説明

回転検出装置

【課題】 駆動軸と回転体との係合を強化して、駆動軸と回転体との間に回転ずれが発生することなく常に一体的に回転することができるようにして検出精度を高めた回転検出装置を提供することを目的する。
【解決手段】 回転体12に規制部12dを形成し、規制部12dの形成位置とは反対側に弾性部材20の弾接部20gを配設して、駆動軸11の平坦面11cのうち中心線A−Aよりも図示Y2側に位置する平坦面11cと規制部12dとを、弾接部20gによって互いに弾圧させる。このようにすると、駆動軸11と回転体12とを一体化することができ、駆動軸11の回転が急停止させられた場合も、駆動軸11と回転体12との間に回転ずれが生じることを防止できる。その結果、回転検出装置10の出力変動を所定の規格範囲内に収めることができ、回転検出装置10の検出精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸と共に回転する回転体から前記駆動軸の回転角度を検出する回転検出装置に係り、特に、駆動軸と回転体との係合を強化して検出精度を高めた回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には従来の回転検出装置としての回転型センサが開示されている。図10は前記回転型センサの要部断面図である。なお、図10は特許文献1の図1と同じ図を用いている。
【0003】
回転型センサ200は、車両(自動二輪車等)のスロットル軸等の駆動軸201が係合する係合部202aを有する回転体202と、回転体202を回転可能に保持する筐体203と、回転体202の回転によって操作され、回転体202に固着された摺動子204,204と、抵抗体基板205に設けられた抵抗体パターン205aおよび導電体パターン205bとからなる角度検出部材とを有している。
【0004】
回転体202の平坦面部202bと一対の凸部202cとの間の隙間に、弾性部材206が、その屈曲部206aが回転体202の凹部202dの底壁202eに当接されるように配設されている。
【0005】
弾性部材206のバネ部206bの弾接部206cが駆動軸201の平坦部201aに弾接されており、駆動軸201は、回転体202の係合部202a内に弾性部材206を介して係合されている。この弾性部材206による駆動軸201の係合によって、駆動軸201が係合部202a内に係止された状態で配設される。
【0006】
回転型センサ200では、まず、駆動軸201の円柱部201bが、円柱部201bの軸線を中心として所定の回転角度範囲内で往復回転される。この駆動軸201の往復回転によって、回転体202が同様に所定の回転角度範囲内で往復回転される。
【0007】
次に、回転体202の往復回転によって、摺動子204、204が抵抗体パターン205aおよび導電体パターン205b上を摺動し、この摺動子204、204の摺動によって、抵抗体基板205の端子205cと電気的に接続された導出端子207から所定の可変された抵抗値が出力される。すなわち、角度検出部材を構成する抵抗体パターン205aおよび導電体パターン205bと摺動子204、204とによる摺動動作にともなう抵抗値の変化によって、駆動軸201の回転角度が検出される。
【特許文献1】特開2002−39789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動二輪車のエンジンにはスロットルボディが設けられている。このスロットルボディは、エンジン内のシリンダーに送る空気の流量調節を行うスロットルバルブとスロットルバルブの開閉角度を検出する回転型センサ(スロットルポジションセンサ)200などを有している。
【0009】
回転型センサ200は駆動軸201の回転角度からスロットルバルブの開閉角度を検出し、この開閉角度を示すデータを図示しない制御装置に送っている。そして、前記制御装置はこのデータを含む多数のデータを分析してフィードバックすることにより、常に適正な空気量がシリンダーに送り込まれるようにスロットルバルブの開閉角度の調節を行っている。
【0010】
ところで、自動二輪車のアクセルと駆動軸201とはワイヤーなどで連結されており、駆動軸201にはスロットルバルブを閉じる方向に付勢する付勢部材が設けられている。自動二輪車の運転手がアクセル操作の際に、前記付勢部材の付勢方向と抗する方向に駆動軸201を一方向に回転させることにより、スロットルバルブを開く状態に設定することが可能とされている。
【0011】
一方、自動二輪車の運転手がアクセルから手を離す(アクセル操作を停止する)と、前記付勢部材の付勢力によって駆動軸201が前記一方向とは逆の他方向に回転させられ、スロットルバルブは閉じる状態に設定することが可能とされている。
