説明

回転体の表面粗さの測定方法、砥石における砥粒の突き出し量の測定方法、及び研削盤

【課題】ワークを研削することなく、砥石の砥粒の突き出し量をより容易に測定することが可能な、砥石における砥粒の突き出し量の測定方法、及び、求めた砥粒の突き出し量に基づいて適切な時期にドレッシングを行うことができる研削盤、更に、砥石の砥粒の突き出し量に限定されず、より容易に回転体の表面粗さを測定する方法を提供する。
【解決手段】回転体を回転駆動する駆動力を検出可能な駆動力検出手段DSを用い、回転駆動される回転体の表面に液体を注ぎ、液体を注いでいる場合と注いでいない場合とにおける駆動力検出手段を用いて検出した駆動力の差、あるいは液体を注いでいる場合における駆動力検出手段を用いて検出した駆動力、に基づいて回転体の表面粗さを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の表面の微細な凹凸による表面粗さの測定方法、砥石における砥粒の突き出し量の測定方法、及び研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転駆動される砥石をワークに接触させてワークを研削する研削盤が知られている。砥石Tは図2(A)に示すように、結合剤等からなるベース部Tbに、微細な砥粒Trが混在している構造を有しており、ベース部Tbの表面から突出している砥粒Trにて研削が行われる。
砥石Tの研削性能を大きく左右するのは、主に図2(A)に示す砥粒Trの突き出し量Haであり、砥粒Trが摩耗して突き出し量Haが小さくなると研削性能が低下するため、定期的にドレッシングを行って砥粒Trを削ることなくベース部Tbの表面を除去し、砥粒Trの突き出し量Haを初期化している。
なお、本明細書では、ベース部Tbの表面を除去して砥粒Trの突き出し量Haを大きくする(初期化する)ことを「ドレッシング」と記載するが、砥石Tの輪郭形状を整える、いわゆるツルーイングも、「ドレッシング」に含むものとする。
砥粒Trが摩耗して突き出し量Haが小さくなり研削性能が低下すると、加工時間の長時間化や、加工精度にも影響が及ぶため、適切な時期にドレッシングをする必要がある。しかし、砥粒Trの突き出し量Haは、例えば数十[μm]程度であり、直接的に測定するのは非常に困難であり、ドレッシング時期の判定は、非常に困難である。
そこで、従来では、過去の加工実績に基づいて、砥石の仕様と加工したワークの量からドレッシング時期を決定したり、作業者が実際の研削状態を確認してドレッシング時期を決定したり、研削盤の機外で(砥石Tを取り外して)砥石Tの表面を測定してドレッシング時期を決定したりしている。
また、例えば特許文献1に記載された従来技術では、砥石を駆動するモータの駆動電流を検出するセンサを設け、砥石でワークを研削した際のモータの電流を検出することで、モータの負荷を検出してドレッシング時期を決定する、研削盤のドレッシング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−77160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過去の加工実績や、作業者による研削状態の確認にてドレッシング時期を決定する従来の方法では、誤差が大きく、余裕を持たせるために比較的早期となるようにドレッシング時期が決定され、加工の中断回数の増加や、砥石の寿命の短縮化を招くので好ましくない。
また、機外で砥石Tの表面を測定する方法は、手間がかかるとともに測定にも時間がかかり、加工の中断時間が長くなるので好ましくない。
また、特許文献1に記載された従来技術では、実際に、砥石を用いて、実際のワークを研削しなければならない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、ワークを研削することなく、砥石の砥粒の突き出し量をより容易に測定することが可能な、砥石における砥粒の突き出し量の測定方法、及び、求めた砥粒の突き出し量に基づいて適切な時期にドレッシングを行うことができる研削盤、更に、砥石の砥粒の突き出し量に限定されず、より容易に回転体の表面粗さを測定する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの回転体の表面粗さの測定方法である。
請求項1に記載の回転体の表面粗さの測定方法は、回転体を回転駆動する駆動力を検出可能な駆動力検出手段と、制御手段と、を用い、前記制御手段にて、回転駆動される回転体の表面に液体を注ぎ、前記液体を注いでいる場合と注いでいない場合とにおける前記駆動力検出手段を用いて検出した駆動力の差、あるいは前記液体を注いでいる場合における前記駆動力検出手段を用いて検出した駆動力、に基づいて、前記回転体の表面粗さを求めるステップを有する、回転体の表面粗さの測定方法である。
