説明

回路公差を調節するための回路と方法

【課題】周波数に敏感な回路のための周波数応答調節器、及び回路の周波数応答を調節する方法を提供する。
【解決手段】周波数に敏感な回路の充電状態を第1の電圧として測定し出力する時定数センサと、第1の電圧をサンプルし、第1の電圧を変換して得られる結果である第2の電圧を出力する変換器と、トリミング要素アレイと、トリミング要素アレイから少なくとも1つのトリミング要素を選択するために第2の電圧を利用するセレクタとを含んでいる。この方法は、回路の時定数を感知することと、この感知を第1の電圧として出力することと、第1の電圧を、固定された間隔にわたってサンプルすることと、サンプルした第1の電圧を、第2の電圧に変換することと、第2の電圧を使ってトリミング要素アレイから、少なくとも1つのトリミング要素を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクタンス回路の周波数応答を調節する装置及び方法に関し、特に、メインRC回路内の素子選択によるメインRC回路のトリミングに関する。
【背景技術】
【0002】
能動RC回路は、当該技術で知られた電子アプリケーションに使用されている。そのような回路は、アナログフィルタやシグマデルタ変換器のような連続時間アナログ集積回路の設計に適用されている。典型的な集積回路アプリケーションでは、集積回路の一部として生成される抵抗およびコンデンサは、予め定めた公差レベル内で生成されている。これら集積RC回路の周波数応答は、抵抗およびコンデンサの絶対値、及びそれらの公差に依存する。一般に、オンチップされた抵抗は、目標値の±20%の公差内で変化し、オンチップされたキャパシタンスは、例えば±10%の公差内で変化する。従って、与えられた回路のRC時定数は、±30%までの公差レベル内で変化しうる。あいにく、RC回路技術の多くのアプリケーションにおいて、±30%の変動は、許容限度以内ではないかもしれない。
【0003】
RC回路は、1/(2tRC)の−3dBの帯域幅周波数を持つ1次ロウパスフィルタでありうる。より高次のフィルタでは、RCの積は、フィルタ周波数応答を定義する。抵抗とキャパシタンスとの積であるτは、秒単位でのRC回路の時定数である。RC回路において、Rは、オーム単位での抵抗であり、Cは、ファラド単位でのキャパシタンスである。関係技術における通常の技能を有する者に知られているように、コンデンサは、安定速度では充電しない。むしろ、コンデンサに対する充電速度は、初めは速く、コンデンサがフル充電に近づくとともに徐々に遅くなる。各時定数値τの間、コンデンサは、最大電圧充電レベルに対する残りの量の63.2%を充電する。コンデンサは、5時定数値の終わりにおいて、99.33%が充電される。そして、6.9時定数値の後、最終値の99.9%まで充電される。
【0004】
同様に、コンデンサは、安定速度では放電しない。むしろ、放電速度は初めは速く、コンデンサにおける充電がゼロに近づくとともに徐々に遅くなる。各時定数期間の間、コンデンサは、最小電圧充電レベルに対する残りの量の63.2%を放電する。コンデンサは、5時定数値の終わりにおいて、99.33%が放電される。そして、6.9時定数値の後、最終値の99.9%まで放電される。
【0005】
従って、R値とC値の変動は、時定数τにおける受け入れがたい大きな変動をもたらし、RC回路におけるコンデンサの完全充電及び放電に対する不適切な時間推定に至るかもしれない。RCフィルタは、時定数値に影響されるRC回路を適用する。性能、すなわちこのようなフィルタの充放電、に関する明確性の欠如によって、フィルタを適用するアプリケーション、特に、高次のフィルタが用いられているアプリケーションにおける受け入れ難い性能レベルをもたらす。例えば、無線通信産業、及びそれに適用されているハードウェアは、フィルタ処理に広く依存するので、時定数値における広範なスイングは、許容されない。
【0006】
