回転電機用固定子巻線の製造方法
【課題】導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして簡易に製造することができ、且つ製造効率を高めて低コスト化を図り得るようにした回転電機用固定子巻線の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の固定子巻線40の製造方法は、スロット収容部51とターン部52とを有する所定形状の導線50を形成する導線形成工程101と、導線50のターン部52を円弧状に成形して渦巻き状に巻回された巻回体60を形成する巻回体形成工程102と、被組付巻回体61と組付巻回体62の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付け、複数の巻回体60よりなる組付体63を形成する組付工程103とを有する。
【解決手段】本発明の固定子巻線40の製造方法は、スロット収容部51とターン部52とを有する所定形状の導線50を形成する導線形成工程101と、導線50のターン部52を円弧状に成形して渦巻き状に巻回された巻回体60を形成する巻回体形成工程102と、被組付巻回体61と組付巻回体62の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付け、複数の巻回体60よりなる組付体63を形成する組付工程103とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載される回転電機用固定子巻線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両において電動機や発電機として使用される回転電機は、界磁として働く回転子と、固定子コアおよび固定子巻線を有し電機子として働く固定子とを備えている。そして、固定子巻線として、固定子コアのスロットに収容される複数のスロット収容部と、隣り合うスロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線を固定子コアに巻装されてなるものが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、スロット内に配置される導線の占積率を向上させるために、軸線に対して垂直方向の断面形状が矩形形状であるとともに、展開したときの全体形状がクランク状に蛇行した形状の各相巻線(U相導体、V相導体、W相導体)により、固定子巻線を構成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−145286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の固定子巻線は、ベルト状の導線(各相巻線)を所定の回数、渦巻き状に巻き付けることにより、径方向に複数の層を為す所定寸法の円筒状に形成される。このようにして円筒状に形成された固定子巻線は、同一のスロット内に収容される複数の導線のスロット収容部が径方向に整列した状態にされている必要がある。この場合、同一のスロット内に収容される複数の導線のスロット収容部は、占積率を向上させるために、より密な状態にされている方が好ましい。そのため、ベルト状の導線を巻き付ける際に、隣接する導線のスロット収容部同士が擦れ合うことにより、スロット収容部の表面を被覆している絶縁被膜の損傷が発生し易い。さらに、それぞれの導線は、長さの長いものが必要になるので、ハンドリングが悪くなるため、製造効率が悪化し、コストの増大を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして簡易に製造することができ、且つ製造効率を高めて低コスト化を図り得るようにした回転電機用固定子巻線の製造方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、複数のスロット収容部と隣り合う該スロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線を組み付けてなる回転電機用固定子巻線の製造方法であって、前記スロット収容部と前記ターン部とを有する所定形状の前記導線を形成する導線形成工程と、前記導線の前記ターン部を円弧状に成形して渦巻き状に巻回された巻回体を形成する巻回体形成工程と、被組付巻回体と組付巻回体の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付け、複数の前記巻回体よりなる組付体を形成する組付工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、組付工程において、組み付けられる側の被組付巻回体と組み付ける側の組付巻回体の双方を、径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けるようにしている。そのため、被組付巻回体と組付巻回体との干渉を回避して、両巻回体を円滑且つ容易に軸方向へ相対移動させることができるので、両巻回体の組付けを簡易に行うことができる。これにより、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして、固定子巻線を簡易に製造することが可能となる。
【0009】
また、本発明では、被組付巻回体と組付巻回体とを軸方向に相対移動させて組み付けるようにしているため、それら巻回体の1本の長さを短く設定することができる。そのため、製造時のハンドリングが極めて良好になり、製造効率を大幅に高めることができるので、製造コストの低減が可能となる。
【0010】
なお、本発明の組付工程における被組付巻回体および組付巻回体には、1つの巻回体の他に、複数の巻回体を組み付けてなる組付体も含まれる。即ち、本発明では、被組付巻回体と組付巻回体との組付けは、次の4通りとなる。(1)1つの巻回体よりなる被組付巻回体と1つの巻回体よりなる組付巻回体との組付け。(2)1つの組付体よりなる被組付巻回体と1つの巻回体よりなる組付巻回体との組付け。(3)1つの巻回体よりなる被組付巻回体と1つの組付体よりなる組付巻回体との組付け。(4)1つの組付体よりなる被組付巻回体と1つの組付体よりなる組付巻回体との組付け。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記組付工程は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のそれぞれの周方向位置を位置決め部材で位置決めしながら行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、組付工程において、被組付巻回体と組付巻回体の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付ける際に、それぞれの巻回体の周方向位置が位置決めされた状態で軸方向に相対移動する。これにより、被組付巻回体と組付巻回体のスロット収容部を径方向に精度良く整列させることができるので、スロット収容部の整列精度を向上させることができる。
【0013】
なお、位置決め部材としては、例えば、被組付巻回体および組付巻回体の隣り合うスロット収容部同士の間に挿入配置可能な大きさで楔状に形成された通し矢を好適に採用することができる。この通し矢は、被組付巻回体および組付巻回体に対して、周方向の1箇所以上に設けられ、より確実に且つより精度良く位置決めするためには、より多くの箇所に設けることが好ましい。この通し矢は、それら巻回体の軸方向や径方向に進退動可能にすることにより、自動化することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記位置決め部材は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のそれぞれの周方向の同一位置に複数配置されてそれぞれ径方向に進退動可能に設けられており、前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体を軸方向に相対移動させる際に、周方向の同一位置に配置された複数の前記位置決め部材のうちの少なくとも1つの前記位置決め部材で常時位置決めすることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、位置決め部材を制御する制御設備の良好な静的精度(取付け精度)を確保することができるので、被組付巻回体および組付巻回体の位置精度を良好にすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記組付巻回体の位置決めをする前記位置決め部材は、前記被組付巻回体と前記組付巻回体を軸方向に相対移動させる際に、前記組付巻回体と共に軸方向に移動しつつ位置決めすることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、位置決め部材を組付巻回体と共に軸方向に連続して移動させることができるので、組付工程のサイクルタイムを短縮することができる。また、組付巻回体の周方向同一位置に位置決め部材を1つ設ければよいことから、位置決め部材の数を低減することが可能となるため、設備コストの低減化を図ることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のうちの少なくとも一方は、所定の渦巻き形状に形成された渦形状治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めされることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、渦形状治具の内周面または外周面の全面で被組付巻回体または組付巻回体を位置決めするため、被組付巻回体または組付巻回体を精度良く位置決めすることができる。そのため、被組付巻回体と組付巻回体とを、干渉しないようにして容易に組み付けることができる。これにより、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線を製造することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記被組付巻回体側の前記渦形状治具の径方向の肉厚は、前記組付巻回体の組付層数の積層距離に1層分以上の積層距離が付加された距離に設定されていることを特徴とする。なお、本発明において、組付巻回体の組付層数は、当該組付巻回体の径方向に積層された巻回体の層数が最少となる部位での層数を基準として定められる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、巻回体のターン部に層変わり部となる変曲点(クランク部)が設けられている場合でも、被組付巻回体と組付巻回体とを組み付ける際に必要な組付巻回体のスペースを確実に確保することができる。これにより、被組付巻回体と組付巻回体とを、干渉しないようにして容易に組み付けることが可能となる。なお、被組付巻回体と組付巻回体との干渉をより確実に回避するためには、組付巻回体の組付層数の積層距離に2層分以上の積層距離が付加されていることが望ましい。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のうちの少なくとも一方は、渦巻き状に配備された複数の回転板または移動板を備えた可動治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めされることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、可動治具による被組付巻回体および組付巻回体の径方向への弾性変形量を任意に設定することが可能であるため、被組付巻回体および組付巻回体を任意の形状に制御することができる。また、被組付巻回体および組付巻回体のそれぞれに対して、可動治具により、内周側への縮径と外周側への拡径とを同時に行うことができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体は、前記可動治具により縮径および拡径の双方向に弾性変形させられることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、被組付巻回体と組付巻回体とを組み付けた際に、各巻回体のスロット収容部を適切な位置に揃えることができるため、スロット収容部の位置を揃える工程が不要となる。これにより、製造工程を簡略化することができるので、製造効率を高めて低コスト化を図ることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、前記導線形成工程または前記巻回体形成工程において、前記ターン部に前記固定子巻線の径方向に位置ずれするクランク部を形成することを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、導線のターン部にクランク部が形成されていても、組付工程で被組付巻回体と組付巻回体とを組付ける際に、組付巻回体を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させるので、被組付巻回体と組付巻回体とのクランク部での干渉を回避することができる。よって、ターン部にクランク部を有する導線を用いて固定子巻線を製造する場合でも、本発明の製造方法を有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1の製造方法により製造された固定子巻線が巻装された固定子の全体斜視図である。
【図2】図1に示す固定子の平面図である。
【図3】図1に示す固定子の側面図である。
【図4】図1に示す固定子を構成する固定子コアの平面図である。
【図5】図4に示す固定子コアを構成する分割コアの平面図である。
【図6】実施形態1に係る固定子巻線の全体斜視図である。
【図7】図6に示す固定子巻線の側面図である。
【図8】図6に示す固定子巻線の平面図である。
【図9】図6に示す固定子巻線の底面図である。
【図10】(A)は実施形態1に係る固定子巻線を構成する導線の断面図であり、(B)は変形例に係る導線の断面図である。
【図11】(A)は実施形態1において用いられる導線の上面図であり、(B)は導線の正面図である。
【図12】(A)は実施形態1において用いられる導線のターン部の形状を示す斜視図であり、(B)は隣接する複数のターン部を示す斜視図である。
【図13】実施形態1の製造方法により製造された固定子巻線の結線図である。
【図14】実施形態1において各スロットの最外径側に配置される各導線の第1スロット収容部の配置位置を示す説明図である。
