説明

回転式電子部品

【課題】薄型の回転式電子部品であってもクリック機構を簡単な構造で容易に取り付けることができ、厚み及び外形寸法が大型化することもない回転式電子部品を提供する。
【解決手段】表面に摺接パターン45,47を露出した状態でその周囲に枠部材80を成形し、且つ枠部材80の底面側に金属板製の取付板20を取り付けてなる基板体10と、基板体10の摺接パターン45,47を露出している表面側に載置され、この表面から離れる方向に向かって突出するクリック弾接部109を設けてなる金属板製のクリック板100と、クリック弾接部109が弾接するクリック係合部125を設け且つ摺接パターン45,47に摺接する摺動子140を取り付け、回動自在に設置される回転つまみ120とを具備し、基板体10から取付板20に設けた結合部25を露出させ、クリック板100に結合部25を結合する被結合部111を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式電子部品の中には、その厚みの薄型化や外形の小型化を図ったものがある。例えば特許文献1に示す回転式電子部品は、金属板製の取付板上にフレキシブル回路基板を載置すると共に、前記取付板とフレキシブル回路基板の周囲を囲む部分に樹脂製の枠部材をモールド成形することによって取付板とフレキシブル回路基板とを一体化し、このフレキシブル回路基板の摺接パターンを露出した面上に摺動子を取り付けた回転つまみを設置することで構成されている。このように構成すれば、基板側の部材の厚みを、取付板とフレキシブル回路基板の厚みだけにすることができるので、その厚みの薄型化を図ることができ、好適である。
【0003】
しかしながら上記したような薄型の回転式電子部品にクリック機構を設けようとした場合、回転式電子部品が薄型で且つ小型であるためにクリック機構の取り付けが困難であった。またたとえクリック機構を取り付けた場合でもその取付構造が複雑となって部品点数が増加し、取付作業が煩雑になり、さらには回転式電子部品の厚み及び外形寸法の大型化を招く恐れがあった。
【特許文献1】特開2000−183568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、薄型の回転式電子部品であってもクリック機構を簡単な構造で容易に取り付けることができ、その厚み及び外形寸法が大型化することもない回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の発明は、表面に摺接パターンを露出した状態でその周囲に枠部材を成形し、且つ底面側に金属板製の取付板を取り付けてなる基板体と、前記基板体の前記摺接パターンを露出している表面側に載置され、この表面から離れる方向に向かって突出するクリック弾接部を設けてなる金属板製のクリック板と、前記クリック弾接部が弾接するクリック係合部を設け且つ前記摺接パターンに摺接する摺動子を取り付け、回動自在に設置される回転つまみとを具備し、前記基板体から前記取付板に設けた結合部を露出させ、前記クリック板に前記結合部を結合する被結合部を設けたことを特徴とする回転式電子部品にある。なお取付板は基板体の底面側(摺接パターンの底面側)に取り付けられてはいるが、必ずしも取付板が基板体の底面に露出していなくても良い。即ち本発明は、枠部材が取付板の底面をも覆うように設けられている構成も含む概念である。
【0006】
本願請求項2に記載の発明は、前記基板体は、取付板に前記摺接パターンを形成してなる回路基板を載置すると共に、前記取付板及び回路基板の周囲を前記枠部材でインサート成形してなる構造であることを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品にある。
【0007】
本願請求項3に記載の発明は、前記基板体は、前記摺接パターンが導電金属板からなると共に、この導電金属板を前記枠部材でインサート成形し、成形した枠部材の底面側に前記取付板を取り付けてなる構造であることを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品にある。
【0008】
本願請求項4に記載の発明は、前記クリック板の被結合部と前記取付板の結合部間は、スナップイン係合されていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の回転式電子部品にある。
【0009】
本願請求項5に記載の発明は、前記クリック板と前記基板体間の位置決めを行う位置決め手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の内の何れかに記載の回転式電子部品にある。位置決め手段として具体的には、前記クリック板に前記基板体の対向する両外周側辺を挟むように設けられる一対のガイド片が好適である。