【0012】
この際、回転中の駆動軸201が前記付勢部材の付勢力によって勢いよく回転させられ、スロットルバルブがスロットルボディに設けられたストッパに激突し、駆動軸201に大きな衝撃が加えられることがある。
【0013】
前記特許文献1に記載の発明では、駆動軸201は、弾性部材206の弾接部206cによって、図示X2方向からのみ押圧されている。また、回転体202の半径は駆動軸201の半径よりも長いため、停止したときに回転方向に発生する慣性力は駆動軸201よりも回転体202の方が大きい。
【0014】
このため、勢いよく回転している駆動軸201が急激に停止させられると、駆動軸201の回転が停止した後にも、回転体202はさらに回転し続けようとする。このとき、回転体202に作用する慣性力が、弾性部材206の弾性力よりも大きい場合には、弾性部材206が収縮する方向に弾性変形させられ、駆動軸201と回転体202の係合部202aとの間にいわゆる回転ずれが発生する。
【0015】
その結果、スロットルバルブは全閉の状態で停止しているにもかかわらず、回転体202はさらに回転した状態に設定させられるため、全閉の状態に対する摺動子204、204と抵抗体パターン205aとの間の抵抗値がその都度変化し、回転検出装置としての出力変動を所定の規格範囲内に収めることができなくなるといった問題、すなわち回転検出装置の検出精度を高めることができないという問題がある。
【0016】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、駆動軸と回転体との係合を強化して、駆動軸と回転体との間に回転ずれが発生することなく常に一体的に回転することができるようにして検出精度を高めた回転検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、駆動軸と、前記駆動軸の先端と係合する係合部を有するとともに前記駆動軸と一緒に回転する回転体と、前記回転体を回転可能に保持する筐体と、前記回転体の回転角度を検出する角度検出部と、前記駆動軸と前記回転体とを係合する係合手段とを有する回転検出装置において、
前記係合手段は、前記駆動軸の一部を前記駆動軸が延びる軸心方向に平行となる面でカットすることにより形成された平坦面と、前記係合部内に設けられ且つ前記回転体に対する前記駆動軸の回転を規制する規制部と、前記係合部内に配置されるとともに前記駆動軸を弾圧して前記駆動軸の回転を前記回転体に伝達する弾性部材とを有しており、
前記弾性部材が前記軸心に垂直に交差する任意の中心線よりも一方の側において前記平坦面を部分的に弾圧することにより、前記中心線よりも他方の側に位置する前記平坦面と前記規制部とが弾圧させられていることを特徴とする。
【0018】
上記においては、前記駆動軸に作用するモーメントと、前記回転体の係合部に作用するモーメントが、前記軸心回りにおいて互いに逆方向となるように前記弾性部材の弾性力が作用していることが好ましい。
【0019】
このようにすると、駆動軸の平坦面のうち、駆動軸が延びる軸心に垂直に交差する任意の中心線よりも一方の側に位置する平坦面と、他方の側に位置する、回転体側の規制部とを互いに弾圧させることができる。
【0020】
また、上記においては、前記駆動軸に作用するモーメントの方向と前記駆動軸の回転方向とが同じ方向であることが好ましい。
【0021】
上記においては、駆動軸が回転しようとする方向と、弾性部材が駆動軸の平坦面を弾圧する方向が同じであるため、駆動軸の平坦面と回転体側の規制部との弾圧状態を維持しやすくなっている。
【0022】
このため、例えば、自動二輪車用のスロットルボディに設けられ、駆動軸の一方の端部に設けられたリンク部材がストッパに勢いよく激突して駆動軸の回転が急停止させられたときであっても、駆動軸の外周側に設けられた回転体に作用する慣性力により回転体だけが回転してしまうことを防止することができる。すなわち、駆動軸と回転体とを一体化することができるため、駆動軸の回転が急停止したときであっても、駆動軸と回転体との間に回転ずれが生じることを防止することができる。
【0023】
その結果、例えば、自動二輪車用のスロットルバルブが全閉の状態で停止しているときに、駆動軸の回転角度を表すものとして出力される電圧値を一定値に、あるいは所定の許容誤差の範囲内に収めることができる。すなわち、回転検出装置の出力変動を所定の規格範囲内に収めることが可能となるため、回転検出装置の検出精度を高めることができる。
【0024】