【図15】実施形態1の固定子巻線において1本の導線(U1−4’)のスロット収容部の配置位置および軌跡を示す説明図である。
【図16】実施形態1においてV相巻線の接続状態を示す巻線仕様図である。
【図17】実施形態1に係る製造方法の製造工程を示すブロック図である。
【図18】実施形態1に係る製造方法の導線形成工程の様子を示す説明図である。
【図19】(A)は実施形態1に係る製造方法の導線形成工程において折曲げ加工を開始する前の状態を示す説明図であり、(B)は折曲げ加工を開始した直後の状態を示す説明図である。
【図20】実施形態1に係る製造方法の巻回体形成工程において形成された巻回体の軸方向から見た平面図である。
【図21】実施形態1に係る製造方法の巻回体形成工程において形成された巻回体の斜視図である。
【図22】実施形態1に係る製造方法の組付工程において用いられる渦形状治具を示す図であって、(A)は(B)のA−A線矢視断面図、(B)は渦形状治具の側面図である。
【図23】実施形態1に係る製造方法の組付工程を示す説明図である。
【図24】(A)〜(H)は実施形態1に係る製造方法の組付工程の第1ステップおよび第2ステップの途中までを示す説明図である。
【図25】(A)〜(E)は実施形態1に係る製造方法の組付工程の第2ステップの途中から最後までを示す説明図である。
【図26】(A)〜(H)は実施形態1に係る製造方法の組付工程の第3ステップおよび第4ステップの途中までを示す説明図である。
【図27】(A)〜(F)は実施形態1に係る製造方法の組付工程の第4ステップの途中から最後までを示す説明図である。
【図28】実施形態1に係る製造方法の組付工程において形成された最終組付体の斜視図である。
【図29】(A)〜(D)は実施形態2に係る製造方法の組付工程の一部を示す説明図である。
【図30】実施形態3において用いられる第1可動治具の作動状態を示す説明図であって、(A)は第1可動治具で巻回体を径方向に弾性変形させる前の状態を示し、(B)は第1可動治具で巻回体を径方向に弾性変形させた後の状態を示す。
【図31】巻回体を径方向に弾性変形させるに際して巻回体の内周側端部を縮拡径させずに外周側端部を拡径させた場合の説明図である。
【図32】巻回体を径方向に弾性変形させるに際して巻回体の内周側端部を縮径させ且つ外周側端部を拡径させた場合の説明図である。
【図33】実施形態4において用いられる第2可動治具の作動状態を示す説明図である。
【図34】実施形態4において第2可動治具の移動板で押圧される巻回体の層変わりのない箇所を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る回転電機用固定子巻線の製造方法の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
〔実施形態1〕
先ず、本実施形態の製造方法により製造される回転電機用固定子巻線が用いられた固定子について図1〜図16を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る回転電機の固定子の全体斜視図である。図2は、その固定子の平面図である。図3は、その固定子の側面図である。
【0031】
本実施形態の固定子20は、例えば車両の電動機および発電機を兼ねる回転電機に使用されるものであって、内周側に回転子(図示せず)を回転自在に収容する。回転子は、固定子20の内周側と向き合う外周側に、周方向に所定距離を隔てて極性が交互に異なるように配置された複数の磁極を有する。これらの磁極は、回転子内に埋設された複数の永久磁石により形成されている。固定子20は、図1〜図3に示すように、固定子コア30と、複数(本実施形態では48本)の導線50から形成される三相の固定子巻線40とを備えている。なお、固定子コア30と固定子巻線40との間には、絶縁紙を配してもよい。
【0032】
図4および図5を参照して固定子コア30について説明する。図4は、本実施形態に係る固定子コアの平面図である。図5は、本実施形態に係る分割コアの平面図である。
【0033】
固定子コア30は、図4に示すように、内周に複数のスロット31が形成された円環状を呈している。複数のスロット31は、その深さ方向が径方向と一致するように形成されている。固定子コア30に形成されたスロット31の数は、回転子の磁極数(8磁極)に対し、固定子巻線40の一相あたり2個の割合で形成されている。本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。
【0034】
固定子コア30は、図5に示す分割コア32を所定の数(本実施形態では24個)を周方向に連結して円環状に形成されている(図4参照)。円環状に連結された分割コア32は、その外周に嵌合された外筒37により固定されている(図1〜図3参照)。分割コア32は、一つのスロット31を区画するとともに、周方向で隣接する分割コア32との間で一つのスロット31を区画する形状を呈している。具体的には、分割コア32は、径方向内方に伸びる一対のティース部33と、ティース部33を径方向外方で連結するバックコア部34とを有している。
【0035】
固定子コア30を構成する分割コア32は、複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層させて形成されている。積層された電磁鋼板の間には、絶縁薄膜が配置されている。分割コア32は、この電磁鋼板の積層体からだけでなく、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて形成してもよい。
【0036】
次に、図6〜図9を参照して固定子巻線40について説明する。図6は、本実施形態に係る固定子巻線の全体斜視図であり、図7はその側面図、図8はその平面図、図9はその底面図である。固定子巻線40は、図6〜図9に示すように、複数の導線50により円筒形状に形成されており、固定子コア30のスロット31内に収容されるストレート部41と、このストレート部41の両端においてスロット31外部に配置されるコイルエンド部42を有する。一方のコイルエンド部42の端面において、出力線および中性点となるリード線が軸方向に突出するとともに、内径側から突出した導線50の端部を外径側から突出した導線50の端部に接続する渡り部59が設けられている。
【0037】
固定子巻線40を構成する導線50は、図10(A)に示すように、銅製の導体67と、導体67の外周を覆い導体67を絶縁する内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68とから形成されている。内層68aおよび外層68bを合わせた絶縁被膜68の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の厚みが厚いので、導線50同士を絶縁するために導線50同士の間に絶縁紙等を挟み込む必要がなくなっているが、導線50同士の間あるいは固定子コア30と固定子巻線40との間に絶縁紙を配設してもよい。
【0038】
外層68bはナイロン等の絶縁材で形成され、内層68aは外層68bよりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機に発生する熱により外層68bは内層68aよりも早く結晶化するため、外層68bの表面硬度が高くなり、導線50に傷がつきにくくなる。このため、後述するターン部52に段部を形成する加工を施した導線50の絶縁を確保することができる。
【0039】
さらに、導線50は、図10(B)に示すように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材69で被覆してもよい。これにより、融着材69は、回転電機に発生する熱により絶縁被膜68よりも早く溶融するので、同じスロット31に収容されている複数の導線50同士が融着材69同士により熱接着する。その結果、同じスロット31に収容されている複数の導線50が一体化し導線50同士が硬化することで、スロット31内の導線50の機械的強度が向上する。なお、絶縁被膜68の外層68bには、ポリフェニレンサルファイド(PPS)よりなる被膜を用いてもよい。
【0040】
図11に、導線50を平面上に展開した場合の図を示す。導線50は、図11に示すように、固定子コア30のスロット31内に収容される複数のスロット収容部51と、スロット31から固定子コア30の外に突出し、周方向に異なるスロット31に収容されているスロット収容部51同士を接続している複数のターン部52とを有する。具体的には、複数のスロット収容部51は、少なくとも、スロット31に収容される第1スロット収容部51Aと、第1スロット収容部51Aから周方向に離間したスロット31に収容される第2スロット収容部51Bと、第2スロット収容部51Bから周方向に離間したスロット31に収容される第3スロット収容部51Cを含む。また、複数のターン部52は、少なくとも、固定子コア30の一端側におけるスロット31の外部で第1スロット収容部51Aと第2スロット収容部52Bを接続する第1ターン部52Aと、固定子コア30の他端側におけるスロット31の外部で第2スロット収容部51Bと第3スロット収容部51Cを接続する第2ターン部52Bを含む。なお、本実施形態においては、図11に示すように、各導線50は、12個のスロット収容部51A〜51Lと、11個のターン部52A〜52Kを備えている。
【0041】
具体的には、本実施形態におけるスロット収容部51は、図11の左端に位置する第1スロット収容部51Aから順に、固定子コア30の周方向に離間したスロット31にそれぞれ収容される第2スロット収容部51B、第3スロット収容部51C、・・・、第12スロット収容部51Lの12個からなる。また、ターン部52は、固定子コア30の一端側におけるスロット31の外部と固定子コア30の他端側におけるスロット31の外部とで交互にスロット収容部51同士を接続する第1ターン部52A、第2ターン部52B、・・・、第10ターン部52J、および第11スロット収容部51Kと第12スロット収容部51Lを接続する第11ターン部52Kの11個からなる。
【0042】
この導線50の隣り合うスロット収容部51同士の周方向(矢印Y方向)の離間距離Xは、全ての箇所で異なるようにされている。この場合、離間距離Xは、導線50の第1スロット収容部51A側から第12スロット収容部51L側に向かうにつれて、徐々に短くなるようにされている。即ち、離間距離Xは、X1>X2>X3>X4>X5>X6>X7>X8>X9>X10>X11となっている。なお、離間距離Xは、固定子コア30の周方向において隣り合うスロット31同士の離間距離(スロットピッチ)を考慮して適宜設定される。
【0043】
導線50の両端には、他の導線50等と接続するための引出し部53a、53bが設けられている。一方の引出し部53aは、第1スロット収容部51Aの端末から内側(図11の右側)へ戻るように、スロット収容部間にあるターン部の略半分の長さに形成されたターン部52Mを介して形成されている。よって、一方の引出し部53aは、第1スロット収容部51Aからターン部52Mの長さだけ内側(図11の右側)へ寄った所に位置している。他方の引出し部53bは、第12スロット収容部51Lの端末から内側(図11の左側)へ戻るように、スロット収容部間にあるターン部の略半分の長さに形成されたターン部52Nを介して形成されている。よって、他方の引出し部53bは、第12スロット収容部51Lからターン部52Nの長さだけ内側(図11の左側)へ寄った所に位置している。他方の引出し部53bとターン部52Nとの間には、固定子巻線40の軸方向端面上で固定子コア30の径方向外方へ折り曲げられて配置される渡り部59が設けられている。
【0044】
ターン部52の略中央部には、第1スロット収容部51A、第2スロット収容部51B、第3スロット収容部51C、・・・、第12スロット収容部51Lを導線50の長手方向およびスロット収容部51の長手方向に直交する方向に順次段差が生じるようにクランク部54(図12参照)が形成されている。その結果、導線50は図11(A)に示すように階段状の形状を有することになる。
【0045】
図12に、図11に示す導線50を用いて円筒形状の固定子巻線40を形成した場合のターン部52の形状を示す斜視図を示す。図12(A)に示すように、ターン部52は、固定子コア30の径方向に変位して固定子コア30の端面30aに沿って延びるクランク部54を有する。クランク部54のクランク形状によるずれ量(径方向への変位量)は、ターン部52の径方向厚み分である。これにより、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、ターン部52の径方向厚み分だけ変位している。このようにクランク部54がターン部52に設けられていることにより、図12(B)に示すように周方向に隣接している導線50のターン部52同士を密に巻回できる。また、図12(B)に示すように周方向に隣接するターン部52は互いに同じ形状であり、ターン部52同士が干渉するのを防止している。
【0046】
また、スロット31から固定子コア30の外に突出するターン部52の突出箇所に、導線50がまたがって設置されているスロット同士に向けて固定子コア30の軸方向両側の端面30aに沿って段部55が形成されている。これにより、スロット31から突出している導線50のターン部52の突出箇所の間隔、言い換えればターン部52が形成する三角形状部分の底辺の長さは、導線50がまたがって設置されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンド部42の高さが低くなる。ターン部52の突出箇所(スロット収容部51の延長線上の部位)に形成された段部55は、スロット収容部51に対して略直角に屈曲されており、その屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部57が設けられている。
【0047】
また、固定子コア30の端面30aに沿った段部55の長さをd1、周方向に隣接するスロット同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、導線50の段部55が周方向に隣り合うスロットから突出する導線50と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロットから突出する導線50同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンド部42の高さが高くなったり、あるいはコイルエンド部42の径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、コイルエンド部42の高さが低くなる。さらに、コイルエンド部42の径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。
