説明

回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体および該レジスト防液構造体を備える回転傾斜露光装置

【課題】回転傾斜露光装置において、液体槽に溜められた液体にレジストが浸されることなく、液体を介してレジストに露光光を照射することができるようにすること。
【解決手段】光出射部100からの光が液体槽40を通過して、液体中に浸されたレジスト防液構造体10の開口31aからマスクMを介してレジストRに照射される。レジスト防液構造体10は、防液部材30、回転モータ22等から構成され、防液部材30内に液体が浸入しないように、マスクMの透明基板が防液部材30の開口31aを覆い開口31aを密封する。回転モータ22が回転すると、ステージ部21は防液部材30と共に回転し、ステージ21上に載置されたマスクMとレジストRからなる被照射物Wが回転する。マスクMが開口31aを密封しているので、液体中にレジストRを浸すことなく大気中で露光するよりレジストRの表面に緩やかな斜面を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク及び該マスクに密着したレジストから構成される被照射物を、液体中に浸して回転させながらマスク側から露光光を照射して露光する回転傾斜露光装置に適用される構造体であって、上記レジストが濡れないように防液するための構造体(以下、回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体という)及び該レジスト防液構造体を備えた回転傾斜露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術は、微細なパターンを形成する技術としてLSI(大規模集積回路)を中心として、電気回路、半導体素子のほか、ディスプレイなどの様々な用途に使用されている。特に、最近では、ナノテクノロジ技術の進歩に伴い、半導体集積回路作製技術を応用することにより、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)への応用が広がっている。MEMSとは、機械要素部品、センサー、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料等の上に集積したデバイスをいう。
このようなフォトリソグラフィ技術の広がりに伴い、照射パターンや光の質など、露光装置に要求される性能も多様化している。例えば、ある種のフォトリソグラフィでは、露光現像後のパターンが、深さ方向において形状が変化するように求められることがある。一例として、図17に示すように、円錐形状や四角錐形状の斜面を有する3次元構造の露光パターンを作製することが望まれている。このようにして形成した露光パターンは、インクジェットのノズル形状や、マイクロ流体システムのチップに形成される微細な流路、導光板の作成用のインプリント用モールドの母型などに使用される。
【0003】
ここで、例えば、フォトリソグラフィ技術をMEMSに応用する場合は、露光パターンの深さ方向において傾斜角を変化させることが望まれ、具体的には、傾斜角を緩やかに形成することが望まれることがある。特許文献1には、レジストに入射する露光光の入射角を大きくすることにより、レジストに形成される露光パターンの傾斜角を緩やかにすることに適した、傾斜露光可能な液浸露光装置が開示されている。
図18に液浸露光装置の一例を示す。
液浸露光装置130は、光源及び光学系131を備えている。レジストRが塗布されたマスクMは、レジストRがステージ132に接するようにして、ステージ132により密着固定されている。マスクMは、ステージ132と共に液体タンクである液浸用の液体容器134の中に設置されている。液体容器134には純水135が溜められている。ステージ132のマスクMの固定された反対面は、ステージ132の面に垂直に回転軸133が取付けられ、この回転軸133を中心にステージ132全体が回転する構成である。ステージ132と回転軸133とは、露光光Lに対して全体が揺動する機構となっており、この機構により露光光Lを被照射物Wに対して斜めに照射することが可能になっている。また、回転軸133は、液体容器134を貫通しており、独立して回転することが出きるようになっている。
このような液浸露光装置130において、傾斜露光を行う場合は、不図示の揺動機構によってステージ132を露光光Lに対して傾斜させ、回転軸133によりステージ132および被照射物Wを回転させながら露光を行う。
【0004】
通常の露光装置では、マスクMの周辺は空気と接していることから、屈折によりマスクに塗布されたレジスト(屈折率1.6)に入射する露光光の入射角は約38度が上限である。これに対し、上記の液浸露光装置では、純水の屈折率(約1.3)が空気(1)よりも大きいことから、マスクMに塗布されたレジストR(屈折率1.6)に入射する露光光の入射角が38度よりも大きくなる。そのため、液浸露光装置では、レジストRに形成されるパターンの深さ方向における傾斜角が緩やかになるので、図17に示す円錐形状などの斜面を緩やかに形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−26554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の液浸露光装置では、レジストが液体に浸かっているため、次のような問題が発生する。
(1)液体とレジストの組合せによっては、レジストが溶解、膨潤したり、レジストがマスクから剥離することがあり、3次元構造の露光パターンの造形に悪影響を与える。
(2)例えば、アルコールやアセトン等は屈折率が大きい液体であるが、これらはレジストを溶かすおそれがあるので使用することができない。
本発明は上記従来技術の問題点を解決するものであって、本発明の目的は、液体槽に溜められた液体にレジストが浸されることなく、液体を介してレジストに露光光を照射することができる回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体及びこのレジスト防液構造体を用いた回転傾斜露光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明においては、防液部材内にレジストを収容し、該レジストに密着したマスクを上記防液部材に設けた開口に取り付け、該開口から防液部材内に液体が浸入しないように密封した。
