説明

回路装置、通信機器及び通信システム

【課題】低消費電力で無線通信を行うことが可能な回路装置、通信機器及び通信システムを提供すること。
【解決手段】この回路装置は、所与のイベントを検出する第2のセンサーを備えた外部機器と通信を行う回路装置であって、前記所与のイベントを検出する第1のセンサーからの入力を処理するセンサー入力部と、無線通信部の動作を制御する通信制御部とを含み、前記第1のセンサーの出力に基づき通信タイミングを決定し、前記通信タイミングに基づき前記無線通信部を介して前記外部機器との通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、通信機器及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信機器では、水晶振動子を基準クロックとしたタイマー制御を基本技術として用いて無線通信の同期を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−221743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の通信機器では、同期のズレ幅は水晶振動子の精度に依存するため、常に同期補正の通信を所定通信間隔で行う必要があり、また常時水晶振動子を発振し続ける必要があるため、ホスト側も端末側も電力消費が大きくなるといった問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、低消費電力で無線通信を行うことが可能な回路装置、通信機器及び通信システムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る回路装置は、所与のイベントを検出する第2のセンサーを備えた外部機器と通信を行う回路装置であって、前記所与のイベントを検出する第1のセンサーからの入力を処理するセンサー入力部と、無線通信部の動作を制御する通信制御部とを含み、前記第1のセンサーの出力に基づき通信タイミングを決定し、前記通信タイミングに基づき前記無線通信部を介して前記外部機器との通信を行う。
【0007】
本発明によれば、第1のセンサーと外部機器の第2のセンサーが同一のイベント(事象)を検出したタイミングに基づき、外部機器との通信を行うことができ、同期目的の水晶振動子を常時動作させることなく、また、所定間隔の同期補正通信を行うことなく、低消費電力で無線通信を行うことができる。
【0008】
(2)この回路装置は、前記第1のセンサーの出力に基づき前記無線通信部を介して前記外部機器との前記通信を開始し、前記通信を開始してから所定時間経過後に、タイマーの出力に基づき前記無線通信部を介して前記外部機器との通信を行うようにしてもよい。
【0009】
本発明によれば、第1のセンサーの出力に基づき通信を開始することで、電力消費が大きな通信開始時の電力の消費を低減することができる。
【0010】
(3)この回路装置は、前記第1のセンサーの出力が所定回数の所定の条件を満たすと判断した場合に、前記無線通信部を介して前記外部機器との前記通信を行うようにしてもよい。
【0011】
本発明によれば、通信の通信間隔を長くすることができ、より低消費電力で無線通信を行うことができる。
【0012】
(4)この回路装置は、前記第1のセンサーの出力が所定の条件を満たすと判断してから所定時間経過後に、前記無線通信部を介して前記外部機器との前記通信を行うようにしてもよい。
【0013】
本発明によれば、外部機器との通信を行う回路装置が複数ある場合に、コリジョンが発生することを防止することができる。
【0014】
(5)この回路装置は、前記第1のセンサーは、動き、光、音及び圧力の少なくとも1つを検出するセンサーであってもよい。
【0015】
(6)本発明に係る通信機器は、前記回路装置と、前記第1のセンサーと、前記無線通信部と、を含んでもよい。
【0016】
(7)この通信機器は、前記第1のセンサーは、動きを検出する慣性センサーであり、前記回路装置は、前記第1のセンサーの出力に基づき歩数を計測する処理を行い、計測結果を、前記第1のセンサーの出力に基づき決定した通信タイミングで前記無線通信部を介して前記外部機器に送信する処理を行うようにしてもよい。
【0017】
本発明によれば、慣性センサーの出力に基づき歩数を計測しつつ、慣性センサーの出力に基づき通信タイミングを決定することで、歩数を計測したタイミングで外部機器に計測結果を送信することが可能となり、効率が良く低消費電力な無線通信を行うことができる。
【0018】