従って、RCフィルタ回路のようなRC回路の公差を改善する装置及び方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施例は、周波数応答回路のための周波数応答調節器を含む。この調節器は、時定数センサと、第1の電圧をサンプルし、第2の電圧を出力するアナログ/デジタル変換器とを含む。第2の電圧は、この変換器による第1の電圧のアナログ/デジタル変換の結果得られたものである。また、この調節器は、トリミング素子アレイと、第2の電圧を使って、トリミング素子アレイからの少なくとも1つのトリミング素子を選択するセレクタとを含む。周波数応答回路の充電状態は、第1の電圧として時定数センサによって測定され、そこから出力される。周波数応答回路の充電状態は、好適には、選択された少なくとも1つのトリミング素子によってトリミングされる。例えば、周波数応答調節器は、複数の主要切替器と少なくとも1つの能動通信デバイス回路に加えて、通信デバイスに含まれうる。複数の主要切替器は、能動通信デバイス回路と、周波数応答調節器との間で、時定数センサ、変換器、トリミング素子アレイ、及びセレクタのうちの少なくとも1つを切り換える。
【0008】
本発明は、更に、回路の周波数応答を調節する方法を含む。この方法は以下のステップを含む。すなわち、回路の時定数を感知することと、この感知を第1の電圧として出力することと、この第1の電圧を、固定された間隔にわたってサンプルすることと、このサンプルした第1のアナログ電圧を、デジタルフォーマットの第2の電圧に変換することと、第2の電圧を使って、トリミング素子アレイから、少なくとも1つのトリミング素子を選択することである。回路の時定数は、選択された少なくとも1つのトリミング素子によってトリミングされる。
【0009】
従って、本発明は、RCフィルタ回路のようなRC回路の公差を改善する装置及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】トリミング回路を示すブロック図。
【図2】図1のトリミング回路の実施例を示す概略ブロック図。
【図3】図1及び図2に示すトリミング回路の実施例を示す概略図。
【図4】図1及び図2に示すトリミング回路の実施例を示す概略図。
【図5】図1及び図2に示すトリミング回路の実施例を示す概略図。
【図6】トリミング回路の実施例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願は、2002年4月10日に出願された米国仮出願番号60/371,664号の優先権を主張する。
【0012】
本発明の理解は、同一符号が同一素子を示している添付図面を用いることによって、以下に示す本発明の実施例の詳細説明の検討によって容易になされる。
【0013】
本発明の図面と説明は、本発明の理解を明確にするために関連のある素子を図示するように簡略化されている一方、明確化の目的のために、典型的な回路環境で見られる多くの他の素子を省略しているものと理解されるべきである。当該技術における通常の熟練者であれば、本発明を実現するためには、他の素子が好ましい、及び/又は必要とされることを理解するであろう。しかしながら、そのような素子は当該技術分野では良く知られており、本発明の更なる理解を容易にしないので、そのような素子の議論はここでは与えられていない。
【0014】
まず、図1に示すように、メインRC回路108のための抵抗またはキャパシタンスを選択するための調節器10のブロック図が示されている。調節器10は、RC回路100と、時定数センサ102と、アナログ/デジタル変換器104と、RCセレクタ106と、メインRC回路108とを含む。RCセレクタ106を使って、メインRC回路108内の抵抗とキャパシタンスとの値を選択する場合、メインRC回路108の周波数応答が調節、すなわち「トリミング」される。本発明の実施例では、RC回路100とメインRC回路108とは、同一回路でありうる。それにもかかわらず、図面と以下の説明は、別個の回路として説明する。
【0015】
時定数センサ102は、RC回路100のRC時定数を監視する。時定数センサ102の出力は、アナログ/デジタル変換器104に提供される。アナログ/デジタル変換器104のデジタル値105は、メインRC回路108の好ましいRC時定数を実現するために、例えば、選択可能なコンデンサまたは抵抗のアレイからコンデンサの値を選択するために、RCセレクタ106によって使用される。
【0016】