上記防液部材は、液体槽に溜められた液体に浸され、露光光が液体槽内の液体を介して上記防液部材の上記開口から入射し、マスクを介して防液部材内のレジストに照射される。このように回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体を構成することで、レジストが液体に浸されることがない。
すなわち、本発明のレジスト防液構造体は、内部にレジストが収納され、開口にマスクが取り付けられた上記防液部材と、回転機構とから構成され、露光光は、上記開口およびマスクを介してレジストに照射され、このレジストおよびマスクは上記回転機構により回転する。
上記防液部材は、上記レジストを収納する本体部から構成されるが、本体部としては、マスクが取り付けられる開口を有する筒状体、あるいはマスクが取り付けられる開口を有する可撓性部材で構成することができる。要は、本体部の内部においてレジストを濡れないように収納する空間が形成されていれば良い。
また、上記レジスト防液構造体を角度可変アームを有する角度調整機構に取り付けることにより、液体槽中のレジスト防液構造体の姿勢(角度)を変えることができる。
以上のように本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
(1)透明基板上に遮光部のパターンが形成されてなるマスク及び該マスクに密着したレジストから構成される被照射物を、露光光の入射方向に対して傾斜して配置し、該被照射物をマスク面に対して垂直方向を軸として回転させながら、該被照射物のマスク側から露光光を照射して露光する回転傾斜露光装置に適用され、露光光を透過させる液体中に浸されて使用される回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体を、内部に前記レジストが収納される防液部材と、上記被照射物を回転させる回転機構とから構成する。前記防液部材は前記露光光が入射する開口を有し、該開口に前記マスクの透明基板が取り付けられ、前記レジストが液体に濡れないように前記透明基板により前記開口が密封される。
(2)上記(1)において、前記防液部材を前記開口を有する筒状の本体部から構成する。(3)上記(1)において、前記防液部材を、前記開口を有する可撓性部材で形成された本体部から構成し、該開口が設けられていない側を、前記防液部材内に液体が浸入しないように形成する。
(4)前記(1)(2)(3)の回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体を、露光光を透過する液体が溜められ、前記露光光がその壁面もしくは底面を通じて入射する液体槽の液体中に浸し、前記露光光がマスク面に斜め方向から入射するように配置して回転傾斜露光装置を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレジスト防液構造体は、内部に前記レジストが収納される防液部材を備えており、防液部材は前記露光光が入射する開口を有し、該開口に前記マスクの透明基板が取り付けられ、該透明基板により上記開口は防液部材内に液体が浸入しないように密封され、この防液部材が液体槽に溜められた液体に浸されている。
したがって、本発明によれば、レジストに入射する光の入射角を大きくしレジストに緩やかな斜面を形成することができる、といった従来の液浸露光装置の効果に加えて、レジストが液体に浸されることがないため、以下の効果を得ることができる。
(1)レジストが溶解、膨潤したり、また、レジストがマスクから剥離することが防止され、3次元構造の露光パターンを精度良く造形することができる。
(2)使用可能な液体の選択肢が広げることができる。例えば、アルコールやアセトン等のように屈折率は高いが、レジストを溶かすような液体であっても、使用することができる。
(3)レジスト防液構造体は液体槽等とは独立した構造体であり、液体外で被照射物の取り付け等を行い、液体中に浸すことができ、取り扱いが容易である。また、任意の形状の液体槽に適用することが可能である。
(4)レジスト防液構造体を、角度調整機構に取り付けることにより、レジスト防液構造体の液体槽中における姿勢(角度)を任意に設定することができる。このため、液体槽に入射する露光光の方向に合わせて、レジスト防液構造体の姿勢(角度)を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施例の回転傾斜露光装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示すレジスト防液構造体の構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】被照射物の構造、及び被照射物と防液部材の本体部との連結方法を示す図である。
【図4】回転傾斜露光装置による露光プロセスを説明する図である。
【図5】露光光のマスクへの入射角とレジストへの入射角を説明する図である。
【図6】第1の実施例の変形例(1)を示す図である。
【図7】第1の実施例の変形例(2)を示す図である。
【図8】図7に示すレジスト防液構造体の防液部材及び動力部の構造を示す分解斜視図である。
【図9】第1の実施例の変形例(3)を示す図である。
【図10】第1の実施例の変形例(4)を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施例の回転傾斜露光装置の構成を示す図である。
【図12】図11に示すレジスト防液構造体の構造を示す部分拡大断面図である。
【図13】第2の実施例の被照射物の構造、及び被照射物と防液部材の本体部との連結方法の詳細を示す拡大断面図である。
【図14】第2の実施例の変形例において防液部材への被照射物の取り付けを説明する図である。
【図15】第2の実施例の変形例の防液部材の構成を示す図である。
【図16】第1の実施例において液体槽の側面から露光光を入射させる場合の構成例を示す図である。
【図17】レジストで形成された円錐や四角錐形状の立体構造の一例を示す図である。
