回路基板用電気コネクタ
【課題】平型導体の抜けの防止を確実とする回路基板用電気コネクタを提供することを課題とする。
【解決手段】回路基板上に配され、挿入された平型導体を回路基板と電気的に接続する電気コネクタにおいて、ロック金具30は、下腕部32が後部に、ロック部31Aと上下方向で対向して上方へ向けて突出する係止突起を有しており、可動部材60が閉位置にあるとき、平型導体Fの側縁に被係止部F2として形成された切欠凹部に、上記ロック部31Aが上方からそして上記係止突起が下方から突入して、上記ロック金具30が上記被係止部F2と前後方向で係止可能となる。
【解決手段】回路基板上に配され、挿入された平型導体を回路基板と電気的に接続する電気コネクタにおいて、ロック金具30は、下腕部32が後部に、ロック部31Aと上下方向で対向して上方へ向けて突出する係止突起を有しており、可動部材60が閉位置にあるとき、平型導体Fの側縁に被係止部F2として形成された切欠凹部に、上記ロック部31Aが上方からそして上記係止突起が下方から突入して、上記ロック金具30が上記被係止部F2と前後方向で係止可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタにあっては、回路基板の面に平行な状態でFPC等の平型導体が挿入され接続される。該平型導体は、一般に、その側縁に耳状あるいは孔状の被係止部が形成されていて、コネクタのロック金具のロック部が上記被係止部に係止して、平型導体の不用意な抜けを防止している。
【0003】
特許文献1では、端子(コンタクト)とほぼ同様な、連結部で連結された上腕部と下腕部とを有する横H字状のロック金具(ロック部材)が設けられていて、該ロック金具の上腕部は、連結部よりも平型導体の挿入側となる後方へ水平に延びていてその後部に爪状のロック部(係合部)が形成されている。該ロック部は、平型導体の方に向け下方へ突出する略逆三角形状をなしており、コネクタの使用時に、可動部材(スライダ)が平型導体を端子の接触部へ圧する閉位置へ移動すると、上記ロック金具の上腕部がその前部で可動部材のカム部によってもち上げられ、梃子の原理で、上腕部の後部が下方に傾き、したがって、ロック部が下方へ変位する。その結果、上腕部と下腕部の間に挿入された平型導体に切欠部あるいは孔部として形成された被係止部へ上方から上記ロック部が該被係止部の前縁と係止し、平型導体が不用意に抜けることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−221067
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコネクタにあっては、平型導体の不用意な抜けを防止するために、該平型導体の被係止部に係止するのは、ロック金具のロック部のみであり、しかも、該ロック部は平型導体の面に対して上方から、すなわち一方の側から上記被係止部に係止する。しかし、上記ロック部は略逆三角形をなしている。したがって、平型導体が端子の接触部と所定の接圧をもって正規の接続状態にあるにも拘らず、平型導体を強く抜出方向に引いた場合、平型導体の被係止部は上記略逆三角形のロック部の前部斜縁へ抜出方向の力をもたらす。この力は、前部斜縁で上方への分力を生ずる結果、ロック金具の上腕部の後部を上方へ戻すようにして、該後部すなわちロック部の変位の量を減少させる。すなわち、ロック部は被係止部との係止量を減じ、あるいは外されていまい、不用意な平型導体の抜けという事態が生じてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、ロック金具を用いた回路基板用電気コネクタにおいて、平型導体の正規の接続状態のもとで、平型導体の抜出方向に不用意に強い力が作用しても、ロック部が被係止部との係止量を常に大きく保ち、又は、該被係止部を補強して係止状態が変らないようにすることで、抜け防止をさらに確実に実現できる回路基板用電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板上に配され、挿入された平型導体を回路基板と電気的に接続する電気コネクタであって、金属板の平坦な板面を維持して作られていて平型導体と接触する接触部、回路基板に接続される接続部、平型導体を圧する押圧部、該押圧部を押圧方向に変位させるための力を受ける被圧部が設けられ、上記板面に直角方向に配列された複数の端子と、端子と同様に金属板の平坦な板面を維持して作られていて平型導体と係止してロックするロック部、該ロック部を変位させるための力を受ける被圧部が設けられ、上記端子と板面が平行となるように配置されたロック金具と、挿入された平型導体の接続部分を受け入れる受入空間が形成され上記接触部が平型導体と接触する位置に上記端子を保持しそしてロック金具を保持するハウジングと、上記端子及びロック金具の被圧部に力を加えるための加圧部が設けられていて、平型導体の挿入を可能とする開位置と平型導体を端子の接触部へ圧すると共にロック部をロック位置へもたらす閉位置との間を移動可能な可動部材とを有し、上記端子そしてロック金具は平型導体の挿入方向を長手方向として延びる上腕部と下腕部がそれらの長手方向中間位置で連結部により連結されて形成され、端子は、上腕部が連結部よりも平型導体の挿入方向先方の前部に被圧部をそして後部に押圧部を有し、ロック金具は上腕部が前部に被圧部そして後部に突起状のロック部を有している。
【0008】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、上記ロック金具は、下腕部が後部に、上記ロック部と上下方向で対向して上方へ向けて突出する係止突起を有しており、上記可動部材が閉位置にあるとき、平型導体の側縁に被係止部として形成された切欠凹部に、上記ロック部が上方からそして上記係止突起が下方から突入して、上記ロック金具が上記被係止部と前後方向で係止可能となることを特徴としている。
【0009】
このような構成の本発明にあっては、平型導体が載置面上で所定位置まで挿入されると、該平型導体の被係止部は、ハウジングに保持されたロック金具に形成された係止突起に対して前方位置で上下方向すなわち、平型導体の厚み方向で該係止突起との重複範囲を有している。つまり、平型導体の被係止部に対して、上方からロック金具のロック部が突入し、下方からは該ロック金具の係止突起が突入する。
【0010】
このように、上記被係止部に対して、ロック部と係止突起が上下から突入するので、平型導体が上下のいずれの方向にずれても該平型導体の抜出方向でのロック金具との係止が維持される。しかも、平型導体は端子の押圧部で下方に圧せられているので、ずれはロック金具の係止突起との重複範囲に留まり、又、平型導体への力が上方への成分を伴っていて平型導体がもち上げられようとしても上記押圧部からの力によりロック金具のロック部が平型導体の被係止部に突入しており、該ロック金具との係止が維持される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明では、ロック金具は、可動部材が閉位置にあるとき、平型導体の被係止部に、ロック部が上方からそして係止突起が下方から突入するので、ロック金具が上記被係止部と前後方向で係止可能となり、平型導体の抜けが確実に防止される。しかも、平型導体は端子の押圧部で下方に圧せられているので、ロック部が形成されているロック金具の上腕部は、平型導体の被係止部がロック金具の係止突起から抜けしかもロック金具のロック部からも外れるような過大な変位を生ずることも阻止されるので、上下からロック部と係止突起が上記被係止部に突入した状態が安定して確保される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態としての回路基板用電気コネクタとこれに挿入される平型導体の一部を示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタについて可動部材が開位置で平型導体が挿入前における断面図であり、(A)は端子配列方向で、二種の端子のうちの一種の端子の位置で、(B)は他種の端子の位置で、そして(C)はロック金具の位置で断面した図である。
【図3】図2(C)の断面図に相当する位置での断面斜視図である。
【図4】図1のコネクタについての端子そしてロック金具の連結部の位置での左端部近傍の横断面図である。
【図5】図4の例についての変形例を示す連結部の位置での横断面図である。
【図6】図4の例についての他の変形例を示す連結部の位置での縦断面図である。
【図7】カム部の原理を示す図で、(A)は図2(A), (B)のカム部についての図、(B)は変形例としてのカム部についての図である。
【図8】図2に対応する図であって、可動部材が開位置で、平型導体の挿入後を示す。
【図9】図2に対応する図であって、平型導体の挿入後に可動部材が閉位置にきたときを示す。
【図10】他の実施形態を示し、コネクタの一部を後方から見たときの一部破断正面図である。
【図11】図10のコネクタの縦断面図であり、(A)は端子配列方向でロック金具の位置、(B)は(A)の位置よりも若干コネクタ側端にずれた位置での断面で示されている。
【図12】さらに他の実施形態を示すロック金具位置での断面図であり、(A)は可動部材が開位置、(B)は閉位置にあるときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の回路基板用電気コネクタ(以下、「コネクタ」)の全体そして該コネクタに接続される平型導体の前端部の接続部分を示す斜視図である。
【0015】