また、本発明では、前記駆動軸は、円柱状の固定部と、前記固定部の一方の端部に設けられた駆動部とを有しており、前記駆動部を前記駆動軸の軸方向と直交する断面で切断したときの前記駆動部の断面がD字形状であることが好ましい。
【0025】
駆動部の断面形状をD字形状とすると、駆動部の外周のうち双方の側に平坦部を設ける場合と比べて、駆動部の外周を切削する工程を減らすことができ、また、製造コストも低減させることができる。
【0026】
本発明では、例えば、前記駆動軸は、エンジンに設けられたスロットルバルブを回転させるためのスロットルバルブシャフトであり、前記エンジンは自動二輪車用である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の回転検出装置では、駆動軸と回転体との係合を強化して、駆動軸と回転体との間に回転ずれが発生することなく常に一体的に回転することができるようにして検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明の回転検出装置の実施の形態としてのスロットルボディを説明するための概略構成図、図2は本発明の回転検出装置の要部断面図、図3は図2の矢印Q方向から回転体を見たときの正面図、図4Aは駆動軸の側面図、図4Bは駆動軸の断面図で、図4Aの矢印方向からみた図、図5は弾性部材を示す斜視図、図6は回転体に駆動軸が装着された状態を示す図2同様の断面図、図7は回転体の隙間内に弾性部材を装着した状態を示す図3同様の正面図、図8は回転体に駆動軸が装着された状態を示す図3同様の正面図である。なお、図2および図6においては、回転体、筐体、弾性部材、および蓋体のみにハッチングを施している。
【0029】
本発明の回転検出装置10は、例えば自動二輪車や四輪車用のスロットルボディ1に設けられている。図1に示すように、スロットルボディ1は、図示しない吸気口とエンジンとの間の吸気通路2内に設けられており、エンジンに流入する空気の流量の調整を行うものである。吸気通路2には円盤状のスロットルバルブ3が駆動軸(スロットルバルブシャフト)11に対し回転自在に支持されている。スロットルバルブ3の直径は吸気通路2よりもわずかに小さく形成されている。スロットルバルブ3の面が空気の流入方向(図示矢印方向)に対して平行な姿勢にあるときがスロットルバルブ3としては全開の状態であり、前記空気の流入方向に対して垂直な姿勢にあるときがスロットルバルブ3としては全閉の状態である。
【0030】
駆動軸11の一方(図示Z1側)の端部には扇型状のリンク部材4が設けられている。リンク部材4の一方(図示α1方向)の端部にはワイヤー5の一方の先端が結線されており、他方(図示β1方向)の端部にはリンク部材4に当接可能なストッパ6が設けられている。また、駆動軸11の他方(図示Z2側)の端部には、付勢部材7と後述する回転検出装置10が取り付けられている。駆動軸11は付勢部材7によって図示β1方向に付勢されている。スロットルバルブ3が全閉の状態にあるときが、リンク部材4の他方(図示Z2側)の端部がストッパ6に当接している状態と一致する。
【0031】
なお、図4Aおよび図4Bに示すように、駆動軸11の他方(図示Z2側)の端部には、駆動軸11の軸心方向(図示Z1−Z2方向)と直交する平面(XY平面)で切断したときの断面がD字形状となる駆動部11bが突出形成されている。駆動部11bの外周の一部(図4では図示X2側の面)には平坦面11cが形成されている。
【0032】
ワイヤー5の他方の先端は自動二輪車のハンドルに設けられたアクセル8に結線されている。アクセル8を図示α2方向に回転させると、これに連動してワイヤー5が付勢部材7の付勢方向(図示β1方向)に抗して図示P方向に引かれるため、駆動軸11が図示α1方向に回転し、スロットルバルブ3を開かせることが可能とされている。
【0033】
図2に示すように、回転検出装置10はスロットルバルブ3を回転させる駆動軸11が係合する係合部12bを有する回転体12と、回転体12を回転自在に支持する筐体13と、回転体12の回転によって操作され、駆動軸11の回転角度を検出する角度検出部14を有している。そして、本発明では、回転体12の係合部12bに駆動軸11が係合され、駆動軸11が所定の回転角度範囲内で往復回転するようになっている。
【0034】
筐体13は、例えばポリフェニレン・サルファイド(PPS)などの合成樹脂材料からなり、成形加工によって形成され、図示Z1側に、大径空間13aと、小径空間13bと、小径空間13bに連設された収納部13cとを有しており、収納部13cの図示Z2側に開放端部13dが形成されている。よって、筐体13は、小径空間13bおよび開放端部13dによって、両端部(図示Z1側の端部および図示Z2側の端部)が開放されている。そして、開放端部13dが蓋体15によって閉じられている。蓋体15の中心部には、先端部が図示Z1方向に略円錐凸状に突出する支持部16が設けられている。
