説明

回転操作型エンコーダ及びその製造方法

【課題】各種AV機器の音量調整、音質調整等に用いられる回転操作型エンコーダに関し、信号接点の摺動部分の幅のバラツキが小さく、小型化、高精度化可能な、回転操作型エンコーダを提供することを目的とする。
【解決手段】ケースにインサート成形される信号接点が打ち抜き加工後に押圧加工されて、略逆台形の断面形状を有するように成形することにより信号接点に生じた抜きだれを戻すことが出来るため、信号接点の上面の成形樹脂から露出している幅を所望の幅にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種AV機器の音量調整、音質調整等に用いられる回転操作型エンコーダ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器が普及し、特にカーステレオのメニュー切替や音量調整等の入力操作部に回転操作型エンコーダが多用されているなか、小型化、高精度化の要望が強くなっている。
【0003】
以下、従来の回転操作型エンコーダについて、図9〜図14を用いて説明する。
【0004】
図9は従来のインクリメンタル式の回転操作型エンコーダの断面図、図10は同分解斜視図であり、同図において、6は成形樹脂製の操作軸で、上部に操作用ダイアル(図示せず)と組み合わせるための切りかけ6Cが設けられた中央円柱部6Aとその外周の環状板部6Bから構成され、環状板部6Bの上面には放射状にクリック溝6Dが設けられ、環状板部6Bの下面にはかしめ用突起により摺動刷子8が固定されている。
【0005】
また、9は成形樹脂製の軸受で、上面視八角形の突部9Aとその周囲に設けられた上面視八角形の平板部9Bから構成され、上記突部9Aの中央部には平板部9Bに対し貫通するように円形孔9Cが設けられ、この円形孔9Cに上記操作軸6の中央円柱部6Aが組み合わされ、平板部9Bの下面に設けられたかしめ用突起でクリックばね10が固定されている。
【0006】
そして、このクリックばね10の中央に設けられた円形孔10Aに上記操作軸6の中央円柱部6Aが挿入されて組み合わされ、また、円形孔10Aの外周側にばね部10Bが設けられており、このばね部10Bは、上記環状板部6B上面のクリック溝6Dに弾接されている。
【0007】
そして、1は上方開口の成形樹脂製のケースで、窪み部1Bの底面中央に設けられた中央孔1Aで上記操作軸6の底面中央に設けられた円形突部と組み合わされ、操作軸6が回転可能に保持されており、また、図11のケース上面図で示すように、打ち抜き加工により作製されたコモン接点2および信号接点パターン3、4が中央孔1Aと各々同心の同一円周上で窪み部1Bの底面に、インサート成形により円弧状に配置されている。
【0008】
なお、7は、略コの字形の取付金具であり、軸受9の突部9Aをその中央孔から上方に突出させるようにして、軸受9の上方側から、軸受9とケース1を重ね合わせて脚部7Aで挟み込み、軸受9とケース1との間に操作軸6と摺動刷子8が収納されるように、ケース1の底面で脚部7A先端が折り曲げられる。
【0009】
ここで、まず信号接点パターン3、4の配置について説明すると、図11で示すように、A相信号用に相当する信号接点パターン3は導通した6個の信号接点3A〜3Fを備え、B相信号用に相当する信号接点パターン4も導通した6個の信号接点4A〜4Fを備えており、それらの信号接点3A〜3F、4A〜4Fは同一平面上でかつ同一円周上に位置するように、信号接点パターン3、4は左右に並べて配置されている。
【0010】
一方、コモン接点2は、信号接点パターン3、4と同一円周上で円弧状に配置されており、円弧の中心角は、信号接点3A〜3F間あるいは4A〜4F間で成す角度よりも大きくなるよう配置されている。
【0011】
そして、これらのコモン接点2および信号接点パターン3、4はいずれも電気的に絶縁され配置されており、ケース1の外側に延設された端子11C、11A、11Bとそれぞれ繋がっている。
【0012】
また、図12は摺動刷子8と組み合わせたケース1の上面図であるが、摺動刷子8は回転中心に対して90度毎に内周側と外周側の各接触部で一組となった接触部81A〜81Hを備えている。
【0013】
従来の回転操作型エンコーダは、以上のように構成されており、次にこの回転操作型エンコーダの動作について説明する。
【0014】
まず操作軸6を回転操作することにより、操作軸6の環状板部6Bの下面に取り付けられた摺動刷子8が回転し、接触部81A〜81HがA相信号用の信号接点パターン3の信号接点3A〜3F、B相信号用の信号接点4A〜4F、およびコモン接点2上を規則的に接離しながら摺動刷子8が回転摺動する。