RCセレクタ106は、時定数センサ回路102によって感知されたRC回路100の現在のRC時定数の、メインRC回路108のための望ましいRC時定数に対する比較に基づいて抵抗またはキャパシタンスを選択する。図1に列挙されたハードウェアのような、本発明に適用されるハードウェアは、説明的に示されたハードウェア20のような「借りものの」ハードウェアを含む。借りもののハードウェアは、RC時定数が監視されない時間期間の間、例えば無線通信デバイスのようなデバイス内で別の形で用いられる。例えば、電圧リファレンス及びアナログ/デジタル変換器は、無線デバイスでは頻繁に用いられ、図1の調節器10における使用のために「借りられうる」。この「借り」は、図1の「借りられた」ハードウェア20を、例えば無線移動デバイス内において、調節器10による使用と、他のデバイス局面による使用との間で切り換える機能切換回路ブロックの使用を通じて容易に実現される。
【0017】
図2には、図1の調節器10の実施例をより具体的に示すブロック図と概略との組み合わせが示されている。図2の調節器10は、電圧/電流変換器202に接続されたバンドギャップ電圧200ソース(VBG: band gap voltage 200 source)を含む。この電圧200と変換器202とはRC回路100の抵抗204か、あるいは、コンデンサ(図2には示されていない)に接続されうる。調節器10は、更に、電流ミラー206と、切替コントローラ208と、電流ミラー206に接続されたRC回路100のコンデンサ210または抵抗(図2には示されていない)と、アナログ/デジタル変換器104とを含む。アナログ/デジタル変換器104の出力は、RCセレクタ106に供給される。RCセレクタ106は、メインRC回路108のために素子値を選択する。図1に示され、上記に説明されたRC回路100と時定数センサ回路102とは、図2に示すように、バンドギャップ電圧200ソースと、電圧/電流変換器202と、抵抗204と、電流ミラー206と、切替コントローラ208と、コンデンサ210と、切替器218,220とに対応している。
【0018】
バンドギャップ電圧200ソースは、関連技術分野における通常の技能を有する者にとって知られたあらゆる電圧ソースでありうる。また、調節器10が配置される例えば無線通信デバイスのようなデバイス内で使用される電圧ソースでありうる。例えば、バンドギャップ電圧200ソースは、集積回路を含むシステムのためのポピュラーな基準技術である。バンドギャップ電圧200リファレンスは、1.2ボルト出力を持っているか、あるいはシリコンが適用されたバンドギャップ電圧と同等な、関連技術における通常の技術を有する者にとって知られた他の出力を持っている。バンドギャップ電圧200ソースの基本動作は、逆の温度依存性をもつ2つの電圧を加え、これによって全体の温度依存性をキャンセルすることを含む。従って、バンドギャップ電圧200は、温度に対して安定している。
【0019】
電圧/電流変換器202は、関連技術における通常の技術を有する者にとって知られたあらゆる電圧/電流変換器でありうる。電圧/電流変換器202は、バンドギャップ電圧200を抵抗204において電流Iに変換する。電圧/電流変換器202は、図1及び図2のシステムが適用されるデバイス内で、時定数の監視がない間の時間周期に他の素子によって使用される電圧/電流変換器でありうる。
【0020】
電流ミラー206は、関連技術における通常技術を有する者にとって知られたあらゆる電流ミラーでありうる。電流ミラー206は、図示するように、温度補償型水晶発振器や、関連技術における通常技術を有する者にとって知られた別の種類の発振器のような発振器によって駆動される例えばタイミング制御回路のような切替コントローラ208によって調節される。切替コントローラ208は、切替器218及び切替器220を調節する。切替器218は、コンデンサ210が充電される間、時間期間222を制御するために使用される。切替器218は、次の時間期間222充電間隔に先立って、コンデンサ210を横切る電圧をゼロにリセットする。切替器220は、サンプリングと、デジタル値105への変換のために、ADC104に電圧224を機能的に加える。この構成では、切替器218は通常はオンである一方、切替器220はオフである。これによって、ADC104は、時間期間222の間、コンデンサ210の充電の後に、コンデンサ210を横切る電圧をサンプルすることが可能となる。切替器218と切替器220との間の機能的な時間関係は、関連技術における通常技術を有する者にとって明らかである。電流ミラー206は、図2に示す抵抗204のようなRC回路100の第1の部分における電流の大きさを、図2に示すコンデンサ210のようなRC回路100の第2の部分に複製する。
