説明

回転軸ロック機構

【課題】 回転軸の回転を任意の回転位置で確実に規制することのできる回転軸ロック機構を提供する。
【解決手段】 軸心回りで回転可能に支承された回転軸の回転を規制する回転軸ロック機構において、一端側から他端側に向けて外径が縮小するテーパ軸部を有し、該テーパ軸部の軸心が回転軸の軸心と直交する方向に延びるように配置されるとともに、該テーパ軸部の軸心方向に移動可能に設けられた軸規制体と、前記テーパ軸部の大径側から小径側に向く付勢力を前記軸規制体に対して作用させる付勢手段とを備え、前記軸規制体は、前記付勢手段による付勢でテーパ軸部が回転軸の外周に圧接するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己の軸心回りで回転可能に設けられた回転軸の回転を規制する回転軸ロック機構に関し、特には、回転軸を任意の回転位置で固定するための回転軸ロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自己の軸心回りで回転可能に設けられた回転軸の回転を規制する回転軸ロック機構として、図8(a)及び図8(b)に示す如く、回転軸50a,50bを支持する軸支部材51a,51bに対して該回転軸50a,50bが挿入される軸穴510a,510bと直交するようにネジ穴511a,511bが穿設され、該ネジ穴511a,511bに螺入した止ネジ52a,52bで回転軸50a,50bの外周面を押圧するようにしたもの(以下、止ネジ式ロック機構という)や、図8(c)に示す如く、回転軸50cを支持する軸支部材51cに対して軸状のロックピン53が回転軸50cの挿入される軸穴510cと直交する方向に移動可能に内装され、回転軸50cの外周に設けられた凹部500…にロックピン53を嵌入するようにしたもの(以下、嵌合式ロック機構という)が広く一般的に採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これらの回転軸ロック機構5a,5b,5cは、例えば、対象物の配置を変更するための送りネジを回転軸50a,50b,50cとして備える工作機械、回転軸50a,50b,50cを回転させてゼロ点調整を行う測定器具等のように、回転軸50a,50b,50cを所望する回転位置(調整後の回転位置)で固定する(軸の回転を規制する)必要のある機器や、状況に応じて回転軸50a,50b,50cの回転を規制する必要のある機器等に採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4042205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、止ネジ式ロック機構5a,5bには、図8(a)に示す如く、先端が自己の軸心に対して交差する方向に広がる面で構成された止ネジ52aを採用したものや、図8(b)に示す如く、先端部が先細りに形成された止ネジ52bを採用したものがあるが、何れも回転軸50a,50bを所望する回転位置で固定することができない場合がある。
【0006】
具体的に説明すると、止ネジ式ロック機構5a,5bは、止ネジ52a,50bを回転させることで回転軸50a,50bに対して止ネジ52a,52bを接離させるようになっているため、回転軸50a,50bの回転を規制するに際して止ネジ52a,52bの先端が回転しつつ回転軸50a,50bの外周に当接することになる。
【0007】
そのため、図8(a)に示す止ネジ52aの先端が面で構成される止ネジ式ロック機構5aでは、所望する回転位置に調整した回転軸50aの回転を規制するに際し、該回転軸50aが回転してしまうことがある。
【0008】
すなわち、止ネジ52aの先端が面で構成される止ネジ式ロック機構5aは、軸支部材51aに穿設されるネジ穴511aの穴精度(ネジ穴511aと軸穴510aとの直角度)や止ネジ52aの先端面の加工精度(自己の軸心に対する直角度)の影響で、止ネジ52aの先端(面)が自己の軸心からずれた位置で回転軸50aの外周に片当たりすることがあるため、回転軸50aの回転を規制するに際し、止ネジ52aの回転に伴う回転力が回転軸50aを回転させる方向に作用して該回転軸50aを回転させてしまうことがある。
【0009】
また、図8(b)に示す止ネジ52の先端部が先細りに形成される止ネジ式ロック機構5bは、回転軸50bの回転を規制するときに止ネジ52bが回転軸50bを傷つけることがあるため、回転軸50bの回転を規制するに際し、回転軸50bの外周面についた傷と止ネジ52bの先端との同調によって回転軸50bが回転してしまうことがある。
【0010】
すなわち、止ネジ52bの先端部が先細りに形成される止ネジ式ロック機構5bは、止ネジ52bの先端が尖っているため、回転軸50bの回転を規制するときに止ネジ52bの先端(尖端)が回転軸50bに食い込んで該回転軸50bの外周上に窪み(凹状の傷)が形成されることがある。
【0011】
そのため、止ネジ52bの先端部が先細りに形成される止ネジ式ロック機構5bは、回転軸50bの回転を規制するに際して回転軸50bの外周に形成された窪みに止ネジ52bの先端が入り込み、回転軸50bがこれに同調して回転してしまうことがある。特に、回転軸50bの回転位置の調整(回転の規制)を複数回行った場合、回転軸50bの外周面に複数の窪みが形成されるため、先に形成された窪みに止ネジ52bの先端が入り込む可能性が高くなり、回転軸50bが回転してしまう可能性が高くなる。
【0012】
従って、止ネジ式ロック機構5a,5bは、何れも回転軸50a,50bを所望する回転位置で確実に固定できない場合がある。
【0013】
これに対し、嵌合式ロック機構5cは、図8(c)に示す如く、回転軸50cの外周面に設けられた凹部500…にロックピン53を嵌入することで、回転軸50cを回転させることなく固定することができるが、凹部500…の形成された特定の位置でしか回転軸50cの回転を規制することができない。すなわち、嵌合式ロック機構5cは、任意の回転位置で回転軸50cの回転を規制できないといった問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、回転軸の回転を任意の回転位置で確実に規制することのできる回転軸ロック機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る回転軸ロック機構は、軸心回りで回転可能に軸支された回転軸の回転を規制する回転軸ロック機構において、一端側から他端側に向けて外径が縮小するテーパ軸部を有し、該テーパ軸部の軸心が回転軸の軸心と直交する方向に延びるように配置されるとともに、該テーパ軸部の軸心方向に移動可能に設けられた軸規制体と、前記テーパ軸部の一端側から他端側に向く付勢力を前記軸規制体に対して作用させる付勢手段と、を備え、前記付勢手段による付勢で前記軸規制体がテーパ軸部の他端側に変位してテーパ軸部が回転軸の外周に圧接するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成の回転軸ロック機構によれば、軸規制体のテーパ軸部が回転軸の外周に圧接したときに、テーパ軸部と回転軸との圧接位置に付勢手段による付勢力の作用方向と交差する方向で回転軸の軸心側に向く圧接力が作用する。すなわち、回転軸の軸心と直交する方向に軸心が延びるように配置されたテーパ軸部の外周面は、他端側から一端側に向けて自己の軸心から遠ざかるように形成され、回転軸と対向する領域が回転軸の外周に対して接線方向又は略接線方向に延びるため、前記付勢手段による付勢でテーパ軸部が回転軸の外周に圧接すると、テーパ軸部のテーパ(傾斜)によって該テーパ軸部と回転軸との圧接位置に対して付勢力(テーパ軸部の軸心方向に作用する力)の分力が回転軸とテーパ軸部との圧接力としてテーパ軸部の外周面と交差する方向に作用する。
【0017】
これにより、回転軸は、軸規制体のテーパ軸部に押圧された状態になるため、回転が規制された状態になる。そして、上記構成の回転軸ロック機構は、軸規制体がテーパ軸部の軸心方向にのみ移動可能に構成されているため、断面円形の回転軸が自己の軸心を中心に回転してもテーパ軸部の外周と回転軸の外周の相対的な関係に変化がなく、付勢手段の付勢でテーパ軸部が回転軸の外周に圧接したときに常に同じ状態になる。これにより、該回転軸ロック機構は、回転軸の回転を任意の回転位置で規制することができる。
【0018】
そして、上記構成の回転軸ロック機構は、軸規制体がテーパ軸体の軸心方向に移動可能に設けられているため、付勢手段の付勢に抗して軸規制体を移動させる(テーパ軸部の小径部側から大径部側に向く力を作用させて軸規制体を移動させる)ことで、テーパ軸部の外周が回転軸の外周から離間することになる。これにより、回転軸に対する軸規制体(テーパ軸部)の圧接が解除されるため、回転軸を自己の軸心回りで回転させることのできる状態になる。
【0019】