【0015】
ここで、摺動刷子8の接触部81A〜81Hは、円周を均等に4等分する角度位置に各々設けられているので、操作軸を360度回転させると、A相信号用の信号接点3A〜3Fの6箇所、B相信号用の信号接点4A〜4Fの6箇所に対し、外周側、内周側の2つで1組となる接触部の計4組が摺動するので、A相信号、B相信号として、それぞれ24パルスの矩形波が規則的に出力される。
【0016】
この回転操作軸エンコーダは、例えば、カーオーディオの音量調整などに用いられ、回転操作型エンコーダに取り付けられた操作ダイアルの回転方向およびパルス信号を回転操作型エンコーダに接続されたマイコンで検出し、音量の増減制御などを行うものである。
【0017】
次に、図14の従来の信号接点を用いた回転操作型エンコーダの出力信号の説明図を用いて説明すると、図14(a)は回転操作型エンコーダの出力信号であり、回転操作型エンコーダに接続されたマイコンが、A相信号およびB相信号の推移から読み取る信号状態は、(1)A相信号がONで、B相信号がOFFとなる角度部分θ1、(2)A相信号、B相信号が共にONとなる角度部分θ2、(3)A相信号がOFFで、B相信号がONとなる角度部分θ3、(4)A相信号、B相信号が共にOFFとなる角度部分θ4の四つであり、この四つの信号状態の発生順で回転方向が判り、回転方向と連携されている増減方向が認識され、その発生数で増減量が制御されるものである。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平11−135310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記従来の回転操作型エンコーダにおいては、図11の上面図で説明した信号接点パターン3、4を構成する信号接点3A〜3Fおよび4A〜4Fは打ち抜き加工により形成されるものであるが、図13の断面図で信号接点3Aを代表例として示すように、信号接点3Aが打ち抜き加工により形成された際に、打ち抜き型により信号接点3Aの上面の端部が下方に引っ張られることにより変形して、抜きだれ部14Bが生じ、一方、信号接点3Aの下面では打ち抜き型により金属の一部が下方向に引っ張られて生じるバリ部14Cが発生し、信号接点3Aが樹脂部1Cから露出した面14Aの幅L1は所望の信号接点3Aの幅L2より短いものとなる。
【0020】
これによって、図13の断面図で示すように、その断面は、ケース1を構成する樹脂部1Cの一部が打ち抜き加工により作製された信号接点3Aの抜きだれ部14Bの上方に被さった状態となる。
【0021】
そのため、図14(b)の抜きだれ部が発生した場合の回転操作型エンコーダの出力信号に示すように、点線で示す抜きだれ部が発生しない場合の出力信号と比較すると、ONの角度部分がA相信号、B相信号共に短くなり、図14(a)のθ1、θ2、θ3、θ4のぞれぞれに対応する角度部分θ11、θ12、θ13、θ14において、特にθ12が狭くなり、操作軸6の回転操作により、摺動刷子8の接触部81A〜81Hがこのθ12上を摺動する時間が短くなると、マイコンがその信号状態の読み取りができなくなるおそれがあった。
【0022】
そして、近年の回転操作型エンコーダの小型化、高精度化の要望の下、信号接点3A〜3F、4A〜4Fの幅を狭くしてかつ間隔を狭くする必要があり、信号接点の抜きだれ部による影響が課題となっていた。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、打ち抜き加工により生じた信号接点の変形を抑えることにより、小型化、高精度化しうる回転操作型エンコーダ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0025】
本発明の請求項1に記載の発明は、コモン接点と信号接点とが上部表面に配設された絶縁樹脂製のケースと、回転操作可能な操作軸に固定され、操作軸の回転に応じて各接点上を摺動する導電金属製の摺動刷子とを備えた回転操作型エンコーダで、信号接点上での摺動刷子の摺動位置において、信号接点の断面形状は、上面両端が直角となる略逆台形をなし、信号接点のケース表面に露出する上面幅が、埋設された下面幅よりも大きいものとしたものである。
【0026】
この構成により、信号接点がケースを構成する樹脂部より露出する面の幅を所望の幅とすることができ、これにより、操作軸を回転した時の端子から出力されるA相信号およびB相信号のONとなる角度幅またはOFFとなる角度幅が所望の角度幅以下に短くなることが無いので、信号状態の読み取りができなくなるおそれがなくなり、それにより信号接点を狭ピッチで配置することができ、小型化、高精度化に適した回転操作型エンコーダを提供しうるという作用を有する。
