説明

回路部品の製造方法

【課題】従来の回路部品の製造方法では、コスト低減を図ることが困難である。
【解決手段】複数の種類の液状体のうちの少なくとも1つの種類の液状体で断面要素161を断面パターン165として描画してから、断面パターン165を硬化させることを、断面要素161ごとに複数の断面要素161にわたって順次に重ねて実施する造形工程と、造形工程の後に、複数の断面パターン165が重なった回路部品6'にメッキを施すメッキ工程と、を含み、液状体の種類には、断面パターン165を構成するための樹脂を含有する樹脂含有液状体と、樹脂及びメッキ触媒を含有する触媒含有液状体との2種類が含まれており、造形工程では、複数の断面パターン165のうちの少なくとも一部の断面パターン165を描画するときに、断面パターン165の少なくとも一部に触媒含有液状体を選択的に塗布する、ことを特徴とする回路部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部品の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回路部品の1つとして、立体成形回路部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−288619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された立体成形回路部品の形成方法によれば、立体的な成形部品にエッチング兼メッキレジストを選択的に塗布してから、この成形部品にエッチングを施すことによって、短絡防止用のレジストを省略することができる。また、この形成方法によれば、立体的な成形部品にエッチング兼メッキレジストを選択的に塗布するので、エッチング兼メッキレジストのパターニングを省略することができる。これらにより、コスト低減を図ることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された立体成形回路部品の形成方法では、さらなるコスト低減を図ることが困難である。
つまり、従来の回路部品の製造方法では、コスト低減を図ることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0007】
[適用例1]造形対象である立体を複数の断面要素に分割し、複数の種類の液状体のうちの少なくとも1つの種類の前記液状体で前記断面要素を断面パターンとして描画してから、前記断面パターンを硬化させることを、前記断面要素ごとに前記複数の断面要素にわたって順次に重ねて実施する造形工程と、前記造形工程の後に、複数の前記断面パターンが重なった積層体にメッキを施すメッキ工程と、を含み、前記液状体の種類には、前記断面パターンを構成するための樹脂を含有する樹脂含有液状体と、前記樹脂及びメッキ触媒を含有する触媒含有液状体との2種類が含まれており、前記造形工程では、前記複数の断面パターンのうちの少なくとも一部の前記断面パターンを描画するときに、前記断面パターンの少なくとも一部に前記触媒含有液状体を選択的に塗布する、ことを特徴とする回路部品の製造方法。
【0008】
この適用例の回路部品の製造方法は、造形工程と、メッキ工程と、を含む。
造形工程では、造形対象である立体を複数の断面要素に分割し、液状体で断面要素を断面パターンとして描画してから、断面パターンを硬化させることを、断面要素ごとに複数の断面要素にわたって順次に重ねて実施する。液状体で断面要素を描画するときには、複数の種類の液状体のうちの少なくとも1つの種類の液状体で断面要素を描画する。
造形工程の後に、メッキ工程では、複数の断面パターンが重なった積層体にメッキを施す。
この製造方法で使用される液状体の種類には、樹脂含有液状体と、触媒含有液状体との2種類が含まれている。樹脂含有液状体は、断面パターンを構成するための樹脂を含有している。触媒含有液状体は、樹脂及びメッキ触媒を含有している。
【0009】
造形工程では、複数の断面パターンのうちの少なくとも一部の断面パターンを描画するときに、断面パターンの少なくとも一部に触媒含有液状体を選択的に塗布する。これにより、断面パターンの少なくとも一部にメッキ触媒をパターニングすることができる。
この製造方法によれば、造形工程において、立体として複数の断面パターンが重なった積層体を形成することができる。また、この積層体における複数の断面パターンのうちの少なくとも一部の断面パターンに、メッキ触媒をパターニングすることができる。そして、この積層体にメッキを施すことによって、メッキ触媒のパターンに沿った回路を形成することができる。これにより、回路が設けられた立体部品を製造することができる。
この製造方法では、造形工程で、立体の形成と、メッキ触媒のパターニングとを実施することができるので、製造方法の効率化を図りやすくすることができる。この結果、コスト低減を図りやすくすることができる。
【0010】
[適用例2]上記の回路部品の製造方法であって、前記造形工程では、前記液状体の種類ごとに前記断面パターンを形成する、ことを特徴とする回路部品の製造方法。
【0011】
この適用例では、造形工程において、液状体の種類ごとに断面パターンを形成するので、1つの断面要素で樹脂含有液状体と触媒含有液状体とが互いに混合することを避けやすくすることができる。
【0012】
[適用例3]上記の回路部品の製造方法であって、前記樹脂含有液状体は、加熱を受けることによって硬化が促進する性質である熱硬化性を有しており、前記造形工程では、前記樹脂含有液状体で前記断面要素を描画してから、前記断面要素を構成する前記樹脂含有液状体を加熱する、ことを特徴とする回路部品の製造方法。
【0013】
この適用例では、樹脂含有液状体は、熱硬化性を有している。そして、造形工程において、樹脂含有液状体で断面要素を描画してから、断面要素を構成する樹脂含有液状体を加熱するので、樹脂含有液状体で断面パターンを形成することができる。
【0014】
[適用例4]上記の回路部品の製造方法であって、前記樹脂含有液状体は、光の照射を受けることによって硬化が促進する性質である光硬化性を有しており、前記造形工程では、前記樹脂含有液状体で前記断面要素を描画してから、前記断面要素を構成する前記樹脂含有液状体に前記光を照射する、ことを特徴とする回路部品の製造方法。
