説明

回転軸のシール構造

【課題】シール空気の漏れ量が少なく、且つ確実にシール能力を発揮することができる回転軸のシール構造を提供する。
【解決手段】回転軸と、該回転軸の外周面の周方向に配置されるシールとを有する回転軸のシール構造であって、前記シールの回転軸と対向する面が、軸方向両端に位置する両端面と該両端面間に位置して両端面よりも回転軸からの位置が遠い中間面とを有することで、前記中間面と回転軸との間に空間部が形成され、前記空間部内部に外部から流体を供給する流体供給手段を備え、前記シールは、前記回転軸側に押圧されており、前記空間部内部に供給される流体が所定の圧力以上で前記回転軸から浮上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸と、該回転軸の外周面の周方向に配置されるシールとを有する回転軸のシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや蒸気タービン等の回転機械では、回転軸外周面と回転軸外周側に設けられる静止部との間の隙間を回転軸の軸方向に沿って流れる流体のシール構造の1つとして、ラビリンスシールを用いた回転軸のシール構造が広く知られている。
【0003】
ここで、ラビリンスシールとは、静止部側にフィンを設けることによって、回転軸と静止部の間に凹凸の隙間を複数段形成して、各段ごとに徐々に漏れ圧を下げて漏れ量を低減するものである。
【0004】
このようなラビリンスシールを用いた回転軸のシール構造は、回転軸と静止部との間にラビリンスシールを設けるとともに、シール部にシール空気を供給するものであり、シール空気とラビリンスシールとによって回転軸の軸方向に沿って流れる流体をシールするものである。このような回転軸のシール構造は例えば特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−343206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラビリンスシールにおける流体の漏洩量を削減するためには、回転軸とラビリンスシールを形成するフィンとのクリアランスを小さくすることが好ましい。しかしながら、従来のラビリンスシールにおいては、ラビリンスシールを形成するために金属材料を使用している。そのため、流体の漏洩量を削減するために、前記クリアランスを小さくすると、回転軸と前記フィンとが接触して回転軸を損傷する可能性がある。そのため、クリアランスの削減量即ち流体の漏洩量低減によるシール性能向上には限界があり、製作公差を考慮するとクリアランスを大きめに確保する必要がある。
【0007】
ところで、ラビリンスシールは、非接触式のシールであるから、前記シール空気のラビリンスシールからの漏れ量は、ラビリンスシールのクリアランスの設定に依存する。そのため、前記クリアランスを大きめに設定すると、ラビリンスシールからのシール空気の漏れ量が多くなる。
【0008】
つまり、従来のラビリンスシールを用いた回転軸のシール構造においては、回転軸の損傷防止のためには前記クリアランスを削減することには限界がある。そのため、前記クリアランスを大きめに確保する必要があるが、その場合ラビリンスシールからのシール空気の漏れ量が多くなり回転機械の効率が低下する可能性がある。
【0009】
そこで、シール空気量を削減することが考えられるが、シール空気量が少ないと、シール構造として充分な性能を発揮することができない場合がある。例えばガスタービンにラビリンスシールが用いられている場合であって前記クリアランスが大きいと、ガスタービン起動時にシール空気の供給圧不足となりラビリンスシール部で流体の逆流が生じる可能性がある。
【0010】
また、ラビリンスシールがガスタービンの軸受シールである場合、前記逆流が生じると、潤滑油が周辺の高温空気に晒されて劣化したり、潤滑油が外部に漏洩して、周辺の汚損や潤滑油量が不足したりする可能性がある。
【0011】
従って、本発明は係る従来技術の問題点に鑑み、シール空気の漏れ量が少なく、且つ確実にシール能力を発揮することができる回転軸のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明においては、回転軸と、該回転軸の外周面の周方向に配置されるシールとを有する回転軸のシール構造であって、前記シールの回転軸と対向する面が、軸方向両端に位置する両端面と該両端面間に位置して両端面よりも回転軸からの位置が遠い中間面とを有することで、前記中間面と回転軸との間に空間部が形成され、前記空間部内部に外部から流体を供給する流体供給手段を備え、前記シールは、前記回転軸側に押圧されており、前記空間部内部に供給される流体が所定の圧力以上で前記回転軸から浮上することを特徴とする。
ここで、前記押圧については、例えばバネ等の押圧手段を設けて前記シールを前記回転軸側に押圧してもよく、シールの変形や自重によってシールが回転軸側に押圧されるものであってもよい。
【0013】
