説明

回転電機ステータ

【課題】回転電機ステータにおいて、同じスロット内に複数のコイルの一部が配置される場合でも、コイル間での部分放電を、より有効に抑制することである。
【解決手段】ステータ10は、周方向複数個所に設けられたスロット12を有するステータコア14と、ステータコア14に巻装された複数のカセットコイルU1等とを含む。複数のカセットコイルU1等は、第1誘電率を有する第1絶縁被膜50を含むカセットコイルU5と、第1誘電率よりも低い第2誘電率を有する第2絶縁被膜54を含む別のカセットコイルU1とを含む。複数のスロット12は、カセットコイルU5が挿入される基準スロットS8と、カセットコイルU5よりも入力端子側に接続されるカセットコイルU1が挿入される入力端子側スロットS7とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスロットを有するステータコアと、複数のスロットに挿入されるようにステータコアの複数個所に巻装される複数のステータコイルとを備える回転電機ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転電機のステータとして、スロットと呼ばれる径方向に伸びる溝を周方向複数個所に設けたステータコアと、互いに周方向に離れた2ずつのスロットに挿入されるようにステータコアの周方向複数個所に巻装される複数のステータコイルとを備え、ステータコアにステータコイルを分布巻きや集中巻きで巻装する構造が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、ステータを構成するコイルが記載されている。コイルは、素線導体を巻き回し成型したコイル導体に電界緩和層を施し、その後、ステータコアのスロット内に配置されるスロット直線部に絶縁層を、コイルエンドに設けられるコイルエンド部に別の絶縁層を施し、最後に再び電界緩和層を施して製作するとされている。また、スロット直線部とコイルエンド部との絶縁層の厚みまたは絶縁材料を互いに異ならせている。スロット直線部の絶縁層の厚みは、スロット直線部の部分放電開始電圧(PDIV)が回転電機運転中の対地電圧のピーク電圧よりも高くなるようにしている。また、コイルエンド部の絶縁層の厚みは、コイルエンド部の部分放電開始電圧が回転電機運転中の相間電圧のピーク電圧よりも高くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−236924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成では、ステータコアのスロット内部に配置されるスロット直線部の中は均一の絶縁層となっている。ただし、実際には、回転電機の使用時には、同相のコイルを電気的に直列に接続した部分で考えても、少なくとも一部のコイル間同士の間では電位差が発生する。特に、複数相のコイルがスター結線されて配置されるステータでは、複数相のコイルは中性点で接続されるとともに、各相の動力線側、すなわち入力端子側から電流が入力される。このため、それぞれの入力端子側に近い各相の特定のコイルでは、インバータのスイッチング素子のオンオフ動作等に基づいて、通常の交流電流で駆動する際の電圧よりも高い急峻なサージ電圧の発生による電圧が集中し、特定コイルでの分担電圧が上昇する可能性がある。特に、近年は、インバータ損失の低減のためにスイッチングの高速化を図ることが考えられており、このサージ電圧が増大する傾向にある。この場合、特定のコイルと、このコイルと同相の別のコイルとが同じスロット内で隣接している場合に、上記のサージ電圧の影響により、隣接するコイル間の電位差が大きくなる。また、回転電機内の浮遊容量の影響により、複数のコイル間で部分的に高電圧が発生する可能性もある。このため、スロットに配置されるコイルの周囲を被覆する絶縁層を均一にしている場合、隣接するコイル間の電位差が部分放電開始電圧(PDIV)を超えた場合に、コイル間で部分放電が生じて、コイル間の絶縁部が劣化する、すなわちコイルの絶縁寿命が短くなる可能性がある。
【0006】
これに対して、スロット内に絶縁紙を設けて、絶縁紙により複数の同相コイル間を仕切ることも考えられるが、この場合には、スロット内のコイル占積率が低下したり、スロット長さが大きくなり、回転電機の体格が大きくなる原因となる。また、スロット内に絶縁紙を挿入すると、スロット内でステータの径方向内端部に設けられるスロット先端隙と呼ばれる空間が減少し、銅渦損が増加する可能性もある。この場合、回転電機の損失が増大し、回転電機を走行用モータ等として使用するハイブリッド車両等の車両の燃費が悪化したり、コイルのうち、スロットの最内周部に配置される部分を含む部分で損失が増大し、コイル温度が上昇する可能性もある。
【0007】
一方、スロット内要素の周囲に設ける絶縁層の全体を含むすべてのコイルを、従来使用されているものよりも低誘電率の絶縁層により構成することも考えられるが、この場合には、ステータの製造コストが過度に上昇する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、回転電機ステータにおいて、同じスロット内に複数のコイルの一部が配置される場合でも、コイル間での部分放電を、より有効に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る回転電機ステータは、複数のスロットを有するステータコアと、前記複数のスロットに挿入されるように前記ステータコアの複数個所に巻装される複数のステータコイルとを備え、前記複数のステータコイルは、第1誘電率を有する第1絶縁被膜を含む第1コイルと、前記第1誘電率よりも低い第2誘電率を有する第2絶縁被膜を含む第2コイルとを含み、前記複数のスロットは、前記第1コイルが挿入される基準スロットと、前記第1コイルよりも入力端子側に接続される別のステータコイルが挿入される入力端子側スロットとを含み、前記入力端子側スロットに挿入されるステータコイルのうち、少なくとも一部の前記ステータコイルは、前記第2コイルを含むことを特徴とする回転電機ステータである。なお、第2コイルが有する絶縁被膜は、少なくとも一部が第2絶縁被膜であればよく、勿論全部が第2絶縁被膜でもよい。
【0010】
本発明に係る回転電機ステータにおいて、好ましくは、前記入力端子側スロットは、前記第1コイルよりも入力端子側に接続される前記別のステータコイルである前記第2コイルと、前記第2コイルよりも中性点側に接続された第2の別のステータコイルとが挿入されている。
【0011】
また、本発明に係る回転電機ステータにおいて、好ましくは、さらに、前記第2の別のステータコイルは、前記第1絶縁被膜よりも低い誘電率を有する絶縁被膜を含む。なお、この「第1絶縁被膜よりも低い誘電率を有する絶縁被膜」は、第2絶縁被膜と同じでも、第2絶縁被膜と異なる誘電率を有する絶縁被膜でもよい(本明細書全体及び特許請求の範囲で同じとする。)。
【0012】
また、本発明に係る回転電機において、好ましくは、前記入力端子側スロットは、前記第2コイルと、前記第1コイルよりも入力端子側に接続される前記別のステータコイルとが挿入されている。
【0013】
また、本発明に係る回転電機において、好ましくは、前記各ステータコイルは、それぞれコイル状に形成され、予め定めた単位コイル間隔で幅方向両端部に設けられるスロット内配置部を有する導体カセットコイルを含み、前記複数のステータコイルは、同相となる前記複数の導体カセットコイルの両端同士を環状に連結して構成されるカセット環状部を少なくとも1周分含み、さらに、前記各導体カセットコイルは、軸方向一端部に設けられる片側コイルエンド部を含み、前記片側コイルエンド部は、対応する前記複数のスロットに前記各導体カセットコイルの前記スロット内配置部を挿入させつつ、前記ステータコアの軸方向一端側から軸方向に前記カセット環状部を組み付ける際に、対応する2の前記スロットに軸方向に通過可能な2のスロット通過可能部と、前記2のスロット通過可能部同士を連結し、前記ステータコアの内周面よりも径方向内側に配置される内側連結部とを有し、前記第2コイルである1の前記導体カセットコイルに設けられた前記スロット内配置部は、別の導体カセットコイルに設けられた前記スロット内配置部と同じ前記入力端子側スロットに挿入されている。
