説明

回転コネクタ装置

【課題】製造コストを抑えることのできる回転コネクタ装置を提供する。
【解決手段】回転コネクタ装置1は、固定体2と、固定体2に回転自在に組み付けられる回転体3と、互いに組み付けられた固定体2と回転体3との間に形成されたケーブル収容室4とを備える。ケーブル収容室4には、固定体2と回転体3との間の電気的接続を行うスリップリング機構5及びフレキシブルフラットケーブル6の何れかが、必要に応じて収納される。スリップリング機構5は、アンダープレート22に固定された導電リング51と、上部回転部材31に固定された摺動接触子52とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定体と回転体との電気的接続に用いられる回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1,2に記載の回転コネクタ装置では、ステアリングコラムに固定された固定体に、ステアリングホイールに固定された回転体を回転自在に組み付け、ステアリングホイールの回転時における回転体と固定体との電気的接続を維持するフレキシブルフラットケーブルを、ケーブル収容室に収容して構成されている。この回転コネクタ装置では、導電リング上で摺動接触子を摺動させるスリップリング機構によっても、ステアリングホイールの回転時における回転体と固定体との電気的接続が維持される。通電電流の小さなエアバック発火信号等ではフレキシブルフラットケーブルの通電ルートが、通電電流の大きいステアリングヒータ等ではスリップリング機構の通電ルートが、それぞれ用いられる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−123927号公報
【特許文献2】特開2007−12521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車ではエアバッグの装備が一般的になるのに伴い回転コネクタの装着率が高まっているが、エアバッグを装着しておらずに回転コネクタの装着が不要な場合でも、ステアリングやステアリングシャフトの部品共用化の為に回転コネクタを用いることがある。しかしながら、エアバッグ装着車で回転コネクタを用いると、フラットケーブル等の余計な部品を備える分、製造コストが高くなる問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決することのできる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明の回転コネクタ装置は、固定接点部と、当該固定接点部上において摺動する摺動用接点とを収容し、固定側コネクタを有する固定体と、前記固定体に対して前記摺動用接点と一体的に回転可能であり、回転側コネクタを有した回転体とを備えた回転コネクタ装置であって、前記固定体は、フラットケーブルを幅方向に収容可能な収容空間を有し、前記摺動用接点、当該摺動用接点に連結する電線、及び前記固定接点部は、前記収容空間内に収容され、前記固定接点部と電気的に接続する第1端子は、前記固定側コネクタ内に収容され、前記摺動用接点に前記電線を介して電気的に接続する第2端子は、前記回転側コネクタ内に収容されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フラットケーブル及びスリップリング機構の何れかを、回転コネクタ装置の用途に応じて用いることができるので、回転コネクタ装置の製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態を説明する。
図1及び図2は本実施形態の回転コネクタ装置1の分解斜視図であり、図1はエアバッグ非装着車に用いる場合、図2はエアバッグ装着車に用いる場合の使用方法を説明する図である。また、図3はケーブル収容室4の構成の概略を説明する回転コネクタ装置1の断面図である。なお、図2では、回転体3を構成する上部回転部材31の図示は省略している。また、以下の説明で用いる上下の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0009】
図1及び図2に示すように、回転コネクタ装置1は、ステアリングコラム(不図示)に固定される固定体2と、固定体2に回転自在に組み付けられてステアリングホイール(不図示)に固定される回転体3とを備えている。
【0010】
固定体2は、本体ハウジング21とアンダープレート22とを組み合わせて構成される。本体ハウジング21は、円環状の上板21aの外周縁から、円筒状の側板21bを下方に延出させた概略形状を有している。側板21bの外周面には、ステアリングコラムへの固定に用いられる複数の取付部21cと、ステアリングコラムからの配線を接続される固定側コネクタ部21dとが設けられている。
【0011】
アンダープレート22は、本体ハウジング21の上板21aよりも内径をやや小さくして、上板21aより幅広に形成された円環状の下板22aの外周縁から、円筒状の側板22bを上方に延出させた概略形状を有している。アンダープレート22は、本体ハウジング21の側板21bの内側に側板22bを挿入され、上板21aに所定距離をおいて下板22aを向かい合わせて、本体ハウジング21に下側から組み付けられ、固定体2を構成する。