(8)本発明に係る通信システムは、互いに無線通信を行う第1の通信機器及び第2の通信機器を含む通信システムであって、前記第1の通信機器は、前記第2の通信機器との間で無線通信を行う第1の無線通信部と、所与のイベントを検出する第1のセンサーと、前記第1のセンサーの出力に基づき第1の通信タイミングを決定し、前記第1の通信タイミングに基づき前記第1の無線通信部を介して前記第2の通信機器との通信を行う第1の回路装置とを備え、前記第2の通信機器は、前記第1の通信機器との間で無線通信を行う第2の無線通信部と、前記所与のイベントを検出する第2のセンサーと、前記第2のセンサーの出力に基づき第2の通信タイミングを決定し、前記第2の通信タイミングに基づき前記第2の無線通信部を介して前記第1の通信機器との通信を行う第2の回路装置とを備える。
【0019】
本発明によれば、第1のセンサーと第2のセンサーが同一のイベント(事象)を検出したタイミングに基づき、第1及び第2の通信機器間で通信を行うことができ、同期目的の水晶振動子を常時動作させることなく、また、所定間隔の同期補正通信を行うことなく、低消費電力で無線通信を行うことができる。
【0020】
(9)この通信システムは、前記第1のセンサー及び前記第2のセンサーは、動きを検出する慣性センサーであり、前記第1の通信機器及び第2の通信機器は、人体又は車体に装着されてもよい。
【0021】
本発明によれば、第1及び第2の通信機器を人体又は車体に装着することで、第1及び第2の通信機器が人体又は車体の動きを検出したタイミングに基づき、第1及び第2の通信機器間で通信を行うことができる。
【0022】
(10)この通信システムは、前記第1のセンサー及び前記第2のセンサーは、動きを検出する慣性センサーであり、前記第1の回路装置は、前記第1のセンサーの出力に基づき歩数を計測する処理を行い、計測結果を、前記第1のセンサーの出力に基づき決定した通信タイミングで前記第1の無線通信部を介して前記第2の通信機器に送信する処理を行い、前記第2の回路装置は、前記第2のセンサーの出力に基づき決定した通信タイミングで前記第2の無線通信部を介して前記計測結果を受信する処理を行うようにしてもよい。
【0023】
本発明によれば、慣性センサーの出力に基づき歩数を計測しつつ、慣性センサーの出力に基づき通信タイミングを決定することで、歩数を計測したタイミングで第1の通信機器から第2の通信機器に計測結果を送信することが可能となり、効率が良く低消費電力な無線通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る回路装置と通信機器を含む通信システムの機能ブロック図の一例を示す。
【図2】本実施形態の手法について説明するための図。
【図3】本実施形態の手法について説明するための図。
【図4】本実施形態の手法について説明するための図。
【図5】本実施形態の手法について説明するための図。
【図6】第1の通信機器の処理の一例を示すフローチャート図。
【図7】第2の通信機器の処理の一例を示すフローチャート図。
【図8】変形例について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0026】
1.構成
図1に、本実施形態に係る回路装置と通信機器を含む通信システムの機能ブロック図の一例を示す。なお本実施形態の通信システムは図1の構成要素の一部を省略した構成としてもよい。
【0027】
図1に示す通信システム1は、互いに無線通信を行う第1の通信機器10(本発明の通信機器及び第1の通信機器に対応)及び第2の通信機器20(本発明の外部機器及び第2の通信機器に対応)を含む。
【0028】
第1の通信機器10は、無線通信可能な電子機器であり、第2の通信機器20は、例えば、無線通信可能な携帯電話、腕時計等の携帯型情報処理装置である。
【0029】
1−1.第1の通信機器
第1の通信機器10は、回路装置100、第1のセンサー110、記憶部120、無線通信部130を含む。
【0030】
第1のセンサー110は、第1の通信機器10を携帯(装着する)利用者の動き(慣性力)を検出するものであり、例えば、加速度を検出する加速度センサーでもよいし、角速度を検出するジャイロセンサー(角速度センサー)でもよい。第1のセンサー110は、第1の通信機器10に対して相対位置が固定された状態で設けられており、第1の通信機器10の動きを検出することができる。第1のセンサー110の出力はA/D変換器(図示省略)に入力され、A/D変換器の出力は回路装置100に入力される。
【0031】
記憶部120は、回路装置100のワーク領域となり、また、回路装置100の各部(センサー入力部102、通信制御部104)としてコンピューターを機能させるためのプログラムやデータなどを格納するものであり、その機能はRAMやROMなどにより実現することができる。
【0032】