【0014】
また、本発明に係る回転電機において、好ましくは、前記各ステータコイルは、それぞれ両端部にスロット内配置部を有する2本の平行な脚部を含む複数の導体セグメントであって、予め定めた単位コイル間隔で配置される2の前記スロットの径方向に沿って整列されるように、前記ステータコアの軸方向片側から軸方向他側に挿入される複数の導体セグメントをコイル状に接合して構成される導体セグメントコイルを含み、前記複数のステータコイルは、同相となる複数の前記導体セグメントコイルの両端同士を環状に連結して構成されるセグメント環状部を少なくとも1周分含み、前記第2コイルである1の前記導体セグメントコイルに設けられた前記スロット内配置部は、別の導体セグメントコイルに設けられた前記スロット内配置部と同じ前記入力端子側スロットに挿入されている。
【0015】
また、本発明に係る回転電機において、好ましくは、前記第2絶縁被膜は、ポリイミドとポリアミドイミドとをアロイ化した樹脂を有するエナメル樹脂を含み、前記第1絶縁被膜は、前記第2絶縁被膜の誘電率よりも高い誘電率を有する材料を含む。
【0016】
また、本発明に係る回転電機において、好ましくは、前記第1絶縁被膜は、ポリアミドイミドを有するエナメル樹脂を含み、前記第2絶縁被膜は、ポリイミドを有するエナメル樹脂を含む。
【0017】
また、本発明に係る回転電機において、好ましくは、前記入力端子側スロットに挿入される前記ステータコイルの少なくとも一部は、フィラーが混入された樹脂を有する第2絶縁被膜または別の絶縁被膜を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る回転電機ステータによれば、基準スロットに挿入されるコイルの導体よりも、挿入されるコイルの導体の電圧が高くなりやすい入力端子側スロット内で、第2コイルと別のコイルとが配置されている場合でも、両コイル間での部分放電開始電圧を十分に高くできる。また、複数のステータコイルは、第2誘電率よりも高い第1誘電率を有する第1絶縁被膜を含む第1コイルも備えるので、コストが過度に上昇することがない。また、上記の部分放電開始電圧を高くするために、入力端子側スロット内に絶縁紙を設ける必要がない。このため、同じスロット内に複数のコイルの一部が挿入される場合でも、スロット内におけるコイル間での部分放電を、より有効に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の回転電機ステータを示す斜視図である。
【図2】図2のステータを構成する1の導体カセットコイルを示す概略斜視図である。
【図3】図1から1相分であるU相分の複数の導体カセットコイルが連結されたカセット環状部のみを取り出して示す概略斜視図である。
【図4】図3におけるU相分のカセット環状部のうち、1周目要素と4周目要素とをステータコアに配置する様子を説明する模式図である。
【図5】図3におけるU相分のカセット環状部のうち、2周目要素と3周目要素とをステータコアに配置する様子を説明する模式図である。
【図6A】図3におけるU相分のカセット環状部の結線状態の一部を示す図である。
【図6B】図3におけるU相分のカセット環状部の結線状態の残りを示す図である。
【図7】図3におけるU相分のカセット環状部の1周目要素の導体カセットコイルをステータコアに巻装した状態を示す、周方向一部の概略透視斜視図である。
【図8】スロットに複数の導体カセットコイルの一部が配置される状態を、図1の周方向一部を部分的に断面で示す拡大斜視図である。
【図9A】基準スロットと入力端子側スロットとに挿入される導体カセットコイルで誘電率を異ならせる1例を説明するための、図8でステータの周方向を左右方向に伸ばして示す図である。
【図9B】基準スロットと入力端子側スロットとに挿入される導体カセットコイルで誘電率を異ならせる別例の第1例を説明するための、図9Aに対応する図である。
【図9C】基準スロットと入力端子側スロットとに挿入されるステータコイルで誘電率を異ならせる別例の第1例を説明するための、図9Bに対応する図である。
【図10】本発明に係る第2の実施の形態の回転電機ステータを示す斜視図である。
【図11】図10のステータに設けられたセグメント環状部を構成する1の導体セグメントを示す斜視図である。
【図12】図10のステータにおいて、1相分であるU相分のセグメント環状部がステータコアに巻装された様子を示す概略斜視図である。
【図13】図12におけるU相分のセグメント環状部を取り出して示す図である。
【図14】図13のセグメント環状部のうち、1周目要素を取り出して示す図である。
【図15】図13のセグメント環状部のうち、1周目要素をステータコアに配置する様子を説明する模式図である。
【図16】図13のセグメント環状部のうち、2周目要素をステータコアに配置する様子を説明する模式図である。
【図17】本発明に係る実施の形態において、標高及びモータ温度が変化に応じて回転電機の耐久性保障方法を変える場合の2例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図1から図8、図9A、図9B,図9Cを用いて本発明に係る第1の実施の形態を説明する。本実施の形態の回転電機ステータ(以下、単に「ステータ」という。)は、例えば電動モータ、発電機等の回転電機を構成するために使用される。ステータ10は、内周面の周方向複数個所に複数のスロット12を有する環状のステータコア14と、ステータコア14に、複数のスロット12に挿入されるように分布巻きで複数個所に巻装された複数相であるU相、V相、W相の3相のカセット環状部18,20,22とを備える。すなわち、各相のカセット環状部18,20,22は、それぞれ複数のスロット12に挿入される複数のスロット内配置部を有する複数のステータコイルである導体カセットコイル16を含む。ステータ10の使用時には、ステータ10の径方向内側に、回転軸に固定されたロータ(図示せず)を配置し、ステータ10とロータとを径方向に対向させることでラジアル型の回転電機を構成する。
【0021】
各相のカセット環状部18,20,22は、それぞれ環状に複数の導体カセットコイル(以下、単に「カセットコイル」という。)16を連結してなり、互いに連結される4周分である、1周目要素、2周目要素、3周目要素、及び4周目要素を含む。なお、各相のカセット環状部18,20,22は、少なくとも1周分を含むものであればよい。また、図2に示すように、各カセットコイル16は、ステータコア14(図1)の周方向に離れた2ずつのスロット12(図1)にそれぞれ挿入される複数のスロット内配置部24と、両側のコイルエンド部26,28とを有し、全体がコイル状に形成されている。
【0022】
すなわち、図1に戻り、本実施の形態のステータ10は、いわゆる「同芯カセット巻き型」と呼ばれるもので、絶縁被膜により被覆された導体線からなるコイル素線をコイル状に形成したカセットコイル16を複数個設け、ステータコア14の周方向に複数のカセットコイル16を少なくとも一周分(本実施形態の場合は4周分)連結することにより各相のカセット環状部18,20,22が構成されている。図1で、「u」「v」「w」の符号を付した部分が、それぞれU相、V相、W相を表している。
