説明

回路基板用樹脂シート、回路基板用シート、及びディスプレイ用回路基板

【課題】ディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために回路チップが埋め込まれた回路基板を、品質よく、高い生産性のもとで効率的に作製するためのディスプレイ用の回路基板用樹脂シート、回路基板用シート及びディスプレイ用回路基板を提供する。
【解決手段】回路チップを埋め込むためのエネルギー線硬化型高分子材料から得られた回路基板用樹脂シートであって、エネルギー線照射による硬化前の二重結合濃度が、4.5〜25mmol/gである回路基板用樹脂シート、この樹脂シートの片面が支持体上に形成されてなる回路基板用シート、及び該回路基板用シートの回路基板用樹脂シート面に、回路チップを埋め込み、これにエネルギー線を照射して硬化させてなるディスプレイ用回路基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用の回路基板用樹脂シート、回路基板用シート及びディスプレイ用回路基板に関する。さらに詳しくは、本発明は、ディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために回路チップが埋め込まれた回路基板を、品質よく、高い生産性のもとで効率的に作製するための硬化物が耐熱性に優れる回路基板用樹脂シート、回路基板用シート及びそれを用いて得られた、回路チップが埋め込まれてなるディスプレイ用回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイで代表される平面ディスプレイにおいては、例えばガラス基板上にCVD法(化学的気相蒸着法)などにより絶縁膜、半導体膜などを順次積層し、半導体集積回路を作製するのと同じ工程を経て、画面を構成する各画素近傍に薄膜トランジスタ(TFT)などの微小電子デバイスを形成し、これにより各画素のオン、オフ、濃淡の制御が行われている。すなわち、ガラス基板上にて、TFTなどの微小電子デバイスをその場で作製しているのである。しかしながら、このような技術においては、工程が多段階で煩雑であってコスト高になるのを免れず、また、ディスプレイ面積が拡大すると、ガラス基板上に膜を形成するためのCVD装置なども大型化し、コストが飛躍的に上昇するなどの問題がある。
そこで、コスト削減を目的として、微小な結晶シリコン集積回路チップを印刷インクのように印刷原板に付着させ、それを印刷技術などの手段により、ディスプレイ用のガラス基板上の所定箇所に移し、固定させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、ガラス基板上に、予め高分子フィルムを形成しておき、これに微小な結晶シリコン集積回路チップを印刷技術などの手段で移し、熱成形や加熱プレスなどの方法により、該チップを高分子フィルムに埋め込むことが行われる。しかしながら、このような方法では、高分子フィルムの歪みや発泡などの不具合が発生しやすい上、加熱に時間がかかるため効率的ではない。
【0003】
また、前記高分子フィルムの代わりにエネルギー線硬化型高分子材料からなる回路基板用樹脂シートを用いて、回路チップ埋め込み時及び埋め込み後のそれぞれの貯蔵弾性率を所定範囲にコントロールすることにより、加熱を行なわなくても回路チップ埋め込みが可能な回路基板用シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
このような回路基板用樹脂シートを用いることにより、回路チップが埋め込まれたディスプレイ用回路基板を、高い生産性のもとで効率よく作製することができる。しかしながら、これまでのエネルギー線硬化型高分子材料からなる樹脂シートの硬化物は、耐熱性については必ずしも十分に満足し得るものではなく、回路チップが埋め込まれた該硬化物の上に形成される配線にクラックが入る場合があるなどの問題を有している。
【特許文献1】特開2003−248436号公報
【特許文献2】特開2006−323335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、ディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために回路チップが埋め込まれた回路基板を、品質よく、高い生産性のもとで効率的に作製するための硬化物が耐熱性に優れる回路基板用樹脂シート、回路基板用シート及びそれを用いて得られた、回路チップが埋め込まれてなるディスプレイ用回路基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、回路基板用樹脂シートとして、エネルギー線硬化型高分子材料から得られたものを用い、かつ上記樹脂シートのエネルギー線照射による硬化前の二重結合濃度を、特定の範囲にすることにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]回路チップを埋め込むためのエネルギー線硬化型高分子材料から得られた回路基板用樹脂シートであって、エネルギー線照射による硬化前の二重結合濃度が、4.5〜25mmol/gであることを特徴とする回路基板用樹脂シート、
[2]エネルギー線照射による硬化後の150℃における貯蔵弾性率E'が、1.0×108Pa以上である上記[1]項に記載の回路基板用樹脂シート、
[3]上記[1]又は[2]項に記載の回路基板用樹脂シートの片面が支持体上に形成されていることを特徴とする回路基板用シート、及び
