説明

回路基板、回路基板の製造方法および半導体装置

【課題】導体回路間の絶縁信頼性の優れた回路基板、回路基板の製造方法および半導体装置を提供すること。
【解決手段】基材105と、基材105の少なくとも一方の面側に金属層101が形成された積層板10を用意し、金属層101の表面に開口部を設けたレジスト層21を形成する工程と、レジスト層21の開口部にめっきにより導体部31を形成する工程と、レジスト層22を剥離液により除去する工程と、レジスト層を剥離液により除去することにより露出する金属層101をドライエッチングにより除去する工程と、を含むことを特徴とする回路基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、回路基板の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板へ導体回路を形成する方法には、大別してサブトラクティブ法とセミアディティブ法が知られている。セミアディティブ法では、導体回路の精細度を決定する要因が、フォトリソグラフィ法でもちいるめっきマスク(フォトマスク)の精度に依存するために、セミアディティブ法で形成する導体回路の精度は、サブトラクティブ法においてエッチング法で形成する導体回路の精度に比べると、回路幅精度に優れた工法である。従って、高精細な導体回路を形成する手法としては、セミアディティブ法が有利である。
【0003】
セミアディティブ法により配線基板を製造する方法については、例えば、特開2003−37137号公報に記載されている。図3、4は、従来のセミアディティブ法により、導体回路を形成する際の回路基板を示す工程の断面図である。
【0004】
まず、図3(a)に示した絶縁樹脂からなる基板105の少なくとも一方の面側に、金属層101が形成された積層板10を用意する。その後、図3(b)に示すように、感光性レジストフィルム(DFRともいう)21を金属層101を覆うように真空ラミネータなどをもちいてラミネートする。次に、金属層101表面に所望の導体回路にあたる部分が開口するように、めっきマスク重ね、露光、現像を行うフォトリソグラフィ法によってレジストパターンを形成する(図3(c)(d))。
【0005】
次に、図3(e)に示すように、レジストパターンの開口部分に露出している金属層101の上に、電気めっき法で導体層を積層して導体部31とする。その後、図4(a)に示すように、剥離液またはアルカリ溶液にてレジストパターンを除去し、その後、露出した金属層101を溶解して除去し、所望の配線回路のみが基板の上に残る(図4(b))。その後、必要により、永久レジスト被覆、永久レジストから露出した導体回路部分を無電解ニッケル/無電解金めっきや、無電解ニッケル/無電解パラジウム/無電解金めっきで表面めっき処理を行ない回路基板13を得る。
【0006】
しかしながら、このようなセミアディティブ法では、レジストパターンを剥離液またはアルカリ溶液にて除去する際に、導体回路間にレジスト残渣33が発生し(図4(a))、このレジスト残渣33はその後の、基材面に残る金属層をエッチング液で除去する際に、エッチングマスクとなる為、導体回路間を覆っている金属層の除去が不十分になり導体回路間に金属層残渣34が残ることになり導体回路間の絶縁性を十分に確保できないことがあった(図4(b))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−37137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、導体回路間の絶縁信頼性の優れた回路基板、回路基板の製造方法および半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による回路基板の製造方法は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に金属層が形成された積層板を用意する工程と、前記金属層の表面に開口部を設けたレジスト層を形成する工程と、前記レジスト層の前記開口部にめっきにより導体部を形成する工程と、前記レジスト層を剥離液により除去する工程と、前記レジスト層を剥離液により除去することにより露出する前記金属層をドライエッチングにより除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この回路基板の製造方法においては、前記レジスト層を剥離液により除去することにより露出する前記金属層をドライエッチングにより除去する工程を含んでいる。これにより、レジスト層の剥離液により除去した際に、残渣として残ったレジスト残渣を金属層をドライエッチングする際に同時に除去することができるので導体回路間の絶縁信頼性に優れた回路基板を提供することができる。
【0011】
また、前記ドライエッチングは、反応性イオンエッチングであってもよい。さらに、前記反応性イオンエッチングは、プラズマによりガスをイオン化およびラジカル化するものであってもよい。