【0023】
各相のカセット環状部18,20,22は、図2に示すように、ステータコア14(図1)の周方向に離れた2のスロット12(図1)の間隔を予め一定に定められた単位コイル間隔D1として、単位コイル間隔D1で幅方向(図2の左右方向)両端部に設けられたスロット内配置部24を有するように、コイル素線をコイル状に形成した、1の単位コイルであるカセットコイル16を複数個有する。そして複数のカセットコイル16を環状に連結することにより、各相のカセット環状部18,20,22(図1)を構成し、図1に示すステータコア14に配置している。ステータコア14は、磁性粉末を加圧成形してなる圧粉磁心、または電磁鋼板等の金属板の積層体等により構成されている。次に、図3から図7を用いてカセット環状部18,20,22の配置構成を、U相分のカセット環状部18で代表して説明する。
【0024】
図3は、図1から1相分であるU相分の複数のステータコイルが連結されたカセット環状部18のみを取り出して示す概略斜視図である。図3に示すように、カセット環状部18は、それぞれ周方向の幅が予め定められた単位コイル間隔D1(図2)である4個のカセットコイル16を環状に連結したものを複数周回分(図示の例では4周分)連結することにより構成されている。なお、V相、W相のカセット環状部20,22(図1)の基本形状は、U相のカセット環状部18の場合と同様である。U相のカセット環状部18は、導体線を絶縁被膜により被覆されてなるコイル素線をコイル状に形成したカセットコイル16を16個組み合わせて構成している。すなわち、4個のカセットコイル16を環状に1周分連結したものを1周目要素として構成し、続いて同様に4個のカセットコイル16を1周目と同方向に環状に連結したものを2周目要素として構成し、続いて同様に4個のカセットコイル16を1周目及び2周目と逆方向に環状に連結したものを3周目要素として構成し、最後に4個のカセットコイル16を3周目と同方向に環状に連結したものを4周目要素として構成し、1周目要素から4周目要素の端部を連結することにより、カセット環状部18が形成されている。この場合、1周目要素を配置するスロット12(図1)と、4周目要素を配置するスロット12とを一致させるとともに、2周目要素を配置するスロット12と、3周目要素を配置するスロット12とを一致させるが、1周目要素及び4周目要素を配置するスロット12と、2周目要素及び3周目要素を配置するスロット12とを、互いに周方向に1ずつずらせている。
【0025】
図4は、図3におけるU相分のカセット環状部18のうち、1周目要素30と4周目要素32とをステータコア14に配置する様子を説明する模式図である。図5は、図3におけるU相分のカセット環状部18のうち、2周目要素34と3周目要素36とをステータコア14に配置する様子を説明する模式図である。なお、図4、図5では、ステータコア14の平面図と、その外側の複数のカセットコイル16とを示している。図4、図5で、U1、U2・・・U16と示しているのは、16個のカセットコイル16を区別するためのコイル番号で、U相カセット環状部18の巻き始めが1番目単位コイルであるカセットコイルU1で、巻き終わりが16番目単位コイルであるカセットコイルU16である。なお、ステータコア14には48個のスロット12を設けているが、必要な部分にのみスロット番号を付している。なお、以下ではスロット番号にSを付して説明する。
【0026】
分布巻きの場合、いくつかのスロット12をまたぐように、周方向に離れた2のスロット12に各カセットコイル16を配置している。この2のスロット12は、予め定めた単位コイル間隔D1で離れている。以下、カセットコイル16は、場合によりコイル番号を付して説明する。カセットコイルU1は、カセット環状部18(図3)の巻き始めで、回転電機の動力線側であり、入力端子側(IN側)に接続されている。カセットコイルU1は、スロットS7とS13との間にコイル素線を複数回(例えば5回)巻回してコイル状に形成している。この巻き始めは、入力端子(IN)側に接続され、例えばステータコア14の内周側で、外周側から内周側に向かうようにスロット12にコイル状に巻装される。
【0027】
次いで、カセットコイルU1の巻き終わりで周方向に離れたカセットコイルU2に接続される。すなわち、カセットコイルU1の巻き終わりでスロットS13から単位コイル間隔D1離れたスロットS19に渡り、互いに単位コイル間隔D1離れたスロットS19とS25との間にコイル素線を複数回巻回してコイル状に形成することで、カセットコイルU2を構成している。次いで順次これを繰り返してカセットコイルU1からU4までを形成することにより1周目要素34が構成される。なお、各カセットコイルU1〜U4の巻回数は互いに同じとしている(以下同じである)。
【0028】
1周目要素30の巻き終わりは、ステータコア14の最外周側で、図5に示す2周目要素32のカセットコイルU5に接続される。このとき、カセットコイルU5は、カセットコイルU1から1スロット分ずれて、スロットS8とS14との間にわたって複数回巻回されることによりコイル状に形成されている。次いで、カセットコイルU5の巻き終わりでカセットコイルU6に接続される。すなわち、カセットコイルU5の巻き終わりでスロットS14から単位コイル間隔D1離れたスロットS20に渡り、互いに単位コイル間隔D1離れたスロットS20とS26との間にコイル素線を複数回巻回してコイル状に形成することで、カセットコイルU6を構成している。次いで順次これを繰り返してカセットコイルU5からU8までを形成することにより2周目要素32が構成される。
【0029】
2周目要素32の巻き終わりは、ステータコア14の最外周側で、図5に示す3周目要素34のカセットコイルU9に接続される。このとき、カセットコイルU9は、2周目要素32のカセットコイルU8と1ピッチ分ずれるように、スロットS44とS38との間にわたって複数回巻回されることによりコイル状に形成されている。次いで、カセットコイルU9の巻き終わりでカセットコイルU10に接続される。すなわち、カセットコイルU9の巻き終わりでスロットS38から単位コイル間隔D1離れたスロットS32に渡り、互いに単位コイル間隔D1離れたスロットS32とS26との間にコイル素線を複数回巻回してコイル状に形成することで、カセットコイルU10を構成している。次いで順次これを繰り返してカセットコイルU9からU12までを形成することにより3周目要素34が構成される。
【0030】
最後に、3周目要素34の巻き終わりは、ステータコア14の最外周側で、図4に示す4周目要素36のカセットコイルU13に接続される。このとき、カセットコイルU13は、1周目要素30のカセットコイルU4と1ピッチ分ずれるように、スロットS43とS37との間にわたって複数回巻回されることによりコイル状に形成されている。次いで、カセットコイルU13の巻き終わりでカセットコイルU14に接続される。すなわち、カセットコイルU13の巻き終わりでスロットS37から単位コイル間隔D1離れたスロットS31に渡り、互いに単位コイル間隔D1離れたスロットS31とS25との間にコイル素線を複数回巻回してコイル状に形成することで、カセットコイルU14を構成している。次いで順次これを繰り返してカセットコイルU13からU16までを形成することにより4周目要素36が構成される。
【0031】
また、カセットコイルU16の巻き終わりは、ステータコア14の最外周側から取り出され、V相、W相のカセット環状部20,22(図1)との接続点である、回転電機の中性点に接続される。図4では、カセットコイルU16の巻き終わりがOUT(中性点)として示されている。以上は、U相のカセット環状部18について説明したが、V相、W相のカセット環状部20,22についても同様に構成するとともに、図1に示すように、V相カセット環状部20を配置するスロット12を周方向に2ずつずらせ、W相カセット環状部22を配置するスロット12を、周方向にさらに2ずつずらせる。