平型導体Fは、その先端部下面で被覆が除去されていて導体部(図示せず)が露呈しており、上面では該導体部よりもさらに前方へコネクタ1に向けて突出するようにシート状の補強材F1が取りつけられている。該補強材F1は、導体部よりも前方における左右の側縁に切欠き状の被係止部F2が形成されている。
【0016】
コネクタ1は、金属板から作られた端子10;20、ロック金具30、これらを保持するハウジング40、そしてハウジング40に回動自在に支持されている可動部材60を有している。
【0017】
端子10;20とロック金具30は共に、金属板の平坦面を維持して作られている。端子は二種の端子10;20から成っていて、これらが端子10;20の板面に直角な方向で交互に位置するように配列されており、同方向で両端に位置する端子10;20に隣接してロック金具30が設けられている。
【0018】
二種の端子10;20は、それぞれの端子10;20での断面図である図2(A),(B)に見られるように、共に横H型をなし、それぞれ横方向に延び上腕部11;21、下腕部12;22そして両腕部をそれらの長手方向中間部で連結する連結部13;23を有している。上腕部11;21は、平型導体Fの挿入方向先方たる前部に、後述の可動部材のカム部で圧せられる被圧部14;24、後部に平型導体を上方から圧する押圧部15;25が形成されている。下腕部12;22の前部には、上記カム部のための支持部16;26そして後部には平型導体の導体部と接触するための接触部17;27が形成されている。さらには、下腕部12;22には、回路基板との半田接続のための接続部18;28が設けられている。
【0019】
以上は、二種の端子10;20についての共通点を述べたが、次に相違点について説明する。
【0020】
端子10の上腕部11は、図2(A)に見られるように、前部の下縁に設けられた被圧部14が凹部をなしており、又、連結部13から後方に長く延びてその後端に突状の押圧部15が設けられている。これに対し、端子20の上腕部21は、図2(B)に見られるように、前部の下縁に設けられた被圧部24は直状縁で形成され、又、連結部23から後方に延びる部分は上記端子10の場合よりも短く、その後端に突状の押圧部25が設けられている。
【0021】
端子10の下腕部12は、図2(A)に見られるように、連結部13から前方に延びハウジング40外へ延出した部分に接続部18が形成されている。接続部18は下方へ凹弯曲した溝状の固定部18Aをも有している。連結部13と接続部18との間の部分には上縁が凹状をなしカム部を収める支持部16が形成されている。これに対し、端子20の下腕部22は、図2(B)に見られるように、連結部23から前方に延びる部分の上縁にほぼ直状縁をなして支持部26が形成され、後方に延びる部分がハウジング40外に延出して、上記端子10の接続部18とほぼ前後対称の形の接続部28そして固定部28Aを有している。この端子20の下腕部22は、前後方向で、連結部23と接続部28の中間部で上腕部21の押圧部25に対応する位置に、突状の接触部27が設けられている。
【0022】
このように形成された二種の端子10;20は、図1に見られるように、端子10が前方からそして端子20が後方からハウジング40へ取りつけられ、交互に配列されている。
【0023】
ロック金具30は、図2(C)そして図3に見られるごとく、端子20に類似する横H型をなしており、端子20と同様に、上腕部31と下腕部32を有し、両者はその長手方向中間部で連結部33により連結されている。このロック金具30は、前部においては、上腕部31も下腕部32も、上記端子20と同じ形態をなしていて、上腕部31の前部には直状縁で被圧部34が、そして下腕部32の前部にはほぼ直状縁の支持部36が形成されている。該ロック金具30の後部は、上記端子20と趣きを異にしている点がある。上腕部31の後部は、長さとしては、端子20よりも長く、端子10とほぼ同じ位であり、後方に延びるロック腕31Aを形成している。そして、その後端には下方に向く比較的大きい突状のロック部35が設けられている。上記ロック腕31Aは後方に向け上方へ傾斜して延びている。該ロック腕31Aは、上記被圧部34が後述の閉位置における可動部材のカム部にて圧せられて上方にもち上げられ変位したときに、梃子の原理で、連結部33を支点として下方へ変位し、その結果、略水平位置にくるようになる。この場合、ロック腕31Aは完全な水平位置でなくとも、多少の傾きが残っていても、実質的に水平状態と言える姿勢となっていれは良い。例えば、可動部材が開位置にあるときに傾斜をもっているロック腕が、可動部材が閉位置にきたときに、その傾斜角を減じて水平位置へ近くなるようになってはいるものの若干の傾きが残っていたり、あるいは水平位置を越えて逆側に若干の傾きを生じていることとしても、その傾斜が小さい場合には、実質的に水平位置と言える。上記ロック腕31Aの後端に設けられた突状のロック部35は、前縁35Aがほぼ垂直縁をなし、後縁35Bが下方に向け前方へ傾斜している。このロック部35は、上腕部31が被圧部34でカム部からの力を受けていない状態で、平型導体Fが挿入されたとき、該平型導体Fの前端縁と干渉するような、高さ方向での位置関係にある。又、上記
下腕部32の後端には、端子20の接続部28と同様な形態の固定脚38が設けられ、そこには、溝状の固定部38Aが形成されている。
【0024】
上述の端子10;20そしてロック金具30を保持するハウジング40は、電気絶縁材から作られていて、図1に見られるように、比較的平坦な略直方体外形をなしており、図2のごとく、前後に(図にて右方そして左方)貫通して端子10;20そしてロック金具30をそれぞれ保持する端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43が形成されている。これらの端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43は、板状の端子10;20そしてロック金具30をこれらの板面と若干の隙間を保ちつつ対面して保持するように、図2にて紙面に直角方向にその板厚に相当する溝幅のスリットとして形成されている。かかる端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43に対して、端子10;20そしてロック金具30は、それらの下縁に形成された突起19;29そして突起39により、溝底に係止し上下縁でしっかりと保持される。又、これらの端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43は、ハウジング40の前部で上方に向け大きく切欠かれた前部空間44に連通されており、さらに前後方向で中間位置から後方に向け形成された平型導体Fのための受入空間としての挿入溝45により連通している。この挿入溝45の形成により、ハウジング40はその上下位置に上壁46そして下壁47を有するようになり、該上壁46そして下壁47の面に端子保持溝41;42が開口溝としての形態をとっている。該上壁46は、ロック金具30の位置では、該ロック金具30のロック腕31Aが進入する溝部48が上下に貫通してスリット状に形成されている。下壁47は端子10に対しては、前端が略テーパ状に薄く形成されていて端子10の溝状の固定部18Aが嵌着する保持部47Aをなし、端子20そしてロック金具30に対しては、後端で同様に形成された、端子20そしてロック金具30のそれぞれの固定部28Aそして38Aのための保持部47Aをなしている。又、上記下壁47にて上方に開口する端子10のための端子保持溝41は、端子10の下腕部12の後部が下方に撓むことを許容するように、その溝底41Bが後方に向けテーパ状に形成されて溝深さを次第に大きくしている。
【0025】
ハウジング40は、図1からも判るように、端子配列方向の両端部で、端子配列範囲を含め両端のロック金具30同士間の範囲における後端縁よりも後方に延出した延出部49が設けられている。この延出部49は、図2に見られるように、後方から見た形状が横U字状をなし、平型導体Fの幅方向両側縁(幅方向で被係止部F2が存在する範囲)を後方から受け入れるように、挿入溝45の幅方向両端部分を形成している。この延出部49は、後方における入口部に上下でテーパの導入面49A;49Bを有している。上記延出部49におけるこの挿入溝45の内側面そして上下内面は、挿入される平型導体Fをその幅方向そして上下方向での位置を規制する規制部50を形成する。又、この規制部50のうちの平型導体の挿入時の載置面と同一レベルにある下内面には、平型導体Fの被係止部F2に係止する突部としての係止突起51が設けられている。該係止突起51は、図1からも判るように、端子配列方向ではロック金具30に対してずれた位置にあり、前後方向では、図2(C)から判るように、ロック金具30のロック部35とほぼ同一位置に設けられている。該係止突起51は縦断面が台形をなしていて、前縁51Aが垂直面をそして後縁51Bがテーパ面となっている。該係止突起51の上面51Cは平坦面であり、可動部材が開位置にあるときを示す図2(C)に見られるようにロック部35の下端よりも下方に位置しているが、可動部材が閉位置にくることによりロック部35が下方に変位したときには、このロック部35の下端よりも上方に位置するように高さが設定されている。又、可動部材が開位置にあるときには、図2(A),(B)に見られるように、上記係止突起51の上面は、端子10;20の下腕部12;22に設けられた接触部17;27の上端よりも下方に位置している。
【0026】
