説明

回転コネクタ装置

【課題】外周筒15が周方向にガタつくことによるきしみ音の発生を抑制できるステアリングロールコネクタ10を提供すること。
【解決手段】固定側リング板14と外周筒15とを別部材とし、固定側リング板14の外周縁に、嵌合凹部1を備えると共に、外周筒15の外周縁の嵌合凹部1に対応する位置に嵌合凸部2を備え、固定側リング板14と外周筒15とを、回転軸Xを一致させて、回転軸X方向に嵌合させると共に、嵌合凹部1を嵌合凸部2に回転軸Xに対する両回転方向に当接させて固定ケース12を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両において車体側とステアリングホイール側との間を電気的に接続する回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から固定側と該固定側に対して回転する回転側との間を電気的に接続するための回転コネクタ装置が各種知られている。例えば、自動車の車体側とステアリングホイール側との間を電気的に接続するステアリングロールコネクタが、回転コネクタ装置の1つとして挙げられる。
【0003】
一般的に、自動車のステアリングホイールは、緊急時に確実に作動することが要求されるエアバック等を備えている。このため、接続の信頼性の低い摺動電極等は用いず、車体側とステアリングホイール側とを電気的に接続するフラットケーブル等を内蔵した回転コネクタ装置が用いられている。
【0004】
上述の自動車に備えられている回転コネクタ装置は、車体側に固定される筒状の固定ケースと、ステアリングホイール側に取付けられる筒状の回転ケースとを、互いに回転自在に嵌合し、固定ケースと回転ケースとで形成される環状の収容空間に、フラットケーブルを複数回巻いた状態で収納している。
【0005】
このフラットケーブルは、固定ケースに備えられている固定ケース側コネクタと、回転ケースに備えられている回転ケース側コネクタとに接続されている。そして、このフラットケーブルは、環状の内部空間内で一方向に巻かれた後、巻かれる方向をU字状に反転されて逆方向に巻かれている。このような構成により、ステアリングロールコネクタは、該フラットケーブルの巻き数に対応して、回転ケースを時計回り、反時計回りに回転することができる。
【0006】
なお、上述の回転コネクタ装置の固定ケースは、プラスチック製であり、特許文献1の図1に示すように、成形が容易なことから、平らな環状の固定側リング板と、該固定側リング板の外周縁から垂直に延びる円筒状の外周筒との2つの部材を嵌合して構成している。
【0007】
これら固定側リング板と外周筒とは、例えば、固定側リング板の外周縁から該固定側リング板に対して垂直に突出して設けた係合孔を有する複数の係合孔部と、外周筒の外周縁の上記係合孔部と対応する位置に設けた径外側へ突出する複数の係合凸部とを係合し相互に連結して固定ケースを構成している。
【0008】
この場合、外周縁に沿って複数箇所に設けた係合孔部と係合凸部とが係合することによって、固定側リング板と外周筒とは回転軸方向には強固に固定される。しかし、固定側リング板と外周筒との連結作業を容易にするため、係合孔と係合凸部との係合箇所には周方向の遊びを設けている。
【0009】
このことにより、回転コネクタ装置の固定ケースを車体側に組み付けた状態において、潰しリブとスナップフィットとで車体側に強固に固定される固定側リング板に対して外周筒が周方向にガタつき、きしみ音が発生しやすい。特に、回転コネクタ装置が偏心して車体に取り付けられた場合、外周筒が周方向にガタつき易いため、きしみ音が発生しやすくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−21108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、この発明は、固定側リング板に対する外周筒の周方向のガタつきによるきしみ音の発生を抑制できる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、環状の固定側リング板及び該固定側リング板の外周縁から該固定側リング板の平面に対して垂直に延びる円筒状の外周筒で構成する固定ケースと、環状の回転側リング板及び該回転リング板の内周縁から該回転リング板の平面に対して前記固定ケースに向かって垂直に延びる円筒状の内周筒で構成する回転ケースとを、時計回り方向及び反時計回り方向に相対回転可能に嵌合し、前記固定ケースの前記固定側リング板及び前記外周筒と