説明

回転機

【課題】 接続導体に発生する応力の集中を低減し、接続導体の異常変形を効果的に防止した回転機を提供する。
【解決手段】 回転子コア110と、回転子コア110のスロットに配設された界磁巻線120と、界磁巻線間を接続する接続導体130を有する回転子100を備え、接続導体130は、回転子100の軸方向に直角な断面で見て、回転子100の径方向に突状に湾曲している湾曲部131を有する回転機が構成される。回転機は、変形防止部151を有する接続導体変形防止部材150を備えている。この変形防止部151は、接続導体130より回転子100の径方向外周側に、径方向外周側への移動が規制され、また、回転子100が回転している時に、接続導体130の湾曲部131の先端部132bが変形防止部151に当接可能に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機の回転子の回転子コアに配設された界磁巻線間を接続する接続導体に発生する応力を低減し、接続導体の変形を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、発電機等の回転機では、回転子の回転子コアにスロットが設けられ、スロットに複数の界磁巻線が取り付けられている。そして、所定の界磁巻線同士は、回転子の端部側で帯状の接続導体により接続されている。この接続導体は、接続している界磁巻線間にて突状の湾曲部が形成されている。これにより、接続している各界磁巻線が熱等により伸縮して接続導体に応力が発生した場合、接続導体の湾曲部が界磁巻線の伸縮量に応じて変形し、また、回転子が回転することによる遠心力で接続導体に応力が発生した場合、接続導体の湾曲部が遠心力に応じて変形し、界磁巻線間の接続状態を確実に保つことができる。
ところで、回転子が回転することにより発生する遠心力が接続導体の突状の湾曲部に作用して、湾曲部が尖頭状に異常変形する虞がある。そこで、接続導体の湾曲部の異常変形を防止するために、湾曲部の凹部に弾性体を配設する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭50−4504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では、接続導体の湾曲部の凹部に弾性体を配設しているため、遠心力により湾曲部が異常変形することは防止できる。しかしながら、弾性体の弾性変形範囲内では、湾曲部は変形可能である。
ここで、本発明者は、回転子の回転および停止の繰り返しによる遠心力の変化や、接続導体により接続されている界磁巻線の熱等による伸縮によって接続導体の湾曲部の変形、特に回転子の径方向での変形が繰り返された場合、湾曲部の両端部に応力が集中し、接続導体が異常変形する可能性があることを見出した。
したがって、本発明は、接続導体に発生する応力の集中を低減し、接続導体の異常変形を効果的に防止した回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
(請求項1に記載の発明)
請求項1に記載の発明によれば、回転子コアと、回転子コアのスロットに配設された界磁巻線と、界磁巻線間を接続する接続導体を有する回転子を備えた回転機が構成される。
接続導体は、回転子の軸方向に直角な断面で見て、径方向に突状に湾曲している湾曲部を有している。
また、本発明の回転機は、変形防止部を有する接続導体変形防止部材を備えている。
この変形防止部は、接続導体より回転子の径方向外周側に、径方向外周側への移動が規制され、また、回転子が回転している時に、接続導体の湾曲部の先端部が変形防止部に当接可能に配設されている。
これにより、回転子が回転している時に、接続導体の湾曲部の先端部の、回転子の径方向外周側への変形が規制される。
「接続導体」は、典型的には、接続されている各界磁巻線が熱等により伸縮した場合や、回転子が回転することによる遠心力が発生した場合に変形し、接続導体に応力が発生するのを防止するために、可撓性を有する導電性積層銅板等により構成される。
「接続導体」が配設される位置としては、界磁巻線間において回転子の径方向外周側の位置、界磁巻線間において回転子の径方向内周側の位置を含む。
「湾曲部」が回転子の軸方向に直角な断面で見て、回転子の径方向に突状に湾曲している態様としては、回転子の径方向中心側に凸状に湾曲している態様、すなわち、湾曲部が回転子の径方向外周側に開口部が設けられた凹部として形成されている態様や、回転子の径方向外周側に凸状に湾曲している態様、すなわち、湾曲部が回転子の径方向中心側に開口部が設けられた凸部として形成されている態様を含む。