本発明の一態様として、前記回転軸の外周に環状溝が形成され、前記軸規制体は、テーパ軸部の軸心が環状溝の溝幅中央と対応するように配置され、前記付勢手段による付勢で前記軸規制体がテーパ軸部の他端側に変位してテーパ軸部が前記環状溝の周方向と直交する方向の溝幅を画定して回転軸の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジのそれぞれに対して部分的に圧接するように構成されていることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、テーパ軸部が回転軸(一対のエッジ)に圧接したときに、一対のエッジとテーパ軸部との二カ所の圧接位置で異なる方向に圧接力が作用することになるため、回転軸の回転を確実に規制することができる。
【0021】
すなわち、テーパ軸部の外周は、一端側から他端側に向けて外径が縮小し、他端側から一端側に向けて自己の軸心から離間した態様となるため、付勢手段の付勢力の作用でテーパ軸部が回転軸の一対のエッジに圧接すると、テーパ軸部の外周における二カ所の圧接位置の作用する圧接力(付勢力の分力)は、テーパ軸部の軸心と二カ所の圧接位置とを結ぶ放射線の延長方向に作用することになる。これにより、テーパ軸部が一対のエッジを異なる方向に押圧することになるため、回転軸の回転を確実に規制することができる。
【0022】
本発明の他態様として、回転軸を軸支する軸支部材に対して前記軸規制体がテーパ軸部の軸心方向に移動可能に内挿され、該軸規制体は、付勢手段による付勢で軸支部材内にある回転軸の外周にテーパ軸部が圧接するように設けられていることが好ましい。このようにすれば、回転軸及び軸規制体の両者の相対的な位置関係を一定に保つことができ、回転軸に対して軸規制体(テーパ軸部)が圧接した状態(回転軸の回転を規制した状態)で確実に維持させることができる。また、回転軸ロック機構が軸支部材に内装されるため、当該回転軸ロック機構が採用される装置をコンパクトにすることができる。
【0023】
この場合、前記軸規制体は、テーパ軸部の他端に該他端の外径以下に設定された小径軸部が同心で延設され、該小径軸部の先端を押圧してテーパ軸部を回転軸から離間させるように構成されてもよい。このようにすれば、小径軸部に対する押圧とその解除でテーパ軸部を回転軸に対して接離させることができる。従って、簡単な操作で回転軸の回転の規制とその解除とを行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の回転軸ロック機構によれば、回転軸の回転を任意の回転位置で確実に規制することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転軸ロック機構を備えた成型品保持装置の説明図であって、(a)は、正面図を示し、(b)は、側面図を示す。
【図2】同実施形態に係る回転軸ロック機構を備えた成型品保持装置の概略横断面図を示す。
【図3】図1(a)のI−I断面図であって、(a)は、第一回転軸の回転を規制した状態を示し、(b)は、第一回転軸の回転の規制を解除した状態を示す。
【図4】図1(a)のII−II断面図であって、(a)は、第二回転軸の回転を規制した状態を示し、(b)は、第二回転軸の回転の規制を解除した状態を示す。
【図5】同実施形態に係る第一ロック機構(回転軸ロック機構)の縦断面図であって、(a)は、図3(a)のIII−III断面図を示し、(b)は、図3(b)のIV−IV断面図を示す。
【図6】同実施形態に係る第二ロック機構(回転軸ロック機構)の縦断面図であって、(a)は、図4(a)のV−V断面図を示し、(b)は、図4(b)のVI−VI断面図を示す。
【図7】本発明の他実施形態に係る回転軸ロック機構の概略断面図であって、(a)は、付勢手段(圧縮コイルバネ)がテーパ軸部の大径部側に配置された回転軸ロック機構の概略断面図を示し、(b)は、付勢手段(引っ張りコイルバネ)がテーパ軸部の小径部側に配置された回転軸ロック機構の概略断面図を示し、(c)は、軸規制体を内挿する段付穴の第一大径穴部を非貫通状態にした回転軸ロック機構の概略断面図を示す。
【図8】従来の回転軸ロック機構の概略断面図であって、(a)は、先端が面で構成された止ネジで回転軸の回転を規制する回転軸ロック機構の概略断面図を示し、(b)は、先端部が先細りに形成された止ネジで回転軸の回転を規制する回転軸ロック機構の概略断面図を示し、(c)は、回転軸の外周に形成された凹部に対してロックピンを嵌合させることで回転軸の回転を規制する回転軸ロック機構の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る回転軸ロック機構について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においては、射出成型機に装備された金型から成型品を取り出すべく、ロボットアームの先端に取り付けられる成型品保持装置(以下、単に保持装置という)に適用した場合を一例に説明する。
【0027】
かかる保持装置は、射出成形機に装備された一対の金型が型割されたときに、ロボットアームが傾動することで型割された金型間に配置されるもので、型割された一対の金型のうちの一方の金型の型面上に残る四つの成型品を保持できるように構成されている。
【0028】
具体的には、前記保持装置、図1(a)及び図1(b)に示す如く、ロボットアーム(図示しない)に対して直接的又は間接的に連結されるユニットベース10と、該ユニットベース10上に平面的に二行二列で配置された四つの保持手段11…とを備えている。
【0029】
そして、前記保持装置1は、四つの保持手段11…の配置を変更可能に構成されている。すなわち、前記保持装置1は、上記構成に加え、各列F1,F2の保持手段11…を行方向に相対的に接離させる第一作動手段12と、各行R1,R2の保持手段11…を列方向に相対的に接離させる第二作動手段13とを備えている。
【0030】
前記ユニットベース10は、枠体100と、該枠体100を両側から挟むように配置された一対の補強部材101,102とを備えている。
【0031】
本実施形態に係る枠体100は、図1(a)に示す如く、正面視矩形状(正方形状)に形成されている。すなわち、枠体100は、互いに間隔をあけて対向する一対の縦梁部100a,100bと、一対の縦梁部100a,100bの両端同士を連結した一対の横梁部100c,100dとで構成され、縦梁部100a,100b及び横梁部100c,100dが四角形状(本実施形態においては正方形状)の領域を画定している。
【0032】
一対の補強部材101,102のそれぞれは、一方向に延びる第一帯状部101a,102aと、該第一帯状部101a,102aの長手方向の中央部で第一帯状部101a,102aと直交する第二帯状部101b,102bとで構成されている。そして、各補強部材101,102は、第一帯状部101a,102aの両端部が一対の縦梁部100a,100bに固定されるとともに第二帯状部101b,102bの両端部が一対の横梁部100c,100dに固定されている。すなわち、一方の補強部材101は、枠体100における縦梁部100a,100b及び横梁部100c,100dの延びる方向と直交する方向の一方の面側に配置され、第一帯状部101aの両端部が一対の縦梁部100a,100bの長手方向の中央部に固定されるとともに第二帯状部101bの両端部が一対の横梁部100c,100dの長手方向の中央部に固定されている。これに対し、他方の補強部材102は、枠体100における縦梁部100a,100b及び横梁部100c,100dの延びる方向と直交する方向の他方の面側に配置され、第一帯状部102aの両端部が一対の縦梁部100a,100bの長手方向の中央部に固定されるとともに第二帯状部102bの両端部が一対の横梁部100c,100dの長手方向の中央部に固定されている。
【0033】
前記四つの保持手段11…は、それぞれ同一構成になっており、本実施形態においては、互いに対峙するように配置される一対の挟持爪110,110と、該一対の挟持爪110,110を接離させるアクチュエータ111と、アクチュエータ111が一方の面上に固定されるベースプレート112と、ベースプレート112の他方の面に対して面直交方向に延設された角柱状の案内軸113とを備えている。
【0034】
各保持手段11…は、アクチュエータ111の作動により、一対の挟持爪110,110がベースプレート112の一方の面に沿って移動して互いに接離するようになっている。これにより、各保持手段11…は、一対の挟持爪110,110が接離して成形品の保持(挟持)とその解除とが可能になっている。なお、本実施形態において、各保持手段11…は、それぞれの挟持爪110,110の先端が枠体100の画定する領域の中央に向くように配置されている。
【0035】
前記第一作動手段12及び第二作動手段13は、図2に示す如く、ユニットベース10に内装されている。すなわち、第一作動手段12及び第二作動手段13は、縦梁部100a,100b及び横梁部100c,100dが画定する矩形状の領域内に配置されている。
【0036】