【0010】
本願請求項6に記載の発明は、前記取付板には、前記摺接パターンを露出している表面から突出して前記回転つまみを回転自在に軸支する軸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の内の何れかに記載の回転式電子部品にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、基板体の表面側にクリック板を載置し、このクリック板に設けた被結合部に取付板に設けた結合部を結合することでクリック板を基板体に取り付ける構造なので、クリック板以外に部品点数が増加することなく、取付構造及び取付作業が簡単で、厚みや外形寸法が大型化することもないクリック機構付きの回転式電子部品を提供できる。また取付板とクリック板は金属板製なので、何れか一方をアースすることで両者をアース構造とすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、取付板を枠部材と一体に成形しているので、その上にクリック板と回転つまみを取り付けるだけで容易にクリック機構付きの回転式電子部品を組み立てられる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、金属板製の摺接パターンを用いた場合でも、枠部材の底面側に取り付けた取付板に設けた結合部をクリック板の被結合部に結合するだけで、容易にクリック機構付きの回転式電子部品を組み立てられる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、クリック板をスナップイン係合によって容易に取り付けることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、位置決め手段を設けたので、結合部と被結合部間の結合だけでは生じる恐れがあるクリック板のがたつきを確実に防止することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、回転つまみを容易に回動自在に軸支できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を適用した回転式電子部品(以下「回転式スイッチ」という)1−1の分解斜視図、図2は組み立てた回転式スイッチ1−1の概略側断面図である。図1に示すようにこの回転式スイッチ1−1は、基板体10の上にクリック板100と回転つまみ120とを設置して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0018】
図3は基板体10を構成する各部材(枠部材80を除く)の分解斜視図である。同図に示すように基板体10は、取付板20上に回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)40を載置し、フレキシブル回路基板40の3つの端子接続パターン51上にそれぞれ金属端子70の一端を載置した上で、取付板20及びフレキシブル回路基板40の周囲(外周)に図1に示すように樹脂製の枠部材80を成形することによって構成されている。なお枠部材80を成形する際、端子接続パターン51と金属端子70は圧接接続される。
【0019】
取付板20は図3に示すように薄い金属板(例えば厚み0.3mm)によって構成されており、その中央に筒状に絞って突出させた軸部21を設け、またその外周の左右両側2ヶ所ずつから、それぞれ舌片状(帯状)の一対の係止片23と結合部25と取付部27とを突出して設け、さらに一方の取付部27近傍の外周から1つの舌片状の係止片29を突出して構成されている。係止片23はその先端側の面を取付板20の面よりも少し軸部21の突出側に平行移動して突出するように屈曲されている。結合部25は取付板20の面と同一面の平面状であり略矩形状に形成されている。取付部27も取付板20の面と同一面の平面状であり略矩形状で長尺に形成されている。係止片29はその先端を軸部21の突出側に略直角に屈曲させている。
【0020】
フレキシブル回路基板40は可撓性を有する略円形の合成樹脂フイルム(この実施形態ではポレエチレンテレフタレートフイルムを用いているが、他の各種熱可塑性又は熱硬化性の合成樹脂フイルムを用いてもよい)41の中央に貫通する挿通孔43を設け、挿通孔43の周囲の上面に一対の同心円状の摺接パターン(以下「オンオフパターン」という)45,45を設けると共に、オンオフパターン45,45の外周側に一本の円弧状の摺接パターン(以下「コモンパターン」という)47を設け、さらに合成樹脂フイルム41の一辺に3つの端子接続パターン51を設け、各端子接続パターン51と前記オンオフパターン45,45及びコモンパターン47とをそれぞれ連結する連結パターン55,55,59を設けて構成されている。上記各パターンは導電ペースト(銀ペーストやカーボンペースト等)の印刷によって形成されているが、その方法以外に金属箔のエッチングなどによって形成してもよい。また各端子接続パターン51の間には樹脂挿通用の貫通する樹脂挿通孔61が設けられている。