「湾曲部の先端部」は、湾曲部が凸状に湾曲している場合には、凸状の外周面の上部(頂部)がこれに対応し、湾曲部が凹状に湾曲している場合には、凹状の外周面の下部(底部)がこれに対応する。
「変形防止部」としては、接続導体の幅(接続導体の回転子の軸方向の寸法)と同等程度、もしくは同等以上の軸方向寸法を有する部材として形成される。
「変形防止部は径方向外周側への移動が規制されて配設されている」という構成としては、変形防止部が、変形防止部より径方向外周側に固定して配設されている部材(例えば、エンドリングやエンドリングより中心側に配設されている絶縁筒)に当接している構成を用いることができる。また、変形防止部が固定して配設されている構成を用いることもできる。
また、「回転子が回転している時に、接続導体の湾曲部の先端部が変形防止部に当接可能」という構成は、遠心力の影響が大きい、回転子が定常回転速度近傍で回転している時に当接可能な構成であればよく、回転子が停止している時にも当接する構成、回転子が回転を開始した直後あるいは回転子の回転速度が定常回転速度より低い回転速度に達した時に当接する構成を含む。
【0005】
本発明の回転機によれば、接続導体の湾曲部に回転子の遠心力が作用する回転子の回転時に(少なくとも、大きい遠心力が作用する定常回転速度近傍での回転時に)、湾曲部の先端部が変形防止部に当接して、接続導体の湾曲部が回転子の径方向外周側へ変形するのが規制されている。このため、接続導体の湾曲部の両端部に応力が集中することを防止することができる。したがって、接続導体の異常変形を効果的に防止することができる。
【0006】
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の回転機の変形防止部は、接続導体の湾曲部と対向する側に、湾曲形状の外周面を有し、前記湾曲形状の外周面と接続導体の湾曲部の両端部との間に空隙が設けられている。
「変形防止部」は、概括的に、接続導体の湾曲部の、回転子の径方向の外周方向側の面に沿った外周面を有している。
「湾曲部の両端部」とは、接続導体の湾曲部と、接続導体の接続部(界磁巻線に接続する部分)との境界付近を広く包含する。
したがって、例えば、「湾曲部」が、回転子の径方向外周側に開口部が設けられた凹部として形成されている場合には、「変形防止部」は、接続導体の湾曲部の径方向外周側の凹状の外周面に概括的に沿った凸状の湾曲形状の外周面を有している。そして、変形防止部の凸状の湾曲形状の外周面の両端部と、接続導体の凹状の湾曲部の凹状の外周面の両端部との間には空隙が形成されている。また、少なくとも回転子が回転している時に、接続導体の凹状の湾曲部の凹状の外周面の先端部(底部)が、変形防止部の凸状の湾曲形状の外周面の先端部に当接可能に構成されている。
また、「湾曲部」が、回転子の径方向中心側に開口部が設けられた凸部として形成されている場合には、「変形防止部」は、接続導体の湾曲部の径方向の外周側の凸状の外周面に概括的に沿った凹状の湾曲形状の外周面を有している。そして、変形防止部の凹状の湾曲形状の外周面の両端部と、接続導体の凸状の湾曲部の凸状の外周面の両端部との間には空隙が形成されている。また、少なくとも回転子が回転している時に、接続導体の凸状の湾曲部の凸状の外周面の先端部(頂部)が、変形防止部の凹状の湾曲形状の外周面の先端部に当接可能に構成されている。
【0007】
本発明の回転機によれば、変形防止部の外周面の両端部と、接続導体の湾曲部の両端部との間に空隙が設けられている。これにより、接続されている各界磁巻線が熱等により伸縮しても、接続導体の湾曲部の両端部が界磁巻線の伸縮量に応じて回転子の円周方向に変形し、また、回転子が回転することによる遠心力で接続導体に応力が発生した場合、接続導体の湾曲部の両端部が遠心力に応じて回転子の円周方向に変形し、界磁巻線間の接続状態を確実に保つことができる。
【0008】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の回転機において、接続導体は、界磁巻線間の、回転子の径方向外周側に配置されているとともに、前記回転子の軸方向に直角な断面で見て、回転子の径方向中心側に突状に湾曲している湾曲部を有している。そして、変形防止部は、接続導体の湾曲部の、凹状の外周面により形成される凹部側に配設されている。