このように、本発明では、可動部材が閉位置にきたときに、ロック部35と係止突起51は、平型導体の被係止部F2に対して上方そして下方から補完して係止するようになる。したがって、上述の例のごとく、可動部材が閉位置にきたときに、係止突起51の上面51Cが、必ずしもロック部35の下端よりも上方に位置することを要せず、ロック部35の下端よりも下方に位置していてもよく、それでも上記補完による効果を得る。さらには、本発明では、係止突起は、ハウジングより形成されていなくとも、ハウジングにより保持されている他の部材、例えば、補強金具に形成されていてもよく、さらには、ロック腕部を有する金具自体にロック部と対向するように形成されていてもよい。
【0027】
端子10;20そしてロック金具30は、既述の通り、それらのための端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43の溝底でしっかり保持されていて、溝内面との間には若干の隙間が形成されているが、この端子10;20そしてロック金具30の板面との間の隙間は、該端子10;20そしてロック金具30の部位により、大小の差があり、すなわち、溝幅に広狭がある。
【0028】
連結部13;23そして33が位置する高さでの横断面を示す図4に見られるように、上記連結部13;23;33を含むそれぞれの領域での端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43の溝幅は他領域での溝幅より大きく、幅広部41A;42A;43Aを形成している。該幅広部41A;42A;43Aの領域では、端子10;20そしてロック金具30の板面との間に、他領域よりも広い隙間h1;h2;h3をそれぞれ形成している。本実施形態では、h1=h2である。端子配列方向で交互に配置されたこれらの端子10;20に対する幅広部41A;42Aは、前後方向(図4にて上下方向)にずれて位置している。なお、この図4にて、既述の係止突起51が端子配列方向でロック金具30よりずれて位置し、該ロック金具30に近接していることがよく判る。上述した図4の例では、端子10;20の連結部13;23が前後方向で異なる位置に設けられていたので、前後方向で該連結部13;23に対応する領域に幅広部41A;42Aを設けるだけで、幅広部41A;42Aも前後方向にずれて位置するようになる。これに対し、異なる形態として、端子10;20の連結部13;23が、図5のごとく、前後方向で同じ位置にあるときには、幅広部41A;42Aは、テーパ部を経て前後にずれて幅広部41A;42Aに移行するように形成してもよい。さらには、連結部13;23は、上腕部11;21と下腕部12;22とを連結する形態として両腕部の間隔に相当する上下方向での長さを有しているので、該連結部13;23が前後方向で同一位置にあっても、図6に見られるように、上下方向で異なる位置に幅広部41A;42Aを設けるようにして、大きい間隔h1,h2を上下にずれて形成してもよい。
【0029】
図1に見られるように、コネクタ1には、電気絶縁材で作られた可動部材60が回動自在に設けられていている。該可動部材60は、ハウジング40の前部に形成された前部空間44に位置している。該可動部材60は、ハウジング40の幅(端子配列方向での寸法)にわたり延びており、図2(A)〜(C)に見られるような垂立する姿勢の開位置から横方向に倒れる図9(A)〜(C)の閉位置までの間で回動自在となっている。該可動部材60は、端子10;20そしてロック金具30の上腕部11;21そして31の後部に下方への変位を与えるものであって、開位置とはこの変位を生ずる前にハウジング40の挿入溝45へ平型導体Fを挿入可能とする該可動部材60の位置であり、一方、閉位置とは変位を生じて挿入後の平型導体Fを下方へ圧する位置である。
【0030】
上記可動部材60は、開位置にて、図2(A)〜(C)のごとく前部空間44から上方に突出する操作部61を有し、該操作部61よりも下方の部位に前後に貫通するスリット状の溝部62が形成されている。該溝部62は、端子配列方向で各端子10;20そしてロック金具30に対応する位置に形成されており、該溝部62の溝幅(図2(A)〜(C)にて紙面に対して直角な方向での溝内幅寸法)が対応する上記端子10;20そしてロック金具30の板厚よりも若干大きい程度となっている。溝部62の下部には、端子10;20そしてロック金具30に対する加圧部として各端子10;20そしてロック金具30に対応したカム部63;64;65が設けられている。各カム部63;64;65は溝部62の対向せる溝内面同士を連結するように形成されている。
【0031】
端子10に対応して設けられたカム部63は、図2(A)に見られるごとく、可動部材60が開位置にあるときに、横長をなす長円形断面形状をもっていて、端子10の下腕部12の前部上縁に形成された凹状の支持部16内にあって、上腕部11の被圧部14に対しては間隔をもっていて非接触の状態にある。図2(A)におけるこのカム部63の横長は、同図における上記支持部16と被圧部14との間隔よりも大きく設定されている。したがって、可動部材60が閉位置にきたときには、後述のごとく、上記カム部63は縦長姿勢をとり、上記被圧部14を上方へ圧して弾性変位させる。
【0032】
端子20に対応して設けられたカム部64は、図2(B)に見られるごとく、可動部材60が開位置にあるときに、上記端子10のための横長な長円形のカム部63の右上隅部を角状に変形させた断面形状を有していて上記支持部26に接している。また、同図での高さ寸法も上記カム部63よりも大きい。したがって、カム部64は左部では半円形、右部では平坦面を有しつつその下部に丸味をもつ形状となっている。このカム部64も、可動部材60が開位置にあるときには、端子20の上腕部21に形成された被圧部24に対して間隔をもって非接触の状態にあり、可動部材60が閉位置にきたときに、縦長姿勢となって、該被圧部24を上方へ圧して弾性変位させる。
【0033】
ロック金具30に対応して設けられたカム部65は、断面形状が上記カム部64に類似しているが、可動部材60が開位置にあっても、ロック金具30の上腕部31に形成された被圧部34に接している。可動部材60が閉位置にくると該カム部65は上記被圧部34を圧して弾性変位させる。
【0034】
二種の端子10;20にそれぞれ対応したカム部63;64は、可動部材60が閉位置にきたときに、これらの回転軸線の方向、すなわち、図2において紙面に直角な方向に見ると、図7(A)のような位置関係にある。図7(A)において、可動部材60が閉位置にあるときに、縦長姿勢をとっているカム部63とカム部64は、端子10の被圧部14と支持部16からそれぞれ同一力の反力A,Bをそして端子20の被圧部24と支持部26からそれぞれ同一力の反力C,Dを受ける。一方のカム部63への反力A,Bはそれらの作用線が一致していてカムの回転中心Pを通る一つの線X上にある。これに対し、他方のカム部64では、その幅がカム部63よりも広いこと、そして上端の円弧が右側に偏っていることで、被圧部24からの反力Cが上記カム部63における反力Aよりも右方に位置しており、又、支持部26からの反力がカム部64の平坦な底面に作用するために反力Dの中心がその中心位置となって、結局上記反力Cと同じ線Y上の作用線をもつようになる。すなわち、カム部63;64を同時に見たときに、反力AとBが一つの線X上で釣合い、そして反力CとDが線Xから離れた他の線Y上で釣合うこととなる。したがってカム部63;64の両方で、上下方向で釣合う反力A,Bそして同じく上下方向で釣合うC,Dを上記カムの回転中心Pから互いに離れた位置で受けることとなり、閉位置にある可動部材60は、閉位置にて、中立状態をとるようになる。可動部材60は、この中立状態から、開位置方向あるいはその逆方向にずれようとしても、上記二つの線X,Y上の反力A,BそしてC,Dによるモーメントにより当初の中立状態に戻されることとなり、安定して中立状態を保つ。
【0035】
かかる中立状態は、二種のカム部63;64の反力A,Cに対しての反力B,Dの位置関係を逆にしても得られる。図7(B)において、可動部材が閉位置にあるとき、二種のカム部63;64の長軸が交差するように両カム部を形成すると、一方のカム部63の反力A,Bの作用線は互いにずれ、そして他方のカム部64の反力C,Dの作用線も互いにずれる。しかし、二種のカム部63;64を同時に見ると、四つの反力A,B,C,Dは、図7(A)の場合に比し反力B,Dの位置が入れ替わっただけで、全体としては図7(B)のときと同様に釣合っている。したがって、この場合も、中立状態が安定する。
【0036】
次に、このように構成される本実施形態の回路基板用電気コネクタについて、その使用要領を説明する。
【0037】
(1)先ず、図1に見られるコネクタ1を回路基板(図示せず)の所定位置に配置し、端子10;20の接続部18;28とロック金具30の固定脚38の両者を、回路基板のそれぞれの対応部と半田接続する。半田は、下腕部12;22そして32に形成された上記接続部18;28そして固定脚38から端子10;20そしてロック金具30のそれぞれの板面に沿って上昇する可能性がある。しかしながら、端子10;20そしてロック金具30の下腕部12;22;32は、連結部13;23;33のみにて上腕部11;21;31に連結されているので、仮に半田が上昇しても、半田は上腕部11;21;31に達するには、半田はこの連結部13;23;33を通らねばならない。しかし、図4〜6に見られるように、連結部13;23;33に対して、ハウジング40は幅広部41A;42A;43Aで大きな隙間を形成しているので、半田上昇はここで停止し、上腕部11;21;31には到達しない。この半田上昇阻止の効果は、フラックスについても同様に得られる。
【0038】