【0021】
3本の金属端子70は長尺平板状の鉄板製であり、その一端近傍に抜け防止用の幅方向に突出する突起を設けた当接部71を設けて構成されている。
【0022】
そして基板体10を製造するには、まず取付板20の上にフレキシブル回路基板40を載置すると同時に、フレキシブル回路基板40の各端子接続パターン51の上に各金属端子70の当接部71を当接する。このとき軸部21は挿通孔43に挿通される。またフレキシブル回路基板40の端子接続パターン51を設けた部分の底面(下面)側には取付板20は位置しない。なお実際には各金属端子70の当接部71の反対側の端部は図示しないリードフレームに一列に接続されており、下記する枠部材80成形後に切断され各々独立にされる。
【0023】
そしてこれら取付板20とフレキシブル回路基板40と金属端子70とを図示しない金型によって挟持し、取付板20とフレキシブル回路基板40の周囲の部分に形成される金型のキャビティー(枠部材80と同一形状)内に高温高圧の溶融成形樹脂(例えばポリアミド樹脂等)を圧入して満たし、冷却後に金型を取り外せば、図1に示すように取付板20とフレキシブル回路基板40の周囲に枠部材80が成形された基板体10が完成する。
【0024】
このとき枠部材80の底面(下面)は図1,図2に示すように、取付板20の底面(下面)と同一面となっており(即ち取付板20の底面は露出しており)、またフレキシブル回路基板40の端子接続パターン51を形成している部分の底面には取付板20がなく、その上下を枠部材80が挟持し、これによって端子接続パターン51と金属端子70の当接部71間が確実に電気的に接続されている。また枠部材80の上面(フレキシブル回路基板40のパターン形成面側)には、フレキシブル回路基板40のオンオフパターン45,45とコモンパターン47が露出しており、その周囲を囲むフレキシブル回路基板40の表面上には枠部材80が設けられている。枠部材80の一辺からは3本の金属端子70が突出し、また金属端子70を突出しない枠部材80の対向する左右両側壁からは一対ずつの結合部25と取付部27(図1では何れも一方のみ示す)とが突出している(図1では金属端子70と取付部27とを後工程で下方向に折り曲げた状態を示しているが、枠部材80を成形したときは何れも枠部材80の面と同一面方向に直線状に突出している)。なお取付板20の前記係止片23と係止片29は、何れも枠部材80内に埋設され、取付板20と枠部材80間を強固に固定している。なお枠部材80の対向する左右両側壁から突出する一対の結合部25の突出長さは短く、下記するクリック板100の厚みよりも少し長い程度である。
【0025】
図4はクリック板100を示す図であり、図4(a)は展開平面図、図4(b)は側面図、図4(c)は平面図である。同図及び図1に示すようにクリック板100は、弾性金属板(例えばリン青銅板製)を略円形に形成し、中央に円形の開口101を設けると共に開口101の内周に沿うように半円弧状のクリックアーム103と半円弧状のアーム105とを同心円状に設けて構成されている。クリックアーム103とアーム105とはそれらの両端が開口101の内側の左右対称位置にある基部107に連結されており、何れも基部107の部分を折り曲げることで上方向(基板体10から離れる方向)に傾斜している。クリックアーム103の中央には、上方(基板体10から離れる方向)に向かって略U字状に屈曲して突出するクリック弾接部109が設けられている。クリック板100の外周の略左右対称の位置(前記基板体10の一対の結合部25に対向する位置)には、外方に向けて舌片状に突出して略垂直に下方向に折り曲げられる一対の被結合部111が設けられている。被結合部111はその内部に矩形状の開口113が設けられ、前記基板体10の結合部25を挿入して結合される構成となっている。これら被結合部111は上記形状を有することで、先端側が外方(クリック板100からその面方向に離れる方向)に向けて所定の弾性をもって開く構造(結合部25をスナップイン係合する構造)となっている。またクリック板100の外周の略左右対称の所定位置には、外方に向けて舌片状に突出して略垂直に下方向に折り曲げられる一対の位置決め手段(以下「ガイド片」という)115が設けられている。ガイド片115の折り曲げ部分にはその折り曲げを容易とする開口117が設けられている。両ガイド片115は前記基板体10の対向する両外周側辺(この実施形態では金属端子70の突出する辺の両側の対向する外周側辺)を挟む位置に設けられている。