本発明の回転機によれば、接続導体を回転子の径方向外周側に配置しているため、変形防止部の、回転子の径方向外周側への移動を容易に規制することができる。例えば、回転機のエンドリングを用いて、変形防止部の、回転子の径方向外周側への移動を規制することができる。また、回転機の組立時に、接続導体、および接続導体変形防止部材の取り付けが容易である。
【0009】
(請求項4に記載の発明)
請求項4に記載の発明によれば、変形防止部は、回転子に固定して配設されている部材と接続導体の間に挟持されている、請求項1〜3のいずれかに記載の回転機が構成される。
回転子に固定して配設されている部材としては、典型的には、回転機のエンドリングがこれに該当する。なお、回転子に固定して配設されている部材と変形防止部材の間には他の部材、例えば、絶縁筒、短絡環が設けられていてもよい。
本発明の回転機によれば、変形防止部を回転子に固定する固定部材や、固定作業が不要となるため、回転機の組み立てが容易である。
【0010】
(請求項5に記載の発明)
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれかに記載の回転機において、接続導体変形防止部材は、変形防止部より回転子の径方向中心側に延在する一対の位置決め部を有し、一対の位置決め部は、接続導体の、回転子の軸方向両側に配置されている。
各位置決め部は、接続導体の各端面(回転子の径方向の各端面)に当接していてもよいし、接続導体の各端面から若干 (例えば、各端面から15mm程度ずつ)離間していてもよい。各位置決め部が接続導体の各端面に当接している場合には、変形防止部と接続導体との相対的な配置位置を容易に固定することができる。各位置決め部が接続導体の各端面から若干離間している場合には、接続導体変形防止部材が接続導体に配置された状態で、接続導体の各端面と各位置決め部との間に空隙が形成される。したがって、接続導体が位置決め部に隠れて視認不能になることがなく、空隙からその状態を確認することができる。
本発明の回転機によれば、位置決め部で、変形防止部の、回転子100の軸方向の移動が規制される。したがって、変形防止部が回転子の軸方向に移動して、変形防止部が存在しない部分に応力が集中して接続導体が異常変形するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接続導体に発生する応力を低減し接続導体の異常変形を効果的に防止した回転機が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の一例につき、図1〜図4を参照して説明する。
本実施の形態では、本発明を発電機として構成し、発電機の回転子の回転子コアには複数の界磁巻線が配設され、界磁巻線同士が、回転子の径方向外周側の位置で接続導体により接続されており、接続導体には突状の湾曲部が形成されていて、突状の湾曲部の異常変形を防止する接続導体変形防止部材が設けられている場合について説明する。
本実施の形態の発電機の回転子の概略構成図を図1に示す。図2には、界磁巻線を電気的に接続する接続導体の一例を斜視図で示す。図3には、図2に示した接続導体に、接続導体変形防止部材が配設されている状態を斜視図で示す。図4には、接続導体に、接続導体変形防止部材が配設されている状態の、回転子100の軸方向断面図を示す。
【0013】
本実施の形態の発電機は、固定子(特に、図示していない。)と、図1に示す回転子100を備えている。回転子100の回転子コア110の表面部には、所定の間隔をおいて複数のスロット(特に図示していない。)が形成されており、各スロットには界磁巻線120が配設され、ウェッジ(特に図示していない。)で保持されている。複数の界磁巻線120の軸方向端部付近(図1に示す回転子コア110の左側端部付近)には、エンドリング140が配設されている。
なお、本実施の形態では、図1に示すように、接続導体130は、界磁巻線120の、回転子100の径方向外周側で、エンドリング140が配設される箇所に設けられている。
【0014】
この接続導体130について、図2を参照して説明する。
接続導体130は、熱等による界磁巻線の伸縮に追随できるような可撓性を持たせるために薄板状に形成された導電材(例えば、銅や銅の合金)を用いて構成されている。また、接続導体130は、通電電流による発熱を防止し、なおかつ所定の強度を有するように上記した薄板状導電材が積層され、上面略長方形形状の部材(短辺方向の長さ、すなわち幅をWとする。)として構成されている。