[4]上記[3]項に記載の回路基板用シートの回路基板用樹脂シート面に、回路チップを埋め込み、これにエネルギー線を照射して硬化させたことを特徴とするディスプレイ用回路基板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、回路チップを埋め込むためのエネルギー線硬化型高分子材料から得られた回路基板用樹脂シートとして、硬化前の二重結合濃度がある範囲にあるものを用いることにより、充分な耐熱性を有する回路チップが埋め込まれた回路基板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、本発明の回路基板用樹脂シートについて説明する。
[回路基板用樹脂シート]
本発明の回路基板用樹脂シートは、回路チップを埋め込むためのエネルギー線硬化型高分子材料から得られた回路基板用樹脂シートであって、エネルギー線照射による硬化前の二重結合濃度が、4.5〜25mmol/gであることを特徴とする。
前記二重結合濃度が4.5mmol/g未満では、当該回路基板用樹脂シートの硬化物が耐熱性の不充分なものとなり、その結果、回路チップが埋め込まれた回路基板の上に形成される配線にクラックが入る場合がある。一方、前記二重結合濃度が25mmol/gを超える回路基板用樹脂シートを作製するにはシート中の低分子量成分であるモノマーやオリゴマーの量を多くしなければならず、硬化前のシートが変形しやすくなる。前記二重結合濃度は、好ましくは5〜20mmol/gであり、より好ましくは6〜15mmol/gである。なお、本発明の回路基板用樹脂シートを用いると、配線にクラックが入ることを防止できる理由は明らかではないが回路基板用樹脂シートの硬化物の温度変化(配線形成時は150℃以上、配線形成後は室温まで降温)に伴う伸縮が抑制されるからと推測される。
なお、前記二重結合濃度は、下記のようにして測定された値である。
<二重結合濃度の測定法>
回路基板用樹脂シート中の二重結合濃度は、1H−NMR測定により行う。内部標準物質としてヘキサメチルジシロキサンを用いて、内部標準物質および該当する紫外線硬化前の回路基板用樹脂シートをmg単位まで秤量する。それを重水素化クロロホルム又は重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させて1H−NMR測定を行い、得られたスペクトルから二重結合の官能基のmmol数を求める。この値を、回路基板用樹脂シートの質量で割ることで、二重結合濃度(mmol/g)を求める。
本発明においては、前記二重結合濃度は、後で説明するように、エネルギー線硬化型高分子材料に含まれる重合性オリゴマーの中の多官能重合性オリゴマーや、重合性モノマーの中の多官能重合性モノマーの種類、及び量などによって制御することができる。
【0008】
また、本発明の回路基板用樹脂シートにおいては、エネルギー線照射による硬化後の150℃における貯蔵弾性率E'が、1.0×108Pa以上であることが好ましい。この貯蔵弾性率E'が1.0×108Pa以上であれば、当該樹脂シートは、エネルギー線照射による硬化後の耐熱性に優れたものになり、その表面に例えばスパッタリング法などによる配線形成が可能となる。
前記150℃における貯蔵弾性率E'の上限に特に制限はないが、通常1.0×1012Pa程度である。より好ましい貯蔵弾性率E'は1.0×108〜1.0×109Paである。
該貯蔵弾性率E'は、前述した二重結合濃度が4.5mmol/g以上であると、通常1.0×108Pa以上となる。
なお、前記貯蔵弾性率E'は、下記のようにして測定された値である。
<貯蔵弾性率E'の測定法>
回路基板用樹脂シートに、フュージョンHバルブを光源とする紫外線を、照度400mW/cm2、光量300mJ/cm2の条件で25℃にて照射して硬化させたのち、初期温度を15℃、昇温速度3℃/minで150℃まで昇温させ、動的弾性率測定装置[TAインスツルメント社製、機種名「DMA Q800」]により、周波数11Hzにて150℃における貯蔵弾性率E'を測定する。
【0009】
<エネルギー線硬化型高分子材料>
本発明において、エネルギー線硬化型高分子材料とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋する高分子材料を指す。
本発明で用いる前記エネルギー線硬化型高分子材料としては、例えば(1)アクリル系重合体とエネルギー線硬化型重合性オリゴマー及び/又は重合性モノマーと所望により光重合開始剤を含む高分子材料、(2)側鎖に重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型アクリル系重合体と所望により光重合開始剤を含む高分子材料などを挙げることができる。
前記(1)の高分子材料において、アクリル系重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの重合体や、(メタ)アクリル酸エステルと所望により用いられる活性水素をもつ官能基を有する単量体及び他の単量体との共重合体、すなわち(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を好ましく挙げることができる。本発明において、「(メタ)アクリル酸・・・」とは「アクリル酸・・・」及び「メタクリル酸・・・」の両方を意味する。
【0010】
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、所望により用いられる活性水素をもつ官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中、(メタ)アクリル酸エステル単位は5〜100質量%、好ましくは50〜95質量%含有され、活性水素をもつ官能基を有する単量体単位は0〜95質量%、好ましくは5〜50質量%含有される。
【0011】