、前記回転ケースの前記回転側リング板及び前記内周筒とで収容空間を構成し、該収容空間に、前記固定ケース側と前記回転ケース側とを電気的に接続するフラットケーブルを巻き回して収容する回転コネクタ装置であって、前記固定側リング板と前記外周筒とを別部材で構成し、前記固定側リング板の外周縁に、固定側リング板回転規制部を備えると共に、前記外周筒の外周縁の前記固定側リング板回転規制部に対応する位置に外周筒回転規制部を備え、前記固定側リング板と前記外周筒とを、回転軸を一致させて、該回転軸方向に嵌合させると共に、前記固定側リング板回転規制部を前記外周筒回転規制部に前記回転軸に対する両回転方向に当接させて前記固定ケースを構成することを特徴とする。
【0013】
この発明により、前記固定側リング板回転規制部と前記外周筒回転規制部とが時計回り及び反時計回りの両周方向に当接するので、前記外周筒が前記固定側リング板に対して周方向に動きにくく、前記外周筒が周方向にガタつくことによるきしみ音の発生を抑制できる。
【0014】
なお、この発明において、前記固定側リング板回転規制部及び前記外周筒回転規制部を、一方を嵌合凸部とし他方を嵌合凹部とし、前記嵌合凸部を前記嵌合凹部の周方向に当接させて嵌合してもよく、また、前記固定側リング板回転規制部として嵌合凸部と嵌合凹部とを両方設け、これと対応させて、前記外周筒回転規制部として嵌合凹部と嵌合凸部とを設けてもよい。
【0015】
また、前記固定側リング板回転規制部及び前記外周筒回転規制部の両方を前記固定側リング板における外側面及び前記外周筒における外側面から突出した嵌合凸部としてもよい。
【0016】
この場合、例えば、外側面において前記固定側リング板側の前記嵌合凸部を前記外周筒側の前記嵌合凸部に対して周方向に時計回りに当接させ、外側面の別の場所において、逆に、前記固定側リング板側の前記嵌合凸部を前記外周筒側の前記嵌合凸部に対して周方向に反時計回りに当接させることで両回転軸方向を規制することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記固定側リング板は、外周縁から前記外周筒側に垂直に突出し、係合孔を有する複数の係合孔部を周方向において所定間隔を隔てて備え、前記外周筒は、外側面において前記係合孔部と対応する位置に径外側へ突出する複数の係合凸部を所定間隔を隔てて備え、前記固定側リング板と前記外周筒とを、前記外周部において前記係合凸部に前記係合孔部を回転軸方向に挿入して係合することで前記固定ケースを構成することができる。
【0018】
この発明により、前記係合孔部と前記係合凸部とを回転軸方向に係合することで、前記固定側リング板と前記外周筒とをその回転軸方向に強固に連結できると共に、前記固定側リング板回転規制部と前記外周筒回転規制部とを同じく回転軸方向に嵌合することで、周方向に当接させて周方向の回転を規制することができる。
【0019】
すなわち、一方向への嵌合により、前記固定側リング板に対する前記外周筒の回転軸方向及び周方向への動きを規制することができる。
また、この発明の態様として、前記固定側リング板回転規制部と前記外周筒回転規制部とのいずれか一方が、嵌合凸部であり、他方が嵌合凹部であり、前記嵌合凸部が前記嵌合凹部の周方向の両側において当接して嵌合することができる。
【0020】
この発明により、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが周方向の両側において当接しているので、一対の前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とにより周方向の時計回り及び反時計回りの両方向の前記外周筒のガタつきを抑制することができる。
【0021】
また、この発明の態様として、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが当接する当接面を、径方向に沿って形成することができる。
この発明により、前記当接面に周方向に力が加わった場合に、該力の向きが前記当接面に垂直な方向となる。従って、最も有効に前記固定側リング板に対する前記外周筒の周方向への動きを規制することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、固定側リング板に対して外周筒が周方向にガタつくことによるきしみ音の発生を抑制できる回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ステアリングロールコネクタの外観斜視図。