【0048】
さらに、導線50には、ターン部52の略中央部のクランク部54と、ターン部52の突出箇所に形成した段部55との間に、それぞれ2個の段部56が形成されている。つまり、固定子コア30の一方の軸方向の端面30a側の導線50のターン部52には、1個のクランク部54と合計6個の段部55、56が形成されている。これにより、クランク部54や段部55、56を形成しない三角形状のターン部の高さに比べ、ターン部52の高さが低くなる。クランク部54のクランク形状も、段部55、56と同様に、固定子コア30の端面30aに沿って形成されている。したがって、導線50のターン部52は、クランク部54を挟んで両側が階段状に形成されている。また、ターン部52の階段部において、4個の段部56により形成されるそれぞれの屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部58が設けられている。
【0049】
固定子巻線40は、図11に示した導線50を48本用いて形成されている。ただし、固定子巻線40に出力線や中性点などを設けるために、渡り部59を設けていない導線50を適宜混在させても良い。したがって、本実施形態では、48本の導線50の全ては、各導線50の両端部に形成された引出し部53a、53bの間において同じ形状に成形されている。
【0050】
この固定子巻線40を構成する導線50は、ターン部52の略中央部に、ターン部52の径方向厚み分だけ径方向にずれたクランク部54が設けられていることにより、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、固定子コア30の中心軸線からの半径距離が、スロット収容部51の径方向厚み分だけ異なっている。また、導線50は、隣り合うスロット収容部51同士の離間距離Xが、導線50の第1スロット収容部51A側から第12スロット収容部51L側に向かうにつれて、徐々に短くなるようにされており、全ての箇所で実質的に異なっている(図8参照)。これらのことから、固定子巻線40は、径方向に重なり合うスロット収容部51が、周方向に位置ずれすることなく径方向一列にストレートな状態に整列するようになるので、真円筒形状により近い形状にすることができる(図6および図7参照)。
【0051】
この固定子巻線40は、複数の導線の第1スロット収容部51A同士、第2スロット収容部51B同士、・・・、第12スロット収容部51L同士をそれぞれ周方向に連続するスロットに配置するとともに、第1スロット収容部51A同士、第2スロット収容部51B同士、・・・、第12スロット収容部51L同士の固定子コアの中心軸線Oからの半径距離がそれぞれ等しくなるよう配置されているので、固定子巻線40の外径寸法および内径寸法を周方向で均一化することができる。この固定子巻線40は、図13に示すように、それぞれの相が16本の導線50を直列に接続した各相巻線43(U、V、W)をY結線した三相巻線として形成されている。
【0052】
図14において、各導線50のスロット収容部51は、12個の破線円と放射方向に延びる破線とが交差する位置に配置されており、最外径側と最内径側のみが矩形断面形状で表されている。また、放射方向に1列に並んだスロット収容部51の外側には、それぞれ対応する1〜48のスロット番号が付されている(以後、図15においても同じ)。また、スロット番号の外側には、それぞれのスロットの最外径側(第12層)に、巻回の始端側となる第1スロット収容部51Aが配置される導線の番号が付されている。
【0053】
各相の巻線を構成する16本の導線50は、8個の同一のスロット31にスロット収容部51が収容される8本の導線50と、それら8個のスロット31とは別の8個の同一のスロット31にスロット収容部51が収容される8本の導線50とに分かれている。例えばU相の場合には、8本の導線(U1−1)〜(U1−4)および(U1−1’)〜(U1−4’)は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回されて、それぞれのスロット収容部51が、1番スロット、7番スロット、13番スロット、19番スロット、25番スロット、31番スロット、37番スロットおよび43番スロットに収容される。また、他の8本の導線(U2−1)〜(U2−4)および(U2−1’)〜(U2−4’)は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回されて、それぞれのスロット収容部51が、2番スロット、8番スロット、14番スロット、20番スロット、26番スロット、32番スロット、38番スロットおよび44番スロットに収容される。
【0054】
なお、図14には、代表として導線(U1−1)の軌跡が示されている。図14において、黒四角で示された部分は導線(U1−1)のスロット収容部51が配置されていることを示し、導線(U1−1)の周方向に延びる太線は、固定子コア30の軸方向一方側(図14の紙面手前側)に位置するターン部52を示し、導線(U1−1)の周方向に延びる二点鎖線は、固定子コア30の軸方向他方側(図14の紙面後側)に位置するターン部52を示す(以後、図15においても同じ)。
【0055】
この固定子巻線40は、図14に示すように、各スロット31において、8本の導線50のスロット収容部51が径方向に12層、積層された状態になっている。導線(U1−1)は、始端側の第1スロット収容部51Aが1番スロットの最外層(第12層)に位置し、終端側の第12スロット収容部51Lが19番スロットの最内層(第1層)に位置している。
【0056】
また、固定子巻線40を構成する48本の導線50は、長手方向(周方向)に1スロットピッチずつずれて配置されているので、各導線50の始端側となる第1スロット収容部51Aが、48個の各スロット31の最外層(第12層)に順に収容されている。下記の表1は、1番〜48番の各スロット31において、最外層に位置する導線の番号と、最内層に位置する導線の番号をまとめたものである。
【0057】
【表1】
【0058】
固定子巻線40を構成する導線50は、各導線50の一端側(第1スロット収容部51A側)から他端側(第12スロット収容部51L側)に向かうにつれて、スロット収容部51の固定子コア30の中心軸線Oからの半径距離が順次小さくなっている。本実施形態の場合、各導線50は、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士の固定子コア30の中心軸線Oからの半径方向距離がスロット収容部51の径方向厚み分異なっている。
【0059】
図15は、固定子巻線40を図14の裏側から見た場合の、1本の導線(U1−4’)の軌跡を示す図である。この導線(U1−4’)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが43番スロットの第12層(最外層)に配置され、第2スロット収容部51Bが1番スロットの第11層に配置され、第3スロット収容部51Cが7番スロットの第10層に配置され、第4スロット収容部51Dが13番スロットの第9層に配置され、最終の第12スロット収容部51Lが13番スロットの第1層(最内層)に配置されている。即ち、導線(U1−4’)は、始端側(外径側)から終端側(内径側)に向かうにつれて、スロット収容部51の固定子コア30の中心軸線Oからの半径距離が順次小さくなっている。
【0060】
よって、固定子コア30の中心軸線Oから、第1スロット収容部51Aまでの半径距離r43と、第2スロット収容部51Bまでの半径距離r1と、第3スロット収容部51Cまでの半径距離r7と、第4スロット収容部51Dまでの半径距離r13は、順次スロット収容部51の径方向厚み分小さくなっており、以後同様に、第12スロット収容部51Lに至るまで、半径距離が順次スロット収容部51の径方向厚み分小さくなっている。すなわち、第1スロット収容部51Aから第12スロット収容部51Lに至るまで、半径距離が順次小さくなるのみで、途中で半径距離が大きくなることはない。
【0061】
次に、16本の導線50を直列に接続してなる各相巻線43(U、V、W)のうち、代表としてV相の各相巻線43の接続状態を、図13、図16および上記の表1を参照して説明する。なお、U相、W相の各相巻線もV相と同様の接続となっている。
【0062】
図13において出力線Vの始端に位置する導線(V1−1)は、表1および図16に示すように、始端側の第1スロット収容部51Aが5番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが23番スロットの最内層(第1層)に配置されている。導線(V1−1)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが17番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが35番スロットの第1層に配置された導線(V1−2)の始端側が接続されている。
【0063】
導線(V1−2)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが29番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが47番スロットの第1層に配置された導線(V1−3)の始端側が接続されている。導線(V1−3)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが41番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが11番スロットの第1層に配置された導線(V1−4)の始端側が接続されている。導線(V1−4)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが6番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが24番スロットの第1層に配置された導線(V2−1)の始端側が接続されている。
【0064】
導線(V2−1)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが18番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが36番スロットの第1層に配置された導線(V2−2)の始端側が接続されている。導線(V2−2)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが30番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが48番スロットの第1層に配置された導線(V2−3)の始端側が接続されている。導線(V2−3)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが42番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが12番スロットの第1層に配置された導線(V2−4)の始端側が接続されている。
【0065】
導線(V2−4)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが48番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが18番スロットの第1層に配置された導線(V2−4’)の終端側が接続されている。導線(V2−4’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが36番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが6番スロットの第1層に配置された導線(V2−3’)の終端側が接続されている。導線(V2−3’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが24番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが42番スロットの第1層に配置された導線(V2−2’)の終端側が接続されている。導線(V2−2’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが12番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが30番スロットの第1層に配置された導線(V2−1’)の終端側が接続されている。
【0066】
導線(V2−1’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが47番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが17番スロットの第1層に配置された導線(V1−4’)の終端側が接続されている。導線(V1−4’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが35番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが5番スロットの第1層に配置された導線(V1−3’)の終端側が接続されている。導線(V1−3’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが23番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが41番スロットの第1層に配置された導線(V1−2’)の終端側が接続されている。導線(V1−2’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが11番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが29番スロットの第1層に配置された導線(V1−1’)の終端側が接続されている。なお、導線(V1−1’)の始端側は、中性点Vに接続されている。
【0067】