【0006】
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの回転体の表面粗さの測定方法である。
請求項2に記載の回転体の表面粗さの測定方法は、請求項1に記載の回転体の表面粗さの測定方法であって、前記駆動力検出手段は、前記回転体を回転駆動する駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を検出可能であり、記憶手段に、予め前記表面粗さに対応させて、前記液体を注いでいる場合と注いでいない場合とにおける電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは前記液体を注いでいる場合における電力または電流の少なくとも一方、を測定した、表面粗さ−駆動力特性を記憶しておく。
そして前記制御手段にて、前記駆動力検出手段を用いて、前記駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を、前記液体を前記回転体に注いでいる場合と注いでいない場合とのそれぞれにて測定する、あるいは前記液体を前記回転体に注いでいる場合に測定する、ステップと、測定した電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは測定した電力または電流の少なくとも一方、と、前記表面粗さ−駆動力特性と、に基づいて前記回転体の表面粗さを求めるステップと、を有する回転体の表面粗さの測定方法である。
【0007】
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの砥石における砥粒の突き出し量の測定方法である。
請求項3に記載の砥石における砥粒の突き出し量の測定方法は、砥石を回転駆動する駆動力を検出可能な駆動力検出手段と、制御手段と、を用い、前記砥石の表面に突出している砥粒の突き出し量を測定する、砥石における砥粒の突き出し量の測定方法であって、前記制御手段にて、回転駆動される前記砥石の表面に液体を注ぎ、前記液体を注いでいる場合と注いでいない場合とにおける前記駆動力検出手段を用いて検出した駆動力の差、あるいは前記液体を注いでいる場合における前記駆動力検出手段を用いて検出した駆動力、に基づいて、前記砥石の表面の砥粒の突き出し量を求めるステップを有する、砥石における砥粒の突き出し量の測定方法である。
【0008】
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの砥石における砥粒の突き出し量の測定方法である。
請求項4に記載の砥石における砥粒の突き出し量の測定方法は、請求項3に記載の砥石における砥粒の突き出し量の測定方法であって、前記液体は、クーラントであり、前記駆動力検出手段は、前記砥石を回転駆動する駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を検出可能であり、記憶手段に、予め砥粒の突き出し量に対応させて、前記クーラントを注いでいる場合と注いでいない場合とにおける電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは前記クーラントを注いでいる場合における電力または電流の少なくとも一方、を測定した、突き出し量−駆動力特性を記憶しておく。
そして前記制御手段にて、前記駆動力検出手段を用いて、前記駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を、前記クーラントを前記砥石に注いでいる場合と注いでいない場合とのそれぞれにて測定する、あるいは前記クーラントを前記砥石に注いでいる場合に測定する、ステップと、測定した電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは測定した電力または電流の少なくとも一方、と、前記突き出し量−駆動力特性と、に基づいて前記砥石の表面の砥粒の突き出し量を求めるステップと、を有する砥石における砥粒の突き出し量の測定方法である。
【0009】
また、本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの研削盤である。
請求項5に記載の研削盤は、回転駆動される砥石と、前記砥石を回転駆動する駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を検出可能な駆動力検出手段と、前記砥石をドレッシング可能なドレッシング手段と、制御手段と、を備えた研削盤である。
前記制御手段には、予め前記砥石の砥粒の突き出し量に対応させて、クーラントを前記砥石に注いでいる場合と注いでいない場合とにおける電力または電流の少なくとも一方の差、あるいはクーラントを前記砥石に注いでいる場合における電力または電流の少なくとも一方、を測定した、突き出し量−駆動力特性が記憶されている。