【図2】ステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】回転ケースを外した状態のステアリングロールコネクタの平面図。
【図4】図1中のA−A線矢視断面図。
【図5】固定ケースの分解斜視図。
【図6】係合孔部と係合凸部の拡大斜視図。
【図7】嵌合凹部と嵌合凸部の拡大斜視図。
【図8】嵌合凹部と嵌合凸部の嵌合状態における拡大正面図及び拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、図1は、この実施形態に係るステアリングロールコネクタ10の外観斜視図であり、図2は、図1に示すステアリングロールコネクタ10を固定ケース12、回転ケース13及び回転ロック構成体51に分解した分解斜視図である。
【0025】
また、図3は、回転ケース13を外した状態のステアリングロールコネクタ10の平面図であり、図4は、図1中のA−A線矢視断面図であり、図5は、固定ケース12を固定側リング板14と外周筒15とに分解した分解斜視図である。
【0026】
また、図6(a)は、外周筒15に備えた係合凸部19の拡大図を示し、図6(b)は、固定側リング板14に備えた係合孔部18の拡大図を示している。図7(a)は、外周筒15に備えた嵌合凸部2を示し、図7(b)は、固定側リング板14に備えた嵌合凹部1を示している。
【0027】
また、図8(a)は、嵌合凹部1と嵌合凸部2とが嵌合した状態における正面図であり、図8(b)は、嵌合凹部1と嵌合凸部2とを含む正面と平行な断面図である。
本実施形態では、ステアリングロールコネクタ10は、図1及び図2に示すように、主にケーブルハウジング11、リテーナ41及び回転ロックユニット51とで構成している。
【0028】
ケーブルハウジング11は、平面視中央部分にステアリングの回転軸Xの方向(図4中の上下方向)に貫通した差込孔Hが形成された略円筒状に形成している。差込孔Hは、ステアリングコラム(図示省略)から突出する、回転操作を行なうためのステアリングホイール(図示省略)が上端部に固定されたステアリングシャフト(図示省略)の挿入を許容する径で形成している。
【0029】
ケーブルハウジング11は、互いに相対回転可能な固定ケース12と回転ケース13とで構成する概ね円筒状のケースである。ケーブルハウジング11の内部には、図2から図4に示すように、フラットケーブルCを適宜巻かれた状態で収容する収容空間Sを構成している。
【0030】
固定ケース12は、図5に示すように、固定側リング板14と外周筒15とで構成している。
固定側リング板14は、平らな環状のリング板部14Pと、該リング板部14Pの外周縁から回転ケース13側に向かって垂直に突出した円筒状のリング板円筒部14Qとで構成している。また、外周筒15は、該固定側リング板14とは別部材であって、固定側リング板14の外周縁から回転ケース13側に向かって垂直に延びる円筒形状で構成している。なお、リング板円筒部14Qの内側面14Qsの径は、外周筒15の外側面15aと同径に形成している。
【0031】
固定側リング板14は、図5及び図6に示すように、リング板円筒部14Qの上端部14Qtから外周筒15側へ垂直に突出し、側面視長方形の係合孔18Aを有する係合孔部18を所定間隔を隔てて複数備えている。
【0032】
また、外周筒15は、外周筒15の外側面15aにおける上記係合孔部18と対応する位置に、側面視上記係合孔18Aと略同一の長方形状で径方向に突出する係合凸部19を備えている。
【0033】
図6(a)に示す、外周筒15の下端15bから係合凸部19の上面19cまでの高さh2は、図6(b)に示す、固定側リング板14の底面14bから係合孔部18の上面18cまでの高さh1と等しいか或いは僅かに高く形成している。
【0034】
また、図6(a)に示す、係合凸部19の左側面19aから右側面19bまでの幅w2は、係合凸部19と係合孔部18との係合を容易に行なうために、図6(b)に示す、係合孔部18の左側面18aから右側面18bまでの幅w1よりも僅かに狭く形成している。
【0035】
さらに、固定側リング板14は、図5、図7及び図8に示すように、リング板円筒部14Qの上端部14Qtの所定の一箇所に嵌合凹部1を備え、外周筒15は、外側面15aの嵌合凹部1に対応する位置に嵌合凹部1と同一形状の嵌合凸部2を備えている。
【0036】