(2)次に、図2(A)〜(C)に見られるように、可動部材60を垂立せる開位置にもたらし、平型導体Fの挿入に備える。この可動部材60が開位置にある状態では、端子10;20そしてロック金具30の被圧部14;24;34は可動部材60の対応カム部63;64;65から何ら力を受けておらず、したがって、押圧部15;25そしてロック部35は変位していない当初の位置にあり、端子10;20は、平型導体Fを容易に受け入れられる状態にある。ここでロック金具30は、既述のごとく、そのロック部35が平型導体Fの挿入経路と干渉する位置にある。
【0039】
(3)しかる後、図8(A)〜(C)に見られるように、平型導体Fをハウジング40の挿入溝45へ挿入する。その際、平型導体Fは、端子10;20に接する前に、後方に延出するハウジング40に設けられた延出部49の規制部50によって、上下そして側方での位置が規制されて、所定位置で挿入される。したがって、挿入に際し、端子10;20は平型導体Fから無理な力を受けることはない。平型導体Fの挿入の際には、上述のごとく、可動部材60は開位置にあって、端子10;20の押圧部15;25は、未だ下方に変位していないので、端子10;20に対しては、平型導体Fは難なく上腕部11;21と下腕部12;22の間に進入する。平型導体Fの挿入の際、ロック金具30は、上述したようにロック部35が平型導体Fと干渉する位置にあるので、平型導体Fはその前端で該ロック部35を押し上げながら前進する。ロック腕31Aは、平型導体Fの挿入前から、後方に向け上方に傾いているので、ロック部35の傾斜せる後縁35Bで平型導体Fからの当接力を受けると、上方への分力によって傾きを増大する方向に撓み変位して、平型導体Fの前進を容易とする。平型導体Fが所定位置まで前進すると、図8(C)のごとく、ロック部35が平型導体Fの切欠部たる被係止部F2に突入して前縁35Aで該被係止部F2の前縁に対して係止可能な状態となる。この状態では、上記ロック腕31Aは、当初の傾きに戻る。図8(C)からも判るように、平型導体Fの被係止部F2に上記ロック部35が上方から突入していると共に、該平型導体Fはハウジング40の係止突起51に対して上方に位置しているものの、前後方向では上記被係止部F2が該係止突起51の位置にあり、端子配列方向でロック部35とは異なる位置に設けられているこの係止突起51と係止可能な状態にある。
【0040】
(4)次に、可動部材60を、図9のごとく時計まわり方向に閉位置へもたらす。この閉位置では、可動部材60のカム部63;64;65は縦長姿勢となって、カム部63が
端子10の被圧部14を、カム部64が端子20の被圧部24を、そしてカム部65がロック金具30の被圧部34をそれぞれ上方へ圧してもち上げる。被圧部14;24;34がもち上げられると、端子10;20そしてロック金具30の上腕部11;21;31はそれぞれ連結部13;23;33を支点として梃子の原理で、該連結部13;23;33よりも後方部分が下方に傾斜するようになり後端の押圧部15;25が下方へ変位する。かくして、端子10;20はその押圧部15;25によって平型導体Fを下方へ押圧して該平型導体Fと端子10;20の接触部17;27との接圧を高め電気的接続を確実にし正規の接続状態を得る。一方、ロック金具30は、後方に向け上方に傾斜していたロック腕31Aがこの傾斜を減ずるように下方へ撓み変位して水平位置をとるようになる。この水平位置では、ロック部35は下腕部32に接するまで下方へ変位し上記平型導体Fの被係止部F2との係止をさらに強める。さらに、平型導体Fは端子10;20の押圧部15;25により下方に押されて降下しているので、上記被係止部F2内に上記ハウジング40の係止突起51が進入した状態となる。かくして、平型導体Fは、その被係止部F2内へ、上方からロック部35がそして下方から係止突起51が進入しており、平型導体Fが後方に引かれたときの係止力は強力で確実に作用する。この状態、すなわち可動部材60が閉位置にある状態では、カム部63;64は、図7(A)の状態にあって、確実に中立状態を維持し、可動部材60が多少どちらの方向に回転されても、元の中立状態へ復帰する。
【0041】
(5)かくして、平型導体Fが正規の接続状態にあるときに、不用意な外力で後方、すなわち、抜出方向に引かれたとすると、平型導体Fの被係止部F2の前縁がロック金具30のロック部35をその前縁35Aで後方へ圧することとなる。この前縁35Aは垂直なので、被係止部F2としっかり係止し合い、後方への反力を受け、ロック腕31Aが後方へ引かれるようになる。しかし、このロック腕31Aは、可動部材60が閉位置にあるときには、水平方向に向いていて、水平方向に対して傾いていないので、上記反力による引張力を受けても上方への分力を生ずることなく、この水平方向の姿勢を維持し、ロック機能が弱まることはない。なお、上記前縁35Aは、完全な垂直でなくとも、若干上下に傾斜していても、実質的に垂直であれば十分である。
【0042】
本発明は、図1〜9に示した形態に限定されず、種々変更が可能である。例えば、ハウジングに形成される突部は係止突起とする必要はなく、平型導体の被係止部の周辺で、該平型導体のための載置面よりも高く形成されている形態とすることもできる。図10の場合、ハウジング40は、平型導体Fの挿入の際の載置面52に対して、ロック金具30の周辺で高くなっている突部51’が形成されている。この突部51’は、図11(A),(B)からも判るように、ロック金具30のロック部35の前方周辺から前方に延びて形成されている。このような形態では、可動部材60が閉位置にくると、平型導体Fは、端子配列範囲では上記載置面52へ向け下方へ押され、被係止部F2が存在する側部では上記突部51’により相対的にもち上げられ、幅方向で凹状に反り返る。すなわち、被係止部F2は上方にもち上げられロック部35と確実に係止することとなる。
【0043】
次に、前出の実施形態では、ロック金具30の上腕部31のロック腕31Aは、可動部材60が開位置では被圧部34に該可動部材60から何ら力を受けずに、後方に向け上方に傾斜していて、可動部材60が閉位置にきたときに上記上腕部31の被圧部34が可動部材60のカム部65に圧せられて、ロック腕31Aが水平方向の姿勢をとることによりロック部35が下方に変位したが、図12に示される本実施形態では、開位置で上記上腕部31がカム部63から力を受けてロック腕31Aが後方に向け上方に傾斜する姿勢をとり、閉位置ではこの力が解除されて水平方向の姿勢をとるようにすることもできる。
【0044】
図12(A)において、可動部材60は操作部61の下縁で溝部62との境界をなす部分に略半円状のカム部65を加圧部として有している。該カム部65は、図12(A)に
示される可動部材60が開位置にあるときに、ロック金具30の上腕部31の前部の上縁に形成された被圧部34に乗り上げて該被圧部34を下方へ圧している。したがって、上腕部31の後部たるロック腕31Aは、連結部33を支点として、後方に向け上方へ傾斜する姿勢をとるように変位する。又、可動部材60が軸部66まわりに回動して図12(B)に示される閉位置にもたらされると、上記カム部65は被圧部34から外れて、ロック腕31Aの変位が解除されて、該ロック腕31Aは水平状態の姿勢をとる。
【0045】
また、本発明は、平型導体の上面に導体部が形成されている場合に対応する際には、端子は下腕部に接触部を有している必要はなく、上腕部の押圧部が接触部を兼ねていて上記導体部と接触するようにすることもできる。さらには、下腕部に接触部を有する端子と、上腕部の押圧部が接触部を兼ねている端子とを混合して、いわゆる千鳥配置とすることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10;20 端子 34 被圧部
11;21 上腕部 35 ロック部
12;22 下腕部 40 ハウジング
13;23 連結部 45 受入空間(挿入溝)
14;24 被圧部 49 延出部
15;25 押圧部 50 規制部
17;27 接触部 51 突部(係止突起)
18;28 接続部 60 可動部材
30 ロック金具 63;64 カム部
31 上腕部 F 平型導体
32 下腕部 F2 被係止部
33 連結部
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタにあっては、回路基板の面に平行な状態でFPC等の平型導体が挿入され接続される。該平型導体は、一般に、その側縁に耳状あるいは孔状の被係止部が形成されていて、コネクタのロック金具のロック部が上記被係止部に係止して、平型導体の不用意な抜けを防止している。
【0003】
特許文献1では、端子(コンタクト)とほぼ同様な、連結部で連結された上腕部と下腕部とを有する横H字状のロック金具(ロック部材)が設けられていて、該ロック金具の上腕部は、連結部よりも平型導体の挿入側となる後方へ水平に延びていてその後部に爪状のロック部(係合部)が形成されている。該ロック部は、平型導体の方に向け下方へ突出する略逆三角形状をなしており、コネクタの使用時に、可動部材(スライダ)が平型導体を端子の接触部へ圧する閉位置へ移動すると、上記ロック金具の上腕部がその前部で可動部材のカム部によってもち上げられ、梃子の原理で、上腕部の後部が下方に傾き、したがって、ロック部が下方へ変位する。その結果、上腕部と下腕部の間に挿入された平型導体に切欠部あるいは孔部として形成された被係止部へ上方から上記ロック部が該被係止部の前縁と係止し、平型導体が不用意に抜けることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−221067