【0015】
この適用例では、樹脂含有液状体は、光硬化性を有している。そして、造形工程において、樹脂含有液状体で断面要素を描画してから、断面要素を構成する樹脂含有液状体に光を照射するので、樹脂含有液状体で断面パターンを形成することができる。
【0016】
[適用例5]上記の回路部品の製造方法であって、前記触媒含有液状体は、レベリング剤を含有している、ことを特徴とする回路部品の製造方法。
【0017】
この適用例では、触媒含有液状体がレベリング剤を含有しているので、メッキ触媒のパターンにおけるレベリング性を高めやすくすることができる。
【0018】
[適用例6]上記の回路部品の製造方法であって、前記断面要素の描画では、前記液状体をインクジェット法で吐出することによって、前記断面要素を描画する、ことを特徴とする回路部品の製造方法。
【0019】
この適用例では、断面要素の描画において、液状体をインクジェット法で吐出することによって、断面要素を描画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態における造形システムの概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態における回路部品の一例を示す斜視図。
【図3】本実施形態における造形装置の概略の構成を示す斜視図。
【図4】本実施形態におけるキャリッジを図3中のA視方向に見たときの正面図。
【図5】本実施形態における吐出ヘッドの底面図。
【図6】図4中のB−B線における断面図。
【図7】本実施形態における造形システムの概略の構成を示すブロック図。
【図8】本実施形態における造形方法の流れを示す図。
【図9】本実施形態における回路部品の一例を示す斜視図。
【図10】本実施形態における複数の断面要素を説明する図。
【図11】本実施形態における造形処理の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
本実施形態の造形システム1は、図1に示すように、コンピューター3と、造形装置5と、を有している。
コンピューター3は、造形対象である回路部品6の形状データから、複数の断面要素を抽出するための演算処理を行う。また、コンピューター3は、抽出した断面要素のデータ(以下、断面データと呼ぶ)を造形装置5に出力する。
造形装置5は、コンピューター3から出力される断面データに基づいて、断面要素を描画し、描画した断面要素を順次に積層することによって、回路部品6を造形する。
【0022】
ここで、回路部品6について説明する。
本実施形態で例示される回路部品6は、図2に示すように、ブロック部7と、配線部8と、を有している。図2では、構成をわかりやすく示すため、配線部8にハッチングが施されている。
ブロック部7は、樹脂材料で構成されており、立体的な形状を有している。
配線部8は、ブロック部7の表面に沿って設けられており、電気伝導性を有している。配線部8には、メッキが施されている。このため、配線部8には、電気伝導性を有する金属などが析出している。これにより、配線部8に、電気伝導性が確保されている。
このような回路部品6は、一般的にMID(Molded Interconnects Device)とも呼ばれている。
【0023】
実施形態における造形装置5は、概略の構成を示す斜視図である図3に示すように、テーブル9と、テーブル搬送装置11と、キャリッジ12と、キャリッジ搬送装置13と、キャリッジ昇降装置15と、硬化装置17と、を有している。
キャリッジ12には、ヘッドユニット14が設けられている。
造形装置5では、ヘッドユニット14と基板Wとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット14から液状体を液滴として吐出させることによって、基板Wに液状体で所望のパターンを描画することができる。本実施形態では、造形装置5は、コンピューター3(図1)から出力される断面データに基づいて、基板Wに断面要素を描画する。
なお、図中のY方向は基板Wの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0024】
テーブル搬送装置11は、図3に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
テーブル9は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。テーブル9は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。テーブル9は、基板Wが載置される面であるテーブル面9aを有している。テーブル面9aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。テーブル9は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
【0025】
テーブル9は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。本実施形態では、テーブル9をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するテーブル搬送モーターが採用されている。テーブル搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
テーブル搬送モーターからの動力は、移動機構を介してテーブル9に伝達される。これにより、テーブル9は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、テーブル搬送装置11は、テーブル9のテーブル面9aに載置された基板Wを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
また、テーブル搬送装置11は、後述するテーブル位置検出装置を有している。テーブル位置検出装置は、テーブル9のY方向における位置を検出する。テーブル位置検出装置での検出結果に基づいて、基板WのY方向における位置が把握され得る。
【0026】