詳しくは、嵌合凹部1は、図7(b)及び図8に示すように、リング板円筒部14Qの上端部14Qtに対して、正面視長方形で、かつ、径方向に貫通する平面視長方形の凹部であり、嵌合凸部2は、図7(a)及び図8に示すように、上記嵌合凹部1の正面視長方形と同一形状の平面視長方形で、かつ、径方向に突出する上記嵌合凹部1の正面視長方形と同一形状の正面視長方形の凸部である。
【0037】
また、嵌合凹部1の周方向の周長l1及び深さd1は、それぞれ嵌合凸部2の周方向の周長l2及び高さw3と等しく形成し、リング板円筒部14Qの径方向の厚みt1と、嵌合凹部1の径方向の厚みt2と、嵌合凸部2の径方向の厚みt3とが等しく形成している。
さらに、固定リング板14の底面14bから嵌合凹部1の底面1cまでの高さh3と、外周筒15の下端15bから嵌合凸部2の下面2cまでの高さh4とを等しく形成している。
【0038】
このように構成した固定側リング板14と外周筒15とを、回転軸Xを一致させて、固定側リング板14の係合孔部18を外周筒15の対応する係合凸部19に係合することで、回転軸X方向に固定し、さらに、固定側リング板14の嵌合凹部1に外周筒15の嵌合凸部2に嵌合して、固定側リング板14の内側面14Qsと外周筒15の外側面15a、及び、固定側リング板14の底面14bと外周筒15の下端15bをそれぞれ当接させることで、固定ケース12を一体に構成している。
【0039】
固定ケース12は、車体側の適宜の部材、ステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図示省略)に固定し、ステアリングホイールに対して相対回転可能に取り付けられている。
なお、固定ケース12には、固定ケース側コネクタ17が取り付けられている。
【0040】
固定ケース側コネクタ17は、第1固定ケース側コネクタ17Aと第2固定ケース側コネクタ17Bとで構成されている。第1固定ケース側コネクタ17Aと第2固定ケース側コネクタ17Bとは、所定間隔を隔ててそれぞれのコネクタ接続口が同じ方向を向くように外周筒15の外側に配置されている。
【0041】
また、回転ケース13は、リング状に形成された天板としての回転側リング板21と、この回転側リング板21の内周縁から垂直に延びる円筒状の内周筒22とで構成されている。
そして回転ケース13は、ステアリングホイールと共に一体的に回転する構成である。詳しくは、回転ケース13は、固定ケース12に対してステアリングの回転軸Xと同一の軸回りに回転することができる。このとき回転ケース側当接部27は、リテーナ41の上面に当接しながら摺動する。
【0042】
回転側リング板21は、回転ケース13の回転軸Xの方向で固定側リング板14に対面するように配置されている。なお、回転ケース13の回転軸Xの方向は、上述したステアリングの回転軸の方向(図4中の上下方向)と同じ方向である。
【0043】
また、内周筒22は、外周筒15に対して半径方向(図4中の左右方向)内側で対面するように配置されている。
回転ケース13に、該回転ケース13の回転に伴って一体的に回転する第1回転ケース側コネクタ23Aと第2回転ケース側コネクタ23Bとを取り付けている。
【0044】
なお、第1回転ケース側コネクタ23Aと第1固定ケース側コネクタ17A、及び、第2回転ケース側コネクタ23Bと第2固定ケース側コネクタ17Bとは、それぞれ収容空間Sに配置されたフラットケーブルCによって相互に電気的に接続されている。
【0045】
また、固定ケース側コネクタ17は、ロアコラムカバー(図示省略)内において車体側の電気回路等から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続されている。
また、回転ケース側コネクタ23は、例えば、ホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたケーブルにそれぞれ接続されている。
【0046】
また、上述のリテーナ41は、図2及び図3に示すように、複数の回転ローラ43とベースリング42とで構成され、収容空間Sにおいて回転ケース13の回転軸Xを中心にして回転可能に配置されている。
【0047】
回転ローラ43は、後述のローラ支持凸部45と同じ数で備え、それぞれローラ支持凸部45に軸支し、それぞれが回転ケース13の回転軸Xと平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
ベースリング42は、平面視円環状をした板状のベースリング本体部44とローラ支持凸部45とローラ外周側突部46とで構成されている。
【0048】