そして前記制御手段は、前記駆動力検出手段を用いて、前記駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を、前記クーラントを前記砥石に注いでいる場合と注いでいない場合とのそれぞれにて測定し、あるいは前記クーラントを前記砥石に注いでいる場合に測定し、測定した電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは測定した電力または電流の少なくとも一方、と、前記突き出し量−駆動力特性と、に基づいて前記砥石の表面の砥粒の突き出し量を求め、求めた砥粒の突き出し量が所定突き出し量以下の場合、前記ドレッシング手段を用いて前記砥石をドレッシングする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の回転体の表面粗さの測定方法を用いれば、回転体の表面を傷つけることなく、より容易に表面粗さを測定することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の回転体の表面粗さの測定方法によれば、回転体の表面を傷つけることなく、回転体の表面粗さを測定する方法を、比較的容易に実現することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の砥石における砥粒の突き出し量の測定方法によれば、実際にワークを研削したり高精度な形状測定装置により直接砥粒の突き出し量を測定したりすることなく、より容易に砥石における砥粒の突き出し量を測定することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の砥石における砥粒の突き出し量の測定方法によれば、実際にワークを研削したり高精度な形状測定装置により直接砥粒の突き出し量を測定したりすることなく、砥石における砥粒の突き出し量を測定する方法を、比較的容易に実現することができる。また、駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を検出する駆動力検出手段であれば、砥石を備えた研削盤の機上に容易に搭載可能である。
【0014】
また、請求項5に記載の研削盤によれば、遅すぎず、且つ早すぎず、適切な時期に、適切なドレス量で砥石のドレッシングを行うことができるので、加工効率の低下や砥石寿命の低下、ドレスストーンの消費量やドレス時間を適切に抑制することができる研削盤を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の研削盤1の一実施の形態を説明する平面図(A)、及び側面図(B)である。
【図2】砥石Tにおける砥粒Trの突き出し量Haを説明する図である。
【図3】砥石Tにおける砥粒Trの突き出し量Haの測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1(A)は、本発明の研削盤1の一実施の形態における平面図の例を示しており、図1(B)は、研削盤1の右側面図の例を示している。なお、図1(B)では、主軸台(右)DRを備えた主軸装置(右)の記載を省略している。
また、X軸、Y軸、Z軸が記載されている全ての図面において、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸は鉛直上向きを示しており、Z軸とX軸は水平方向を示している。そしてZ軸はワーク回転軸方向を示しており、X軸方向は砥石TがワークWに切り込む方向を示している。
【0017】
●[研削盤1の全体構成(図1(A)、(B))]
図1(A)及び(B)に示すように、研削盤1は、ワーク回転軸WZ回りに回転しているワークWに対して、砥石回転軸TZ回りに回転している略円筒形状の砥石Tを相対移動させてワークWを研削する。なお、各可動体の位置等を検出して各駆動モータに制御信号を出力する制御手段(NC制御装置等)については、図示を省略する。なお、ワーク回転軸WZと砥石回転軸TZは、どちらもZ軸と平行である。
ワークWは、センタ部材CLを備えた主軸装置(左)と、センタ部材CRを備えた主軸装置(右)に両端(または両端近傍)が支持されている(センタ部材の代わりに少なくとも一方がチャックであってもよい)。
【0018】
主軸装置(左)は、基台BSに載置された主軸台(左)DLと、主軸台(左)DLに対してZ軸方向に往復移動可能な主軸ハウジング(左)HLと、主軸ハウジング(左)HL内でワーク回転軸WZ回りに回転可能に支持された主軸(左)SLとを備えている。また、主軸(左)SLの一端にはセンタ部材CLが設けられている。
主軸(左)SLには図示しない駆動モータが設けられており、制御手段は、センタ部材CLの先端をとおるワーク回転軸WZ回りに主軸(左)SLを、任意の角速度で任意の角度まで回転させることができる。
