説明

回路構造物

【課題】組付作業性の低下を招かずに、挿入状態を確認可能とする。
【解決手段】貫通孔を有する親基板と、親基板に実装される子基板20とを備えた回路構造物において、子基板20の下端部に貫通孔に挿入する挿入部27を設け、挿入部27に複数の導電部29を形成し、隣り合う導電部29、29間に非導電部30を形成し、導電部29および非導電部30上にマーク部31を挿入部27先端部分を露出させて形成する。マーク部31の非導電部30に形成された非導電マーク部33は、マーク部31の導電部29に形成された導電マーク部32よりも先端方向に延出させる。挿入部を貫通孔内にマークに妨げられずに挿入して行くことができるので、組付作業性の低下を防止することができる。また、挿入部を貫通孔内に適正に挿入することができるので、挿入状態を確実に検査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路構造物に関し、特に、親基板と子基板とを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回転体の回転数(回転速度)を検出する回転検出装置には、ホールICが実装される子基板と、子基板が実装される親基板とを備えた回路構造物が、使用されている。
このような回路構造物においては、親基板の貫通孔(スルーホール)に子基板の挿入部を挿入し、半田付けによって機械的かつ電気的に接続することが、従来から行われている。例えば、特許文献1参照。
【特許文献1】特開平10−209595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
親基板の貫通孔に子基板の挿入部を挿入する回路構造物において、子基板の挿入部にマーク(印)部を予めシルク(スクリーン)印刷しておき、挿入部の貫通孔への挿入作業後に、マーク部が見えなくなったことを確認することにより、挿入部の貫通孔への挿入状態を検査する方法が、考えられる。
しかしながら、このような検査方法においては、貫通孔の口径に対して、挿入部の厚さがマーク部の分だけ厚くなるために、貫通孔と挿入部との嵌合がきつくなり、組付作業性が低下してしまうという問題点がある。
【0004】
本発明の目的は、組付作業性の低下を招かずに、挿入状態を確認することができる回路構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)貫通孔を有する親基板と、該親基板に実装される子基板とを備えており、
前記子基板は、前記親基板の前記貫通孔に挿入する挿入部と、該挿入部に形成された複数の導電部と、前記挿入部に形成され、前記導電部の隣り合う同士間に形成された非導電部と、前記挿入部の表面にその先端部を露出させて形成されたマーク部と、を備えている回路構造物であって、
前記導電部間に形成された前記マーク部は、前記導電部に形成された前記マーク部より前記先端部方向に延出した延出部を有することを特徴とする回路構造物。
(2)貫通孔を有する親基板と、該親基板に実装される子基板とを備えており、
前記子基板は、前記親基板の前記貫通孔にそれぞれ挿入する挿入部と、該挿入部に形成された複数の導電部と、挿入部に形成され、前記導電部の隣り合う同士間に形成された非導電部と、前記複数の導電部間に形成されたマーク部と、を備えていることを特徴とする回路構造物。
(3)前記挿入部は、前記貫通孔から突出する肩部を有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の回路構造物。
(4)前記複数の導電部間に形成されたマーク部は、前記貫通孔の深さ方向の寸法が前記親基板の厚さよりも小さく形成されていることを特徴とする前記(1)(2)または(3)に記載の回路構造物。
【発明の効果】
【0006】
前記した(1)(2)によれば、挿入部を貫通孔内にマークに妨げられずに挿入して行くことができるので、組付作業性の低下を防止することができる。また、挿入部を貫通孔内に適正に挿入することができるので、挿入状態を確実に検査することができる。
前記(3)によれば、挿入部が貫通孔内に完全に挿入すると、肩部が貫通孔の開口縁部に係合するので、子基板を親基板に位置決めすることができる。
前記(4)によれば、挿入部が貫通孔内に完全に挿入すると、マークが貫通孔内に隠れるので、子基板が親基板に適正に取り付けられた否か検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0008】
本実施の形態において、本発明に係る回路構造物は、モータやエンジン等の回転軸の回転数を検出する回転検出装置に使用されるものとして構成されている。
図1に示されているように、本実施の形態に係る回路構造物1は、図2に示された親基板10と、図3に示された子基板20とを備えている。子基板20は一対(2枚)が使用されている。
【0009】
図2に示されているように、親基板10は基材11を備えている。基材11はガラスエポキシ樹脂等の絶縁材料が使用されて略逆凸字形の平板形状に形成されている。
基材11の一方の主面(以下、表側面とする。)には電気部品実装エリア12が形成されている。電気部品実装エリア12にはコイルやコンデンサやレジスタ(受動部品)およびトランジスタ(能動部品)等の電気部品13が配置されて、半田付け部によって電気的かつ機械的に接続されている。
基材11の表側面にはコネクタ14が電気部品実装エリア12に隣接して搭載されている。
基材11の裏側面には電気配線16が形成されている。電気配線16は電気部品実装エリア12の電気部品13および子基板20を電気的に接続するように配線されている。
ちなみに、電気部品実装エリア12や電気配線16は、基材11の表側面および裏側面に固着された銅箔をリソグラフィ処理によってパターニングすることにより、形成されている。