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコネクタにあっては、平型導体の不用意な抜けを防止するために、該平型導体の被係止部に係止するのは、ロック金具のロック部のみであり、しかも、該ロック部は平型導体の面に対して上方から、すなわち一方の側から上記被係止部に係止する。しかし、上記ロック部は略逆三角形をなしている。したがって、平型導体が端子の接触部と所定の接圧をもって正規の接続状態にあるにも拘らず、平型導体を強く抜出方向に引いた場合、平型導体の被係止部は上記略逆三角形のロック部の前部斜縁へ抜出方向の力をもたらす。この力は、前部斜縁で上方への分力を生ずる結果、ロック金具の上腕部の後部を上方へ戻すようにして、該後部すなわちロック部の変位の量を減少させる。すなわち、ロック部は被係止部との係止量を減じ、あるいは外されていまい、不用意な平型導体の抜けという事態が生じてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、ロック金具を用いた回路基板用電気コネクタにおいて、平型導体の正規の接続状態のもとで、平型導体の抜出方向に不用意に強い力が作用しても、ロック部が被係止部との係止量を常に大きく保ち、又は、該被係止部を補強して係止状態が変らないようにすることで、抜け防止をさらに確実に実現できる回路基板用電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板上に配され、挿入された平型導体を回路基板と電気的に接続する電気コネクタであって、金属板の平坦な板面を維持して作られていて平型導体と接触する接触部、回路基板に接続される接続部、平型導体を圧する押圧部、該押圧部を押圧方向に変位させるための力を受ける被圧部が設けられ、上記板面に直角方向に配列された複数の端子と、端子と同様に金属板の平坦な板面を維持して作られていて平型導体と係止してロックするロック部、該ロック部を変位させるための力を受ける被圧部が設けられ、上記端子と板面が平行となるように配置されたロック金具と、挿入された平型導体の接続部分を受け入れる受入空間が形成され上記接触部が平型導体と接触する位置に上記端子を保持しそしてロック金具を保持するハウジングと、上記端子及びロック金具の被圧部に力を加えるための加圧部が設けられていて、平型導体の挿入を可能とする開位置と平型導体を端子の接触部へ圧すると共にロック部をロック位置へもたらす閉位置との間を移動可能な可動部材とを有し、上記端子そしてロック金具は平型導体の挿入方向を長手方向として延びる上腕部と下腕部がそれらの長手方向中間位置で連結部により連結されて形成され、端子は、上腕部が連結部よりも平型導体の挿入方向先方の前部に被圧部をそして後部に押圧部を有し、ロック金具は上腕部が前部に被圧部そして後部に突起状のロック部を有している。
【0008】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、上記ロック金具は、下腕部が後部に、上記ロック部と上下方向で対向して上方へ向けて突出する係止突起を有しており、上記可動部材が閉位置にあるとき、平型導体の側縁に被係止部として形成された切欠凹部に、上記ロック部が上方からそして上記係止突起が下方から突入して、上記ロック金具が上記被係止部と前後方向で係止可能となることを特徴としている。
【0009】
このような構成の本発明にあっては、平型導体が載置面上で所定位置まで挿入されると、該平型導体の被係止部は、ハウジングに保持されたロック金具に形成された係止突起に対して前方位置で上下方向すなわち、平型導体の厚み方向で該係止突起との重複範囲を有している。つまり、平型導体の被係止部に対して、上方からロック金具のロック部が突入し、下方からは該ロック金具の係止突起が突入する。
【0010】
このように、上記被係止部に対して、ロック部と係止突起が上下から突入するので、平型導体が上下のいずれの方向にずれても該平型導体の抜出方向でのロック金具との係止が維持される。しかも、平型導体は端子の押圧部で下方に圧せられているので、ずれはロック金具の係止突起との重複範囲に留まり、又、平型導体への力が上方への成分を伴っていて平型導体がもち上げられようとしても上記押圧部からの力によりロック金具のロック部が平型導体の被係止部に突入しており、該ロック金具との係止が維持される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明では、ロック金具は、可動部材が閉位置にあるとき、平型導体の被係止部に、ロック部が上方からそして係止突起が下方から突入するので、ロック金具が上記被係止部と前後方向で係止可能となり、平型導体の抜けが確実に防止される。しかも、平型導体は端子の押圧部で下方に圧せられているので、ロック部が形成されているロック金具の上腕部は、平型導体の被係止部がロック金具の係止突起から抜けしかもロック金具のロック部からも外れるような過大な変位を生ずることも阻止されるので、上下からロック部と係止突起が上記被係止部に突入した状態が安定して確保される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態としての回路基板用電気コネクタとこれに挿入される平型導体の一部を示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタについて可動部材が開位置で平型導体が挿入前における断面図であり、(A)は端子配列方向で、二種の端子のうちの一種の端子の位置で、(B)は他種の端子の位置で、そして(C)はロック金具の位置で断面した図である。
【図3】図2(C)の断面図に相当する位置での断面斜視図である。
【図4】図1のコネクタについての端子そしてロック金具の連結部の位置での左端部近傍の横断面図である。
【図5】図4の例についての変形例を示す連結部の位置での横断面図である。
【図6】図4の例についての他の変形例を示す連結部の位置での縦断面図である。
【図7】カム部の原理を示す図で、(A)は図2(A), (B)のカム部についての図、(B)は変形例としてのカム部についての図である。
【図8】図2に対応する図であって、可動部材が開位置で、平型導体の挿入後を示す。
【図9】図2に対応する図であって、平型導体の挿入後に可動部材が閉位置にきたときを示す。
【図10】他の実施形態を示し、コネクタの一部を後方から見たときの一部破断正面図である。
【図11】図10のコネクタの縦断面図であり、(A)は端子配列方向でロック金具の位置、(B)は(A)の位置よりも若干コネクタ側端にずれた位置での断面で示されている。
【図12】さらに他の実施形態を示すロック金具位置での断面図であり、(A)は可動部材が開位置、(B)は閉位置にあるときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の回路基板用電気コネクタ(以下、「コネクタ」)の全体そして該コネクタに接続される平型導体の前端部の接続部分を示す斜視図である。
【0015】
平型導体Fは、その先端部下面で被覆が除去されていて導体部(図示せず)が露呈しており、上面では該導体部よりもさらに前方へコネクタ1に向けて突出するようにシート状の補強材F1が取りつけられている。該補強材F1は、導体部よりも前方における左右の側縁に切欠き状の被係止部F2が形成されている。
【0016】
コネクタ1は、金属板から作られた端子10;20、ロック金具30、これらを保持するハウジング40、そしてハウジング40に回動自在に支持されている可動部材60を有している。
【0017】
端子10;20とロック金具30は共に、金属板の平坦面を維持して作られている。端子は二種の端子10;20から成っていて、これらが端子10;20の板面に直角な方向で交互に位置するように配列されており、同方向で両端に位置する端子10;20に隣接してロック金具30が設けられている。
【0018】
二種の端子10;20は、それぞれの端子10;20での断面図である図2(A),(B)に見られるように、共に横H型をなし、それぞれ横方向に延び上腕部11;21、下腕部12;22そして両腕部をそれらの長手方向中間部で連結する連結部13;23を有している。上腕部11;21は、平型導体Fの挿入方向先方たる前部に、後述の可動部材のカム部で圧せられる被圧部14;24、後部に平型導体を上方から圧する押圧部15;25が形成されている。下腕部12;22の前部には、上記カム部のための支持部16;26そして後部には平型導体の導体部と接触するための接触部17;27が形成されている。さらには、下腕部12;22には、回路基板との半田接続のための接続部18;28が設けられている。
【0019】
以上は、二種の端子10;20についての共通点を述べたが、次に相違点について説明する。
【0020】
端子10の上腕部11は、図2(A)に見られるように、前部の下縁に設けられた被圧部14が凹部をなしており、又、連結部13から後方に長く延びてその後端に突状の押圧部15が設けられている。これに対し、端子20の上腕部21は、図2(B)に見られるように、前部の下縁に設けられた被圧部24は直状縁で形成され、又、連結部23から後方に延びる部分は上記端子10の場合よりも短く、その後端に突状の押圧部25が設けられている。
【0021】
端子10の下腕部12は、図2(A)に見られるように、連結部13から前方に延びハウジング40外へ延出した部分に接続部18が形成されている。接続部18は下方へ凹弯曲した溝状の固定部18Aをも有している。連結部13と接続部18との間の部分には上縁が凹状をなしカム部を収める支持部16が形成されている。これに対し、端子20の下腕部22は、図2(B)に見られるように、連結部23から前方に延びる部分の上縁にほぼ直状縁をなして支持部26が形成され、後方に延びる部分がハウジング40外に延出して、上記端子10の接続部18とほぼ前後対称の形の接続部28そして固定部28Aを有している。この端子20の下腕部22は、前後方向で、連結部23と接続部28の中間部で上腕部21の押圧部25に対応する位置に、突状の接触部27が設けられている。