なお、主軸台(右)DRを備えた主軸装置(右)も同様であり、主軸装置(右)については説明を省略する。
制御手段は、主軸(左)SLと主軸(右)SRを同期させて回転させることができる。
【0019】
また、基台BSには、Z軸駆動モータMXにて制御されるボールねじNXの回転角度に応じて、ガイドGXに沿ってZ軸方向の任意の位置に位置決めされる砥石スライドテーブル40が載置されている。制御手段はエンコーダ等の位置検出手段EXからの信号を検出しながらZ軸駆動モータMXに制御信号を出力する。
砥石スライドテーブル40には、X軸駆動モータMZにて制御されるボールねじNZの回転角度に応じて、ガイドGZに沿ってX軸方向の任意の位置に位置決めされる砥石進退テーブル41が載置されている。制御手段はエンコーダ等の位置検出手段EZからの信号を検出しながらX軸駆動モータMZに制御信号を出力する。
【0020】
砥石進退テーブル41には、砥石Tへの回転動力を発生させる砥石駆動モータMTが固定されている。また砥石駆動モータMTには、駆動力である電力を検出可能な駆動力検出手段DSが設けられている。
砥石駆動モータMTは駆動プーリ21に接続され、駆動プーリ21はベルト22を介して従動プーリ24に回転動力を伝達する。また従動プーリ24は、軸ホルダ25内にて砥石回転軸TZ回りに回転可能に支持された砥石軸部材の一端に接続されており、砥石軸部材の他端には略円板状の砥石Tが接続されている。
また、本実施の形態にて説明する研削盤1では、砥石Tの支持方法が片持ち式の例を示しているが、両持ち式で砥石Tを支持してもよい。
また、砥石Tは、少なくとも一部が開口した略箱状の砥石覆い12に収容されている。
【0021】
なお、図1(B)に示すように、砥石回転軸TZとワーク回転軸WZは仮想平面MF上に位置している。この状態で砥石TをワークWに対して相対的に近づけていき、ワークWと砥石Tとが接触した位置における砥石Tの側の点を砥石研削点TPとする。
また、研削盤1には、砥石研削点TPの近傍にクーラントを供給するクーラントノズルCNが設けられている。
また、図1(A)及び(B)の例に示す研削盤1では、砥石Tのドレッシングを行うドレッシング手段TRが、主軸ハウジング(左)HLに取り付けられている。
【0022】
●[砥石Tにおける砥粒Trの突き出し量Ha(図2(A))]
砥石Tは、例えば金属の円盤状のベース基盤に、結合剤等からなるベース部Tbに高硬度の砥粒Trが混在している円筒状の砥石部材が取り付けられた構成を有している。そして、図2(A)に示すように、ベース部Tbの表面から突出している砥粒Trにて研削が行われる。
砥石Tの研削性能は、砥粒Trの突き出し量Haが大きく影響し、砥粒Trの摩耗が進み、突き出し量Haが小さくなると(図2(C)参照)研削性能が低下するので、定期的にドレッシングを行い、砥粒Trを削ることなくベース部Tbの表面を除去して突き出し量Haを大きくする(初期化する)必要がある。
【0023】
砥石Tのドレッシングの時期を見極めるには、砥粒Trの突き出し量Haを測定すればよいが、突き出し量Haは数十[μm]程度であり、しかも研削盤1に取り付けられている状態で突き出し量Haを正確に測定するのは非常に困難である。
そこで従来では、過去の加工実績からワークをn本加工する毎にドレッシングを行ったり、熟練作業者によるワークの加工状態からドレッシング時期を決定したりしていた。
しかし、この方法では誤差が大きく、余裕を持たせるために比較的早めにドレッシングを行う結果となり、加工の中断回数の増加や、砥石寿命の低下を招くので好ましくない。
また、特開平5−77160号公報に記載の砥石駆動モータの電流を計測する方法は、実際のワークを研削しなければならない。
本実施の形態にて説明する砥石Tにおける砥粒Trの突き出し量Haの測定方法では、実際のワークを研削することなく(砥石Tを摩耗させることなく)突き出し量Haを測定可能である。
【0024】
●[砥石Tにおける砥粒Trの突き出し量Haの測定方法(図2(B)、(C)、図3(A)〜(C))]
例えば図2(B)と図2(C)は、突き出し量Haの他の条件(砥石Tの径、回転速度等)が同じ場合の例を示しており、この場合、突き出し量Haが小さい図2(C)よりも、突き出し量Haが大きい図2(B)のほうが、砥石Tの表面の流体による、回転方向と反対の力である抗力が大きくなる(Fa>Fb)。更に、砥石Tの表面に気体でなく液体(この場合、クーラント)を注いだ場合、抗力は更に大きくなり、砥石Tを一定回転数に維持するために、砥石駆動モータMTの駆動力が増大する。
従って、砥石Tで実際のワークを研削しなくても、この駆動力を測定することで、突き出し量Haを求めることが可能となる。
なお、砥石駆動モータMTの駆動力は、砥石駆動モータMTの電力または電流を測定することで求めることができる。