図示しないが、電気部品実装エリア12や電気配線16は、絶縁性を有するコーティング材料によって被覆されている。
【0010】
図2に示されているように、親基板10の一方の凹みには半円形状部17が形成されており、半円形状部17は円形リングマグネット(図示せず)の外径に対応している。円形リングマグネットは回転検出装置(図示せず)の被検出体を構成する。
半円形状部17の縁辺部には第一貫通孔18と第二貫通孔19とが隣り合わせに並べられて開設されている。第一貫通孔18および第二貫通孔19はいずれも、細長い長方形に形成されており、長方形の長さおよび幅は一対の子基板20、20の挿入部にそれぞれ対応している。
【0011】
図3に示されているように、子基板20は基材21を備えている。基材21はガラスエポキシ樹脂等の絶縁材料が使用されて、略逆凸字形の平板形状に形成されている。
基材21の一方の主面(以下、表側面とする。)には電気部品実装エリア22が形成されている。電気部品実装エリア22にはホールIC23が配置されて、半田付け部24によって電気的かつ機械的に接続されている。
基材21の裏側面には電気配線26が形成されている。電気配線26はホールIC23にスルーホール導体25によって電気的に接続配線されている。
【0012】
図3に示されているように、子基板20には挿入部27が形成されており、挿入部27は第一貫通孔18および第二貫通孔19に挿入可能に構成されている。すなわち、挿入部27の横断面は第一貫通孔18および第二貫通孔19の長方形と極僅かに大きめに相似している。
挿入部27の片脇には肩部28が形成されており、肩部28は第一貫通孔18および第二貫通孔19の開口縁部にそれぞれ係合するように構成されている。
挿入部27の表側面および裏側面には導電部29が3本ずつそれぞれ形成されている。表側面および裏側面のいずれにおいても、3本の導電部29、29、29は等間隔(等ピッチ)をもって挿入方向に延在し、かつ、互いに平行に敷設されており、しかも、表側面の導電部29と裏側面の導電部29同士は互いに整合している。
表側面および裏側面のいずれにおいても、各導電部29はホールIC23にスルーホール導体25および電気配線26によってそれぞれ電気的に接続配線されている。
表側面および裏側面のいずれにおいても、隣り合う導電部29と29との間には非導電部30がそれぞれ形成されている。非導電部30は一定幅に形成されている。
電気部品実装エリア22や電気配線26および導電部29は、基材21の表側面および裏側面に固着された銅箔をリソグラフィ処理によってパターニングすることにより、形成されている。
図示しないが、電気部品実装エリア22や電気配線26および導電部29は、絶縁性を有するコーティング材料によって被覆されている。
【0013】
図3に示されているように、表側面および裏側面のいずれにおいても、挿入部27の中間部にはマーク部31がシルク印刷によって形成されている。マーク部31は挿入部27の先端部を露出させている。マーク部31は非導電性のインクが使用されて形成されている。
マーク部31は導電部29に形成された部分(以下、導電マーク部という。)32と、非導電部30に形成された部分(以下、非導電マーク部という。)33とを有している。
導電マーク部32は挿入方向(以下、高さ方向とする。)寸法Haを、非導電マーク部33の高さ方向寸法Hbよりも小さく形成されている。導電マーク部32と非導電マーク部33とは基端側高さを一致しているので、導電マーク部32の先端高さは非導電マーク部33の先端高さよりも基端側に寄っており、逆に、非導電マーク部33の先端高さは導電マーク部32の先端高さよりも先端側に寄っている。すなわち、マーク部31の基端辺は一直線になっているが、マーク部31の先端辺は矩形波形状になっている。
【0014】
次に、子基板の挿入部を親基板の貫通孔に挿入する時の作用および効果を、第一貫通孔(以下、貫通孔という。)18に挿入される場合を例にして、図4によって説明する。
【0015】
図4(a)に示されているように、子基板20の挿入部27が親基板10の貫通孔18に挿入される初期においては、挿入部27の先端部にはマーク部31が形成されていないために、挿入部27を貫通孔18内に容易に挿し込むことができる。
【0016】
非導電マーク部33の先端高さは導電マーク部32の先端高さよりも先端側に寄っているので、図4(b)に示されているように、非導電マーク部33が貫通孔18内に導電マーク部32よりも先に挿入する。
この際に、非導電マーク部33の貫通孔18に対する寸法(厚さ)は、導電部29の厚さ分(銅箔の厚さ分)だけ小さい(薄い)ために、抵抗なく円滑に挿入して行く。
【0017】
導電マーク部32の先端高さが非導電マーク部33の先端高さよりも基端側に寄っているので、図4(c)に示されているように、導電マーク部32は貫通孔18内に非導電マーク部33よりも遅れて挿入する。
この際に、導電マーク部32の貫通孔18に対する寸法(厚さ)は、導電部29の厚さ分(銅箔の厚さ分)だけ非導電マーク部33よりも大きい(厚い)が、既に、挿入部27は貫通孔18内に非導電マーク部33の高さ分だけ深く挿入した状態になっているので、抵抗なく円滑に挿入して行く。
【0018】
挿入がさらに進み、図4(d)に示されているように、挿入部27が貫通孔18内に所定深さに達すると、マーク部31が貫通孔18内に収まった状態になるので、マーク部31は貫通孔18内に隠れて見えない状態になる。
マーク部31が貫通孔18内に収まって見えなくなったことを確認することにより、挿入部27の貫通孔18への挿入状態を検査することができる。
【0019】
挿入部27の貫通孔18への挿入作業および挿入検査作業の後に、回路構造物1が半田付け処理されることにより、図1に示されているように、挿入部27の先端部に露出した各導電部29に半田付け部34が形成される。