ベースリング本体部44は、固定側リング板14に対して回転方向に摺動可能に載置され、固定ケース12に対して相対回転可能に構成されている。また、ローラ支持凸部45は、ベースリング本体部44の周方向に等間隔ごとに回転ローラ43を軸支可能に上方に向けて突出している。また、ローラ外周側突部46は、ローラ支持凸部45に対して外側で、フラットケーブルCを後述するように回転ローラ43の周りに折り返した折り返し部分(後述する反転部分Cr)を径外側からガイドするようベースリング本体部44に対して上方に向けて突出している。
【0049】
フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて2本を重ね合わせて巻き回した状態で備えている。重ね合わせた2本のうち一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端側を第1固定ケース側コネクタ17A側に接続しているとともに、2本のうち他方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端側を第2固定ケース側コネクタ17B側に接続している。
【0050】
また、重ね合わせた2本のうち、一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の他端側を第1回転ケース側コネクタ23A側に接続しているとともに、2本のうち他方のフラットケーブルCにおける長さ方向の他端側を第2回転ケース側コネクタ23B側に接続している。
【0051】
このようなフラットケーブルCは、ケーブルハウジング11の内部の収容空間Sにおいて固定側リング板14に対して回転自在に載置されたリテーナ41によって支持され、巻回した状態で収容されている。
詳しくは、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて、第1固定ケース側コネクタ17A、第2固定ケース側コネクタ17Bのそれぞれから収容空間Sへ引き込まれ、図3に示すように、リテーナ41の外側で固定ケース12の外周筒15の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Coが構成される。従って、外側巻き部分Coの基端は、固定ケース側コネクタ17の位置において固定されている。
【0052】
なお、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わせて巻き回されているが、図3では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0053】
そして、図3中の破線で示すように、フラットケーブルCは、長さ方向の途中で、複数の回転ローラ43のうち1つにU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Crが構成される。
【0054】
さらに、フラットケーブルCは、反転部分Crに対して、長さ方向の他端側をリテーナ41の内側で回転ケース13の内周筒22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Ciが構成される。
このようにして、フラットケーブルCは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1回転ケース側コネクタ23A、第2回転ケース側コネクタ23B側に接続される。従って、内側巻き部分Ciの基端は、回転ケース側コネクタ23の位置において固定されている。
【0055】
このように、収容空間Sの内部においてフラットケーブルCは、回転ケース13が固定ケース12に対して回転することにより、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間でそれぞれ巻き付けと巻き解きのいずれかが行われる。
【0056】
このとき、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ41とともに適宜回転する。
これにより、ステアリングロールコネクタ10は、フラットケーブルCを収容空間S内で常に整列された巻き付け状態で保持することができるとともに、円滑なステアリングホイールの回転操作を可能としている。
【0057】
上述した構成のステアリングロールコネクタ10は、以下に述べる様々な作用、効果を得ることができる。
係合孔部18と係合凸部19とは上述のような構成であるので、係合孔部18の上面18cと係合凸部19の上面19cとの間には隙間が無く、互いに当接しており、固定側リング板14と外周筒15とは回転軸X方向には強固に固定されている。