そして、接続導体130は、接続する界磁巻線120の、回転子100の軸方向端部付近において、回転子100の径方向外周側に、接続導体130の長辺方向が回転子100の円周方向に向くように配置される。そして、接続導体130の両端側に設けられた接続部133が、各界磁巻線120に銀ロウ付け等により取り付けられている。なお、接続導体130には、接続する界磁巻線間において、湾曲部131が形成されている。湾曲部131は、回転子100の軸方向に直角な断面で見て、回転子100の径方向の中心方向側(図2に示す下側)に突状に湾曲している。
【0015】
本実施の形態の回転機では、接続導体130の湾曲部131に、図3、図4に示す接続導体変形防止部材150を配設する。
接続導体変形防止部材150は、変形防止部151と、変形防止部151と一体的に形成された位置決め部材153を備え、エポキシ樹脂等の絶縁材で形成されている。
変形防止部151は、湾曲部131の凹状の外周面132(回転子100の径方向の外周方向側の面)に概括的に沿った凸状の外周面152を有している。そして、変形防止部151は、接続導体130の幅(回転子100の軸方向の寸法)Wよりも大きい軸方向寸法Waを有する部材として形成されている。本実施の形態では、Wa=W+30(mm)に設定されている。
位置決め部材153は、変形防止部151の軸方向の各両端部に、回転子100の円周方向及び径方向中心側に延在する略直方体形状の部材として形成されている。
【0016】
このように構成された接続導体変形防止部材150が湾曲部131に配設されると、凸状の変形防止部151が、凹状の外周面132により形成される凹部内に配置され、接続導体変形防止部材150の変形防止部151の凸状の外周面152の先端部152bが、湾曲部131の凹状の外周面132の先端部(底部)132bと、微小な隙間を残して対向するように配置される。この時、変形防止部151の凸状の外周面152の両端部152aは、湾曲部131の凹状の外周面132の両端部132aと当接していない。すなわち、接続導体130の湾曲部131の凹状の外周面132の両端部132aと、接続導体変形防止部材150の変形防止部151の凸状の外周面152の両端部152aとの間には、空隙200が形成されている。
また、変形防止部151の高さh(図3に示す上下方向の寸法)および位置決め部材153の高さは、湾曲部131の凹状の外周面132の先端部132bから接続導体130の接続部133までの高さと、同等程度になるように設定されている。また、位置決め部材153と変形防止部151の、図4に示す上面(回転子の径方向外周側の面)は、略平面にて接続されている。もしくは、位置決め部材153と変形防止部151が一体成形されており、図4に示す上面は、略平面に形成されている。なお、図4に示す上面とエンドリング140(あるいは、エンドリングの内側に配設される絶縁筒)は、回転子が停止時には、微小な隙間を残して対向するように配置される。
また、変形防止部151は、接続導体130の幅(回転子100の軸方向の寸法)Wよりも30mm程大きい軸方向寸法Waを有している。したがって、変形防止部151は、この位置決め部材153により、接続導体130に対して、回転子100の軸方向へ移動すること(最大30mmを超える移動)が規制されている。
なお、変形防止部151は、接続導体130の幅から突出する部分がほぼ同じ寸法になるように接続導体130に配置されるのが好ましい。このように配置すれば、接続導体130の端面と位置決め部材153との間にはそれぞれ15mm程度(=30mm/2)の空隙が形成される。したがって、接続導体130が位置決め部材153に隠れて視認不能になることがなく、形成された空隙から、その状態を確認することができる。
また、Wa=W(mm)に設定してもよい。
【0017】
変形防止部151(接続導体変形防止部材150)とエンドリング(あるいは、エンドリングの径方向中心側に固定配置された絶縁筒)の間の隙間の寸法、および変形防止部151(接続導体変形防止部材150)と接続導体130の間の隙間の寸法は、回転子100が回転を開始した直後に、回転子100の遠心力により変形防止部151及び接続導体130が回転子100の径方向外周側に移動あるいは変形して、変形部防止部151がエンドリング(あるいは絶縁筒)に当接するとともに、接続導体130の湾曲部131の凹状の外周面131の先端部(底部)132bが変形防止部151の凸状の外周面152の先端部152bに当接し、変形防止部151の回転子100の径方向外周側への移動が規制されるとともに、接続導体130の先端部132bの回転子100の径方向外周側への変形が規制されるように設定されている。