ヘッドユニット14は、キャリッジ12を図3中のA視方向に見たときの正面図である図4に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図5に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図5では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する4本のノズル列39を構成している。4本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。
【0027】
以下において、4本のノズル列39のそれぞれが識別される場合に、ノズル列39a、ノズル列39b、ノズル列39c、及びノズル列39dという表記が用いられる。
吐出ヘッド33において、ノズル列39aとノズル列39bとは、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。ノズル列39c及びノズル列39dも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。
【0028】
吐出ヘッド33は、図4中のB−B線における断面図である図6に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53(液状体)が供給される。
【0029】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸張する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0030】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図4に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ12は、図4に示すように、ヘッドユニット14を支持している。ここで、ヘッドユニット14は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ12に支持されている。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0031】
本実施形態では、機能液53として、活性エネルギーを受けることによって硬化が促進する液状体が採用されている。さらに、機能液53の種類として、回路部品6のブロック部7(図2)を構成する樹脂材料を含有する種類と、メッキ触媒を含有する種類との2種類が採用されている。以下において、ブロック部7を構成する樹脂材料を含有する機能液53は、樹脂含有機能液57と呼ばれる。また、メッキ触媒を含有する機能液53は、触媒含有機能液59と呼ばれる。
本実施形態では、樹脂含有機能液57の硬化を促進させるための活性エネルギーとして光が採用されている。つまり、本実施形態では、樹脂含有機能液57は、光の照射を受けることによって硬化が促進する性質である光硬化性を有している。さらに、本実施形態では、樹脂含有機能液57の硬化を促進させる光として紫外光が採用されている。
また、本実施形態では、触媒含有機能液59の硬化を促進させるための活性エネルギーとして熱が採用されている。つまり、本実施形態では、触媒含有機能液59は、加熱を受けることによって硬化が促進する性質である熱硬化性を有している。
【0032】
光の照射を受けることによって硬化が促進する樹脂含有機能液57としては、樹脂材料に光硬化剤を添加したものなどが採用され得る。樹脂材料としては、例えば、アクリル系やエポキシ系、シリコーン系などの樹脂材料が採用され得る。光硬化剤としては、例えば、ラジカル重合型の光重合開始剤や、カチオン重合型の光重合開始剤などが採用され得る。
ラジカル重合型の光重合開始剤としては、例えば、イソブチルベンゾインエーテルや、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
また、カチオン重合型の光重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩誘導体や、アリルヨードニウム塩誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤などが挙げられる。
【0033】
加熱を受けることによって硬化が促進する触媒含有機能液59としては、熱硬化性を有する樹脂を含有するものなどが採用され得る。熱硬化性を有する樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂やポリイミド樹脂などが挙げられる。
触媒含有機能液59は、熱硬化性を有する樹脂の他に、メッキ触媒と、溶媒と、レベリング剤と、を含有している。
メッキ触媒としては、例えば、金、銀、銅、パラジウムなどの金属や、これらの合金を含むものが採用され得る。本実施形態では、パラジウムを含有するメッキ触媒が採用されている。
【0034】
シリコーン樹脂に対する溶媒としては、例えば、PEGMEA、キシレン、ブタノールなどを混合したものが採用され得る。ポリイミド樹脂に対する溶媒としては、例えば、γブチロラクトンなどが採用され得る。
レベリング剤としては、例えば、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤などが採用され得る。本実施形態では、フッ素系レベリング剤に分類されるメガファックF483(DIC(株)社製)が採用されている。
レベリング剤によって、メッキ触媒のパターンにおけるレベリング性を高めやすくすることができる。
【0035】
本実施形態では、吐出ヘッド33において、前述した4本のノズル列39(図5)は、機能液53の種類ごとに区分されている。本実施形態では、ノズル列39a及びノズル列39bに属するノズル37は、樹脂含有機能液57を液滴55として吐出する。ノズル列39c及びノズル列39dに属するノズル37は、触媒含有機能液59を液滴55として吐出する。
【0036】
上記の構成を有する樹脂含有機能液57や触媒含有機能液59に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する樹脂含有機能液57や触媒含有機能液59を生成することができる。