次に、表1、図11および図16を参照して各導線50の接続状態を説明する。ここでは、代表として2本の導線(V1−1)(V1−2)の接続状態を説明する。一方の導線(V1−1)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが5番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側となる第12スロット収容部51Lが23番スロットの最内層(第1層)に配置されている。この導線(V1−1)の終端側に設けられた引出し部53b(内周側端部)は、第12スロット収容部51Lが配置されている23番スロットからターン部52Nの長さ分だけ戻った所(20番スロット付近)に位置している。
【0068】
そして、他方の導線(V1−2)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが17番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側となる第12スロット収容部51Lが35番スロットの最内層(第1層)に配置されている。この導線(V1−2)の始端側に設けられた引出し部53a(外周側端部)は、第1スロット収容部51Aが配置されている17番スロットからターン部52Mの長さ分だけ戻った所(20番スロット付近)に位置している。図6〜図9に示すように、この導線(V1−1)の引出し部53b(内周側端部)は、径方向外方側へ略直角に折り曲げられた後、その先端が、固定子巻線40の外周端部に位置する導線(V1−2)の引出し部53a(外周側端部)の先端部に溶接接合されることにより接続されている。
【0069】
この溶接接合は、固定子巻線40の最も外径側に位置するターン部52よりも外径側において溶接により接続されている。この場合、導線(V1−1)の引出し部53b(内周側端部)の折り曲げ部は、固定子巻線40の軸方向端面(ターン部52の軸方向外面)上を通る渡り部59を形成しており、2本の導線(V1−1)(V1−2)は、渡り部59を介して接続されている。これにより、内径側に位置するス第12ロット収容部51Lの径方向内方への膨出をより効果的に防止することができるので、内径側に位置する回転子との干渉を回避することが可能となる。
【0070】
なお、渡り部59は、図2および図8に示すように、渡り部59の径方向両端部が、固定子コア30(固定子巻線40)の中心軸線Oから放射方向に延びる直線に沿って延びるように形成されている。渡り部59の形状をこのようにすることによって、導線の折り曲げを容易にするとともに、溶接接合を容易にすることができる。
【0071】
また、この渡り部59は、図2および図8に示すように、固定子巻線40の軸方向端面上において、周方向に略3/4周する範囲の領域に設けられている。そして、固定子巻線40の軸方向端面上の残り1/4周する範囲の領域には、中性点V、出力線W、中性点U、出力線V、中性点Wおよび出力線Uの引出し部が順番に並んで設けられている。即ち、固定子巻線40の軸方向端面において、中性点U、V、Wの引出し部と同じ領域に出力線U、V、Wの引出し部が設けられているとともに、渡り部59が設けられる領域と中性点U、V、Wおよび出力線U、V、Wの引出し部が設けられる領域が分離されている。
【0072】
上記のように構成された固定子巻線40は、外周側から分割コア32が挿入されることによって固定子コア30と組み付けられている(図1〜図3参照)。これにより、固定子巻線40を構成する導線50は、固定子コア30の内周側で周方向に沿って波巻きされた状態に組み付けられている。導線50のターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、所定のスロットピッチ(本実施形態では、3相×2個=6スロットピッチ)だけ離間したスロット31に収容されている。隣り合うスロット収容部51同士を接続するターン部52は、固定子コア30の軸方向の両端面からそれぞれ突出し、その突出している部分(ターン部52の集合体)によりコイルエンド部42が形成されている。
【0073】
次に、本実施形態の固定子巻線40の製造方法について説明する。本実施形態の固定子巻線40の製造方法は、図17に示すように、導線形成工程101と、巻回体形成工程102と、組付工程103とからなる。
【0074】
<導線形成工程101>
最初の導線形成工程101では、図18および図19に示すように、治具を用いて、線材50aに対して、スロット31に収容されるスロット収容部51と、周方向に異なるスロット31に収容されるスロット収容部51同士を接続するターン部52とを形成し、図11に示す導線50を作製する。ここで用いられる治具は、線材50aの幅に相当する距離を隔てて対向配置された第1および第2固定治具81、82と、支軸83aに回転可能に取着され、第1および第2固定治具81、82の間に挟持された線材50aを第1固定治具81側へ屈曲させる回転治具83とを備えている。第1固定治具81は、線材50aが屈曲される際に屈曲部が当接する略直角のコーナ部81aを有する。コーナ部81aは、所定の大きさのアール形状とされている。
【0075】
この治具により、ターン部52を形成するには、図19(A)に示すように、第1および第2固定治具81、82の間に、線材50aのスロット収容部51となる部分を挟持させて、支軸83aを中心にして回転治具83を第1固定治具81側へ回転させる。なお、第1固定治具81と第2固定治具82の対向方向は、固定子コア30の周方向に相当する(図18参照)。これにより、図19(B)に示すように、回転治具83が線材50aを第1固定治具81のコーナ部81aに押し付け、コーナ部81aのアール形状に沿って屈曲させる。
【0076】
これにより、スロット31から突出するターン部52の突出箇所(スロット収容部51の延長線上の部位)が、スロット収容部51に対して略直角に屈曲され、ターン部52の突出箇所に、固定子コア30の端面に沿った段部55が形成される。このとき形成された屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部57(図12(A)参照)が形成される。なお、屈曲部の肉厚tは、屈曲部に膨出部57が形成されるのに伴って、線材50aの初期の肉厚Tよりも小さくなっている。
【0077】
そして、上記の治具を上記と同様に操作して、各ターン部52に、固定子コア30の端面に平行な合計4個の段部56からなる階段部を形成することにより、その階段部の屈曲部の内側部分に、固定子コア30の径方向に膨出する膨出部58(図12(A)参照)を形成する。また、成形装置(図示せず)を用いて、各ターン部52の中央部に、固定子巻線40の径方向に位置ずれするクランク部54を形成する。なお、このクランク部54は、後に行われる巻回体形成工程において、ターン部52を円弧状に成形する際に形成するようにしてもよい。
【0078】
以上のように導線形成工程101を行って、固定子巻線40の1個あたり48本の導線50を準備する。
【0079】
<巻回体形成工程102>
巻回体形成工程102では、導線形成工程101で作製した導線50の各ターン部52を、成形装置(図示せず)などを用いて円弧形状に塑性変形させて、導線50が渦巻き状に巻回された巻回体60を形成する。本実施形態では、図20および図21に示すように、導線50が周方向に11/8周する渦巻き状の巻回体60を形成する。この場合、巻回体60の両端部の径方向に重なった部分(3/8周部分)においては、隣り合うスロット収容部51同士の周方向の離間距離Xの短い側の端部が径方向内側に位置し、離間距離Xの長い側の端部が径方向外側に位置している。そして、スロット収容部51は、51Aと51I、51Bと51J、51Cと51K、51Dと51Lのスロット収容部同士が径方向に対向して並んでいる。なお、巻回体60の周回数(11/8周=1.375周)は、固定子巻線40の仕様に応じて適宜設定される。
【0080】
<組付工程103>
組付工程103では、巻回体形成工程102で渦巻き状に形成した48個の巻回体60を組付装置(図示せず)により組み付けて、最終的に、図28に示す円筒状の最終組付体64を形成する。この組付工程103は、図23に示すように、第1〜第4ステップを行って、組み付けられる側の被組付巻回体61と組み付ける側の組付巻回体62の双方を、径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けることにより、複数の巻回体60よりなる組付体63を形成する。
【0081】
本実施形態では、被組付巻回体61および組付巻回体62をそれぞれ径方向に弾性変形させる治具として、図22(A)(B)に示す渦形状治具85が用いられる。この渦形状治具85は、周方向に略2.5周する渦巻き形状に形成されており、径方向に対向する対向面間の隙間に巻回体60が軸方向に挿入可能とされている。そして、この渦形状治具85は、内周側端部を拡縮径させずに外周側端部を拡径させることにより全体的に拡径するように構成されている。なお、内周側端部は、拡縮径させることなく周方向に移動させるようにしてもよい。
【0082】
このように渦形状治具85を拡径させることで、渦形状治具85の径方向に対向する対向面間の隙間に挿入された巻回体60を所定の大きさに拡径可能とされている。渦形状治具85の拡径動作および拡径量等は、第1制御部(図示せず)により制御される。なお、この渦形状治具85は、外周側端部を拡縮径させずに内周側端部を縮径させることにより全体的に縮径させるようにしてもよい。
【0083】
また、渦形状治具85の周方向の4個所には、径方向に貫通し軸方向に長い矩形の窓部86が設けられている。この窓部86は、渦形状治具85の径方向に対向する対向面間の隙間に挿入された巻回体60の周方向位置を位置決めする通し矢(位置決め部材)90が径方向に挿通可能となるように設けられている。この場合、通し矢90は、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれの周方向の同一位置に複数配置されており、第2制御部(図示せず)によりそれぞれが独立して径方向に進退動可能に設けられている。
【0084】
本実施形態では、組付巻回体62用の第1渦形状治具85Aに対して、第1および第2通し矢90a、90bが軸方向に所定距離を隔てて配設されていると共に、被組付巻回体61用の第2渦形状治具85Bに対して、第3〜第6通し矢90c〜90fが軸方向に所定距離を隔てて配設されている(図24〜図27参照)。これら第1〜第6通し矢90a〜90fは、第1および第2渦形状治具85A、85Bの窓部86と対応して、それぞれ周方向の複数箇所(本実施形態では4箇所)に配設されている。
【0085】
なお、被組付巻回体62用の第2渦形状治具85Bは、径方向の肉厚が、組付巻回体62の組付層数の積層距離に1層分以上の積層距離が付加された距離に設定されている。これにより、本実施形態の巻回体60のように、ターン部52に層変わり部となる変曲点(クランク部54)が設けられている場合でも、被組付巻回体61と組付巻回体62とを組み付ける際に、干渉を回避するために必要な組付巻回体62のスペースが確実に確保される。
【0086】
本実施形態の組付工程103では、最初に、1個の巻回体60よりなる被組付巻回体61と1個の巻回体60よりなる組付巻回体62とを組み付けて、2個の巻回体60よりなる第1の組付体63を24束形成する。次いで、24束のうちの16束の第1の組付体63を用いて、2束の第1の組付体63を組み付けて、4個の巻回体60よりなる第2の組付体63を8束形成する。次いで、第1の組付体63と第2の組付体63とを組み付けて、6個の巻回体60よりなる第3の組付体63を8束形成する。次いで、2束の第3の組付体63を組み付けて、12個の巻回体60よりなる第4の組付体63を4束形成する。次いで、2束の第4の組付体63を組み付けて、24個の巻回体60よりなる第5の組付体63を2束形成する。最後に、2束の第5の組付体63を組み付けて、48個の巻回体60よりなる第6の組付体63(最終組付体64)を1個形成する。
【0087】
ここでは、2束の第3の組付体63を組み付けて、12個の巻回体60よりなる第4の組付体63を形成する場合について、図23〜図27を参照して説明する。本実施形態の組付工程103は、図23(A)〜(D)に示すように、第1〜第4ステップを行うことによって、被組付巻回体61(一方の第3の組付体63)と組付巻回体62(他方の第3の組付体63)との組付けを行う。なお、組付工程103の第1〜第4ステップは、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれの周方向位置を第1〜第6通し矢90a〜90fで位置決めしながら行われる。
【0088】
先ず、第1ステップ(図23(A))では、被組付側の第2渦形状治具85Bの上方に配置された組付側の第1渦形状治具85Aに対して、第1渦形状治具85Aの径方向に対向する対向面間の隙間に被組付巻回体61を挿入してセットする。このとき、第1渦形状治具85Aは、第1制御部により第2渦形状治具85Bと同じ所定の大きさに拡径されて、周方向の位相が同一となる状態にされている。これにより、第1渦形状治具85Aの拡径に伴って被組付巻回体61も所定の大きさに拡径されている。
【0089】
そして、図24(A)に示すように、第2制御部により第1および第2通し矢90a、90bを径方向に進出させて、第1渦形状治具85Aの窓部86からその被組付巻回体61の所定のスロット収容部同士の間に、第1および第2通し矢90a、90bの先端部を挿入し、その被組付巻回体61の周方向の位置決めをする。
【0090】
次の第2ステップ(図23(B))では、第1渦形状治具85Aに保持されている被組付巻回体61を、第1〜第6通し矢90a〜90fで位置決めしながら軸方向にスライドさせて被組付側の第2渦形状治具85B内へ移動させる。即ち、第1ステップ終了後(図24(A))の状態から、第2制御部により第1通し矢90aを後退させて、第1通し矢90aによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図24(B))。その状態で、第1渦形状治具85Aに保持されている被組付巻回体61を、第2通し矢90bのみで周方向の位置決めをしつつ、第1押圧部材89Aにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図24(C))。これにより、被組付巻回体61の下方側の一部が、第2渦形状治具85Bの径方向に対向する対向面間の隙間に挿入される。
【0091】
