部に設けられていることを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、請求項1記載の回復装置において、前記吐出孔が設けられている前記吐出面に前記第1のギャップを介して前記吸収体の吸収体面に第1の突起部を設け、前記吐出孔が設けられていない前記吐出面に前記第2のギャップを介して前記吸収体の吸収体面に第2の突起部を設けていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3記載の回復装置において、前記突起部は、吐出面をワイピングするブレードの移動してくる方向の上流側の前記吸収体面に設けられていることを特徴とするものである。
更に、請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回復装置において、前記吸収体は多孔質材料で形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項3又は4に記載の回復装置において、複数の前記突起部を階段状に配列することを特徴とするものである。
更に、請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の回復装置において、前記吸収体が複数に分割された構成であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7記載の回復装置において、分割された前記各吸収体がそれぞれ異なった材質であることを特徴とするものである。
更に、請求項9の発明は、液滴を吐出孔から吐出する液滴吐出ヘッドを用いて画像形成を行う画像形成装置において、請求項1〜8のいずれか1項に記載の回復装置を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、キャップ部材に内蔵されている吸収体は、吐出面をキャップ部材で密閉したときに、吐出孔が設けられている吐出面に第1のギャップを介して対向する第1の吸収部と、吐出孔が設けられていない吐出面に第2のギャップを介して対向する第2の吸収部とを有している。また、第1のギャップが第2のギャップより大きい。そして、第2のギャップの大きさは吐出面に付着しているインクの高さより小さく、吸収体はインクに接触して吸収する。また、キャップ部材を吐出面に密着しようとしたとき、吸収体と吐出面の間には第1、第2のギャップがあるためキャップ部材は吸収体側からの押圧を受けることなく吐出面に密着できる。これにより、吐出面とキャップ部材のニップ状態が確保でき密閉状態となり、吸引不良の発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、回復処理における吸引不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の画像形成装置としての液滴吐出装置を前方から見た斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の機構の概要を示す側面図である。
【図3】液滴吐出装置の要部の概要を示す平面図である。
【図4】回復装置の要部構成を示す平面図である。
【図5】回復装置の機構構成を示す概略側面図である。
【図6】実施形態の回復装置におけるキャップ部材の構成を示す斜視図である。
【図7】実施形態の回復装置における回復動作を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態について説明する。
図1は実施形態の画像形成装置としての液滴吐出装置を前方から見た斜視図である。同図に示す本実施形態の画像形成装置としての液滴吐出装置100は、装置本体101と、装置本体101に装着された用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103とを備えている。また、装置本体101の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体101の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部104を有し、このカートリッジ装填部104の上面には操作ボタンや表示器などの操作/表示部105が設けられている。
【0013】
このカートリッジ装填部104には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液収容手段としての記録液カートリッジであるインクカートリッジ110k、110c、110m、110y(色を区別しないときは「インクカートリッジ110」という。)を、装置本体101の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部104の前面側には、インクカートリッジ110を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)106が開閉可能に設けられている。また、インクカートリッジ110k、110c、110m、110yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成となっている。
【0014】
また、操作/表示部105には、各色のインクカートリッジ110k、110c、110m、110yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ110k、110c、110m、110yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部111k、111c、111m、111yを配置している。更に、この操作/表示部105には、電源ボタン112、用紙送り/印刷再開ボタン113、キャンセルボタン114も配置されている。
【0015】
次に、この液滴吐出装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面図、図3は同じく要部平面図である。
【0016】
液滴吐出装置の機構部において、フレーム121を構成する左右の側板121A、121Bに横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0017】
このキャリッジ133には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる液滴吐出ヘッド134を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0018】
液滴吐出ヘッド134を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0019】