顔料や染料等の色素を含有する樹脂含有機能液57では、例えば、基板Wに描画する断面要素をカラー表現することができる。以下において、顔料や染料等の色素を含有する樹脂含有機能液57は、カラー塗料と呼ばれる。
また、樹脂含有機能液57の成分としての樹脂材料に、例えば、光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する機能液53を構成することができる。以下において、光透過性を有する機能液53は、透光塗料と呼ばれる。このような光透過性を有する樹脂含有機能液57は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。
クリアインクの用途としては、例えば、画像を被覆するオーバーコート層としての用途や、画像を形成する前の下地層としての用途などが考えられる。以下において、下地層として適用される樹脂含有機能液57は、下地塗料と呼ばれる。
下地塗料としては、透光塗料だけでなく、透光塗料に種々の顔料を添加した樹脂含有機能液57を採用することもできる。
樹脂含有機能液57としてカラー塗料を採用すれば、回路部品6におけるカラー表現が実現され得る。
【0037】
キャリッジ搬送装置13は、図3に示すように、架台61と、ガイドレール63と、を有している。また、キャリッジ搬送装置13は、後述するキャリッジ位置検出装置(図示せず)と、後述するキャリッジ搬送モーター(図示せず)と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、テーブル搬送装置11をX方向にまたいでいる。架台61は、テーブル9の定盤21側とは反対側で、テーブル搬送装置11に対向している。架台61は、支柱67aと支柱67bとによって支持されている。支柱67a及び支柱67bは、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、テーブル9よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とテーブル9との間に隙間が保たれている。
【0038】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ12は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ12がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてテーブル9側に向いている。キャリッジ12は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ12がテーブル9に重なっている状態において、ノズル面35とテーブル9のテーブル面9aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
なお、キャリッジ位置検出装置は、キャリッジ12のX方向における位置を検出する。
【0039】
キャリッジ12は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ12をX方向に沿って移動させるための動力源として、後述するキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ12に伝達される。これにより、キャリッジ12は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置13は、キャリッジ12に支持されたヘッドユニット14を、X方向に沿って往復移動させることができる。
【0040】
キャリッジ昇降装置15は、前述した支柱67a及び支柱67bを有している。また、キャリッジ昇降装置15は、後述する昇降位置検出装置(図示せず)と、後述する昇降モーター(図示せず)と、を有している。
支柱67aは、ガイドレール69aを有している。支柱67bは、ガイドレール69bを有している。ガイドレール69a及びガイドレール69bは、それぞれ、Z方向に沿って延在している。ガイドレール69a及びガイドレール69bは、架台61をZ方向に沿って昇降可能に案内する。つまり、支柱67a及び支柱67bは、ガイドレール69a及びガイドレール69bを介して、架台61をZ方向に昇降可能な状態で支持している。
【0041】
架台61は、図示しない昇降機構及び動力源によって、Z方向に昇降可能に構成されている。昇降機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。本実施形態では、架台61をZ方向に沿って昇降させるための動力源として、後述する昇降モーターが採用されている。昇降モーターとしては、例えば、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
昇降モーターからの動力は、昇降機構を介して架台61に伝達される。これにより、架台61は、ガイドレール69a及びガイドレール69bに沿って、すなわちZ方向に沿って昇降することができる。つまり、キャリッジ昇降装置15は、キャリッジ12に支持されたヘッドユニット14を、Z方向に沿って昇降させることができる。
なお、昇降位置検出装置は、キャリッジ12のZ方向における位置を検出する。昇降位置検出装置での検出結果に基づいて、吐出ヘッド33のZ方向における位置が把握され得る。
【0042】
硬化装置17は、支柱81によって支持されている。硬化装置17は、基板Wに描画された断面要素の硬化を促進させるための装置である。硬化装置17は、定盤21のY方向における一端側に設けられている。
支柱81は、定盤21のY方向における一端側に設けられており、平面視で、X方向に定盤21をまたいでいる。
硬化装置17は、平面視で、定盤21に重なる位置に設けられている。硬化装置17は、支柱81の梁部81aからZ方向の下方に向かって吊り下げられている。なお、テーブル9と硬化装置17とが平面視で互いに重畳した状態において、テーブル9と硬化装置17との間に隙間が保たれている。このため、テーブル9は、平面視で、硬化装置17に重畳し得る。
【0043】
硬化装置17は、後述する光源装置(図示せず)と、後述する加熱装置(図示せず)と、を有している。