これにより、本実施の形態では、回転子100の回転が開始された直後から、接続導体130の湾曲部131の先端部132bが回転子100の径方向外周側に変形することを防止することができる。したがって、接続導体130の湾曲部131の両端部132aに応力が集中することを防止することができ、接続導体の異常変形を防止することができる。
なお、変形防止部151(接続導体変形防止部材150)とエンドリング(あるいは絶縁筒)の間の隙間は、「0」にしてもよい。例えば、変形防止部151をエンドリング(あるいは絶縁筒)に当接させる方法を用いる。また、変形防止部151を接続導体130とエンドリング(あるいは絶縁筒)の間に挟持する構成としてもよい。また、変形防止部151の径方向の位置を固定にして配設する構成としてもよい。
【0018】
なお、変形防止部151(接続導体変形防止部材150)とエンドリング(あるいは、絶縁筒)の間の隙間の寸法や、変形防止部151(接続導体変形防止部材150)と接続導体130の間の隙間の寸法は、接続導体130の先端部132bの回転子100の径方向外周側への変形を防止する時期に応じて適宜設定可能(「0」を含む)である。
例えば、回転子100の停止時から接続導体130の先端部132bの径方向外周側への変形を防止する場合には、両隙間の寸法を「0」(回転子100の停止状態において、変形防止部151をエンドリング(あるいは、絶縁筒)に当接させるとともに、接続導体130の先端部132bを変形防止部151に当接させる)に設定する。あるいは、回転子100の回転速度が設定回転速度に達した時に接続導体130の先端部132bの径方向外周側への変形を防止する場合には、両隙間の寸法の少なくとも一方を本実施の形態の寸法より小さい値に設定する。
また、両隙間の寸法は、変形防止部151や接続導体130の材料や形状等に応じて異なる。
【0019】
また、本実施の形態の発電機によれば、変形防止部151の凸状の外周面152の両端部152aと、接続導体130の凹状の湾曲部131の凹状の外周面132の両端部132aとの間に空隙200が設けられている。これにより、接続されている各界磁巻線120が熱等により伸縮しても、接続導体130の湾曲部131の両端部132aが界磁巻線120の伸縮量に応じて回転子100の円周方向に変形し、界磁巻線間の接続状態を確実に保つことができる。また、回転子100の回転による遠心力に起因する各部材の変形量の差によって、接続導体130に作用する力を、接続導体130の湾曲部131の両端部132aが回転子100の円周方向に変形して緩和し、界磁巻線間の接続状態を確実に保つことができる。
【0020】
また、本実施の形態の発電機によれば、接続導体130が回転子100の径方向外周側に配置されるので、回転機の組立時に、接続導体130、および接続導体変形防止部材150を配置し易い。
また、本実施の形態の発電機によれば、位置決め部材153で、変形防止部151の、回転子100の軸方向の移動が規制される。したがって、変形防止部151が回転子100の軸方向に移動し、変形防止部151が存在しない部分に応力が集中して接続導体130が異常変形するのを防止することができる。
【0021】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されることなく、種々の変更、追加、削除が可能である。
実施の形態では、接続導体130が、接続する界磁巻線120の、回転子100の径方向外周側に設けられる場合について説明したが、接続する界磁巻線120の、回転子100の径方向内周側に設けられていてもよい。この場合、接続導体変形防止部材250を、回転子100の径方向の位置を規制する方法として、接着する方法や固定部材により固定する方法等を用いる。
【0022】
また、図5に示すように、接続導体230の湾曲部231が、回転子100の径方向の中心方向側に開口部が設けられた凸部として形成されていてもよい。この場合、接続導体変形防止部材250の変形防止部251は、接続導体230の湾曲部231の凸状の外周面(回転子100の径方向外周側の面)232に概括的に沿った凹状の外周面252を有している。そして、接続導体変形防止部材250の変形防止部251が、接続導体230の回転子100の径方向外周側に、変形防止部251の凹状の外周面252の先端部252b(底部)が、湾曲部231の凸状の外周面232の先端部(頂部)232bと、微小な隙間を残して対向するように配置される。この時、変形防止部251の凹状の外周面252の両端部252aは、湾曲部231の凸状の外周面232の両端部232aと当接していない。すなわち、接続導体230の湾曲部231の凸状の外周面232の両端部232aと、接続導体変形防止部材250の変形防止部251の凹状の外周面252の両端部252aとの間には、空隙200が形成されている。なお、このように、接続導体230の湾曲部231を、回転子の径方向の中心方向側に開口部が設けられた凸部として形成する構成は、接続導体230が、界磁巻線の、回転子の径方向内周側に設けられる場合に多く用いられる。