また、所望により用いられる他の単量体の例としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中、これらの単量体単位は、0〜30質量%含有することができる。
該高分子材料において、アクリル系重合体として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、重量平均分子量で30,000以上が好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
本発明においては、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
また、エネルギー線硬化型重合性オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
本発明においては、回路基板用樹脂シート中の二重結合濃度、及びエネルギー線硬化後の該樹脂シートの150℃における貯蔵弾性率E'が、前述した所定の範囲になるようにするには、上記重合性オリゴマーとしては、側鎖に重合性基を多く有する高分岐オリゴマーが好ましく、例えば高分岐ポリオール(メタ)アクリレートなどが好適である。
上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリスチレン換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
この重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
一方、エネルギー線硬化型重合性モノマーとしては、上記と同様の理由から、多官能性(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。この多官能性(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールアジペートエステル、ジ(メタ)アクリル酸ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ジ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジシクロペンテニル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンオキシド変性リン酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸アリル化シクロヘキシル、ジ(メタ)アクリル酸イソシアヌレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステル、トリ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパンエステル、イソシアヌル酸トリス(アクリロキシエチル)、ペンタ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールエステル、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ヘプタ(メタ)アクリル酸トリペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの重合性モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの重合性オリゴマーや重合性モノマーの使用量は、硬化前の回路基板用樹脂シート中の二重結合濃度が、前述の範囲にあるように、また、好ましくはエネルギー線の印加により、硬化後の回路基板用樹脂シートの150℃における貯蔵弾性率E'が、1.0×108Pa以上になるように選定されるが、通常(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の固形分100質量部に対し、3〜400質量部配合することができる。
【0014】
また、エネルギー線として、通常紫外線又は電子線が照射されるが、紫外線を照射する際には、光重合開始剤を用いることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン]などが挙げられる。これらは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
配合量は、上述のエネルギー線硬化型高分子材料の固形分100質量部に対し、通常0.1〜10質量部である。
【0015】
次に、前記(2)の高分子材料において、側鎖に重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型アクリル系重合体としては、例えば前述の(1)の高分子材料において説明したアクリル系重合体のポリマー鎖に−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの活性点を導入し、この活性点と重合性不飽和基を有する化合物を反応させて、該アクリル系重合体の側鎖に重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型官能基を導入してなるものを挙げることができる。
アクリル系重合体に前記活性点を導入するには、該アクリル系重合体を製造する際に、−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの官能基と、重合性不飽和基とを有する単量体又はオリゴマーを反応系に共存させればよい。