【0026】
図5は摺動子140を取り付けた回転つまみ120を下面側から見た斜視図である。図1,図5に示すように回転つまみ120は、合成樹脂(例えばポリアミド樹脂)を略円板状に成形して構成されており、その中央には前記基板体10の軸部21を回動自在に挿通する挿通部121が設けられ、またその下面の挿通部121の周囲の面を摺動子取付面123とし、さらに摺動子取付面123の外周にリング状の凹凸からなるクリック係合部125を設けて構成されている。摺動子取付面123には摺動子140が取り付けられている。摺動子140は弾性金属板(例えばリン青銅板)製であり、リング状の中央基部141から放射状に3つの扇状の基部143を突出し、各基部143から同一円周方向に向けて2対ずつの摺動冊子145を突出して構成されている。2対ある摺動冊子145の内のそれぞれ一方は前記フレキシブル回路基板40に設けたオンオフパターン45,45に摺接する位置に、それぞれ他方はコモンパターン47に摺接する位置になるように設置されている。この摺動子140は各基部143に設けた小孔に前記摺動子取付面123から突出する3本の小突起127を挿入してその先端を熱カシメすることで摺動子取付面123に固定されている。
【0027】
そしてこの回転式スイッチ1−1を組み立てるには、図1,図2に示すように、基板体10の上にクリック板100を載置し、その際クリック板100の一対の被結合部111を基板体10の結合部25にスナップイン係合によって結合する。即ちこのスナップイン係合は、クリック板100を基板体10上に載置する際に基板体10の両結合部25が両被結合部111を開くように湾曲変形させた後に開口113に係合させて被結合部111が元の状態に戻ることで行われる。このとき同時にクリック板100の一対のガイド片115が、基板体10の対向する両外周側辺を挟むことで、クリック板100の面方向のがたつきを確実に防止する。
【0028】
次にクリック板100の上に、摺動子140を取り付けた回転つまみ120を載置し、回転つまみ120の挿通部121に基板体10の軸部21を回動自在に挿通し、軸部21の先端をかしめれば、回転式スイッチ1−1が完成する。このとき摺動子140の摺動冊子145はオンオフパターン45,45とコモンパターン47に弾接し、クリック板100のクリック弾接部109は回転つまみ120のクリック係合部125に弾接している。
【0029】
そして回転つまみ120を回転すれば、摺動子140がオンオフパターン45,45とコモンパターン47上を摺動して各金属端子70間のオンオフ出力を変化する。同時に、クリック弾接部109がクリック係合部125の凹凸に弾接していくことでクリック感覚を生じる。また取付板20とクリック板100は金属板製なので、取付板20をアースしておけば(このとき取付板20はアース板となる)、結合部25と被結合部111の結合によって電気的に接続されているクリック板100もアースされ、これによってフレキシブル回路基板40の露出する表面上に侵入しようとする静電気を取付板20及びクリック板100によって効果的に防止できる。静電気は外部から侵入してくる場合の他、この回転式スイッチ1−1を構成する各部品間の摺動によっても生じる場合がある。取付板20のアースは、例えば取付部27をアースすることによって行う。なお取付板20の代わりにクリック板100側をアースしても良い。
【0030】
以上のようにこの回転式スイッチ1−1は、表面に摺接パターン45,47を露出した状態でその周囲に枠部材80を成形し、且つ枠部材80の底面側に金属板製の取付板20を取り付けてなる基板体10と、基板体10の摺接パターン45,47を露出している表面側に載置され、この表面から離れる方向に向かって突出するクリック弾接部109を設けてなる金属板製のクリック板100と、クリック弾接部109が弾接するクリック係合部125を設け且つ摺接パターン45,47に摺接する摺動子140を取り付け、回動自在に設置される回転つまみ120とを具備し、基板体10から取付板20に設けた結合部25を露出させ、クリック板100に結合部25を結合する被結合部111を設けることで構成されている。即ちこの回転式スイッチ1−1によれば、基板体10の表面側にクリック板100を載置する際にこのクリック板100に設けた被結合部111に取付板20に設けた結合部25を結合することでクリック板100を基板体10に取り付ける構造なので、クリック板100以外に部品点数が増加することなく、取付構造及び取付作業が簡単で、厚みや外形寸法が大型化することもないクリック機構付きの回転式スイッチ1−1を提供できる。なおクリック板100の基板体10への取り付けは、結合部25と被結合部111間で行われるので、回転つまみ120の回動に何ら支障が生じることはない。またこの実施形態においては、取付板20自体にクリック弾接部を設けず、別途クリック板100を設置してこれにクリック弾接部109を設けたので、クリック板100を取付板20とは別の弾性の高い材料で構成でき、良好なクリック感覚が得られる。