【0012】
また、前記ガスは、アルゴン、酸素、フッ素系ガスまたはその混合ガスを用いるようにしてもよい。
【0013】
また、上記の方法で得られた回路基板としてもよい。
【0014】
また、回路基板に電子部品を搭載した半導体装置としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導体回路間の絶縁信頼性の優れた回路基板、回路基板の製造方法および半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】

【図1】本発明の一実施形態を示す回路基板の製造方法の工程断面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す回路基板の製造方法の工程断面図である。
【図3】従来の回路基板の製造方法を示す工程の断面図である。
【図4】従来の回路基板の製造方法を示す工程の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の回路基板、回路基板の製造方法および半導体装置について添付する好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1、図2は、本発明の好適な実施形態を示す回路基板の製造方法を示す工程断面図である。
【0019】
図1に示すように、例えばポリイミド樹脂フィルム、エポキシ樹脂などを硬化させた基材105の片面に金属層101が形成された積層板10を用意する(図1(a))。金属層101として金属薄膜を用いる場合は、乾式法では真空蒸着法やスパッタリング法などが好適に用いられ、湿式法としては電解めっき法、無電解めっき法などがもちいられる。また積層板プレス時にピーラブル箔付き極薄金属箔を用いてプレスし、その金属箔そのものもしくは、エッチング処理により表面金属厚みを薄くしたものなどを用いることができる。金属層膜厚は、乾式法では、0.05μm〜5μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1μmである。湿式法では、0.5μm〜5μmが好ましく、より好ましくは0.5μm〜1.5μmである。金属種としてニッケル、クロム、コバルト、チタン、モリブデン、バナジウム、タングステンまたは銅などの単一金属か、それらの合金薄膜、または複数金属種の組み合わせが好適である。湿式法としては電解めっき法、無電解めっき法また、金属箔を用いる場合は、金属種としては、ステンレス、ニッケル、アルミ、鉄、銅などがもちいられ、エッチング性などから銅がより好適に用いられる。金属箔の厚さは、1μm〜10μmが好ましく、より好ましくは1μm〜5μmである。本実施形態では、スパッタリング法により形成されたチタン−銅複合金属層にて実施した。このときの金属層の厚みは0.20μm〜0.35μmであった。この金属層は薄いほどセミアディティブプロセスの金属層除去工程がより品質よく実施される。よって、回路形成時のめっき工程に差し支えない厚みを適宜選択することが好ましい。
【0020】
次に、金属層101の表面にレジスト層21を形成する。レジスト層21としては、特に限定はされないが、液状タイプ(液状レジスト)、フィルムタイプ(ドライフィルム)などを用いることができる。液状レジストの場合は、スクリーン印刷法、コータ法など形成することができる。また、ドライフィルムの場合は、真空ラミネータなどを用いて形成することが出来る(図1(b))。本実施形態においては、ネガ型のドライフィルムをレジスト層21として用いた。レジスト層21の厚さは、所望の導体部の導体の厚さによって決定されるが、例えば、10μm〜50μmが好ましく、より好ましくは10μm〜25μmである。例えば、20μmの導体の厚さの導体部を得ようとした場合、導体部の導体の厚さよりも厚くなるように形成することが好ましく、例えば、厚さ25μmのレジスト層21を形成する。
【0021】
次に、レジスト層21面側に図示はしていないが、めっきマスクを所定の位置に配置する。レジスト層21とめっきマスクは、接触していてもよいし、非接触であってもよい。非接触の方が、めっきマスクの汚染を低減でき、また、レジスト層21とめっきマスクとを吸引によって密着させる工程が省かれるため効率のよい生産ができることからより好ましい。ここでは、ネガ型のめっきマスクを用いて、露光を行ない、導体部31とならないところ反応させて硬化する(図1(c))。次に現像を行い露光工程で反応していないめっきレジスト層21を除去し、硬化したレジスト層22を形成する。
【0022】
次に、図1(e)に示すように、反応していないめっきレジスト層21を除去した開口部の底部の金属層101の上に、金属導体層からなる導体部31を形成する。金属導体としては、銅、銀、金、ニッケルまたは錫であるか、または、はんだのようにこれらからなる群から選ばれた2種以上からなる合金であり、銅の単体が選択されることが好ましい。導体部31の形成方法は、乾式法よりも成膜速度の速い湿式法を用いることが一般的であり、好ましくは電気めっき法が使用される。銅をもって導体部31を形成する場合には、硫酸銅めっき液、ピロリン酸銅めっき液などが使用できるが、硫酸銅めっき液の使用が好ましい。導体部31の厚さは、上述したレジスト層21の厚さより薄くすることが好ましく、例えば5μm〜35μm、好ましくは8μm〜25μmであるが、用途によって適宜、最適な厚さとすることが望ましい。