前記第一作動手段12は、保持手段11…の各列F1,F2(図1(a)参照)に沿って配置された一対の第一案内体120,121と、該一対の第一案内体120,121に跨るように配置された回転軸(以下、第一回転軸という)122とで構成されている。
【0037】
各第一案内体120,121は、一方向に長手をなすように形成されており、長手方向の長さが保持手段11…を行R1,R2単位で列方向に移動(接離)させる移動範囲以上に設定されている。すなわち、各第一案内体120,121は、二行R1,R2の保持手段11…が最大に離間したときの最大間隔以上の長さに設定されている。
【0038】
前記保持装置1は、枠体100が矩形状に形成されているため、一対の第一案内体120,121は、縦梁部100a,100bと平行又は略平行になるように互いに間隔をあけて枠体100内に配置される。また、一対の第一案内体120,121は、枠体100が画定する矩形状の領域の中央を基準にして対称になるように配置されている。
【0039】
各第一案内体120,121は、長手方向の中央部を除き、該中央部の両側に長手方向に延びる一対の第一スリット120a,121aが形成されている。そして、一方の第一案内体120の中央部には、第一回転軸122の後述する第一正ネジ122aを螺合させる第一正ネジ穴120bが前記第一スリット120aの貫通方向と直交する方向に延びるように貫設され、他方の第一案内体121の中央部には、第一回転軸122の後述する第一逆ネジ122bを螺合させる第一逆ネジ穴121bが前記第一スリット121aの貫通方向と直交する方向に延びるように貫設されている。
【0040】
前記第一回転軸122は、両端部が枠体100(縦梁部100a,100b)に軸支され、自己の軸心回りで回転可能になっている。具体的には、前記保持装置1は、枠体100を構成する一対の縦梁部100a,100bのそれぞれに対して貫通穴(以下、第一軸穴という)H1が穿設され、前記第一回転軸122の両端部が縦梁部100a,100bの第一軸穴H1に挿入されている。これにより、保持装置1の基礎となるユニットベース10の枠体100(縦梁部100a,100b)は、第一回転軸122を軸支する軸支部材としても機能するようになっている。
【0041】
前記第一回転軸122は、軸心方向の中央側から一端側に向けて一方の第一案内体120に螺合する第一正ネジ122aが形成される一方、前記中央側から他端側に向けて他方の第一案内体121に螺合する第一逆ネジ122bが形成されている。また、前記第一回転軸122は、一端面上に六角レンチを嵌入するための六角穴(図示しない)が穿設されている。
【0042】
そして、前記第一回転軸122は、第一正ネジ122aが一方の第一案内体120の第一正ネジ穴120bに螺合されるとともに第一逆ネジ122bが他方の第一案内体121の第一逆ネジ穴121bに螺合された上で両端部が枠体100の縦梁部100a,100bに穿設された第一軸穴H1に挿入されている。これにより、第一回転軸122は、枠体100(ユニットベース10)に両端が軸支され、縦梁部100aの第一軸穴H1から露呈する一端面上の六角穴に六角レンチを嵌合できるようになっている。
【0043】
前記第二作動手段13は、保持手段11…の各行R1,R2(図1(a)参照)に沿って配置された一対の第二案内体130,131と、該一対の第二案内体130,131に跨るように配置された回転軸(以下、第二回転軸という)132とで構成されている。
【0044】
各第二案内体130,131は、一方向に長手をなすように形成されており、長手方向の長さが保持手段11…を列F1,F2単位で行方向に移動(接離)させる移動範囲以上に設定されている。すなわち、各第二案内体130,131は、二列F1,F2の保持手段11…が最大に離間したときの最大間隔以上の長さに設定されている。
【0045】
前記保持装置1は、枠体100が矩形状に形成されているため、一対の第二案内体130,131は、横梁部100c,100dと平行又は略平行になるように互いに間隔をあけて枠体100内に配置される。また、一対の第二案内体130,131は、枠体100が画定する矩形状の領域の中央を基準にして対称になるように配置されている。
【0046】
各第二案内体130,131は、長手方向の中央部を除き、該中央部の両側に長手方向に延びる一対の第二スリット130a,131aが形成されている。そして、一方の第二案内体130の中央部には、第二回転軸132の後述する第二正ネジ132aを螺合させる第二正ネジ穴130bが前記第二スリット130aの貫通方向と直交する方向に延びるように貫設され、他方の第二案内体131の中央部には、第二回転軸132の後述する第二逆ネジ132bを螺合させる第二逆ネジ穴131bが前記第二スリット131aの貫通方向と直交する方向に延びるように貫設されている。
【0047】
前記第二回転軸132は、両端部が枠体100(横梁部100c,100d)に軸支され、自己の軸心回りで回転可能になっている。具体的には、前記保持装置1は、枠体100を構成する一対の横梁部100c,100dのそれぞれに対して貫通穴(以下、第二軸穴という)H2が穿設され、前記第二回転軸132の両端部が横梁部100c,100dの第二軸穴H2に挿入されている。これにより、保持装置1の基礎となるユニットベース10の枠体100(横梁部100c,100d)は、第二回転軸132を軸支する軸支部材としても機能するようになっている。
【0048】
なお、本実施形態に係る保持装置1は、第二案内体130,131が第一案内体120,121に跨る(重なる)ように配置されるため、横梁部100c,100dに穿設された第二軸穴H2(第二回転軸132を軸支するための貫通穴H2)は、縦梁部100a,100bに穿設された第一軸穴H1(第一回転軸122を軸支するための貫通穴H1)に対して両貫通穴H1,H2の穴心と直交する方向に変位(本実施形態においては、枠体100の他方の面側に変位)して形成されている。
【0049】
前記第二回転軸132は、軸心方向の中央側から一端側に向けて一方の第二案内体130に螺合する第二正ネジ132aが形成される一方、前記中央側から他端側に向けて他方の第二案内体131に螺合する第二逆ネジ132bが形成されている。また、前記第二回転軸132は、一端面上に六角レンチを嵌入するための六角穴(採番しない)が穿設されている(図1(b)参照)。
【0050】
そして、前記第二回転軸132は、第二正ネジ132aが一方の第二案内体130の第二正ネジ穴130bに螺合されるとともに第二逆ネジ132bが他方の第二案内体131の第二逆ネジ穴131bに螺合された上で両端部が枠体100の横梁部100c,100dに穿設された第二軸穴H2に挿入されている。これにより、第二回転軸132は、枠体100(ユニットベース10)に両端が軸支され、横梁部100c,100dの第二軸穴H2から露呈する一端面上の六角穴に六角レンチを嵌合できるようになっている。
【0051】
上記構成の第一作動手段12及び第二作動手段13は、第一回転軸122及び第二回転軸132の軸心方向の中央で交差するように枠体100内に配置されている。これにより、一対の第一案内体120,121の一端側の一部が一方の第二案内体130の両端側の一部と重なり合うとともに、一対の第一案内体120,121の他端側の一部が他方の第二案内体131の両端側の一部と重なり合うことで、第一案内体120,121と第二案内体130,131との交点が四カ所に形成され、各交点において、第一スリット120a,121aの一部と第二スリット130a,131aの一部とが重なりあった四角形状(本実施形態においては略正方形状)の軸挿通領域Sが形成されている。
【0052】
そして、前記保持装置1は、各軸挿通領域S(四つの交点)に対して各保持手段11…の案内軸113が挿通されている。これにより、四角形状の軸挿通領域Sを画定する第一案内体120,121と第二案内体130,131とに対して角柱状の案内軸113が干渉して保持手段11…が回り止めされ、各保持手段11…の挟持爪110,110が一定の向きで配置された状態で維持できるようになっている。そして、前記保持装置1は、六角レンチを用いて第一回転軸122及び第二回転軸132の少なくとも何れか一方を回転操作することで、保持手段11…の姿勢を保ちつつ各保持手段11…の配置を射出成形装置に装備される金型の型(成形品)の配置に対応させることができるようになっている。
【0053】
より具体的には、本実施形態に係る保持装置1は、図1(a)に示す如く、第一回転軸122を軸心回りで回転させると、一対の第一案内体120,121の両方が第一回転軸122に沿って移動し、互いに接離することになる。すなわち、一方の第一案内体120に第一回転軸122の第一正ネジ122aが螺合されるとともに他方の第一案内体121に第一回転軸122の第一逆ネジ122bが螺合されているため、第一回転軸122を回転させると、一対の第一案内体120,121が第一回転軸122に沿って逆方向に移動し、互いに接離することになる。そうすると、軸挿通領域Sに挿通された案内軸113が第一案内体120,121(第一スリット120a,121aの両側にある実体のある部分)に押されて該案内軸113を備えた保持手段11…全体が該第一案内体120,121と同一方向に移動することになり、異なる列F1,F2の保持手段11…同士が行方向で接離することになる。