【0031】
またこの実施形態では基板体10を、取付板20にフレキシブル回路基板40を載置したその周囲を枠部材80でインサート成形して構成したので、その上にクリック板100と回転つまみ120を取り付けるだけで容易にクリック機構付きの回転式スイッチ1−1を組み立てることができる。
【0032】
またこの実施形態においては、クリック板100の被結合部111と取付板20の結合部25間をスナップイン係合する構造としたので、クリック板100を容易に基板体10に取り付けることができるばかりか、結合部25は基板体10から少しだけ突出(露出)させるだけでクリック板100の被結合部111を係合できるので、基板体10の外形寸法の小型化が図れる。
【0033】
一方この実施形態において、クリック板100の被結合部111を基板体10の結合部25にスナップイン係合するだけでなく、さらにガイド片115によってクリック板100の基板体10に対する位置決めを行ったのは以下の理由による。即ち、係合部25と被係合部111の係合はスナップイン係合であり、両者をカシメる場合に比べてその取付強度が弱くなってがたつきが生じる恐れがある。そこでこのがたつきを防止するため、前記スナップイン係合の他にガイド片115による位置決めガイドを行い、基板体10に対するクリック板100のがたつきを確実に防止したのである。なお例えば係合部25の長さを長く形成して被係合部111の開口113に挿入し、係合部25を折り曲げる等によって両者をカシメた場合、両者間の固定は確実になるが係合部25を長くして折り曲げる分基板体10の外形寸法が大きくなるばかりか、カシメ作業が煩雑になってしまう。
【0034】
図6は本発明を適用した他の回転式電子部品(以下「回転式スイッチ」という)1−2の分解斜視図である。同図に示す回転式スイッチ1−2において、前記図1〜図5に示す回転式スイッチ1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図5に示す実施形態と同じである。この実施形態において前記実施形態と相違する点は、基板体10−2の構造のみである。即ちクリック板100と回転つまみ120と摺動子140の構成は全く同一である。
【0035】
一方基板体10−2は、摺接パターン(オンオフパターン45−2,45−2とコモンパターン47−2)が導電金属板からなると共に、この導電金属板を枠部材80−2でインサート成形し、成形した枠部材80−2の底面側に取付板20−2を取り付けた構造となっている。以下各構成部品について説明する。
【0036】
図8はオンオフパターン45−2,45−2とコモンパターン47−2と金属端子70−2とを構成する導電金属板を示す斜視図である。同図に示すように各導電金属板は、オンオフパターン45−2とこのオンオフパターン45−2に連結部55−2によって接続される金属端子70−2とを一体に形成した一対の導電金属板と、コモンパターン47とこのコモンパターン47に連結部57−2によって接続される金属端子70−2とを一体に形成した導電金属板とによって構成されている。そしてこれら導電金属板を金型内に設置し、金型内に形成された枠部材80−2と同一形状のキャビティー内に溶融成形樹脂を注入することで、枠部材80−2内に各導電金属板をインサート成形する。このとき各導電金属板のオンオフパターン45−2及びコモンパターン47−2の表面を枠部材80−2の表面に露出し、また各導電金属板の金属端子70−2を枠部材80−2の外周側面の1辺から突出させる。なお突出した各金属端子70−2は、枠部材80−2成形後に、枠部材80−2から突出したところで図6,図8に示すように下方向に略直角に折り曲げられる。枠部材80−2の中央には下記する取付板20−2の軸部21−2を挿入する円形の貫通する挿入部81−2が設けられ、また枠部材80−2の左右両側辺(金属端子70−2を突出する側辺の両側の側辺)と、もう一方の側辺(金属端子70−2を突出する側辺に対向する側の側辺)の、それぞれ下記する一対の係止片23−2と1つの係止片29−2に対向する位置には、それぞれ1つずつ小突起状(爪状)の取付板係止部83−2が設けられている(図6では1つのみ示す)。
【0037】