【0035】
回転体12は、例えばポリブチレン・テレフタレート(PBT)などの合成樹脂材料からなり、成形加工によって形成され、略円盤状の基部12aと、基部12aの一方の面から図示Z1側に突出して設けられた円筒形状の係合部12bと、基部12aの他方の面から図示Z2側に突出して設けられた軸部12cとを有している。軸部12cは略柱状であり、その図示Z2側に略円筒状の円筒部12c2が設けられ、円筒部12c2の図示Z1側に略円錐凹状に陥没する軸受部12c1が設けられている。
【0036】
そして、この軸受部12c1内に支持部16の先端16aが挿入されることにより、回転体12が回転自在に軸支されている。
【0037】
この状態では、回転体12の係合部12bの先端が筐体13の小径空間13b内に挿通され、回転体12の基部12aが筐体13の収納部13c内に収納されている。
【0038】
なお、上記実施の形態では、回転体12の軸部12cの先端に凹状の軸受部12c1が形成され、蓋体15側に凸状の支持部16を有する構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、回転体12の軸部12cの先端に凸状の支持部が形成され、蓋体15側に凹状の軸受部を備えた構成とするものであってもよい。
【0039】
なお、回転体12の係合部12bの外径寸法は、筐体13の小径空間13bの内径寸法に比べて多少小さく形成されており、回転体12が筐体13内で傾くことが可能なスペースが確保されている。
【0040】
円筒形状に形成された回転体12の係合部12bの内側の一部には、図3に示す状態において、回転の軸心Oを通るとともにXY平面に含まれる任意の中心線A−Aに対して垂直(中心線B−Bに対しては平行)となる規制部12dと、同じく任意の中心線A−Aに対して垂直(中心線B−Bに対しては平行)となる平坦部12fとを有している。そして、この平坦部12fには図示Z1−Z2方向に直線的に延びるリブ12iが突出形成されている。
【0041】
また、回転体12の係合部12bの内側には図示Z2方向に陥没する凹部12eが形成されており、図2に示すように、凹部12eの底面12e1には図示Z1方向に向かって延びる一対の凸部12g,12gが設けられている。凹部12eの図示Z1―Z2方向の長さ寸法は、凹部12eの図示Z1―Z2方向の深さ寸法の半分程度であり、凸部12g,12gの端面(図示Z1側の面)と凹部12eの開口端部との間には駆動軸11先端の駆動部11bが嵌合される所定のスペースS1が形成されている。
【0042】
図3に示すように、回転体12の凸部12g,12gは、軸心Oから等距離の位置に所定の距離を隔てて対向するとともに、任意の中心線B−Bに対し垂直に交差している(中心線A−Aに対しては平行である。)。一方の凸部12gの図示X2側の側面12g1と回転体12の平坦部12fとは所定の距離を置いて平行な状態で対向しており、両者の間には略D字状の断面形状をした隙間S2が設けられている。
【0043】
回転体12の係合部12bの外周面と平坦部12fとの間には、軸心Oと垂直な方向に貫通する貫通孔12hが形成されている。
【0044】
角度検出部14は、回転体12の基部12aの底面(図示Z2側の面)に設けられ、且つ回転体12の回転とともに回転する摺動部材17,17と、抵抗体基板18上に円弧状に形成された抵抗体パターン18bと導電体パターン18cとで構成される。
【0045】
各摺動部材17は導電性の金属材料からなり、その先端には分岐形成された複数の摺動子17aを有しており、摺動部材17の本体部側が回転体12の基部12aの底面に、例えば、熱カシメなどの手段によって固定されている。
【0046】
抵抗体基板18は例えば合成樹脂材料などからなり、円盤状の基部18aを有している。基部18aの図示Z1側の面上には、ペーストの抵抗膜や導電膜を所定の円弧状パターンに沿って印刷し、その後に焼成乾燥等を行うことによって形成した、抵抗体パターン18bと導電体パターン18cとが形成されている。基部18aの中央部には貫通孔18dが設けられており、基部18aの図示X2側には、抵抗体パターン18bおよび導電体パターン18cと電気的に接続された複数本の端子18eが配設されている。
【0047】
抵抗体基板18は筐体13の収納部13cに配設されている。この状態では、回転体12の軸部12cの先端部は、抵抗体基板18の貫通孔18dを貫通した状態で支持部16において軸支されている。そして、摺動子17a,17aが抵抗体パターン18bおよび導電体パターン18c上を摺動できるように配設されている。