【0027】
請求項2に記載の発明は、金属板に対して打ち抜き型により打ち抜き加工してコモン接点と信号接点を有した接点板を形成する第1のステップと、その接点板における信号接点のバリ部およびその近傍を下方から金型で押し上げて、上面角部が直角で下面両端部に傾斜部を有するように外形成形をする第2のステップを経て製作される信号接点を、コモン接点と共に信号接点の上面が露出するよう絶縁樹脂でインサート成形してケースを製作し、摺動刷子が下面に固定された操作軸と、軸受を、積み上げるように組み合わせた回転操作型エンコーダの製造方法に関するものである。
【0028】
これにより、上面角部の抜きだれ部が抑えられた略逆台形の信号接点を製作することができ、この信号接点の上面を露出するようにして、回転操作型エンコーダを製造することができるため、摺動刷子が摺動する部分の幅が、殆どばらつかない信号接点を製造することができ、それにより、操作軸の回転角度を誤認識するおそれがなくなるため、小型化、高精度化に適した回転操作型エンコーダの製造方法を提供しうるという作用を有する。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によれば、信号接点上を摺動刷子が摺動する位置において、信号接点の断面形状は上面角部が直角となる略逆台形をなし、信号接点のケース表面に露出する上面幅が、埋設された下面幅よりも大きく、所望の上面幅にできることが特徴であり、これにより小型化・高精度化した回転操作型エンコーダ及びその製造方法を提供することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8、図14を用いて説明する。
【0031】
なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0032】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転操作型エンコーダの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、6は成形樹脂製の操作軸で、上部に操作用ダイアル(図示せず)と組み合わせる切りかけ6Cが設けられた中央円柱部6Aと、その外周の環状板部6Bから構成され、環状板部6Bの上面には、放射状にクリック溝6Dが設けられ、また、環状板部6Bの下面に設けられたかしめ用突起(図示せず)が潰されて摺動刷子8が固定されていることは従来の回転操作型エンコーダと同様である。
【0033】
また、従来の回転操作型エンコーダと同様に、9は成形樹脂製の軸受で、上面視八角形の突部9Aとその周囲に設けられた上面視八角形の平板部9Bから構成され、上記突部9Aの中央部には平板部9Bに対し貫通するように円形孔9Cが設けられ、この円形孔9Cに上記操作軸6の中央円柱部6Aが組み合わされ、平板部9Bの下面に設けられたかしめ用突起(図示せず)が潰されて10で示す金属製のクリックばねが固定されている。
【0034】
そして、従来の回転操作型エンコーダと同様に、このクリックばね10の中央に設けられた円形孔10Aに上記操作軸6の中央円柱部6Aが挿入されて組み合わされ、また、円形孔10Aの外周側に金属板がループ上に成形されたばね部10Bが設けられており、このばね部10Bは、環状板部6Bの上面のクリック溝6Dに弾接されて、操作軸6の回転操作時に適度なトルクを生じさせる。
【0035】
そして、21は上面開口の成形樹脂製のケースで、底面中央に設けられた中央孔21Aで上記操作軸6の底面中央に設けられた円形突部と組み合わされ、操作軸6が回転可能に保持されており、また、図3のケース上面図で示すように、その底面にはインサート成形されて固定されたコモン接点22および信号接点パターン23、24が中央孔21Aと各々同心の同一円周上で円弧状に配置されていることも従来の回転操作型エンコーダと同様である。
【0036】
また、従来の回転操作型エンコーダと同様に、7は、コの字形の取付金具であり、軸受9の突部9Aをその中央孔から上方に突出させるようにして、軸受9の上方側から、軸受9とケース21を重ね合わせて脚部7Aで挟み込み、軸受9とケース21との間に操作軸6と摺動刷子8が収納されるように、ケース21の底面で脚部7A先端が折り曲げられる。
【0037】