この液滴吐出ヘッド134にはドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)122を介して接続している。また、キャリッジ133には、液滴吐出ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。この各色のサブタンク135には各色のインク供給チューブ136を介して、前述したように、カートリッジ装填部104に装着された各色のインクカートリッジ110から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填104にはインクカートリッジ110内のインクを送液するための供給ポンプユニット124が設けられ、またインク供給チューブ136は這い回しの途中でフレーム121を構成する後板121Cに係止部材125にて保持されている。
【0020】
一方、給紙トレイ102の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)143及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
【0021】
そして、この給紙部から給紙された用紙142を液滴吐出ヘッド134の下方側に送り込むために、用紙142を案内するガイド部材145と、カウンタローラ146と、搬送ガイド部材147と、先端加圧コロ149を有する押さえ部材148とを備えるとともに、給送された用紙142を静電吸着して液滴吐出ヘッド134に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト151を備えている。
【0022】
この搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ152とテンションローラ153との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト151の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156を備えている。この帯電ローラ156は、搬送ベルト151の表層に接触し、搬送ベルト151の回動に従動して回転するように配置されている。更に、搬送ベルト151の裏側には、液滴吐出ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材157が配置されている。
【0023】
この搬送ベルト151は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ152が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
【0024】
更に、液滴吐出ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪161と、排紙ローラ162及び排紙コロ163とを備え、排紙ローラ162の下方に排紙トレイ103を備えている。
【0025】
また、装置本体101の背面部には両面ユニット171が着脱自在に装着されている。この両面ユニット171は搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ146と搬送ベルト151との間に給紙する。また、この両面ユニット171の上面は手差しトレイ172としている。
【0026】
更に、図3に示すように、キャリッジ133の走査方向一方側の非印字領域には、液滴吐出ヘッド134のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構181を配置している。
【0027】
この維持回復機構181には、液滴吐出ヘッド134の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)182a〜182d(区別しないときは「キャップ182」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード183と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け184などを備えている。ここでは、キャップ182aを吸引用及び保湿用キャップとし、他のキャップ182b〜182dは保湿用キャップとしている。
【0028】
そして、この維持回復機構181による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ182に排出されたインク、あるいはワイパーブレード183に付着してワイパークリーナ185で除去されたインク、空吐出受け194に空吐出されたインクは図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
【0029】
また、図3に示すように、キャリッジ133の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け188を配置し、この空吐出受け188には液滴吐出ヘッド134のノズル列方向に沿った開口189などを備えている。
【0030】
このように構成した本実施形態の画像形成装置としての液滴吐出装置においては、給紙トレイ102から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142はガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ146との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド137で案内されて先端加圧コロ149で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0031】
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ156に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト151が交番する帯電電圧パターン、すなわち周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト151上に用紙142が給送されると、用紙142が搬送ベルト151に吸着され、搬送ベルト151の周回移動によって用紙142が副走査方向に搬送される。
【0032】
そこで、リニアエンコーダ137による主走査位置情報に基づいてキャリッジ133を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。