これにより、前記空間部内部に前記流体供給手段より流体を供給することで、前記シールを回転軸から浮上させることができる。つまり、流体の供給により、回転軸とシールとの非接触状態を作り出すことができる。また、前記流体の供給圧力、供給量を調整することにより、シールの浮上量をコントロールすることができる。
つまり、前記流体の前記空間部内部への供給により、シールと回転軸との間隙を小さく確保することができるため、少ないシール空気でも確実にシール能力を発揮することができ、しかも例えばシール空気等の前記流体の漏れ量を小さく抑えることができる。
【0014】
また、前記シールは、前記回転軸に対向する面が前記回転軸よりも硬度が低い材料で形成されているとよい。
これにより、シールと回転軸が接触した場合でも、該接触に起因して回転軸が損傷することを防止できる。前記回転軸が低合金鋼である場合には、前記回転軸よりも硬度が低い材料として弾性材料を使用することが特に好ましい。弾性材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、カーボンナノチューブからなる粘弾性体等を挙げることができる。
【0015】
また、前記シールは、前記回転軸に対向する面を含む弾性材料部と、前記弾性材料部の外周側を補強する高剛性材料部とから形成されるとよい。
弾性材料部は、回転軸に対向する面を含んでいるため、シールと回転軸が接触した場合には弾性材料部が回転軸と接触することとなる。弾性材料部が回転軸と接触するため、該接触により回転軸が損傷することを防止できる。
また、弾性材料部の外側を金属材料で補強することにより、前記空間部内部に前記流体を導入して空間部の内圧が高くなることで弾性材料部が変形することを防止できる。
【0016】
また、前記シールは、前記回転軸の周方向に分割された複数のセグメントより構成されているとよい。
例えば回転軸の上部と下部とでは、シールに対して回転軸方向にかかる重力が異なる。そのため、前記シールを例えば1つのリング状の形状とした場合は、前記空間部に流体を供給した場合のシールの浮上量が位置によって異なる可能性がある。そこで、前記シールを複数のセグメントより構成することにより、セグメント毎に適切な流体量、流体圧力を調整することで、シール全体の回転軸からの浮上量を均一にすることができる。
【0017】
また、前記シール部を前記回転軸側に付勢する付勢手段を備えるとよい。
これにより、前記空間部への前記流体の非供給時にはシールと回転軸を接触した状態とすることができる。
【0018】
また、前記流体供給手段は、前記流体を前記空間部内に噴出するノズルを備えるとよい。
これにより、ノズルにより空間部内に流体を噴出することで、噴出された流体は膨張により空間部内で温度が低下する。そのため、ノズルを用いて流体温度を低下させることで、ノズルを使用しない場合の流体温度への耐熱性を有さない物質のシールが可能となる。
【0019】
前記中間面の少なくとも一部は、前記シールの軸方向中央側に向けて前記回転軸との距離が大きくなる傾斜面であるとよい。
これにより、空間部内に導入された流体の圧力を、前記傾斜面で回転軸から離れる方向に受けるので、少ない流体量でシールを回転軸から浮上させることができる。
【0020】
また、前記回転軸はガスタービンの回転軸であって、前記流体をシール空気とすることができる。
これにより、ガスタービンのジャーナル軸受など従来ラビリンスシールが使用されている箇所でのシール空気の漏れ量を削減できる。また、従来ラビリンスシールが使用されていた箇所にはシール空気が供給されている。そのため、流体としてシール空気を使用することで、既設ガスタービンは流体の供給系統を新たに設けることなく改造することが可能である。また、新設ガスタービンについては従来と大きく設計を変更する必要がなく、設計に係る費用を抑えることができる。
【0021】
また、前記回転軸は蒸気タービンの回転軸であって、前記流体は蒸気であり、蒸気タービンのグランドシールに適用されるとよい。
蒸気タービンのグランドシール部には、グランドシール蒸気が供給されている。そのため、そのため、流体として蒸気を使用することで、既設蒸気タービンは流体の供給系統を新たに設けることなく改造することが可能である。また、新設蒸気タービンについては従来と大きく設計を変更する必要がなく、設計に係る費用を抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シールに用いる流体の漏れ量が少なく、且つ確実にシール能力を発揮することができる回転軸のシール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例に係る回転軸のシール構造が適用されるガスタービン最終ディスク後部のキャビティ部を示す断面図である。
【図2】実施例に係るシール部12を示す概略構成図である。
【図3】実施例に係るシール部12を構成するセグメントの1つを示す斜視図である。
【図4】実施例に係るシール部12を構成するセグメントの1つ及びその周辺を示す断面図である。
【図5】シール部12を構成するセグメントの1つを示す別の例の断面図である。
【図6】セグメントを構成する弾性材料部を示す別の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例】