ここで、図3の本発明の回転操作型エンコーダのケース上面図を用いて、まず信号接点パターン23、24の配置について説明すると、A相信号用に相当する信号接点パターン23は導通した6個の信号接点23A〜23Fを備え、B相信号用に相当する信号接点パターン24も導通した6個の信号接点24A〜24Fを備えており、それらの信号接点23A〜23F、24A〜24Fは同一平面上に位置するように、信号接点パターン23、24は左右に並べて配置されており、一方、コモン接点22は、信号接点パターン23、24と同一円周上で円弧状に配置されており、円弧の中心角は、信号接点23A〜23F間あるいは24A〜24F間で成す角度よりも大きくなるよう配置されていることも従来の回転操作型エンコーダと同様である。
【0038】
そして、従来の回転操作型エンコーダと同様に、これらのコモン接点22および信号接点パターン23、24はいずれも電気的に絶縁され配置されており、ケース21の外側に延設された端子11C、11A、11Bとそれぞれ繋がっている。
【0039】
また、従来の回転操作型エンコーダと同様に、図4は摺動刷子8と組み合わせたケース21の上面図であるが、摺動刷子8は回転中心に対して90度毎に内周側と外周側の各接触部で一組となった接触部81A〜81Hを備え、81A、81Bはコモン接点22に当接しており、81C、81DはB相信号用である信号接点24Cの中央に当接しており、81E、81Fは当接する接点は無く、81G、81HはA相信号用である信号接点23Fの右回転方向の端部に位置している。
【0040】
以上の部分は、従来の回転操作型エンコーダと同様の構成部分となっているが、本発明の実施の形態によるものは、信号接点上を摺動刷子が摺動する位置において、その摺動方向の断面が上記ケース表面で露出する上面幅が埋設された下面幅よりも大きい略逆台形で上面左右両端が直角の断面形状を有していることを特徴とするものである。
【0041】
この信号接点の断面形状について信号接点23Aを代表例として、図5の本発明の回転操作型エンコーダにかかる信号接点周辺の断面図を用いて説明すると、信号接点23Aの断面形状は、摺動刷子8が摺動する平面で構成される上面がケース21の成形樹脂から露出し、その右側および左側の角部は直角で構成されており、また、信号接点23Aの下面側においては、中央部は上面と平行な水平面で、左右端部では斜面で構成されている。
【0042】
すなわち、信号接点23Aの上面両端で抜きだれが生じておらず、角部が直角で構成され、成形樹脂が信号接点23A上に被らないので摺動刷子8が摺動する露出した上面31での幅L11は所望の信号接点の幅L2と同じ幅とすることができ、そのばらつきも殆ど生じないものとしうるものである。
【0043】
以上のように構成された回転操作型エンコーダの製造方法について、以下図6〜図8、図14を用いて説明する。
【0044】
まず、図6で示すように、黄銅などの金属板を打ち抜き台25上に設置し、打ち抜き型26で打ち抜き加工する。
【0045】
図6は打ち抜き加工後の信号接点の断面図であるが、信号接点23Aに対応する一次仕掛品の信号接点を信号接点33Aとして例にとり説明すると、信号接点33Aは打ち抜き加工時に、打ち抜き型26により切断側の端部が下に引っ張られることで変形しており、上面端部では抜きだれ部27Aが発生し、下面端部では金属の一部が下方向に引っ張られて生じるバリ部27Bが発生する。
【0046】
また、図7の接点板フープの上面図で示すように、30は打ち抜き型26で打ち抜かれた後の接点板フープであるが、所定間隔でパイロット孔30Aが設けられた外枠の内側に、A相信号に対応する信号接点パターン33と、B相信号に対応する信号接点パターン34と、コモン接点32とを有しており、信号接点パターン33を構成する一次仕掛品の信号接点33A〜33Fは、それぞれ完成品の信号接点23A〜23Fに対応し、信号接点パターン34を構成する一次仕掛品の信号接点34A〜34Fは、それぞれ完成品の信号接点24A〜24Fに対応するものであり、ここで一次仕掛品の信号接点33A〜33F、34A〜34Fは全て上述の33Aと同様の抜きだれを切断端部に有するものとなっている。
【0047】
また、端子部41A、41B、41Cはそれぞれ完成品の端子11A、11B、11Cに対応する部分であるが、41AはA相信号に対応する信号接点パターン33と繋がっており、41BはB相信号に対応する信号接点パターン34と繋がっており、41Cはコモン接点32と繋がっている。
【0048】
次の工程を、信号接点33Aを例にとり説明すると、図8(a)の成形押圧時の信号接点の断面図において、型29は、一次仕掛品の信号接点33Aの下面を押圧するものであるが、信号接点33Aの下面の中央を押圧する部分が水平平面29Aで、信号接点33Aの左右端部を押圧する部分が信号接点33Aを内向き上方に押圧しうる斜面29Bで形成されるもので、また、型28は一次仕掛品の信号接点33Aの上面を受けるものであるが、上面の中央部を平面で受ける平面部28Aと、抜きだれ部を直角に成形しうる直角成形部28Bを有するものである。