この際に、挿入部27が貫通孔18に適正に挿入されたことが挿入検査作業によって保証されているので、各導電部29に半田付け部34を適正に形成することができる。
【0020】
図5は本発明の第二実施形態に係る子基板を示している。
本実施形態が前記実施形態と異なる点は、マーク部31Aの基端辺は一直線になっているが、マーク部31Aの先端辺は三角波形状になっている点である。
本実施形態においても、非導電マーク部33Aの先端高さが導電マーク部32Aの先端高さよりも先端側に寄っているので、非導電マーク部33Aが貫通孔18内に導電マーク部32Aよりも先に挿入する状態になる。
逆に、導電マーク部32Aの先端高さが非導電マーク部33Aの先端高さよりも基端側に寄っているので、導電マーク部32Aは貫通孔18内に非導電マーク部33Aよりも遅れて挿入する状態になる。
したがって、導電マーク部32Aの貫通孔18に対する寸法(厚さ)は、導電部29の厚さ分(銅箔の厚さ分)だけ非導電マーク部33Aよりも大きい(厚い)が、挿入部27は貫通孔18内に非導電マーク部33の高さ分だけ深く挿入した状態になっているので、抵抗なく円滑に挿入して行くことができる。
【0021】
図6は本発明の第三実施形態に係る子基板を示している。
本実施形態が前記実施形態と異なる点は、マーク部31Bは非導電部30だけに形成されている点である。
本実施の形態においては、マーク部31Bは非導電部30だけに形成されているので、挿入部27は貫通孔18内に抵抗なく円滑に挿入して行くことができる。
【0022】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0023】
例えば、マークはシルク印刷によって形成するに限らず、インクジェット印刷等によって形成してもよい。
【0024】
挿入部に形成する導電部は3本に限らず、2本または4本以上であってもよい。
【0025】
親基板はコントローラ等を接続するに限らないし、子基板はホールICを接続するに限らない。
【0026】
前記実施の形態においては、回路構造物を回転検出装置に適用した場合について説明したが、本発明は、その他の回路構造物全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態である回路構造物を示しており、(a)は正面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。
【図2】親基板を示しており、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(a)のc−c線に沿う断面図である。
【図3】子基板を示しており、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(a)のc−c線に沿う断面図である。
【図4】挿入部を貫通孔に挿入する時の作用を示す各断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る子基板を示しており、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(a)のc−c線に沿う断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る子基板を示しており、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(a)のc−c線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…回路構造物(振動体実装回路基板)、
10…親基板、11…基材、12…電気部品実装エリア、13…電気部品、14…コネクタ、16…電気配線、17…半円形状部、18…第一貫通孔、19…第二貫通孔、
20…子基板、21…基材、22…電気部品実装エリア、23…ホールIC、24…半田付け部、25…スルーホール導体、26…電気配線、27…挿入部、28…肩部、29…導電部、30…非導電部、
31…マーク部、32…導電マーク部(マーク部の導電部に形成された部分)、33…非導電マーク部(マーク部の非導電部に形成された部分)、34…半田付け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する親基板と、該親基板に実装される子基板とを備えており、
前記子基板は、前記親基板の前記貫通孔にそれぞれ挿入する挿入部と、該挿入部に形成された複数の導電部と、前記挿入部に形成され、前記導電部の隣り合う同士間に形成された非導電部と、前記挿入部の表面にその先端部を露出させて形成されたマーク部と、を備えている回路構造物であって、
前記導電部間に形成された前記マーク部は、前記導電部に形成された前記マーク部より前記先端部方向に延出した延出部を有することを特徴とする回路構造物。
【請求項2】
貫通孔を有する親基板と、該親基板に実装される子基板とを備えており、
前記子基板は、前記親基板の前記貫通孔にそれぞれ挿入する挿入部と、該挿入部に形成された複数の導電部と、挿入部に形成され、前記導電部の隣り合う同士間に形成された非導電部と、前記複数の導電部間に形成された前記マーク部と、を備えていることを特徴とする回路構造物。
【請求項3】
前記挿入部は、前記貫通孔から突出する肩部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の回路構造物。
【請求項4】
前記複数の導電部間に形成されたマーク部は、前記貫通孔の深さ方向の寸法が前記親基板の厚さよりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1、2または3に記載の回路構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate