説明

回転型熱交換器の給排部構造

【課題】解決すべき問題点は、摩耗と高温の条件下で被加熱流体側からの圧力漏れを抑えることであり、高温水蒸気を用いた環境負荷の少ない廃棄物処理システムを実現することを目的とする。
【解決手段】
蓄熱材30よりなる回転蓄熱部3に形成した流体通路31の開口部に臨んで加熱流体および被加熱流体を案内するそれぞれの案内部と、両案内部の間で前記回転蓄熱部3の流体通路31の開口部に接して両流体間を画成するシール部材35とからなる回転型熱交換器1の給排部構造において、前記シール部材35には、前記流体通路31の開口部に追従支持する支持機構38を設け、この支持機構38を保持する外殻材7を両案内部と別体に架設し、さらに、前記シール部材35と両案内部との間に、前記回転蓄熱部3の流体通路31の開口部に近接して圧力勾配を形成する閉塞蓋45を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を処理する際に発生する高温ガスにより水蒸気を加熱して高温水蒸気を生成するために、熱交換用の流体通路を形成した蓄熱材を回転可能に構成して熱交換する回転型熱交換器の流体の給排部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物の乾留処理によって生じた乾留残滓や乾留ガスを燃料と空気とを混合した燃焼ガスによって改質処理して排出残滓等を縮減するとともに、発生した不活性ガスを乾留炉などに導入して熱をリサイクルする廃棄物処理システムが知られている。さらに、乾留残滓等の改質にあまり寄与しない空気中の窒素分を除くために、高温の水蒸気を用いて改質処理を行なうことにより排煙の量を抑えた環境負荷のより少ない処理システムが本願出願人により提案されている。
【0003】
このシステムでは、熱をリサイクルしつつ安定した温度で高温水蒸気を得るために回転型熱交換器を用いるが、それぞれの流体が高温であることや、回転蓄熱部との摺動部で両流体をシールする必要があることから、摩耗と高温の条件下で十分に機密性を保ち、圧力漏れを防げるシール構造が必要となる。
【0004】
従来の回転型熱交換器として例えば特許文献1に記載されたものがある。この回転型熱交換器のシール構造は、円形のリング部と、その中心から径方向に伸びたクロスバー部とにより構成されている。しかし、このような枠状の部材からなるシール構造では高温による熱応力や強度などの問題から、圧力漏れや耐磨耗性について十分な性能を確保できない。
【特許文献1】特開昭52−130046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決すべき問題点は、摩耗と高温の条件下で被加熱流体側からの圧力漏れを抑えることであり、高温水蒸気を用いた環境負荷の少ない廃棄物処理システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1記載の給排部は、蓄熱材よりなる回転蓄熱部二形成した流体通路の開口部に臨んで加熱流体および被加熱流体を案内するそれぞれの案内部と、両案内部の間で前記回転蓄熱部の流体通路の開口部に接して両流体間を画成するシール部材とからなる回転型熱交換器の給排部構造において、前記シール部材には、前記流体通路開口部に追従支持する支持機構を設け、この支持機構を保持する外殻材を両案内部と別体に架設したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の給排部は、前記シール部材と両案内部との間に、前記回転蓄熱部の流体通路の開口部に近接して圧力勾配を形成する閉塞蓋を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の給排部は、流体案内部とは別体の外殻材に設置した支持機構によってシール部材を弾性支持したことにより、支持機構による追従性によって回転蓄熱部の膨張収縮にシール部材が従動して、常に所定の圧力で流体通路開口面を押圧して圧力漏れを抑えつつ流体が給排される。また、シール部材が案内部とは別体に支持されていることで案内部が独立してメンテナンスが容易となり、回転蓄熱部との摺動接触による摩耗と高温の条件下で良好なシール状態を保つことが可能となる。よって高温化の高度の気密性により高温水蒸気と乾留ガスとの反応熱を熱源としてリサイクルするとともに排煙の外部排出を抑えた環境対応型の廃棄物処理システムを実現することができる。
【0009】
請求項2記載の給排部は、シール部材と案内部との間に流体通路開口面に近接して閉塞蓋を配置したことにより、シール部材に到達する両流体の圧力差を小さく抑えながら、回転負荷をかけることなく高度の気密性を確保して圧力漏れをさらに低減できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の詳細について述べる。図1は、本発明に係る熱交換器の外観側面図である。
熱交換器1は、円筒状ケース内に縦軸型の回転蓄熱部3を配置し、上部外殻材8と下部外殻材9とを流体の給排部18とし、中継ぎ部25に回転駆動部を構成し、これら上部外殻材8と下部外殻材9と中継ぎ部25とによって内部を外気から密閉する。
【0011】
上部外殻材8には水蒸気出口13とガス入口15が設けられ、下部外殻材9には水蒸気入口11(後述)とガス出口17が設けられている。熱交換器1の中心には支軸2が設けられている。この支軸2には、最上部で冷却水取入口23を開口し、この冷却水取入口23よりも下方で冷却水排出口24を開口する。
【0012】
また、熱交換器1を囲むように土台4に枠体5が設置され、この枠体5にはモータ27やスプロケット34などが設けられている。モータ27を駆動すると、スプロケット34から中継ぎ部25に設けられた動力伝達部26を介して熱交換器1の内部に動力が伝達されて内部に設置された回転蓄熱部3が回転する。
【0013】
図2は、熱交換器の垂直断面の端面図で、図1におけるA−A線断面である。熱交換器1は、土台4に回転可能に立設した支軸2に蓄熱材30を取付けて回転蓄熱部3を形成し、その上下にシール部材35を設けて支持機構38によって弾性支持して構成される。
【0014】
支軸2は内管20と外管21により2重管に構成する。内管20には回転蓄熱部3よりも上位で冷却水取入口23を開口し、この冷却水取入口23から冷却水を導入する。外管21には、周を等分する位置に平形の箱状で内部が空洞のジャケット22を放射状に設け、ジャケット22の内部と外管21とを連通接続するとともにジャケット22の頂辺部を外周側から支軸2側に向かって高く傾斜させる。本実施例では縦に3段のジャケット22を外管21に設けている。この内管20と外管21とを最下部で連通接続する。
【0015】
図3は蓄熱材30の斜視図である。この蓄熱材30は、耐熱性、耐磨耗性および高い熱伝導性を備えた、例えば炭珪質(SiC)などの炭化珪素系セラミクスで構成する。形状は扇柱状で、軸線に沿って上下に貫通する流体通路31を形成し、側面部には嵌め溝42を形成する。この嵌め溝42を外管21のジャケット22に嵌め込んで蓄熱材30を保持することにより回転蓄熱部3を形成する。
図4はジャケット22に蓄熱材30を取付け、周囲に締め部材32を装着して円柱状に形成した回転蓄熱部3の水平断面図である。本実施例では、外管21の周を六等分する位置にジャケット22を設けている。
【0016】
支持機構38は、ホルダ36、端部に付勢部を形成した支持棒39、コイルバネ40により形成される。ホルダ36は上部外殻材8または土台4に固設して、このホルダ36に支持棒39を挿通して先端はシール部材35に挿入固定し、他端側には付勢部37を設けて、ホルダ36と付勢部37との間にコイルバネ40を取付けてシール部材35を弾性支持する。この支持機構38によって、シール部材35の回転蓄熱部3への面圧を調節する。
【0017】
上部外殻材8と下部外殻材9の内周には溝が形成してあり、シール部材35はこの溝にはめ込んで 加熱流体部と被加熱流体部とを互いに隔離する。上部外殻材8と下部外殻材9の内壁の位置は図2において破線で示される。また、シール部材35と天井部および底部との間には隙間41を設け、温度による回転蓄熱部3の膨張収縮に合わせてシール部材35を可動に形成し、回転蓄熱部3に接触して密閉性を保った状態を維持させる。回転蓄熱部3とシール部材35との摺動部には、カーボンなどに含浸して耐熱性と耐久性を備えたパッキンを取付ける。
【0018】
第5図は、熱交換器1の上部外殻材8の位置での水平断面図で、図2におけるB−B断面である。熱交換器1のほぼ中心を支軸2が貫いている。上部外殻材8は耐熱材6と金属製の外殻材7とからなり、内部は耐熱性を備えた仕切部材48によって高温水蒸気案内部12、高温ガス案内部14および仕切室46に画成され、仕切室46にはシール部材35が設けられている。シール部材35は支持機構38の支持棒39が挿入固定され、弾性支持されている。高温水蒸気案内部12を水蒸気出口13に連通し、高温ガス案内部14にはガス入口15を設ける。なお、下部外殻材9に設けられている水蒸気入口11を破線で示してある。
【0019】
図6は給排部18の斜視図である。回転蓄熱部3の流体通路31の開口面を閉塞蓋45で覆うとともに案内用の仕切部材48を設けて仕切室46とそれぞれの案内部とを形成し、この仕切室46にシール部材35を配置する。閉塞蓋45には流体通路31と各流体の案内部とをつなぐ窓50を形成し、仕切部材48によって画成した流体の各案内部(低温水蒸気案内部10、高温水蒸気案内部12、高温ガス案内部14、低温ガス案内部16)と流体通路31とを接続する。また、仕切部材48には各流体の供給口または排出口を設ける。
【0020】
図7は熱交換器の垂直断面図で、図5におけるC−C断面である。仕切部材48によって加熱流体部と被加熱流体部と仕切室46とに画成し、仕切室46にシール部材35を設ける。また、シール部材35と仕切部材48との間に流体通路31の開口面に近接して閉塞蓋45を設ける。閉塞蓋45は窓50を有しており、この窓50によって回転蓄熱部3の流体通路31と案内部とが連通接続される。
【0021】
流体通路31の両開口端それぞれの両側各案内部は、図示右半側に低温水蒸気案内部10、高温水蒸気案内部12、図示左半側に高温ガス案内部14、低温ガス案内部16とし、各室にそれぞれ水蒸気入口11、水蒸気出口13、ガス入口15、ガス出口17を設けて水蒸気またはガスを供給または排出する。本実施例においては図7に示したように、左上が高温ガス案内部14、左下が低温ガス案内部16で、右上が高温水蒸気案内部12、右下が低温水蒸気案内部10である。
【0022】
次に、上記構成の交換器の動作について説明する。ガス入口15から供給される高温ガスは回転蓄熱部3の流体通路31に流入して蓄熱材30を熱しながら、低温ガス案内部16へ通り抜け、ガス出口17から排出される。回転蓄熱部3は支軸2を軸として、枠体5に設けられたモータ27によって常に回転しており、加熱流体部であるガス案内部側で熱せられた回転蓄熱部3の一部はやがて被加熱流体部である水蒸気案内部側に移る。水蒸気は水蒸気入口11から供給され、回転蓄熱部3の流体通路31に流入して熱せられながら上昇し、高温水蒸気となって水蒸気出口13から排出される。
【0023】
各流体案内部とは別体の外殻材に設置した支持機構38によってシール部材35を弾性支持したことにより、熱による回転蓄熱部3の膨張収縮にシール部材が従動して常に流体通路開口面を押圧することで圧力漏れを抑えることができるとともに、シール部材35が流体案内部とは別体に外殻材によって支持されていることで摩耗と高温の条件下における高度のメンテナンスを施すことができる。
【0024】
また、シール部材35と案内部との間に閉塞蓋45を設けて回転蓄熱部3の流体通路開口面に近接して配置したことにより、圧力勾配を形成してシール部材35に到達する流体の圧力差を小さく抑えることができ、回転負荷をかけることなく高い気密性を確保して圧力漏れをさらに低減することができる。
【0025】
供給される加熱流体は1000度以上の高温であるが、回転蓄熱部3を支持する支軸2は内管20、外管21およびジャケット22を流れる冷却水によって冷やされ、熱による脆化を抑えることができ、この高温ガスにより炭珪質などの耐熱性材料で形成された回転蓄熱部3を熱し、その熱で水蒸気を加熱して800度以上の高温水蒸気を得ることができる。さらに、回転蓄熱部3が回転型であることにより水蒸気は連続的に加熱され、得られる高温水蒸気の最高温度と最低温度の差を少なく抑えることができ、温度の安定した高温水蒸気を得ることができる。
【0026】
内管20に導入した冷却水は、矢印で示したように、内管20を落下して最下部から外管21に流入し、ジャケット22の内部を循環しながら外管21を上昇して蓄熱材30によって熱せられた外管21とジャケット22を冷やし、冷却水取入口23よりも下位に開口した冷却水排出口24から排出される。冷却水排出口24は冷却水取入口23よりも低い位置に設けてあるため、この落差によりポンプなどの特別な装置を必要とせずに所定の流速が確保される。また、ジャケット22の上面は外管21側に向かって上方に傾斜しており、熱せられた冷却水や気泡がジャケット22内に溜まらずに排出されるため冷却効率がよい。
【0027】
回転蓄熱部3は複数の蓄熱材30により構成されており、加熱時に受ける熱歪は各蓄熱材30ごととなって範囲が限定的であるため破損しにくくなるし、破損した場合であっても破損した蓄熱材30のみ交換すればよく、交換のコストを低く抑えることができる。また、回転蓄熱部3の維持管理はそれぞれ蓄熱材30について行なうため、メンテナンス性や取扱性に優れる。さらに、本実施例では支軸2を6等分する位置にジャケット22を縦に3段設けているが、ジャケット22は4等分や8等分する位置にあってもよく、また縦に1段でも2段でも、また4段以上設けてもよく、必要とされる性能に応じて柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る熱交換器の側面図。
【図2】熱交換器の垂直断面の端面図で図1のA−A線断面。
【図3】蓄熱材の斜視図。
【図4】熱交換部の水平断面図。
【図5】上部外殻部の水平断面図で図1および図2のB−B線断面。
【図6】蓋体の斜視図。
【図7】熱交換器の垂直断面図で図5のC−C線断面。
【符号の説明】
【0029】
1 熱交換器
2 支軸
3 回転蓄熱部
10 低温水蒸気案内部
12 高温水蒸気案内部
14 高温ガス案内部
16 低温ガス案内部
18 給排部
30 蓄熱材
31 流体通路
35 シール部材
38 支持機構
45 閉塞蓋
46 仕切室
48 仕切部材
50 窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱材よりなる回転蓄熱部に形成した流体通路の開口部に臨んで加熱流体および被加熱流体を案内するそれぞれの案内部と、両案内部の間で前記回転蓄熱部の流体通路の開口部に接して両流体間を画成するシール部材とからなる回転型熱交換器の給排部構造において、
前記シール部材には、前記流体通路の開口部に追従支持する支持機構を設け、この支持機構を保持する外殻材を両案内部と別体に架設したことを特徴とする回転型熱交換器の給排部構造。
【請求項2】
前記シール部材と両案内部との間に、前記回転蓄熱部の流体通路の開口部に近接して圧力勾配を形成する閉塞蓋を設けたことを特徴とする請求項1記載の回転型熱交換器の給排部構造。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−8494(P2008−8494A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294674(P2004−294674)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(391045716)
【Fターム(参考)】