以下、「駆動力の差を用いて突き出し量を測定する方法」と、「駆動力を用いて突き出し量を測定する方法」について説明する。
【0025】
[駆動力の差を用いて突き出し量を測定する方法]
次に、「駆動力の『差』」を用いて突き出し量を測定する手順を説明する。
予め、砥石仕様(砥粒の種類、砥石の径等)に対する、突き出し量Haと砥石駆動モータMTの電力の関係を示す換算表またはグラフ等(図3(C)参照。突き出し量−駆動力特性に相当)を作成する。駆動力検出手段DSを用いて、種々の突き出し量Ha(この場合、レーザ測定器等、種々の測定器を用いて突き出し量Haを測定することができる)に対して、砥石Tにクーラントを注いだ場合の電力と、注いでいない場合の電力との差を測定する。
例えば図3(B)は、砥石Tを一定回転数(例えば3000rpm)に維持してクーラントOFF(注がない)-->クーラントON(注ぐ)-->クーラントOFF(注がない)とした場合の駆動力(電力)の測定結果を示しており、実線は突き出し量Haが大きい場合(突き出し量=Ha1)の駆動力(電力)の測定結果を示しており、点線は突き出し量Haが小さい場合(突き出し量=Ha2)の駆動力(電力)の測定結果を示している。この場合、突き出し量=Ha1では電力の差はΔFa1であり、突き出し量=Ha2では電力の差はΔFa2であることを示している。
そして、種々の突き出し量に対する電力の差を測定し、図3(C)に示すグラフや換算表等を作成し、作成したグラフや換算表である「突き出し量−駆動力特性」を研削盤1の制御手段(記憶手段に相当)に記憶しておく。ここで、図3(C)に示す「突き出し量−駆動力特性」において、突き出し量がHmin(所定突き出し量に相当)以下の場合(あるいは駆動力差がΔFmin以下の場合)、砥石Tのドレッシングが必要であるとする。
【0026】
研削盤1には、図1(A)及び(B)に示すように、駆動力検出手段DSとクーラントノズルCNが設けられている。
制御手段は、所定タイミング(例えばワークをm本加工する毎)にて、砥粒Trの突き出し量の測定を開始する。
最初のステップでは、制御手段は、砥石Tを回転させて駆動力検出手段DSを用いて電力を測定しながら、クーラントノズルCNからのクーラントを吐出または停止させ、電力の差を測定する。
そして次のステップでは、制御手段は、測定した電力の差と、突き出し量−駆動力特性とに基づいて、砥粒の突き出し量を求める。
そして次のステップでは、制御手段は、求めた突き出し量がHminより大きければ特にドレッシングは必要ないと判断し、求めた突き出し量がHmin以下である場合、ドレッシングが必要であると判断し、ドレッシング手段TRに対して砥石Tを相対移動させて砥石Tをドレッシングして、砥粒Trの突き出し量Haを初期化する。
【0027】
[駆動力を用いて突き出し量を測定する方法]
次に、「駆動力」を用いて突き出し量を測定する手順を説明する。
上記と同様に、予め、突き出し量−駆動力特性を作成するが、砥石Tにクーラントを注いだ場合の電力を測定し、注いでいない場合の電力は測定しない。
例えば図3(B)は、砥石Tを一定回転数(例えば3000rpm)に維持してクーラントOFF(注がない)-->クーラントON(注ぐ)-->クーラントOFF(注がない)とした場合の駆動力(電力)の測定結果を示しており、実線は突き出し量Haが大きい場合(突き出し量=Ha1)の駆動力(電力)の測定結果を示しており、点線は突き出し量Haが小さい場合(突き出し量=Ha2)の駆動力(電力)の測定結果を示している。この場合、突き出し量=Ha1では電力はFa1であり、突き出し量=Ha2では電力はFa2であることを示している。
そして、種々の突き出し量に対する電力を測定し、グラフや換算表等を作成し、作成したグラフや換算表である「突き出し量−駆動力特性」を研削盤1の制御手段(記憶手段に相当)に記憶しておく。ここで「突き出し量−駆動力特性」において、突き出し量がHmin(所定突き出し量に相当)以下の場合、砥石Tのドレッシングが必要であるとする。
【0028】
研削盤1には、図1(A)及び(B)に示すように、駆動力検出手段DSとクーラントノズルCNが設けられている。
制御手段は、所定タイミング(例えばワークをm本加工する毎)にて、砥粒Trの突き出し量の測定を開始する。
最初のステップでは、制御手段は、砥石Tを回転させて駆動力検出手段DSを用いて電力を測定しながら、クーラントノズルCNからクーラントを吐出させ、電力を測定する。
そして次のステップでは、制御手段は、測定した電力と、突き出し量−駆動力特性とに基づいて、砥粒の突き出し量を求める。
そして次のステップでは、制御手段は、求めた突き出し量がHminより大きければ特にドレッシングは必要ないと判断し、求めた突き出し量がHmin以下である場合、ドレッシングが必要であると判断し、ドレッシング手段TRに対して砥石Tを相対移動させて砥石Tをドレッシングして、砥粒Trの突き出し量Haを初期化する。