無線通信部130(第1の無線通信部)は、第2の通信機器20との間で無線通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサーや通信用ASICなどにより実現することができる。無線通信部130は、例えば、ブルートゥース、無線LAN或いはANTなどの方式の近距離無線通信を実現する。
【0033】
回路装置100(第1の回路装置)は、記憶部120をワーク領域として、第1のセンサー110の出力に基づきデータ処理及び通信タイミングの決定を行い、処理結果を、決定した通信タイミングに基づき無線通信部130を介して第2の通信機器20に送信する制御を行うものであり、その機能は、CPUなどのプロセッサーやプログラムにより実現できる。回路装置100は、センサー入力部102、通信制御部104を含む。
【0034】
センサー入力部102は、所与のイベント(例えば、利用者の動き)を検出する第1のセンサー110からの入力を処理する。センサー入力部102は、第1のセンサー110の出力に基づき歩数を計測する処理を行う。例えば、センサー入力部102は、第1のセンサー110の出力値が所定の閾値を超えたと判断した場合に歩数を検出して、歩数のカウントを行う。歩数のカウント値(計測値)は、記憶部120に一時的に記憶される。
【0035】
通信制御部104は、第1のセンサー110の出力に基づき通信タイミングを決定し、決定した通信タイミングに基づき無線通信部130を介して第2の通信機器20との通信を行う。通信制御部104は、センサー入力部102によって検出された歩数の計測値(歩数のカウント値)を、決定した通信タイミングで無線通信部130を介して第2の通信機器20に送信する。
【0036】
例えば、通信制御部104は、第1のセンサー110の出力値が所定の閾値を超えたと判断した場合(第1のセンサー110の出力値が所定の条件を満たしたと判断した場合)に、割り込み信号を生成して無線通信部130を通信可能状態(アクティブモード)に移行させ、通信可能状態となった無線通信部130を介して第2の通信機器20に歩数の計測値を送信する。そして、通信制御部104は、計測値の送信後は無線通信部130を通信不能状態(スリープモード)に移行させる。
【0037】
ここで、通信タイミングを検出するための閾値と、歩数を検出するための閾値とを、同一の値としてもよいし、異なる値としてもよい。また、第1の通信機器10は、複数のセンサーを備えていて、通信のタイミングを決定するセンサーとは別のセンサーの検出結果を通信してもよい。例えば、第1の通信機器10は、通信タイミングを決定するためのセンサーと、歩数を検出するためのセンサーとを別々に備えるようにしてもよい。
【0038】
また、通信制御部104は、第1のセンサー110の出力に基づき無線通信部130を介して第2の通信機器20との通信を開始し、通信を開始してから所定時間経過後に、第1の通信機器10が備えるタイマーの出力に基づき無線通信部130を介して第2の通信機器20との通信を行うようにしてもよい。
【0039】
また、通信制御部104は、第1のセンサー110の出力と、第2の通信機器20から受信した第2のセンサー210の出力とに基づき通信タイミングを決定するようにしてもよい。例えば、通信制御部104は、第1のセンサー110の出力値と第2の第2のセンサー210の出力値が同一の事象(利用者の動き)に基づくものであるか否かを判断して、同一の事象に基づくものであると判断した場合に、第2の通信機器20との通信を行う。同一の事象に基づくものであるか否かは、両出力値の相関を取ることで判断することができ、また、第1のセンサー110の出力値と第2のセンサー210の出力値がそれぞれ出力された時刻により判断してもよい。このようにすると、より確実に通信のタイミングを決定することができる。
【0040】
また、通信制御部104は、第1のセンサー110の出力が所定回数だけ所定の条件を満たすと判断した場合(第1のセンサー110の出力値が所定回数だけ所定の閾値を超えたと判断した場合)に、無線通信部130を介して第2の通信機器20との通信を行うようにしてもよい。
【0041】
また、通信制御部104は、第1のセンサー110の出力が所定の条件を満たすと判断してから(第1のセンサー110の出力値が所定の閾値を超えたと判断してから)所定時間経過後に、無線通信部130を介して第2の通信機器20との通信を行うようにしてもよい。
【0042】
1−2.第2の通信機器
第2の通信機器20は、回路装置200、第2のセンサー210、記憶部220、無線通信部230、表示部240を含む。
【0043】