具体的には、前述の(1)の高分子材料において説明したアクリル系重合体を製造する際に、−COOH基を導入する場合には(メタ)アクリル酸などを、−NCO基を導入する場合には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナートなどを、エポキシ基を導入する場合には、(メタ)アクリル酸グリシジルなどを、−OH基を導入する場合には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、モノ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステルなどを、−NH2基を導入する場合には、N−メチル(メタ)アクリルアミドなどを用いればよい。
【0016】
これらの活性点と反応させる重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸グリシジル、モノ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、モノ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、モノ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステルなどの中から、活性点の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。
このようにして、アクリル系重合体の側鎖に、前記活性点を介して重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型官能基が導入されてなるアクリル系重合体が得られる。
このエネルギー線硬化型アクリル系重合体は、重量平均分子量が30,000以上のものが好ましく、特に50,000以上のものが好ましい。なお、上記重量平均分子量は、GPC法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
また、所望により用いられる光重合開始剤としては、前述の(1)の高分子材料の説明において例示した光重合開始剤を用いることができる。
【0017】
本発明においては、得られる回路基板用樹脂シートのエネルギー線による硬化時の体積収縮を抑え、かつ耐熱性を向上させるなどの目的で、当該エネルギー線硬化型材料に無機微粒子を含有させることができる。
前記無機微粒子としては、例えば珪素、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、鉄などの各種金属元素の酸化物や炭化物などを用いることができるが、これらの中で、体積収縮の抑制効果、透光性、経済性などのバランスの観点から、シリカ系微粒子が好ましい。
本発明においては、この無機微粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その平均粒子径は、透明性、均一分散性、体積収縮の抑制効果などの観点から、3〜50nmの範囲が好ましく、5〜30nmの範囲がより好ましい。なお、本発明における平均粒子径はBET法による算出値に基づくものである。
シリカ系微粒子を用いる場合、シリカ系微粒子がアルコール系やセロソルブ系などの有機溶媒中に分散しているオルガノシリカゾルが好適である。
本発明においては、当該無機微粒子は、二次凝集を抑制し、エネルギー線硬化型高分子材料中に均質に分散させるために、表面修飾処理が行われた無機微粒子を用いてもよい。表面修飾処理方法としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えば有機シラン化合物を用いる方法や界面活性剤を用いる方法などを挙げることができ、無機微粒子の種類とエネルギー線硬化型高分子材料の種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、無機微粒子としてシリカ系微粒子を用いる場合には、有機シラン化合物を用いて表面修飾処理を行うのが有利であり、シリカ系微粒子以外の無機微粒子の場合には、界面活性剤を用いて表面修飾を行うのが有利である。
【0018】
前記の(1)及び(2)のエネルギー線硬化型高分子材料においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤などを添加することができる。
前記架橋剤としては、例えばポリイソシアナート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアナート化合物が好ましく用いられる。この架橋剤は、上述の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の固形分100質量部に対して、0〜30質量部配合することができる。
ここで、ポリイソシアナート化合物の例としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナートなどの脂環式ポリイソシアナートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。これらの架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、前記の(1)及び(2)のエネルギー線硬化型高分子材料は、回路基板用樹脂シート中の二重結合濃度、及びエネルギー線硬化後の該樹脂シートの貯蔵弾性率E'を制御するために、(1)のエネルギー線硬化型高分子材料に対し(2)の側鎖に重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型アクリル系重合体を加えることができる。同様に(2)のエネルギー線硬化型高分子材料に対し(1)のアクリル系重合体、又はエネルギー線硬化型重合性オリゴマーやエネルギー線硬化型重合性モノマーを加えることができる。
【0019】
(回路基板用樹脂シートの製造方法)
以下に、本発明の回路基板用樹脂シートを製造する方法を例示する。ただし、本発明はこれにより特に制限されるものではない。