【0021】
アナログ/デジタル変換器104は、電圧V1を受け取る。例えば、アナログ/デジタル変換器104は、関連技術における通常技術を有する者にとって知られた集積型アナログ/デジタル変換器である。アナログ/デジタル変換器104は、アナログ電圧224をデジタル値105に変換する。これは、直列接続されたRCセレクタ106とメインRC回路108へ入力される。
【0022】
動作中、バンドギャップ電圧200は、電圧/電流変換器202、及び例えばオンチップレジスタのような抵抗204によって、バンドギャップ電流に変換される。このバンドギャップ電流は、電流ミラー206によってミラーされ、切替器218をオフすることによって、時間期間222の間、コンデンサ210を横切って加えられる。コンデンサ210を横切って現れた電圧224は、ADC104を使用して測定される。これらの測定から、R1*C1は、以下の関係を使って決定される。
V1=I1*T1/C1,
及び
I1=VBG/R1。
その結果、
V1=(VBG/R1)*(T1/C1)。
【0023】
上記式は、以下の通りR1*C1(τ)のために解くことができる。
τ=VBG T1/V1,
ここでVBGは、バンドギャップ電圧200を表し、T1は、時間期間222を表し、V1は、電圧224を表す。例えば、VBGは、1.2ボルトである。T1は、知られた周波数ソースから導出され、V1は、ADC104によって測定される。
【0024】
導出され、デジタル値105と関連しているτは、メインRC回路108における正確で、かつ望まれるRC値を達成するために、メインRC回路108における必要な抵抗またはキャパシタンスを選択するために使用される。セレクタ回路106は、メイン回路108におけるトリミングのために望ましいRC値を達成するために、セレクタ106に利用可能な抵抗又はコンデンサのアレイから、必要な抵抗又はキャパシタンスを選択するために、当該技術分野における熟練者には明らかである切替ドライバを使用しうる。前記から、RC回路100のRC時定数である時間期間222における変動を評価することによって、RまたはC素子の値変動をトリミングすることは可能である。
【0025】
例えば、もしもT1が1つのRC時定数τであれば、1つのRC時定数後のV1は、0.632VBGに等しくなり、RCは設計したとおりとなる。もしもT1が1つの時定数(1+0.15)であれば、(1+0.15)RC時定数後のV1は、0.683VBGに等しくなり、RCはRC回路素子値よりもおおよそ15%大きくなる。もしもT1が1つの時定数(1−0.15)であれば、(1−0.15)RC時定数後のV1は、0.572VBGに等しくなり、RCはRC回路素子値よりもおおよそ15%小さくなる。従って、測定されたRC回路素子値と、目標RC回路素子値との間の知られた公差の差によって、知られたオフセットと同等なRC値を変えることによってトリミングすることが可能となる。
【0026】
メインRC回路の望ましい性能を得るために、抵抗ではなく、むしろコンデンサのトリミングが実行されることは、当該技術における熟練者にも明らかなことであろう。切替は、素子をメインRC回路及び/又はセレクタの中及び外に配置するために、更に、素子をメインRC回路、セレクタ、及び/又はデバイスの残りの回路の中及び外に配置するために実行されることが明らかである。
【0027】
調節器10の実施例は、図3、図4、及び図5に示されている。図3には、図1及び図2に示されたトリミング回路の実施例の概略図を示している。図3に示すように、調節器10は、図示するように電気的に接続された切替器S1〜S5、抵抗R1、コンデンサC1、バッファ320、及びアナログ/デジタル変換器104を含む。
【0028】
図3に示すように、調節器10は、演算増幅器300に電気的に接続された入力バンドギャップ電圧を持つ。演算増幅器300の出力は、トランジスタ310に電気的に接続されている。トランジスタ310は、例えば、P−MOSFETのようなMOSFETでありうる。トランジスタ310は、電気的に抵抗R1に接続されている。演算増幅器310への別の入力は、抵抗R1とトランジスタ310との間に電気的に接続される。トランジスタ310は、同様に、切替器S4と切替器S3とに接続されている。切替器S3は、同様に、例えばMOSFETのようなトランジスタでありうるトランジスタ315に接続される。トランジスタ315は、バッファ320に接続される。また、バッファ320はVBGに接続される。バッファ320の出力と直列に配置されているのがADC104、RCセレクタ106、及び抵抗アレイ330である。抵抗アレイ330は、図示しない静電容量アレイで代用される。注目すべきは、図示する典型的な実施例では、演算増幅器300、トランジスタ310、及び抵抗R1は、電圧/電流変換器を形成し、トランジスタ310、315は、電流ミラーを形成する。