【0054】
また、本実施形態に係る保持装置1は、第二回転軸132を軸心回りで回転させると、一対の第二案内体130,131の両方が第二回転軸132に沿って移動し、互いに接離することになる。すなわち、一方の第二案内体130に第二回転軸132の第二正ネジ132aが螺合されるとともに他方の第二案内体131に第二回転軸132の第二逆ネジ132bが螺合されているため、第二回転軸132を回転させると、一対の第二案内体130,131が第二回転軸132に沿って逆方向に移動し、互いに接離することになる。そうすると、軸挿通領域Sに挿通された案内軸113が第二案内体130,131(第二スリット130a,131aの両側にある実体のある部分)に押されて該案内軸113を備えた保持手段11…全体が第二案内体130,131と同一方向に移動することになり、異なる行R1,R2の保持手段11…同士が列F1,F2方向で接離することになる。
【0055】
これにより、本実施形態に係る保持装置1は、第一回転軸122及び第二回転軸132を任意の回転位置に回転させることで、保持手段11…の配置を調整できるようになっている。
【0056】
これに伴い、前記保持装置1は、図1(a)及び図1(b)に示す如く、保持手段11…の配置(第一回転軸122及び第二回転軸132の回転位置)を調整後の状態で維持させるべく、軸心回りで回転可能に軸支された回転軸122,132(第一回転軸122、第二回転軸132)の回転を規制する回転軸ロック機構2,3を備えている。
【0057】
本実施形態に係る保持装置1は、保持手段11…の配置を調整するための回転軸として第一回転軸122と第二回転軸132とを備えているため、第一回転軸122用の回転軸ロック機構(以下、第一ロック機構という)2と、第二回転軸132用の回転軸ロック機構(以下、第二ロック機構という)3とが設けられている。
【0058】
前記第一ロック機構2及び第二ロック機構3は、図3(a)、及び図4(a)に示す如く、共通した構造であり、一端側から他端側に向けて外径が縮小するテーパ軸部200,300を有し、該テーパ軸部200,300の軸心が回転軸122,132の軸心と直交する方向に延びるように配置されるとともに、該テーパ軸部200,300の軸心方向に移動可能に設けられた軸規制体20,30と、前記テーパ軸部200,300の一端側(大径部側)から他端側(小径部側)に向く付勢力Fを前記軸規制体20,30に対して作用させる付勢手段21,31とを備え、前記付勢手段21,31による付勢で前記軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の他端側に変位してテーパ軸部200,300が回転軸122,132の外周に圧接するように構成されている。
【0059】
本実施形態に係る第一ロック機構2及び第二ロック機構3は、軸規制体20,30が回転軸122,132を軸支する軸支部材(枠体)100に対してテーパ軸部200,300の軸心方向にのみ移動可能に内挿されている。
【0060】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る第一ロック機構2は、図3(a)及び図3(b)に示す如く、一方の縦梁部100aに第一回転軸122の端部を挿入する第一軸穴H1に対して直交する方向に貫通した第一段付穴22が穿設されており、軸規制体(以下、第一ロック機構2の軸規制体を第一軸規制体という)20がテーパ軸部200の軸心と第一段付穴22の穴心とが一致又は略一致するように該第一段付穴22内に内挿されている。
【0061】
そして、本実施形態において、第一軸規制体20は、一端側から他端側に向けて外径が縮小する前記テーパ軸部200と、該テーパ軸部200の小径側の端部に同心で連設された小径軸部201と、テーパ軸部200の大径側の端部に同心で連設された大径軸部202とを備えている。
【0062】
そして、前記第一段付穴22は、第一軸規制体20が上記構成にされることを前提に、枠体100の何れか一方の面側に形成される第一大径穴部220と、枠体100の何れか他方の面側に形成される第二大径穴部221と、第一大径穴部220と第二大径穴部221とを連通させる小径穴部222とで構成されている。すなわち、第一段付穴22は、第一大径穴部220と第二大径穴部221との間にこれらよりも小径な小径穴部222が設けられている。
【0063】
本実施形態において、第一段付穴22は、一方の補強部材101が固定される枠体100の一方の面側に第一大径穴部220が形成されるとともに、他方の補強部材102が固定される枠体100の他方の面側に第二大径穴部221が形成され、第一大径穴部220と第二大径穴部221との間に小径穴部222が形成されている。
【0064】
これにより、第一段付穴22の内部には、第一大径穴部220と小径穴部222との境界に外側(枠体100の一方の面側)に向く環状面223が小径穴部222を包囲するように形成され、第二大径穴部221と小径穴部222との境界にも外側(枠体100の他方の面側)に向く環状面224が小径穴部222を包囲するように形成されている。
【0065】
前記第一段付穴22の第一大径穴部220は、大径軸部202及びテーパ軸部200の大径部分の外径よりも大きな穴径に設定されている。該第一段付穴22の第一大径穴部220は、外部に向けて開放した開口を枠体100の一方の面に形成し、第一回転軸122の端部を挿入する第一軸穴H1と重なるように形成されている。すなわち、第一段付穴22の第一大径穴部220は、第一軸穴H1と重複するように形成されることで第一軸穴H1と連通し、該連通部分から第一軸穴H1に挿通された第一回転軸122の外周の一部が臨出している。
【0066】
前記第一段付穴22の第二大径穴部221は、付勢手段である後述の第一圧縮コイルバネ21を内装するとともに該第一圧縮コイルバネ21の一端を受ける環状面224を小径穴部222との境界に形成するために設けられている。そのため、前記第一段付穴22の第二大径穴部221は、第一圧縮コイルバネ21の外径よりも大きな穴径に設定され、該第一圧縮コイルバネ21の全体又は略全体を収容できる深さに設定されている。
【0067】
そして、前記第一段付穴22の小径穴部222は、第一軸規制体20の小径軸部201を挿入可能な穴径に設定されている。本実施形態において、第一段付穴22の小径穴部222は、小径軸部201の外径に対応した穴径に設定されている。すなわち、第一段付穴22の小径穴部222は、内周面に第一軸規制体20の小径軸部201の外周面が摺接して第一軸規制体20全体を軸心方向に案内できるように形成されている。
【0068】
なお、本実施形態においては、枠体100を構成する縦梁部100a,100bの両面中央部に補強部材101,102が固定されているため、補強部材101,102の第一大径穴部220及び第二大径穴部221と対応する部位には、これらと同様又はこれら以上の穴径に設定された開口(採番しない)が設けられている。
【0069】
そして、前記第一軸規制体20は、第一段付穴22の第一大径穴部220にテーパ軸部200及び大径軸部202が収容されるとともに第一段付穴22の小径穴部222及び第二大径穴部221に小径軸部201が挿通され、該小径軸部201の先端部を枠体100の他方の面よりも外側に突出させている。
【0070】
本実施形態において、第一ロック機構2の付勢手段21は、圧縮コイルバネ(以下、第一圧縮コイルバネという)で構成されており、第一軸規制体20の小径軸部201に外嵌された状態で第一段付穴22の第二大径穴部221に収容されている。そして、第一軸規制体20に対してテーパ軸部200の大径側から小径側に向く付勢力Fを作用させるべく、前記第一圧縮コイルバネ21は、一端が第一段付穴22の第二大径穴部221と小径穴部222との境界にある環状面224に受けられ、他端が第一軸規制体20の小径軸部201の先端側に嵌着されたバネ受体203(本実施形態においては、Eリング)に受けられている。これにより、第一圧縮コイルバネ21の付勢力F(第一圧縮コイルバネ21が伸長状態に戻ろうとする復元力F)で第一軸規制体20に対してテーパ軸部200の大径側から小径側に付勢できるようになっている。
【0071】
そして、上述の如く、第一軸規制体20は、軸心方向に移動可能に設けられているため、上述の如く、第一圧縮コイルバネ21の付勢力Fが作用することで、テーパ軸部200及び大径軸部202が小径軸部201(第二大径穴部221)側に引っ張られ、テーパ軸部200の外周が第一回転軸122の外周に圧接するようになっている。本実施形態に係る第一ロック機構2は、第一軸穴H1に挿入された第一回転軸122が第一段付穴22の第一大径穴部220内に臨出し、第一軸規制体20のテーパ軸部200が第一段付穴22の第一大径穴部220内に収容されているため、上述の如く、第一圧縮コイルバネ21による付勢でテーパ軸部200の外周が第一段付穴22の第一大径穴部220内に臨出した第一回転軸122の外周の一部に圧接するようになっている。