次いで、第2制御部により第3通し矢90cを進出させて、第3通し矢90cと第2通し矢90bとで被組付巻回体61の周方向の位置決めをした後(図24(D))、第2制御部により第2通し矢90bを後退させて、第2通し矢90bによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図24(E))。その状態で、第1および第2渦形状治具85A、85Bに保持されている被組付巻回体61を、第3通し矢90cのみで周方向の位置決めをしつつ、第1押圧部材89Aにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図24(F))。
【0092】
次いで、第2制御部により第4通し矢90dを進出させて、第4通し矢90dと第3通し矢90cとで被組付巻回体61の周方向の位置決めをした後(図24(G))、第2制御部により第3通し矢90cを後退させて、第3通し矢90cによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図24(H))。その状態で、第1および第2渦形状治具85A、85Bに保持されている被組付巻回体61を、第4通し矢90dのみで周方向の位置決めをしつつ、第1押圧部材89Aにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図25(A))。これにより、被組付巻回体61は、全体が第2渦形状治具85B側へ移動した状態となる。
【0093】
次いで、第2制御部により第5通し矢90eを進出させて、第5通し矢90eと第4通し矢90dとで被組付巻回体61の周方向の位置決めをした後(図25(B))、第2制御部により第4通し矢90dを後退させて、第4通し矢90dによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図25(C))。その状態で、第2渦形状治具85Bに保持されている被組付巻回体61を、第5通し矢90eのみで周方向の位置決めをしつつ、第1押圧部材89Aにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図25(D))。
【0094】
その後、第2制御部により第6通し矢90fを進出させて、第6通し矢90fと第5通し矢90eとで被組付巻回体61の周方向の位置決めをし、被組付巻回体61を第2渦形状治具85Bに保持させた状態で第2ステップ(図23(B))を終了する(図25(E))。
【0095】
次の第3ステップ(図23(C))では、被組付側の第2渦形状治具85Bの上方に配置された組付側の第1渦形状治具85Aに対して、第1渦形状治具85Aの径方向に対向する対向面間の隙間に組付巻回体62を挿入してセットする。このとき、第1渦形状治具85Aは、第1制御部により所定の大きさに拡径されて、周方向の位相が第2渦形状治具85Bと180°異なる状態にされている。これにより、第1渦形状治具85Aの外周面に沿って拡径された状態で保持されている組付巻回体62は、第2渦形状治具85B自体と軸方向に重複する所に位置している。即ち、第1渦形状治具85Aと第2渦形状治具85Bは、軸方向において互いに重複しない所に位置している。
【0096】
そして、図26(A)に示すように、第2制御部により第1および第2通し矢90a、90bを径方向に進出させて、第1渦形状治具85Aの窓部86からその組付巻回体62の所定のスロット収容部同士の間に、第1および第2通し矢90a、90bの先端部を挿入し、その組付巻回体62の周方向の位置決めをする。
【0097】
次の第4ステップ(図23(D))では、第1渦形状治具85Aに保持されている組付巻回体62を、第1〜第6通し矢90a〜90fで位置決めしながら軸方向にスライドさせて被組付側の第2渦形状治具85B内へ移動させる。即ち、第3ステップ終了後(図26(A))の状態から、第2制御部により第1通し矢90aを後退させて、第1通し矢90aによる組付巻回体62の周方向の位置決めを解除する(図26(B))。その状態で、第1渦形状治具85Aに保持されている組付巻回体62を、第2通し矢90bのみで周方向の位置決めをしつつ、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図26(C))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。
【0098】
次いで、第2制御部により第3通し矢90cを進出させて、第3通し矢90cと第2通し矢90bとで組付巻回体62の周方向の位置決めをした後(図26(D))、第2制御部により第2通し矢90bを後退させて、第2通し矢90bによる組付巻回体62の周方向の位置決めを解除する(図26(E))。その状態で、第1渦形状治具85Aに保持されている組付巻回体62を、第3通し矢90cのみで周方向の位置決めをしつつ、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図26(F))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。これにより、組付巻回体62の軸方向下端部と被組付巻回体61の軸方向上端部とが径方向に重複し、部分的に組み付けられた状態になる。
【0099】
次いで、第2制御部により第4通し矢90dを進出させて、第4通し矢90dと第3通し矢90cとで組付巻回体62の周方向の位置決めをした後(図26(G))、第2制御部により第5通し矢90eを後退させて、第5通し矢90eによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図26(H))。その後、第2制御部により第3通し矢90cを後退させて、第3通し矢90cによる組付巻回体62の周方向の位置決めを解除する(図27(A))。その状態で、第1渦形状治具85Aに保持されている組付巻回体62を、第4通し矢90dのみで周方向の位置決めをしつつ、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図27(B))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。これにより、組付巻回体62の軸方向下端部と被組付巻回体61の軸方向上端部との径方向の重複が増大し、組付巻回体62と被組付巻回体61との組み付けが更に進行する。
【0100】
次いで、第2制御部により第5通し矢90eを進出させて、第5通し矢90eと第4通し矢90dとで組付巻回体62の周方向の位置決めをした後(図27(C))、第2制御部により第4および第6通し矢90d、90fを後退させて、第4および第6通し矢90d、90fによる組付巻回体62および被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図27(D))。これにより、組付巻回体62および被組付巻回体61は、第5通し矢90eのみで周方向の位置決めがなされた状態になっている。
【0101】
その状態で、組付巻回体62を、第5通し矢90eで周方向の位置決めをしつつ、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図27(E))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。これにより、組付巻回体62と被組付巻回体61が軸方向全長に亘って径方向に重複した状態になる。その後、第2制御部により第6通し矢90fを進出させて、第6通し矢90fと第5通し矢90eとで組付巻回体62および被組付巻回体61の周方向の位置決めをし(図27(F))、第4ステップ(図23(D))を終了する。
【0102】
これにより、図23(D)に示すように、被組付巻回体61(一方の第3の組付体63)と組付巻回体62(他方の第3の組付体63)とが組み付けられて、12個の巻回体60よりなる第4の組付体63が形成される。
【0103】
その後、2束の第4の組付体63同士を上記の第1〜第4ステップと同様の方法で組み付けて、24個の巻回体60よりなる第5の組付体63を形成する。最後に、2束の第5の組付体63同士を上記の第1〜第4ステップと同様の方法で組み付けて、図28に示す48個の巻回体60よりなる第6の組付体63(最終組付体64)を形成して、組付工程103を終了する。
【0104】
そして、以上のようにして組付工程103を行った後、最終組付体64に対して所定の導線50の引出し部53a、53bを溶接で接続するなどの必要な処理を施すことにより、図6〜図9に示す固定子巻線40が完成する。
【0105】
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程103において、被組付巻回体61と組付巻回体62の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けるようにしている。そのため、被組付巻回体61と組付巻回体62との干渉を回避して、両巻回体61、62を円滑且つ容易に軸方向へ相対移動させることができるので、両巻回体61、62の組付けを簡易に行うことができる。これにより、導線50の絶縁皮膜68へのダメージを少なくして、固定子巻線40を簡易に製造することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態の製造方法は、被組付巻回体61と組付巻回体62とを軸方向に相対移動させて組み付けるようにしているため、それら巻回体61、62の1本の長さを短く設定することができる。そのため、製造時のハンドリングが極めて良好になり、製造効率を大幅に高めることができるので、製造コストの低減が可能となる。
【0107】
また、本実施形態の組付工程103は、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれの周方向位置を通し矢(位置決め部材)90で位置決めしながら行うようにしている。そのため、組付工程103において、被組付巻回体61と組付巻回体62の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付ける際に、それぞれの巻回体61、62の周方向位置が位置決めされた状態で軸方向に相対移動する。これにより、被組付巻回体61と組付巻回体62のスロット収容部51を径方向に精度良く整列させることができるので、スロット収容部51の整列精度を向上させることができる。
【0108】
また、通し矢(位置決め部材)90は、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれの周方向の同一位置に複数配置されてそれぞれ径方向に進退動可能に設けられており、組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62を軸方向に相対移動させる際に、周方向の同一位置に配置された複数の通し矢90のうちの少なくとも1つの通し矢90で常時位置決めするようにしている。そのため、通し矢90を制御する第2制御部の良好な静的精度(取付け精度)を確保することができるので、被組付巻回体61および組付巻回体62の位置精度を良好にすることができる。
【0109】
さらに、組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62は、渦形状治具85により径方向に弾性変形した状態で位置決めされるようにしている。これにより、渦形状治具85の内周面または外周面の全面で被組付巻回体61および組付巻回体62を位置決めするため、被組付巻回体61および組付巻回体62を精度良く位置決めすることができる。そのため、被組付巻回体61と組付巻回体62とを、干渉しないようにして容易に組み付けることができる。これにより、導線50の絶縁皮膜68へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線40を製造することが可能となる。
【0110】
また、被組付巻回体61側の渦形状治具85の径方向の肉厚は、組付巻回体62の組付層数の積層距離に1層分以上の積層距離が付加された距離に設定されている。そのため、巻回体60のターン部52に層変わり部となる変曲点(クランク部54)が設けられている場合でも、被組付巻回体61と組付巻回体62とを組み付ける際に必要な組付巻回体62のスペースを確実に確保することができる。これにより、被組付巻回体61と組付巻回体62とを、干渉しないようにして容易に組み付けることが可能となる。
【0111】
また、本実施形態の製造方法は、導線形成工程101において、ターン部52に固定子巻線40の径方向に位置ずれするクランク部54を形成するようにしている。そのため、導線50のターン部52にクランク部54が形成されていても、組付工程103で被組付巻回体61と組付巻回体62とを組付ける際に、組付巻回体62を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させるので、被組付巻回体61と組付巻回体62とのクランク部54での干渉を回避することができる。よって、ターン部52にクランク部54を有する導線50を用いて固定子巻線40を製造する場合でも、本実施形態の製造方法を有効に適用することができる。
【0112】
〔実施形態2〕
図29(A)〜(D)は、実施形態2に係る製造方法の組付工程の一部を示す説明図であって、実施形態1の組付工程103における第3および第4ステップに対応している。
【0113】
本実施形態は、組付巻回体62の位置決めをする通し矢(位置決め部材)90が、被組付巻回体61と組付巻回体62を軸方向に相対移動させて組み付ける際に、組付巻回体62と共に軸方向に移動しつつ位置決めするようにされている点で、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0114】
実施形態2では、被組付巻回体61用の第2渦形状治具85Bは、実施形態1と同じものが用いられているが、組付巻回体62用の第1渦形状治具85Aは、窓部86を有しないものが用いられている。そして、図29(A)〜(D)に示すように、第1渦形状治具85Aの径方向に対向する対向面間の隙間に挿入された被組付巻回体61に対して、所定のスロット収容部51同士の間に先端部が挿入されて被組付巻回体61の周方向の位置決めをする第1通し矢90aが設けられている。この第1通し矢90aは、被組付巻回体61と組付巻回体62とを軸方向に相対移動させて組み付ける際に、第2制御部(図示せず)により組付巻回体62と共に軸方向に移動可能に設けられている。この第1通し矢90aは、周方向の複数箇所(本実施形態では4箇所)に配設されている。
【0115】
また、図29(A)〜(D)に示すように、被組付巻回体61用の第2渦形状治具85Bに対して、第2および第3通し矢90b、90cが軸方向に所定距離を隔てて配設されている図29(A)〜(D)。これら第2および第3通し矢90b、90cは、第2渦形状治具85Bの窓部86と対応して、それぞれ周方向の複数箇所(本実施形態では4箇所)に配設されている。