【0029】
図3を見て分かるように、切替器S1〜S5の各々は、2つの動作状態、すなわちオンまたはオフのうちの何れかに切替器を配置することによって、対応するタイミングパルス350〜390に従って制御される。例えば、図3に示すように、切替器S1は初めはオンである。同様に、切替器S2と切替器S3は初めはオンである一方、切替器S4と切替器S5は初めはオフである。S1がオンである間、コンデンサC1は、実質的に放電し、トリミング処理は、電圧VBGの測定で進む。コンデンサC1が放電すると、切替器S1,S2,S3は、オフに切り替わる。切替器S3がオンからオフに切り替わると、切替器S5はオンに切り替わる。その後、切替器S4がオンに切り替わる。切替器S5は、少なくとも1つの時定数T1にわたってオンであり続ける。電圧V1は、1つの時定数T1後にサンプルされる。一方、切替器S1,S2,S3は、オフであり続け、切替器S4,S5は、オンであり続ける。関連技術における熟練者に明らかであるように、もしも電圧V1,VBGの値が測定され、時定数T1がR1C1に等しいとして知られているのであれば、RCは以下の式を用いて解かれる。
【0030】
V1=(VBG*T1/RC),
すなわち
RC=(VBG*T1/V1)。
【0031】
RCが上記式から計算された後、抵抗アレイ(またはコンデンサアレイ)からの適切なR(またはC)の選択が達成される。
【0032】
図4には、図1及び図2に示すようなトリミング回路の実施例の概略図が示されている。図4では、調節器10は、図示するように電気的に接続された電圧VBG、切替器S1〜S3、抵抗R1、コンデンサC1、及びアナログ/デジタル変換器を含む。
【0033】
図4に示すトリミング回路は、抵抗R1と直列な切替器S3に接続されたVBGを含む。切替器S2とコンデンサC1は並列であって、抵抗R1に接続される。切替器S1は、直列に配置されている切替器S3及び抵抗R1と並列に配置されている。抵抗R1は、演算増幅器400の入力に接続されている。演算増幅器400の出力は、フィードバックを与える。演算増幅器400の出力は、ADC104、RCセレクタ106、及び抵抗アレイ410に直列に接続される。抵抗アレイ410は、図示していない静電容量アレイによって代用されうる。
【0034】
この構成におけるトリミング処理は、上述した図3に記載したように実質的に実行される。例えば、タイミング信号430〜450から分かるように、切替器S1は、初めはオンである一方、切替器S2,S3はオフである。この構成において、電圧VBGは、S1がオンである場合に測定され、コンデンサC1は、S2がオンである場合に放電される。この初期構成から、切替器S1は、オフになり、切替器S2,S3は、次々にオンになる。電圧V1は、少なくとも1つの時定数T1、あるいは時定数のある知られた部分の間、切替器S3がオンになった後に測定される。上記図3に示すように、もしも電圧V1とVBGの値が測定されると、時定数T1は、R1C1に等しいとして知られ、RCは、以下を用いて解かれる。
V1=VBG(1−e−T1/RC),
すなわち
RC=T1/(−ln(1−(V1/VBG)))。
【0035】
RCが知られた後、抵抗アレイ(又はコンデンサアレイ)からの適切なR(又はC)の選択が達成される。
【0036】
図5には、図1及び図2に示すようなトリミング回路の実施例の概略図が示されている。図5において、調節器10は、図示するように電気的に接続された電圧VBG、切替器S1〜S4、抵抗R1、コンデンサC1、及びアナログ/デジタル変換器を含む。
【0037】