【図18】液浸露光装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施例の回転傾斜露光装置の構成を示す図であり、装置全体の断面図を示す。同図に示すように、本発明の回転傾斜露光装置は、光出射部100、光出射部100からの光が通過する液体槽40、液体槽40に溜められた液体42に浸されたレジスト防液構造体10を備える。レジスト防液構造体10は、防液部材30、レジストRが接するステージ21などを有する動力部20から構成される。
光出射部100は、光源としてのショートアーク型のランプ1、楕円集光鏡2、第1の平面鏡3、インテグレータレンズ4、シャッタ5、第2の平面鏡6、コリメータレンズ7などを備える。
ランプ1は露光光(紫外線)を含む光を出射する。ランプ1から出射した露光光Lは、楕円集光鏡2により反射されて集光され、第1の平面鏡3を介してインテグレータレンズ4に入射する。インテグレータレンズ4から出射した光は、シャッタ5、第2の平面鏡6を介してコリメータレンズ7に入射し、コリメータレンズ7によって平行光となって光出射部100から出射する。
【0011】
液体槽40は、底面(下面)に、露光光(紫外線)を透過する平面状の紫外線透過性ガラスなる窓部41が設けられる。光出射部100からの光は、この液体槽40の下面の窓部41から入射する。液体槽40には、空気の屈折率よりも大きい屈折率を持つ液体42が溜められる。液体42は、例えば、純水(屈折率約1.3)、グリセリン(C(OH))(屈折率1.47)、液浸顕微鏡に用いられるアニソール(CHOC)(屈折率1.5)が使用される。液体42は、窓部41およびマスクMの、液体側のそれぞれの面に気泡が残留しないように液体槽40に溜められる。
レジスト防液構造体10を構成する防液部材30は、その長手方向が光出射部100からの露光光に対して傾斜した状態で、液体42に浸されている。
防液部材30の底板には露光光(紫外線)が入射する開口が設けられ、この開口には、上記防液部材30内のレジストRが配置された部分に液体が浸入しないように、被照射物WのマスクMが密着して取り付けられる。また、防液部材30の開口と反対側の端部は液体42の液面42Aから伸び出している。
本実施例では、この防液部材30の内部に、ステージ21と、ステージ21に接するレジストRとが収容されており、ステージ21及びレジストRが液体42に濡れないようになっている。
【0012】
図2は液体槽に浸されたレジスト防液構造体10の構造を示す部分拡大断面図である。図3は被照射物の構造、及び被照射物と防液部材の本体部との連結方法を示す図である。
図2に示すように、レジスト防液構造体10は、防液部材30を有し、防液部材30は、円筒形状を有する本体部31を有する。その本体部31の一端側の底板32に設けられた開口31aには、透明基板Kに遮光部SHが設けられたマスクMと、レジストRからなる被照射物Wが取り付けられる。被照射物Wは、支柱23aに取り付けられたステージ21に取り付けられており、マスクMの透明基板K側が、上記開口31aに対向するように本体部31に取り付けられ、ネジ33により固定される。上記支柱23aを設けることにより、ステージ21を上下方向からしっかり固定することができる。
図3(a)に示すように、被照射物Wは、例えばガラス材料で構成される透明基板K上に、例えばクロムからなる遮光部SHのパターンが形成されてなるマスクMと、該マスクMの遮光部SH上に形成されたレジストRとで構成される。
マスクMの透明基板Kは、図3(b−1)に示すように、防液部材30の露光光が入射する開口31aに取り付けられ、透明基板KはレジストRが液体42に濡れないようにするための防液壁としての機能を果たす。
本体部31は械的強度に優れる金属等で作製される。上記露光光が入射する開口31aに取り付けられる透明基板Kは、紫外波長域の露光光を透過する紫外線透過性のガラスによって作製される。尚、本体部31がガラスによって作製されていても良い。
【0013】
図3(b−1)に示すようにマスクMの透明基板Kは、板状であり、該透明基板Kの縦横のサイズは、円筒状の本体部31の底板32に設けられた四角形状の開口31aの縦横のサイズ(径)よりもやや大きめに形成されている。かかる透明基板Kは、本体部31の開口31aを塞ぐように、本体部31の内部において、開口31aの開口端に沿って配置される。
図3(b−2)(b−3)に示すように、被照射物Wは、レジストRが液体に濡れることがないように、マスクMの透明基板Kが本体部31の開口31aの開口端に当接し、透明基板KのレジストRと反対側の面のみが本体部31外に露出するように配置される。
被照射物Wは、ステージ21と本体部31との間に挟まれるようにして配置され、本体部31の底板32に設けたネジ穴31bと、ステージ21に設けたネジ穴21aのそれぞれを貫通するように挿入されたネジ33によって、ステージ21と本体部31にネジ止めされて固定される。
【0014】
さらに、被照射物Wの固定を行うにあたり、本体部31の底板32とマスクMの透明基板Kとの間には、ゴムなどの樹脂製の枠状(リング状)の弾性材Dが挟持され、弾性材Dと防液部材30の底板32間は接着剤などで固定される。このように弾性材Dを配置することによって、本体部31と透明基板Kとの間が気密に封止され、本体部31内の密閉空間S(図2に示す)に液体が侵入することが防止される。
弾性材Dの内周面には、図3(b−2)に示すように、マスクM面と弾性材Dの内周面とが成す角が鈍角となるような傾斜面(泡逃がし用面取り)が形成されている。すなわち、弾性材Dの開口の内周面には、弾性材DのマスクMに接する面側の開口径より、底板32に接する面側の開口径が大きくなるように傾斜面が形成されている。このように、弾性材Dの内周面に傾斜面を設けることにより、弾性材Dの周辺に液体の泡が溜まりにくくなり、入射光の入射角が変化するといった不具合が生じない。
なお、マスクMと弾性材Dの間を固定せずに、押し付けて気密を保つようにすることで、マスクMを防液部材30から着脱可能にすることができる。
【0015】
図2に示すように、本体部31の開口31aと反対側の開口には円柱形状を有するホルダ部26が取付けられている。ホルダ部26は本体部31よりも径が大きい。本体部31、マスクMの透明基板K、及びホルダ部26によって密閉空間Sが形成され、該密閉空間Sの内部に、被照射物WにおけるレジストRと、ステージ21とが密封されている。