剥離シートの剥離剤層上に、前記エネルギー線硬化型高分子材料を含む適当な濃度に調整された塗工液を、公知の方法、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより、所定の厚さになるように塗布・乾燥することによって回路基板用樹脂シートが形成される。前記剥離シートは回路基板用樹脂シートの保管や保護のため積層されたままであってもよい。さらに、回路基板用樹脂シートの他方の面には、前記剥離シートとは剥離力の異なる剥離シートが積層されてもよいし、積層されずに後述する回路基板用シートの作製にそのまま使用されてもよい。
ここで、回路基板用樹脂シートの厚さは、その使用条件にもよるが、通常50〜1000μm程度であり、好ましくは80〜500μmである。なお、回路基板用樹脂シートの厚さを厚くする場合、前記回路基板用樹脂シートの製造方法により作製した樹脂層を複数枚積層することにより所定の厚さの回路基板用樹脂シートとすることができる。
前記剥離シートとしては、特に制限はないが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムにシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布して剥離剤層を設けたものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さは、通常20〜150μm程度である。
【0020】
[回路基板用シート]
次に、本発明の回路基板用シートについて説明する。本発明の回路基板用シートは、前記回路基板用樹脂シートの片面が支持体上に形成された構成からなる。該回路基板用樹脂シートの好ましい配合等の構成は、前記のとおりである。
一方、支持体については特に制限はなく、通常ディスプレイ用支持体として使用されている透明支持体の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような支持体としてはガラス基板、あるいは板状又はフィルム状のプラスチック支持体などを挙げることができる。ガラス基板としては、例えばソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などからなる支持体を用いることができる。一方板状又はフィルム状のプラスチック支持体としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルフィド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂などからなる支持体を用いることができる。これらの支持体の厚さは、用途に応じて適宜選定されるが、通常20μm〜5mm程度、好ましくは50μm〜2mmである。
【0021】
(回路基板用シートの製造方法)
この回路基板用シートを製造する方法について以下に例示する。ただし、本発明は、これにより特に制限されるものではない。
第1の方法としては、前記回路基板用樹脂シートの両側に剥離シートが積層されている場合、まず、軽剥離型剥離シートを剥がし、その剥がした面を前記支持体と貼り合わせることにより回路基板用シートを作製する。
第2の方法としては、剥離シート上に前記の方法により回路基板用樹脂シートを作製し、その後、直接支持体と貼り合わせることにより回路基板用シートを作製する。
第3の方法としては、前記支持体上に直接、前記塗工液を、公知の方法、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより、所定の厚さになるように塗布・乾燥することによって回路基板用樹脂シートを形成することによって、回路基板用シートを直接作製する。
第1の方法は、ガラス基板のような剛性の支持体を使用する場合に好ましく、第2、第3の方法は、フィルム状プラスチックのような支持体に好ましい。
【0022】
[ディスプレイ用回路基板]
本発明のディスプレイ用回路基板は、前記のようにして得られた回路基板用シートの回路基板用樹脂シート面に、回路チップを埋め込み、これにエネルギー線を照射して硬化させることにより、作製することができる。
具体的な方法について説明すると、剥離シート上などに被埋め込み回路チップを置き、その上に回路基板用シートを回路基板用樹脂シート面(回路基板用樹脂シートが剥離シートと貼り合わされている場合は予め剥がして使用する)が該回路チップに接するように載置し、0.05〜2.0MPa程度の荷重下に該チップを、好ましくは0〜150℃、より好ましくは5〜100℃の温度で埋め込み、エネルギー線を照射して回路基板用樹脂シートを硬化させたのち、前記回路チップを置いていた剥離シートを剥離することにより、本発明のディスプレイ用回路基板が得られる。なお、加熱して回路チップを埋め込んだ場合には、エネルギー線の照射は、回路基板用樹脂シートが加熱された状態で行ってもよいし、室温に冷却されてから行ってもよい。
エネルギー線としては、通常紫外線又は電子線が用いられる。紫外線は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプなどで得られ、一方、電子線は電子線加速器などによって得られる。このエネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。このエネルギー線の照射量としては、硬化した硬化層の貯蔵弾性率が前述の範囲になるように、適宜選択されるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜5000mJ/cm2が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0023】