【0012】
回転体3は、上部回転部材31に下部回転部材32を組み合わせて構成される。上部回転部材31は、本体ハウジング21の上板21aよりも内径をやや小さくして、上板21aより幅広に形成された円環状の上板31aの内周縁から、円筒状のシャフト部31bを下方に延出させた概略形状を有している。上板31aの上面には、ステアリングホイールからの配線を接続される複数の回転側コネクタ部31cが設けられている。また、シャフト部31bの内面には、下部回転部材32への係止に用いられる係止爪31dが設けられている。
【0013】
下部回転部材32は、上部回転部材31が備えるシャフト部31bの内径とほぼ等しい外径を有した円筒状の上部円筒部32aと、上部円筒部32aより外径を拡径させて肉厚に形成され、上部円筒部32aの下方に延びた下部円筒部32bとから構成されている。上部円筒部32aには、上部回転部材31の係止爪31dを係止するための係止孔32cが形成されている。
【0014】
上部回転部材31は、固定体2を構成した本体ハウジング21が備える上板21aの内側に、上方からシャフト部31bを挿通され、上板31aを上板21aと向かい合わせて本体ハウジング21に上側から被せられる。本体ハウジング21に被せられた上部回転部材31のシャフト部31bは、アンダープレート22が備える下板22aの内周縁の上面にその下端部を当接又は近接させる。
【0015】
下部回転部材32は、本体ハウジング21に被せられた上部回転部材31が備えるシャフト部31bの内側に、下方から上部円筒部32aを挿入され、上部円筒部32aの係止孔32cで上部回転部材31の係止爪32dを係止することで、上部回転部材31に固定される。上部回転部材31に固定された下部回転部材32は、下部円筒部32bが上部回転部材31のシャフト部31bとでアンダープレート22の下板22aを挟み込むことで、固定体2に対する位置決めをなされている。
【0016】
上部回転部材31及び下部回転部材32は、固定体2を上下方向から互いで挟み込むようにして固定体2に組み付けられて回転体3を構成し、上部回転部材31の係止爪31dが下部回転部材32の係止孔32cに係止されることで、互いが一体化されている。
【0017】
上述のようにして固定体2と回転体3とが互いに組み付けられることで、図3に示すように、固定体2と回転体3との間には、上部回転部材31が備えるシャフト部31bの周囲で環状を呈したケーブル収容室4が形成される。ケーブル収容室4は、本体ハウジング21の上板21a及び側板21bと、アンダープレート22の下板22a及び側板22bと、上部回転部材31のシャフト部31bとで囲まれて外部と隔てられており、略矩形の断面形状を有している。
【0018】
ケーブル収容室4には、図1及び図2に示すように、固定体2と回転体3との間の電気的接続を行うスリップリング機構5及びフレキシブルフラットケーブル6の何れかが、必要に応じて収納される。スリップリング機構5は、図1に示すように、導電リング51と摺動接触子52とから構成されている。摺動接触子52は、上部回転部材31に取り付けられる取付部52aと、取付部52aから左右に延びて円弧状を呈した一対のアーム端子部52b,52bとを備えている。
【0019】
図3に示すように、導電リング51は、アンダープレート22が備える下板22aの上面に、上部回転部材31のシャフト部31bと同心円状に配置されて、アンダープレート22に固定されている。また、摺動接触子52は、上部回転部材31が備えるシャフト部31bの外周面に取付部52aを固定されて、導電リング51とアーム端子部52b,52bとが接するように配置されている。導電リング51は、コード53を介して、端子53aで固定側コネクタ部21dに電気的に接続される(図1参照)。また、摺動接触子52は、取付部52aに接続されたコード54を介して、端子54aで回転側コネクタ部31cに電気的に接続される(図1参照)。コード53及びコード54は、ケーブル収容室4に収容される。また、端子53aは固定側コネクタ部21dに、端子54aは回転側コネクタ部31cに、それぞれ収容される。
【0020】
図2に示すように、フレキシブルフラットケーブル6は、絶縁性フィルムに導体を配置してなる帯状体を、上部回転部材31のシャフト部31bと同心円状に巻回して構成されており、外側で巻回された環状体6aを本体ハウジング21の固定側コネクタ部21dに外端部6cで接続され、内側で巻回された環状体6bを上部回転部材31の回転側コネクタ部31cに内端部6dで接続される。
【0021】
フレキシブルフラットケーブル6は、キャリア71の備える複数のアイドラ72を、環状体6aと環状体6bとの間に配置されて、ケーブル収容室4に収容される。キャリア71は、アンダープレート22の下板22aに環状を呈して回転自在に配置される。アイドラ72は、キャリア71に回転自在に支持されている。フレキシブルフラットケーブル6は、環状体6aと環状体6bとの間に架け渡された接続部6eを、アイドラ72によりシャフト部31b(図1参照)の周方向にガイドされ、環状体6aと環状体6bとの間で巻回状態を変えることで、回転体3との電気的接触を維持する。
【0022】