【0048】
抵抗体基板18の端子18eは、筐体13内に一体成形されたそれぞれの導出端子19に半田付けされ、端子18eと導出端子19とが電気的に接続されている。
【0049】
図6および図7に示すように、回転体12の凸部12g,12gと平坦部12fとの間の隙間S2には弾性部材20が介挿される。弾性部材20は例えばステンレスなどの金属性の板ばねから形成されている。図5に示すように、弾性部材20は、薄い板ばねをU字形状に折り返すことにより形成されており、一方端側の第1の押圧部20aと、他端側の第2の押圧部20bとが屈曲部20cを介して対向している。
【0050】
第1の押圧部20aは平面形状をしており、その中央部には屈曲部20cから第1の押圧部20aの自由端方向(図示Z1方向)に延びる切り溝20dが形成され、切り溝20dの図示Z1側の近傍には切り起こし部20eが形成されている。第1の押圧部20aの端部には折曲片20fが延設されている。また第2の押圧部20bの図示Y2側には、湾曲形成された弾接部20gが突設されている。なお、第2の押圧部20bの図示Y1側は折曲線20hに沿って図示X2方向にわずかに折り曲げられている。
【0051】
図6に示すように、弾性部材20はその屈曲部20cを図示Z2方向に向けた状態で隙間S2内に配設されている。このとき、弾性部材20は、第1の押圧部20aと第2の押圧部20bとが接近する方向に弾性変形させられた状態(収縮させられた状態)にあり、第1の押圧部20aは回転体12の平坦部12fを弾圧し、且つ第2の押圧部20bが回転体12の凸部12gの側面12g1を弾圧している。
【0052】
また、弾性部材20の切り溝20d内に回転体12のリブ12iが係合し、弾性部材20の切り起こし部20eの自由端(図示Z1側の端部)が回転体12の貫通孔12hと係合している。すなわち、この貫通孔12hへの切り起こし部20eの係合によって、弾性部材20が図示Z1方向に移動して隙間S2から抜け出ることを防止できるようになっている。
【0053】
図7に示すように、弾性部材20の弾接部20gは、回転体12の凸部12gの先端部よりも図示Z1側に突出している。また、弾接部20gは任意の中心線A−Aに対して図示Y2側、すなわち、回転体12の係合部12bの中心部(軸心O)をはさんで、回転体12の規制部12dの形成位置とは反対の側に配設される。弾性部材20の第2の押圧部20b側に設けられた弾接部20gは、第1の押圧部20aから離間する方向に弾性力が作用する自由端となっている。
【0054】
図7に示す回転体12の凹部12e内に駆動軸11の駆動部11bを挿入すると、図8に示すように、駆動部11bの外周面が凹部12eの内面に嵌合される。同時に、駆動部11bの平坦面11cのうち中心線A−Aよりも一方の図示Y1側に位置する平坦面11cは回転体12の規制部12dに当接し、中心線A−Aよりも他方の図示Y2側に位置する平坦面11cには弾性部材20の弾接部20gが弾接されている。このため、弾接部20gは図示X2方向に押圧されている。
【0055】
ここで、回転体12の平坦部12fを基準とすると、図8に示すように、弾性部材20の弾接部20gは中心線A−Aよりも他方の図示Y2側に位置する駆動部11bの平坦面11cを図示X1方向に弾性力Fで押圧しており、回転方向β1には弾性力Fの垂直成分F1が作用している。このため、駆動軸11には軸心Oに対して図示β1方向のモーメントが作用している。また、駆動部11bの平坦面11cを基準とすると、弾性部材20の第1の押圧部20aは回転体12の平坦部12fを図示X2方向に弾性力fで押圧しており、回転方向α1には弾性力fの垂直成分f1が作用している。このため、回転体12には軸心Oに対して図示α1方向のモーメントが作用している。
【0056】
すなわち、駆動軸11には図示β1方向のモーメントが生じており、回転体12には図示α1方向のモーメントが生じている。すなわち、駆動軸11と回転体12には互いに逆方向のモーメントが生じている。このため、駆動軸11の平坦面11cのうち中心線A−Aよりも図示Y2側に位置する平坦面11cと回転体12側の規制部12dとを互いに弾圧させることが可能とされている。
【0057】
したがって、弾性部材20、D字形状に形成された駆動部11bの平担面11cおよび回転体12の係合部12bに設けられた規制部12dは、駆動軸11の先端と回転体12とを一体的に連結する係合手段を構成している。
【0058】