【0023】
また、接続導体130の湾曲部131の形状や寸法等、したがって、接続導体変形防止部材150の湾曲部131に対応する外周面152の形状や寸法等は種々変更可能である。例えば、凹凸が複数存在していてもよい。
また、本実施の形態では、本発明の回転機を発電機に適用した場合について説明したが、本発明は発電機以外の種々の回転機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態に係る発電機における回転子100の概略構成図を示す。
【図2】回転子100の回転子コア110に配設された複数の界磁巻線120のうち所定の界磁巻線間を電気的に接続する接続導体130の一例を斜視図で示す。
【図3】図2に示した接続導体130に接続導体変形防止部材150が配設されている状態を斜視図で示す。
【図4】接続導体130に接続導体変形防止部材150が配設されている状態の、回転子100の軸方向の断面図を示す。
【図5】接続導体230が、回転子100の径方向中心側に開口部が設けられた凸部として形成されている場合に、接続導体230に接続導体変形防止部材250が配設されている状態の、回転子100の軸方向の断面図を示す。
【符号の説明】
【0025】
100 回転子
110 回転子コア
120 界磁巻線
130 接続導体
131 湾曲部
140 エンドリング
150 接続導体変形防止部材
151 変形防止部
153 位置決め部材
200 空隙
W 接続導体130の幅
Wa 変形防止部151の軸方向寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子コアと、前記回転子コアのスロットに配設された界磁巻線と、界磁巻線間を接続する接続導体を有する回転子を備え、前記接続導体は、前記回転子の軸方向に直角な断面で見て、回転子の径方向に突状に湾曲している湾曲部を有する回転機であって、
変形防止部を有する接続導体変形防止部材を備え、
前記変形防止部は、前記接続導体より前記回転子の径方向外周側に、径方向外周側への移動が規制され、また、前記回転子が回転している時に、前記接続導体の湾曲部の先端部が前記変形防止部に当接可能に配設されている、
ことを特徴とする回転機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機であって、
前記変形防止部は、前記接続導体の湾曲部と対向する側に、湾曲形状の外周面を有し、前記湾曲形状の外周面と前記接続導体の前記湾曲部の両端部との間に空隙が設けられている、
ことを特徴とする回転機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転機であって、
前記接続導体は、前記界磁巻線間の、前記回転子の径方向外周側に配置されているとともに、前記回転子の軸方向に直角な断面で見て、前記回転子の径方向中心側に突状に湾曲している湾曲部を有し、
前記変形防止部は、前記接続導体の湾曲部の、凹状の外周面により形成される凹部側に配設されている、
ことを特徴とする回転機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の回転機であって、
前記変形防止部は、前記回転子に固定して配設されている部材と前記接続導体の間に挟持されている、
ことを特徴とする回転機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の回転機であって、
前記接続導体変形防止部材は、前記変形防止部より前記回転子の径方向中心側に延在する一対の位置決め部を有し、前記一対の位置決め部は、前記接続導体の、回転子の軸方向両側に配置されている、
ことを特徴とする回転機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−109599(P2006−109599A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291903(P2004−291903)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】