【0072】
本実施形態に係る第一ロック機構2は、第一回転軸122の外周に環状溝(以下、第一環状溝という)123が形成され、前記第一軸規制体20は、テーパ軸部200の軸心が第一環状溝123の溝幅中央と対応するように配置されている。すなわち、第一軸規制体20は、自己の軸心と第一回転軸122の外周に形成された第一環状溝123の溝幅方向の中央とを第一回転軸122と直交する同一仮想面上に位置させた状態で、第一回転軸122の小径軸部201の外周の一部が第一環状溝123内に入り込むように配置されている。そして、本実施形態に係る第一ロック機構2は、第一圧縮コイルバネ21の付勢で第一軸規制体20(テーパ軸部200)の外周が第一環状溝123の周方向と直交する方向の溝幅を画定して第一回転軸122の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジE1,E1のそれぞれに対して部分的に圧接するように構成されている(図5(a)参照)。
【0073】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る第一軸規制体20は、上述の如く、第一大径穴部220内に臨出した第一回転軸122にテーパ軸部200を圧接させるようになっているため、前記第一環状溝123は、第一軸穴H1と第一段付穴22(第一大径穴部220)との連通部分に対応して形成されている。
【0074】
そして、前記第一環状溝123は、図5(a)に示す如く、周方向と直交する方向の溝幅(第一環状溝123の周方向と直交する方向の溝幅を画定して第一回転軸122の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジE1,E1の間隔)がテーパ軸部200の小径部の外径よりも狭く設定されている。そして、第一軸穴H1の穴心(第一回転軸122の軸心)と第一段付穴22の穴心(第一軸規制体20の軸心)との距離は、第一回転軸122の半径と第一軸規制体20のテーパ軸部200の大径部の半径との合計よりも短く設定されている。本実施形態において、第一環状溝123内に第一軸規制体20の小径軸部201の外周の一部が入り込むように配置されるため、第一軸穴H1の穴心(第一回転軸122の軸心)と第一段付穴22の穴心(第一軸規制体20の軸心)との距離は、第一回転軸122の半径とテーパ軸部200の小径部の半径との合計寸法から小径軸部201の外周が第一環状溝123内に入り込む量を差し引いた寸法に設定されている。
【0075】
そして、本実施形態に係る第一環状溝123の最大溝深さは、テーパ軸部200の外周が第一環状溝123内に入り込む量よりも深く設定され、テーパ軸部200の外周面が一対のエッジE1,E1に対して部分的に圧接するようになっている。本実施形態に係る第一環状溝123は、一対のエッジE1,E1を始点及び終点にした円弧面SFで画定されている。そして、図5(b)に示す如く、第一環状溝123を画定する円弧面SFの曲率半径は、小径軸部201の外周面の曲率半径と対応しており、第一軸規制体20がテーパ軸部200の軸心方向に移動するとき(テーパ軸部200が第一回転軸122から離間するとき)に小径軸部201の外周が円弧面SF上を摺動するように構成されている。従って、該第一環状溝123を画定する円弧面SFの曲率半径は、第一軸規制体20のテーパ軸部200の外周の曲率半径よりも小さくなっており、テーパ軸部200の外周の一部が第一環状溝123内に入り込んだときに、該テーパ軸部200の外周が一対のエッジE1,E1にのみ当接するようになっている。
【0076】
本実施形態に係る第二ロック機構3は、図4(a)及び図4(b)に示す如く、一方の横梁部100cに第二回転軸132の端部を挿入する第二軸穴H2に対して直交する方向に貫通した第二段付穴32が穿設されており、軸規制体(以下、第二ロック機構3の軸規制体を第二軸規制体という)30がテーパ軸部300の軸心と第二段付穴32の穴心とが一致又は略一致するように該第二段付穴32内に内挿されている。
【0077】
そして、本実施形態において、第二軸規制体30は、第一軸規制体20と同様に、一端側から他端側に向けて外径が縮小する前記テーパ軸部300と、該テーパ軸部300の小径側の端部に同心で連設された小径軸部301と、テーパ軸部300の大径側の端部に同心で連設された大径軸部302とを備えている。
【0078】
そして、前記第二段付穴32は、第二軸規制体30が上記構成にされることを前提に、枠体100の何れか一方の面側に形成される第一大径穴部320と、枠体100の何れか他方の面側に形成される第二大径穴部321と、第一大径穴部320と第二大径穴部321とを連通させる小径穴部322とで構成されている。すなわち、段付穴は、第一大径穴部320と第二大径穴部321との間にこれらよりも小径な小径穴部322が設けられている。
【0079】
本実施形態において、第二段付穴32は、他方の補強部材102が固定される枠体100の他方の面側に第一大径穴部320が形成されるとともに、一方の補強部材101が固定される枠体100の一方の面側に第二大径穴部321が形成され、第一大径穴部320と第二大径穴部321との間に小径穴部322が形成されている。
【0080】
これにより、第二段付穴32の内部には、第一大径穴部320と小径穴部322との境界に外側(枠体100の他方の面側)に向く環状面323が小径穴部322を包囲するように形成され、第二大径穴部321と小径穴部322との境界にも外側(枠体100の一方の面側)に向く環状面324が小径穴部322を包囲するように形成されている。
【0081】
前記第二段付穴32の第一大径穴部320は、大径軸部302及びテーパ軸部300の大径部分の外径よりも大きな穴径に設定されている。該第二段付穴32の第一大径穴部320は、外部に向けて開放した開口を枠体100の他方の面に形成し、第二回転軸132の端部を挿入する第二軸穴H2と重なるように形成されている。すなわち、第二段付穴32の第一大径穴部320は、第二軸穴H2と重複するように形成されることで第二軸穴H2と連通し、該連通部分から第二軸穴H2に挿通された第二回転軸132の外周の一部が臨出している。
【0082】
前記第二段付穴32の第二大径穴部321は、付勢手段である後述の第二圧縮コイルバネ31を内装するとともに該第二圧縮コイルバネ31の一端を受ける環状面324を小径穴部322との境界に形成するために設けられている。そのため、前記第二段付穴32の第二大径穴部321は、第二圧縮コイルバネ31の外径よりも大きな穴径に設定され、該第二圧縮コイルバネ31の全体又は略全体を収容できる深さに設定されている。
【0083】
そして、前記第二段付穴32の小径穴部322は、第二軸規制体30の小径軸部301を挿入可能な穴径に設定されている。本実施形態において、第二段付穴32の小径穴部322は、小径軸部301の外径に対応した穴径に設定されている。すなわち、第二段付穴32の小径穴部322は、内周面に第二軸規制体30の小径軸部301の外周面が摺接して第二軸規制体30全体を軸心方向に案内できるように形成されている。
【0084】
なお、本実施形態においては、枠体100を構成する横梁部100c,100dの両面中央部に補強部材101,102が固定されているため、補強部材101,102の第一大径穴部320及び第二大径穴部321と対応する部位には、これらと同様又はこれら以上の穴径に設定された開口が設けられている。
【0085】
そして、前記第二軸規制体30は、第二段付穴32の第一大径穴部320にテーパ軸部300及び大径軸部302が収容されるとともに第二段付穴32の小径穴部322及び第二大径穴部321に小径軸部301が挿通され、該小径軸部301の先端部を枠体100の他方の面よりも外側に突出させている。
【0086】
本実施形態において、第二ロック機構3の付勢手段31についても圧縮コイルバネ(以下、第二圧縮コイルバネという)で構成されており、第二軸規制体30の小径軸部301に外嵌された状態で第二段付穴32の第二大径穴部321に収容されている。そして、第二軸規制体30に対してテーパ軸部300の大径側から小径側に向く付勢力Fを作用させるべく、前記第二圧縮コイルバネ31は、一端が第二段付穴32の第二大径穴部321と小径穴部322との境界にある環状面324に受けられ、他端が第二軸規制体30の小径軸部301の先端側に嵌着されたバネ受体303(本実施形態においては、Eリング)に受けられている。これにより、第二圧縮コイルバネ31の付勢力F(第二圧縮コイルバネ31が伸長状態に戻ろうとする復元力F)で第二軸規制体30に対してテーパ軸部300の大径側から小径側に付勢できるようになっている。
【0087】