【0023】
次に、硬化したレジスト層22を剥離する。通常、硬化した第一のレジスト層22は、専用の剥離液またはアルカリ溶液を用いて剥離する。このとき、導体部31間の間隔が狭い開口部となったとき、開口部内に十分剥離液が浸透せずその結果レジスト層22の剥離が不十分となり、開口部の金属層21が露出している面にレジスト残渣33が残留する(図2(a))。
【0024】
次に、金属層101上に残存したレジスト残渣33とともに開口部から露出している金属層101を、ドライエッチング50により除去する。ドライエッチングは、反応性イオンエッチングでの除去や、プラズマによりガスをイオン化およびラジカル化が好ましい。処理に使用されるガスは酸素、水素、アルゴン、窒素、フッ素系ガス(CF4、SF6)やその混合ガスが好ましく、特に酸素、アルゴン、フッ素系ガスがより好ましい。使用装置により依存するがワット数は例えば、50W〜5000Wにてプラズマ照射することが好ましく、特に100W〜3000Wにてプラズマ照射することがより好ましい。ガス量は基材の状態により適宜流すことが好ましい。処理時間は基材の状態により適宜流すことが好ましい。処理時間、ワット数、ガス流量については、基材上にある導体線間の金属層のみを取り除く条件に限らず、導体線間の基材樹脂もドライエッチングする条件にて処理することがより好ましい。これにより、基材樹脂に存在する微量金属残渣も樹脂ごと除かれ線間絶縁信頼性が向上こととなる。
【0025】
以上の工程で回路基板11を得る。
【0026】
次に半導体装置について説明する。
【0027】
回路基板11に電子装置を搭載してなる半導体装置は、特に限定されるものではないが、例えば、回路基板11と半導体素子がボンディングワイヤーにより接続された半導体装置や、回路基板11と半導体素子が半田バンプを介して接続されたフリップチップタイプの半導体装置等が挙げられる。以下、フリップチップタイプの半導体装置について一例を示す。
【0028】
フリップチップタイプの半導体装置は、回路基板11に、半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンプを介して、回路基板11と半導体素子とを接続する。そして、回路基板11と半導体素子との間には液状封止樹脂を充填し、半導体装置を形成する。半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマスなどからなる合金で構成されることが好ましい。半導体素子と回路基板11との接続方法は、フリップチップボンダーなどを用いて回路基板11上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、回路基板11と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予め回路基板11上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいても良い。この接合工程に先んじて、半田バンプおよび、または回路基板11上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例)
基材は厚さが100μmのポリイミドフィルム(宇部日東化成株式会社 UPILEX 25S)を用い、基材にスパッタリング法により厚み0.05μmのチタンと0.02μm銅の金属層を形成した。金属層表面にレジスト層として、厚さ25μmのドライフィルムレジスト(日立化成株式会社 フォテック 3325GS)を真空ラミネータで積層し、露光、現像することにより、開口部が40μmの第一のレジスト層を形成した。その後、電解銅めっきにより厚さが20μmとなるように行い導体部を形成した後、ドライフィルムレジスト層をアルカリ剥離液により剥離した。次に、金属層除去の為、四フッ化炭素と酸素の混合ガスにより流量比1:2にて3000W10分間プラズマ処理を行った。得られた回路基板の導体線間に金属銅残渣が無いことを確認した。作製された回路基板を永久レジスト被覆し、永久レジストから露出した導体回路部分を無電解ニッケル/無電解金めっき処理した後、作製した回路基板にTEG部品を実装し、高温高湿絶縁信頼性試験(温度130℃、湿度85%の雰囲気下)を印加電圧DC1.95Vで実施した。200時間経過後に導通抵抗1×10Ω以上を保持しているか確認した。
(比較例)