【0022】
このように形成された二種の端子10;20は、図1に見られるように、端子10が前方からそして端子20が後方からハウジング40へ取りつけられ、交互に配列されている。
【0023】
ロック金具30は、図2(C)そして図3に見られるごとく、端子20に類似する横H型をなしており、端子20と同様に、上腕部31と下腕部32を有し、両者はその長手方向中間部で連結部33により連結されている。このロック金具30は、前部においては、上腕部31も下腕部32も、上記端子20と同じ形態をなしていて、上腕部31の前部には直状縁で被圧部34が、そして下腕部32の前部にはほぼ直状縁の支持部36が形成されている。該ロック金具30の後部は、上記端子20と趣きを異にしている点がある。上腕部31の後部は、長さとしては、端子20よりも長く、端子10とほぼ同じ位であり、後方に延びるロック腕31Aを形成している。そして、その後端には下方に向く比較的大きい突状のロック部35が設けられている。上記ロック腕31Aは後方に向け上方へ傾斜して延びている。該ロック腕31Aは、上記被圧部34が後述の閉位置における可動部材のカム部にて圧せられて上方にもち上げられ変位したときに、梃子の原理で、連結部33を支点として下方へ変位し、その結果、略水平位置にくるようになる。この場合、ロック腕31Aは完全な水平位置でなくとも、多少の傾きが残っていても、実質的に水平状態と言える姿勢となっていれは良い。例えば、可動部材が開位置にあるときに傾斜をもっているロック腕が、可動部材が閉位置にきたときに、その傾斜角を減じて水平位置へ近くなるようになってはいるものの若干の傾きが残っていたり、あるいは水平位置を越えて逆側に若干の傾きを生じていることとしても、その傾斜が小さい場合には、実質的に水平位置と言える。上記ロック腕31Aの後端に設けられた突状のロック部35は、前縁35Aがほぼ垂直縁をなし、後縁35Bが下方に向け前方へ傾斜している。このロック部35は、上腕部31が被圧部34でカム部からの力を受けていない状態で、平型導体Fが挿入されたとき、該平型導体Fの前端縁と干渉するような、高さ方向での位置関係にある。又、上記
下腕部32の後端には、端子20の接続部28と同様な形態の固定脚38が設けられ、そこには、溝状の固定部38Aが形成されている。
【0024】
上述の端子10;20そしてロック金具30を保持するハウジング40は、電気絶縁材から作られていて、図1に見られるように、比較的平坦な略直方体外形をなしており、図2のごとく、前後に(図にて右方そして左方)貫通して端子10;20そしてロック金具30をそれぞれ保持する端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43が形成されている。これらの端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43は、板状の端子10;20そしてロック金具30をこれらの板面と若干の隙間を保ちつつ対面して保持するように、図2にて紙面に直角方向にその板厚に相当する溝幅のスリットとして形成されている。かかる端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43に対して、端子10;20そしてロック金具30は、それらの下縁に形成された突起19;29そして突起39により、溝底に係止し上下縁でしっかりと保持される。又、これらの端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43は、ハウジング40の前部で上方に向け大きく切欠かれた前部空間44に連通されており、さらに前後方向で中間位置から後方に向け形成された平型導体Fのための受入空間としての挿入溝45により連通している。この挿入溝45の形成により、ハウジング40はその上下位置に上壁46そして下壁47を有するようになり、該上壁46そして下壁47の面に端子保持溝41;42が開口溝としての形態をとっている。該上壁46は、ロック金具30の位置では、該ロック金具30のロック腕31Aが進入する溝部48が上下に貫通してスリット状に形成されている。下壁47は端子10に対しては、前端が略テーパ状に薄く形成されていて端子10の溝状の固定部18Aが嵌着する保持部47Aをなし、端子20そしてロック金具30に対しては、後端で同様に形成された、端子20そしてロック金具30のそれぞれの固定部28Aそして38Aのための保持部47Aをなしている。又、上記下壁47にて上方に開口する端子10のための端子保持溝41は、端子10の下腕部12の後部が下方に撓むことを許容するように、その溝底41Bが後方に向けテーパ状に形成されて溝深さを次第に大きくしている。
【0025】
ハウジング40は、図1からも判るように、端子配列方向の両端部で、端子配列範囲を含め両端のロック金具30同士間の範囲における後端縁よりも後方に延出した延出部49が設けられている。この延出部49は、図2に見られるように、後方から見た形状が横U字状をなし、平型導体Fの幅方向両側縁(幅方向で被係止部F2が存在する範囲)を後方から受け入れるように、挿入溝45の幅方向両端部分を形成している。この延出部49は、後方における入口部に上下でテーパの導入面49A;49Bを有している。上記延出部49におけるこの挿入溝45の内側面そして上下内面は、挿入される平型導体Fをその幅方向そして上下方向での位置を規制する規制部50を形成する。又、この規制部50のうちの平型導体の挿入時の載置面と同一レベルにある下内面には、平型導体Fの被係止部F2に係止する突部としての係止突起51が設けられている。該係止突起51は、図1からも判るように、端子配列方向ではロック金具30に対してずれた位置にあり、前後方向では、図2(C)から判るように、ロック金具30のロック部35とほぼ同一位置に設けられている。該係止突起51は縦断面が台形をなしていて、前縁51Aが垂直面をそして後縁51Bがテーパ面となっている。該係止突起51の上面51Cは平坦面であり、可動部材が開位置にあるときを示す図2(C)に見られるようにロック部35の下端よりも下方に位置しているが、可動部材が閉位置にくることによりロック部35が下方に変位したときには、このロック部35の下端よりも上方に位置するように高さが設定されている。又、可動部材が開位置にあるときには、図2(A),(B)に見られるように、上記係止突起51の上面は、端子10;20の下腕部12;22に設けられた接触部17;27の上端よりも下方に位置している。
【0026】
このように、本発明では、可動部材が閉位置にきたときに、ロック部35と係止突起51は、平型導体の被係止部F2に対して上方そして下方から補完して係止するようになる。したがって、上述の例のごとく、可動部材が閉位置にきたときに、係止突起51の上面51Cが、必ずしもロック部35の下端よりも上方に位置することを要せず、ロック部35の下端よりも下方に位置していてもよく、それでも上記補完による効果を得る。さらには、本発明では、係止突起は、ハウジングより形成されていなくとも、ハウジングにより保持されている他の部材、例えば、補強金具に形成されていてもよく、さらには、ロック腕部を有する金具自体にロック部と対向するように形成されていてもよい。
【0027】
端子10;20そしてロック金具30は、既述の通り、それらのための端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43の溝底でしっかり保持されていて、溝内面との間には若干の隙間が形成されているが、この端子10;20そしてロック金具30の板面との間の隙間は、該端子10;20そしてロック金具30の部位により、大小の差があり、すなわち、溝幅に広狭がある。
【0028】
連結部13;23そして33が位置する高さでの横断面を示す図4に見られるように、上記連結部13;23;33を含むそれぞれの領域での端子保持溝41;42そしてロック金具保持溝43の溝幅は他領域での溝幅より大きく、幅広部41A;42A;43Aを形成している。該幅広部41A;42A;43Aの領域では、端子10;20そしてロック金具30の板面との間に、他領域よりも広い隙間h1;h2;h3をそれぞれ形成している。本実施形態では、h1=h2である。端子配列方向で交互に配置されたこれらの端子10;20に対する幅広部41A;42Aは、前後方向(図4にて上下方向)にずれて位置している。なお、この図4にて、既述の係止突起51が端子配列方向でロック金具30よりずれて位置し、該ロック金具30に近接していることがよく判る。上述した図4の例では、端子10;20の連結部13;23が前後方向で異なる位置に設けられていたので、前後方向で該連結部13;23に対応する領域に幅広部41A;42Aを設けるだけで、幅広部41A;42Aも前後方向にずれて位置するようになる。これに対し、異なる形態として、端子10;20の連結部13;23が、図5のごとく、前後方向で同じ位置にあるときには、幅広部41A;42Aは、テーパ部を経て前後にずれて幅広部41A;42Aに移行するように形成してもよい。さらには、連結部13;23は、上腕部11;21と下腕部12;22とを連結する形態として両腕部の間隔に相当する上下方向での長さを有しているので、該連結部13;23が前後方向で同一位置にあっても、図6に見られるように、上下方向で異なる位置に幅広部41A;42Aを設けるようにして、大きい間隔h1,h2を上下にずれて形成してもよい。
【0029】