ステージ21のホルダ26側の端面の中心と、ホルダ部26のステージ21側の端面の中心とに亘って支柱23aが接続され、ステージ21の回転中心は回転モータ22の回転軸に連結した回転軸23b一致するように配置されている。
すなわち、図2に示すレジスト防液構造体10は、ホルダ部26を介して、本体部31と本体部31内に収容されたステージ部21とに回転モータ22からの動力が伝達される。つまり、回転モータ22から回転軸23bに動力が伝達されることにより、ホルダ部26を介して、ステージ部21は本体部31と共に回転する。これにより、ステージ21上に載置された被照射物Wが回転する。
【0016】
図1に示すように、動力部20の回転モータ22には、角度調整機構220が接続されている。角度調整機構220は、回転モータ22を把持する把持部221と、支柱223と、把持部221および支柱223とを連結する角度可変アーム222とで構成されている。把持部221の中心軸はステージ21の回転軸23aに一致する。
角度可変アーム222は、把持部221と支柱223との間の角度を自在に調整すると共に、両者をロックすることおよびロック解除することができる。つまり、被照射物Wの法線Hと露光光Lの光軸LAとの角度θは、角度可変アーム222によって把持部221と支柱223との間の角度を調整すれば、自在に調整することができる。
【0017】
ここで、図1に示す回転傾斜露光装置を用いた露光の手順を説明する。
被照射物Wの法線Hと露光光Lの光軸LAとの角度θは、液体槽40に溜められた液体42及びレジストRのそれぞれの屈折率に基く計算や実験などにより、あらかじめ求められ設定されている。
角度可変アーム222のロックを解除することにより、把持部221と支柱223との間の角度を調整し、被照射物Wの法線Hと露光光Lの光軸LAとの角度θを所定の角度にすると共に、角度可変アーム222をロックする。
図2に示すように、マスクMの遮光部SH上にレジストRを密着させた被照射物Wを、本体部31の底板32に設けた開口31aを塞ぐように、該開口31aの開口端に沿って置く。このとき、透明基板KのレジストRと反対側の面のみが本体部31外に露出するように留意する。
次に、液体槽40に空気の屈折率よりも高い屈折率を持つ液体42を満たす。レジストR及びステージ21を収容した防液部材30を液体槽40に沈め、被照射物Wを液面42Aよりも下方側に位置させる。このとき、被照射物Wの法線Hが光出射部100からの露光光Lの光軸LAに対して傾斜するように、防液部材30を液面42Aに対して傾斜させる。
【0018】
そして、回転モータ22を動作させ、回転軸23bを介して防液部材30と共にステージ21を回転させる。ステージ21の回転により被照射物Wが回転する。
この状態で、光出射部100から光を出射する。光出射部100から出射した光は、液体槽40の窓部41から液体槽40内に入射し、その内部の空気よりも大きな屈折率を持つ液体42を通過し、開口31aからマスクMを介してレジストRに入射する。このようにして、レジストRには、空気よりも大きな屈折率を持つ液体42を介して斜め方向から光が入射する。
【0019】
図4は上記の回転傾斜露光装置の実施例による露光プロセスを説明する図である。
図4(a)は、露光を開始した時点の状態を示す図である。マスクMの黒い部分はパターンが形成され光が透過されない部分である。レジストRのハッチングの部分は光が照射されて露光されている部分である。上記したように、マスクMを光が入射する側に向けておいた被照射物Wに対して、斜めに光が照射されるので、レジストRは傾斜して露光される。
図4(b)は被照射物Wが、同図(a)の状態から180°回転した状態を示す図である。レジストRの露光された領域が増え、露光されない領域は、マスクMのパターンを底辺として徐々に細くなる。
図4(c)は、被照射物Wを1回転させて露光を終え、現像した状態を示す図である。使用したレジストRがポジ型レジストであれば、同図に示すように、光が照射された部分のレジストRが現像液に溶けて、マスクMに形成したパターンの形状を底面とする斜面を持った立体パターンが形成される。マスクMに形成したパターンの形状が円であれば円錐形状になり、マスクMのパターンの形状が四角であれば四角錐形状になる。
使用したレジストがネガ型レジストの場合は、露光されない部分のレジストが現像液に溶ける。したがって、残ったレジストには、例えば円錐状や角錐状の空洞が形成される。
【0020】
形成されるレジストによる3次元構造の傾斜角θは、被照射物Wの法線Hと露光光Lの光軸LAとの角度を変えることによって変えることができる。
例えば、図5に示すように、レジストR(屈折率約1.6)を有する被照射物Wに対し、液体槽40に溜めた純水(屈折率約1.3)中で入射角89°の光を照射した場合は、レジストRへの入射角度は約53°になり、形成されるレジストの傾斜角は37°になる。
詳しくは、マスクMの材質がガラス(屈折率約1.8)の場合、被照射物Wに対して入射角89°の光が照射されると、水からマスクMへの入射角が46°、マスクMからレジストRへの入射角が約53°となる。即ち、水中での露光は、大気中での露光よりも緩やかな斜面を形成することができる。
【0021】
以上の本発明の第1の実施例の回転傾斜露光装置によれば、空気よりも屈折率の高い液体を介して斜め方向から被照射物Wに光を照射しているので、大気中で露光するよりもマスクMに塗布されたレジストRに入射する光の入射角度を大きくすることができるため、レジストの表面に緩やかな斜面を形成することができる。
しかも、第1の実施例の回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体は、レジストRを防液部材30の内部に収容することによって、レジストRが液体42に濡れることを防止しているので、レジストRが溶解、膨潤したり、また、レジストRがマスクMから剥離することが防止され、3次元構造の露光パターンを精度良く造形することができる。さらに、屈折率は高い反面、レジストRを溶かすような液体であっても使用することができるため、使用可能な液体の選択肢を広げることができる。
【0022】