【0116】
本実施形態の組付工程103において、被組付巻回体61と組付巻回体62を軸方向に相対移動させて組み付ける際には、図29(A)(図26の(A)に対応)に示すように、組付装置(図示せず)の下方側に配置された被組付側の第2渦形状治具85Bに被組付巻回体61をセットし、その第2渦形状治具85Bの上方に配置された組付側の第1渦形状治具85Aに組付巻回体62をセットする。このとき、第1渦形状治具85Aは、第1制御部により所定の大きさに拡径されて、周方向の位相が第2渦形状治具85Bと180°異なる状態にされている。これにより、第1渦形状治具85Aの外周面に沿って拡径された状態で保持されている組付巻回体62は、第2渦形状治具85B自体と軸方向に重複する所に位置している。即ち、第1渦形状治具85Aと第2渦形状治具85Bは、軸方向において互いに重複しない所に位置している。
【0117】
そして、第2渦形状治具85Bにセットされた被組付巻回体61は、第2制御部により径方向に進出させた第2通し矢90bによって周方向の位置決めがなされていると共に、第1押圧部材89Aにより軸方向下方へ押圧されて軸方向の位置決めがなされている。また、第1渦形状治具85Aにセットされた組付巻回体62は、第2制御部により径方向に進出させた第1通し矢90aによって周方向の位置決めがなされている。
【0118】
図29(A)に示す状態から、第1渦形状治具85Aに保持された組付巻回体62を、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へスライドさせると同時に、組付巻回体62の周方向の位置決めをしている第1通し矢90aを、第2制御部により組付巻回体62と共に軸方向に移動させる(図29(B))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。
【0119】
次いで、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へスライドした組付巻回体62の軸方向下方側のターン部52が第2通し矢90bの位置を通過して、組付巻回体62と被組付巻回体61の軸方向の略半分が径方向に重複した状態になったときに、第2制御部により第2通し矢90bを径方向に進出させて、第2通し矢90bで組付巻回体62および被組付巻回体61の両方の周方向の位置決めをする(図29(C))。
【0120】
そして、組付巻回体62と共に軸方向下方に移動させた第1通し矢90aを、第2制御部により径方向に後退させて、第1通し矢90aによる組付巻回体62の周方向の位置決めを解除する(図29(D))。その後、組付巻回体62と被組付巻回体61が軸方向全長に亘って径方向に重複した状態になるまで、第2押圧部材89Bにより組付巻回体62を更に軸方向下方へスライドさせる。これにより、組付巻回体62と被組付巻回体61とを組み付ける組付工程103を終了する。
【0121】
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程103において、被組付巻回体61と組付巻回体62の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けるようにしているため、導線50の絶縁皮膜68へのダメージを少なくして簡易に製造することができ、且つ製造効率を高めて低コスト化を図ることができるなど、実施形態1と同様の作用および効果を奏する。
【0122】
特に、本実施形態では、組付巻回体62の位置決めをする第1通し矢90aが、被組付巻回体61と組付巻回体62を軸方向に相対移動させる際に、組付巻回体62と共に軸方向に移動しつつ位置決めするようにしている。そのため、第1通し矢90aを組付巻回体62と共に軸方向に連続して移動させることができるので、組付工程のサイクルタイムを短縮することができる。また、組付巻回体62の周方向同一位置に位置決め部材(通し矢90)を1つ設ければよいことから、位置決め部材の数を低減することが可能となるため、設備コストの低減化を図ることができる。
【0123】
〔実施形態3〕
図30は、実施形態3において用いられる第1可動治具の作動状態を示す説明図であって、(A)は第1可動治具で巻回体を径方向に弾性変形させる前の状態を示し、(B)は第1可動治具で巻回体を径方向に弾性変形させた後の状態を示す。
【0124】
本実施形態は、実施形態1の組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62を径方向に弾性変形させる治具として用いられていた渦形状治具85に代えて、図30に示すように、渦巻き状に配備された複数の回転板87を備えた第1可動治具を用いる点で、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0125】
本実施形態で用いられる第1可動治具は、図30(A)に示すように、断面が細長い楕円形状で長尺状に形成された複数の回転板87を備えており、これら回転板87は、被組付巻回体61および組付巻回体62の渦巻き形状に合わせて渦巻き状に配備されている。即ち、複数の回転板87は、それぞれの巻回体61、62の径方向に対向する対向面間に形成される渦巻き状の隙間に沿って、周方向に距離を隔てて渦巻き状に配置されている。本実施形態では、11個の回転板87が用いられている。
【0126】
各回転板87は、長手方向に延びる軸線が巻回体61、62の軸方向と平行となるように配置されており、それぞれの軸線を中心に時計回り方向および反時計回り方向へ略90°回転するように、制御部(図示せず)により制御される。この場合、各回転板87は、通常時(待機時)には長径側が巻回体61、62の周方向両側に位置する状態にされ(図30(A))、所定方向へ90°回転時(作動時)には長径側が巻回体61、62の径方向両側に位置する状態にされる(図30(B))。
【0127】
なお、各回転板87の回転軸線は、長径方向において必ずしも中心に位置するようには設定されていない。即ち、各回転板87の回転軸線から一方の長径部外周端までの半径長さと、回転軸線から他方の長径部外周端までの半径長さは、各回転板87により巻回体61、62を径方向に弾性変形させる変形量に応じて適宜設定される。また、各回転板87の長径部の半径長さは、各回転板87の配設位置、或いは第1可動治具により弾性変形させられる巻回体61、62の大きさや個数によって適宜設定される。
【0128】
以上のように構成された第1可動治具は、組付工程103を行うに際して、本実施形態では、被組付巻回体61用と組付巻回体62用の2つが準備される。そして、先ず、被組付巻回体61用の待機状態の第1可動治具に対して、各回転板87を径方向両側で挟むようにして被組付巻回体61をセットする(図30(A))。即ち、被組付巻回体61の径方向に対向する対向面間の隙間内に、全ての回転板87が収容されるように被組付巻回体61をセットする。
【0129】
その後、制御部(図示せず)により各回転板87を所定方向(例えば時計回り方向)へ90°回転させると、各回転板87の長径側が、被組付巻回体61の径方向両側を向く状態になって(図30(B))、各回転板87の長径部外周端で被組付巻回体61を径方向に押圧する。これにより、各回転板87の径方向外方側にある被組付巻回体61を拡径するように弾性変形させると同時に、各回転板87の径方向内方側にある被組付巻回体61を縮径するように弾性変形させる。
【0130】
次いで、組付巻回体62用の第1可動治具に対して組付巻回体62をセットし、上記と同様の方法で、各回転板87により、各回転板87の径方向内方側にある組付巻回体62を拡径するように弾性変形させると同時に、各回転板87の径方向内方側にある被組付巻回体62を縮径するように弾性変形させる。その後、第1可動治具によりそれぞれ径方向に弾性変形させた被組付巻回体61と被組付巻回体62は、軸方向に相対移動させて組み付けられる。
【0131】
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62は、渦巻き状に配備された複数の回転板87を備えた第1可動治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めするようにされている。そのため、回転板87による被組付巻回体61および組付巻回体62の径方向への弾性変形量を任意に設定することが可能であるため、被組付巻回体61および組付巻回体62を任意の形状に制御することができる。
【0132】
また、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれに対して、第1可動治具により、内周側への縮径と外周側への拡径とを同時に行うことができる。本実施形態では、複数の回転板87を備えた第1可動治具により、組被組付巻回体61および付巻回体62を縮径および拡径の双方向に弾性変形させるようにしていることから、被組付巻回体61と組付巻回体62とを組み付けた際に、各巻回体61、62のスロット収容部51を適切な位置に揃えることができるため、スロット収容部51の位置を揃える工程が不要となる。これにより、製造工程を簡略化することができるので、製造効率を高めて低コスト化を図ることができる。
【0133】
ここで、それぞれ24個の巻回体60よりなる被組付巻回体61(系列1〜系列4)と組付巻回体62(系列5〜系列8)の双方を、径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けて、48個の巻回体60よりなる最終組付体64を形成した場合の、スロット収容部51の位置ずれについて考察する。
【0134】
図31は、実施形態1のように、巻回体60を径方向に弾性変形させるに際して巻回体60の内周側端部を縮拡径させずに外周側端部を拡径させた場合の説明図である。また、図32は、実施形態3のように、巻回体60を径方向に弾性変形させるに際して巻回体60の内周側端部を縮径させ且つ外周側端部を拡径させた場合の説明図である。なお、図31および図32において、最終組付体64を構成する48個の巻回体60は、6個ずつの巻回体60からなる8個の系列1〜系列8に分類されている。各系列1〜8に付された●、▲、■、×、*などの印はスロット収容部51の位置を示している。
【0135】
図31に示すように、巻回体60の内周側端部を縮拡径させずに外周側端部を拡径させた場合には、組付直後の最終組付体64にスロット収容部51の周方向への位置ずれが発生する。即ち、例えば系列4および系列8についてみれば、最外周端のスロット収容部51の位置と周方向に1周して同位置にあるべきスロット収容部51が周方向に位置ずれしている。そのため、組付工程終了後に、スロット収容部51の位置を揃えるための工程が別途必要となる。
【0136】
これに対して、図32に示すように、巻回体60の内周側端部を縮径させ且つ外周側端部を拡径させた場合には、スロット収容部51の周方向位置を揃えることが可能となる。即ち、各巻回体60の内周側端部と外周側端部の中間部には、縮径に伴う周方向への位置ずれも拡径に伴う周方向への位置ずれもしない中立位置が存在するため、その中立位置のスロット収容部51を通し矢(位置決め部材)90で位置決めすることによって、スロット収容部51の周方向位置を揃えることが可能となる。そのため、この場合には、組付工程終了後に、スロット収容部51の位置を揃えるための工程を必要としなくなる。
【0137】
なお、本実施形態では、被組付巻回体61と組付巻回体62の両方に第1可動治具を用いるようにしているが、例えば被組付巻回体61および組付巻回体62の何れか一方に第1可動治具を用い、それらの何れか他方に渦形状治具85を用いるようにしてもよい。
【0138】
〔実施形態4〕
図33は、実施形態4において用いられる第2可動治具の作動状態を示す説明図である。
【0139】
本実施形態は、実施形態1の組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62を径方向に弾性変形させる治具として用いられていた渦形状治具85に代えて、図30に示すように、渦巻き状に配備された複数の移動板88を備えた第2可動治具を用いる点で、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0140】
本実施形態で用いられる第2可動治具は、図33に示すように、断面が湾曲した矩形状で長尺状に形成された複数の移動板88を備えており、これら移動板88は、被組付巻回体61および組付巻回体62の渦巻き形状に合わせて渦巻き状に配備されている。即ち、本実施形態では、被組付巻回体61または組付巻回体62の径方向内方側に配設された拡径用移動板88aと、被組付巻回体61または組付巻回体62の径方向外方側に配設された縮径用移動板88bとを有する。拡径用移動板88aおよび縮径用移動板88bは、それらの長手方向が被組付巻回体61または組付巻回体62の軸方向と平行となるように配置されている。
【0141】
拡径用移動板88aは、制御部(図示せず)により径方向に進退移動可能に設けられており、通常時(待機時)には径方向内方側へ後退移動し、径方向外方側へ進出移動したときに被組付巻回体61または組付巻回体62を拡径させる。一方、縮径用移動板88bは、制御部(図示せず)により径方向に進退移動可能に設けられており、通常時(待機時)には径方向内方側へ後退移動し、径方向内方側へ進出移動したときに被組付巻回体61または組付巻回体62を縮径させる。
【0142】
以上のように構成された第2可動治具は、組付工程103を行うに際して、本実施形態では、被組付巻回体61用と組付巻回体62用の2つが準備される。そして、先ず、図33に示すように、被組付巻回体61用の待機状態の第2可動治具に対して被組付巻回体61をセットする。即ち、被組付巻回体61の径方向内方側に拡径用移動板88aが位置し、被組付巻回体61の径方向外方側に縮径用移動板88bが位置するように被組付巻回体61をセットする。
【0143】
その後、制御部(図示せず)により、拡径用移動板88aを径方向外方側に進出移動させて被組付巻回体61を押圧するとともに、縮径用移動板88bを径方向内方側に進出移動させて被組付巻回体61を押圧する。これにより、被組付巻回体61の外周側の略1周部分を拡径するように弾性変形させると同時に、内周側の略3/4周部分を縮径するように弾性変形させる。
【0144】