なお、駆動軸11の駆動部11bの断面形状は、上記のようなD字形状には限定されず、図9Aおよび図9Bに示すような、駆動部11bの外周のうち、図示X1側およびX2側の双方に平坦部110c1、110c2が設けられた形状であってもよい。ここで、図9Aは本発明の駆動軸の変形例を示す側面図、図9Bは本発明の駆動軸の変形例を示す正面図である。
【0059】
しかし、本発明では、駆動軸11としては、駆動部11bの断面形状が、図4Aおよび図4Bに示すようなD字形状であることが好ましい。駆動部11bの断面形状をD字形状とすると、図9Aおよび図9Bに示すような、駆動部11bの外周のうち、図示X1側およびX2側の双方に平坦部110c1、110c2を設ける場合と比べて、駆動部11bの外周を切削する工程を減らすことができ、また、製造コストも低減させることができる。
【0060】
次に、本発明の回転検出装置10の動作について説明する。
まず、自動二輪車の運転手(ライダー)が図1に示す自動二輪車のアクセル8を把持しながら図示α2方向に回転操作すると、ワイヤー5が図示P方向に引かれるため、リンク部材4がストッパ6から離れて、駆動軸11が図示α1方向に回転させられる。このとき、駆動軸11に設けられたスロットルバルブ3が開く方向に、アクセル8を操作させた範囲に対応する所定の開閉角度だけ回転させられる。すると、駆動軸11に係合している回転体12が、駆動軸11と一体になって図示α1方向に、駆動軸11の回転角度と同様の角度だけ回転させられる。なお、このとき、駆動軸11の固定部11aの回転中心と回転体12の回転中心とが若干位置ずれした状態で係合されていたとしても、支持部16の先端16aを支点として、回転体12が、駆動軸11の軸心方向と直交する任意の方向(XY平面内の任意の方向)に傾動することが可能である。このため、駆動軸11と回転体12との係合を解除させずに維持することができ、回転体12は継続して駆動軸11と一体になって回転することが可能である。
【0061】
回転体12が回転させられると、摺動子17a,17aが抵抗体パターン18bおよび導電体パターン18c上を摺動する。そして、この摺動子17a,17aの摺動にに応じた電圧が導出端子19から出力される。すなわち、摺動子17a,17aと抵抗体パターン18bおよび導電体パターン18cとによる摺動動作にともなう抵抗値の変化によって、駆動軸11の回転角度が検出される。
【0062】
ここで、運転手が図示α2方向に大きく回転させていたアクセル8から手を離すと、付勢部材7の復元力により駆動軸11が図示β1方向、すなわちスロットルバルブ3を閉める方向に回転させられる。同時に、回転体12も駆動軸11と一体になって図示β1方向に回転させられる。このとき、駆動軸11に固定されているリンク部材4の他方(図示β1方向)の端部がストッパ6に当接し、駆動軸11のこれ以上の図示β1方向への回転動作が制限される。このため、スロットルバルブ3は確実に全閉状態に移行させられる。
【0063】
リンク部材4はストッパ6に勢いよく激突するため、駆動軸11と回転体12との係合する結合手段には過渡的に大きな負荷が作用する。しかし、本発明では以下の理由により駆動軸11と回転体12の係合部12bとの間に生じやすい回転ずれを防止できるようになっている。
【0064】
すなわち、本発明では、上記のように、駆動軸11には図示β1方向のモーメントが作用しており、回転体12には図示α1方向のモーメントが作用しているため、常に駆動軸11の平坦面11cと回転体12側の規制部12dとは互いに弾圧し合う関係になっている。特に、駆動軸11が回転しようとする方向と、弾性部材20が駆動軸11の平坦面11cを弾圧する方向とが共に図示β1方向と同じであるため、駆動軸11の平坦面11cと回転体12側の規制部12dとの弾圧状態を維持しやすくなっている。
【0065】
このため、リンク部材4がストッパ6に勢いよく激突して駆動軸11の回転が急停止させられたときであっても、駆動軸11の外周側に設けられた回転体12に作用する慣性力により回転体12だけが図示β1方向に回転してしまうことを防止することができる。すなわち、駆動軸11と回転体12とを一体化することができるため、駆動軸11の回転が急停止したときであっても、駆動軸11と回転体12との間に回転ずれが生じることを防止することができる。
【0066】
その結果、スロットルバルブ3が全閉の状態で停止しているときに、導出端子19から出力される電圧値を一定値に、あるいは所定の許容誤差の範囲内に収めることができる。すなわち、回転検出装置10としての出力変動を所定の規格範囲内に収めることが可能となるため、回転検出装置10の検出精度を高めることができる。
【0067】