第2のセンサー210は、第2の通信機器20を携帯(装着する)利用者の動き(慣性力)を検出するものであり、例えば、加速度を検出する加速度センサーでもよいし、角速度を検出するジャイロセンサー(角速度センサー)でもよい。第2のセンサー210は、第2の通信機器20に対して相対位置が固定された状態で設けられており、第2の通信機器20の動きを検出することができる。第2のセンサー210の出力はA/D変換器(図示省略)に入力され、A/D変換器の出力は回路装置200に入力される。なお、第2の通信機器20では、歩数の検出を行わないため、第1の通信機器10に備わるセンサー(例えば、3軸加速度センサー)よりも精度の低い安価なセンサー(例えば、1軸加速度センサー)を採用することができる。
【0044】
記憶部220は、回路装置200のワーク領域となり、また、回路装置200の各部として第2の通信機器20(コンピューター)を機能させるためのプログラムやデータなどを格納するものであり、その機能はRAMやROMなどにより実現することができる。
【0045】
無線通信部230(第2の無線通信部)は、第1の通信機器10との間で無線通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサーや通信用ASICなどにより実現することができる。無線通信部230は、例えば、ブルートゥース、無線LAN或いはANTなどの方式の近距離無線通信を実現する。
【0046】
表示部240は、回路装置200で生成された画像を出力するものであり、その機能は、LCD、タッチパネル型ディスプレイなどにより実現できる。
【0047】
回路装置200(第2の回路装置)は、記憶部220をワーク領域として、第2のセンサー210の出力に基づき通信タイミングの決定を行い、決定した通信タイミングに基づき無線通信部230を介して第1の通信機器10との通信を行って、第1の通信機器10から受信した歩数の計測値を表示部240に表示させる処理を行うものであり、その機能は、CPUなどのプロセッサーやプログラムにより実現できる。回路装置200は、通信制御部204を含む。
【0048】
通信制御部204は、第2のセンサー210の出力に基づき通信タイミングを決定し、決定した通信タイミングに基づき無線通信部230を介して第1の通信機器10との通信を行う。すなわち、通信制御部204は、決定した通信タイミングで無線通信部230を介して第1の通信機器10から送信された歩数の計測値を受信する。
【0049】
例えば、通信制御部204は、第2のセンサー210の出力値が所定の閾値を超えたと判断した場合(第2のセンサー210の出力値が所定の条件を満たしたと判断した場合)に、割り込み信号を生成して無線通信部230を通信可能状態(アクティブモード)に移行させ、通信可能状態となった無線通信部230を介して第1の通信機器10から歩数の計測値を受信する。そして、通信制御部204は、計測値の受信後は無線通信部230を通信不能状態(スリープモード)に移行させる。
【0050】
また、通信制御部204は、第2のセンサー210の出力に基づき無線通信部230を介して第1の通信機器10との通信を開始し、通信を開始してから所定時間経過後に、第2の通信機器20が備えるタイマーの出力に基づき無線通信部230を介して第1の通信機器10との通信を行うようにしてもよい。
【0051】
また、通信制御部204は、第2のセンサー210の出力と第1の通信機器10から受信した第1のセンサー110の出力とに基づき通信タイミングを決定するようにしてもよい。例えば、通信制御部204は、第2のセンサー210の出力値と第1のセンサー110の出力値が同一の事象(利用者の動き)に基づくものであるか否かを判断して、同一の事象に基づくものであると判断した場合に、第1の通信機器10との通信を行う。
【0052】
また、通信制御部204は、第2のセンサー210の出力が所定回数だけ所定の条件を満たすと判断した場合(第2のセンサー210の出力値が所定回数だけ所定の閾値を超えたと判断した場合)に、無線通信部230を介して第1の通信機器10との通信を行うようにしてもよい。
【0053】
また、通信制御部204は、第2のセンサー210の出力が所定の条件を満たすと判断してから所定時間経過後に、無線通信部230を介して第1の通信機器10との通信を行うようにしてもよい。
【0054】
2.本実施形態の手法
次に本実施形態の手法について図面を用いて説明する。
【0055】
図2は、第1及び第2の通信機器10、20における、センサーの出力値の遷移と、そのときの割り込み信号の生成タイミング及び無線通信のタイミングの一例を示す図である。
【0056】
図2に示すように、利用者が第1の通信機器10と第2の通信機器20とを携帯(装着)して歩行すると、第1の通信機器10では、歩行時の着地の衝撃により第1のセンサー110の出力値が所定の閾値THを超え、これにより歩数がカウントされるとともに、割り込み信号が生成されて無線通信部130が通信可能状態となり、歩数の計測値が第2の通信機器20に送信される。
【0057】