光源装置は、紫外光を発する光源(図示せず)を有している。光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等が採用され得る。
光源装置の光源からの紫外光は、硬化装置17から定盤21に向かって照射される。このため、テーブル9と硬化装置17とが平面視で互いに重畳した状態において、硬化装置17からの紫外光は、テーブル9に載置された基板Wに届き得る。
加熱装置は、断面要素を加熱するための熱源(図示せず)を有している。加熱装置の熱源からの熱は、硬化装置17から定盤21に向かって放射される。このため、テーブル9と硬化装置17とが平面視で互いに重畳した状態において、硬化装置17からの熱は、テーブル9に載置された基板Wに届き得る。
【0044】
造形装置5は、図7に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、造形装置5は、キャリッジ搬送モーター121と、テーブル搬送モーター122と、昇降モーター124と、キャリッジ位置検出装置125と、テーブル位置検出装置126と、昇降位置検出装置127と、光源装置128と、加熱装置129と、を有している。光源装置128及び加熱装置129は、上述した硬化装置17に含まれる。
キャリッジ搬送モーター121、テーブル搬送モーター122、及び昇降モーター124は、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、キャリッジ位置検出装置125、テーブル位置検出装置126及び昇降位置検出装置127も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、光源装置128及び加熱装置129も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0045】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ12をX方向に沿って駆動するための動力を発生させる。テーブル搬送モーター122は、テーブル9を駆動するための動力を発生させる。昇降モーター124は、キャリッジ12をZ方向に沿って昇降させるための動力を発生させる。
キャリッジ位置検出装置125は、キャリッジ12のX方向における位置を検出する。テーブル位置検出装置126は、テーブル9のY方向における位置を検出する。昇降位置検出装置127は、キャリッジ12のZ方向における位置を検出する。
なお、吐出ヘッド33及びコンピューター3も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0046】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read-Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、造形装置5における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべき断面要素が示される断面データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、位置検出制御部143と、吐出制御部145と、露光制御部147と、加熱制御部149と、を有している。
【0047】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、テーブル搬送モーター122の駆動と、昇降モーター124の駆動とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置125と、テーブル位置検出装置126と、昇降位置検出装置127とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置125にキャリッジ12のX方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
【0048】
また、位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、テーブル位置検出装置126にテーブル9のY方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
また、位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、昇降位置検出装置127にキャリッジ12のZ方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、吐出ヘッド33の駆動を制御する。
露光制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、光源装置128の光源の発光状態を制御する。
加熱制御部149は、CPU113からの指令に基づいて、加熱装置129の熱源の発熱状態を制御する。
【0049】
ここで、本実施形態における回路部品6の製造方法の流れについて説明する。
本実施形態における回路部品6の製造方法は、図8に示すように、断面データ生成工程S1と、造形工程S2と、メッキ工程S3と、を含む。
断面データ生成工程S1では、回路部品6の形状データから複数の断面データを生成する。
本実施形態における造形システム1では、コンピューター3によって、回路部品6の形状データから複数の断面要素が抽出される。つまり、断面データ生成工程S1では、コンピューター3によって、断面データの生成が行われる。
【0050】
断面データ生成工程S1に次いで、造形工程S2では、断面データに基づいて、配線部8を形成する前の回路部品6を造形する。なお、以下において、配線部8を形成する前の回路部品6は、回路部品6'と表記される。ここで、回路部品6'は、図9に示すように、配線部8(図2)が設けられる部位である配線形成部8aを有している。回路部品6'は、造形工程S2において、造形装置5によって造形される。
造形工程S2に次いで、メッキ工程S3(図8)では、回路部品6'にメッキ処理を施す。これにより、回路部品6'の配線形成部8aに金属(本実施形態では、銅)が析出する。この結果、図2に示す回路部品6が形成され得る。
【0051】