【0049】
ここで、型28及び型29により一次仕掛品の信号接点33Aが押圧されることにより、図8(b)の成形押圧後の信号接点の断面図に示す二次仕掛品の信号接点43Aが構成されるが、ここで、型29により下方から押圧されることで図6で示した両端部のバリ部27Bが、信号接点43Aの断面中央方向に斜面29Bで押圧され、その押圧された圧力で、型28の直角となった直角成形部28Bに金属材料が押し付けられて、信号接点43Aの上面の端部が直角となるように成形されて所望の上面幅を備えた信号接点43Aに形成されるものである。
【0050】
この二次仕掛品の信号接点43Aは完成品の信号接点23Aに対応するものであるが、他の信号接点33B〜33F、34A〜34Fも同様に成形されて二次仕掛品の接点板フープが形成される。
【0051】
次に、二次仕掛品の接点板フープを成形樹脂にインサート成形し、その後、フープ状の接点板の外枠と繋がった部分を切断することにより、ケース21が製造される。
【0052】
この様に製造されたケース21に対し、図2で示すように、摺動刷子8がかしめ用突起(図示せず)が潰されて下面に固定された操作軸6と、クリックばね10がかしめ用突起(図示せず)が潰されて下面に固定された軸受9を、積み上げるように組み合わせ、さらに、取付金具7で軸受9上からケース21の下部まで挟み込み、脚部7Aでケース21と固定することにより、回転操作型エンコーダを製造するものである。
【0053】
本発明による回転操作型エンコーダは、以上のように製造されており、次にこの回転操作型エンコーダの動作について説明する。
【0054】
この回転操作型エンコーダを使用する際には、操作軸6を回転操作することにより、操作軸6の環状板部6Bの下面に取り付けられた摺動刷子8が回転し、接触部81A〜81HがA相信号用の信号接点23A〜23F、B相信号用の信号接点24A〜24F、およびコモン接点22上を規則的に接離しながら摺動刷子8が回転摺動する。
【0055】
ここで、図4で示した接触部81A〜81HのいずれかがA相信号用の信号接点23A〜23Fと当接している時には、端子11Cと電気的に接続されたコモン接点22と、A相信号用の信号接点23A〜23Fと電気的に接続した端子11Aが電気的に繋がるので、A相信号はONの信号が出力され、一方、接触部81A〜81HのいずれもA相信号用の信号接点23A〜23Fと当接していない時は、端子11Cと端子11Aは電気的に接続されないのでA相信号はOFFの信号が出力されるものである。
【0056】
同様に、接触部81A〜81HのいずれかがB相信号用の信号接点24A〜24Fと当接している時には、端子11Cと電気的に接続したコモン接点22と、B相信号用の信号接点24A〜24Fと電気的に接続した端子11Bが電気的に繋がるので、B相信号はONの信号が出力され、一方、接触部81A〜81HのいずれもB相信号用の信号接点24A〜24Fと当接していない時は、端子11Cと端子11Bは電気的に接続されないのでB相信号はOFFの信号が出力される。
【0057】
ここで、本発明の実施の形態によれば、信号接点がケース21から露出した部分の幅のばらつきが無いので、操作軸6を回転させると、図14(a)で示したような、所望のA相信号、B相信号の出力信号を得ることができる。
【0058】
これによれば、(1)A相信号がONで、B相信号がOFFとなる角度部分θ1、(2)A相信号、B相信号が共にONとなる角度部分θ2、(3)A相信号がOFFで、B相信号がONとなる角度部分θ3、(4)A相信号、B相信号が共にOFFとなる角度部分θ4は、信号接点上にケースを構成する樹脂が被ることが無いため、その角度部分は所望の幅に保たれており、またこれにより、各信号状態θ1〜θ4は回転操作型エンコーダに接続されるマイコンが読み取るに十分広い角度部分を有したものとなっているので、操作軸の回転量の検出を誤ることなく行うことができる。
【0059】
ここで、操作軸を360度回転させると、A相信号用の6箇所の信号接点23A〜23F上を、外周側、内周側の2つで1組となる計4組の接触部が摺動するので、A相信号として24パルスの矩形波が規則的に出力されることになり、またB相信号用の6箇所の信号接点24A〜24Fに対しても同様に、摺動刷子8の外周側、内周側の2つで1組となる計4組の接触部が摺動するので、操作軸を360度回転させると、B相信号として24パルスの矩形波が規則的に出力される点は従来のものと同様である。
【0060】