【0032】
このように、カセットコイルU1に隣接して別の相のカセットコイル16を挟んでカセットコイルU2を配置し、以下U3、U4・・・U16と順次配置し、同相となる複数のカセットコイルの両端同士を環状に連結して構成されるものを少なくとも1周分含んで、各相のカセット環状部18,20,22が構成されている。なお、図4に示す1周目要素30と4周目要素36との径方向の配置関係、及び、図5に示す2周目要素32と3周目要素34との径方向の配置関係は逆でもよく、また、周方向の複数のカセットコイル16の配置順は図示の例の以外とすることもできる。
【0033】
また、図6A、図6Bは、このような巻き方法に応じてステータコア14にカセットコイルU1、U2・・・U16を配置するスロット12を含む結線状態を示す図であり、ステータコア14の内周部に付した番号は、スロット番号S1,S2・・・S48に対応する。また、図6Aは図4に対応し、図6Bは図5に対応する。また、図6A、図6BでP,Qは、P同士及びQ同士のそれぞれが接続されていることを表している。また、図6A、図6Bで丸の中に付した数字は、対応するカセットコイル16の1ターン分を示している。なお、図では、1のスロット12に2ずつ配置されるカセットコイル16について、スロット12内で別のカセットコイル16のターンが、ステータコア14の径方向(以下、単に「径方向」という場合、ステータコア14の径方向をいう。)に関して交互に配置されるような図としている。ただし、実際には、各スロット12に配置される2のカセットコイル16のターンは、1のカセットコイル16の複数のターンで径方向に隣接して配置され、その径方向に隣接して、別の1のカセットコイル16の複数のターンが径方向に隣接して配置される。
【0034】
また、図2に戻り、各カセットコイル16は、カセット環状部18,20,22(図1)の軸方向一端部(図2の上端部)に設けられる片側コイルエンド部26を含む。片側コイルエンド部26は、各カセットコイル16の幅方向両端部に設けられ、対応する複数のスロット12(図1)に挿入されるスロット内配置部24を挿入させつつ、ステータコア14(図1)の軸方向一端側(図1の下端側)から軸方向にカセット環状部18,20,22を組み付ける際に、対応する2のスロット12に軸方向に通過可能な複数のスロット通過可能部38,40と、周方向に離れた対応する2のスロット通過可能部38,40同士を連結し、ステータコア14の内周面よりも径方向内側に配置される複数の内側連結部42とを有する。また、各カセットコイル16の両端部に接続部44が設けられ、図1に示すように、各接続部44は、ステータコア14の軸方向一端側から突出するカセット環状部18,20,22の軸方向他端側で、ステータコア14の径方向外側に伸びるように設けられている。同相のカセット環状部18,20,22で複数のカセットコイル16同士を接続する場合には、接続する2のカセットコイル16の接続部44同士を溶接等により、直接または別の導体を介して接続する。
【0035】
このように複数のカセットコイル16により構成される複数相のカセット環状部18,20,22は、互いに環状に組み合わせた状態で、図1に示すように、ステータコア14の軸方向一端側(図1の下側)から軸方向に(図1の上側に)カセット環状部18,20,22を組み付ける。この際、各相のカセット環状部18,20,22に設けた片側コイルエンド部26は、スロット12内を通過するか、またはステータコア14の内周面よりも径方向内側に位置するので、カセット環状部18,20,22の組み付けが阻害されることがない。図7は、図3におけるU相分のカセット環状部18の1周目要素30のカセットコイル16をステータコア14に巻装した状態を示す、周方向一部の概略透視斜視図である。図7では、説明の簡略化のためにカセットコイル16はスロット12に2回だけ巻装した図としている。図7で矢印はある瞬間での電流が流れる方向を示している。このように片側コイルエンド部26に設けられたスロット通過可能部38,40は、対応するスロット12の径方向または軸方向に並ぶので、ステータコア14への取り付け時にはスロット12を軸方向に通過可能である。また、接続する2のカセットコイル16の接続部44は、2のカセットコイル16の周方向の間の中間部で径方向外側に伸びることで互いに接続可能としている。そして図1に示すように、各相のカセット環状部18に設けられた入力端子線46u、46v、46wがステータコア14の径方向外側に導出している。使用時には、この入力端子線46u、46v、46wの端部に設けられた入力端子48が、図示しないインバータの各相の出力側端子に接続される。
【0036】
図8は、スロットに複数のカセットコイルの一部が配置される状態を、図1の周方向一部を部分的に断面で示す拡大斜視図である。図9Aは、基準スロットと入力端子側スロットとに挿入されるカセットコイルで誘電率を異ならせる1例を説明するための、図8でステータの周方向を左右方向に伸ばして示す図である。ステータ10が上記のように構成されるので、図8、図9Aに示すように、各スロット12内には、異なるカセットコイル16のスロット内配置部24が径方向に並ぶように挿入される。図8、図9Aは、上記のスロット番号S7,S8のスロット12を図示している。この場合、スロットS7では、U相のカセット環状部18を構成する複数のカセットコイル16のうち、最も入力端子側に設けられた、1周目要素30のカセットコイルU1と、最も中性点側の4周目要素36のカセットコイルU16とのスロット内配置部24が挿入されている。また、スロットS8では、U相のカセット環状部18を構成する複数のカセットコイル16のうち、2周目要素32、3周目要素34のカセットコイルU5、U12のスロット内配置部24が配置されている。このため、スロットS7では、使用時に最も電圧が高くなりやすいスロット内配置部24が配置される。すなわち、カセットコイルU1が配置されるスロットS7内のスロット内配置部24には、インバータのスイッチング素子のオンオフ動作等に基づいてサージ電圧の発生による電圧が集中し、分担電圧が上昇する可能性がある。このため、スロットS7内で隣接するカセットコイルU1,U16間の電位差が大きくなる可能性がある。また、回転電機内の浮遊容量の影響により、カセットコイルU1,U16間で高電圧が発生する可能性もある。なお、カセットコイルU1は、図8で図示しないスロットS13にも配置されるため、スロットS13に配置されるカセットコイルU1、U15(図4、図6A)間でも同様に電位差が大きくなる可能性がある。また、これは、V相、W相のカセットコイル16の場合も同様である。これに対して、スロット12に配置されるカセットコイル16のスロット内配置部24の周囲を被覆する絶縁被膜の構成を工夫しない場合には、隣接するカセットコイル16間の電位差が部分放電開始電圧(PDIV)を超えた場合に、カセットコイル16間の絶縁部が部分放電で劣化する可能性がある。本実施の形態は、このような不都合を解消することを目的として、次のように工夫している。
【0037】
すなわち、本実施の形態では、図9Aに示すように、各相で複数のカセットコイル16は、上記のようにカセットコイルU1と、カセットコイルU1以外のカセットコイルU2〜U16(以下、「カセットコイルU5等」として説明する。)とを含み、第1コイルであるカセットコイルU5等は、第1誘電率ε1を有する第1絶縁被膜50を含み、第1絶縁被膜50により導体線52の周囲を被覆している。また、第2コイルであるカセットコイルU1は、第1誘電率ε1よりも低い第2誘電率ε2を有する第2絶縁被膜54を含み、第2絶縁被膜54により導体線52の周囲を被覆している。