回路部品6'は、図10に示すように、複数の断面要素161によって構成される。複数の断面要素161を順次に重ねると、造形対象である回路部品6'が構成される。つまり、複数の断面要素161は、それぞれ、造形対象である回路部品6'の形状を構成する要素である。
ここで、n(nは、2以上の整数)個の断面要素161を抽出した場合を想定する。以下において、n個の断面要素161のそれぞれを識別する場合、n個の断面要素161は、図10に示すように、断面要素161j(jは、1〜nまでの整数)と表記される。
n個の断面要素161のそれぞれは、厚みtを有している。n個の断面要素161jを1番目からn番目まで順次に重ねると、造形対象である厚みTの回路部品6'が構成される。つまり、厚みTと厚みtとの間には、T=n×tの関係がある。
断面データ生成工程S1において、コンピューター3は、抽出した複数の断面要素161に基づいて、複数の断面データを生成する。
【0052】
ところで、本例に示す回路部品6'では、n個の断面要素161の中に、配線形成部8aの要素161aと、ブロック部7の要素161bとが混在するものがある。そして、断面データは、ブロック部7と配線形成部8aとで区別される。つまり、本実施形態では、コンピューター3は、ブロック部7に対応する断面データと、配線形成部8aに対応する断面データとを区別して生成する。
なお、本例に示す回路部品6'では、1つの断面要素161の中に要素161aと要素161bとが混在するものがあるので、断面データの数は、断面要素161の数よりも多くなる。
コンピューター3によって生成された複数の断面データは、造形装置5に出力される。
【0053】
造形工程S2では、断面データに基づくパターンを機能液53で基板Wに描画してから、描画したパターンを硬化させることを、n個の断面要素161にわたって順次に重ねて実施することによって、図10に示す回路部品6'が造形される。なお、以下において、断面データに基づいて機能液53で描画されるパターンは、断面パターン165と呼ばれる。そして、本実施形態では、断面パターン165には、要素161aに対応する断面パターン165aと、要素161bに対応する断面パターン165bとがある。
造形工程S2では、造形装置5によって回路部品6'が造形される。
造形工程S2では、造形装置5の制御部111(図7)がコンピューター3から入出力インターフェース133及びバス119を介して断面データを取得すると、CPU113によって図11に示す造形処理が実施される。
【0054】
造形処理では、CPU113は、まず、ステップS21において、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141(図7)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ12を描画エリアの往路開始位置に移動させる。ここで、描画エリアは、図3に示すテーブル9によってY方向に沿って描かれる軌跡と、吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。往路開始位置は、キャリッジ12を往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、X方向において、定盤21の支柱67a側に位置している。往路開始位置は、平面視で、定盤21の外側に位置している。
次いで、ステップS22において、CPU113は、基板搬送指令をモーター制御部141(図7)に出力する。このとき、モーター制御部141は、テーブル搬送モーター122の駆動を制御して、基板Wを描画エリアに移動させる。
【0055】
次いで、ステップS23において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図7)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ12の往復移動を開始させる。
ここで、キャリッジ12の往復移動では、キャリッジ12は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ12の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ12の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ12の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向に定盤21(図3)を挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、定盤21の外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、定盤21をX方向に挟んで互いに対峙している。
【0056】
次いで、ステップS24において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図7)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、断面データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での描画が行われる。なお、このとき、吐出制御部145は、断面データが要素161aに対する断面データであるときには、触媒含有機能液59を液滴55として吐出させる。他方で、断面データが要素161bに対する断面データであるときには、吐出制御部145は、樹脂含有機能液57を液滴55として吐出させる。
次いで、ステップS25において、CPU113は、キャリッジ12の位置が復路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ12の位置が復路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS26に移行する。他方で、キャリッジ12の位置が復路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ12の位置が復路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0057】