以上のように、本発明によれば、ケースにインサート成形される信号接点が打ち抜き加工後に押圧加工されることにより、信号接点に生じた抜きだれ部を抑えて切断端部の上面を直角に成形することが出来るため、信号接点の上面が成形樹脂から露出している幅を所望の幅にすることができ、各信号状態をマイコンが確実に読み取れることにより、小型化、高精度化しうる回転操作型エンコーダを提供することができる。
【0061】
また、本発明によれば、信号接点を製造するため、打ち抜き加工後に下方からバリ部を押圧する型と、上方から抜きだれ部を元に戻して上面端部を直角に形成しうる型を用いて押圧加工を施すため、下面から押圧された金属で上面の端部が直角に充填するように押圧され、略逆台形の断面を有する信号接点を安定して製造することができることとなり、小型化、高精度化しうる回転操作型エンコーダの製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明による回転操作型エンコーダ及びその製造方法は、小型化、高精度化に適しており、各種AV機器の音量調整、音質調整等の入力操作部等を構成する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態による回転操作型エンコーダの断面図
【図2】本発明の一実施の形態による回転操作型エンコーダの分解斜視図
【図3】本発明の回転操作型エンコーダのケース上面図
【図4】摺動刷子と組み合わせた本発明の回転操作型エンコーダにかかるケースの上面図
【図5】本発明の回転操作型エンコーダにかかる信号接点周辺の断面図
【図6】打ち抜き加工後の信号接点の断面図
【図7】接点板フープの上面図
【図8】成形押圧前後の信号接点の断面図
【図9】従来の回転操作型エンコーダの断面図
【図10】従来の回転操作型エンコーダの分解斜視図
【図11】従来の回転操作型エンコーダのケースの上面図
【図12】摺動刷子と組み合わせたケースの上面図
【図13】従来の回転操作型エンコーダの信号接点の断面図
【図14】従来の信号接点を用いた回転操作型エンコーダの出力信号の説明図
【符号の説明】
【0064】
6 操作軸
6A 中央円柱部
6B 環状板部
6C 切りかけ
6D クリック溝
7 取付金具
7A 脚部
8 摺動刷子
9 軸受
9A 突部
9B 平板部
9C 円形孔
10 クリックばね
10A 円形孔
10B ばね部
11A、11B、11C 端子
14A 信号接点が露出した面
14B 抜きだれ部
14C バリ部
21 ケース
21A 中央孔
22 コモン接点
23、24 信号接点パターン
23A、23B、23C、23D、23E、23F、24A、24B、24C、24D、24E、24F 信号接点
25 打ち抜き台
26 打ち抜き型
27A 抜きだれ部
27B バリ部
28、29 型
28A 平面部
28B 直角成形部
29A 水平部
29B 斜面部
30 接点板フープ
30A パイロット孔
31 信号接点上面
32 コモン接点
33、34 信号接点パターン
33A、33B、33C、33D、33E、33F、34A、34B、34C、34D、34E、34F 一次仕掛品の信号接点
43A 二次仕掛品の信号接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモン接点と信号接点とが上部表面に配設された絶縁樹脂製のケースと、回転操作可能な操作軸に固定され、上記操作軸の回転に応じて上記各接点上を摺動する導電金属製の摺動刷子とを備え、上記信号接点上を上記摺動刷子が摺動する位置において、上記信号接点の断面形状は上面両端が直角となる略逆台形をなし、上記信号接点の上記ケース表面に露出する上面幅が、埋設された下面幅よりも大きいことを特徴とする回転操作型エンコーダ。
【請求項2】
金属板に対して打ち抜き型により打ち抜き加工してコモン接点と信号接点を有した接点板を形成する第1のステップと、その接点板における信号接点のバリ部およびその近傍を下方から金型で押し上げて、上面角部が直角で下面両端部に傾斜部を有するように外形成形をする第2のステップを経て製作される信号接点を、コモン接点と共に信号接点の上面が露出するよう絶縁樹脂でインサート成形してケースを製作し、摺動刷子が下面に固定された操作軸と、軸受を、積み上げるように組み合わせたことを特徴とする回転操作型エンコーダの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−170328(P2009−170328A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8865(P2008−8865)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】