【0025】
まず、図1を用いて、本発明のシール構造が適用される一例であるガスタービンの構成について説明する。
図1は、実施例に係る回転軸のシール構造が適用されるガスタービン最終ディスク後部のキャビティ部を示す断面図である。
【0026】
図1に示すように、ガスタービン1の最終段のディスク2の周縁に植設されたブレード2aの後端部と隙間10を介して、タービン軸6方向にやや傾斜を設けて配設された円環状のディフューザ4が設けられている。ディフューザ4とディフューザ4の内周側のタービン軸6外周面上に配設された排気側軸受部9で周囲が包囲されたキャビティ部Aには、軸シール用空気管14の一端側が開口している。また、軸シール用空気管14からキャビティAに圧縮空気が供給されるように構成されており、該供給された圧縮空気の一部を、前端のシール部12を介してシール部7に供給できるように構成されている。
【0027】
図1に示す構成においては、キャビティ部Aには、軸シール用空気管14が取付けられていて、高温排気ガスE/Gの圧力PG より高圧のシール空気を送り込めるようになっている。そのため、シール空気によって、排気側軸受部9を構成する軸受8、軸受油切り11、シール部7などの部品は、高温排気ガスE/Gから隔離されている。
【0028】
以上の構成において、本発明の回転軸のシール構造は、シール部7、シール部12に適用されるものである。
【0029】
次に、図2を用いて本発明のシール構造の構成の概略について説明する。
図2は、実施例に係るシール部12を示す概略構成図である。
【0030】
図2に示すように、回転軸6の周方向にはシール部12が設けられている。シール部12は、回転軸6の周に沿って配置される8つのセグメント12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g及び12hから構成されている。また、各セグメント12a〜12hは、それぞれ幅aの間隙13を有して配置されている。ここで、幅aについては、後述するシール空気を排出することができる幅であればよい。また、各セグメント12a〜12hの回転軸6と対向する面であって軸方向両端に位置する両端面23a〜23hは、対向する回転軸6の外表面に沿って形成されている。
【0031】
次に、図3及び図4を用いてシール部12を構成するセグメントの構成について説明する。
図3は実施例に係るシール部12を構成するセグメントの1つを示す斜視図であり、図4は実施例に係るシール部12を構成するセグメントの1つ及びその周辺を示す断面図である。なお、図3及び図4においては回転軸6の上側に配置されるセグメント12aについて示している。セグメント12b〜12gは以下において特に説明する場合を除きセグメント12aと同じ構造であるので、セグメント12aについてのみ説明しセグメント12b〜12gについては説明を省略する。
【0032】
図3及び図4に示すように、セグメント12aは、弾性材料部22、高剛性材料部24及びシール空気供給手段26とを有して構成されている。
また、セグメント12aは、図4に示すように、排気側軸受部9のセグメント固定部13に固定されている。
【0033】
弾性材料部22は、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、カーボンナノチューブを主成分とする粘弾性体などのガスタービン1の仕様に耐えうる耐熱性を有し、且つ回転軸6よりも例えばビッカース硬さなどの硬度が低い弾性材料で形成されている。
特に、カーボンナノチューブを主成分とする粘弾性材料は、耐熱性に優れ、1000℃程度まで粘弾性を維持できるので、高温の過酷な環境下でも十分に用いることができる。
なお、カーボンナノチューブ(CNT)を主成分とする粘弾性材料は、例えば、スパッタリングによりシリコン基板上に鉄触媒を付着させ、アルゴンイオンによる反応性イオンエッチングにより触媒を調製した後、この基板上にスーパーグロース法によってCNTを合成して得たCNT構造体を圧縮することで作製できる。なお、CNTを主成分とする粘弾性材料は、参考文献「Ming Xu, Don N. Futaba, Takao Yamada, Motoo Yumura and Kenji Hata, "Carbon Nanotubes with Temperature-Invariant Viscoelasticity from -196℃ to 1000℃," Science, Vol. 330, No. 6009, pp.1364-1368 (2010), Published online 3 December 2010. DOI:10.1126/science.1194865」に記載された手法により作製してもよい。
【0034】
また、弾性材料部22は、回転軸6と対向する面が、回転軸の軸方向両端に位置する両端面23aと該両端面23a間に位置して両端面よりも回転軸からの位置が遠い中間面25aとを有することで、中間面25aと回転軸6との間に空間部28が形成されるように構成されており、その断面は図4に示すようにΩ状の形状である。
【0035】