図1は、本発明の回路基板用シートを用いて、回路チップを埋め込む方法の1例を示す工程説明図である。
まず、支持体1上に、未硬化状態のエネルギー線硬化型高分子材料から得られた本発明の回路基板用樹脂シート2を用意すると共に、剥離シート4上に回路チップ3を置く[(a)]。次いで、回路基板用樹脂シート2を、回路チップ3に接するように載置し、荷重下に該チップを埋め込み、エネルギー線を照射して硬化させる[(b)]。この操作により、未硬化状態の回路基板用樹脂シート2は硬化層となり、その中に回路チップ3が埋め込まれ、固定されると共に、本発明のディスプレイ用回路基板5が、剥離シート4から容易に剥離される[(c)]。なお、回路チップ3を回路基板用樹脂シート2の上に置いて同様にして荷重下に埋め込みを行ってもよい。
このような方法によれば、高分子フィルムを加熱して回路チップを埋め込むのではなく、エネルギー線硬化型高分子材料を用いて、回路チップを埋め込み、その後硬化することにより、回路チップを固定化するため、高分子フィルムを用いる場合の不具合も生じにくく、操作時間も短縮でき、効率的である。
本発明においては、このような方法に適し、さらに、埋め込み性も優れると共に、高い耐熱性を有する、回路チップが埋め込まれたディスプレイ用回路基板を提供することができる。
【0024】
(配線形成)
このようにして、回路チップが埋め込まれ、硬化処理されて固定化されてなるディスプレイ用回路基板は、通常その表面に配線(回路)が形成されている。
この配線形成の方法に特に制限はなく、従来行われている方法の中から、任意の方法を適宜選択して実施することができる。例えばフォトリソグラフィー技術を用いて配線形成を行うことができる。その1例を示すと、回路チップが埋め込まれ、硬化処理されてなる回路基板用シート上に、まずポジ型又はネガ型のフォトレジスト液を塗布し、フォトレジスト層を形成する。次いで、所定のマスクパターンを介して、上記フォトレジスト層を露光したのち、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などのアルカリ現像液を用いて現像処理し、レジストパターンを形成させる。
次に、例えば配線材料としてのクロムターゲットを用いたスパッタリングなどによって、上記レジストパターン上に、所定の厚さのクロム膜を形成したのち、この回路基板用シートをエタノールなどのエッチング液に浸漬して、レジストのエッチングを行うことにより、所望のクロム配線を形成することができる。
本発明においては、回路基板用樹脂シートとして、その硬化物が耐熱性に優れるものを用いているため、この配線形成において、配線にクラックが入るなどの不具合を防止することができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法により評価した。
(1)回路基板用樹脂シートの二重結合濃度
明細書本文に記載の方法に従って測定する。ただし、シートの溶解性の点から溶剤として、実施例1〜5は重水素化クロロホルムを用い、実施例6〜8は重水素化ジメチルスルホキシドを用いた。また、1H−NMR測定には、ブルカーバイオスピン社製「AVANCE500」を用いて、周波数500Hzの条件で測定した。
(2)紫外線硬化後の回路基板用樹脂シートの150℃における貯蔵弾性率E'
明細書本文に記載の方法に従って測定する。
紫外線硬化については、特に断りがない限り、フュージョンHバルブを光源とする紫外線(照度条件:400mW/cm2、光量条件:300mJ/cm2)を照射することによって未硬化層の硬化を行った。
(3)紫外線硬化後の回路基板用樹脂シートの耐熱性
紫外線硬化後の回路基板用樹脂シートに、クロムターゲットを用いてスパッタリングにより、厚さ25nmのクロム膜(Cr膜)を形成した。
スパッタリングは、スパッタリング装置[キヤノンアネルバ社製、機種名「L−250S−FH」]を用い、アルゴンガス下で製膜圧力1Pa、電力25Wで行った。
(a)クラックの有無
クロム膜表面の任意の10点についてデジタル顕微鏡[キーエンス社製、商品名「デジタルマイクロスコープVHX−200」]を用いてクラックの有無を観察した。
評価基準
○:クラックはみられなかった。
×:クラックがみられた。
(b)クロム膜表面の任意の5ヶ所について抵抗値を測定し、その平均値を抵抗値とした。各測定点での2点間距離は5cmとし、測定にはテスター[三菱化学社製、機種名「ロレスタMCP−T600」]を用いた。
【0026】
実施例1
重量平均分子量10万のポリ(メタクリル酸メチル)(以下PMMA)固形分100質量部に対して、高分岐ポリオールアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「A−HBR−5」]固形分200質量部と、光重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」、以下光開始剤Aとする。]固形分6質量部を溶解させ、最後にメチルエチルケトンを加えて固形分濃度を50質量%に調整し、均一な溶液となるまで撹拌して塗工液とした。
調製した塗工液をナイフコーターによって、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層が設けられた重剥離型剥離シート[リンテック社製、商品名「PLR382050*」]の剥離処理面に塗布し、100℃で90秒間加熱乾燥させ、厚さ50μmのエネルギー線硬化型高分子材料からなる未硬化層を形成した。同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層が設けられた軽剥離型剥離シート[リンテック社製、商品名「PET3801」]の剥離処理面に厚さ50μmのエネルギー線硬化型高分子材料からなる未硬化層を形成した。これを、ラミネーターを用いて積層することで厚さ100μmの未硬化層を形成し、回路基板用樹脂シートを作製した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0027】