【0058】
一方で、係合孔部18の左側面18aと係合凸部19の左側面19aとの間、及び、係合孔部18の右側面18bと係合凸部19の右側面19bとの間の少なくとも一方には僅かに遊びが存在する。
【0059】
ところが、嵌合凹部1と嵌合凸部2とは上述のような構成であるので、図8に示すように、嵌合凹部1の嵌合凹部左側面1aと嵌合凸部2の嵌合凸部左側面2a、及び、嵌合凹部1の嵌合凹部右側面1bと嵌合凸部2の嵌合凸部右側面2bは、互いに当接し、固定側リング板14に対して外周筒15が周方向に動くことを規制することができる。
【0060】
従って、ステアリングロールコネクタ10は、係合孔部18と係合凸部19とを係合することで、固定側リング板14と外周筒15とをその回転軸X方向に強固に嵌合できると共に、固定側リング板14の嵌合凹部1と外周筒15の嵌合凸部2とを時計回り及び反時計回りの両周方向に当接させるので、外周筒15が固定側リング板14に対して周方向に動きにくく、外周筒15が周方向にガタつくことによるきしみ音の発生を抑制できる。
【0061】
しかも、一方向(回転軸X方向)への係合孔部18と係合凸部19、及び、嵌合凹部1と嵌合凸部2の嵌合作業により、固定側リング板14に対する外周筒15の回転軸X方向、及び、周方向への動きを規制できる。
【0062】
また、嵌合凹部1と嵌合凸部2とが周方向の両側において当接しているので、一対の嵌合凹部1と嵌合凸部2のみにより周方向の時計回り及び反時計回りの両方向の外周筒15のガタつきを抑制することができる。
【0063】
また、嵌合凹部1の嵌合凹部左側面1aと嵌合凸部2の嵌合凸部左側面2a、及び、嵌合凹部1の嵌合凹部右側面1bと嵌合凸部2の嵌合凸部右側面2bは、それぞれ径方向が面内方向であるので、周方向に力が加わった場合に、該力の方向が、嵌合凹部左側面1a、嵌合凸部左側面2a、嵌合凹部右側面1b及び嵌合凸部右側面2bの各当接面に垂直な方向と一致する。従って、他の角度で当接させる場合に比べ、最も有効に固定側リング板14に対する外周筒15の周方向への動きを規制することができる。
【0064】
また、嵌合凹部1と嵌合凸部2とを、それぞれ固定側リング板14のリング板筒部14Q及び外周筒15の径方向の全体にわたって設けているので、嵌合凹部1と嵌合凸部2とが周方向で当接する面積を広く確保することができ、従って、周方向への回転拘束力を大きくできる。
【0065】
しかも、嵌合凹部1と嵌合凸部2とを、径方向に沿って設け、嵌合凹部1の外側面及び嵌合凸部2の外側面は、それぞれ固定側リング板14のリング板筒部14Qの外側面14Qd及び外周筒15の外側面15aに露出しているので、固定側リング板14の嵌合凹部1と外周筒15の嵌合凸部2とを目視で嵌合することができ、固定側リング板14と外周筒15との嵌合を容易にできる。
【0066】
さらに、嵌合凹部1の周長w1と嵌合凸部2の周長w2とを、本実施形態に示す程度に長くとることで、嵌合凸部2に対して周方向に力が加わった場合に、嵌合凸部2の周方向への変形を小さく抑えることができ、従って、きしみ音の発生を抑制することができる。
【0067】
この発明は、上述した実施形態に限定せず、様々な実施形態で構成することができる。
なお、この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、
回転コネクタ装置は、ステアリングロールコネクタ10に対応し、
固定側リング板回転規制部は、嵌合凹部1に対応し、
外周筒回転規制部は、嵌合凸部2に対応し、
当接面は、嵌合凹部左側面1a、嵌合凸部左側面2a、嵌合凹部右側面1b、嵌合凸部右側面2bに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0068】
例えば、上述の実施形態では、嵌合凹部1及び嵌合凸部2を、第1固定ケース側コネクタ17Aと第2固定ケース側コネクタ17Bとの間における固定側リング板14の上端部14Qt及び外周筒15の外側面15aに設けた構成であるが、固定側リング板14の上端部14Qt及び外周筒15の外側面15aの上述の実施形態の構成とは180度周方向に移動した位置に設けてもよい。
【0069】
すなわち、ステアリングロールコネクタ10の構造上、固定側リング板14に対する外周筒15の周方向への変位が最も激しいと考えられる適宜の場所に嵌合凹部1及び嵌合凸部2を配置することができる。
【0070】