図5に示すトリミング回路は、切替器S4、抵抗R1、及び演算増幅器500に電気的に接続されたVBGを含む。演算増幅器500は、切替器S3を超えて出力される。演算増幅器と切替器S3との接続の間には、抵抗R1と演算増幅器500との相互接続に接続された並列なコンデンサC1と切替器S2とが接続されている。ADC104、RCセレクタ106、及び判定ブロック510は、演算増幅器500出力と切替器S3とに直列に接続されている。判定ブロック510は、コンデンサアレイ520と抵抗アレイ530との両方に接続されている。着目すべきは、抵抗R1、演算増幅器500、及びコンデンサC1がT1の間、能動的RC積分器を形成する。
【0038】
この構成におけるトリミング処理は、図3及び図4に関して記載したように実質的に行われる。初期条件として、タイミング信号550〜580から分かるように、切替器S1がオンである一方、切替器S2〜S4がオフである。この構成において、電圧VBGが測定される。切替器S1は、切替器S2,S3がオンになる時に、オフになる。切替器S3がオンであり続ける間、切替器S2は、オフになり、その後切替器S4がオンになる。切替器S2がオンである間、C1は放電する。切替器S4がオンになり、少なくとも時定数T1の間オンを継続し、Vopが測定される。上記図4と同様に、もしも電圧VopとVBGの値が測定され、時定数T1がR1C1に等しいと知られていれば、RCは、以下を用いて解かれる。
Vop=VBG T1/(RC),
すなわち、
RC=VBG T1/Vop。
【0039】
RCが知られた後、抵抗アレイ(又はコンデンサアレイ)からの適切なR(又はC)の選択が達成される。
【0040】
図6には、本発明の局面に従った回路の周波数応答を調節するためのフロー図が示されている。調節は、回路の時定数を感知すること600と、この感知を第1の電圧として出力すること610と、第1の電圧を、例えば1つのRC時定数のような固定された間隔にわたってサンプリングすること620とを含む。更に、調節は、サンプルした第1の電圧を、例えばアナログ/デジタル変換することによって第2の電圧に変換すること630と、この第2の電圧を利用して、トリミング素子アレイから少なくとも1つのトリミング素子を選択すること640とを含む。少なくとも1つのトリミング素子640を選択することは、抵抗、コンデンサ、あるいはその両方にそれぞれ通信可能に接続された複数の切替器を作動させることを含む。回路の時定数は、選択された少なくとも1つのトリミング素子によってトリミングされる。
【0041】
本発明の思想又は範囲から逸脱することなく、様々な変更や変形が本発明の装置及び処理でなされることは、当該技術分野における熟練者に明らかであろう。従って、これら変更や変形は、請求項及びその均等物の範囲内であることを考慮しており、ここでいう請求項は、本発明の変更や変形を含むことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路の周波数応答を調節する調節器であって、
前記回路の充電状態を第1の電圧として測定し、出力する時定数センサと、
前記第1の電圧をサンプルし、前記第1の電圧を変換して得られる結果である第2の電圧を出力する変換器と、
トリミング要素アレイと、
前記トリミング要素アレイから少なくとも1つのトリミング要素を選択するために前記第2の電圧を利用するセレクタとを備え、
前記回路の前記充電状態は、前記選択された少なくとも1つのトリミング要素によってトリミングされる。
【請求項2】
請求項1に記載の調節器において、前記充電状態は、バンドギャップ電圧リファレンスに敏感である。
【請求項3】
請求項1に記載の調節器において、前記時定数センサは更に、少なくとも1つの充電切替器を制御する切替コントローラを備え、前記充電切替器が動作すると、前記回路は前記充電状態に入る。
【請求項4】
請求項3に記載の調節器において、前記時定数センサは更に、前記切替コントローラによって制御されるサンプリング切替器を備え、前記充電切替器が不動作になり、前記サンプリング切替器が動作すると、前記充電状態が測定される。
【請求項5】
請求項1に記載の調節器において、前記変換器はアナログからデジタルへの変換器であって、前記第2の電圧はデジタル電圧を含む。
【請求項6】
請求項1に記載の調節器において、前記セレクタは、前記第2の電圧によって選択的に作動される少なくとも1つの切替器を備える。
【請求項7】
請求項1に記載の調節器において、前記少なくとも1つのトリミング要素は、少なくとも2つの抵抗を備える。
【請求項8】