図1に見られるように、コネクタ1には、電気絶縁材で作られた可動部材60が回動自在に設けられていている。該可動部材60は、ハウジング40の前部に形成された前部空間44に位置している。該可動部材60は、ハウジング40の幅(端子配列方向での寸法)にわたり延びており、図2(A)〜(C)に見られるような垂立する姿勢の開位置から横方向に倒れる図9(A)〜(C)の閉位置までの間で回動自在となっている。該可動部材60は、端子10;20そしてロック金具30の上腕部11;21そして31の後部に下方への変位を与えるものであって、開位置とはこの変位を生ずる前にハウジング40の挿入溝45へ平型導体Fを挿入可能とする該可動部材60の位置であり、一方、閉位置とは変位を生じて挿入後の平型導体Fを下方へ圧する位置である。
【0030】
上記可動部材60は、開位置にて、図2(A)〜(C)のごとく前部空間44から上方に突出する操作部61を有し、該操作部61よりも下方の部位に前後に貫通するスリット状の溝部62が形成されている。該溝部62は、端子配列方向で各端子10;20そしてロック金具30に対応する位置に形成されており、該溝部62の溝幅(図2(A)〜(C)にて紙面に対して直角な方向での溝内幅寸法)が対応する上記端子10;20そしてロック金具30の板厚よりも若干大きい程度となっている。溝部62の下部には、端子10;20そしてロック金具30に対する加圧部として各端子10;20そしてロック金具30に対応したカム部63;64;65が設けられている。各カム部63;64;65は溝部62の対向せる溝内面同士を連結するように形成されている。
【0031】
端子10に対応して設けられたカム部63は、図2(A)に見られるごとく、可動部材60が開位置にあるときに、横長をなす長円形断面形状をもっていて、端子10の下腕部12の前部上縁に形成された凹状の支持部16内にあって、上腕部11の被圧部14に対しては間隔をもっていて非接触の状態にある。図2(A)におけるこのカム部63の横長は、同図における上記支持部16と被圧部14との間隔よりも大きく設定されている。したがって、可動部材60が閉位置にきたときには、後述のごとく、上記カム部63は縦長姿勢をとり、上記被圧部14を上方へ圧して弾性変位させる。
【0032】
端子20に対応して設けられたカム部64は、図2(B)に見られるごとく、可動部材60が開位置にあるときに、上記端子10のための横長な長円形のカム部63の右上隅部を角状に変形させた断面形状を有していて上記支持部26に接している。また、同図での高さ寸法も上記カム部63よりも大きい。したがって、カム部64は左部では半円形、右部では平坦面を有しつつその下部に丸味をもつ形状となっている。このカム部64も、可動部材60が開位置にあるときには、端子20の上腕部21に形成された被圧部24に対して間隔をもって非接触の状態にあり、可動部材60が閉位置にきたときに、縦長姿勢となって、該被圧部24を上方へ圧して弾性変位させる。
【0033】
ロック金具30に対応して設けられたカム部65は、断面形状が上記カム部64に類似しているが、可動部材60が開位置にあっても、ロック金具30の上腕部31に形成された被圧部34に接している。可動部材60が閉位置にくると該カム部65は上記被圧部34を圧して弾性変位させる。
【0034】
二種の端子10;20にそれぞれ対応したカム部63;64は、可動部材60が閉位置にきたときに、これらの回転軸線の方向、すなわち、図2において紙面に直角な方向に見ると、図7(A)のような位置関係にある。図7(A)において、可動部材60が閉位置にあるときに、縦長姿勢をとっているカム部63とカム部64は、端子10の被圧部14と支持部16からそれぞれ同一力の反力A,Bをそして端子20の被圧部24と支持部26からそれぞれ同一力の反力C,Dを受ける。一方のカム部63への反力A,Bはそれらの作用線が一致していてカムの回転中心Pを通る一つの線X上にある。これに対し、他方のカム部64では、その幅がカム部63よりも広いこと、そして上端の円弧が右側に偏っていることで、被圧部24からの反力Cが上記カム部63における反力Aよりも右方に位置しており、又、支持部26からの反力がカム部64の平坦な底面に作用するために反力Dの中心がその中心位置となって、結局上記反力Cと同じ線Y上の作用線をもつようになる。すなわち、カム部63;64を同時に見たときに、反力AとBが一つの線X上で釣合い、そして反力CとDが線Xから離れた他の線Y上で釣合うこととなる。したがってカム部63;64の両方で、上下方向で釣合う反力A,Bそして同じく上下方向で釣合うC,Dを上記カムの回転中心Pから互いに離れた位置で受けることとなり、閉位置にある可動部材60は、閉位置にて、中立状態をとるようになる。可動部材60は、この中立状態から、開位置方向あるいはその逆方向にずれようとしても、上記二つの線X,Y上の反力A,BそしてC,Dによるモーメントにより当初の中立状態に戻されることとなり、安定して中立状態を保つ。
【0035】
かかる中立状態は、二種のカム部63;64の反力A,Cに対しての反力B,Dの位置関係を逆にしても得られる。図7(B)において、可動部材が閉位置にあるとき、二種のカム部63;64の長軸が交差するように両カム部を形成すると、一方のカム部63の反力A,Bの作用線は互いにずれ、そして他方のカム部64の反力C,Dの作用線も互いにずれる。しかし、二種のカム部63;64を同時に見ると、四つの反力A,B,C,Dは、図7(A)の場合に比し反力B,Dの位置が入れ替わっただけで、全体としては図7(B)のときと同様に釣合っている。したがって、この場合も、中立状態が安定する。
【0036】
次に、このように構成される本実施形態の回路基板用電気コネクタについて、その使用要領を説明する。
【0037】
(1)先ず、図1に見られるコネクタ1を回路基板(図示せず)の所定位置に配置し、端子10;20の接続部18;28とロック金具30の固定脚38の両者を、回路基板のそれぞれの対応部と半田接続する。半田は、下腕部12;22そして32に形成された上記接続部18;28そして固定脚38から端子10;20そしてロック金具30のそれぞれの板面に沿って上昇する可能性がある。しかしながら、端子10;20そしてロック金具30の下腕部12;22;32は、連結部13;23;33のみにて上腕部11;21;31に連結されているので、仮に半田が上昇しても、半田は上腕部11;21;31に達するには、半田はこの連結部13;23;33を通らねばならない。しかし、図4〜6に見られるように、連結部13;23;33に対して、ハウジング40は幅広部41A;42A;43Aで大きな隙間を形成しているので、半田上昇はここで停止し、上腕部11;21;31には到達しない。この半田上昇阻止の効果は、フラックスについても同様に得られる。
【0038】
(2)次に、図2(A)〜(C)に見られるように、可動部材60を垂立せる開位置にもたらし、平型導体Fの挿入に備える。この可動部材60が開位置にある状態では、端子10;20そしてロック金具30の被圧部14;24;34は可動部材60の対応カム部63;64;65から何ら力を受けておらず、したがって、押圧部15;25そしてロック部35は変位していない当初の位置にあり、端子10;20は、平型導体Fを容易に受け入れられる状態にある。ここでロック金具30は、既述のごとく、そのロック部35が平型導体Fの挿入経路と干渉する位置にある。
【0039】
(3)しかる後、図8(A)〜(C)に見られるように、平型導体Fをハウジング40の挿入溝45へ挿入する。その際、平型導体Fは、端子10;20に接する前に、後方に延出するハウジング40に設けられた延出部49の規制部50によって、上下そして側方での位置が規制されて、所定位置で挿入される。したがって、挿入に際し、端子10;20は平型導体Fから無理な力を受けることはない。平型導体Fの挿入の際には、上述のごとく、可動部材60は開位置にあって、端子10;20の押圧部15;25は、未だ下方に変位していないので、端子10;20に対しては、平型導体Fは難なく上腕部11;21と下腕部12;22の間に進入する。平型導体Fの挿入の際、ロック金具30は、上述したようにロック部35が平型導体Fと干渉する位置にあるので、平型導体Fはその前端で該ロック部35を押し上げながら前進する。ロック腕31Aは、平型導体Fの挿入前から、後方に向け上方に傾いているので、ロック部35の傾斜せる後縁35Bで平型導体Fからの当接力を受けると、上方への分力によって傾きを増大する方向に撓み変位して、平型導体Fの前進を容易とする。平型導体Fが所定位置まで前進すると、図8(C)のごとく、ロック部35が平型導体Fの切欠部たる被係止部F2に突入して前縁35Aで該被係止部F2の前縁に対して係止可能な状態となる。この状態では、上記ロック腕31Aは、当初の傾きに戻る。図8(C)からも判るように、平型導体Fの被係止部F2に上記ロック部35が上方から突入していると共に、該平型導体Fはハウジング40の係止突起51に対して上方に位置しているものの、前後方向では上記被係止部F2が該係止突起51の位置にあり、端子配列方向でロック部35とは異なる位置に設けられているこの係止突起51と係止可能な状態にある。
【0040】
(4)次に、可動部材60を、図9のごとく時計まわり方向に閉位置へもたらす。この閉位置では、可動部材60のカム部63;64;65は縦長姿勢となって、カム部63が