そして、上述の如く、第二軸規制体30は、軸心方向に移動可能に設けられているため、上述の如く、第二圧縮コイルバネ31の付勢力Fが作用することで、テーパ軸部300及び大径軸部302が小径軸部301(第二大径穴部321)側に引っ張られ、テーパ軸部300の外周が第二回転軸132の外周に圧接するようになっている。本実施形態に係る第二ロック機構3は、第二軸穴H2に挿入された第二回転軸132が第二段付穴32の第一大径穴部320内に臨出し、第二軸規制体30のテーパ軸部300が第二段付穴32の第一大径穴部320内に収容されているため、上述の如く、第二圧縮コイルバネ31による付勢でテーパ軸部300の外周が第二段付穴32の第一大径穴部320内に臨出した第二回転軸132の外周の一部に圧接するようになっている。
【0088】
本実施形態に係る第二ロック機構3は、第二回転軸132の外周に環状溝(以下、第二環状溝という)133が形成され、前記第二軸規制体30は、テーパ軸部300の軸心が第二環状溝133の溝幅中央と対応するように配置されている。すなわち、第二軸規制体30は、自己の軸心と第二回転軸132の外周に形成された第二環状溝133の溝幅方向の中央とを第二回転軸132と直交する同一仮想面上に位置させた状態で、第二回転軸132の小径軸部301の外周の一部が第二環状溝133内に入り込むように配置されている。そして、本実施形態に係る第二ロック機構3は、第一ロック機構2と同様に、第二圧縮コイルバネ31の付勢で第二軸規制体30(テーパ軸部300)の外周が第二環状溝133の周方向と直交する方向の溝幅を画定して第二回転軸132の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジE2,E2のそれぞれに対して部分的に圧接するように構成されている(図6(a)参照)。
【0089】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る第二軸規制体30は、上述の如く、第一大径穴部320内に臨出した第二回転軸132にテーパ軸部300を圧接させるようになっているため、前記第二環状溝133は、第二軸穴H2と第二段付穴32(第一大径穴部320)との連通部分に対応して形成されている。
【0090】
そして、前記第二環状溝133は、図6(a)に示す如く、周方向と直交する方向の溝幅(第二環状溝133の周方向と直交する方向の溝幅を画定して第二回転軸132の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジE2,E2の間隔)がテーパ軸部300の小径部の外径よりも狭く設定されている。そして、第二軸穴H2の穴心(第二回転軸132の軸心)と第二段付穴32の穴心(第二軸規制体30の軸心)との距離は、第二回転軸132の半径と第二軸規制体30のテーパ軸部300の大径部の半径との合計よりも短く設定されている。本実施形態において、第二環状溝133内に第二軸規制体30の小径軸部301の外周の一部が入り込むように配置されるため、第二軸穴H2の穴心(第二回転軸132の軸心)と第二段付穴32の穴心(第二軸規制体30の軸心)との距離は、第二回転軸132の半径とテーパ軸部300の小径部の半径との合計寸法から小径軸部301の外周が第二環状溝133内に入り込む量を差し引いた寸法に設定されている。
【0091】
そして、本実施形態に係る第二環状溝133の最大溝深さは、テーパ軸部300の外周が第二環状溝133内に入り込む量よりも深く設定され、テーパ軸部300の外周面が一対のエッジE2,E2に対して部分的に圧接するようになっている。本実施形態に係る第二環状溝133は、一対のエッジE2,E2を始点及び終点にした円弧面SFで画定されている。そして、図6(b)に示す如く、第二環状溝133を画定する円弧面SFの曲率半径は、小径軸部301の外周面の曲率半径と対応しており、第二軸規制体30がテーパ軸部300の軸心方向に移動するとき(テーパ軸部300が第二回転軸132から離間するとき)に小径軸部301の外周が円弧面SF上を摺動するように構成されている。従って、該第二環状溝133を画定する円弧面SFの曲率半径は、第二軸規制体30のテーパ軸部300の外周の曲率半径よりも小さくなっており、テーパ軸部300の外周の一部が第二環状溝133内に入り込んだときに、該テーパ軸部300の外周が一対のエッジE2,E2にのみ当接するようになっている。
【0092】
本実施形態に係る保持装置1が備える回転軸ロック機構2,3は、以上の通りであり、続いて、回転軸ロック機構2,3の作用について説明する。なお、上述の通り、第一ロック構造及び第二ロック構造は、配置が異なる以外は共通した構造であるため、以下において、回転軸122,132及び回転軸ロック機構2,3に係る各構成の第一及び第二の用語を省略し、総括的に説明することとする。
【0093】
上記構成の回転軸ロック機構2,3は、常態において圧縮コイルバネ21,31の付勢力Fが作用している。そのため、図3(a)及び図4(a)に示す如く、軸規制体20,30はテーパ軸部200,300の大径側から小径側に押され、テーパ軸部200,300の外周面が回転軸122,132の外周に圧接した状態になっている。そして、該回転軸ロック機構2,3は、軸規制体20,30のテーパ軸部200,300が回転軸122,132の外周に圧接した状態で、テーパ軸部200,300と回転軸122,132との圧接位置に圧縮コイルバネ21,31による付勢力Fの作用方向と交差する方向で回転軸122,132の軸心側に向く圧接力Fdが作用する。
【0094】
すなわち、回転軸122,132の軸心と直交する方向に軸心が延びるように配置されたテーパ軸部200,300の外周面は、一端側から他端側に向けて自己の軸心から遠ざかるように形成されているため、前記圧縮コイルバネ21,31による付勢でテーパ軸部200,300が回転軸122,132の外周に圧接すると、テーパ軸部200,300のテーパ(傾斜)によって該テーパ軸部200,300と回転軸122,132との圧接位置に対して付勢力F(テーパ軸部200,300の軸心方向に作用する力F)の分力Fdが回転軸122,132とテーパ軸部200,300との圧接力としてテーパ軸部200,300の外周面と交差方向に作用する。
【0095】
これにより、本実施形態に係る回転軸ロック機構2,3は、圧縮コイルバネ21,31(付勢手段21,31)の付勢により、軸規制体20,30のテーパ軸部200,300が回転軸122,132を押圧した状態になるため、回転軸122,132の回転を規制することができる。
【0096】
特に、本実施形態に係る回転軸ロック機構2,3は、図5(a)及び図6(a)に示す如く、回転軸122,132の外周に環状溝123,133が形成され、前記軸規制体20,30は、テーパ軸部200,300の軸心が環状溝123,133の溝幅中央と対応するように配置され、前記軸規制体20,30は、前記圧縮コイルバネ21,31による付勢でテーパ軸部200,300の外周が前記環状溝123,133の周方向と直交する方向の溝幅を画定して回転軸122,132の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジE1,E1,E2,E2のそれぞれに対して部分的に圧接するように構成されているため、テーパ軸部200,300が回転軸122,132(エッジE1,E1,E2,E2)に圧接したときに、一対のエッジE1,E1,E2,E2とテーパ軸部200,300の外周との二カ所の圧接位置で異なる方向に圧接力Fd,Fdが作用することになる。
【0097】
すなわち、テーパ軸部200,300の外周は、一端側から他端側に向けて外径が縮小し、他端側から一端側に向けて自己の軸心から離間した態様となるため、テーパ軸部200,300の軸心が環状溝123,133の溝幅中央と対応するように軸規制体20,30が配置されると、圧縮コイルバネ21,31の付勢力Fの作用で軸規制体20,30(テーパ軸部200,300)が回転軸122,132(一対のエッジE1,E1,E2,E2)に圧接するとき、テーパ軸部200,300の外周における周方向に間隔をあけた二カ所が環状溝123,133の溝幅を画定する一対のエッジE1,E1,E2,E2に対して圧接することになる。そうすると、テーパ軸部200,300の外周における二カ所の圧接位置の作用する圧接力(付勢力Fの分力)Fd,Fdは、テーパ軸部200,300の軸心を中心と圧接位置を結ぶ放射線の延長方向に作用することになる。
【0098】
これにより、本実施形態に係る回転軸ロック機構2,3は、テーパ軸部200,300が一対のエッジE1,E1,E2,E2を異なる方向に押圧することになるため、回転軸122,132の回転を確実に規制することができる。
【0099】
従って、本実施形態に係る保持装置1は、回転軸ロック機構2,3によって回転軸122,132の回転が規制されるため、該回転軸122,132の回転で移動する第一案内体120,121及び第二案内体130,131も定位置で維持する結果、第一案内体120,121及び第二案内体130,131の重複部分(軸挿通領域)に挿通された案内軸113が延設されたベースプレート112(すなわち、保持手段11…)が一定位置で維持することになる。
【0100】