ステップS26において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図7)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、往路での描画が終了する。
次いで、ステップS27において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図7)に出力する。このとき、モーター制御部141は、テーブル搬送モーター122の駆動を制御して、基板WをY方向に移動(改行)させ、基板Wにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
次いで、ステップS28において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図7)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、断面データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、復路での描画が行われる。
【0058】
次いで、ステップS29において、CPU113は、キャリッジ12の位置が往路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ12の位置が往路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS30に移行する。他方で、キャリッジ12の位置が往路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ12の位置が往路開始位置に到達するまで処理が待機される。
ステップS30において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図7)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、復路での描画が終了する。
【0059】
次いで、ステップS31において、CPU113は、1つの断面パターンの描画が終了したか否かを判定する。このとき、1つの断面パターンの描画が終了した(Yes)と判定されると、処理がステップS32に移行する。他方で、1つの断面パターンの描画が終了していない(No)と判定されると、処理がステップS33に移行する。
ステップS33において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図7)に出力してから、処理をステップS24に移行させる。このとき、ステップS33では、モーター制御部141は、テーブル搬送モーター122の駆動を制御して、基板WをY方向に移動(改行)させ、基板Wにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
ステップS32では、CPU113は、基板搬送指令をモーター制御部141(図7)に出力する。このとき、モーター制御部141は、テーブル搬送モーター122の駆動を制御して、基板Wを硬化エリアに移動させる。なお、硬化エリアは、平面視で硬化装置17に重なる領域である。
【0060】
ステップS32に次いで、ステップS34において、CPU113は、描画された断面パターンを構成する機能液53が触媒含有機能液59であるか否かを判定する。このとき、触媒含有機能液59である(Yes)と判定されると、処理がステップS35に移行する。他方で、触媒含有機能液59でない(No)と判定されると、処理がステップS37に移行する。
ステップS35において、CPU113は、加熱指令を加熱制御部149(図7)に出力する。このとき、加熱制御部149は、加熱装置129の熱源の駆動を制御して、加熱装置129の熱源を発熱させる。
次いで、ステップS36において、CPU113は、加熱停止指令を加熱制御部149(図7)に出力してから、処理をステップS39に移行させる。このとき、ステップS36では、加熱制御部149は、加熱装置129の熱源の駆動を制御して、加熱装置129の熱源を停止させる。
【0061】
ステップS37では、CPU113は、露光指令を露光制御部147(図7)に出力する。このとき、露光制御部147は、光源装置128の光源の駆動を制御して、光源装置128の光源を点灯させる。
次いで、ステップS38において、CPU113は、露光停止指令を露光制御部147(図7)に出力してから、処理をステップS39に移行させる。このとき、ステップS38では、露光制御部147は、光源装置128の光源の駆動を制御して、光源装置128の光源を消灯させる。
ステップS39において、CPU113は、基板搬送指令をモーター制御部141(図7)に出力する。このとき、モーター制御部141は、テーブル搬送モーター122の駆動を制御して、基板Wを描画エリアに移動させる。
【0062】
次いで、ステップS40において、CPU113は、すべての断面パターンの描画が終了したか否かを判定する。このとき、すべての断面パターンの描画が終了した(Yes)と判定されると、処理が終了する。他方で、すべての断面パターンの描画が終了していない(No)と判定されると、処理がステップS41に移行する。
ステップS41において、CPU113は上昇指令をモーター制御部141(図7)に出力してから、処理をステップS23に移行させる。このとき、ステップS41では、モーター制御部141は、昇降モーター124の駆動を制御して、キャリッジ12を、断面要素161の厚みtに相当するtの距離だけ上昇させる。
上記の造形処理によって、図9に示す回路部品6'が造形され得る。
【0063】
造形工程S2の後に、メッキ工程S3(図8)では、回路部品6'に無電解メッキ処理を施す。本実施形態では、メッキ浴に回路部品6'を浸漬させることによって、回路部品6'の配線形成部8aにメッキが施される。これにより、図2に示す回路部品6が形成され得る。
なお、メッキ浴としては、例えば、上村工業(株)社製の無電解銅スルカップELC−SPなどが採用され得る。浸漬条件としては、メッキ浴のpHを約12.5とし、メッキ浴の温度を約35℃とし、浸漬時間を約5分間とする条件が採用され得る。
【0064】