同様に、第2の通信機器20でも、歩行時の着地の衝撃により第2のセンサー210の出力値が所定の閾値THを超え、これにより第1の通信機器10とほぼ同一のタイミングで割り込み信号が生成されて無線通信部230が通信可能状態となり、第1の通信機器10から送信された歩数の計測値を受信することができる。
【0058】
このように、本実施形態の通信システム1では、第1の通信機器の第1のセンサー110と第2の通信機器の第2のセンサー210が利用者の動き(着地衝撃)を検出したタイミングに基づき通信を行うようにしている。
【0059】
なお、第1及び第2の通信機器10、20において、第1及び第2のセンサー110、210の出力値が所定の閾値THを超えてから所定時間経過後に割り込み信号を生成して通信を行うようにしてもよい。
【0060】
図3は、利用者の動きの遷移と、そのときのセンサーの出力値、無線通信のタイミング及び送信される計測値の一例を示す図である。
【0061】
図3に示すように、本実施形態の通信システムでは、利用者が歩行している場合には、着地衝撃(歩数)を検出したタイミングで通信が行われ、歩数の計測値が第1の通信機器10から第2の通信機器20に送信される。また利用者が停止している場合には、歩数が検出されないため無線通信は行われない。
【0062】
すなわち、本実施形態の通信システムでは、歩数を計測して送信するために必要な無線通信のみが行われるため、送信側(第1の通信機器10)と受信側(第2の通信機器20)の電力消費を効率的に低減することができる。また、本実施形態の通信システムでは、センサーの出力値に基づき通信タイミングを決定するため、同期目的の水晶振動子を常時動作させる必要や、所定間隔の同期補正通信を行う必要がなく、低消費電力で通信を行うことができる。
【0063】
なお、本実施形態の通信システムでは、センサーの出力に基づき着地衝撃(歩数)を複数回検出したタイミングで通信を行うようにしてもよい。図4に示す例では、最初の着地衝撃を検出した後は、着地衝撃を2回検出した場合に通信を1回行うようにしている。従って、送信される歩数の計測値は2ずつ増加することになる。このようにすると、通信の通信間隔を長くすることができ、より低消費電力で無線通信を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態の通信システムでは、図5に示すように、通信の開始時においては、センサーの出力に基づき通信を行い、その後、タイマーの出力に基づき通信を行うようにしてもよい。そして、同期外れによってタイマーの出力に基づく通信が停止した場合には、再びセンサーの出力に基づき通信を開始し、所定時間経過後にタイマーの出力に基づく通信に移行するようにすればよい。このように、センサーの出力に基づき通信を開始することで、電力消費が大きな通信開始時の電力の消費を低減することができる。
【0065】
3.処理
次に、本実施形態の処理の一例について図6、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0066】
図6は、第1の通信機器10の処理の一例を示すフローチャート図である。
【0067】
まず、通信制御部104は、無線通信部130を通信不能モード(無線通信部130に電力を供給しないモード)に設定する(ステップS10)。次に、通信制御部104は、第1のセンサー110の出力値が所定の閾値を超えたか否かを判断する(ステップS12)。所定の閾値を超えていないと判断した場合(ステップS12のN)には、ステップS10の処理に進む。
【0068】
第1のセンサー110の出力値が所定の閾値を超えたと判断した場合(ステップS12のY)には、通信制御部104は、割り込み信号を生成し(ステップS14)、無線通信部130を通信可能モード(無線通信部130に電力を供給するモード)に移行させる(ステップS16)。
【0069】
次に、センサー入力部102は、歩数を計測する処理を行う(ステップS18)。すなわち、センサー入力部102は、歩数の計測値n(カウント値)を1だけ増加させる。次に、通信制御部104は、センサー入力部102で計測された計測値を、無線通信部130を介して第2の通信機器20に送信し(ステップS20)、ステップS10の処理に進む。
【0070】
図7は、第2の通信機器20の処理の一例を示すフローチャート図である。
【0071】
まず、通信制御部204は、無線通信部230を通信不能モード(無線通信部230に電力を供給しないモード)に設定する(ステップS30)。次に、通信制御部204は、第2のセンサー210の出力値が所定の閾値を超えたか否かを判断する(ステップS32)。所定の閾値を超えていないと判断した場合(ステップS32のN)には、ステップS30の処理に進む。
【0072】