【0029】
上記の説明では、砥石Tの駆動力として砥石駆動モータMTの電力を用いたが、砥石駆動モータMTの電流を用いてもよく、駆動力として、電力または電流の少なくとも一方を用いることができる。
以上、本実施の形態にて説明した砥石Tにおける砥粒Trの突き出し量Haの測定方法を用いれば、実際のワークを研削することなく、機上で突き出し量Haをより正確に測定することが可能であり、砥石Tのドレッシングの回数を必要最低限にすることが可能となり、加工の中断回数を低減することができる。また、不良品を出すことなく限界直前まで砥石Tを使用することができるので、砥石寿命を延ばすことができる。
【0030】
[回転体の表面粗さの測定への適用]
また、砥石Tにおける砥粒Trの突き出し量Haに限定されず、回転体の表面粗さの測定方法にも適用することができる。この場合、予め回転体の表面粗さに応じた「表面粗さ−駆動力特性」のグラフ等を作成し、測定対象の回転体の表面に液体を注いでいる場合と注いでいない場合とのそれぞれの駆動力の差(電力または電流の少なくとも一方の差)を測定し、測定した駆動力の差と「表面粗さ−駆動力特性」に基づいて、回転体の表面粗さを測定することができる。この場合、回転体の表面を傷つけることなく、表面粗さを測定することができる。
なお、液体を回転体に注いでいる場合の駆動力と注いでいない場合の駆動力の差を用いることなく、上記のように、液体を回転体に注いでいる場合の駆動力を用いて、回転体の表面粗さを測定することも可能である。
【0031】
以上、本実施の形態の説明では、突き出し量(表面粗さ)−駆動力特性(図3(C)参照)を用いて、測定した駆動力の差(または駆動力)から、どの程度の表面粗さ(この場合、どの程度の長さの突き出し量)であるか、を求める例を説明したが、突き出し量(表面粗さ)−駆動力特性を用いずに、所定突き出し量(所定表面粗さ)以上であるか否か、のみを求めることも可能である。この場合、所定突き出し量(所定表面粗さ)となる駆動力差(または駆動力)を予め測定して記憶しておき、測定した駆動力差(または駆動力)が、駆動力閾値以上であるか否かを判定すればよい。例えば砥石Tにおける砥粒Trの突き出し量に対して、砥石Tのドレッシングが不要である突き出し量が最小の状態にて、その状態における駆動力差(または駆動力)を予め駆動力閾値として記憶しておく。そして、測定した駆動力差(または駆動力)が駆動力閾値未満である場合に突き出し量(表面粗さ)が所定突き出し量未満である(所定表面粗さ未満である)と求めることが可能であり、その場合は砥石Tのドレッシングを実行すればよい。なお、この駆動力閾値は、突き出し量(表面粗さ)−駆動力特性の一例でもある。
【0032】
本発明の砥石における砥粒の突き出し量の測定方法、砥石のドレッシング方法、及び回転体の表面粗さの測定方法は、本実施の形態で説明した処理、方法等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
駆動力検出手段DS、及びドレッシング手段TRを設ける位置は、図1(A)及び(B)に示す位置に限定されず、研削盤1のどこに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 研削盤
12 砥石覆い
25 軸ホルダ
40 砥石スライドテーブル
41 砥石進退テーブル
BS 基台
CL、CR センタ部材
CN クーラントノズル
DS 駆動力検出手段
Ha 突き出し量
MT 砥石駆動モータ
MX Z軸駆動モータ
MZ X軸駆動モータ
GX、GZ ガイド
SL、SR 主軸(左)、主軸(右)
T 砥石
Tb ベース部
TP 砥石研削点
TR ドレッシング手段
Tr 砥粒
TZ 砥石回転軸
W ワーク
WZ ワーク回転軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を回転駆動する駆動力を検出可能な駆動力検出手段と、制御手段と、を用い、
前記制御手段にて、
回転駆動される回転体の表面に液体を注ぎ、前記液体を注いでいる場合と注いでいない場合とにおける前記駆動力検出手段を用いて検出した駆動力の差、あるいは前記液体を注いでいる場合における前記駆動力検出手段を用いて検出した駆動力、に基づいて、前記回転体の表面粗さを求めるステップを有する、
回転体の表面粗さの測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回転体の表面粗さの測定方法であって、
前記駆動力検出手段は、前記回転体を回転駆動する駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を検出可能であり、