【0038】
また、複数のスロット12は、カセットコイルU1が挿入される入力端子側スロットである一部のスロットS7,S13(以下、入力端子側スロットS7として説明する。)と、カセットコイルU5の少なくとも一部が挿入される基準スロットである残りのスロットS8等(以下、基準スロットS8として説明する。)とを含む。また、入力端子側スロットS7は、カセットコイルU5等よりも入力端子側に接続される別のステータコイルである、カセットコイルU1が挿入されている。入力端子側スロットS7に挿入されるカセットコイル16のうち、少なくとも一部のカセットコイル16は、上記の低誘電率の第2絶縁被膜54を有するカセットコイルU1を含む。このように低誘電率の第2絶縁被膜54により導体線52が被覆されたコイル素線は、「高PDIV線」と呼ばれている。
【0039】
ここで、例えば、第2絶縁被膜54は、ポリイミドとポリアミドイミドとをアロイ化した樹脂を有するエナメル樹脂を含み、第1絶縁被膜50は、第2絶縁被膜54の誘電率ε2よりも高い第1誘電率ε1を有する材料を含むとしてもよい。また、第1絶縁被膜50は、ポリアミドイミドを有するエナメル樹脂を含み、第2絶縁被膜54は、ポリイミドを有するエナメル樹脂を含むとしてもよい。ただし、第1絶縁被膜50及び第2絶縁被膜54は、このような構成に限定するものではなく、第2絶縁被膜54が有する第2誘電率ε2が第1絶縁被膜50が有する第1誘電率ε1よりも低い関係を有するものであればいずれの材料も採用できる。例えば、第1絶縁被膜50は、ポリアミドイミドを有するエナメル樹脂を含むとする場合、第2絶縁被膜54は、第1絶縁被膜50が有する第1誘電率ε1よりも低い第2誘電率ε2を有するものであればいずれの材料も採用できる。例えば、第1誘電率ε1として、比誘電率εが4〜4.5の絶縁被膜を第1絶縁被膜50として使用する場合に、第2誘電率ε2として、比誘電率εが3〜3.5程度の絶縁被膜を第2絶縁被膜54として使用することができる。
【0040】
なお、上記では、第2絶縁被膜54を有する第2コイルである、カセットコイル16は、カセットコイルU1のみである場合を説明したが、カセットコイルU1に近い位置に接続されるカセットコイルU2、U3等のように、複数のカセットコイル16で第2絶縁被膜54を含むようにすることもできる。
【0041】
また、入力端子側スロットS7には、上記のようにカセットコイルU5等よりも入力端子側に接続される別のカセットコイルであるカセットコイルU1と、カセットコイルU1よりも中性点側に接続された第2の別のカセットコイルである、カセットコイルU16(またはU15)とが挿入されている。
【0042】
このようなステータ10によれば、複数のカセットコイル16は、カセットコイルU1と、カセットコイルU1以外のカセットコイルU5等とを含み、カセットコイルU1は、カセットコイルU5等が有する第1絶縁被膜50の第1誘電率ε1よりも低い第2誘電率ε2を有する第2絶縁被膜54を有する。また、複数のスロット12は、カセットコイルU5等が挿入される基準スロットS8とは別の入力端子側スロットS7であり、カセットコイルU5等よりも入力端子側に接続される別のステータコイルである、カセットコイルU1が挿入される入力端子側スロットS7を含む。また、入力端子側スロットS7に挿入されるカセットコイル16のうち、少なくとも一部のカセットコイル16は、カセットコイルU1を含む。このため、基準スロットS8に挿入されるカセットコイル16の導体よりも、挿入されるカセットコイル16の導体の電圧が高くなりやすい入力端子側スロットS7内で、カセットコイルU1と別のコイルであるカセットコイルU16(またはU15)とが配置されている場合でも、両コイルU1、U16間(またはU1、U15間)での部分放電開始電圧を十分に高くできる。
【0043】
また、複数のカセットコイル16は、第2誘電率ε2よりも高い第1誘電率ε1を有する第1絶縁被膜50を含むカセットコイルU5等も多く備えるので、コストが過度に上昇することがない。また、上記の部分放電開始電圧を高くするために、入力端子側スロットS7内に絶縁紙を設ける必要がない。このため、同じスロット12内に複数のカセットコイル16の一部が挿入される場合でも、スロット12内におけるカセットコイル16間での部分放電を、より有効に抑制できる。なお、図9Aでは、スロット12内で異なるカセットコイル16間に隙間を設けたような図示をしているが、この隙間は十分に小さくするか、またはなくすことができる。
【0044】
図9Bは、基準スロットと入力端子側スロットとに挿入されるカセットコイルで誘電率を異ならせる別例の第1例を説明するための、図9Aに対応する図である。図9Bに示す構成の場合には、第2コイルであるカセットコイルU1のスロット内配置部24が配置される入力端子側スロットS7には、別のカセットコイルU16(またはU15)のスロット内配置部24も配置される。そして、この別のカセットコイルU16,U15もカセットコイルU1と同様に、第1絶縁被膜50の誘電率ε1よりも低い誘電率ε2を有する第2絶縁被膜54を含むようにしている。この構成の場合も、上記と同様に、入力端子側スロットS7内で、カセットコイルU1と別のカセットコイルU16、U15との間での部分放電開始電圧を十分に高くでき、スロット12内におけるカセットコイル16間での部分放電を、より有効に抑制できる。なお、カセットコイルU16,U15は、第1絶縁被膜50の誘電率ε1よりも低い誘電率を有する絶縁被膜であれば、第2絶縁被膜54以外の絶縁被膜を含むこともできる。
【0045】
図9Cは、基準スロットと入力端子側スロットとに挿入されるカセットコイルで誘電率を異ならせる別例の第2例を説明するための、図9Aに対応する図である。図9Cに示す構成の場合には、第2絶縁被膜54は、カセットコイルU1には設けておらず、カセットコイルU1は、相対的に誘電率が高い第1絶縁被膜50により導体線52を被覆することによりコイル素線を構成している。その代わりに、カセットコイルU1のスロット内配置部24を配置する入力端子側スロットS7に配置される別のカセットコイルU16、U15は、第2コイルとして、第2誘電率ε2を有する第2絶縁被膜54を有し、第2絶縁被膜54により対応する導体線52を被覆している。この場合、別のカセットコイルU16,U15は、カセットコイルU1よりも中性点側に接続されている。また、入力端子側スロットS7は、第2コイルであるカセットコイルU16(またはU15)と、カセットコイルU5等よりも入力端子側に接続される別のカセットコイルであるカセットコイルU1とが挿入されている。この構成の場合、最も入力端子側に設けられるカセットコイルU1は低誘電率の第2絶縁被膜54を有しないが、これと入力端子側スロットS7内で隣り合うカセットコイルU16、U15が、第2絶縁被膜54により導体線52が被覆されているので、入力端子側スロットS7内で、カセットコイルU16,U15と別のカセットコイルU1との間での部分放電開始電圧を十分に高くでき、スロット12内におけるカセットコイル16間での部分放電を、より有効に抑制できる。
【0046】
[第2の発明の実施の形態]
次に、図10から図16を用いて本発明に係る第2の実施の形態について説明する。図10に示すように、本実施の形態のステータ10Aは、内周面の周方向複数個所に複数のスロット12を有する環状のステータコア14と、ステータコア14に分布巻きで巻装された複数相であるU相、V相、W相の3相のセグメント環状部58,60,62とを備える。なお、ステータコア14の構成は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0047】