端子10の被圧部14を、カム部64が端子20の被圧部24を、そしてカム部65がロック金具30の被圧部34をそれぞれ上方へ圧してもち上げる。被圧部14;24;34がもち上げられると、端子10;20そしてロック金具30の上腕部11;21;31はそれぞれ連結部13;23;33を支点として梃子の原理で、該連結部13;23;33よりも後方部分が下方に傾斜するようになり後端の押圧部15;25が下方へ変位する。かくして、端子10;20はその押圧部15;25によって平型導体Fを下方へ押圧して該平型導体Fと端子10;20の接触部17;27との接圧を高め電気的接続を確実にし正規の接続状態を得る。一方、ロック金具30は、後方に向け上方に傾斜していたロック腕31Aがこの傾斜を減ずるように下方へ撓み変位して水平位置をとるようになる。この水平位置では、ロック部35は下腕部32に接するまで下方へ変位し上記平型導体Fの被係止部F2との係止をさらに強める。さらに、平型導体Fは端子10;20の押圧部15;25により下方に押されて降下しているので、上記被係止部F2内に上記ハウジング40の係止突起51が進入した状態となる。かくして、平型導体Fは、その被係止部F2内へ、上方からロック部35がそして下方から係止突起51が進入しており、平型導体Fが後方に引かれたときの係止力は強力で確実に作用する。この状態、すなわち可動部材60が閉位置にある状態では、カム部63;64は、図7(A)の状態にあって、確実に中立状態を維持し、可動部材60が多少どちらの方向に回転されても、元の中立状態へ復帰する。
【0041】
(5)かくして、平型導体Fが正規の接続状態にあるときに、不用意な外力で後方、すなわち、抜出方向に引かれたとすると、平型導体Fの被係止部F2の前縁がロック金具30のロック部35をその前縁35Aで後方へ圧することとなる。この前縁35Aは垂直なので、被係止部F2としっかり係止し合い、後方への反力を受け、ロック腕31Aが後方へ引かれるようになる。しかし、このロック腕31Aは、可動部材60が閉位置にあるときには、水平方向に向いていて、水平方向に対して傾いていないので、上記反力による引張力を受けても上方への分力を生ずることなく、この水平方向の姿勢を維持し、ロック機能が弱まることはない。なお、上記前縁35Aは、完全な垂直でなくとも、若干上下に傾斜していても、実質的に垂直であれば十分である。
【0042】
本発明は、図1〜9に示した形態に限定されず、種々変更が可能である。例えば、ハウジングに形成される突部は係止突起とする必要はなく、平型導体の被係止部の周辺で、該平型導体のための載置面よりも高く形成されている形態とすることもできる。図10の場合、ハウジング40は、平型導体Fの挿入の際の載置面52に対して、ロック金具30の周辺で高くなっている突部51’が形成されている。この突部51’は、図11(A),(B)からも判るように、ロック金具30のロック部35の前方周辺から前方に延びて形成されている。このような形態では、可動部材60が閉位置にくると、平型導体Fは、端子配列範囲では上記載置面52へ向け下方へ押され、被係止部F2が存在する側部では上記突部51’により相対的にもち上げられ、幅方向で凹状に反り返る。すなわち、被係止部F2は上方にもち上げられロック部35と確実に係止することとなる。
【0043】
次に、前出の実施形態では、ロック金具30の上腕部31のロック腕31Aは、可動部材60が開位置では被圧部34に該可動部材60から何ら力を受けずに、後方に向け上方に傾斜していて、可動部材60が閉位置にきたときに上記上腕部31の被圧部34が可動部材60のカム部65に圧せられて、ロック腕31Aが水平方向の姿勢をとることによりロック部35が下方に変位したが、図12に示される本実施形態では、開位置で上記上腕部31がカム部63から力を受けてロック腕31Aが後方に向け上方に傾斜する姿勢をとり、閉位置ではこの力が解除されて水平方向の姿勢をとるようにすることもできる。
【0044】
図12(A)において、可動部材60は操作部61の下縁で溝部62との境界をなす部分に略半円状のカム部65を加圧部として有している。該カム部65は、図12(A)に
示される可動部材60が開位置にあるときに、ロック金具30の上腕部31の前部の上縁に形成された被圧部34に乗り上げて該被圧部34を下方へ圧している。したがって、上腕部31の後部たるロック腕31Aは、連結部33を支点として、後方に向け上方へ傾斜する姿勢をとるように変位する。又、可動部材60が軸部66まわりに回動して図12(B)に示される閉位置にもたらされると、上記カム部65は被圧部34から外れて、ロック腕31Aの変位が解除されて、該ロック腕31Aは水平状態の姿勢をとる。
【0045】
また、本発明は、平型導体の上面に導体部が形成されている場合に対応する際には、端子は下腕部に接触部を有している必要はなく、上腕部の押圧部が接触部を兼ねていて上記導体部と接触するようにすることもできる。さらには、下腕部に接触部を有する端子と、上腕部の押圧部が接触部を兼ねている端子とを混合して、いわゆる千鳥配置とすることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10;20 端子 34 被圧部
11;21 上腕部 35 ロック部
12;22 下腕部 40 ハウジング
13;23 連結部 45 受入空間(挿入溝)
14;24 被圧部 49 延出部
15;25 押圧部 50 規制部
17;27 接触部 51 突部(係止突起)
18;28 接続部 60 可動部材
30 ロック金具 63;64 カム部
31 上腕部 F 平型導体
32 下腕部 F2 被係止部
33 連結部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に配され、挿入された平型導体を回路基板と電気的に接続する電気コネクタであって、金属板の平坦な板面を維持して作られていて平型導体と接触する接触部、回路基板に接続される接続部、平型導体を圧する押圧部、該押圧部を押圧方向に変位させるための力を受ける被圧部が設けられ、上記板面に直角方向に配列された複数の端子と、端子と同様に金属板の平坦な板面を維持して作られていて平型導体と係止してロックするロック部、該ロック部を変位させるための力を受ける被圧部が設けられ、上記端子と板面が平行となるように配置されたロック金具と、挿入された平型導体の接続部分を受け入れる受入空間が形成され上記接触部が平型導体と接触する位置に上記端子を保持しそしてロック金具を保持するハウジングと、上記端子及びロック金具の被圧部に力を加えるための加圧部が設けられていて、平型導体の挿入を可能とする開位置と平型導体を端子の接触部へ圧すると共にロック部をロック位置へもたらす閉位置との間を移動可能な可動部材とを有し、上記端子そしてロック金具は平型導体の挿入方向を長手方向として延びる上腕部と下腕部がそれらの長手方向中間位置で連結部により連結されて形成され、端子は、上腕部が連結部よりも平型導体の挿入方向先方の前部に被圧部をそして後部に押圧部を有し、ロック金具は上腕部が前部に被圧部そして後部に突起状のロック部を有している回路基板用電気コネクタにおいて、
上記ロック金具は、下腕部が後部に、上記ロック部と上下方向で対向して上方へ向けて突出する係止突起を有しており、上記可動部材が閉位置にあるとき、平型導体の側縁に被係止部として形成された切欠凹部に、上記ロック部が上方からそして上記係止突起が下方から突入して、上記ロック金具が上記被係止部と前後方向で係止可能となることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
【請求項1】
回路基板上に配され、挿入された平型導体を回路基板と電気的に接続する電気コネクタであって、金属板の平坦な板面を維持して作られていて平型導体と接触する接触部、回路基板に接続される接続部、平型導体を圧する押圧部、該押圧部を押圧方向に変位させるための力を受ける被圧部が設けられ、上記板面に直角方向に配列された複数の端子と、端子と同様に金属板の平坦な板面を維持して作られていて平型導体と係止してロックするロック部、該ロック部を変位させるための力を受ける被圧部が設けられ、上記端子と板面が平行となるように配置されたロック金具と、挿入された平型導体の接続部分を受け入れる受入空間が形成され上記接触部が平型導体と接触する位置に上記端子を保持しそしてロック金具を保持するハウジングと、上記端子及びロック金具の被圧部に力を加えるための加圧部が設けられていて、平型導体の挿入を可能とする開位置と平型導体を端子の接触部へ圧すると共にロック部をロック位置へもたらす閉位置との間を移動可能な可動部材とを有し、上記端子そしてロック金具は平型導体の挿入方向を長手方向として延びる上腕部と下腕部がそれらの長手方向中間位置で連結部により連結されて形成され、端子は、上腕部が連結部よりも平型導体の挿入方向先方の前部に被圧部をそして後部に押圧部を有し、ロック金具は上腕部が前部に被圧部そして後部に突起状のロック部を有している回路基板用電気コネクタにおいて、
上記ロック金具は、下腕部が後部に、上記ロック部と上下方向で対向して上方へ向けて突出する係止突起を有しており、上記可動部材が閉位置にあるとき、平型導体の側縁に被係止部として形成された切欠凹部に、上記ロック部が上方からそして上記係止突起が下方から突入して、上記ロック金具が上記被係止部と前後方向で係止可能となることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−169296(P2012−169296A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108289(P2012−108289)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2010−41664(P2010−41664)の分割
【原出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2010−41664(P2010−41664)の分割
【原出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
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