高剛性材料部24は、金属材料などの高剛性材料で形成されており、弾性材料部22の外周側に弾性材料部22を補強して取り付けられている。
【0036】
シール空気供給手段26は、軸シール用空気管14からのシール空気を空間部28に供給するために設けられている。シール空気手段26は、セグメント固定部13内に形成されるキャビティ32と、空間部28とを連通するように、セグメント固定部13に固定されている。また、キャビティ32には、軸シール用空気管14からのシール空気が供給される供給路34が設けられている。なお、本実施例においては、軸シール用空気管14からのシール空気をシール空気供給手段26より空間部28に供給しているが、軸シール用空気管14からのシール空気とは別系統の空気をシール空気供給手段26より空間部28に供給してもよい。
【0037】
また、図4において、付勢手段であるコイルバネ30が設けられている。コイルバネ30は、セグメント12aを回転軸6側に押圧するものである。コイルバネ30は、空間部28へのシール空気非供給時にセグメント12aの両端面23aが回転軸6の外表面に接触し、空間部28へのシール空気供給時に空間部28内の空気圧、空間部28内の前記空気の受圧面積、セグメント12aの自重を考慮してセグメント12aの両端面23aが回転軸6の外表面から浮上する程度のバネ力を有するコイルバネを採用する。なお、例えばセグメント12aや12hのように回転軸6の上部に位置するセグメントにおいては、その重さによっては、自重によってコイルバネ30を設けなくても空間部28へのシール空気非供給時にセグメントの回転軸対向面が回転軸6の外表面に接する場合がある。この場合にはコイルバネ30は設けなくてもよい。
【0038】
以上の構成のシール部12を例にした本発明の回転軸のシール構造の動作について説明する。
ガスタービン1の非駆動時即ち回転軸6の非回転時や、ガスタービン1の起動時即ち回転軸6が低速回転である段階には、空間部28へのシール空気の供給を遮断又は供給量を微量にする。これにより、セグメント12aはコイルバネ30によって、回転軸6方向に押圧され両端面23aが回転軸6の外表面に接触している状態となる。セグメント12b〜12hも同様である。セグメント12a〜12hと回転軸6が接触することにより、シール部12で確実にシールを行うことができる。また、回転軸6が非回転または低速回転であり、各セグメント12a〜12hの回転軸6と接触する両端面23a〜23hは、前述のように回転軸6よりも硬度の低い弾性材料で形成しているため、各セグメント12a〜12hと回転軸6との接触により回転軸6が損傷することもない。
【0039】
そして、ガスタービン1が駆動され回転軸6が高速の定速回転の状態になると、軸シール用空気管14からのシール空気が、供給路34及びキャビティ32を介してシール空気供給手段26より空間部28内へ連続的に導入される。空間部28内にシール空気が連続的に導入されると、空間部28内部の圧力が高まり、セグメント12aが回転軸6から浮上する。セグメント12aの空間部28へのシール空気の供給圧力、供給量を調整することにより、シールの浮上量をコントロールすることができる。セグメント12aが浮上すると、空間部28に連続的に供給されたシール空気は、前記浮上により形成されたセグメント12aと回転軸6との間の隙間及び各セグメント間の隙間13より排出されるため、空間部28における圧力は低下するので、セグメント12aが回転軸6から一定の浮上量を保った状態でバランスする。なお、該浮上量を、回転軸6の回転によってもセグメント12aと回転軸6が接触しない範囲で出来る限り小さくするようにコントロールすると、シール空気の使用量が少なくなり、またシール空気の漏洩量が少なくなるため好ましい。また、セグメント12aの空間部28から排出されたシール空気は、セグメント12aの浮上により両端面23aと回転軸6の形成された隙間やセグメント間の隙間13から空間部28外に排出されエアカーテンの役割を果たす。なお、セグメント12b〜12hについても同様である。
以上の動作により、回転軸6の定速回転時には、シール空気の空間部28内部への供給により、各セグメント12a〜12hと回転軸6との間隙を小さく確保することができるので、シール空気の漏れ量が少なく、且つ確実にシール能力を発揮することができる。
【0040】
ここで、図5はシール部12を構成するセグメントの1つを示す別の例の断面図である。図5において、図4と同一の符号は図4と同様の構成のものであるから説明を省略する。
シール空気として高温の空気を用い、シール部12によりシール空気の高温への耐熱性を有さない物質をシールする場合には、図5に示すようにシール空気供給手段をノズル26’とし、空間部28にシール空気を噴出する機構とすることが好ましい。ノズルにより空間部28内にシール空気を噴出することで、噴出されたシール空気は膨張により空間部28内で温度が低下するからである。なお、38はシール空気用のマニホールドであり、31は板バネであって後述するコイルバネ30と同様の役割を果たすものである。
【0041】
また、図6はセグメント23aを構成する弾性材料部22を示す別の例の断面図である。図6において、図4と同一の符号は図4と同様の構成のものであるから説明を省略する。