次いで、組付巻回体62用の第2可動治具に対して組付巻回体62をセットし、上記と同様の方法で、拡径用移動板88aにより被組付巻回体61の外周側の略1周部分を拡径するように弾性変形させると同時に、縮径用移動板88bにより被組付巻回体61の内周側の略3/4周部分を縮径するように弾性変形させる。その後、第2可動治具によりそれぞれ径方向に弾性変形させた被組付巻回体61と組付巻回体62は、軸方向に相対移動させて組み付けられる。
【0145】
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62は、渦巻き状に配備された複数の移動板88を備えた第2可動治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めするようにされている。そのため、移動板88による被組付巻回体61および組付巻回体62の径方向への弾性変形量を任意に設定することが可能であるため、被組付巻回体61および組付巻回体62を任意の形状に制御することができる。
【0146】
また、本実施形態では、複数の移動板88を備えた第2可動治具により、被組付巻回体61および組付巻回体62を縮径および拡径の双方向に弾性変形させようにしていることから、被組付巻回体61と組付巻回体62とを組み付けた際に、各巻回体61、62のスロット収容部51を適切な位置に揃えることができるため、スロット収容部51の位置を揃える工程が不要となる。これにより、製造工程を簡略化することができるので、製造効率を高めて低コスト化を図ることができるなど、上記実施形態3と同様の作用および効果を奏する。
【0147】
なお、図34は、実施形態4において第2可動治具の移動板で押圧される巻回体の層変わりのない箇所を示す説明図である。本実施形態において、組み付けられる被組付巻回体61と組付巻回体62がそれぞれ複数の巻回体60よりなる場合には、移動板88は、被組付巻回体61および組付巻回体62の層変わりのない箇所(図34のA部)に対して配設するのが望ましい。即ち、図34において、A部とB部のどちらに移動板88を配設しても組付けは可能であるが、組付け安定性を考慮するとA部の方がB部よりも望ましい。この場合、A部においては、スロット収容部51およびターン部52が共に同一層であるため、移動板88による拘束力が強くなる。しかし、B部においては、スロット収容部51とターン部52が異なる層となるため、移動板88による拘束力が弱くなる。
【0148】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態1〜4に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0149】
例えば、実施形態1の組付工程103では、2個の巻回体60よりなる第1の組付体63と、4個の巻回体60よりなる第2の組付体63と、6個の巻回体60よりなる第3の組付体63と、12個の巻回体60よりなる第4の組付体63と、24個の巻回体60よりなる第5の組付体63とを、順番に形成し、最終的に、2束の第5の組付体63を組み付けて、48個の巻回体60よりなる第6の組付体63(最終組付体64)を形成するようにしていたが、その他の方法で組み付けることも可能である。
【0150】
例えば、48個の巻回体60よりなる組付体63を形成する場合に、1個の巻回体60よりなる被組付巻回体61に対して、1個の巻回体60よりなる47個の組付巻回体62を1個ずつ順番に組み付けて、最終的に48個の巻回体60よりなる最終組付体64を形成するようにしてもよい。また、2個の巻回体60よりなる組付体63を24個形成して、それらを順番に組み付けて48個の巻回体60よりなる最終組付体64を形成するようにしてもよい。さらに、3個の巻回体60よりなる組付体63を16個形成して、それらを順番に組み付けて48個の巻回体60よりなる最終組付体64を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0151】
20…固定子、 30…固定子コア、 30a…端面、 31…スロット、 40…固定子巻線、 43…各相巻線、 50…導線、 51…スロット収容部、 52…ターン部、 53a…引出し部、 53b…引出し部、 54…クランク部、 55,56…段部、 57,58…膨出部、 59…渡り部、 60…巻回体、 61…被組付巻回体、 62…組付巻回体、 63…組付体、 64…最終組付体、 67…導体、 68…絶縁皮膜、 81…第1固定治具、 82…第2固定治具、 83…回転治具、 85…渦形状治具、 85A…第1渦形状治具、 85B…第2渦形状治具、 86…窓部、 87…可動板、 88…移動板、 88a…拡径用移動板、 88b…縮径用移動板、 90…通し矢(位置決め部材)、 90a〜90f…第1〜第6通し矢。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載される回転電機用固定子巻線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両において電動機や発電機として使用される回転電機は、界磁として働く回転子と、固定子コアおよび固定子巻線を有し電機子として働く固定子とを備えている。そして、固定子巻線として、固定子コアのスロットに収容される複数のスロット収容部と、隣り合うスロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線を固定子コアに巻装されてなるものが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、スロット内に配置される導線の占積率を向上させるために、軸線に対して垂直方向の断面形状が矩形形状であるとともに、展開したときの全体形状がクランク状に蛇行した形状の各相巻線(U相導体、V相導体、W相導体)により、固定子巻線を構成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−145286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の固定子巻線は、ベルト状の導線(各相巻線)を所定の回数、渦巻き状に巻き付けることにより、径方向に複数の層を為す所定寸法の円筒状に形成される。このようにして円筒状に形成された固定子巻線は、同一のスロット内に収容される複数の導線のスロット収容部が径方向に整列した状態にされている必要がある。この場合、同一のスロット内に収容される複数の導線のスロット収容部は、占積率を向上させるために、より密な状態にされている方が好ましい。そのため、ベルト状の導線を巻き付ける際に、隣接する導線のスロット収容部同士が擦れ合うことにより、スロット収容部の表面を被覆している絶縁被膜の損傷が発生し易い。さらに、それぞれの導線は、長さの長いものが必要になるので、ハンドリングが悪くなるため、製造効率が悪化し、コストの増大を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして簡易に製造することができ、且つ製造効率を高めて低コスト化を図り得るようにした回転電機用固定子巻線の製造方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、複数のスロット収容部と隣り合う該スロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線を組み付けてなる回転電機用固定子巻線の製造方法であって、前記スロット収容部と前記ターン部とを有する所定形状の前記導線を形成する導線形成工程と、前記導線の前記ターン部を円弧状に成形して渦巻き状に巻回された巻回体を形成する巻回体形成工程と、被組付巻回体と組付巻回体の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付け、複数の前記巻回体よりなる組付体を形成する組付工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、組付工程において、組み付けられる側の被組付巻回体と組み付ける側の組付巻回体の双方を、径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けるようにしている。そのため、被組付巻回体と組付巻回体との干渉を回避して、両巻回体を円滑且つ容易に軸方向へ相対移動させることができるので、両巻回体の組付けを簡易に行うことができる。これにより、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして、固定子巻線を簡易に製造することが可能となる。
【0009】
また、本発明では、被組付巻回体と組付巻回体とを軸方向に相対移動させて組み付けるようにしているため、それら巻回体の1本の長さを短く設定することができる。そのため、製造時のハンドリングが極めて良好になり、製造効率を大幅に高めることができるので、製造コストの低減が可能となる。
【0010】
なお、本発明の組付工程における被組付巻回体および組付巻回体には、1つの巻回体の他に、複数の巻回体を組み付けてなる組付体も含まれる。即ち、本発明では、被組付巻回体と組付巻回体との組付けは、次の4通りとなる。(1)1つの巻回体よりなる被組付巻回体と1つの巻回体よりなる組付巻回体との組付け。(2)1つの組付体よりなる被組付巻回体と1つの巻回体よりなる組付巻回体との組付け。(3)1つの巻回体よりなる被組付巻回体と1つの組付体よりなる組付巻回体との組付け。(4)1つの組付体よりなる被組付巻回体と1つの組付体よりなる組付巻回体との組付け。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記組付工程は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のそれぞれの周方向位置を位置決め部材で位置決めしながら行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、組付工程において、被組付巻回体と組付巻回体の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付ける際に、それぞれの巻回体の周方向位置が位置決めされた状態で軸方向に相対移動する。これにより、被組付巻回体と組付巻回体のスロット収容部を径方向に精度良く整列させることができるので、スロット収容部の整列精度を向上させることができる。
【0013】
なお、位置決め部材としては、例えば、被組付巻回体および組付巻回体の隣り合うスロット収容部同士の間に挿入配置可能な大きさで楔状に形成された通し矢を好適に採用することができる。この通し矢は、被組付巻回体および組付巻回体に対して、周方向の1箇所以上に設けられ、より確実に且つより精度良く位置決めするためには、より多くの箇所に設けることが好ましい。この通し矢は、それら巻回体の軸方向や径方向に進退動可能にすることにより、自動化することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記位置決め部材は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のそれぞれの周方向の同一位置に複数配置されてそれぞれ径方向に進退動可能に設けられており、前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体を軸方向に相対移動させる際に、周方向の同一位置に配置された複数の前記位置決め部材のうちの少なくとも1つの前記位置決め部材で常時位置決めすることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、位置決め部材を制御する制御設備の良好な静的精度(取付け精度)を確保することができるので、被組付巻回体および組付巻回体の位置精度を良好にすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記組付巻回体の位置決めをする前記位置決め部材は、前記被組付巻回体と前記組付巻回体を軸方向に相対移動させる際に、前記組付巻回体と共に軸方向に移動しつつ位置決めすることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、位置決め部材を組付巻回体と共に軸方向に連続して移動させることができるので、組付工程のサイクルタイムを短縮することができる。また、組付巻回体の周方向同一位置に位置決め部材を1つ設ければよいことから、位置決め部材の数を低減することが可能となるため、設備コストの低減化を図ることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のうちの少なくとも一方は、所定の渦巻き形状に形成された渦形状治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めされることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、渦形状治具の内周面または外周面の全面で被組付巻回体または組付巻回体を位置決めするため、被組付巻回体または組付巻回体を精度良く位置決めすることができる。そのため、被組付巻回体と組付巻回体とを、干渉しないようにして容易に組み付けることができる。これにより、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線を製造することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記被組付巻回体側の前記渦形状治具の径方向の肉厚は、前記組付巻回体の組付層数の積層距離に1層分以上の積層距離が付加された距離に設定されていることを特徴とする。なお、本発明において、組付巻回体の組付層数は、当該組付巻回体の径方向に積層された巻回体の層数が最少となる部位での層数を基準として定められる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、巻回体のターン部に層変わり部となる変曲点(クランク部)が設けられている場合でも、被組付巻回体と組付巻回体とを組み付ける際に必要な組付巻回体のスペースを確実に確保することができる。これにより、被組付巻回体と組付巻回体とを、干渉しないようにして容易に組み付けることが可能となる。なお、被組付巻回体と組付巻回体との干渉をより確実に回避するためには、組付巻回体の組付層数の積層距離に2層分以上の積層距離が付加されていることが望ましい。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のうちの少なくとも一方は、渦巻き状に配備された複数の回転板または移動板を備えた可動治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めされることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、可動治具による被組付巻回体および組付巻回体の径方向への弾性変形量を任意に設定することが可能であるため、被組付巻回体および組付巻回体を任意の形状に制御することができる。また、被組付巻回体および組付巻回体のそれぞれに対して、可動治具により、内周側への縮径と外周側への拡径とを同時に行うことができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体は、前記可動治具により縮径および拡径の双方向に弾性変形させられることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、被組付巻回体と組付巻回体とを組み付けた際に、各巻回体のスロット収容部を適切な位置に揃えることができるため、スロット収容部の位置を揃える工程が不要となる。これにより、製造工程を簡略化することができるので、製造効率を高めて低コスト化を図ることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、前記導線形成工程または前記巻回体形成工程において、前記ターン部に前記固定子巻線の径方向に位置ずれするクランク部を形成することを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、導線のターン部にクランク部が形成されていても、組付工程で被組付巻回体と組付巻回体とを組付ける際に、組付巻回体を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させるので、被組付巻回体と組付巻回体とのクランク部での干渉を回避することができる。よって、ターン部にクランク部を有する導線を用いて固定子巻線を製造する場合でも、本発明の製造方法を有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1の製造方法により製造された固定子巻線が巻装された固定子の全体斜視図である。