また、例えば、上述の実施形態よりも、嵌合凹部1の周長l1及び嵌合凸部2の周長l2をさらに長く設けてもよい。これにより、嵌合凸部2に対して周方向に力が加わることによる嵌合凸部2の周方向への変形を小さくでき、きしみ音の発生をよりよく抑制することができる。
【0071】
また、例えば、上述の実施形態では、嵌合凹部1と嵌合凸部2とを嵌合して周方向に当接させる構成であるが、固定側リング板における外側面から突出した嵌合凸部及び外周筒における外側面から突出した嵌合凸部を周方向に当接させる構成であってもよい。
【0072】
この場合、外側面のある場所で、固定側リング板の嵌合凸部を外周筒の嵌合凸部に対して周方向に時計回りに当接させ、外側面の別の場所において、逆に、固定側リング板の嵌合凸部を外周筒の嵌合凸部に対して周方向に反時計回りに当接させることで両回転軸X方向を規制することができる。
【0073】
また、例えば、嵌合凹部1と嵌合凸部2とをテ―パ状に形成してもよいし、嵌合凹部1の嵌合凹部左側面1a及び嵌合凹部左側面1bに凹部を設け、嵌合凸部2の嵌合凸部左側面2a及び嵌合凸部左側面2bの上記凹部と対応する位置に凸部を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
この発明は、固定側と回転側との間を電気的に接続する様々な回転コネクタ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1…嵌合凹部
1a…嵌合凹部左側面
1b…嵌合凹部右側面
2…嵌合凸部
2a…嵌合凸部左側面
2b…嵌合凸部右側面
10…ステアリングロールコネクタ
12…固定ケース
13…回転ケース
14…固定側リング板
15…外周筒
18…係合孔部
18a…係合孔
19…係合凸部
21…回転側リング板
22…内周筒
C…フラットケーブル
S…収容空間
X…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の固定側リング板及び該固定側リング板の外周縁から該固定側リング板の平面に対して垂直に延びる円筒状の外周筒で構成する固定ケースと、
環状の回転側リング板及び該回転リング板の内周縁から該回転リング板の平面に対して前記固定ケースに向かって垂直に延びる円筒状の内周筒で構成する回転ケースとを、
時計回り方向及び反時計回り方向に相対回転可能に嵌合し、
前記固定ケースの前記固定側リング板及び前記外周筒と、前記回転ケースの前記回転側リング板及び前記内周筒とで収容空間を構成し、
該収容空間に、前記固定ケース側と前記回転ケース側とを電気的に接続するフラットケーブルを巻き回して収容する回転コネクタ装置であって、
前記固定側リング板と前記外周筒とを別部材で構成し、
前記固定側リング板の外周縁に、固定側リング板回転規制部を備えると共に、
前記外周筒の外周縁の前記固定側リング板回転規制部に対応する位置に外周筒回転規制部を備え、
前記固定側リング板と前記外周筒とを、回転軸を一致させて、該回転軸方向に嵌合させると共に、前記固定側リング板回転規制部を前記外周筒回転規制部に前記回転軸に対する両回転方向に当接させて前記固定ケースを構成する
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記固定側リング板は、外周縁から前記外周筒側に垂直に突出し、係合孔を有する複数の係合孔部を周方向に所定間隔を隔てて備え、
前記外周筒は、外側面において前記係合孔部と対応する位置に径外側へ突出する複数の係合凸部を所定間隔を隔てて備え、
前記固定側リング板と前記外周筒とを、前記外周部において前記係合凸部に前記係合孔部を回転軸方向に挿入して係合することで前記固定ケースを構成する
請求項1に記載の回転コネクタ装置。

【請求項3】
前記固定側リング板回転規制部と前記外周筒回転規制部とのいずれか一方が、嵌合凸部であり、他方が嵌合凹部であり、
前記嵌合凸部が前記嵌合凹部の周方向の両側において当接して嵌合する
請求項1又は2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが当接する当接面を、径方向に沿って形成した
請求項3に記載の回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−109184(P2012−109184A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258898(P2010−258898)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】