請求項1に記載の調節器において、前記少なくとも1つのトリミング要素は、少なくとも2つのコンデンサを備える。
【請求項9】
複数の要素の周波数応答をトリミングする調節器であって、
前記複数の要素のために充電状態を提供する手段と、
固定された間隔にわたって、前記複数の要素の前記充電状態と、前記複数の要素のサンプリング状態との間を切り替える手段と、
前記サンプリング状態の間、前記複数の要素の前記充電状態をサンプリングし、前記サンプリングされた状態を、前記サンプリングされた状態を表すデジタル制御値に変換する手段と、
前記複数の要素への配置切替のために、前記デジタル制御値に応答して、少なくとも1つのトリミング要素を選択し、前記充電状態を調節する手段とを備える。
【請求項10】
請求項9に記載の調節器において、前記充電状態を提供する手段は、シリコンバンドギャップ電圧を含む。
【請求項11】
請求項9に記載の調節器において、前記固定された間隔は、水晶発振器によって確定される。
【請求項12】
請求項9に記載の調節器において、前記サンプリング及び変換する手段は、アナログからデジタルへの変換器を含む。
【請求項13】
請求項9に記載の調節器において、前記選択する手段は、複数のソリッドステート切替器を備え、前記切替器は、前記少なくとも1つのトリミング要素を適用する。
【請求項14】
請求項9に記載の調節器において、前記少なくとも1つのトリミング要素は、抵抗とコンデンサとから構成されたグループから選択された少なくとも1つを備える。
【請求項15】
通信デバイスであって、
複数の主要切替器と、
少なくとも1つの能動通信デバイス回路と、
周波数に敏感な回路のための周波数応答調節器であって、
前記周波数に敏感な回路の充電状態を第1の電圧として測定し、出力する時定数センサと、
前記第1の電圧をサンプルし、前記第1の電圧を変換して得られる結果である第2の電圧を出力する変換器と、
トリミング要素アレイと、
前記トリミング要素アレイから少なくとも1つのトリミング要素を選択するために前記第2の電圧を利用するセレクタとを含む周波数応答調節器とを備え、
前記周波数に敏感な回路の充電状態は、前記選択された少なくとも1つのトリミング要素によってトリミングされ、
前記複数の主要切替器は、前記時定数センサ、前記変換器、前記トリミング要素アレイ、及び前記セレクタからなるグループから選択された少なくとも1つを、前記能動通信デバイス回路と前記周波数応答調節器との間で切り替える。
【請求項16】
回路の周波数応答を調節する方法であって、
前記回路の時定数を感知することと、
この感知を第1の電圧として出力することと、
前記第1の電圧を、固定された間隔にわたってサンプルすることと、
前記サンプルした第1の電圧を、第2の電圧に変換することと、
前記第2の電圧を使って、トリミング要素アレイから、少なくとも1つのトリミング要素を選択することとを備え、
前記回路の時定数は、前記選択された少なくとも1つのトリミング要素によってトリミングされる。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記固定された間隔は、おおよそ1つのRC時定数である。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、前記選択することは、抵抗におのおの通信可能に接続された複数の切替器を作動させることを含む。
【請求項19】
請求項16に記載の方法において、前記選択することは、静電容量におのおの通信可能に接続された複数の切替器を作動させることを含む。
【請求項20】
請求項16に記載の方法において、前記第1の電圧は、アナログ電圧であって、前記第2の電圧は、デジタル信号であって、前記変換することは、アナログからデジタルへの変換を含む。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−61822(P2011−61822A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−232566(P2010−232566)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2003−585277(P2003−585277)の分割
【原出願日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】