実施例1と同様に積層体絶縁材料上に導体部形成した後、ドライフィルムレジスト層をアルカリ剥離液により剥離した。次に、過酸化水素と硫酸混合系のエッチング液により、金属層除去を行った。得られた回路基板の導体線間に金属銅残渣が無いことを確認した。作製された回路を永久レジスト被覆し、永久レジストから露出した導体回路部分を無電解ニッケル/無電解金めっき処理した後、AOI回路検査装置にて回路歩留り状況、及び、線間の短絡状況を確認した。実施例1と同様に作製した回路基板にTEGチップを実装し、高温高湿絶縁信頼性試験(温度130℃、湿度85%の雰囲気下)を印加電圧DC1.95Vで実施した。200時間経過後に導通抵抗1×10Ω以上を保持しているか確認した。
【0030】
得られた結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
1.評価方法
(1)くし型パターン歩留り
L/S(ライン・アンド・スペース)=40μm/40μmの測定電極がくし状に交互に配列したテストパターン(くし型パターン)を作製し、金属層をドライエッチングした後にAOI回路検査装置にて回路検査を行った。100個のテストパターンを評価した中で回路不良が検出されなかった個数を歩留りとした。
(2)表面めっき処理での短絡
上記のくし型パターンに、無電解ニッケル/無電解金めっき処理した。10個のテストパターンにおいて、10個評価した中で導体線間に短絡が未発生の場合を○、短絡が一箇所でも発生した場合を×とした。
(3)高温高湿絶縁信頼性試験
フィリップチップ実装用のパッドピッチ0.5mm、7×7のフルグリッドアレイ回路基板を最小L/S=40μm/40μmで作製した。金属層をドライエッチングした後、所定の箇所に開口部を設けて永久レジストを被覆し、永久レジストの開口部に無電解ニッケル/無電解金めっき処理した後、TEG部品をベアチップ実装し半導体装置とした。この半導体装置について、高温高湿絶縁信頼性試験を温度130℃、湿度85%の雰囲気下で印加電圧DC1.95Vの条件下で実施した。200時間経過後に導通抵抗1×10Ω以上を保持しているか確認した。導通抵抗1×10Ω以上の場合を○、導通抵抗1×10Ω以下の場合を×とした。
【0033】
表から明らかなように、実施例ではくし型パターンの歩留りが98%であったのに対し比較例は51%となった。また、表面めっき処理を行った結果、実施例では導体線間の金属残渣による短絡は見られなかったが比較例では短絡が発生した。また、高温高湿絶縁信頼性試験では実施例で導通抵抗1×10Ω以上を保持したが、比較例では1×10Ω以上を保持できなかった。
【符号の説明】
【0034】
10 積層板
11、13 回路基板
101 金属層
105 基材
21 レジスト
22 レジスト反応部
31 導体部
33 レジスト残渣
34 金属層残渣
50 プラズマ照射

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に金属層が形成された積層板を用意する工程と、
前記金属層の表面に開口部を設けたレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の前記開口部にめっきにより導体部を形成する工程と、
前記レジスト層を剥離液により除去する工程と、
前記レジスト層を剥離液により除去することにより露出する前記金属層をドライエッチングにより除去する工程と、を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記ドライエッチングは、反応性イオンエッチングである請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記反応性イオンエッチングは、プラズマによりガスをイオン化およびラジカル化する請求項1または2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記ガスは、アルゴン、酸素、フッ素系ガスまたはその混合ガスを用いる請求項3に記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記金属層は、スパッタリング法により形成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記金属層は、湿式めっき法により形成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記金属層は、極薄金属箔である請求項1ないし4のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかの方法で得られた回路基板。
【請求項9】
請求項8に記載の回路基板に電子部品を搭載した半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−187462(P2011−187462A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47639(P2010−47639)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】