次に上記第1の実施例の変形例について説明する。
図6は本発明の前記第1の実施例の変形例(1)を示す図であり、同図は、前記図2と同様、レジスト防液構造体の構成を示す部分拡大断面図である。
上記図2、図3に示した実施例では、本体部31に円柱形状を有するホルダ部26を取付け、本体部31とマスクMの透明基板Kとホルダ部26とによって密閉空間Sを形成し、当該密閉空間Sの内部にレジストRとそれを載置したステージ21とを密封し、ステージ21と防液部材30とを同時に回転させていた。
図6に示す変形例(1)では、上記ステージ21に取り付けられた支柱23aを省略し、ステージ21と被照射物Wを本体部31の底板32に取り付け、ホルダ部26を回転させることにより、本体部31とともに、被照射物Wを回転させるように構成したものである。図2と共通する箇所については図2と同一の符号が付されている。
図6に示すように、ステージ21と本体部31の開口31aとの間に、マスクMの透明基板Kが開口31aの縁部に接するように配置し、ねじ33により締め付けて固定されている。なお、本変形例において、ステージ21は被照射物Wを本体部31の底板32に固定するための部材として機能しているだけであり、固定用の基板であればよい。
【0023】
図7、図8は、本発明の前記第1の実施例の変形例(2)を示す図であり、図7は、前記図2と同様、レジスト防液構造体の構成を示す部分拡大断面図、図8は、図7に示すレジスト防液構造体の防液部材および動力部の構造を示す図である。
図7に示すように、防液部材30は、円筒形状を有し一端側の底板32に開口31aを有し、他端側が開放した本体部31と、本体部31の一端側の開口31aに取り付けられたマスクMの透明基板Kとで構成され、本体部31は、例えばガラスによって形成される。被照射物Wは、マスクMの表面にレジストRが塗布されているものであり、マスクMの透明基板Kが前記図2、図3で示したように、防液部材30の開口31aに密接して取り付けられる。
【0024】
図7に示すように、動力部20は、被照射物Wを載置するステージ21と、このステージ21を回転させる回転モータ22とを有する。回転モータ22の回転軸23はステージ21の中心に接続されている。
図8に示すように、回転モータ22の回転軸23は、回転軸23を中心として等間隔で放射状に広がるように4本の動力伝達棒24a〜24dを有している。動力伝達棒24a〜24dのそれぞれの先端は、フック部25a〜25dを有している。防液部材30の内壁面には、各々の動力伝達棒24a〜24dを係止するためのライン状の溝部34a〜34dが、防液部材の長手方向に沿って等間隔で形成されている。このライン状の溝部34a〜34dに対して、動力伝達棒24a〜24dにそれぞれ形成されたフック部25a〜25dがそれぞれ挿入されることによって、防液部材30と動力伝達棒24a〜24dとが係合される。
このようにすることで、回転モータ22の動力が動力伝達棒24a〜24dを介して防液部材30に伝わり、被照射物W、ステージ21及び防液部材30の全てを同時に回転させる。
【0025】
次に、本発明における前記第1の実施例の変形例(3)について説明する。図9は、変形例(3)の液体槽に浸されるレジスト防液構造体の部分拡大断面図である。
上記第1の実施例およびその変形例では、ステージ21と防液部材30の本体部31とを共に回転させるための機構を有していた。図9に示す変形例(3)では、ステージ21と被照射物Wを単独で回転させるための機構を有する。図2と共通する箇所については図2と同一の符号が付されている。
図9に示す変形例(3)は、円筒形状を有する本体部31と、本体部31の一端側に回転機構である円板状の回転ベアリング32aが取り付けられており、回転ベアリング32aに開口31aが形成され、レジストRを塗布してなる被照射物Wを構成するマスクMの透明基板Kが、上記開口31aに密接するように配置される。
ステージ21は、回転ベアリング32aとの間に被照射物Wを挟んでねじ32bにより締め付けて固定する。本体部31の一端側の内面には、円周方向に溝部が切られており、この溝部に回転ベアリング32aが遊嵌されることにより、回転ベアリング32aが回転可能となっている。上記ステージ21は、回転軸23により回転モータ22の回転軸に取り付けられる。
【0026】
図9に示す例では、円板状の回転ベアリング32aの周方向に等間隔で離間して4つのねじ32bが螺合されている。こうすることで、被照射物Wがステージ21と底板32との間に挟持される。
回転モータ22が回転すると、回転軸23が回転し、ステージ21が回転する。ステージ21が回転すると、ねじ32bにより接続されている回転ベアリング32aが回転する。このとき、本体部31は回転しない。つまり、防液部材30の本体部31は回転することなく、被照射物Wがステージ21の回転と共に回転する。
【0027】
次に、本発明における前記第1の実施例の変形例(4)について説明する。図10は、変形例(4)のレジスト防液構造体の防液部材30の構成と、防液部材30へのマスクとレジストの取り付けを説明する図である。
なお、前記した実施例および変形例では、マスクとマスクに塗布されたレジストからなる被照射物Wを一体として扱い、被照射物Wの透明基板K側を防液部材30の本体部31の開口31aに対向するように取り付けたが、本変形例では、マスクMを防液部材30の本体部31の開口31aに予め取り付けておき、基板に塗布されたレジストをマスクに密接させて設置するようにした例を示している。
【0028】
本変形例のレジスト防液構造体10は、図10(a)に示すように、円筒形状の本体部31を有し、その底板32に開口31aが設けられ、この開口31aの開口端(縁部)にマスクMを固定するための固定部位31cが設けられている。なお、底板32の開口31aの内周面には、図10に示すように、マスクMが取り付けられたとき該マスクMの面と底板32の内周面とが成す角が鈍角となるように傾斜面(泡逃がし用の面取り)が形成されている。すなわち、底板32のマスクMに接する面側の開口径より、底板32の液体に接する面側の開口径が大きくなるように傾斜面が形成されている。
このように、傾斜面を設けることにより、開口31aの周辺に液体の泡が溜まりにくくなり、入射光の入射角が変化するといった不具合が生じない。