【0033】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ133は維持回復機構181側に移動されて、キャップ182で液滴吐出ヘッド134がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ182で液滴吐出ヘッド134をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、液滴吐出ヘッド134の安定した吐出性能を維持する。
【0034】
そこで、回復装置の構成の概要について図4、図5を参照して説明する。なお、図4は回復装置の要部構成を示す平面図、図5は回復装置の機構構成を示す概略側面図である。
図4において、回復装置10におけるフレーム19には、キャップ保持機構である2つのキャップホルダ20a、20b(区別しないときはキャップホルダ20と称す)と、清浄化手段としての弾性体を含むワイピング部材であるワイパーブレード22と、キャリッジロック21とがそれぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。また、ワイパーブレード12とキャップホルダ10aとの間には空吐出受け13が配置され、ワイパーブレード12のクリーニングを行うために、フレーム18の外側からワイパーブレード12を空吐出受け13の清掃部材であるワイパークリーナ14側に押し付けるための清掃部材であるクリーナコロ14を含むクリーナ手段であるワイパークリーナ14が揺動可能に保持されている。また、キャップホルダ10a、10bには、それぞれ、2つの液滴吐出ヘッドのノズル面をそれぞれキャッピングする2つのキャップ部材11aと11b、キャップ部材11cと11dを保持している。
【0035】
ここで、印字領域に最も近い側のキャップホルダ10aに保持したキャップ部材11aには可撓性チューブ22を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)23を接続し、その他のキャップ部材11b、11c、11dはチュービングポンプ23を接続していない。すなわち、キャップ部材11aのみを吸引(回復)用及び保湿用キャップとし、その他のキャップ部材11b、11c、11dはいずれも単なる保湿用キャップとしている。したがって、液滴吐出ヘッドの回復動作を行うときには、回復動作を行う液滴吐出ヘッドをキャップ部材11aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
【0036】
また、これらのキャップホルダ20a、20bの下方にはフレーム19に回転自在に支持したカム軸24を配置し、このカム軸24にはキャップホルダ20a、20bを昇降させるためのキャップカム25a、25bと、ワイパーブレード12を昇降させるためのワイパーカム26、キャリッジロック21をキャリッジロックアーム27を介して昇降させるためのキャリッジロックカム28と、空吐出受け13内で空吐出される液滴がかかる空吐出着弾部材である回転体としてのコロ29と、ワイパークリーナ15を揺動させるためのクリーナカム30をそれぞれ設けている。
【0037】
ここで、キャップ部材11はキャップカム25a、25bにより昇降させられる。ワイパーブレード12はワイパーカム26により昇降させられ、下降時にワイパークリーナ15が進出して、このワイパークリーナ15のクリーナコロ16と空吐出受け13のワイパークリーナ15とに挟まれながら下降することで、ワイパーブレード12に付着したインクが空吐出受け13内に掻き落とされる。また、キャリッジロック21は図示しない圧縮バネによって上方(ロック方向)に付勢されて、キャリッジロックカム28で駆動されるキャリッジロックアーム27を介して昇降させられる。
【0038】
そして、チュービングポンプ23及びカム軸24を回転駆動するために、モータ31の回転をモータ軸31aに設けたモータギヤ32に、チュービングポンプ23のポンプ軸23aに設けたポンプギヤ33を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ33と一体の中間ギヤ34に中間ギヤ35を介して一方向クラッチ36付きの中間ギヤ37を噛み合わせ、この中間ギヤ37と同軸の中間ギヤ38に中間ギヤ39を介してカム軸24に固定したカムギヤ40を噛み合わせている。なお、クラッチ36付きの中間ギヤ37、38の回転軸である中間軸41はフレーム19にて回転可能に保持している。
【0039】
また、カム軸24にはホームポジションを検出するためのホームポジションセンサ用カム42を設け、この回復装置10に設けた図示しないホームポジションセンサにてキャップ部材11が最下端に来たときにホームポジションレバー(不図示)を作動させ、センサが開状態になってモータ31(チュービングポンプ23以外)のホームポジションを検知する。なお、電源オン時には、キャップ部材11(キャップホルダ20)の位置に関係なく上下(昇降)し、移動開始までは位置検出を行わず、キャップ部材11のホーム位置(上昇途中)を検知した後に、定められた量を移動して最下端へ移動する。その後、キャリッジが左右に移動して位置検知後キャップ位置に戻り、液滴吐出ヘッドがキャッピングされる。
【0040】
次に、実施形態の回復装置を構成するキャップ部材の構成について概説する。
図6は実施形態の回復装置におけるキャップ部材の構成を示す斜視図である。同図の(a)に示すように、吸収体201がキャップ部材202の凹部空間203に設けられる。吸収体201の短手方向の断面において、対向する液滴吐出ヘッドの吐出面の一部であって吐出孔が設けられていない吐出面に対してギャップを介して近接する突起部201−1を有している。同図の(b)に示すように、このような断面形状の吸収体201がキャップ部材202の凹部空間に収納されている。このように、キャップ部材を吐出面に密着させたとき吐出面に接触してしまうと、吐出面とキャップ部材のニップ状態の確保が困難となり吸引不良となる場合もあるため、吸収体201の突起部201−1はキャップ部材を吐出面に密着させたときでも吐出面に接しないようにギャップ201−2を有している。このギャップ201−2は、吐出孔が設けられている吐出面に対向する吸収体と吐出面との間のギャップより小さくなっている。
【0041】
次に、このような構成を有するキャップ部材を用いて実施形態の回復装置における回復動作について図7に従って概説する。なお、図7には吐出孔列が1列である記録ヘッドを例として示しているが、複数列の吐出孔列の記録ベッドにも適用可能である。