次に、回転コネクタ装置1の動作を説明する。まず、ケーブル収容室4にスリップリング機構5を収容した場合の動作について説明する。ステアリングホイールが回転すると、回転体3が上部回転部材31のシャフト部31bを中心として固定体2に対して回転する。これに伴い、上部回転部材31のシャフト部31bに固定された摺動接触子52が、アンダープレート22の下板22aに固定された導電リング51上を摺動することで、回転側コネクタ部31cと固定側コネクタ部21dとの電気的接続が維持される。
【0023】
次に、ケーブル収容室4にフレキシブルフラットケーブル6を収容した場合の動作について説明する。ステアリングホイールが回転すると、回転体3が上部回転部材31のシャフト部31bを中心として固定体2に対して回転する。フレキシブルフラットケーブル6は、アイドラ72に接続部6eをガイドされて環状体6aと環状体6bとの間で巻回状態を変えることで、回転側コネクタ部31cと固定側コネクタ部21dとの電気的接続が維持される。
【0024】
本実施形態によれば、エアバッグ非装着車に用いる場合にはケーブル収容室4にスリップリング機構5を収容し、エアバッグ装着車に用いる場合にはフラットケーブル6を収容することで、何れの車両にも使用できる回転コネクタ装置を、余計な部品を用いることなく提供することができる。従って、回転コネクタ装置の製造コストを低減できる。
【0025】
また、本実施形態によれば、エアバッグ非装着車と装着車との何れに用いるかに応じて、フラットケーブル6又はスリップリング機構5を選択し、ケーブル収容室4に収容すれば足りることから、回転コネクタ装置1の組付作業の簡略化もできる。
【0026】
また、本実施形態によれば、固定体2と回転体3との電気的接続に用いる部品をケーブル収容室4に納められることから、回転コネクタ装置1の他の構成部品の設計を自由に行える。このため、回転コネクタ装置1の設計の自由度を高めることができる。
【0027】
上記実施形態では、導電リング51がアンダープレート22に固定され、摺動接触子52が上部回転部材31に固定されている場合について説明したが、図4に示すように、導電リング51が上部回転部材31に固定され、摺動接触子52がアンダープレート22に固定されていてもよい。また、導電リング51及び摺動接触子52の固定方法も任意である。
【0028】
また、スリップリング機構5を構成する導電リング51及び摺動接触子52の数量も任意であり、1組には限られない。また、上記実施形態では、本発明の回転コネクタ装置1を、ステアリングコラムとステアリングホイールとの間の電気的接続に用いた場合について説明したが、固定体と回転体との電気的接続を行うのであれば、他の用途に用いることもできる。
【0029】
また、フラットケーブル6の巻回方法、及び、回転体3の回転時におけるフラットケーブル6のガイド方法も任意であり、上記実施形態での構成には限定されない。また、ケーブル収容室4の構成も、スリッピング機構5及びフラットケーブル6の何れも収容できるのであれば任意であり、例えば、外部と隔てられている必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の回転コネクタ装置の第1の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の回転コネクタ装置の第2の分解斜視図である。
【図3】ケーブル収容室の構成の概略を説明する回転コネクタ装置の断面図である。
【図4】スリップリング機構の収容方法の他の例を説明する回転コネクタ装置の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 回転コネクタ装置
2 固定体
21 本体ハウジング
21d 固定側コネクタ部(固定側コネクタ)
22 アンダープレート
3 回転体
31 上部回転部材
31c 回転側コネクタ部(回転側コネクタ)
32 下部回転部材
4 ケーブル収容室(収容空間)
5 スリップリング機構
51 導電リング(固定接点部)
52 摺動接触子(摺動用接点)
53a 端子(第1端子)
54 コード(電線)
54a 端子(第2端子)
6 フレキシブルフラットケーブル(フラットケーブル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点部と、当該固定接点部上において摺動する摺動用接点とを収容し、固定側コネクタを有する固定体と、
前記固定体に対して前記摺動用接点と一体的に回転可能であり、回転側コネクタを有した回転体とを備えた回転コネクタ装置であって、
前記固定体は、フラットケーブルを幅方向に収容可能な収容空間を有し、
前記摺動用接点、当該摺動用接点に連結する電線、及び前記固定接点部は、前記収容空間内に収容され、
前記固定接点部と電気的に接続する第1端子は、前記固定側コネクタ内に収容され、
前記摺動用接点に前記電線を介して電気的に接続する第2端子は、前記回転側コネクタ内に収容されることを特徴とする回転コネクタ装置。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−9849(P2010−9849A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166077(P2008−166077)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】