第2のセンサー210の出力値が所定の閾値を超えたと判断した場合(ステップS32のY)には、通信制御部204は、割り込み信号を生成し(ステップS34)、無線通信部230を通信可能モード(無線通信部230に電力を供給するモード)に移行させる(ステップS36)。
【0073】
次に、通信制御部204は、無線通信部230を介して、第1の通信機器10から送信された歩数の計測値を受信する(ステップS38)。次に、回路装置200は、受信した歩数の計測値を表示部230に表示させる処理を行い(ステップS40)、ステップS30の処理に進む。
【0074】
4.変形例
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0075】
例えば、上記実施形態では、第1の通信機器と第2の通信機器とを利用者が携帯する場合(人体に装着する場合)について説明したが、第1の通信機器と第2の通信機器とを車体に装着するようにしてもよい。例えば、本発明の通信システムをTPMS(タイヤ空気圧監視システム)に適用してもよい。この場合には、第1の通信機器が、車両のタイヤの空気圧を計測し、車内に設けられた第2の通信機器に対して計測値を無線通信により送信し、第2の通信機器は、受信した計測値を車内に設けられたディスプレイに表示する。そして第1の通信機器と第2の通信機器は、動きを検出する慣性センサー(第1及び第2のセンサーに対応)を備え、車両の動き(車両の加速や減速)を検出したタイミングに基づき通信を行う。
【0076】
また、上記実施形態では、動きを検出する慣性センサーの出力に基づき通信タイミングを決定して通信を行う場合について説明したが、光、音或いは圧力を検出するセンサーの出力に基づき通信タイミングを決定して通信を行うようにしてもよい。また、通信のタイミングを決定するセンサーとは別のセンサーの検出結果を通信してもよい。
【0077】
図8(A)、図8(B)は、動き以外の事象を検出するセンサーの出力に基づき通信を行う通信システムの一例について説明するための図である。
【0078】
図8(A)に示す通信システムは、空調機(エアコン)として機能する通信機器20a(第2の通信機器に対応)と、通信機器20aと無線通信を行う3つの通信機器10a、10b、10c(第1の通信機器に対応)を含む。各通信機器20a、10a、10b、10cは、部屋RMの各側壁に設置され、それぞれ光を検出するセンサー(第1及び第2のセンサーに対応)を備え、このセンサーの出力に基づき通信タイミングを決定して通信を行う。また、3つの通信機器10a、10b、10cは、それぞれ室内の温度を検出する温度センサーを備え、この温度センサーの検出結果を通信機器20aに送信する。
【0079】
利用者が部屋RMに入室して部屋RMの照明機器を点灯させると、3つの通信機器10a、10b、10cは、それぞれ、照明機器からの光を検出したタイミングで、温度センサーの出力に基づく温度の計測値を通信機器20aに送信する。通信機器20aも同様に、照明機器からの光を検出したタイミングで、各通信機器10a、10b、10cから送信された温度の計測値を受信する。空調機として機能する通信機器20aは、各通信機器10a、10b、10cから受信した温度の計測値に基づき空気の吹き出し方向BDを制御する。このように、光を検出するセンサーを備えた複数の通信機器を同一の部屋に設置すると、部屋に設置された照明機器の点灯をほぼ同時に検出することができ、照明機器の点灯を検出したタイミングに基づき通信を行うことができる。
【0080】
なお、図8(A)の例において、光を検出するセンサーに代えて、音を検出するセンサー、或いは圧力を検出するセンサーを用いてもよい。音を検出するセンサーを用いた場合には、例えば利用者が部屋のドアDRを開けたときの音をほぼ同時に検出することができ、音を検出したタイミングに基づき通信を行うことができる。また、圧力を検出するセンサーを用いた場合には、利用者が部屋のドアDRを開けた(或いは閉めた)ときの部屋内の気圧の微小な変化をほぼ同時に検出することができ、気圧の変化を検出したタイミングに基づき通信を行うことができる。
【0081】
また、図8(A)の例のように、複数の通信機器から1つの通信機器に対して通信によりデータを送信する場合には、データの送受信のタイミングを通信機器毎にずらすようにしてもよい。図8(B)に示す例では、通信機器10aは光(又は音、圧力)を検出したタイミングとほぼ同一のタイミングで計測値を通信機器20aに送信し、通信機器10bは光を検出したタイミングから時間Δt経過後に計測値を通信機器20aに送信し、通信機器10cは光を検出したタイミングから時間Δt経過後に計測値を通信機器20aに送信している。このようにすると、複数の通信機器から1つの通信機器に対してデータを送信する場合にコリジョンが発生することを防止することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 通信システム、10 第1の通信機器、20 第2の通信機器、100 回路装置、102 センサー入力部、104 通信制御部、110 第1のセンサー、120 記憶部、130 無線通信部、200 回路装置、204 通信制御部、210 第2のセンサー、220 記憶部、230 無線通信部、240 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与のイベントを検出する第2のセンサーを備えた外部機器と通信を行う回路装置であって、