記憶手段に、予め前記表面粗さに対応させて、前記液体を注いでいる場合と注いでいない場合とにおける電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは前記液体を注いでいる場合における電力または電流の少なくとも一方、を測定した、表面粗さ−駆動力特性を記憶しておき、
前記制御手段にて、
前記駆動力検出手段を用いて、前記駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を、前記液体を前記回転体に注いでいる場合と注いでいない場合とのそれぞれにて測定する、あるいは前記液体を前記回転体に注いでいる場合に測定する、ステップと、
測定した電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは測定した電力または電流の少なくとも一方、と、前記表面粗さ−駆動力特性と、に基づいて前記回転体の表面粗さを求めるステップと、を有する、
回転体の表面粗さの測定方法。
【請求項3】
砥石を回転駆動する駆動力を検出可能な駆動力検出手段と、制御手段と、を用い、前記砥石の表面に突出している砥粒の突き出し量を測定する、砥石における砥粒の突き出し量の測定方法であって、
前記制御手段にて、
回転駆動される前記砥石の表面に液体を注ぎ、前記液体を注いでいる場合と注いでいない場合とにおける前記駆動力検出手段を用いて検出した駆動力の差、あるいは前記液体を注いでいる場合における前記駆動力検出手段を用いて検出した駆動力、に基づいて、前記砥石の表面の砥粒の突き出し量を求めるステップを有する、
砥石における砥粒の突き出し量の測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の砥石における砥粒の突き出し量の測定方法であって、
前記液体は、クーラントであり、
前記駆動力検出手段は、前記砥石を回転駆動する駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を検出可能であり、
記憶手段に、予め砥粒の突き出し量に対応させて、前記クーラントを注いでいる場合と注いでいない場合とにおける電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは前記クーラントを注いでいる場合における電力または電流の少なくとも一方、を測定した、突き出し量−駆動力特性を記憶しておき、
前記制御手段にて、
前記駆動力検出手段を用いて、前記駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を、前記クーラントを前記砥石に注いでいる場合と注いでいない場合とのそれぞれにて測定する、あるいは前記クーラントを前記砥石に注いでいる場合に測定する、ステップと、
測定した電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは測定した電力または電流の少なくとも一方、と、前記突き出し量−駆動力特性と、に基づいて前記砥石の表面の砥粒の突き出し量を求めるステップと、を有する、
砥石における砥粒の突き出し量の測定方法。
【請求項5】
回転駆動される砥石と、
前記砥石を回転駆動する駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を検出可能な駆動力検出手段と、
前記砥石をドレッシング可能なドレッシング手段と、
制御手段と、を備えた研削盤であって、
前記制御手段には、予め前記砥石の砥粒の突き出し量に対応させて、クーラントを前記砥石に注いでいる場合と注いでいない場合とにおける電力または電流の少なくとも一方の差、あるいはクーラントを前記砥石に注いでいる場合における電力または電流の少なくとも一方、を測定した、突き出し量−駆動力特性が記憶されており、
前記制御手段は、
前記駆動力検出手段を用いて、前記駆動モータの電力または電流の少なくとも一方を、前記クーラントを前記砥石に注いでいる場合と注いでいない場合とのそれぞれにて測定し、あるいは前記クーラントを前記砥石に注いでいる場合に測定し、
測定した電力または電流の少なくとも一方の差、あるいは測定した電力または電流の少なくとも一方、と、前記突き出し量−駆動力特性と、に基づいて前記砥石の表面の砥粒の突き出し量を求め、
求めた砥粒の突き出し量が所定突き出し量以下の場合、前記ドレッシング手段を用いて前記砥石をドレッシングする、
研削盤。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−274406(P2010−274406A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132162(P2009−132162)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】