マスクMは、上記固定部位31cに、透明基板K側が上記開口31aに対向し該開口31aを覆うように接着剤あるいはテープ39などで取り付けられる。これにより、本体部31と透明基板Kとの間が気密に封止される。なお、このマスクMにはこの段階ではレジストは塗布されていない。
【0029】
図10(b−1)は上記のように本体部31の開口31aにマスクMが取り付けられている状態を示している。
この状態で、同図(b−2)に示すように、レジストR側がマスクMの遮光部SHに密接するように、基板Tに塗布されたレジストRをマスクM上に設置する。
次いで(b−3)に示すように、本体部31の上部の開口部分(マスクMが取り付けられた側の反対側の開口部分)を覆うように、回転軸23を有するステージ21を載せ、同図(b−4)に示すように、ねじ51を締め付けて固定する。本体部31とステージ21の間にはパッキン52を介在させ、本体部31とステージ21の間から、本体部31内に液体が浸入しないように封止する。
ステージ21の本体部31側には板ばね21bが設けられており、ねじ51を締め付けることにより、板ばね21bにより、板50を介してレジストRが塗布された基板Tが押圧される。これにより、レジストRをマスクMに密接させることができ、さらにマスクMと本体部31の固定部位31cとを密接させ液体の浸入を防ぐことができる。
【0030】
上記のように構成された防液部材30は前記図1に示したレジスト防液構造体10と同様、被照射物の法線が光出射部からの露光光Lの光軸LAに対して傾斜するように、防液部材30を液面42Aに対して傾斜させて、液体槽40の液体中に浸し、回転軸23を回転モータ22の回転軸に連結する。
そして、回転モータ22を動作させ、回転軸23を介して防液部材30と共にステージ21を回転させる。ステージ21の回転により被照射物Wが回転する。
この状態で、光出射部100から光を出射する。光出射部100から出射した光は、液体槽40の窓部41から液体槽40内に入射し、その内部の空気よりも大きな屈折率を持つ液体42を通過し、開口31aからマスクMを介してレジストRに入射する。このようにして、レジストRには、空気よりも大きな屈折率を持つ液体42を介して斜め方向から光が入射する。
【0031】
次に本発明の第2の実施例について説明する。
図11は、本発明の第2の実施例の回転傾斜露光装置の構成を示す図であり、装置全体の断面図を示す。図11では図1と共通する構成について図1と同一符号が付されている。
第1の実施例では、防液部材の本体部として円筒形状のものを使用したのに対し、下記の第2の実施例の回転傾斜露光装置では、防液部材の本体部として可撓性部材から構成されたシート状(フィルム状)のものを使用する。
図11に示すように、本実施例の回転傾斜露光装置は、光出射部100、光出射部100からの光が通過する液体槽40、液体槽40に溜められた液体42に浸されたレジスト防液構造体10を備える。
レジスト防液構造体10は、防液部材30、防液部材30の内部に配置されたレジストRが接するステージ21などを有する動力部20から構成される。
動力部20の回転モータ22には、図1に示すものと共通の角度調整機構220が接続されている。
【0032】
光出射部100は、光源としてのショートアーク型のランプ1、楕円集光鏡2、第1の平面鏡3、インテグレータレンズ4、シャッタ5、第2の平面鏡6、コリメータレンズ7などを備える。
ランプ1は露光光(紫外線)を含む光を出射する。ランプ1から出射した露光光Lは、楕円集光鏡2により反射されて集光され、第1の平面鏡3を介してインテグレータレンズ4に入射する。インテグレータレンズ4から出射した光は、シャッタ5、第2の平面鏡6を介してコリメータレンズ7に入射し、コリメータレンズ7によって平行光となって光出射部100から出射する。
液体槽40は、底面(下面)に、露光光(紫外線)を透過する平面状の紫外線透過性ガラスなる窓部41が設けられる。光出射部100からの光は、この液体槽40の下面の窓部41から入射する。液体槽40には、空気の屈折率よりも大きい屈折率を持つ液体42が溜められる。
液体42は、例えば、純水(屈折率約1.3)、グリセリン(C(OH))(屈折率1.47)、液浸顕微鏡に用いられるアニソール(CHOC)(屈折率1.5)が使用される。液体42は、窓部41およびマスクMの、液体側のそれぞれの面に気泡が残留しないように液体槽40に溜められる。
【0033】
図12は、本実施例の液体槽に浸されたレジスト防液構造体10の構造を示す部分拡大断面図である。また、図13は、被照射物の構造、及び被照射物と防液部材の本体部との連結方法の詳細を示す拡大断面図である。
本実施例の装置では、防液部材30が、防水フィルム等のシート状の可撓性部材からなる本体部36と、本体部36に設けられた開口36aを塞ぐマスクMの透明基板Kから構成される。
本体部36は、液体槽に収納された液体に腐食されず、また、該液体を通さない可撓性のシート状の高分子材料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、テフロン(登録商標)(デュポン社)、アモルファスフッ素樹脂(登録商標)(旭硝子株式会社、製品名:CYTOP)等からなり、開口36aを上記透明基板Kで塞ぎ、上側(透明基板Kを取り付けた側の反対側の端部)を封止した袋状に形成される。また、透明基板Kは、紫外線を透過する板状のガラス等によって構成される。
【0034】
図12に示すように、本体部36の内部には、被照射物WにおけるレジストR及び該レジストRに接するステージ21が収容されており、ステージ21に接続された回転軸23が本体部36の開口36aと反対側の端部36bから外方に伸び出している。
本体部36の端部36bは、封止部材37によって本体部36の外方へ伸び出した回転軸23に固定される。このようにして、防液部材30には、開口36aを塞ぐ透明基板Kと本体部36とにより密閉空間Sが形成され、レジストR及びステージ21が密封される。
防液部材30は、図11に示すように液体槽40に沈められ、被照射物Wが液面42Aよりも下方側に配置される。このとき、被照射物Wの法線Hが光出射部100からの露光光Lの光軸LAに対して傾斜するように防液部材30を傾斜させる。