各相のセグメント環状部58,60,62は、それぞれ環状に複数の導体セグメントコイル(以下、単に「セグメントコイル」という。)56を連結してなり、互いに連結される1周目要素64(図14)及び2周目要素66(図16)を含む。また、各セグメントコイル56は、図11に示す、略U字形の導体セグメント68を複数個並べてコイル状に接合することにより形成されている。各導体セグメント68は、幅方向(図11の左右方向)両端部に2ずつのスロット12(図10)にそれぞれ挿入されるスロット内配置部70を有する2本の平行な脚部72と、脚部72の一端同士を連結する連結部74とを有する。
【0048】
すなわち、本実施の形態のステータ10Aは、いわゆる「セグメントコイル巻き型」と呼ばれるもので、絶縁被膜により導体線が被覆されてなるコイル素線をコイル状に形成したセグメントコイル56(図10)を複数個設け、ステータコア14の周方向に複数のセグメントコイル56を少なくとも一周分(本実施形態の場合は2周分)連結することにより各相のセグメント環状部58,60,62が構成されている。図10では、「u」「v」「w」の符号を付した部分が、それぞれU相、V相、W相を表している。
【0049】
図12は、図10のステータ10Aにおいて、1相分であるU相分のセグメント環状部58がステータコア14に巻装された様子を示す概略斜視図である。各相のセグメント環状部58,60,62(以下、代表してU相のセグメント環状部58で説明する。)は、それぞれ周方向の幅が予め定められた単位コイル間隔D2(図14)である8個の単位コイルであるセグメントコイル56を環状に連結するようにステータコア14に巻装したものを1周目要素64としてステータコア14を1周りさせ、続いて同様に8個のセグメントコイル56を環状に連結するようにステータコア14に巻装したものを2周目要素66としてステータコア14を1周りさせることにより、セグメント環状部58が構成されている。この場合、1周目要素64を配置するスロット12と、2周目要素66を配置するスロット12とは、周方向に1ずつずらせている。
【0050】
図13は、U相分のセグメント環状部58を取り出して示す図である。なお、V相、W相のセグメント環状部60,62の基本形状は、U相の場合と同様である。U相のセグメント環状部58は、コイル素線をコイル状に形成した単位コイルであるセグメントコイル56を16個組み合わせて構成している。図13で、C1、C2・・・C16と示しているのは、16個のセグメントコイル56を区別するためのコイル番号で、U相セグメント環状部58の巻き始めが1番目単位コイルであるセグメントコイルC1で、巻き終わりが16番目単位コイルであるセグメントコイルC16である。
【0051】
図13に示すように、セグメントコイルC1に隣接してセグメントコイルC2を配置し、以下C3、C4・・・C16と順次隣接して配置し、周方向に2周している。このため、コイル番号をiとして、i番目コイルと(i+8)番目コイルとは、1スロット分ずれているが一部径方向に重なり合うように配置されている。
【0052】
図14は、図13のセグメント環状部58のうち、1周目要素64を取り出して示す図である。セグメント環状部58の1周目要素64は、8個のセグメントコイル56が環状に連結されることにより構成されている。各セグメントコイル56は、複数の導体セグメント68から構成される。図14では、セグメントコイル56のうち、2周目要素66(図16参照)の9番目から16番目までのセグメントコイル56の図示を省略しているが、基本形状は図14の1周目要素64の形状と同様で、配置位置が1周目要素64に対し周方向にずれている。
【0053】
図15は、図13のセグメント環状部58のうち、1周目要素64をステータコア14に配置する様子を説明する模式図である。図16は、図13のセグメント環状部58のうち、2周目要素66をステータコア14に配置する様子を説明する模式図である。図16では、図13の1周目要素64の図を省略している。なお、図15、図16では、ステータコア14の平面図と、その外側の複数のセグメントコイル56とを示している。セグメントコイル56は、いくつかのスロット12をまたぐように、周方向に離れた2のスロット12に挿入するように、ステータコア14の周方向複数個所に巻装している。この2のスロット12は、予め定めた単位コイル間隔D2で離れている。以下、セグメントコイル56は、コイル番号を付して説明する場合がある。セグメントコイルC1は、セグメント環状部58(図13)の巻き始めで、回転電機の動力線側である入力端子側(IN側)に接続されている。セグメントコイルC1は、スロットS4とS10との間にコイル素線を複数回巻回してコイル状に形成している。この巻き始めは、入力端子側であるステータコア14の外周側であり、外周側から内周側に向かうようにスロット12にコイル状に巻装される。次いで、セグメントコイルC1の巻き終わりでセグメントコイルC2に接続される。すなわち、セグメントコイルC1の巻き終わりでスロットS10から単位コイル間隔D2離れたスロットS16に渡り、スロットS10とS16との間にコイル素線を複数回巻回してコイル状に形成することで、セグメントコイルC2を構成している。次いで順次これを繰り返してセグメントコイルC1からセグメントコイルC8までを形成することにより1周目要素64が構成される。
【0054】
1周目要素64の巻き終わりは、ステータコア14の最外周側で、図16に示す2周目要素66のセグメントコイルC9に接続される。このとき、セグメントコイルC9は、セグメントコイルC1から1スロット分ずれて、スロットS3とS9との間にわたって複数回巻回されることによりコイル状に形成されている。次いで、セグメントコイルC9の巻き終わりでセグメントコイルC10に接続される。すなわち、セグメントコイルC9の巻き終わりでスロットS9から単位コイル間隔D2離れたスロットS15に渡り、スロットS9とS15との間にコイル素線を複数回巻回してコイル状に形成することで、セグメントコイルC10を構成している。次いで順次これを繰り返してセグメントコイルC9からセグメントコイルC16までを形成することにより2周目要素66が構成される。
【0055】
また、セグメントコイルC16の巻き終わりは、ステータコア14の最外周側から取り出され、回転電機の中性点に接続される。図16では、セグメントコイルC16の巻き終わりがOUT(中性点)として示されている。このように、セグメント環状部58の1周目要素64と2周目要素66とが配置されるスロット12は、周方向にずれている。以上は、U相のセグメント環状部58について説明したが、V相、W相のセグメント環状部60,62についても同様に構成するとともに、図10に示すように、V相セグメント環状部60を配置するスロット12を周方向に2ずつずらせ、W相セグメント環状部62を配置するスロット12を、周方向にさらに2ずつずらせる。
【0056】
このような各相のセグメント環状部58,60,62を構成する際に、上記の図11に1つを示した複数の略U字形の導体セグメント68を導体線として使用している。すなわち、導体セグメント68を複数連結することにより1のセグメントコイル56を構成し、このセグメントコイル56を複数連結することにより各相のセグメント環状部58,60,62を構成している。この場合、各導体セグメント68は、両端部に単位コイル間隔D2と同じ間隔で設けられた2本の平行な脚部72を有し、各脚部72の一端を連結部74で連結している。各セグメントコイル56(図3)を構成する場合、導体セグメント68を複数本、例えば5本を使用し、予め一定に定めた単位コイル間隔D2で配置される2のスロット12の径方向に沿って整列させるように、ステータコア14の軸方向片側から軸方向他側に挿入する。そして、各導体セグメント68の2の脚部72の先端部で、ステータコア14の軸方向他面から突出した部分を互いにほぼ周方向に対向する側に折り曲げる。また、1の導体セグメント68の片側の脚部72の先端部と、この1の導体セグメント68に径方向に隣り合う他の導体セグメント68の他側の脚部72の先端部とを溶接等により接続し、これを各導体セグメント68で繰り返すことにより、コイル状のセグメントコイル56を形成する。