実施例2
高分岐ポリオールアクリレートに代えて、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート[新中村化学工業社製、商品名「NK Ester9300−1CL」]を用いた以外、実施例1と同様にして回路基板用樹脂シートを作製した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
実施例3
高分岐ポリオールアクリレートに代えて、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「A−DCP」]を用いた以外、実施例1と同様にして回路基板用樹脂シートを作製した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0028】
実施例4
高分岐ポリオールアクリレートに代えて、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「A−DCP」]固形分150質量部とビスフェノールA型エポキシアクリレート[共栄社化学社製、商品名「エポキシエステル3002A」]固形分50質量部との混合物を用いた以外、実施例1と同様にして回路基板用樹脂シートを作製した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
実施例5
高分岐ポリオールアクリレートに代えて、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート[東亜合成社製、商品名「アロニックスM−315」]を用いた以外、実施例1と同様にして回路基板用樹脂シートを作製した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0029】
実施例6
メタクリル酸メチル(以下MMA)75質量部とメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下HEMA)25質量部からなるメタクリル酸エステル共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度35質量%)に、共重合体中のHEMA100当量に対し80当量の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートを添加し、窒素雰囲気下、40℃で48時間反応させて側鎖に重合性不飽和基を有する重量平均分子量15万のエネルギー線硬化型アクリル系重合体を得た。得られたエネルギー線硬化型アクリル系共重合体の固形分100質量部に対して高分岐ポリオールアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「A−HBR−5」前出]固形分200質量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」、以下光開始剤Bという]固形分6質量部、及びポリイソシアナート化合物からなる架橋剤[三井武田ポリウレタン社製、商品名「タケネートD−140N」、以下架橋剤aという]固形分1.5質量部を添加し、さらにメチルエチルケトンを加えて固形分濃度40質量%の塗工液を得た。この塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして回路基板用樹脂シートを作製した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0030】
実施例7
実施例6のメタクリル酸エステル共重合体のメチルエチルケトン溶液の固形分100質量部に対し、高分岐ポリオールアクリレート[商品名「A−HBR−5」、前出]固形分200質量部、光開始剤B固形分6質量部、及び架橋剤a固形分1.5質量部を添加し、さらにメチルエチルケトンを加えて固形分濃度40質量%の塗工液を得た。得られた塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして回路基板用樹脂シートを作製した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0031】
実施例8
アクリル酸ブチル25質量部とメタクリル酸メチル50質量部とアクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下HEA)25質量部からなる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度40質量%)に、共重合体中のHEA100当量に対し80当量の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートを添加し、窒素雰囲気下、40℃で48時間反応させて側鎖に重合性不飽和基を有する重量平均分子量が25万のエネルギー線硬化型アクリル系重合体を得た。得られたエネルギー線硬化型アクリル系重合体の固形分100質量部に対して高分岐ポリオールアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「A−HBR−5」前出]固形分200質量部、光重合開始剤A固形分6質量部及び架橋剤a固形分1.8質量部を添加し、さらにメチルエチルケトンを加えて固形分を40質量%の塗工液を得た。この塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして回路基板用樹脂シートを作製した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0032】