回転モータ22の回転軸23は、一端がステージ21の中心に固定され、他端が本体部36から外方に伸び出して回転モータ22に固定される。回転モータ22が回転すると、ステージ21が袋状の本体部36と共に回転する。ステージ21が回転すると、ステージ21上に載置された被照射物Wが回転する。
【0035】
図13(a)に示すようにマスクMの透明基板Kは板形状を有し、同図(b)に示すように、マスクMの遮光部SHの上にレジストRが塗布され、被照射物Wが形成される。
上記マスクの透明基板Kは、同図(c)に示すように、本体部36に設けられた四角形状の開口36aを塞ぐように、該開口36aの開口端(縁部)に沿って配置される。
防水フィルム等で構成されるシート状の本体部36のマスクMが配置される側の面には、同図(c)(d)に示すように、開口36aの周囲を覆うように、上記開口36aとほぼ同じ大きさの開口を有する枠状のゴム等の樹脂製の弾性材Dが配置される。
この弾性材Dの内周面には、図13(d)(e)に示すように、マスクM面と弾性材Dの内周面とが成す角が鈍角となるような傾斜面(泡逃がし用面取り)が形成されている。すなわち、弾性材Dの内周面には、弾性材DのマスクMに接する面側の開口径より、底板32に接する面側の開口径が大きくなるように傾斜面が形成されている。
このように、弾性材Dに傾斜面を設けることにより、弾性材Dの周辺に液体の泡が溜まりにくくなり、入射光の入射角が変化するといった不具合が生じない。
【0036】
また、シート状の本体部36のマスクMが配置される面とは反対側の面には、同図(d)に示すように、開口36aの周囲を覆うように、上記開口36aとほぼ同じ大きさの開口を有する四角い枠状のねじ止め用の金属板38が配置される。
被照射物Wは、ステージ21と本体部36との間に挟まれるようにして配置され、金属板38、本体部36、ステージ21にそれぞれ設けられたねじ穴を貫通するよう挿入されたねじ33によって、本体部36とステージ21にねじ止めされて固定される。
上記本体部36と弾性体Dの間、上記本体部36と金属板38の間は例えば接着剤等で固定される。また、透明基板Kと上記弾性体Dの間は固定せずに透明基板Kを本体部36および金属板38に押し付けることにより、本体部36と透明基板Kとの間が気密に封止される。これにより本体部36内の密閉空間S(図12)に液体が侵入することが防止される。被照射物Wのうち本体部36外に露出するのは、透明基板KのレジストRと反対側の面のみである。このように被照射物Wを配置することで、レジストRが液体に濡れることがない。
【0037】
ここで、図11に示す回転傾斜露光装置を用いた露光の手順を説明する。
被照射物Wの法線Hと露光光Lの光軸LAとの角度θは、液体槽40に溜められた液体42及びレジストRのそれぞれの屈折率に基く計算や実験などにより、あらかじめ求められ設定されている。
角度可変アーム222のロックを解除することにより、把持部221と支柱223との間の角度を調整し、被照射物Wの法線Hと露光光Lの光軸LAとの角度θを所定の角度にすると共に、角度可変アーム222をロックする。
図13に示すように、マスクMの遮光部SH上にレジストRを密着させた被照射物Wを用意し、本体部36、金属板38及びステージ21の間に被照射物Wを挟むようにして、被照射物Wを固定する。このとき、マスクMの透明基板KのレジストRと反対側の面のみが本体部36外に露出するように留意する。
次に、液体槽40に空気の屈折率よりも高い屈折率を持つ液体42を満たす。レジストR及びステージ21を収容した防液部材30を液体槽40に沈め、被照射物Wを液面42Aよりも下方側に位置させる。このとき、被照射物Wの法線Hが光出射部100からの露光光Lの光軸LAに対して傾斜するように、防液部材30を液面42Aに対して傾斜させる。
【0038】
そして、回転モータ22を動作させ、回転軸23を介して防液部材30と共にステージ21を回転させる。ステージ21の回転により被照射物W回転する。
この状態で、光出射部100から光を出射する。光出射部100から出射した光は、液体槽40の窓部41から液体槽40内に入射し、その内部の空気よりも大きな屈折率を持つ液体42を通過し、開口36aからマスクMを介してレジストRに入射する。このようにして、レジストRには、空気よりも大きな屈折率を持つ液体42を介して斜め方向から光が入射する。
【0039】
次に、本発明における前記第2の実施例の変形例について説明する。図14は、本実施例の変形例の防液部材30の構成と、防液部材へのマスクとレジストの取り付けを説明する図、図15は装置へのセッティングを説明する図である。
なお、上記第2の実施例では、マスクとマスクに塗布されたレジストからなる被照射物Wを一体として扱い、被照射物Wの透明基板K側を防液部材30の本体部31の開口36aに対向するように取り付けたが、本変形例では、マスクMを防液部材30の本体部36の開口36aに予め取り付けておき、基板に塗布されたレジストをマスクに密接させて設置するようにした例を示している。
【0040】
以下、本変形例のレジスト防液構造体の防液部材の組み立てについて説明する。
本変形例の防液部材30は、図14(a)に示すように、防水フィルム等の可撓性の部材で構成されるシート状の本体部36からなり、本体部36にはマスクMの縦横寸法より小さい開口36aが設けられる。マスクMはその開口36aを塞ぐように配置され、同図(a−1)(a−2)に示すようにテープ39aあるいは接着剤39bで取り付けられている。
レジストRは同図(b)に示すように基板Tに塗布され、基板に塗布されたレジストは、同図(c)に示すように、レジストR側がマスクMの遮光部SHに密接するように、上記マスクM上に設置される。
図14(c)に示すように、マスクMとレジストRおよび基板Tが重ねられた被照射物Wは、図15(a)に示すようにシート状の本体部36で覆われ、図15(b)に示すように、ステージ21にセットされる。
すなわち、複数(この例では4個)の保持部材53の固定部位53a上に上記本体部36で覆われた被照射物Wを載せ、板50と、回転軸23を有するステージ21を上記被照射物Wの上に被せる。そして、同図(c)に示すように、ねじ51で締め付けて保持部材53の固定部位53aとステージ21で被照射物Wを挟持して固定する。