一方取付板20−2は薄い金属板(例えば厚み0.3mm)によって構成されており、その中央に筒状に絞って突出させた軸部21−2を設け、またその外周の左右両側から、それぞれ舌片状(帯状)の一対ずつの係止片23−2と結合部25−2と取付部27−2とを突出して設け、さらに1つの係止片29−2を突出して構成されている。両係止片23−2と係止片29−2はその先端部分を上方向に略直角に折り曲げ、折り曲げた部分に矩形状の開口からなる係止部231を設けている。結合部25−2は取付板20−2の面と同一面の平面状であり略矩形状に形成されている。取付部27−2は取付板20−2の面と同一面の平面状であり略矩形状で長尺に形成されており、その略中央部分を下方向に向けて略直角に折り曲げている。
【0038】
そして基板体10−2の組み立ては、前記枠部材80−2の底面(下面)側に取付板20−2を設置し、その際取付板20−2の軸部21−2を枠部材80−2の挿入部81−2に挿入し、同時に取付板20−2の各係止片23−2,23−2,29−2をそれぞれ枠部材80−2の各取付板係止部83−2にスナップイン係合することによって行う。このようにして組み立てられた基板体10−2を図7に示す。図7に示すようにこのとき一対の結合部25−2は、枠部材80−2の左右両側辺から少し外方に向けて露出(突出)している。
【0039】
そしてこの回転式スイッチ1−2を組み立てるには、図7に示す基板体10−2の上に図6に示すクリック板100を載置し、その際クリック板100の一対の被結合部111を基板体10−2の結合部25−2にスナップイン係合によって係合する。このとき同時にクリック板100の一対のガイド片115が、基板体10−2の対向する両外周側辺を挟むことで、クリック板100の面方向のがたつきが確実に防止される。次にクリック板100の上に、摺動子140を取り付けた回転つまみ120を載置し、回転つまみ120の挿通部121に基板体10−2の軸部21−2を回動自在に挿通し、その先端をかしめれば、この回転式スイッチ1−2が完成する。
【0040】
そして回転つまみ120を回転すれば、摺動子140がオンオフパターン45−2,45−2とコモンパターン47−2上を摺動して各金属端子70−2間のオンオフ出力を変化する。同時に、クリック弾接部109がクリック係合部125の凹凸に弾接していくことでクリック感覚を生じる。
【0041】
この実施形態のように金属板製の摺接パターン45−2,45−2,47−2を用いた場合でも、枠部材80−2の底面側に取り付けた取付板20−2に設けた結合部25−2をクリック板100の被結合部111に結合するだけで、容易にクリック機構付きの回転式スイッチ1−2を組み立てることができる。
【0042】
また前記実施形態と同様に、クリック板100以外に部品点数が増加することなく、取付構造及び取付作業が簡単で、厚みや外形寸法が大型化することもないクリック機構付きの回転式スイッチ1−2を提供できる。またこの実施形態においても、クリック板100の被結合部111と取付板20−2の結合部25−2間をスナップイン係合する構造としたので、クリック板100を容易に基板体10−2に取り付けることができるばかりか、結合部25−2は基板体10−2から少しだけ突出(露出)させるだけでクリック板100の被結合部111を係合できるので、基板体10−2の外形寸法の小型化が図れる。さらにこの実施形態においては、クリック板100の被結合部111を基板体10−2の結合部25−2にスナップイン係合するだけでなく、さらにガイド片115によってクリック板100の基板体10−2に対する位置決めを行ったので、がたつきを生じる恐れがなくなる。
【0043】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記各実施形態では結合部25(25−2)を枠部材80(80−2)の外周側辺に設けたが、例えば図9に示す基板体10−3のように、枠部材80の内部に開口(又は切り欠き)85を設けてその中に設けてもよい。また上記各実施形態では結合部25(25−2)と被結合部111とをスナップイン係合構造で結合したが、場合によっては半田付けや圧入やカシメ等の他の各種手段によって結合してもよい。また結合部25(25−2)の形状も種々の変形が可能である。また上記各実施形態のクリック板100に設けた被結合部111と基板体10に設けた結合部25の形状を逆転して両者を係合させてもよい。また上記実施形態のクリック板100に設けたガイド片115を基板体10,10−2,10−3側に設けてクリック板100の対向する両側辺を挟むように構成しても良い。また上記実施形態では摺接パターンとしてスイッチパターン(コードパターン)を用いたが、他の各種形状のスイッチパターンや抵抗体パターン等であっても良い。また上記実施形態では回路基板としてフレキシブル回路基板40を用いたが、硬質の回路基板を用いても良い。
【0044】