そして、保持手段11…の配置を変更する場合、図3(b)及び図4(b)に示す如く、軸規制体20,30を小径軸部201,301側から押圧し、回転軸122,132に対するテーパ軸部200,300の圧接を解除する。すなわち、上記構成の回転軸ロック機構2,3は、軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の軸心方向に移動可能に設けられて圧縮コイルバネ21,31によって付勢されているため、圧縮コイルバネ21,31の付勢力Fに抗するように軸規制体20,30の小径軸部201,301(枠体100から突出した小径軸部201,301の先端)を押圧して軸規制体20,30を移動させる。そうすると、テーパ軸部200,300も軸心方向に移動して回転軸122,132に対して離間することになる。この状態で、回転軸122,132に対する圧接が解除される結果、回転軸122,132を回転させることのできる状態となる。
【0101】
そして、軸規制体20,30を小径軸部201,301側から押圧しつつ(回転軸122,132の回転の規制を解除しつつ)各回転軸122,132を六角レンチで回転させることで、第一案内体120,121及び第二案内体130,131が移動する結果、第一案内体120,121及び第二案内体130,131の重複部分(軸挿通領域S)に挿通された案内軸113も移動することになり、該案内軸113を備える保持手段11…全体が回転軸122,132の回転量(回転位置)に応じた配置に移動することになる。
【0102】
そして、各保持手段11…が所望する配置になると、軸規制体20,30に対する押圧を解除する。そうすると、図3(a)、図4(a)、図5(a)及び図6(a)に示す如く、圧縮コイルバネ21,31の付勢力Fで軸規制体20,30が元の位置に復帰し、テーパ軸部200,300の外周面が回転軸122,132の外周(エッジE1,E1,E2,E2)に圧接した状態になる。すなわち、本実施形態に係る回転軸ロック機構2,3は、軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の軸心方向にのみ移動可能に構成されているため、断面円形の回転軸122,132が自己の軸心を中心に回転してもテーパ軸部200,300の外周と回転軸122,132の外周の相対的な関係に変化がない。従って、本実施形態に係る回転軸ロック機構2,3は、圧縮コイルバネ21,31の付勢でテーパ軸部200,300が回転軸122,132の外周に圧接したときに常に同じ状態になるため、任意の回転位置で回転軸122,132の回転を規制することができる。
【0103】
以上のように、本実施形態に係る回転軸ロック機構2,3は、軸心回りで回転可能に軸支された回転軸122,132の回転を規制する回転軸ロック機構2,3において、一端側から他端側に向けて外径が縮小するテーパ軸部200,300を有し、該テーパ軸部200,300の軸心が回転軸122,132の軸心と直交する方向に延びるように配置されるとともに、該テーパ軸部200,300の軸心方向に移動可能に設けられた軸規制体20,30と、前記テーパ軸部200,300の一端側から他端側に向く付勢力Fを前記軸規制体20,30に対して作用させる付勢手段21,31と、を備え、前記付勢手段21,31による付勢で前記軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の他端側に変位してテーパ軸部200,300が回転軸122,132の外周に圧接するように構成されているため、回転軸122,132を軸心回りで回転させても常に回転軸122,132を軸規制体20,30のテーパ軸部200,300で押圧した状態にすることができ、回転軸122,132の回転を規制することができる。また、付勢手段21,31の付勢に抗して軸規制体20,30を移動させる(テーパ軸部200,300の小径側から大径側に向く力を作用させて軸規制体20,30を移動させる)ことで、回転軸122,132を自己の軸心回りで回転させることのできる状態にすることができる。
【0104】
特に、本実施形態に係る回転軸ロック機構2,3は、前記回転軸122,132の外周に環状溝123,133が形成され、前記軸規制体20,30は、テーパ軸部200,300の軸心が環状溝123,133の溝幅中央と対応するように配置され、前記付勢手段21,31による付勢で前記軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の他端側に変位してテーパ軸部200,300が前記環状溝123,133の周方向と直交する方向の溝幅を画定して回転軸122,132の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジE1,E1,E2,E2のそれぞれに対して部分的に圧接するように構成されているため、一対のエッジE1,E1,E2,E2とテーパ軸部200,300との二カ所の圧接位置で異なる方向に圧接力Fd,Fdを作用させることができ、回転軸122,132の回転を確実に規制することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る回転軸ロック機構2,3は、回転軸122,132を軸支する軸支部材(枠体)100に対して前記軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の軸心方向に移動可能に内挿され、該軸規制体20,30は、付勢手段21,31による付勢で軸支部材内にある回転軸122,132の外周にテーパ軸部200,300が圧接するように設けられているため、回転軸122,132及び軸規制体20,30の両者の相対的な位置関係を一定に保つことができ、回転軸122,132に対して軸規制体20,30(テーパ軸部200,300)が圧接した状態(回転軸122,132の回転を規制した状態)で確実に維持させることができる。また、回転軸ロック機構2,3が軸支部材に内装されるため、当該回転軸ロック機構が採用される装置(保持装置1)をコンパクトにすることができる。
【0106】
また、前記軸規制体20,30は、テーパ軸部200,300の他端に該他端の外径以下に設定された小径軸部201,301が同心で延設され、該小径軸部201,301は、先端が軸支部材100から突出するように形成され、該小径軸部201,301の先端を押圧してテーパ軸部200,300を回転軸122,132から離間させるように構成されているため、簡単な操作で回転軸122,132の回転の規制とその解除とを行うことができる。
【0107】
なお、本発明の回転軸ロック機構は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0108】
上記実施形態において、射出成型機で成形された成型品を保持する保持装置1に採用した場合を一例に説明したが、これに限定されるものではなく、回転軸ロック機構2,3は、対象物の配置を変更するための送りネジを回転軸122,132として備える工作機械、回転軸122,132を回転させてゼロ点調整を行う測定器具等のように、回転軸122,132を所望する回転位置(調整後の回転位置)で固定する(軸の回転を規制する)必要のある機器や、状況に応じて回転軸122,132の回転を規制する必要のある機器等に採用し得ることは言うまでもない。
【0109】
上記実施形態において、回転軸122,132の外周に環状溝123,133を形成し、付勢手段21,31による付勢で前記軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の他端側に変位してテーパ軸部200,300が前記環状溝123,133の周方向と直交する方向の溝幅を画定して回転軸122,132の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジE1,E1,E2,E2のそれぞれに対して部分的に圧接するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、回転軸122,132の外周に環状溝123,133を形成することなく、単にテーパ軸部200,300を回転軸122,132の外周に圧接させるようにしてもよい。このようにしても、軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の軸心方向にのみ移動可能に構成されることで、断面円形の回転軸122,132が自己の軸心を中心に回転してもテーパ軸部200,300の外周と回転軸122,132の外周の相対的な関係に変化がなく、付勢手段21,31の付勢でテーパ軸部200,300が回転軸122,132の外周に圧接したときに常に同じ状態になるため、回転軸122,132の回転を任意の回転位置で規制することができる。
【0110】
上記実施形態において、付勢手段21,31に圧縮コイルバネを採用し、段付穴22,32内に形成される環状面224,324と軸規制体20,30の小径軸部201,301に嵌着したバネ受体203,303との間に圧縮コイルバネ21,31を介装することで軸規制体20,30を付勢するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図7(a)に示す如く、付勢手段21,31としての圧縮コイルバネ21,31をテーパ軸部200,300の大径部側に介装して軸規制体20,30を付勢するようにしてもよいし、図7(b)に示す如く、付勢手段21,31に引っ張りコイルバネを採用し、その引っ張りコイルバネをテーパ軸部200,300の小径部側に設けて該テーパ軸部200,300を小径部側に引っ張るようにしてもよい。