ステージ21の保持部材53側には板ばね21bが設けられており、ねじ51を締め付けることにより、板ばね21bにより、板50を介してシート状の本体部36と被照射物Wが押圧される。これにより、レジストRをマスクMに密接させることができるとともに、被照射物Wに本体部36を密接させることができ、本体部内に液体の浸入を防ぐことができる。
【0041】
上記のように構成された防液部材30は前記図11に示したレジスト防液構造体10と同様、被照射物の法線Hが光出射部からの露光光Lの光軸LAに対して傾斜するように、防液部材30を液面42Aに対して傾斜させて、液体槽40の液体中に浸し、回転軸23を回転モータ22の回転軸に連結する。
そして、回転モータ22を動作させ、回転軸23を介して防液部材30と共にステージ21を回転させる。ステージ21の回転により被照射物Wが回転する。
この状態で、光出射部100から光を出射する。光出射部100から出射した光は、液体槽40の窓部41から液体槽40内に入射し、その内部の空気よりも大きな屈折率を持つ液体42を通過し、開口36aからマスクMを介してレジストRに入射する。このようにして、レジストRには、空気よりも大きな屈折率を持つ液体42を介して斜め方向から光が入射する。
【0042】
以上の本発明の第2の実施例の回転傾斜露光装置によれば、第1の実施例及びその変形例の回転傾斜露光装置と同様の効果が得られるほか、防液部材30が可撓性のシート状部材で形成されているので、装置構成を簡便にすることができる。
また、上記第1、第2の実施例に示したレジスト防液構造体10は、液体槽40等とは独立した構造体であり、液体外で被照射物等の取り付け等を行い液体中に浸して使用することができ、被照射物Wの取り付け、取り外し等の取り扱いが容易である。また、レジスト防液構造体10を浸すことができる容器であれば、任意の形状の液体槽を用いることが可能である。
また、レジスト防液構造体10は、角度可変アーム222を有する角度調整機構220に取り付けられているので、レジスト防液構造体10の液体槽40中における姿勢(角度)を任意に設定することができる。このため、液体槽に入射する露光光の方向に合わせて、レジスト防液構造体の姿勢(角度)を調整することができる。
【0043】
上記した本発明の第1、第2の実施例およびそれらの変形例の回転傾斜露光装置は、液体槽40の底面に設けた光入射窓41から露光光Lを入射するものである。
しかし、本発明では、露光光Lの入射方法は、上記した第1、第2の実施例およびそれらの変形例に示す方法に限られない。例えば、第1の実施例において図16に示すように、液体槽40の側面に窓部41を設け、側面の窓部41から露光光Lを入射するようにしても良い。なお、図16において、前記図1と共通する構成について同一符号が付されているが、図1に示した角度調整機構は省略されている。
同様に、前記図11に示した第2の実施例において、液体槽の側面から露光光を入射させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ショートアーク型のランプ
2 楕円集光鏡
3 1の平面鏡3
4 インテグレータレンズ
5 シャッタ
6 第2の平面鏡
7 コリメータレンズ
10 レジスト防液構造体
20 動力部
21 ステージ
21a ねじ穴
21b 板ばね
22 回転モータ
220 角度調整機構
221 把持部
222 角度可変アーム
223 支柱
23,23b 回転軸
23a 支柱
24、24a〜24d 力伝達棒
25a〜25d フック部
26 ホルダ部
30 防液部材
31 本体部
31a 開口
31b ねじ穴
31c 固定部位
32 底板
32a 回転ベアリング
32b ねじ
33 ねじ
34,34a〜34d 溝部
36 本体部
36a 開口
37 封止部材
38 金属板
39 接着剤あるいはテープ
40 液体槽
41 光入射窓
42 液体
50 板
51 ねじ
52 パッキン
53 保持部材
53a 固定部位
D 弾性材
K 透明基板
M マスク
R レジスト
SH 遮光部
T 基板
W 被照射物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に遮光部のパターンが形成されてなるマスク及び該マスクに密着したレジストから構成される被照射物を、露光光の入射方向に対して傾斜して配置し、該被照射物をマスク面に対して垂直方向を軸として回転させながら、該被照射物のマスク側から露光光を照射して露光する回転傾斜露光装置に適用され、露光光を透過させる液体中に浸されて使用される回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体であって、
前記レジスト防液構造体は、内部に前記レジストが収納される防液部材と、上記被照射物を回転させる回転機構とを備え、
前記防液部材は前記露光光が入射する開口を有し、該開口に前記マスクの透明基板が取り付けられ、
前記レジストが液体に濡れないように前記透明基板により前記開口が密封される
ことを特徴とする回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体。
【請求項2】
前記防液部材は、前記開口を有する筒状の本体部から構成される
ことを特徴とする請求項1記載の回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体。
【請求項3】
前記防液部材は、前記開口を有する可撓性部材で形成された本体部から構成され、該開口が設けられていない側が、前記防液部材内に液体が浸入しないように形成された
ことを特徴とする請求項1記載の回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体。
【請求項4】
露光光を出射する光源と、
前記露光光を透過する液体が溜められた、前記露光光がその壁面もしくは底面を通じて入射する液体槽と、
前記液体槽の液体中に浸され、前記露光光が前記マスク面に斜め方向から入射するように配置された前記請求項1,2乃至請求項3に記載の回転傾斜露光装置用レジスト防液構造体を備えた
ことを特徴とする回転傾斜露光装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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