前記所与のイベントを検出する第1のセンサーからの入力を処理するセンサー入力部と、
無線通信部の動作を制御する通信制御部とを含み、
前記第1のセンサーの出力に基づき通信タイミングを決定し、前記通信タイミングに基づき前記無線通信部を介して前記外部機器との通信を行う、回路装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のセンサーの出力に基づき前記無線通信部を介して前記外部機器との前記通信を開始し、前記通信を開始してから所定時間経過後に、タイマーの出力に基づき前記無線通信部を介して前記外部機器との通信を行う、回路装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1のセンサーの出力が所定回数の所定の条件を満たすと判断した場合に、前記無線通信部を介して前記外部機器との前記通信を行う、回路装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第1のセンサーの出力が所定の条件を満たすと判断してから所定時間経過後に、前記無線通信部を介して前記外部機器との前記通信を行う、回路装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第1のセンサーは、動き、光、音及び圧力の少なくとも1つを検出するセンサーである、回路装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の回路装置と、
前記第1のセンサーと、
前記無線通信部と、を含む通信機器。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1のセンサーは、動きを検出する慣性センサーであり、
前記回路装置は、
前記第1のセンサーの出力に基づき歩数を計測する処理を行い、計測結果を、前記第1のセンサーの出力に基づき決定した通信タイミングで前記無線通信部を介して前記外部機器に送信する処理を行う、通信機器。
【請求項8】
互いに無線通信を行う第1の通信機器及び第2の通信機器を含む通信システムであって、
前記第1の通信機器は、
前記第2の通信機器との間で無線通信を行う第1の無線通信部と、
所与のイベントを検出する第1のセンサーと、
前記第1のセンサーの出力に基づき第1の通信タイミングを決定し、前記第1の通信タイミングに基づき前記第1の無線通信部を介して前記第2の通信機器との通信を行う第1の回路装置とを備え、
前記第2の通信機器は、
前記第1の通信機器との間で無線通信を行う第2の無線通信部と、
前記所与のイベントを検出する第2のセンサーと、
前記第2のセンサーの出力に基づき第2の通信タイミングを決定し、前記第2の通信タイミングに基づき前記第2の無線通信部を介して前記第1の通信機器との通信を行う第2の回路装置とを備えた、通信システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1のセンサー及び前記第2のセンサーは、動きを検出する慣性センサーであり、
前記第1の通信機器及び第2の通信機器は、人体又は車体に装着される、通信システム。
【請求項10】
請求項8又は9において、
前記第1のセンサー及び前記第2のセンサーは、動きを検出する慣性センサーであり、
前記第1の回路装置は、
前記第1のセンサーの出力に基づき歩数を計測する処理を行い、計測結果を、前記第1のセンサーの出力に基づき決定した通信タイミングで前記第1の無線通信部を介して前記第2の通信機器に送信する処理を行い、
前記第2の回路装置は、
前記第2のセンサーの出力に基づき決定した通信タイミングで前記第2の無線通信部を介して前記計測結果を受信する処理を行う、通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−199749(P2012−199749A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62134(P2011−62134)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】