【0111】
また、上記実施形態において、軸規制体20,30を手動で移動させるようにしたが、例えば、アクチュエータで軸規制体20,30を軸心方向に移動させるようにしてもよい。この場合、アクチュエータが付勢手段としてテーパ軸部200,300の大径部側から小径部側に向く付勢力Fを軸規制体20,30に作用させることで上記実施形態と同様に回転軸122,132の回転を規制できるとともに、その回転の規制と解除とを自動的に行うことができる。なお、この場合において、アクチュエータの作動(例えば、空気圧や油圧等)で軸規制体20,30を付勢するようにしてもよいが、例えば、コイルバネ等の弾性体が内装されたアクチュエータを採用し、常態において弾性体の付勢力Fでテーパ軸部200,300の大径部側から小径部側に向く付勢力Fを軸規制体20,30に作用させるようにすれば、アクチュエータに対するエネルギーの供給が絶たれたときでも回転軸122,132を規制することができる上に、アクチュエータの制御を容易に行うことができる。
【0112】
上記実施形態において、軸規制体20,30の小径軸部201,301を軸支部材(枠体100)に穿設した小径穴部222,322に挿入することで軸規制体20,30が軸心方向に案内されるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図7(a)に示す如く、テーパ軸部200,300の大径部に連設した大径軸部202,302が該大径軸部202,302の挿入される穴(上記実施形態における第一大径穴部220,320)の内周面に摺接して軸規制体20,30を軸心方向に案内するようにしてもよい。なお、この場合においては、軸規制体20,30に小径軸部201,301を設ける必要がなくなるため、軸規制体20,30を挿入するための穴は段付穴にする必要がなく、上記実施形態における第一大径穴部220,320(回転軸122,132の挿入される穴と連通する穴部)のみで軸規制体20,30を挿入する穴を構成しても勿論よい。
【0113】
上記実施形態において、保持装置1の基礎となる枠体100を軸支部材に兼用したため、回転軸ロック機構2,3を枠体100(軸支部材)内に内装するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、回転軸122,132の途中位置(軸支される部位以外の部位)に回転軸ロック機構2,3を配置するようにしてもよい。すなわち、軸規制体20,30は、軸支部材に支持されたものに限定されるものではなく、軸支部材とは異なる別の部材に支持されてもよい。この場合においても、軸規制体20,30は、テーパ軸部200,300の軸心が回転軸122,132の軸心と直交する方向に延びるよう配置されるとともに、テーパ軸部200,300の軸心方向に移動可能に設けられ、付勢手段21,31による付勢で前記軸規制体20,30がテーパ軸部200,300の他端側に変位してテーパ軸部200,300が回転軸122,132の外周に圧接するように構成されることは言うまでもない。
【0114】
上記実施形態において、軸規制体20,30の小径軸部201,301の先端部を枠体100(軸支部材)から外部に突出させることで、該小径軸部201,301の先端を押圧して回転軸122,132の回転の規制を解除できるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図7(a)及び図7(b)に示す如く、軸規制体20,30のテーパ軸部200,300の大径部側に把持部204,304を設け、該把持部204,304を外部に向けて引っ張ることで回転軸122,132の回転の規制を解除できるようにしてもよい。この場合、軸規制体20,30を支持する軸支部材又はベースから把持部204,304を突出させて把持可能に構成することは言うまでもない。
【0115】
上記実施形態において、第一段付穴22及び第二段付穴32のテーパ軸部200,300が内挿される第一大径穴部220,320を貫通穴にして枠体100の面上で開放させたが、これに限定されるものではなく、例えば、図7(c)に示す如く、第一大径穴部220,320を非貫通穴で構成してもよい。この場合、軸規制体20,30の移動代を考慮して第一大径穴部220,320の深さを設定すればよい。なお、このようにすると、軸規制体20,30を挿入する経路がなくなるため、軸規制体20,30を支持する軸支部材又はベースを半割構造にする必要があることから、組み立て等の観点から上記実施形態と同様にすることが好ましい。
【符号の説明】
【0116】
1…保持装置(成形品保持装置)、2…第一ロック機構(回転軸ロック機構)、3…第二ロック機構(回転軸ロック機構)、10…ユニットベース、11…保持手段、12…第一作動手段、13…第二作動手段、20…第一軸規制体(軸規制体)、21…第一圧縮コイルバネ(付勢手段)、22…第一段付穴、30…第二軸規制体、31…第二圧縮コイルバネ(付勢手段)、32…第二段付穴、100…枠体(軸支部材)、100a,100b…縦梁部、100c,100d…横梁部、101,102…補強部材、101a,102a…第一帯状部、101b,102b…第二帯状部、110,110…挟持爪、111…アクチュエータ、112…ベースプレート、113…案内軸、120,121…第一案内体、120a,121a…第一スリット、120b…第一正ネジ穴、121b…第一逆ネジ穴、122…第一回転軸(回転軸)、122a…第一正ネジ、122b…第一逆ネジ、123…第一環状溝(環状溝)、130,131…第二案内体、130a,131a…第二スリット、130b…第二正ネジ穴、131b…第二逆ネジ穴、132…第二回転軸(回転軸)、132a…第二正ネジ、132b…第二逆ネジ、133…第二環状溝(環状溝)、200,300…テーパ軸部、201,301…小径軸部、202,302…大径軸部、203,303…バネ受体、220,320…第一大径穴部、221,321…第二大径穴部、222,322…小径穴部、224,324,223,323…環状面、E1,E1,E2,E2…エッジ、H1…第一軸穴(貫通穴)、H2…第二軸穴(貫通穴)、S…軸挿通領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心回りで回転可能に軸支された回転軸の回転を規制する回転軸ロック機構において、一端側から他端側に向けて外径が縮小するテーパ軸部を有し、該テーパ軸部の軸心が回転軸の軸心と直交する方向に延びるように配置されるとともに、該テーパ軸部の軸心方向に移動可能に設けられた軸規制体と、前記テーパ軸部の一端側から他端側に向く付勢力を前記軸規制体に対して作用させる付勢手段と、を備え、前記付勢手段による付勢で前記軸規制体がテーパ軸部の他端側に変位してテーパ軸部が回転軸の外周に圧接するように構成されていることを特徴とする回転軸ロック機構。
【請求項2】
前記回転軸の外周に環状溝が形成され、前記軸規制体は、テーパ軸部の軸心が環状溝の溝幅中央と対応するように配置され、前記付勢手段による付勢で前記軸規制体がテーパ軸部の他端側に変位してテーパ軸部が前記環状溝の周方向と直交する方向の溝幅を画定して回転軸の周方向の全周に亘って形成される一対のエッジのそれぞれに対して部分的に圧接するように構成されている請求項1に記載の回転軸ロック機構。
【請求項3】
回転軸を軸支する軸支部材に対して前記軸規制体がテーパ軸部の軸心方向に移動可能に内挿され、該軸規制体は、付勢手段による付勢で軸支部材内にある回転軸の外周にテーパ軸部が圧接するように設けられている請求項1又は2に記載の回転軸ロック機構。
【請求項4】
前記軸規制体は、テーパ軸部の他端に該他端の外径以下に設定された小径軸部が同心で延設され、該小径軸部の先端を押圧してテーパ軸部を回転軸から離間させるように構成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転軸ロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−92881(P2012−92881A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239763(P2010−239763)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【特許番号】特許第4736106号(P4736106)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(591056547)ビー・エル・オートテック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】