【0057】
このような導体セグメント巻き型であるステータ10Aでは、図15、図16の説明から明らかなように、各スロット12内に、異なるセグメントコイル56のスロット内配置部70が径方向に並ぶように挿入される。このため、上記の第1の実施の形態で説明したのと同様に、スロット12に配置されるセグメントコイル56のスロット内配置部70の周囲を被覆する絶縁被膜の構成を工夫しない場合には、同じスロット12内で複数のセグメントコイル56が配置される場合に、隣接するセグメントコイル56間で部分放電により絶縁部が劣化する可能性がある。特に、高電圧が発生しやすい、入力端子側のセグメントコイルC1が配置されるスロットS4,S10等で、別のセグメントコイルC8等が配置されるため、このような問題が発生しやすい。
【0058】
これに対して、本実施の形態では、各相で複数のセグメントコイル56は、上記のようにセグメントコイルC1と、セグメントコイルC1以外のセグメントコイルC2〜C16(以下、「セグメントコイルC3等」として説明する。)とを含み、第1コイルであるセグメントコイルC3等は、第1誘電率ε1を有する第1絶縁被膜50(図9A参照)を含み、第1絶縁被膜50により導体線の周囲を被覆している。また、第2コイルであるセグメントコイルC1は、第1誘電率ε1よりも低い第2誘電率ε2を有する第2絶縁被膜54(図9A参照)を含み、第2絶縁被膜54により導体線の周囲を被覆している。
【0059】
また、複数のスロット12は、セグメントコイルC1が挿入される入力端子側スロットである一部のスロットS4,S10(以下、入力端子側スロットS4として説明する。)と、セグメントコイルC3等の少なくとも一部が挿入される基準スロットである残りのスロットS16等(以下、基準スロットS16として説明する。)とを含む。また、入力端子側スロットS4は、セグメントコイルC3等よりも入力端子側に接続される別のステータコイルである、セグメントコイルC1が挿入されている。入力端子側スロットS4に挿入されるセグメントコイル56のうち、少なくとも一部のセグメントコイル56は、上記の低誘電率の第2絶縁被膜54を有するセグメントコイルC1を含む。
【0060】
このようなステータ10Aの場合も、複数のセグメントコイル56は、セグメントコイルC1と、セグメントコイルC1以外のセグメントコイルC3等とを含み、セグメントコイルC1は、セグメントコイルC3等が有する第1絶縁被膜50の第1誘電率ε1よりも低い第2誘電率ε2を有する第2絶縁被膜54を有する。また、複数のスロット12は、セグメントコイルC3等が挿入される基準スロットS16等とは別の入力端子側スロットS4であり、セグメントコイルC3等よりも入力端子側に接続される別のステータコイルである、セグメントコイルC1が挿入される入力端子側スロットS4を含む。また、入力端子側スロットS4に挿入されるセグメントコイル56のうち、少なくとも一部のセグメントコイル56は、セグメントコイルC1を含む。このため、基準スロットS16等に挿入されるコイルの導体よりも、挿入されるコイルの導体の電圧が高くなりやすい入力端子側スロットS4内で、セグメントコイルC1と別のコイルであるセグメントコイルC8(またはC2)とが配置されている場合でも、両コイルC1、C8間(またはC1、C2間)での部分放電開始電圧を十分に高くできる。
【0061】
また、複数のセグメントコイル56は、第2誘電率ε2よりも高い第1誘電率ε1を有する第1絶縁被膜50を含むセグメントコイルC3等も多く備えるので、コストが過度に上昇することがない。また、上記の部分放電開始電圧を高くするために、入力端子側スロットS4内に絶縁紙を設ける必要がない。このため、同じスロット12内に複数のセグメントコイル56の一部が挿入される場合でも、スロット12内におけるセグメントコイル56間での部分放電を、より有効に抑制できる。
【0062】
なお、第2絶縁被膜54を有する第2コイルは、セグメントコイルC1に加えて、セグメントコイルC1に近い位置に接続されるC2等の別の1以上のセグメントコイル56を含むようにしてもよい。また、各セグメントコイル56は、複数の導体セグメント68を接合することにより構成されるため、同じセグメントコイル56でも一部の導体セグメント68を構成する絶縁被膜の誘電率を、他の導体セグメント68を構成する絶縁被膜の誘電率よりも低くすることで、同じスロット12内で電位差が特に発生しやすい部分間でのみ、絶縁被膜として低い誘電率を有するものを使用することもできる。また、本実施の形態でも、上記の図9B,図9Cで示した場合と同様に、入力端子側スロットS4内に配置される複数のセグメントコイル56のうち、少なくとも一部のセグメントコイル56の一部または全部が相対的に低い誘電率の絶縁被膜を含むようにすることもできる。例えば、入力端子側スロットS4内に配置される複数のセグメントコイル56のすべてのセグメントコイル56が、基準スロットS16等に挿入される他のセグメントコイル56の絶縁被膜よりも相対的に低い誘電率の絶縁被膜を含むようにすることもできる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0063】
[第3の発明の実施の形態]
なお、本発明に係る第3の実施の形態として、図1から図8、図9A,図9B,図9Cに示した第1の実施形態、または図10から図16に示した第2の実施形態のいずれかにおいて、複数のスロット12のうち、少なくとも入力端子側スロットである一部のスロット12に挿入されるカセットコイル16またはセグメントコイル56の少なくとも一部は、フィラーが混入された樹脂を有する第2絶縁被膜54または別の絶縁被膜を含むように構成されてもよい。例えば、第1の実施の形態において、セグメントコイルU1は、第2絶縁被膜54であって、樹脂中にフィラーが混入された樹脂を含む第2絶縁被膜54を含むようにすることもできる。また、第2の実施の形態において、セグメントコイルC1は、第2絶縁被膜54であって、樹脂中にフィラーが混入された樹脂を含む第2絶縁被膜54を含むようにすることもできる。このような構成によれば、高温や、標高の高い気圧の低い状態で使用され、サージ電圧に対する部分放電開始電圧が低くなる傾向となる場合でも、駆動電圧を低下させる等により回転電機の性能を低下させることなく、ステータ10,10Aを含む回転電機の耐久性を十分に高くすることができる。なお、フィラーを混入することにより構成される絶縁被膜は、入力端子側に設けられるコイルだけでなく、少なくとも1以上の他のコイルに設けることもできる。このように樹脂中にフィラーが混入された絶縁被膜を有するコイル素線は、「耐サージ電線」と呼ばれる。
【0064】
図17は、本発明に係る実施の形態において、標高及びモータ温度が変化に応じて回転電機の耐久性保障方法を変える場合の2例を説明するための図である。図17(a)は、回転電機の温度であるモータ温度、及び標高に応じてモータハード、すなわちモータの構造でステータの耐久性を補償するか、制御補償でステータの耐久性を補償するかを変更するようにしている。この場合、モータハード補償とは、駆動電圧の低下等の回転電機の制御以外で構造的に耐久性を補償することを意味している。これに対して制御補償とは、回転電機の制御により耐久性を補償することを意味している。このように2種類で耐久性を補償しているが、従来は、モータハード補償は、例えばスロット12(図1等)内で高電圧が発生する部分に絶縁紙を設ける等により対応することが考えられていた。これに対して、上記の第1の実施形態または第2の実施の形態によれば、同じモータハード補償領域でも、絶縁紙を使用せずに対応することが可能となる。