本実施形態において、樹脂含有機能液57及び触媒含有機能液59のそれぞれが液状体に対応し、回路部品6'が積層体に対応している。
本実施形態では、樹脂含有機能液57で断面パターン165bを形成し、触媒含有機能液59で断面パターン165aを形成することができる。断面パターン165aを配線形成部8aに沿って形成することによって、回路部品6'において、配線形成部8aを選択的にパターニングすることができる。
そして、回路部品6'にメッキを施すことによって、配線形成部8aのパターンに沿った配線部8を形成することができる。これにより、配線部8が設けられた回路部品6を製造することができる。
本実施形態における製造方法では、造形工程S2で、回路部品6'の形成と、メッキ触媒のパターニングとを実施することができるので、製造方法の効率化を図りやすくすることができる。この結果、回路部品6にかかるコストを低減しやすくすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、機能液53の種類(樹脂含有機能液57及び触媒含有機能液59)ごとに断面パターン165を形成するので、1つの断面要素161で樹脂含有機能液57と触媒含有機能液59とが互いに混合することを避けやすくすることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、造形工程S2で断面パターン165を描画するときに、機能液53を塗布する方法として、塗布法の1つであるインクジェット法が採用されている。しかしながら、塗布法は、インクジェット法に限定されず、ディスペンス法や、印刷法なども採用され得る。しかしながら、インクジェット法を採用することは、基板Wの任意の箇所に任意の量の機能液53を塗布しやすい点で好ましい。
【0067】
また、本実施形態では、光硬化性を有する樹脂含有機能液57が採用されている。しかしながら、樹脂含有機能液57としては、光硬化性を有するものに限定されず、例えば、加熱を受けることによって硬化する性質である熱硬化性を有するものも採用され得る。この場合、熱硬化性を有する樹脂含有機能液57の硬化を促進させるための活性エネルギーとして熱が採用される。
熱硬化性を有する樹脂含有機能液57を採用する場合、硬化装置17において、光源装置128を省略することができる。そして、図11に示す造形処理において、ステップS34、ステップS37及びステップS38の処理を省略することができる。
【0068】
また、本実施形態では、造形装置5が基板Wを有する構成が例示されているが、造形装置5の構成は、これに限定されない。造形装置5の構成としては、例えば、基板Wを省略した構成も採用され得る。そして、この構成では、テーブル9に断面パターン165が描画される。
【符号の説明】
【0069】
1…造形システム、3…コンピューター、5…造形装置、6…回路部品、6'…回路部品、7…ブロック部、8…配線部、8a…配線形成部、17…硬化装置、33…吐出ヘッド、39a,39b,39c,39d…ノズル列、53…機能液、55…液滴、57…樹脂含有機能液、59…触媒含有機能液、161…断面要素、161a…要素、161b…要素、165…断面パターン、165a,165b…断面パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形対象である立体を複数の断面要素に分割し、複数の種類の液状体のうちの少なくとも1つの種類の前記液状体で前記断面要素を断面パターンとして描画してから、前記断面パターンを硬化させることを、前記断面要素ごとに前記複数の断面要素にわたって順次に重ねて実施する造形工程と、
前記造形工程の後に、複数の前記断面パターンが重なった積層体にメッキを施すメッキ工程と、を含み、
前記液状体の種類には、前記断面パターンを構成するための樹脂を含有する樹脂含有液状体と、前記樹脂及びメッキ触媒を含有する触媒含有液状体との2種類が含まれており、
前記造形工程では、前記複数の断面パターンのうちの少なくとも一部の前記断面パターンを描画するときに、前記断面パターンの少なくとも一部に前記触媒含有液状体を選択的に塗布する、
ことを特徴とする回路部品の製造方法。
【請求項2】
前記造形工程では、前記液状体の種類ごとに前記断面パターンを形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の回路部品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂含有液状体は、加熱を受けることによって硬化が促進する性質である熱硬化性を有しており、
前記造形工程では、前記樹脂含有液状体で前記断面要素を描画してから、前記断面要素を構成する前記樹脂含有液状体を加熱する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路部品の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂含有液状体は、光の照射を受けることによって硬化が促進する性質である光硬化性を有しており、
前記造形工程では、前記樹脂含有液状体で前記断面要素を描画してから、前記断面要素を構成する前記樹脂含有液状体に前記光を照射する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路部品の製造方法。
【請求項5】
前記触媒含有液状体は、レベリング剤を含有している、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回路部品の製造方法。
【請求項6】
前記断面要素の描画では、前記液状体をインクジェット法で吐出することによって、前記断面要素を描画する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回路部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−181646(P2011−181646A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43856(P2010−43856)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】