先ず、図7の(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301へキャップ部材202を当接させて、更に吐出面に密着させて密閉した状態とする。そして、同図の(b)に示すように、図示していない吸引ポンプ等の吸引手段によって吐出面302とキャップ部材202の凹部空間とにより形成される内部空間を吸引する。吐出孔から排出されたインクは吸収体201の突起部201−1を伝いインクが吸収体201の内部に流れていく。吸引が終了して液滴吐出ヘッド301からキャップ部材202を離間すると、同図の(c)に示すように、キャップ部材202内のインクは吐出面とキャップ部材内の吸収体201の面へ引き離され吐出面へインクが付着する。インクが付着する位置は、吐出面と近接していた吸収体201の突起部201−1と対向していた位置であり、吐出孔近傍にインクは付着しない。このため、ヘッド内部の負圧によりヘッド内部へとインク等が引き込まれることを抑制することができる。そして、同図の(d)、(e)に示すように、ワイパーブレード401を吐出面に押し当てながら矢印方向に移動して吐出面に残存しているインクや紙粉などの異物を払拭する。
【0042】
なお、吸収体の突起部の位置は吐出孔に非対称に配置させ、その位置はワイピング時のワイパー移動方向にヘッドにおける上流に配置される。これにより、吐出面に付着した残留インクをワイピングの際の潤滑材として使用することができる。ワイピングを行うことで吐出面に付着しているミストを分散させ、紙粉などの異物を取り込みながら払拭を行うことができる。よって、吐出面の清浄度を向上させることも可能となる。吸収体の突起部がワイピング方向上流側に配置されるように吸収体がキャップ部材内部に収納される。また、吐出孔が設けられていない吐出面に対向しキャップ部材を吐出面に密閉したとき当該吐出面との間にギャップがある吸収体をワイピング方向の上流側に配置してもよい。更に、突起部を複数設け、各突起部が階段状に配列することにより、インクの伝わりを良くすることができる。また、吸収体を複数に分割して構成してもよく、また分割された各吸収体がそれぞれ異なった材質で構成することで、インクの伝わりをより一層良くすることができる。
【0043】
以上説明したように、実施形態によれば、図6に示すように、吸収体201における吐出面に対向する吸収体の上面の一部に、吐出孔と対向する領域外に突起部201−1を設けている。そして、図7に示すように、キャップ部材202を液滴吐出ヘッド301の吐出面302に密閉したとき突起部201−1と対向する吐出面302の間にはギャップ201−2が存在するように、吸収体201を構成する。このギャップ201−2は、吐出孔が設けられている吐出面に対向する吸収体と吐出面との間のギャップより小さい。これにより、キャップ部材を吐出面に密着させたとき、吐出面とキャップ部材のニップ状態が確保でき密閉状態となり、吸引不良の発生を防ぐことができる。
【0044】
また、実施形態によれば、図7に示すように、突起部201−1は、吐出面301をワイピングするワイパーブレード401が吐出孔を通過した後移動してくる方向の上流側の吸収体面に設けられている。これにより、吐出面に残ったインクが吐出孔に引き込まれずにワイピングでき、更に残留のインクをワイピングする際の潤滑剤として利用することができる。
【0045】
更に、実施形態によれば、吸収体は多孔質材料で形成されている。また、複数の突起部を階段状に配列する。更に、吸収体が複数に分割された構成である。そして、分割された各吸収体がそれぞれ異なった材質である。これにより、吸収体においてインクの伝わりが良くなる。
【符号の説明】
【0046】
10 回復装置
100 液滴吐出装置
201 吸収体
201−1 突起部
201−2 ギャップ
202 キャップ部材
301 液滴吐出ヘッド
302 吐出面
401 ワイパーブレード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2007−144696号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出孔から吐出する液滴吐出ヘッドの吐出面を、該吐出面に付着したインクを吸収する吸収体を内蔵するキャップ部材で密閉し、密閉空間内のインクを吸引排出させ、前記吐出孔の吐出状態を回復させる回復装置において、
前記吸収体は前記キャップ部材の内部に設けられ、前記吸収体は前記吐出面を前記キャップ部材で密閉したときに、前記吐出孔が設けられている前記吐出面に第1のギャップを介して対向する第1の吸収部と、前記吐出孔が設けられていない前記吐出面に第2のギャップを介して対向する第2の吸収部とを有し、前記第1のギャップが前記第2のギャップより大きいことを特徴とする回復装置。
【請求項2】
請求項1記載の回復装置において、
前記吸収体は、前記吐出孔を通過した後であって前記吐出面をワイピングするブレードが移動してくる方向の上流側の前記キャップ部材の内部に設けられていることを特徴とする回復装置。
【請求項3】
請求項1記載の回復装置において、
前記吐出孔が設けられている前記吐出面に前記第1のギャップを介して前記吸収体の吸収体面に第1の突起部を設け、前記吐出孔が設けられていない前記吐出面に前記第2のギャップを介して前記吸収体の吸収体面に第2の突起部を設けていることを特徴とする回復装置。
【請求項4】
請求項3記載の回復装置において、
前記突起部は、吐出面をワイピングするブレードの移動してくる方向の上流側の前記吸収体面に設けられていることを特徴とする回復装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回復装置において、
前記吸収体は多孔質材料で形成されていることを特徴とする回復装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の回復装置において、
複数の前記突起部を階段状に配列することを特徴とする回復装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の回復装置において、
前記吸収体が複数に分割された構成であることを特徴とする回復装置。
【請求項8】
請求項7記載の回復装置において、
分割された前記各吸収体がそれぞれ異なった材質であることを特徴とする回復装置。
【請求項9】
液滴を吐出孔から吐出する液滴吐出ヘッドを用いて画像形成を行う画像形成装置において、請求項1〜8のいずれか1項に記載の回復装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−61680(P2012−61680A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206926(P2010−206926)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】