比較例1
高分岐ポリオールアクリレートに代えて、ポリカーボネート骨格ウレタンアクリレート[日本合成化学社製、商品名「UV−6010EA」]を用いた以外、実施例1と同様にして未硬化層を形成した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
比較例2
高分岐ポリオールアクリレートに代えて、ポリカーボネート骨格ウレタンアクリレート[日本合成化学社製、商品名「UV−6020EA」]を用いた以外、実施例1と同様にして未硬化層を形成した。
このようにして得られた回路基板用樹脂シートについて、二重結合濃度、紫外線硬化後の150℃における貯蔵弾性率及び紫外線硬化後の耐熱性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
[注]
PMMA:ポリ(メタクリル酸メチル)
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸ブチル
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
MOI:2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート
A−HBR−5:高分岐ポリオールアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「A−HBR−5」]
9300−1CL:カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート[新中村化学工業社製、商品名「NK Ester9300−1CL」]
A−DCP:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート[新中村化学工業社製、商品名「A−DCP」]
3002A:ビスフェノールA型エポキシアクリレート[共栄社化学社製、商品名「エポキシエステル3002A」]
M−315:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート[東亜合成社製、商品名「アロニックスM−315」]
UV−6010EA:ポリカーボネート骨格ウレタンアクリレート[日本合成化学社製、商品名「UV−6010EA」]
UV−6020EA:ポリカーボネート骨格ウレタンアクリレート[日本合成化学社製、商品名「UV−6020EA」]
光開始剤A:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]
光開始剤B:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」]
架橋剤a:ポリイソシアナート系架橋剤[三井武田ポリウレタン社製、商品名「タケネートD−140N」]
【0035】
第1表から分かるように、二重結合濃度が4.5mmol/gを超える実施例1〜8は、エネルギー線硬化後の150℃における貯蔵弾性率E'が、いずれも1.0×108Paを超えており、クロム膜にクラックがみられず、抵抗値は低い値であった。
これに対して、二重結合濃度が4.5mmol/g未満である比較例1〜2は、エネルギー線硬化後の150℃における貯蔵弾性率E'が、いずれも1.0×108Pa未満であり、クロム膜にクラックが発生し、抵抗値は高い値であった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の回路基板用樹脂シートは、その硬化物が耐熱性に優れており、ディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために回路チップが埋め込まれた回路基板を、品質よく、高い生産性のもとで効率的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の回路基板用樹脂シートを用いて、回路チップを埋め込む方法の1例を示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 支持体
2 回路基板用樹脂シート
3 回路チップ
4 剥離シート
5 ディスプレイ用回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路チップを埋め込むためのエネルギー線硬化型高分子材料から得られた回路基板用樹脂シートであって、エネルギー線照射による硬化前の二重結合濃度が、4.5〜25mmol/gであることを特徴とする回路基板用樹脂シート。
【請求項2】
エネルギー線照射による硬化後の150℃における貯蔵弾性率E'が、1.0×108Pa以上である請求項1に記載の回路基板用樹脂シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路基板用樹脂シートの片面が支持体上に形成されていることを特徴とする回路基板用シート。
【請求項4】
請求項3に記載の回路基板用シートの回路基板用樹脂シート面に、回路チップを埋め込み、これにエネルギー線を照射して硬化させたことを特徴とするディスプレイ用回路基板。

【図1】
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【公開番号】特開2009−180880(P2009−180880A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18903(P2008−18903)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】