図6に示した弾性材料部22においては、中間面25aの一部に、軸方向中央側に向けて回転軸6との距離が大きくなる傾斜面27aが形成されている。中間面25aの一部を傾斜面27aとすることで、空間部28内に導入されたシール空気の圧力を傾斜面27aで回転軸から離れる方向に受けるので、少ないシール空気量で弾性部材22(セグメント12a)を回転軸から浮上させることができる。
【0042】
以上に説明した本実施例によれば、少ないシール空気の供給量で、確実にシール能力を発揮することができる。
【0043】
また、回転軸6と接触する可能性のある両端面23a〜23hを回転軸よりも硬度の低い弾性材料で形成することにより、両端面23a〜23hと回転軸6が接触した場合でも、該接触に起因して回転軸6が損傷することを防止できる。
【0044】
また、弾性材料部22の外側を高剛性材料部24で補強することにより、空間部28内部にシール空気を導入し、空間部28の内圧が高くなることで弾性材料部22が変形することを防止できる。
【0045】
また、シール部12を複数(本実施例においては8つ)のセグメント12a〜12hより構成することによって、例えばセグメント毎にシール空気の供給量、供給圧力を調整することで、シール12全体の回転軸からの浮上量を均一にすることができる。
【0046】
なお、本実施例においては、発明の回転軸のシール構造をガスタービンに適用した場合について説明したが、蒸気タービンのグランドシール部に適用することもできる。この場合、空間部にシール空気でなく蒸気を供給するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
シール空気の漏れ量が少なく、且つ確実にシール能力を発揮することができる回転軸のシール構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ガスタービン
6 回転軸
12 シール部(シール)
12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12h セグメント
22 弾性材料部
24 金属材料部
26 シール空気供給手段(流体供給手段)
26’ ノズル(流体供給手段)
28 空間部
30 コイルバネ(付勢手段)
31 板バネ(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、該回転軸の外周面の周方向に配置されるシールとを有する回転軸のシール構造であって、
前記シールの回転軸と対向する面が、軸方向両端に位置する両端面と該両端面間に位置して両端面よりも回転軸からの位置が遠い中間面とを有することで、前記中間面と回転軸との間に空間部が形成され、
前記空間部内部に外部から流体を供給する流体供給手段を備え、
前記シールは、前記回転軸側に押圧されており、前記空間部内部に供給される流体が所定の圧力以上で前記回転軸から浮上することを特徴とする回転軸のシール構造。
【請求項2】
前記シールは、前記回転軸に対向する面が前記回転軸よりも硬度が低い材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転軸のシール構造。
【請求項3】
前記シールは、
前記回転軸に対向する面を含む弾性材料部と、
前記弾性材料部の外周側を補強する高剛性材料部とから形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の回転軸のシール構造。
【請求項4】
前記シールは、前記回転軸の周方向に分割された複数のセグメントより構成されていることを特徴とする請求項1〜3何れかに記載の回転軸のシール構造。
【請求項5】
前記シール部を前記回転軸側に付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の回転軸のシール構造。
【請求項6】
前記流体供給手段は、前記流体を前記空間部内に噴出するノズルを備えたことを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の回転軸のシール構造。
【請求項7】
前記中間面の少なくとも一部は、前記シールの軸方向中央側に向けて前記回転軸との距離が大きくなる傾斜面であることを特徴とする請求項1〜6何れかに記載の回転軸のシール構造。
【請求項8】
前記回転軸はガスタービンの回転軸であって、
前記流体はシール空気であることを特徴とする請求項1〜7何れかに記載の回転軸のシール構造。
【請求項9】
前記回転軸は蒸気タービンの回転軸であって、
前記流体は蒸気であり、
蒸気タービンのグランドシールに適用されることを特徴とする請求項1〜7何れかに記載の回転軸のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−211615(P2012−211615A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76692(P2011−76692)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】