回転式入力装置、及び、入力装置における触感付与方法
【課題】装置の小型化を図りやすく、操作者にリアルな操作触感を付与することができる回転式入力装置を提供する。
【解決手段】回転式入力装置1は、励磁コイル17と、励磁コイル17への通電により磁化される第1のヨーク19と、第1のヨーク19に対して回転可能に支持されると共に、第1のヨーク19の磁化状態によって回転軸10の軸方向の位置が変化する第2のヨーク12と、操作者による第2のヨーク12に対する回転操作を検知する回転検知手段24と、回転検知手段24から出力される信号に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与すべく、励磁コイル17への通電を制御する制御手段3と、を備える。
【解決手段】回転式入力装置1は、励磁コイル17と、励磁コイル17への通電により磁化される第1のヨーク19と、第1のヨーク19に対して回転可能に支持されると共に、第1のヨーク19の磁化状態によって回転軸10の軸方向の位置が変化する第2のヨーク12と、操作者による第2のヨーク12に対する回転操作を検知する回転検知手段24と、回転検知手段24から出力される信号に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与すべく、励磁コイル17への通電を制御する制御手段3と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式入力装置、及び、入力装置における触感(操作触感)付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、携帯端末機、AV機器、AV機器等のリモートコントロール装置、パーソナルコンピュータといった電子機器の中には、ユーザが回転操作体を操作することによって電子機器への情報の入力を可能とする回転式入力装置を採用するものがある。具体的には、例えば、回転操作体の回転に連動して電子機器の表示画面に表示される選択項目が順に切替選択できるように、また、目的の選択項目を選択した後に回転操作体を押圧操作することで選択項目の確定を行えるように、回転式入力装置は電子機器に組み込まれる。
【0003】
このような回転式入力装置においては、回転操作体の回転により項目の切替えが行われたことや押圧操作によって選択項目が確定されたことが手や指の感覚として操作者に把握されるように、回転操作や押圧操作に対する触感が付与されることが望まれる。従来の回転式入力装置においては、例えば、バネ等を用いて構成される機械的な機構を実装して回転操作体を回転させた場合の触感を操作者に付与するようになっている。また、従来の回転式入力装置においては、例えば、回転操作体の下にボタンを配置して、回転操作体を押圧した場合の触感が操作者に付与されるようになっている。
【0004】
しかしながら、このような従来の回転式入力装置では、回転式入力装置の内部に、バネ等を用いた機械的な機構やボタンを組み込む必要があるために、回転式入力装置が大型化しやすいといった問題がある。この点、特許文献1や特許文献2には、バネ等を用いた機械的な機構を組み込むことなく、回転操作体を回転させた場合の触感を操作者に付与する回転式入力装置が提案されている。
【0005】
なお、特許文献1に開示される力覚付与型入力装置(回転式入力装置)は、操作ノブ(回転操作体)を回転させて、操作ノブの回転軸に取り付けられたセンサにより回転角度を検出するようになっている。そして、この回転角度の位置に対応する力覚を求め、操作ノブに取り付けられたアクチュエータにこの力覚を付与する指示を送り、アクチュエータが操作ノブに力覚を付与するようになっている。これにより、操作者は回転操作に伴う所定の操作触感を得られる。
【0006】
また、特許文献2に開示される回転型スイッチ(回転式入力装置)は、回転操作部(回転操作体)と、回転時にクリック感を発生するクリック感発生手段と、備える。そして、回転時にクリック感を発生するクリック感発生手段は、回転操作部と一体回転し、透磁率の強弱を所定角度ごとに交互に設けた回転部材と、回転部材に面して配置され、磁界を発生するコイルと、を有するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−251845号公報
【特許文献2】特開2005−174807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や2に開示される回転式入力装置においては、回転操作体を押圧した場合の触感を操作者に付与する構成は開示されない。このため、特許文献1や2に開示される回転式入力装置において回転操作体を押圧した場合の触感を操作者に付与しようとすると、回転式入力装置の内部にボタンを組み込む必要が生じる。したがって、特許文献1や2の回転式入力装置においては、装置が大型化しやすいといった問題が依然として残る。
【0009】
以上の点を鑑みて、本発明の目的は、装置の小型化を図りやすく、操作者にリアルな操作触感を付与することができる回転式入力装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、入力装置の小型化が可能であって、操作者にリアルな操作触感を与えられる触感付与方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の回転式入力装置は、励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、前記第1のヨークに対して回転可能に支持されると共に、前記第1のヨークの磁化状態によって回転軸の軸方向の位置が変化する第2のヨークと、操作者による前記第2のヨークに対する回転操作を検知する回転検知手段と、前記回転検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本構成によれば、回転式入力装置の回転操作に対する触感を、励磁コイルへの通電を制御することによって与えられるようになっている。具体的には、本構成によれば、励磁コイルへの通電を制御して第1のヨークの磁化状態を制御し、第2のヨークを第1のヨークに吸着させることによって、操作者に対して回転操作中にブレーキ感(回転操作に対する触感)を与えることが可能である。また、回転検知手段から出力される信号に基づいて回転操作に対する触感を付与するようになっているために、必要なタイミングで触感を提供できる。すなわち、本構成によれば、バネ等を用いて構成される機械的な機構を実装することなく、回転操作に対するリアルな操作触感を操作者に与えることが可能であり、回転式入力装置の小型化を図りやすい。なお、回転操作に対して触感を付与するために設けられる構成が、後述のように押圧操作に対する操作触感を与える構成にも兼用できるために、本構成の回転式入力装置は小型化対応に優れる。
【0012】
上記構成の回転式入力装置において、操作者による、前記第2のヨークに対する前記軸方向に略平行な方向への押圧操作を検知する押圧検知手段を更に備え、前記制御手段は、前記押圧検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に押圧した触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御することとしてもよい。
【0013】
本構成によれば、回転式入力装置の押圧操作に対する触感を、励磁コイルへの通電を制御することによって与えられるようになっている。具体的には、本構成によれば、例えば、励磁コイルへの通電を制御して第1のヨークの磁化状態を制御し、第2のヨークを第1のヨークに対して所定の期間のみ吸着させるという動作を行うことによって、操作者に対してボタンを押した時と同様の触感を与えることが可能である。また、押圧検知手段を用いて押圧状態を判断して押圧した触感を付与するようになっているために、リアルな操作触感を提供できる。
【0014】
上記構成の回転式入力装置において、操作者に押圧した触感を付与する場合、前記第1のヨークに対する前記第2のヨークの吸着及び吸着解除が所定の期間の間に少なくとも1回行われるように、前記制御手段は前記励磁コイルへの通電を制御することとしてもよい。なお、所定の期間の間に、第2のヨークが複数回、第1のヨークにくっついたり離れたりする場合、ボタンを押した場合の操作触感とはやや異なる操作触感となる場合もあるが、このような構成でも操作者に対してクリック感を付与可能であり、このような構成も本発明は含む趣旨である。また、本明細書において、第1のヨークに対する第2のヨークの吸着は、第1のヨークと第2のヨークとの間に他の部材が介在して吸着される場合も含む趣旨であることもここで断っておく。
【0015】
上記構成の回転式入力装置において、前記所定の期間は、1ms以上、10ms以下であるのが好ましい。これにより、ボタンを押した場合と同様のよりリアルな操作触感を得ることが可能である。
【0016】
上記構成の回転式入力装置において、前記制御手段は、前記押圧検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に押圧を解除した触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御することとしてもよい。そして、この構成を採用するにあたって、操作者に押圧した触感を付与する場合と、操作者に押圧を解除した触感を付与する場合とで、前記制御部は、前記励磁コイルへの通電について異なる制御を行うこととしてもよい。このように構成することで、ボタン操作により近い操作触感を与えることが可能となる。
【0017】
上記構成の回転式入力装置において、前記第2のヨークは、前記軸方向に弾性変形する弾性部材を介して前記第1のヨークに支持されていることとしてもよい。このように構成すれば、装置構成を簡易なものとできる。
【0018】
上記構成の回転式入力装置において、前記回転検知手段は、回転検出できる如何なる構成を用いてもよく、たとえば、円環状のコードホイールとフォトインタラプタとから構成される光学式エンコーダ、機械式(接点式)、磁気式、電極の静電容量変化によって位置検出を行う静電式の回転検知手段等を用いることができる。さらに、前記回転検知手段としてアブソリュート型のロータリー・エンコーダを用いても良い。
【0019】
また、上記目的を達成するために本発明の入力装置における触感付与方法は、励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、磁化された前記第1のヨークに吸着可能であると共に、前記第1のヨークに対して回転可能に支持される第2のヨークと、を備える入力装置における触感付与方法であって、操作者による前記第2のヨークに対する回転操作を検知するステップと、操作者による前記回転操作に関する検知情報に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与するか否かを判断するステップと、
操作者に回転操作に対する触感を付与すると判断した場合に、前記励磁コイルに所定のパターンで電圧を印加するステップと、を備えることを特徴としている。
【0020】
本構成によれば、バネ等を用いて構成される機械的な機構を入力装置内部に実装することなく、操作者に回転操作に伴うリアルな操作触感を付与することが可能である。
【0021】
また、上記目的を達成するために本発明の入力装置における触感付与方法は、励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、磁化された前記第1のヨークに吸着可能に前記第1のヨークに対向配置される第2のヨークと、を備える入力装置における触感付与方法であって、操作者による前記第2のヨークに対する押圧を検知するステップと、操作者による前記押圧を検知した場合に、操作者に押圧した触感を付与すべく、前記励磁コイルに所定のパターンで電圧を印加するステップと、を備えることを特徴としている。
【0022】
本構成によれば、ボタンを入力装置内部に実装することなく、操作者にボタン操作に似たリアルな操作触感を付与することが可能である。
【0023】
上記構成の入力装置における触感付与方法において、操作者による前記第2のヨークの押圧解除を検知するステップと、操作者による前記押圧解除を検知した場合に、操作者に押圧を解除した触感を付与すべく、前記励磁コイルに所定のパターンの電圧を印加するステップと、を更に備えることとしてもよい。これにより、更にボタン操作に似たリアルな操作触感の付与が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、装置の内部に、バネ等を用いた機械的な機構やボタンを組み込むことなく操作者にリアルな操作触感を付与することができ、リアルな操作触感を付与できる回転式入力装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用される回転式入力装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施形態の回転式入力装置が備える操作本体部の構成を示す概略斜視図
【図3】本実施形態の回転式入力装置が備える操作本体部の構成を示す分解斜視図
【図4】図2のA−A位置における概略断面図
【図5】操作者に回転操作に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターン例を示すグラフ
【図6】本実施形態の回転式入力装置において、操作者に回転操作に対する触感が付与されるまでの動作例を示すフローチャート
【図7】操作者に押圧操作(その後の押圧解除も含む)に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターン例を示すグラフ
【図8】操作者に押圧操作(その後の押圧解除も含む)に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターンの他例を示すグラフ
【図9】本実施形態の回転式入力装置において、操作者が回転操作体を押圧操作した場合に、操作者に操作触感が付与される動作を示すフローチャート
【図10】回転操作体の相対的な回転角を得るために用いられる機械式エンコーダの一例を説明するための図
【図11】回転操作体の絶対位置を把握可能な光学式エンコーダの構成の一例を説明するための図
【図12】回転操作体の絶対位置を把握可能な機械式エンコーダの構成の一例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の回転式入力装置、及び、入力装置における触感付与方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(回転式入力装置の構成)
まず、本発明が適用される回転式入力装置の構成について、図1から図4を参照しながら説明する。図1は、本発明が適用される回転式入力装置の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態の回転式入力装置が備える操作本体部の構成を示す概略斜視図である。図3は、本実施形態の回転式入力装置が備える操作本体部の構成を示す分解斜視図である。図4は、図2のA−A位置における概略断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の回転式入力装置1は、大きくは、操作本体部2と、制御部3と、増幅器4と、を備える。制御部3は、回転式入力装置1が組み込まれる電子機器の制御部(メインプロセッサ)5とUSBケーブル等の通信手段で接続されており、データのやりとりを行えるようになっている。回転式入力装置1は、表示部6と接続されるメインプロセッサ5と共にGUI(Graphical User Interface)を構成する。また、回転式入力装置1が備える各種パラメータは、メインプロセッサ5によって変更可能となっている。
【0029】
なお、回転式入力装置1が組み込まれる電子機器としては、例えば、携帯電話機、携帯型オーディオプレーヤ、PDA(Personal Digital Assistance)等の携帯型端末装置、テレビジョン受像機等のAV機器、パーソナルコンピュータ等が挙げられる。
【0030】
図2に示すように、回転式入力装置1が備える操作本体部2は、操作者によって入力操作が行われる回転操作体(ホイール)12と、回転操作体12の下部側に設けられ、回転操作体12を回転可能に支持する支持台19と、を備えており、全体が略円盤状を成している。図3及び図4に示すように、回転操作体12と支持台19との間には空間が形成されており、この空間に複数の部材が配設されている。また、支持台19の下部側には、感圧センサ23が搭載される感圧センサ用FPC(Flexible Print Circuit)20が配設されている。
【0031】
なお、操作者による回転操作体12の入力操作には、回転操作体12を回転する回転操作と、回転操作体12を回転軸の軸方向(上下方向)に押圧する押圧操作とが含まれる。
【0032】
回転操作体12は、中央に開口部12aを有する円板状に形成されており、支持台19の上側開口を覆う位置に設けられている。回転操作体12の上面は、操作者が回転操作や押圧操作といった入力操作を行う操作面を構成し、この上面には、操作者が入力操作を行う際の滑り止め等として機能する突起121が形成されている。また、回転操作体12の下面側には後述する摺動部材13や遮蔽部材14が収容保持される溝部12bが形成されている。溝部12bは、回転操作体12を下面側から見た場合に、溝部12bが設けられる領域がドーナツ状の領域となるように設けられている。
【0033】
回転操作体12は磁性体からなり、この回転操作体12自体が本発明の第2のヨークを構成する。なお、回転操作体12は、放熱性に優れる材料、外部からの衝撃に対する耐性が強い材料で形成するのが好ましい。
【0034】
支持台19は、中央に開口を有する円板状の底板部19aと、底板部19aの縁部から全周に亘って上方に向かって突出する側壁部19bと、底板部19aの上面側中央に形成され、底板部19aの開口と連通する開口を有する円筒部19cと、を備えている。側壁部19bには、後述する光学式エンコーダ用FPC15のケーブル部15bを外部に引き出すための溝部191が形成されている。また、側壁部19bには、後述する励磁コイル17のケーブル部17bを外部に引き出すための開口部192が形成されている。
【0035】
支持台19は磁性体からなり、この支持台19自体が本発明の第1のヨークを構成する。なお、支持台19は、放熱性に優れる材料、外部からの衝撃に対する耐性が強い材料で形成するのが好ましい。
【0036】
回転操作体12の開口部12a内には、ワッシャ11が配設され、このワッシャ11の中央の貫通孔11aには、回転操作体12の回転軸となるビス10が挿通される。回転操作体12の上側から挿通されたビス10は、支持台19が備える円筒部19b中央の開口の内周に形成される雌ネジに螺嵌されることによって支持台19に固定されている。これにより、回転操作体12は支持台19に対してビス周りに回転自在に連結されている。
【0037】
摺動部材13はリング状に形成されており、その外径は、回転操作体12の溝部12b内径と略同一となっている。また、摺動部材13は、摺動部材13の中心と回転操作体12の中心とが一致するように、回転操作体12の下面に設けられた溝部12bに収容されている。この摺動部材13は、回転操作体12に例えば接着剤等で固着されており、回転操作体12の回転により摺動部材13も回転する。
【0038】
また、摺動部材13の厚みは、溝部12bの深さよりも厚くなるように規定されており、摺動部材13は、その下面が支持台19の側壁部19bの上面内側に接触するように配置されている。これにより、摺動部材13と側壁部19bとの間の摩擦力によって、回転操作体12に対する回転操作に所定の抵抗感を与えて、回転操作を確実に行わせることが可能となっている。
【0039】
上述のように、摺動部材13の厚みは溝部12bの深さよりも厚くなるように規定されているために、回転操作体12の下面と支持台19の側壁部19b上面との間には隙間が形成されている。摺動部材13は、少なくとも軸方向(上下方向)に弾性変形する部材で形成されている。このために、第1のヨークである支持台19の磁化状態によって、第2のヨークである回転操作体12の軸方向の位置が変化し、回転操作体12は磁化された支持台20に吸着されるようになっている。なお、摺動部材13は、例えば高分子ポリエチレンやシリコンゴム等によって形成される。
【0040】
遮蔽部材14は円板状に形成され、その径はリング状に形成される摺動部材13の内径と略同一となっている。遮蔽部材14は、中央に支持台19が備える円筒部19cの外径と略同一の径の開口を有している。遮蔽部材14は、その中心が回転操作体12の中心と一致するように回転操作体12の下面の溝部12bに接着剤等で固着されており、回転操作体12の回転とともに回転する。
【0041】
遮蔽部材14の下面外周寄りには、周方向に所定の間隔で配置される複数の突起14aが形成されている。本実施形態では、この突起14は図3における破線で示した円上に配置されている。この遮蔽部材14は、例えば絶縁性の樹脂等で形成される。
【0042】
光学式エンコーダ用FPC15は、その上面に光源部21(例えば発光ダイオード)と受光部22(例えばフォトトランジスタ)とからなる光センサが搭載される光センサ搭載部15aと、光センサ搭載部15aから延出されて、光センサへの電力の供給と光センサから出力される信号の外部への送信とを行うためのケーブル部15bと、を備えている。光センサ搭載部15aは、リング形状の摺動部材13の内径と略同一の径の円板状に形成されると共に、中央に支持台19が備える円筒部19cの外径と略同一の径の開口を有している。光学式エンコーダ用FPC15は、光センサ搭載部15aの中心が回転操作体12の中心と一致するように配置されている。ケーブル部15bは、回転操作体12と支持台19との間の空間から側壁部19bに形成された溝部191を通って外部に延出しており、制御部3に信号を出力可能となっている。
【0043】
この光学式エンコーダ用FPC15は、その下部側に配置される、当該光センサ搭載部15aと略同一形状の両面テープ16によって支持台19に固定される励磁コイル17のコイル部17aに固定される。すなわち、光学式エンコーダ用FPC15は、支持台19に固定された状態となっている。したがって、回転操作体12の回転に伴って回転する遮蔽部材14の突起14aと、光学式エンコーダ用FPC15に固定配置される光センサとによって光のオンオフを検知して、回転操作体12の回転量(回転角)を検知できるようになっている。なお、光センサを構成する光源部21と受光部22とは、それらの間を、回転する遮蔽部材14の突起14が通過するように配置されている。本実施形態では、遮蔽部材14、光学式エンコーダ用FPC15、光源部21、及び受光部22によって、光学式エンコーダ24が構成されている。この光学式エンコーダ24は、本発明の回転検知手段の一例である。
【0044】
励磁コイル17は、リング形状の摺動部材13の内径と略同一の径の円板状に形成され、中央に支持台19が備える円筒部19cの外径と略同一の径の開口を有するコイル部17aと、コイル部17aから延出するケーブル部17bと、を備えている。励磁コイル17は、コイル部17aの中心が回転操作体12の中心と一致するように配置された状態で、当該コイル部17aと略同一形状の両面テープ16、18によって、光学式エンコーダ用FPC15の下面と支持台19の底板部19aの上面とに固定されている。なお、コイル17aと光学式エンコーダ用FPC15、コイル部17aと底板部19aとは、両面テープではなく、接着剤等を用いて接着してもよい。
【0045】
励磁コイル17のコイル部17aは、コイルが巻回されて形成されている。コイル部17aの内側には、支持台19が備える円筒部19cが配置され、コイル部17aの外側は、支持台19が備える側壁部19bによって包囲されている。コイル部17aによって発生された磁束は、支持台19を通過するようになっている。なお、回転操作体12を支持台19に回転自在に支持するために使用されるビス10は、コイル部17aによって発生されて支持台19を通過する磁束の磁束密度を高める役割を担っている。
【0046】
励磁コイル17のケーブル部17bは、絶縁性の帯状プレート部と、帯状プレート部の前面に所定のパターン形状で形成された配線と、を備えている。ケーブル部17bは、回転操作体12と支持台19と間の空間から側壁部19bに設けられた開口部192を貫通して外部に延出しており、制御部3から出力されて増幅器4で増幅処理された制御信号によって励磁コイル17への通電を制御できるようになっている。
【0047】
感圧センサ用FPC20は、その上面に感圧センサ23が形成される感圧センサ部20aと、感圧センサ部20aから延出されて、感圧センサ23への電力の供給と感圧センサ23から出力される信号の外部への送信とを行うためのケーブル部20bと、を備えている。感圧センサ部20aは、支持台19の外径と略同一の径の円板状に形成され、その上面に形成される感圧センサ23の数は4つとなっている。
【0048】
感圧センサ23は、支持台19の下面に備えられる脚部19dの位置に対応する位置に配置されている。この感圧センサ23は、操作者が回転操作体12を軸方向(上下方向)に押圧した場合に、その力を検知するようになっている。なお、感圧センサ23の数は4つに限られず、これよりも多くても構わないし、少なくても構わない。目的に応じて変更すればよい。なお、この感圧センサ23は、本発明の押圧検知手段の一例である。
【0049】
ところで、本実施形態のように感圧センサ23を複数配置する場合、押圧位置に応じて異なった処理を実行させることが可能となるために便利である。そして、複数(本実施形態では4つ)の感圧センサ23を配置する場合には、各感圧センサ23からの情報を総合的に考慮して、感圧センサの数より多い押圧位置の検出が可能である。本実施形態の構成では、例えば外周側の8箇所(これらは、例えば方向キーとして使用される)と中心側の1箇所(これは、例えば選択キーとして使用される)との計9つの押圧位置を検出可能である。
【0050】
感圧センサ用FPC20のケーブル部20bは、絶縁性の帯状プレート部と、帯状プレート部の前面に所定のパターン形状で形成された配線と、を備えている。このケーブル部20bによって、感圧センサ23で検知した信号を制御部3に出力可能となっている。
【0051】
制御部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read On Memory)と、を備えている。制御部3は、例えばROMに記憶される触感付与用プログラムに基づいて、操作者の回転式入力装置1の操作に対して操作触感を付与する動作を実行させる。
【0052】
すなわち、制御部3は、操作本体部2に備えられる光学式エンコーダ24から出力される信号によって、操作者による回転操作体12の回転操作を検知すると共に、検知した信号に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与すべく励磁コイル17への通電を制御する。また、制御部3は、操作者による、回転操作体12の軸方向(上下方向)に略平行な方向への押圧操作を検知する感圧センサ23から出力される信号に基づいて、操作者に押圧した触感を付与すべく励磁コイル17への通電を制御する。
【0053】
(触感付与方法)
次に、本実施形態の回転式入力装置1において、回転操作体12の回転操作に対して操作者に操作触感を付与する方法、及び、回転操作体12の押圧操作に対して操作者に操作触感を付与する方法について詳細に説明する。
【0054】
1.回転操作に対する触感付与
まず、回転操作体12の回転操作に対して操作触感を付与する方法について説明する。回転式入力装置1では、回転操作に対する操作触感を付与する場合、励磁コイル17に電圧を所定の期間印加して励磁コイル17に通電し、第1のヨークである支持台19を所定の期間磁化する。これにより、第2のヨークである回転操作体12が支持台19に吸着され、操作者に触感が付与される。具体的には、回転操作体12が支持台19に吸着されると、その間、操作者に回転が重たいとの感覚(ブレーキ感)が付与され、このブレーキ感が操作触感として操作者に付与されることになる。
【0055】
なお、励磁コイル17に印加する電圧は、例えば矩形波や正弦波(矩形波の場合より電力効率の向上が望める)で与えてもよく、複数の波形を組み合わせた合成波等としてもよい。また、励磁コイル17に電圧を印加する所定の期間は、リアルな操作触感を付与できるように実験等で適宜決定すればよい。
【0056】
回転式入力装置1が組み込まれる電子機器は、例えば、回転操作体12の回転量(回転角度)に連動して、実行させる処理項目の選択が行えるように構成される。このような構成の具体例として、携帯電話機のメニュー画面で、「電話機能」、「メール機能」、「カメラ機能」、「アドレス帳機能」等の選択項目から、操作者は回転操作体を回転しながら項目を選択できるといった構成が挙げられる。
【0057】
このような構成の場合、選択項目の切替えに応じて操作者に選択項目が切り替わったことを示す触感を付与するのが好ましい。これにより、操作者は選択項目の切り替わりを指(或いは手)の感覚で認識できる。操作者に選択項目の切り替わりを指の感覚で認識できるようにする場合、回転式入力装置1が備える励磁コイル17に、例えば図5に示すようなパターンで電圧を印加すればよい。すなわち、選択項目の切替えが行われる所定の回転角(図5では30°)ごとに、励磁コイル17に電圧を所定の期間印加するように制御し、回転操作体12を支持台19に吸着させて、操作者に回転操作に対する操作触感(ブレーキ感)を付与するようにすればよい。
【0058】
なお、図5は、操作者に回転操作に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターン例を示すグラフである。図5の横軸は回転操作体12の回転角を示し、図5の縦軸は励磁コイル17に印加する電圧を示す。
【0059】
ところで、選択項目が多い場合には選択項目の切替えが行われる上記所定の回転角は小さくなり、逆に、選択項目が少ない場合は選択項目の切替えが行われる上記所定の回転角は大きくなるが、本実施形態の回転式入力装置1では、そのように変化に対応して操作者に、回転操作に対するリアルな操作触感を付与することが可能である。
【0060】
ここで、選択項目の切り替わりに応じて操作者に選択項目が切り替わったことを示す触感を付与する場合の動作を図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、操作者が回転操作体12の回転を行ったか否かの確認が制御部3によって行われる(ステップS1)。この確認は、光学式エンコーダ24から出力される情報によって確認される。回転操作体12の回転が確認されない場合(ステップS1でNo)には、引き続き回転操作体12の回転が行われたか否かが確認される。
【0061】
制御部3は、操作者が回転操作体12を回転したことを確認すると(ステップS1でYes)、光学式エンコーダ24から出力される情報に基づいて回転操作体12の回転角が所定の回転角(選択項目の切替えが行われる回転角に同じ)に到達したか否かを確認する(ステップS2)。回転操作体12の回転角が所定の回転角に到達していない場合(ステップS2でNo)には、再度ステップS1に戻って回転操作体12の回転確認及び回転角の確認が行われる。
【0062】
制御部3は、操作者が回転操作体12の回転角が所定の回転角に到達したことを確認すると(ステップS2でYes)、励磁コイル17に所定の期間電圧を印加して、回転操作体12を支持台19に吸着させて、操作者に操作触感(ブレーキ感)を与える(ステップS3)。これにより、操作者は選択項目の切替えが行われたことを指の感覚として把握することができる。なお、励磁コイル17に印加する電圧は、例えば矩形波とされるが、上述のように、どのような波形とするかは限定されない。
【0063】
操作者にブレーキ感を与えた後、制御部3は光学式エンコーダ24からの情報に基づいて、回転操作体12の回転が終了したかを確認する(ステップS4)。これは、操作者が切り替えられた選択項目が操作者の目的の項目でなく、更に選択が続けられる場合があることを想定するものである。回転操作体12の回転が終了されず、更に継続されている場合(ステップS4でNo)には、ステップS2以降の動作が再度実行される。回転操作体12の回転が終了したと確認された場合(ステップS4でYes)には、操作者に触感を付与する動作は一旦終了される。
【0064】
2.押圧操作に対する触感付与
次に、回転操作体12の押圧操作に対して操作触感を付与する方法について説明する。この押圧操作は、回転操作体12を回転軸の軸方向に略平行な方向に押圧する操作を指し、この操作は、例えば回転操作よって選択された項目の決定を行う場合等に実行される。
【0065】
回転式入力装置1では、押圧操作に対して操作触感を付与する場合、押圧を検知した場合に加えて、押圧解除を検知した場合にも操作者に対して操作触感を付与するための動作を行うように構成されている。なお、押圧解除を検知した場合における動作は無くても構わないが、ボタン(機械的なクリック感を付与するものの一例)操作に似た操作触感を付与するためには、本実施形態のように、押圧を検知したタイミングと押圧解除を検知したタイミングで、操作触感を付与するための動作を行うのが好ましい。
【0066】
回転式入力装置1によって押圧操作に対して操作触感を付与する場合、例えば図7に示すように、押圧を検知すると、励磁コイル17に電圧を所定の期間印加して励磁コイル17に通電し、第1のヨークである支持台19を所定の期間磁化する。これにより、第2のヨークである回転操作体12が支持台19に吸着され、その後吸着解除されるという動作が行われるために、操作者にボタンを押下した場合と同様の触感(クリック感)が付与される。
【0067】
なお、励磁コイル17に電圧を印加する所定の期間は、特に限定されるものではないが、その期間があまりに長いと操作触感が得られないために、10ms以下とするのが好ましい。また、その期間があまりに短くても操作触感を得られなくなるために、1ms以上が好ましい。これらの時間は、前記所定の期間を変更しながら複数の人に触感を確かめてもらい、好ましいクリック感が得られる時間として実験的に得られたものである。また、ボタン操作によってペン先を出し入れ可能なボールペンにおいて、ペン先を出すためのボタン操作によって「カチャッ」といった触感が得られる時間(例えば8.4ms程度)も、押圧時に好ましい触感を与えるための前記所定の期間の目安となると考えられる。
【0068】
また、図7に示すように押圧操作後に行われる押圧解除を検知すると、励磁コイル17に電圧を所定の期間印加して励磁コイル17に通電し、第1のヨークである支持台19を所定の期間磁化する。これにより、第2のヨークが支持台19から離れる場合の触感を操作者に付与することができ、操作者はボタンの押圧操作に似た、よりリアルな触感を得ることができる。
【0069】
なお、図7は、操作者に押圧操作(その後の押圧解除も含む)に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターン例を示すグラフである。図7の横軸は時間を示し、図7の縦軸は励磁コイル17に印加する電圧を示す。また、図7に示す例では、励磁コイル17に印加する電圧が矩形波で与えられる構成となっているが、これに限定されず、矩形波の場合より電力効率の向上が望める正弦波や、複数の波形を組み合わせた合成波を励磁コイル17に印加する構成等としてもよい。
【0070】
また、図7に示す例では、押圧を検知した場合と押圧解除を検知した場合とで同一パターンの電圧を付与して、それぞれの場合に操作触感を付与する構成となっている。しかし、回転操作体12を押圧する動作と、押圧した後に押圧解除を行う動作とは異なる動作であるために、押圧を検知した場合と押圧解除を検知した場合とで異なるパターンの電圧を印加した方がよりリアルな操作触感が得られる場合もあり、それぞれの場合で異なる電圧パターンを印加するようにしても構わない。
【0071】
また、図7に示す例では、押圧及び押圧解除に対する触感を与える場合に、支持台19に対する回転操作体12の吸着及び吸着解除が所定の期間の間に1回行われる構成を示した。しかし、押圧及び押圧解除に対する触感を与える場合に、図8に示すように、支持台19に対する回転操作体12の吸着及び吸着解除が所定の期間の間に複数回行われる構成としてもよい。なお、図8は、操作者に押圧操作(その後の押圧解除も含む)に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターンの他例を示すグラフである。図8の横軸は時間を示し、図8の縦軸は励磁コイル17に印加する電圧を示す。
【0072】
図8に示す例では、操作者による回転操作体12の押圧が検知されると、所定の期間(例えば10ms以下)の間に所定のデューティ比(図8では50%であるが適宜変更可能である)の矩形波電圧が3周期に亘って印加されるようになっている。これにより、支持台19に対する回転操作体12の吸着及び吸着解除が所定の期間の間に3回行われ、操作者は押圧操作に対する触感を得られる。
【0073】
また、図8に示す例では、操作者による押圧解除が検知されると、押圧を検知した場合と同様に、所定のデューティ比(図8では50%であるが適宜変更可能である)の矩形波電圧が3周期に亘って印加されるようになっており、これにより、操作者は押圧解除の触感を得られる。なお、図8に示す例では、押圧を検知した場合と、押圧解除を検知した場合とで、励磁コイル17に印加される電圧のパターンが異なっている(詳細に、周波数が異なっている)。
【0074】
ここで、本実施形態の回転式入力装置において、操作者が回転操作体を押圧操作した場合に、操作者に操作触感を付与する動作フローについて図9を参照しながら説明する。まず、操作者が回転操作体12を押圧したか否かの確認が制御部3によって行われる(ステップS11)。この確認は、感圧センサ23から出力される情報によって確認される。回転操作体12の押圧が確認されない場合(ステップS11でNo)には、引き続き回転操作体12の押圧が行われたか否かが確認される。
【0075】
制御部3は、操作者が回転操作体12を押圧したことを確認すると(ステップS11でYes)、励磁コイル17に所定パターンの電圧(例えば図7、8参照)を印加して励磁コイルを駆動し、操作者に操作触感を与える(ステップS12)。操作者に回転操作体12の押圧検知に基づく操作触感を付与した後、回転操作体12の押圧解除が行われたか否かが確認される(ステップS13)。
【0076】
回転操作体12の押圧解除が確認されない場合(ステップS13でNo)には、引き続き回転操作体12の押圧解除が行われたか否かが確認される。制御部3は、操作者が回転操作体12の押圧を解除したことを確認すると(ステップS13でYes)、励磁コイル17に所定パターンの電圧(例えば図7、8参照)を印加して励磁コイルを駆動し、操作者に操作触感を与える(ステップS14)。
【0077】
3.上記触感付与方法の効果
以上のように、本実施形態の触感付与方法によれば、バネ等を用いて構成される機械的な機構を入力装置に実装することなく、回転操作に対するリアルな触感を付与できる。また、本実施形態の触感付与方法によれば、操作ボタンを入力装置に実装することなく、押圧操作に対するリアルな触感を付与できる。
【0078】
(その他)
以上に示した実施形態は、本発明が適用される回転式入力装置、及び、入力装置における触感付与方法の例示であって、本発明が適用される範囲は以上に示した構成に限定される趣旨ではない。
【0079】
例えば、以上に示した実施形態においては、回転操作体12の回転角(回転開始位置を基準とする相対的な回転角)を得るにあたって光学式エンコーダを用いた。しかし、この構成に限らず、光源部及び受光部を有さない機械式エンコーダを用いても構わない。図10は、回転操作体12の相対的な回転角を得るために用いられる機械式エンコーダの一例を説明するための図で、図10(a)はこの機械式エンコーダが回転式入力装置に設けられた場合の回転式入力装置の構成を示す概略断面図、図10(b)はこの機械式エンコーダを構成する電極付きFPCの構成を示す概略平面図である。
【0080】
図10に示すように、機械式エンコーダ30は、中央部に開口を有する円板状に形成されて回転操作体12に固着される絶縁性の支持部31と、導電性及び弾性を有して支持部31に固着される摺動片32と、励磁コイル17の上部に固定配置される電極付きFPC33と、を備える。電極付きFPC33は、より詳細には、上面に複数の正極331と負極332とを有すると共に中央部に開口333を有する円板状部33aと、円板状33aから延出して電気信号のやりとりを行うためのケーブル部33bと、を有する。
【0081】
円板状部33aに設けられる複数の正極331と複数の負極332とは、それぞれ異なる径を有する同心円上に配置されている。図10に示す例では、内側に正極331、外側に負極332が配置される構成となっているが、勿論この逆でもよい。回転操作体12が回転すると、支持部31と共に摺動片32が回転し、摺動片32と電極331、332との接触と非接触とが交互に生じるために、回転操作体12の回転角を検知できる。
【0082】
また、以上に示した実施形態においては、回転操作体12の回転を検知する回転検知手段(光学式エンコーダ24)によって回転操作体12の回転角を相対的に検知して、それに基づいて操作触感を付与する構成とした。しかし、この構成に限らず、回転検知手段によって回転操作体12の絶対位置を把握し、これに基づいて操作触感を付与するようにしても構わない。このような回転検知手段の構成として、例えば図11に示すような光学式エンコーダ40や図12に示すような機械式エンコーダ50等が挙げられる。
【0083】
なお、図11は、回転操作体12の絶対位置を把握可能な光学式エンコーダの構成の一例を説明するための図で、図11(a)はこの光学式エンコーダが回転式入力装置に設けられた場合の回転式入力装置の構成を示す概略断面図、図11(b)はこの光学式エンコーダを構成する光源部及び受光部の構成を示す概略平面図、図11(c)はこの光学式エンコーダを構成する遮蔽板の構成を示す概略平面図である。また、図12は、回転操作体12の絶対位置を把握可能な機械式エンコーダの構成の一例を説明するための図で、図12(a)はこの機械式エンコーダが回転式入力装置に設けられた場合の回転式入力装置の構成を示す概略断面図、図12(b)はこの機械式エンコーダを構成する電極付きFPCの構成を示す概略平面図である。
【0084】
図11に示すように、光学式エンコーダ40は、中央部に開口を有すると共に外周端下部側に鍔部41aを有し、回転操作体に固着される略円板状の遮蔽板41と、鍔部41aを挟むように配置される光源部42及び受光部43と、光源部42及び受光部43と電気信号のやりとりを行うためのFPC44と、を備える。光源部42は一列に複数(図11の例では4つ)の発光素子42aが並べられており、光源部42の下部側に配置される受光部43にも、複数の発光素子42aのそれぞれに対応するように、複数(図11の例では4つ)の受光素子43aが一列に並べられている。
【0085】
遮蔽板41の鍔部41aには、光を透過する透過孔(図11(c)における白丸が該当。なお、黒丸は光が遮断されることを示す)が円周方向にそれぞれ異なるパターンで形成されている。これにより、回転操作体12の回転方向の位置が異なると、受光部43の複数の受光素子43aから出力される信号の組み合わせが異なったものとなるために、回転操作体12の回転方向の絶対位置を検出することが可能となる。
【0086】
図12に示すように、機械式エンコーダ50は、中央部に開口を有する円板状に形成されて回転操作体12に固着される絶縁性の支持部51と、導電性及び弾性を有して支持部51に固着される摺動片52と、励磁コイル17の上部に固定配置される電極付きFPC53と、を備える。電極付きFPC53は、より詳細には、上面に、リング形状(半径方向に平行な方向の幅は一定)の正極531と、半径方向に平行な方向の幅が最も広い位置から、円周方向左周りに移動するにつれて半径方向に平行な方向の幅が徐々に狭くなる負極532と、を有すると共に中央部に開口533を有する円板状部53aと、円板状53aから延出して電気信号のやりとりを行うためのケーブル部53bと、を有する。
【0087】
回転操作体12が回転すると、支持部51と共に摺動片52が回転し、摺動片52と接触する正極531の面積が変動(摺動片32と負極532と接触する面積は一定)するために、回転操作体12の回転方向の絶対位置を検出することが可能となる。
【0088】
また、回転操作体12の回転操作に対して操作触感を付与するタイミングは、回転操作体12の回転角や絶対位置ではなく、速度や加速度等に基づいて付与しても構わない。また、以上では、選択項目の切替えに合わせて回転操作に対する触感を付与する例を示したが、これに限らず、回転操作が検出されている場合に、一定の周期で回転操作に対する触感を付与するような構成としてもよい(これは、図5の横軸が時間である場合が該当する)。
【0089】
また、以上に示した実施形態では、回転操作体12自体を第2のヨークとしたが、これに限定されるものではなく、回転操作体12とは別の磁性体を第2のヨークとし、例えば当該磁性体を回転操作体12の下面に固着してもよい。この場合には、回転操作体12は、磁性体でなくてもよい。
【0090】
また、以上に示した実施形態では、支持台19を第1のヨークとしたが、これに限定されるものではなく、支持台19とは別の磁性体を第1のヨークとし、例えば、当該磁性体を支持台19に収容してもよい。この場合には、支持台19は、磁性体でなくてもよい。
【0091】
その他、以上に示した実施形態では、回転式入力装置1が回転操作と押圧操作とを行える構成としたが、回転操作のみが行える構成であっても構わない。また、以上に示した王圧操作に対する操作触感の付与方法は、回転式入力装置に限らず、他の入力装置(回転式でない入力装置)にも適用できるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えば、携帯電話機、携帯型オーディオプレーヤ、PDA(Personal Digital Assistance)等の携帯型端末装置、テレビジョン受像機等のAV機器、パーソナルコンピュータ等に備えられる回転式入力装置に対して好適である。
【符号の説明】
【0093】
1 回転式入力装置
3 制御手段
10 ビス(回転軸)
12 回転操作体(第2のヨーク)
17 励磁コイル
19 支持台(第1のヨーク)
23 感圧センサ(押圧検知手段)
24、40 光学式エンコーダ(回転検知手段)
30、50 機械式エンコーダ(回転検知手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式入力装置、及び、入力装置における触感(操作触感)付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、携帯端末機、AV機器、AV機器等のリモートコントロール装置、パーソナルコンピュータといった電子機器の中には、ユーザが回転操作体を操作することによって電子機器への情報の入力を可能とする回転式入力装置を採用するものがある。具体的には、例えば、回転操作体の回転に連動して電子機器の表示画面に表示される選択項目が順に切替選択できるように、また、目的の選択項目を選択した後に回転操作体を押圧操作することで選択項目の確定を行えるように、回転式入力装置は電子機器に組み込まれる。
【0003】
このような回転式入力装置においては、回転操作体の回転により項目の切替えが行われたことや押圧操作によって選択項目が確定されたことが手や指の感覚として操作者に把握されるように、回転操作や押圧操作に対する触感が付与されることが望まれる。従来の回転式入力装置においては、例えば、バネ等を用いて構成される機械的な機構を実装して回転操作体を回転させた場合の触感を操作者に付与するようになっている。また、従来の回転式入力装置においては、例えば、回転操作体の下にボタンを配置して、回転操作体を押圧した場合の触感が操作者に付与されるようになっている。
【0004】
しかしながら、このような従来の回転式入力装置では、回転式入力装置の内部に、バネ等を用いた機械的な機構やボタンを組み込む必要があるために、回転式入力装置が大型化しやすいといった問題がある。この点、特許文献1や特許文献2には、バネ等を用いた機械的な機構を組み込むことなく、回転操作体を回転させた場合の触感を操作者に付与する回転式入力装置が提案されている。
【0005】
なお、特許文献1に開示される力覚付与型入力装置(回転式入力装置)は、操作ノブ(回転操作体)を回転させて、操作ノブの回転軸に取り付けられたセンサにより回転角度を検出するようになっている。そして、この回転角度の位置に対応する力覚を求め、操作ノブに取り付けられたアクチュエータにこの力覚を付与する指示を送り、アクチュエータが操作ノブに力覚を付与するようになっている。これにより、操作者は回転操作に伴う所定の操作触感を得られる。
【0006】
また、特許文献2に開示される回転型スイッチ(回転式入力装置)は、回転操作部(回転操作体)と、回転時にクリック感を発生するクリック感発生手段と、備える。そして、回転時にクリック感を発生するクリック感発生手段は、回転操作部と一体回転し、透磁率の強弱を所定角度ごとに交互に設けた回転部材と、回転部材に面して配置され、磁界を発生するコイルと、を有するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−251845号公報
【特許文献2】特開2005−174807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や2に開示される回転式入力装置においては、回転操作体を押圧した場合の触感を操作者に付与する構成は開示されない。このため、特許文献1や2に開示される回転式入力装置において回転操作体を押圧した場合の触感を操作者に付与しようとすると、回転式入力装置の内部にボタンを組み込む必要が生じる。したがって、特許文献1や2の回転式入力装置においては、装置が大型化しやすいといった問題が依然として残る。
【0009】
以上の点を鑑みて、本発明の目的は、装置の小型化を図りやすく、操作者にリアルな操作触感を付与することができる回転式入力装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、入力装置の小型化が可能であって、操作者にリアルな操作触感を与えられる触感付与方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の回転式入力装置は、励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、前記第1のヨークに対して回転可能に支持されると共に、前記第1のヨークの磁化状態によって回転軸の軸方向の位置が変化する第2のヨークと、操作者による前記第2のヨークに対する回転操作を検知する回転検知手段と、前記回転検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本構成によれば、回転式入力装置の回転操作に対する触感を、励磁コイルへの通電を制御することによって与えられるようになっている。具体的には、本構成によれば、励磁コイルへの通電を制御して第1のヨークの磁化状態を制御し、第2のヨークを第1のヨークに吸着させることによって、操作者に対して回転操作中にブレーキ感(回転操作に対する触感)を与えることが可能である。また、回転検知手段から出力される信号に基づいて回転操作に対する触感を付与するようになっているために、必要なタイミングで触感を提供できる。すなわち、本構成によれば、バネ等を用いて構成される機械的な機構を実装することなく、回転操作に対するリアルな操作触感を操作者に与えることが可能であり、回転式入力装置の小型化を図りやすい。なお、回転操作に対して触感を付与するために設けられる構成が、後述のように押圧操作に対する操作触感を与える構成にも兼用できるために、本構成の回転式入力装置は小型化対応に優れる。
【0012】
上記構成の回転式入力装置において、操作者による、前記第2のヨークに対する前記軸方向に略平行な方向への押圧操作を検知する押圧検知手段を更に備え、前記制御手段は、前記押圧検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に押圧した触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御することとしてもよい。
【0013】
本構成によれば、回転式入力装置の押圧操作に対する触感を、励磁コイルへの通電を制御することによって与えられるようになっている。具体的には、本構成によれば、例えば、励磁コイルへの通電を制御して第1のヨークの磁化状態を制御し、第2のヨークを第1のヨークに対して所定の期間のみ吸着させるという動作を行うことによって、操作者に対してボタンを押した時と同様の触感を与えることが可能である。また、押圧検知手段を用いて押圧状態を判断して押圧した触感を付与するようになっているために、リアルな操作触感を提供できる。
【0014】
上記構成の回転式入力装置において、操作者に押圧した触感を付与する場合、前記第1のヨークに対する前記第2のヨークの吸着及び吸着解除が所定の期間の間に少なくとも1回行われるように、前記制御手段は前記励磁コイルへの通電を制御することとしてもよい。なお、所定の期間の間に、第2のヨークが複数回、第1のヨークにくっついたり離れたりする場合、ボタンを押した場合の操作触感とはやや異なる操作触感となる場合もあるが、このような構成でも操作者に対してクリック感を付与可能であり、このような構成も本発明は含む趣旨である。また、本明細書において、第1のヨークに対する第2のヨークの吸着は、第1のヨークと第2のヨークとの間に他の部材が介在して吸着される場合も含む趣旨であることもここで断っておく。
【0015】
上記構成の回転式入力装置において、前記所定の期間は、1ms以上、10ms以下であるのが好ましい。これにより、ボタンを押した場合と同様のよりリアルな操作触感を得ることが可能である。
【0016】
上記構成の回転式入力装置において、前記制御手段は、前記押圧検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に押圧を解除した触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御することとしてもよい。そして、この構成を採用するにあたって、操作者に押圧した触感を付与する場合と、操作者に押圧を解除した触感を付与する場合とで、前記制御部は、前記励磁コイルへの通電について異なる制御を行うこととしてもよい。このように構成することで、ボタン操作により近い操作触感を与えることが可能となる。
【0017】
上記構成の回転式入力装置において、前記第2のヨークは、前記軸方向に弾性変形する弾性部材を介して前記第1のヨークに支持されていることとしてもよい。このように構成すれば、装置構成を簡易なものとできる。
【0018】
上記構成の回転式入力装置において、前記回転検知手段は、回転検出できる如何なる構成を用いてもよく、たとえば、円環状のコードホイールとフォトインタラプタとから構成される光学式エンコーダ、機械式(接点式)、磁気式、電極の静電容量変化によって位置検出を行う静電式の回転検知手段等を用いることができる。さらに、前記回転検知手段としてアブソリュート型のロータリー・エンコーダを用いても良い。
【0019】
また、上記目的を達成するために本発明の入力装置における触感付与方法は、励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、磁化された前記第1のヨークに吸着可能であると共に、前記第1のヨークに対して回転可能に支持される第2のヨークと、を備える入力装置における触感付与方法であって、操作者による前記第2のヨークに対する回転操作を検知するステップと、操作者による前記回転操作に関する検知情報に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与するか否かを判断するステップと、
操作者に回転操作に対する触感を付与すると判断した場合に、前記励磁コイルに所定のパターンで電圧を印加するステップと、を備えることを特徴としている。
【0020】
本構成によれば、バネ等を用いて構成される機械的な機構を入力装置内部に実装することなく、操作者に回転操作に伴うリアルな操作触感を付与することが可能である。
【0021】
また、上記目的を達成するために本発明の入力装置における触感付与方法は、励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、磁化された前記第1のヨークに吸着可能に前記第1のヨークに対向配置される第2のヨークと、を備える入力装置における触感付与方法であって、操作者による前記第2のヨークに対する押圧を検知するステップと、操作者による前記押圧を検知した場合に、操作者に押圧した触感を付与すべく、前記励磁コイルに所定のパターンで電圧を印加するステップと、を備えることを特徴としている。
【0022】
本構成によれば、ボタンを入力装置内部に実装することなく、操作者にボタン操作に似たリアルな操作触感を付与することが可能である。
【0023】
上記構成の入力装置における触感付与方法において、操作者による前記第2のヨークの押圧解除を検知するステップと、操作者による前記押圧解除を検知した場合に、操作者に押圧を解除した触感を付与すべく、前記励磁コイルに所定のパターンの電圧を印加するステップと、を更に備えることとしてもよい。これにより、更にボタン操作に似たリアルな操作触感の付与が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、装置の内部に、バネ等を用いた機械的な機構やボタンを組み込むことなく操作者にリアルな操作触感を付与することができ、リアルな操作触感を付与できる回転式入力装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用される回転式入力装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施形態の回転式入力装置が備える操作本体部の構成を示す概略斜視図
【図3】本実施形態の回転式入力装置が備える操作本体部の構成を示す分解斜視図
【図4】図2のA−A位置における概略断面図
【図5】操作者に回転操作に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターン例を示すグラフ
【図6】本実施形態の回転式入力装置において、操作者に回転操作に対する触感が付与されるまでの動作例を示すフローチャート
【図7】操作者に押圧操作(その後の押圧解除も含む)に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターン例を示すグラフ
【図8】操作者に押圧操作(その後の押圧解除も含む)に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターンの他例を示すグラフ
【図9】本実施形態の回転式入力装置において、操作者が回転操作体を押圧操作した場合に、操作者に操作触感が付与される動作を示すフローチャート
【図10】回転操作体の相対的な回転角を得るために用いられる機械式エンコーダの一例を説明するための図
【図11】回転操作体の絶対位置を把握可能な光学式エンコーダの構成の一例を説明するための図
【図12】回転操作体の絶対位置を把握可能な機械式エンコーダの構成の一例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の回転式入力装置、及び、入力装置における触感付与方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(回転式入力装置の構成)
まず、本発明が適用される回転式入力装置の構成について、図1から図4を参照しながら説明する。図1は、本発明が適用される回転式入力装置の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態の回転式入力装置が備える操作本体部の構成を示す概略斜視図である。図3は、本実施形態の回転式入力装置が備える操作本体部の構成を示す分解斜視図である。図4は、図2のA−A位置における概略断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の回転式入力装置1は、大きくは、操作本体部2と、制御部3と、増幅器4と、を備える。制御部3は、回転式入力装置1が組み込まれる電子機器の制御部(メインプロセッサ)5とUSBケーブル等の通信手段で接続されており、データのやりとりを行えるようになっている。回転式入力装置1は、表示部6と接続されるメインプロセッサ5と共にGUI(Graphical User Interface)を構成する。また、回転式入力装置1が備える各種パラメータは、メインプロセッサ5によって変更可能となっている。
【0029】
なお、回転式入力装置1が組み込まれる電子機器としては、例えば、携帯電話機、携帯型オーディオプレーヤ、PDA(Personal Digital Assistance)等の携帯型端末装置、テレビジョン受像機等のAV機器、パーソナルコンピュータ等が挙げられる。
【0030】
図2に示すように、回転式入力装置1が備える操作本体部2は、操作者によって入力操作が行われる回転操作体(ホイール)12と、回転操作体12の下部側に設けられ、回転操作体12を回転可能に支持する支持台19と、を備えており、全体が略円盤状を成している。図3及び図4に示すように、回転操作体12と支持台19との間には空間が形成されており、この空間に複数の部材が配設されている。また、支持台19の下部側には、感圧センサ23が搭載される感圧センサ用FPC(Flexible Print Circuit)20が配設されている。
【0031】
なお、操作者による回転操作体12の入力操作には、回転操作体12を回転する回転操作と、回転操作体12を回転軸の軸方向(上下方向)に押圧する押圧操作とが含まれる。
【0032】
回転操作体12は、中央に開口部12aを有する円板状に形成されており、支持台19の上側開口を覆う位置に設けられている。回転操作体12の上面は、操作者が回転操作や押圧操作といった入力操作を行う操作面を構成し、この上面には、操作者が入力操作を行う際の滑り止め等として機能する突起121が形成されている。また、回転操作体12の下面側には後述する摺動部材13や遮蔽部材14が収容保持される溝部12bが形成されている。溝部12bは、回転操作体12を下面側から見た場合に、溝部12bが設けられる領域がドーナツ状の領域となるように設けられている。
【0033】
回転操作体12は磁性体からなり、この回転操作体12自体が本発明の第2のヨークを構成する。なお、回転操作体12は、放熱性に優れる材料、外部からの衝撃に対する耐性が強い材料で形成するのが好ましい。
【0034】
支持台19は、中央に開口を有する円板状の底板部19aと、底板部19aの縁部から全周に亘って上方に向かって突出する側壁部19bと、底板部19aの上面側中央に形成され、底板部19aの開口と連通する開口を有する円筒部19cと、を備えている。側壁部19bには、後述する光学式エンコーダ用FPC15のケーブル部15bを外部に引き出すための溝部191が形成されている。また、側壁部19bには、後述する励磁コイル17のケーブル部17bを外部に引き出すための開口部192が形成されている。
【0035】
支持台19は磁性体からなり、この支持台19自体が本発明の第1のヨークを構成する。なお、支持台19は、放熱性に優れる材料、外部からの衝撃に対する耐性が強い材料で形成するのが好ましい。
【0036】
回転操作体12の開口部12a内には、ワッシャ11が配設され、このワッシャ11の中央の貫通孔11aには、回転操作体12の回転軸となるビス10が挿通される。回転操作体12の上側から挿通されたビス10は、支持台19が備える円筒部19b中央の開口の内周に形成される雌ネジに螺嵌されることによって支持台19に固定されている。これにより、回転操作体12は支持台19に対してビス周りに回転自在に連結されている。
【0037】
摺動部材13はリング状に形成されており、その外径は、回転操作体12の溝部12b内径と略同一となっている。また、摺動部材13は、摺動部材13の中心と回転操作体12の中心とが一致するように、回転操作体12の下面に設けられた溝部12bに収容されている。この摺動部材13は、回転操作体12に例えば接着剤等で固着されており、回転操作体12の回転により摺動部材13も回転する。
【0038】
また、摺動部材13の厚みは、溝部12bの深さよりも厚くなるように規定されており、摺動部材13は、その下面が支持台19の側壁部19bの上面内側に接触するように配置されている。これにより、摺動部材13と側壁部19bとの間の摩擦力によって、回転操作体12に対する回転操作に所定の抵抗感を与えて、回転操作を確実に行わせることが可能となっている。
【0039】
上述のように、摺動部材13の厚みは溝部12bの深さよりも厚くなるように規定されているために、回転操作体12の下面と支持台19の側壁部19b上面との間には隙間が形成されている。摺動部材13は、少なくとも軸方向(上下方向)に弾性変形する部材で形成されている。このために、第1のヨークである支持台19の磁化状態によって、第2のヨークである回転操作体12の軸方向の位置が変化し、回転操作体12は磁化された支持台20に吸着されるようになっている。なお、摺動部材13は、例えば高分子ポリエチレンやシリコンゴム等によって形成される。
【0040】
遮蔽部材14は円板状に形成され、その径はリング状に形成される摺動部材13の内径と略同一となっている。遮蔽部材14は、中央に支持台19が備える円筒部19cの外径と略同一の径の開口を有している。遮蔽部材14は、その中心が回転操作体12の中心と一致するように回転操作体12の下面の溝部12bに接着剤等で固着されており、回転操作体12の回転とともに回転する。
【0041】
遮蔽部材14の下面外周寄りには、周方向に所定の間隔で配置される複数の突起14aが形成されている。本実施形態では、この突起14は図3における破線で示した円上に配置されている。この遮蔽部材14は、例えば絶縁性の樹脂等で形成される。
【0042】
光学式エンコーダ用FPC15は、その上面に光源部21(例えば発光ダイオード)と受光部22(例えばフォトトランジスタ)とからなる光センサが搭載される光センサ搭載部15aと、光センサ搭載部15aから延出されて、光センサへの電力の供給と光センサから出力される信号の外部への送信とを行うためのケーブル部15bと、を備えている。光センサ搭載部15aは、リング形状の摺動部材13の内径と略同一の径の円板状に形成されると共に、中央に支持台19が備える円筒部19cの外径と略同一の径の開口を有している。光学式エンコーダ用FPC15は、光センサ搭載部15aの中心が回転操作体12の中心と一致するように配置されている。ケーブル部15bは、回転操作体12と支持台19との間の空間から側壁部19bに形成された溝部191を通って外部に延出しており、制御部3に信号を出力可能となっている。
【0043】
この光学式エンコーダ用FPC15は、その下部側に配置される、当該光センサ搭載部15aと略同一形状の両面テープ16によって支持台19に固定される励磁コイル17のコイル部17aに固定される。すなわち、光学式エンコーダ用FPC15は、支持台19に固定された状態となっている。したがって、回転操作体12の回転に伴って回転する遮蔽部材14の突起14aと、光学式エンコーダ用FPC15に固定配置される光センサとによって光のオンオフを検知して、回転操作体12の回転量(回転角)を検知できるようになっている。なお、光センサを構成する光源部21と受光部22とは、それらの間を、回転する遮蔽部材14の突起14が通過するように配置されている。本実施形態では、遮蔽部材14、光学式エンコーダ用FPC15、光源部21、及び受光部22によって、光学式エンコーダ24が構成されている。この光学式エンコーダ24は、本発明の回転検知手段の一例である。
【0044】
励磁コイル17は、リング形状の摺動部材13の内径と略同一の径の円板状に形成され、中央に支持台19が備える円筒部19cの外径と略同一の径の開口を有するコイル部17aと、コイル部17aから延出するケーブル部17bと、を備えている。励磁コイル17は、コイル部17aの中心が回転操作体12の中心と一致するように配置された状態で、当該コイル部17aと略同一形状の両面テープ16、18によって、光学式エンコーダ用FPC15の下面と支持台19の底板部19aの上面とに固定されている。なお、コイル17aと光学式エンコーダ用FPC15、コイル部17aと底板部19aとは、両面テープではなく、接着剤等を用いて接着してもよい。
【0045】
励磁コイル17のコイル部17aは、コイルが巻回されて形成されている。コイル部17aの内側には、支持台19が備える円筒部19cが配置され、コイル部17aの外側は、支持台19が備える側壁部19bによって包囲されている。コイル部17aによって発生された磁束は、支持台19を通過するようになっている。なお、回転操作体12を支持台19に回転自在に支持するために使用されるビス10は、コイル部17aによって発生されて支持台19を通過する磁束の磁束密度を高める役割を担っている。
【0046】
励磁コイル17のケーブル部17bは、絶縁性の帯状プレート部と、帯状プレート部の前面に所定のパターン形状で形成された配線と、を備えている。ケーブル部17bは、回転操作体12と支持台19と間の空間から側壁部19bに設けられた開口部192を貫通して外部に延出しており、制御部3から出力されて増幅器4で増幅処理された制御信号によって励磁コイル17への通電を制御できるようになっている。
【0047】
感圧センサ用FPC20は、その上面に感圧センサ23が形成される感圧センサ部20aと、感圧センサ部20aから延出されて、感圧センサ23への電力の供給と感圧センサ23から出力される信号の外部への送信とを行うためのケーブル部20bと、を備えている。感圧センサ部20aは、支持台19の外径と略同一の径の円板状に形成され、その上面に形成される感圧センサ23の数は4つとなっている。
【0048】
感圧センサ23は、支持台19の下面に備えられる脚部19dの位置に対応する位置に配置されている。この感圧センサ23は、操作者が回転操作体12を軸方向(上下方向)に押圧した場合に、その力を検知するようになっている。なお、感圧センサ23の数は4つに限られず、これよりも多くても構わないし、少なくても構わない。目的に応じて変更すればよい。なお、この感圧センサ23は、本発明の押圧検知手段の一例である。
【0049】
ところで、本実施形態のように感圧センサ23を複数配置する場合、押圧位置に応じて異なった処理を実行させることが可能となるために便利である。そして、複数(本実施形態では4つ)の感圧センサ23を配置する場合には、各感圧センサ23からの情報を総合的に考慮して、感圧センサの数より多い押圧位置の検出が可能である。本実施形態の構成では、例えば外周側の8箇所(これらは、例えば方向キーとして使用される)と中心側の1箇所(これは、例えば選択キーとして使用される)との計9つの押圧位置を検出可能である。
【0050】
感圧センサ用FPC20のケーブル部20bは、絶縁性の帯状プレート部と、帯状プレート部の前面に所定のパターン形状で形成された配線と、を備えている。このケーブル部20bによって、感圧センサ23で検知した信号を制御部3に出力可能となっている。
【0051】
制御部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read On Memory)と、を備えている。制御部3は、例えばROMに記憶される触感付与用プログラムに基づいて、操作者の回転式入力装置1の操作に対して操作触感を付与する動作を実行させる。
【0052】
すなわち、制御部3は、操作本体部2に備えられる光学式エンコーダ24から出力される信号によって、操作者による回転操作体12の回転操作を検知すると共に、検知した信号に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与すべく励磁コイル17への通電を制御する。また、制御部3は、操作者による、回転操作体12の軸方向(上下方向)に略平行な方向への押圧操作を検知する感圧センサ23から出力される信号に基づいて、操作者に押圧した触感を付与すべく励磁コイル17への通電を制御する。
【0053】
(触感付与方法)
次に、本実施形態の回転式入力装置1において、回転操作体12の回転操作に対して操作者に操作触感を付与する方法、及び、回転操作体12の押圧操作に対して操作者に操作触感を付与する方法について詳細に説明する。
【0054】
1.回転操作に対する触感付与
まず、回転操作体12の回転操作に対して操作触感を付与する方法について説明する。回転式入力装置1では、回転操作に対する操作触感を付与する場合、励磁コイル17に電圧を所定の期間印加して励磁コイル17に通電し、第1のヨークである支持台19を所定の期間磁化する。これにより、第2のヨークである回転操作体12が支持台19に吸着され、操作者に触感が付与される。具体的には、回転操作体12が支持台19に吸着されると、その間、操作者に回転が重たいとの感覚(ブレーキ感)が付与され、このブレーキ感が操作触感として操作者に付与されることになる。
【0055】
なお、励磁コイル17に印加する電圧は、例えば矩形波や正弦波(矩形波の場合より電力効率の向上が望める)で与えてもよく、複数の波形を組み合わせた合成波等としてもよい。また、励磁コイル17に電圧を印加する所定の期間は、リアルな操作触感を付与できるように実験等で適宜決定すればよい。
【0056】
回転式入力装置1が組み込まれる電子機器は、例えば、回転操作体12の回転量(回転角度)に連動して、実行させる処理項目の選択が行えるように構成される。このような構成の具体例として、携帯電話機のメニュー画面で、「電話機能」、「メール機能」、「カメラ機能」、「アドレス帳機能」等の選択項目から、操作者は回転操作体を回転しながら項目を選択できるといった構成が挙げられる。
【0057】
このような構成の場合、選択項目の切替えに応じて操作者に選択項目が切り替わったことを示す触感を付与するのが好ましい。これにより、操作者は選択項目の切り替わりを指(或いは手)の感覚で認識できる。操作者に選択項目の切り替わりを指の感覚で認識できるようにする場合、回転式入力装置1が備える励磁コイル17に、例えば図5に示すようなパターンで電圧を印加すればよい。すなわち、選択項目の切替えが行われる所定の回転角(図5では30°)ごとに、励磁コイル17に電圧を所定の期間印加するように制御し、回転操作体12を支持台19に吸着させて、操作者に回転操作に対する操作触感(ブレーキ感)を付与するようにすればよい。
【0058】
なお、図5は、操作者に回転操作に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターン例を示すグラフである。図5の横軸は回転操作体12の回転角を示し、図5の縦軸は励磁コイル17に印加する電圧を示す。
【0059】
ところで、選択項目が多い場合には選択項目の切替えが行われる上記所定の回転角は小さくなり、逆に、選択項目が少ない場合は選択項目の切替えが行われる上記所定の回転角は大きくなるが、本実施形態の回転式入力装置1では、そのように変化に対応して操作者に、回転操作に対するリアルな操作触感を付与することが可能である。
【0060】
ここで、選択項目の切り替わりに応じて操作者に選択項目が切り替わったことを示す触感を付与する場合の動作を図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、操作者が回転操作体12の回転を行ったか否かの確認が制御部3によって行われる(ステップS1)。この確認は、光学式エンコーダ24から出力される情報によって確認される。回転操作体12の回転が確認されない場合(ステップS1でNo)には、引き続き回転操作体12の回転が行われたか否かが確認される。
【0061】
制御部3は、操作者が回転操作体12を回転したことを確認すると(ステップS1でYes)、光学式エンコーダ24から出力される情報に基づいて回転操作体12の回転角が所定の回転角(選択項目の切替えが行われる回転角に同じ)に到達したか否かを確認する(ステップS2)。回転操作体12の回転角が所定の回転角に到達していない場合(ステップS2でNo)には、再度ステップS1に戻って回転操作体12の回転確認及び回転角の確認が行われる。
【0062】
制御部3は、操作者が回転操作体12の回転角が所定の回転角に到達したことを確認すると(ステップS2でYes)、励磁コイル17に所定の期間電圧を印加して、回転操作体12を支持台19に吸着させて、操作者に操作触感(ブレーキ感)を与える(ステップS3)。これにより、操作者は選択項目の切替えが行われたことを指の感覚として把握することができる。なお、励磁コイル17に印加する電圧は、例えば矩形波とされるが、上述のように、どのような波形とするかは限定されない。
【0063】
操作者にブレーキ感を与えた後、制御部3は光学式エンコーダ24からの情報に基づいて、回転操作体12の回転が終了したかを確認する(ステップS4)。これは、操作者が切り替えられた選択項目が操作者の目的の項目でなく、更に選択が続けられる場合があることを想定するものである。回転操作体12の回転が終了されず、更に継続されている場合(ステップS4でNo)には、ステップS2以降の動作が再度実行される。回転操作体12の回転が終了したと確認された場合(ステップS4でYes)には、操作者に触感を付与する動作は一旦終了される。
【0064】
2.押圧操作に対する触感付与
次に、回転操作体12の押圧操作に対して操作触感を付与する方法について説明する。この押圧操作は、回転操作体12を回転軸の軸方向に略平行な方向に押圧する操作を指し、この操作は、例えば回転操作よって選択された項目の決定を行う場合等に実行される。
【0065】
回転式入力装置1では、押圧操作に対して操作触感を付与する場合、押圧を検知した場合に加えて、押圧解除を検知した場合にも操作者に対して操作触感を付与するための動作を行うように構成されている。なお、押圧解除を検知した場合における動作は無くても構わないが、ボタン(機械的なクリック感を付与するものの一例)操作に似た操作触感を付与するためには、本実施形態のように、押圧を検知したタイミングと押圧解除を検知したタイミングで、操作触感を付与するための動作を行うのが好ましい。
【0066】
回転式入力装置1によって押圧操作に対して操作触感を付与する場合、例えば図7に示すように、押圧を検知すると、励磁コイル17に電圧を所定の期間印加して励磁コイル17に通電し、第1のヨークである支持台19を所定の期間磁化する。これにより、第2のヨークである回転操作体12が支持台19に吸着され、その後吸着解除されるという動作が行われるために、操作者にボタンを押下した場合と同様の触感(クリック感)が付与される。
【0067】
なお、励磁コイル17に電圧を印加する所定の期間は、特に限定されるものではないが、その期間があまりに長いと操作触感が得られないために、10ms以下とするのが好ましい。また、その期間があまりに短くても操作触感を得られなくなるために、1ms以上が好ましい。これらの時間は、前記所定の期間を変更しながら複数の人に触感を確かめてもらい、好ましいクリック感が得られる時間として実験的に得られたものである。また、ボタン操作によってペン先を出し入れ可能なボールペンにおいて、ペン先を出すためのボタン操作によって「カチャッ」といった触感が得られる時間(例えば8.4ms程度)も、押圧時に好ましい触感を与えるための前記所定の期間の目安となると考えられる。
【0068】
また、図7に示すように押圧操作後に行われる押圧解除を検知すると、励磁コイル17に電圧を所定の期間印加して励磁コイル17に通電し、第1のヨークである支持台19を所定の期間磁化する。これにより、第2のヨークが支持台19から離れる場合の触感を操作者に付与することができ、操作者はボタンの押圧操作に似た、よりリアルな触感を得ることができる。
【0069】
なお、図7は、操作者に押圧操作(その後の押圧解除も含む)に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターン例を示すグラフである。図7の横軸は時間を示し、図7の縦軸は励磁コイル17に印加する電圧を示す。また、図7に示す例では、励磁コイル17に印加する電圧が矩形波で与えられる構成となっているが、これに限定されず、矩形波の場合より電力効率の向上が望める正弦波や、複数の波形を組み合わせた合成波を励磁コイル17に印加する構成等としてもよい。
【0070】
また、図7に示す例では、押圧を検知した場合と押圧解除を検知した場合とで同一パターンの電圧を付与して、それぞれの場合に操作触感を付与する構成となっている。しかし、回転操作体12を押圧する動作と、押圧した後に押圧解除を行う動作とは異なる動作であるために、押圧を検知した場合と押圧解除を検知した場合とで異なるパターンの電圧を印加した方がよりリアルな操作触感が得られる場合もあり、それぞれの場合で異なる電圧パターンを印加するようにしても構わない。
【0071】
また、図7に示す例では、押圧及び押圧解除に対する触感を与える場合に、支持台19に対する回転操作体12の吸着及び吸着解除が所定の期間の間に1回行われる構成を示した。しかし、押圧及び押圧解除に対する触感を与える場合に、図8に示すように、支持台19に対する回転操作体12の吸着及び吸着解除が所定の期間の間に複数回行われる構成としてもよい。なお、図8は、操作者に押圧操作(その後の押圧解除も含む)に対する操作触感を付与するために励磁コイルに印加される電圧のパターンの他例を示すグラフである。図8の横軸は時間を示し、図8の縦軸は励磁コイル17に印加する電圧を示す。
【0072】
図8に示す例では、操作者による回転操作体12の押圧が検知されると、所定の期間(例えば10ms以下)の間に所定のデューティ比(図8では50%であるが適宜変更可能である)の矩形波電圧が3周期に亘って印加されるようになっている。これにより、支持台19に対する回転操作体12の吸着及び吸着解除が所定の期間の間に3回行われ、操作者は押圧操作に対する触感を得られる。
【0073】
また、図8に示す例では、操作者による押圧解除が検知されると、押圧を検知した場合と同様に、所定のデューティ比(図8では50%であるが適宜変更可能である)の矩形波電圧が3周期に亘って印加されるようになっており、これにより、操作者は押圧解除の触感を得られる。なお、図8に示す例では、押圧を検知した場合と、押圧解除を検知した場合とで、励磁コイル17に印加される電圧のパターンが異なっている(詳細に、周波数が異なっている)。
【0074】
ここで、本実施形態の回転式入力装置において、操作者が回転操作体を押圧操作した場合に、操作者に操作触感を付与する動作フローについて図9を参照しながら説明する。まず、操作者が回転操作体12を押圧したか否かの確認が制御部3によって行われる(ステップS11)。この確認は、感圧センサ23から出力される情報によって確認される。回転操作体12の押圧が確認されない場合(ステップS11でNo)には、引き続き回転操作体12の押圧が行われたか否かが確認される。
【0075】
制御部3は、操作者が回転操作体12を押圧したことを確認すると(ステップS11でYes)、励磁コイル17に所定パターンの電圧(例えば図7、8参照)を印加して励磁コイルを駆動し、操作者に操作触感を与える(ステップS12)。操作者に回転操作体12の押圧検知に基づく操作触感を付与した後、回転操作体12の押圧解除が行われたか否かが確認される(ステップS13)。
【0076】
回転操作体12の押圧解除が確認されない場合(ステップS13でNo)には、引き続き回転操作体12の押圧解除が行われたか否かが確認される。制御部3は、操作者が回転操作体12の押圧を解除したことを確認すると(ステップS13でYes)、励磁コイル17に所定パターンの電圧(例えば図7、8参照)を印加して励磁コイルを駆動し、操作者に操作触感を与える(ステップS14)。
【0077】
3.上記触感付与方法の効果
以上のように、本実施形態の触感付与方法によれば、バネ等を用いて構成される機械的な機構を入力装置に実装することなく、回転操作に対するリアルな触感を付与できる。また、本実施形態の触感付与方法によれば、操作ボタンを入力装置に実装することなく、押圧操作に対するリアルな触感を付与できる。
【0078】
(その他)
以上に示した実施形態は、本発明が適用される回転式入力装置、及び、入力装置における触感付与方法の例示であって、本発明が適用される範囲は以上に示した構成に限定される趣旨ではない。
【0079】
例えば、以上に示した実施形態においては、回転操作体12の回転角(回転開始位置を基準とする相対的な回転角)を得るにあたって光学式エンコーダを用いた。しかし、この構成に限らず、光源部及び受光部を有さない機械式エンコーダを用いても構わない。図10は、回転操作体12の相対的な回転角を得るために用いられる機械式エンコーダの一例を説明するための図で、図10(a)はこの機械式エンコーダが回転式入力装置に設けられた場合の回転式入力装置の構成を示す概略断面図、図10(b)はこの機械式エンコーダを構成する電極付きFPCの構成を示す概略平面図である。
【0080】
図10に示すように、機械式エンコーダ30は、中央部に開口を有する円板状に形成されて回転操作体12に固着される絶縁性の支持部31と、導電性及び弾性を有して支持部31に固着される摺動片32と、励磁コイル17の上部に固定配置される電極付きFPC33と、を備える。電極付きFPC33は、より詳細には、上面に複数の正極331と負極332とを有すると共に中央部に開口333を有する円板状部33aと、円板状33aから延出して電気信号のやりとりを行うためのケーブル部33bと、を有する。
【0081】
円板状部33aに設けられる複数の正極331と複数の負極332とは、それぞれ異なる径を有する同心円上に配置されている。図10に示す例では、内側に正極331、外側に負極332が配置される構成となっているが、勿論この逆でもよい。回転操作体12が回転すると、支持部31と共に摺動片32が回転し、摺動片32と電極331、332との接触と非接触とが交互に生じるために、回転操作体12の回転角を検知できる。
【0082】
また、以上に示した実施形態においては、回転操作体12の回転を検知する回転検知手段(光学式エンコーダ24)によって回転操作体12の回転角を相対的に検知して、それに基づいて操作触感を付与する構成とした。しかし、この構成に限らず、回転検知手段によって回転操作体12の絶対位置を把握し、これに基づいて操作触感を付与するようにしても構わない。このような回転検知手段の構成として、例えば図11に示すような光学式エンコーダ40や図12に示すような機械式エンコーダ50等が挙げられる。
【0083】
なお、図11は、回転操作体12の絶対位置を把握可能な光学式エンコーダの構成の一例を説明するための図で、図11(a)はこの光学式エンコーダが回転式入力装置に設けられた場合の回転式入力装置の構成を示す概略断面図、図11(b)はこの光学式エンコーダを構成する光源部及び受光部の構成を示す概略平面図、図11(c)はこの光学式エンコーダを構成する遮蔽板の構成を示す概略平面図である。また、図12は、回転操作体12の絶対位置を把握可能な機械式エンコーダの構成の一例を説明するための図で、図12(a)はこの機械式エンコーダが回転式入力装置に設けられた場合の回転式入力装置の構成を示す概略断面図、図12(b)はこの機械式エンコーダを構成する電極付きFPCの構成を示す概略平面図である。
【0084】
図11に示すように、光学式エンコーダ40は、中央部に開口を有すると共に外周端下部側に鍔部41aを有し、回転操作体に固着される略円板状の遮蔽板41と、鍔部41aを挟むように配置される光源部42及び受光部43と、光源部42及び受光部43と電気信号のやりとりを行うためのFPC44と、を備える。光源部42は一列に複数(図11の例では4つ)の発光素子42aが並べられており、光源部42の下部側に配置される受光部43にも、複数の発光素子42aのそれぞれに対応するように、複数(図11の例では4つ)の受光素子43aが一列に並べられている。
【0085】
遮蔽板41の鍔部41aには、光を透過する透過孔(図11(c)における白丸が該当。なお、黒丸は光が遮断されることを示す)が円周方向にそれぞれ異なるパターンで形成されている。これにより、回転操作体12の回転方向の位置が異なると、受光部43の複数の受光素子43aから出力される信号の組み合わせが異なったものとなるために、回転操作体12の回転方向の絶対位置を検出することが可能となる。
【0086】
図12に示すように、機械式エンコーダ50は、中央部に開口を有する円板状に形成されて回転操作体12に固着される絶縁性の支持部51と、導電性及び弾性を有して支持部51に固着される摺動片52と、励磁コイル17の上部に固定配置される電極付きFPC53と、を備える。電極付きFPC53は、より詳細には、上面に、リング形状(半径方向に平行な方向の幅は一定)の正極531と、半径方向に平行な方向の幅が最も広い位置から、円周方向左周りに移動するにつれて半径方向に平行な方向の幅が徐々に狭くなる負極532と、を有すると共に中央部に開口533を有する円板状部53aと、円板状53aから延出して電気信号のやりとりを行うためのケーブル部53bと、を有する。
【0087】
回転操作体12が回転すると、支持部51と共に摺動片52が回転し、摺動片52と接触する正極531の面積が変動(摺動片32と負極532と接触する面積は一定)するために、回転操作体12の回転方向の絶対位置を検出することが可能となる。
【0088】
また、回転操作体12の回転操作に対して操作触感を付与するタイミングは、回転操作体12の回転角や絶対位置ではなく、速度や加速度等に基づいて付与しても構わない。また、以上では、選択項目の切替えに合わせて回転操作に対する触感を付与する例を示したが、これに限らず、回転操作が検出されている場合に、一定の周期で回転操作に対する触感を付与するような構成としてもよい(これは、図5の横軸が時間である場合が該当する)。
【0089】
また、以上に示した実施形態では、回転操作体12自体を第2のヨークとしたが、これに限定されるものではなく、回転操作体12とは別の磁性体を第2のヨークとし、例えば当該磁性体を回転操作体12の下面に固着してもよい。この場合には、回転操作体12は、磁性体でなくてもよい。
【0090】
また、以上に示した実施形態では、支持台19を第1のヨークとしたが、これに限定されるものではなく、支持台19とは別の磁性体を第1のヨークとし、例えば、当該磁性体を支持台19に収容してもよい。この場合には、支持台19は、磁性体でなくてもよい。
【0091】
その他、以上に示した実施形態では、回転式入力装置1が回転操作と押圧操作とを行える構成としたが、回転操作のみが行える構成であっても構わない。また、以上に示した王圧操作に対する操作触感の付与方法は、回転式入力装置に限らず、他の入力装置(回転式でない入力装置)にも適用できるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えば、携帯電話機、携帯型オーディオプレーヤ、PDA(Personal Digital Assistance)等の携帯型端末装置、テレビジョン受像機等のAV機器、パーソナルコンピュータ等に備えられる回転式入力装置に対して好適である。
【符号の説明】
【0093】
1 回転式入力装置
3 制御手段
10 ビス(回転軸)
12 回転操作体(第2のヨーク)
17 励磁コイル
19 支持台(第1のヨーク)
23 感圧センサ(押圧検知手段)
24、40 光学式エンコーダ(回転検知手段)
30、50 機械式エンコーダ(回転検知手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、
前記第1のヨークに対して回転可能に支持されると共に、前記第1のヨークの磁化状態によって回転軸の軸方向の位置が変化する第2のヨークと、
操作者による前記第2のヨークに対する回転操作を検知する回転検知手段と、
前記回転検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする回転式入力装置。
【請求項2】
操作者による、前記第2のヨークに対する前記軸方向に略平行な方向への押圧操作を検知する押圧検知手段を更に備え、
前記制御手段は、前記押圧検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に押圧した触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御することを特徴とする請求項1に記載の回転式入力装置。
【請求項3】
操作者に押圧した触感を付与する場合、前記第1のヨークに対する前記第2のヨークの吸着及び吸着解除が所定の期間の間に少なくとも1回行われるように、前記制御手段は前記励磁コイルへの通電を制御することを特徴とする請求項2に記載の回転式入力装置。
【請求項4】
前記所定の期間は、1ms以上、10ms以下であることを特徴とする請求項3に記載の回転式入力装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記押圧検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に押圧を解除した触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の回転式入力装置。
【請求項6】
操作者に押圧した触感を付与する場合と、操作者に押圧を解除した触感を付与する場合とで、前記制御部は、前記励磁コイルへの通電について異なる制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の回転式入力装置。
【請求項7】
前記第2のヨークは、前記軸方向に弾性変形する弾性部材を介して前記第1のヨークに支持されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の回転式入力装置。
【請求項8】
前記回転検知手段は、光学式エンコーダ、又は、機械式エンコーダであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の回転式入力装置。
【請求項9】
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、
磁化された前記第1のヨークに吸着可能であると共に、前記第1のヨークに対して回転可能に支持される第2のヨークと、
を備える入力装置における触感付与方法であって、
操作者による前記第2のヨークに対する回転操作を検知するステップと、
操作者による前記回転操作に関する検知情報に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与するか否かを判断するステップと、
操作者に回転操作に対する触感を付与すると判断した場合に、前記励磁コイルに所定のパターンで電圧を印加するステップと、
を備えることを特徴とする入力装置における触感付与方法。
【請求項10】
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、
磁化された前記第1のヨークに吸着可能に前記第1のヨークに対向配置される第2のヨークと、
を備える入力装置における触感付与方法であって、
操作者による前記第2のヨークに対する押圧を検知するステップと、
操作者による前記押圧を検知した場合に、操作者に押圧した触感を付与すべく、前記励磁コイルに所定のパターンで電圧を印加するステップと、
を備えることを特徴とする入力装置における触感付与方法。
【請求項11】
操作者による前記第2のヨークの押圧解除を検知するステップと、
操作者による前記押圧解除を検知した場合に、操作者に押圧を解除した触感を付与すべく、前記励磁コイルに所定のパターンの電圧を印加するステップと、
を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の入力装置における触感付与方法。
【請求項1】
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、
前記第1のヨークに対して回転可能に支持されると共に、前記第1のヨークの磁化状態によって回転軸の軸方向の位置が変化する第2のヨークと、
操作者による前記第2のヨークに対する回転操作を検知する回転検知手段と、
前記回転検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする回転式入力装置。
【請求項2】
操作者による、前記第2のヨークに対する前記軸方向に略平行な方向への押圧操作を検知する押圧検知手段を更に備え、
前記制御手段は、前記押圧検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に押圧した触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御することを特徴とする請求項1に記載の回転式入力装置。
【請求項3】
操作者に押圧した触感を付与する場合、前記第1のヨークに対する前記第2のヨークの吸着及び吸着解除が所定の期間の間に少なくとも1回行われるように、前記制御手段は前記励磁コイルへの通電を制御することを特徴とする請求項2に記載の回転式入力装置。
【請求項4】
前記所定の期間は、1ms以上、10ms以下であることを特徴とする請求項3に記載の回転式入力装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記押圧検知手段から出力される信号に基づいて、操作者に押圧を解除した触感を付与すべく前記励磁コイルへの通電を制御することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の回転式入力装置。
【請求項6】
操作者に押圧した触感を付与する場合と、操作者に押圧を解除した触感を付与する場合とで、前記制御部は、前記励磁コイルへの通電について異なる制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の回転式入力装置。
【請求項7】
前記第2のヨークは、前記軸方向に弾性変形する弾性部材を介して前記第1のヨークに支持されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の回転式入力装置。
【請求項8】
前記回転検知手段は、光学式エンコーダ、又は、機械式エンコーダであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の回転式入力装置。
【請求項9】
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、
磁化された前記第1のヨークに吸着可能であると共に、前記第1のヨークに対して回転可能に支持される第2のヨークと、
を備える入力装置における触感付与方法であって、
操作者による前記第2のヨークに対する回転操作を検知するステップと、
操作者による前記回転操作に関する検知情報に基づいて、操作者に回転操作に対する触感を付与するか否かを判断するステップと、
操作者に回転操作に対する触感を付与すると判断した場合に、前記励磁コイルに所定のパターンで電圧を印加するステップと、
を備えることを特徴とする入力装置における触感付与方法。
【請求項10】
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電により磁化される第1のヨークと、
磁化された前記第1のヨークに吸着可能に前記第1のヨークに対向配置される第2のヨークと、
を備える入力装置における触感付与方法であって、
操作者による前記第2のヨークに対する押圧を検知するステップと、
操作者による前記押圧を検知した場合に、操作者に押圧した触感を付与すべく、前記励磁コイルに所定のパターンで電圧を印加するステップと、
を備えることを特徴とする入力装置における触感付与方法。
【請求項11】
操作者による前記第2のヨークの押圧解除を検知するステップと、
操作者による前記押圧解除を検知した場合に、操作者に押圧を解除した触感を付与すべく、前記励磁コイルに所定のパターンの電圧を印加するステップと、
を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の入力装置における触感付与方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−95825(P2011−95825A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246540(P2009−246540)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]