なお、上記においては、回転検出装置10が自動二輪車のスロットルバルブ3の開閉角度を検出するために用いられ、駆動軸11が自動二輪車のスロットルバルブ3を回転させるためのスロットルバルブシャフトである場合を例にとって説明したが、本発明の駆動軸11は、自動二輪車のスロットルバルブシャフトであることには限定されず、自動車や他の車両のスロットバルブを回転させるためのスロットルバルブシャフトであってもよい。
【0068】
また、駆動軸11が車両のスロットルバルブシャフトである、すなわち、回転検出装置10が車両のスロットルバルブの開閉角度を検出するために用いられることには限定されず、本発明の回転検出装置10は、たとえば、小型の監視カメラのレンズおよび筐体を含む、監視カメラ自体の回転姿勢の状態を検出することなど、駆動軸11によって回転させられる機器にも用いられて、その機器の回転角度を検出するものとしても利用されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の回転検出装置の実施の形態としてのスロットルボディを説明するための概略構成図、
【図2】本発明の回転検出装置の要部断面図、
【図3】図2の矢印Q方向から回転体を見たときの正面図、
【図4】図4Aは駆動軸の側面図、図4Bは駆動軸の断面図で、図4Aの矢印方向からみた図、
【図5】弾性部材を示す斜視図、
【図6】回転体に駆動軸が装着された状態を示す図2同様の断面図、
【図7】回転体の隙間内に弾性部材を装着した状態を示す図3同様の正面図、
【図8】回転体に駆動軸が装着された状態を示す図3同様の正面図、
【図9】図9Aは本発明の駆動軸の変形例を示す側面図、図9Bは本発明の駆動軸の変形例を示す正面図、
【図10】従来の回転型センサの要部断面図
【符号の説明】
【0070】
3 スロットルバルブ
4 リンク部材
5 ワイヤー
6 ストッパ
7 付勢部材
8 アクセル
10 回転検出装置
11 駆動軸
11b 駆動部
11c 平坦面
12 回転体
12b 係合部
12d 規制部
13 筐体
14 角度検出部
17 摺動部材
17a 摺動子
18b 抵抗体パターン
18c 導電体パターン
20 弾性部材
20g 弾接部
f,F 弾性力
O 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、前記駆動軸の先端と係合する係合部を有するとともに前記駆動軸と一緒に回転する回転体と、前記回転体を回転可能に保持する筐体と、前記回転体の回転角度を検出する角度検出部と、前記駆動軸と前記回転体とを係合する係合手段とを有する回転検出装置において、
前記係合手段は、前記駆動軸の一部を前記駆動軸が延びる軸心方向に平行となる面でカットすることにより形成された平坦面と、前記係合部内に設けられ且つ前記回転体に対する前記駆動軸の回転を規制する規制部と、前記係合部内に配置されるとともに前記駆動軸を弾圧して前記駆動軸の回転を前記回転体に伝達する弾性部材とを有しており、
前記弾性部材が前記軸心に垂直に交差する任意の中心線よりも一方の側において前記平坦面を部分的に弾圧することにより、前記中心線よりも他方の側に位置する前記平坦面と前記規制部とが弾圧させられていることを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記駆動軸に作用するモーメントと、前記回転体の係合部に作用するモーメントが、前記軸心回りにおいて互いに逆方向となるように前記弾性部材の弾性力が作用していることを特徴とする請求項1記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記駆動軸に作用するモーメントの方向と前記駆動軸の回転方向とが同じ方向であることを特徴とする請求項2記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記駆動軸は、円柱状の固定部と、前記固定部の一方の端部に設けられた駆動部とを有しており、前記駆動部を前記駆動軸の軸方向と直交する断面で切断したときの前記駆動部の断面がD字形状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記駆動軸は、エンジンに設けられたスロットルバルブを回転させるためのスロットルバルブシャフトであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項6】
前記エンジンは自動二輪車用であることを特徴とする請求項5記載の回転検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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