【0065】
また、図17(b)では、第2誘電率ε2を有する第2絶縁被膜54を含むコイルを使用する場合に誘電率を、図17(a)の場合よりも低下させることでモータハード補償の領域を広げるとともに、図17(b)で斜線領域で示すように、耐サージ電線、すなわち、樹脂中にフィラーが混入された第2絶縁被膜54等の絶縁被膜を含むコイルを使用することで、図17(b)の制御補償領域をなくせるか、または小さくすることができる。このように制御補償領域をなくすか、または小さくできるので、高温環境や高地環境で、耐久性の補償領域の確保のために駆動電圧を低下させる等の対策を制御で講じる必要がなくなる。このため、ステータを含む回転電機の性能向上を図れ、回転電機を走行用モータとして使用する電気自動車、ハイブリッド車等の動力性能の向上を図れる。
【0066】
なお、上記の各実施の形態においては、ステータコイルが同芯カセット巻き型の場合と、セグメントコイル巻き型の場合とに本発明を適用した場合を説明したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、上記では、ステータコアにステータコイルを分布巻きで巻装する場合を説明したが、ステータコアに複数のステータコイルを集中巻きで巻装する構成でも本発明を実施できる。また、ステータは、ラジアル型の回転電機を構成するものに限定するものではなく、アキシャル型、すなわちステータとロータとが軸方向に対向する構成で使用するステータで本発明を実施することもできる。
【符号の説明】
【0067】
10,10A ステータ、12 スロット、14 ステータコア、16 導体カセットコイル、24 スロット内配置部、50 第1絶縁被膜、52 導体線、54 第2絶縁被膜、56 導体セグメントコイル、68 導体セグメント、70 スロット内配置部、72 脚部、74 連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有するステータコアと、
前記複数のスロットに挿入されるように前記ステータコアの複数個所に巻装される複数のステータコイルとを備え、
前記複数のステータコイルは、第1誘電率を有する第1絶縁被膜を含む第1コイルと、前記第1誘電率よりも低い第2誘電率を有する第2絶縁被膜を含む第2コイルとを含み、
前記複数のスロットは、前記第1コイルが挿入される基準スロットと、前記第1コイルよりも入力端子側に接続される別のステータコイルが挿入される入力端子側スロットとを含み、
前記入力端子側スロットに挿入されるステータコイルのうち、少なくとも一部の前記ステータコイルは、前記第2コイルを含むことを特徴とする回転電機ステータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機ステータにおいて、
前記入力端子側スロットは、前記第1コイルよりも入力端子側に接続される前記別のステータコイルである前記第2コイルと、前記第2コイルよりも中性点側に接続された第2の別のステータコイルとが挿入されていることを特徴とする回転電機ステータ。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機ステータにおいて、
さらに、前記第2の別のステータコイルは、前記第1絶縁被膜よりも低い誘電率を有する絶縁被膜を含むことを特徴とする回転電機ステータ。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機ステータにおいて、
前記入力端子側スロットは、前記第2コイルと、前記第1コイルよりも入力端子側に接続される前記別のステータコイルとが挿入されていることを特徴とする回転電機ステータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の回転電機ステータにおいて、
前記各ステータコイルは、
それぞれコイル状に形成され、予め定めた単位コイル間隔で幅方向両端部に設けられるスロット内配置部を有する導体カセットコイルを含み、
前記複数のステータコイルは、同相となる前記複数の導体カセットコイルの両端同士を環状に連結して構成されるカセット環状部を少なくとも1周分含み、
さらに、前記各導体カセットコイルは、軸方向一端部に設けられる片側コイルエンド部を含み、
前記片側コイルエンド部は、対応する前記複数のスロットに前記各導体カセットコイルの前記スロット内配置部を挿入させつつ、前記ステータコアの軸方向一端側から軸方向に前記カセット環状部を組み付ける際に、対応する2の前記スロットに軸方向に通過可能な2のスロット通過可能部と、前記2のスロット通過可能部同士を連結し、前記ステータコアの内周面よりも径方向内側に配置される内側連結部とを有し、
前記第2コイルである1の前記導体カセットコイルに設けられた前記スロット内配置部は、別の導体カセットコイルに設けられた前記スロット内配置部と同じ前記入力端子側スロットに挿入されていることを特徴とする回転電機ステータ。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の回転電機ステータにおいて、
前記各ステータコイルは、
それぞれ両端部にスロット内配置部を有する2本の平行な脚部を含む複数の導体セグメントであって、予め定めた単位コイル間隔で配置される2の前記スロットの径方向に沿って整列されるように、前記ステータコアの軸方向片側から軸方向他側に挿入される複数の導体セグメントをコイル状に接合して構成される導体セグメントコイルを含み、
前記複数のステータコイルは、同相となる複数の前記導体セグメントコイルの両端同士を環状に連結して構成されるセグメント環状部を少なくとも1周分含み、
前記第2コイルである1の前記導体セグメントコイルに設けられた前記スロット内配置部は、別の導体セグメントコイルに設けられた前記スロット内配置部と同じ前記入力端子側スロットに挿入されていることを特徴とする回転電機ステータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の回転電機ステータにおいて、
前記第2絶縁被膜は、ポリイミドとポリアミドイミドとをアロイ化した樹脂を有するエナメル樹脂を含み、
前記第1絶縁被膜は、第2絶縁被膜の誘電率よりも高い誘電率を有する材料を含むことを特徴とする回転電機ステータ。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の回転電機ステータにおいて、
前記第1絶縁被膜は、ポリアミドイミドを有するエナメル樹脂を含み、
前記第2絶縁被膜は、ポリイミドを有するエナメル樹脂を含むことを特徴とする回転電機ステータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1に記載の回転電機ステータにおいて、
前記入力端子側スロットに挿入される前記ステータコイルの少なくとも一部は、フィラーが混入された樹脂を有する第2絶縁被膜または別の絶縁被膜を含むことを特徴とする回転電機ステータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−175822(P2012−175822A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35946(P2011−35946)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】