また上記図1〜図5に示す実施形態では薄型化のため、取付板20の底面を枠部材80の底面と同一面とすることで取付板20の底面を露出させたが、場合によっては取付板20の底面に所定の厚みの枠部材80を設けてもよい。また上記実施形態においては、クリック板100に設けるクリック弾接部109を1ヶ所としたが、例えば図1に示すクリック板100において、もう一方のアーム105の中央にも上方向に凸となるクリック弾接部を設けることでクリック弾接部を2ヶ所(またはそれ以上の複数個)としても良い。このように構成すれば、回転つまみ120を回転した際のクリック感覚がより強くなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】回転式スイッチ1−1の分解斜視図である。
【図2】回転式スイッチ1−1の概略側断面図である。
【図3】基板体10を構成する各部材(枠部材80を除く)の分解斜視図である。
【図4】クリック板100を示す図であり、図4(a)は展開平面図、図4(b)は側面図、図4(c)は平面図である。
【図5】摺動子140を取り付けた回転つまみ120を下面側から見た斜視図である。
【図6】回転式スイッチ1−2の分解斜視図である。
【図7】基板体10−2を示す斜視図である。
【図8】オンオフパターン45−2,45−2とコモンパターン47−2と金属端子70−2とを構成する導電金属板を示す斜視図である。
【図9】他の基板体10−3を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1−1 回転式スイッチ(回転式電子部品)
10 基板体
20 取付板
21 軸部
25 結合部
40 フレキシブル回路基板(回路基板)
41 合成樹脂フイルム
45 オンオフパターン(摺接パターン)
47 コモンパターン(摺接パターン)
70 金属端子
80 枠部材
100 クリック板
109 クリック弾接部
111 被結合部
115 ガイド片(位置決め手段)
120 回転つまみ
125 クリック係合部
140 摺動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に摺接パターンを露出した状態でその周囲に枠部材を成形し、且つ底面側に金属板製の取付板を取り付けてなる基板体と、
前記基板体の前記摺接パターンを露出している表面側に載置され、この表面から離れる方向に向かって突出するクリック弾接部を設けてなる金属板製のクリック板と、
前記クリック弾接部が弾接するクリック係合部を設け且つ前記摺接パターンに摺接する摺動子を取り付け、回動自在に設置される回転つまみとを具備し、
前記基板体から前記取付板に設けた結合部を露出させ、
前記クリック板に前記結合部を結合する被結合部を設けたことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項2】
前記基板体は、取付板に前記摺接パターンを形成してなる回路基板を載置すると共に、前記取付板及び回路基板の周囲を前記枠部材でインサート成形してなる構造であることを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品。
【請求項3】
前記基板体は、前記摺接パターンが導電金属板からなると共に、この導電金属板を前記枠部材でインサート成形し、成形した枠部材の底面側に前記取付板を取り付けてなる構造であることを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品。
【請求項4】
前記クリック板の被結合部と前記取付板の結合部間は、スナップイン係合されていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の回転式電子部品。
【請求項5】
前記クリック板と前記基板体間の位置決めを行う位置決め手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の内の何れかに記載の回転式電子部品。
【請求項6】
前記取付板には、前記摺接パターンを露出している表面から突出して前記回転つまみを回転自在に軸支する軸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の内の何れかに記載の回転式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−152963(P2008−152963A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337235(P2006−337235)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】