【図2】図1に示す固定子の平面図である。
【図3】図1に示す固定子の側面図である。
【図4】図1に示す固定子を構成する固定子コアの平面図である。
【図5】図4に示す固定子コアを構成する分割コアの平面図である。
【図6】実施形態1に係る固定子巻線の全体斜視図である。
【図7】図6に示す固定子巻線の側面図である。
【図8】図6に示す固定子巻線の平面図である。
【図9】図6に示す固定子巻線の底面図である。
【図10】(A)は実施形態1に係る固定子巻線を構成する導線の断面図であり、(B)は変形例に係る導線の断面図である。
【図11】(A)は実施形態1において用いられる導線の上面図であり、(B)は導線の正面図である。
【図12】(A)は実施形態1において用いられる導線のターン部の形状を示す斜視図であり、(B)は隣接する複数のターン部を示す斜視図である。
【図13】実施形態1の製造方法により製造された固定子巻線の結線図である。
【図14】実施形態1において各スロットの最外径側に配置される各導線の第1スロット収容部の配置位置を示す説明図である。
【図15】実施形態1の固定子巻線において1本の導線(U1−4’)のスロット収容部の配置位置および軌跡を示す説明図である。
【図16】実施形態1においてV相巻線の接続状態を示す巻線仕様図である。
【図17】実施形態1に係る製造方法の製造工程を示すブロック図である。
【図18】実施形態1に係る製造方法の導線形成工程の様子を示す説明図である。
【図19】(A)は実施形態1に係る製造方法の導線形成工程において折曲げ加工を開始する前の状態を示す説明図であり、(B)は折曲げ加工を開始した直後の状態を示す説明図である。
【図20】実施形態1に係る製造方法の巻回体形成工程において形成された巻回体の軸方向から見た平面図である。
【図21】実施形態1に係る製造方法の巻回体形成工程において形成された巻回体の斜視図である。
【図22】実施形態1に係る製造方法の組付工程において用いられる渦形状治具を示す図であって、(A)は(B)のA−A線矢視断面図、(B)は渦形状治具の側面図である。
【図23】実施形態1に係る製造方法の組付工程を示す説明図である。
【図24】(A)〜(H)は実施形態1に係る製造方法の組付工程の第1ステップおよび第2ステップの途中までを示す説明図である。
【図25】(A)〜(E)は実施形態1に係る製造方法の組付工程の第2ステップの途中から最後までを示す説明図である。
【図26】(A)〜(H)は実施形態1に係る製造方法の組付工程の第3ステップおよび第4ステップの途中までを示す説明図である。
【図27】(A)〜(F)は実施形態1に係る製造方法の組付工程の第4ステップの途中から最後までを示す説明図である。
【図28】実施形態1に係る製造方法の組付工程において形成された最終組付体の斜視図である。
【図29】(A)〜(D)は実施形態2に係る製造方法の組付工程の一部を示す説明図である。
【図30】実施形態3において用いられる第1可動治具の作動状態を示す説明図であって、(A)は第1可動治具で巻回体を径方向に弾性変形させる前の状態を示し、(B)は第1可動治具で巻回体を径方向に弾性変形させた後の状態を示す。
【図31】巻回体を径方向に弾性変形させるに際して巻回体の内周側端部を縮拡径させずに外周側端部を拡径させた場合の説明図である。
【図32】巻回体を径方向に弾性変形させるに際して巻回体の内周側端部を縮径させ且つ外周側端部を拡径させた場合の説明図である。
【図33】実施形態4において用いられる第2可動治具の作動状態を示す説明図である。
【図34】実施形態4において第2可動治具の移動板で押圧される巻回体の層変わりのない箇所を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る回転電機用固定子巻線の製造方法の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
〔実施形態1〕
先ず、本実施形態の製造方法により製造される回転電機用固定子巻線が用いられた固定子について図1〜図16を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る回転電機の固定子の全体斜視図である。図2は、その固定子の平面図である。図3は、その固定子の側面図である。
【0031】
本実施形態の固定子20は、例えば車両の電動機および発電機を兼ねる回転電機に使用されるものであって、内周側に回転子(図示せず)を回転自在に収容する。回転子は、固定子20の内周側と向き合う外周側に、周方向に所定距離を隔てて極性が交互に異なるように配置された複数の磁極を有する。これらの磁極は、回転子内に埋設された複数の永久磁石により形成されている。固定子20は、図1〜図3に示すように、固定子コア30と、複数(本実施形態では48本)の導線50から形成される三相の固定子巻線40とを備えている。なお、固定子コア30と固定子巻線40との間には、絶縁紙を配してもよい。
【0032】
図4および図5を参照して固定子コア30について説明する。図4は、本実施形態に係る固定子コアの平面図である。図5は、本実施形態に係る分割コアの平面図である。
【0033】
固定子コア30は、図4に示すように、内周に複数のスロット31が形成された円環状を呈している。複数のスロット31は、その深さ方向が径方向と一致するように形成されている。固定子コア30に形成されたスロット31の数は、回転子の磁極数(8磁極)に対し、固定子巻線40の一相あたり2個の割合で形成されている。本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。
【0034】
固定子コア30は、図5に示す分割コア32を所定の数(本実施形態では24個)を周方向に連結して円環状に形成されている(図4参照)。円環状に連結された分割コア32は、その外周に嵌合された外筒37により固定されている(図1〜図3参照)。分割コア32は、一つのスロット31を区画するとともに、周方向で隣接する分割コア32との間で一つのスロット31を区画する形状を呈している。具体的には、分割コア32は、径方向内方に伸びる一対のティース部33と、ティース部33を径方向外方で連結するバックコア部34とを有している。
【0035】
固定子コア30を構成する分割コア32は、複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層させて形成されている。積層された電磁鋼板の間には、絶縁薄膜が配置されている。分割コア32は、この電磁鋼板の積層体からだけでなく、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて形成してもよい。
【0036】
次に、図6〜図9を参照して固定子巻線40について説明する。図6は、本実施形態に係る固定子巻線の全体斜視図であり、図7はその側面図、図8はその平面図、図9はその底面図である。固定子巻線40は、図6〜図9に示すように、複数の導線50により円筒形状に形成されており、固定子コア30のスロット31内に収容されるストレート部41と、このストレート部41の両端においてスロット31外部に配置されるコイルエンド部42を有する。一方のコイルエンド部42の端面において、出力線および中性点となるリード線が軸方向に突出するとともに、内径側から突出した導線50の端部を外径側から突出した導線50の端部に接続する渡り部59が設けられている。
【0037】
固定子巻線40を構成する導線50は、図10(A)に示すように、銅製の導体67と、導体67の外周を覆い導体67を絶縁する内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68とから形成されている。内層68aおよび外層68bを合わせた絶縁被膜68の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の厚みが厚いので、導線50同士を絶縁するために導線50同士の間に絶縁紙等を挟み込む必要がなくなっているが、導線50同士の間あるいは固定子コア30と固定子巻線40との間に絶縁紙を配設してもよい。
【0038】
外層68bはナイロン等の絶縁材で形成され、内層68aは外層68bよりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機に発生する熱により外層68bは内層68aよりも早く結晶化するため、外層68bの表面硬度が高くなり、導線50に傷がつきにくくなる。このため、後述するターン部52に段部を形成する加工を施した導線50の絶縁を確保することができる。
【0039】
さらに、導線50は、図10(B)に示すように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材69で被覆してもよい。これにより、融着材69は、回転電機に発生する熱により絶縁被膜68よりも早く溶融するので、同じスロット31に収容されている複数の導線50同士が融着材69同士により熱接着する。その結果、同じスロット31に収容されている複数の導線50が一体化し導線50同士が硬化することで、スロット31内の導線50の機械的強度が向上する。なお、絶縁被膜68の外層68bには、ポリフェニレンサルファイド(PPS)よりなる被膜を用いてもよい。
【0040】
図11に、導線50を平面上に展開した場合の図を示す。導線50は、図11に示すように、固定子コア30のスロット31内に収容される複数のスロット収容部51と、スロット31から固定子コア30の外に突出し、周方向に異なるスロット31に収容されているスロット収容部51同士を接続している複数のターン部52とを有する。具体的には、複数のスロット収容部51は、少なくとも、スロット31に収容される第1スロット収容部51Aと、第1スロット収容部51Aから周方向に離間したスロット31に収容される第2スロット収容部51Bと、第2スロット収容部51Bから周方向に離間したスロット31に収容される第3スロット収容部51Cを含む。また、複数のターン部52は、少なくとも、固定子コア30の一端側におけるスロット31の外部で第1スロット収容部51Aと第2スロット収容部52Bを接続する第1ターン部52Aと、固定子コア30の他端側におけるスロット31の外部で第2スロット収容部51Bと第3スロット収容部51Cを接続する第2ターン部52Bを含む。なお、本実施形態においては、図11に示すように、各導線50は、12個のスロット収容部51A〜51Lと、11個のターン部52A〜52Kを備えている。
【0041】
具体的には、本実施形態におけるスロット収容部51は、図11の左端に位置する第1スロット収容部51Aから順に、固定子コア30の周方向に離間したスロット31にそれぞれ収容される第2スロット収容部51B、第3スロット収容部51C、・・・、第12スロット収容部51Lの12個からなる。また、ターン部52は、固定子コア30の一端側におけるスロット31の外部と固定子コア30の他端側におけるスロット31の外部とで交互にスロット収容部51同士を接続する第1ターン部52A、第2ターン部52B、・・・、第10ターン部52J、および第11スロット収容部51Kと第12スロット収容部51Lを接続する第11ターン部52Kの11個からなる。
【0042】
この導線50の隣り合うスロット収容部51同士の周方向(矢印Y方向)の離間距離Xは、全ての箇所で異なるようにされている。この場合、離間距離Xは、導線50の第1スロット収容部51A側から第12スロット収容部51L側に向かうにつれて、徐々に短くなるようにされている。即ち、離間距離Xは、X1>X2>X3>X4>X5>X6>X7>X8>X9>X10>X11となっている。なお、離間距離Xは、固定子コア30の周方向において隣り合うスロット31同士の離間距離(スロットピッチ)を考慮して適宜設定される。
【0043】
導線50の両端には、他の導線50等と接続するための引出し部53a、53bが設けられている。一方の引出し部53aは、第1スロット収容部51Aの端末から内側(図11の右側)へ戻るように、スロット収容部間にあるターン部の略半分の長さに形成されたターン部52Mを介して形成されている。よって、一方の引出し部53aは、第1スロット収容部51Aからターン部52Mの長さだけ内側(図11の右側)へ寄った所に位置している。他方の引出し部53bは、第12スロット収容部51Lの端末から内側(図11の左側)へ戻るように、スロット収容部間にあるターン部の略半分の長さに形成されたターン部52Nを介して形成されている。よって、他方の引出し部53bは、第12スロット収容部51Lからターン部52Nの長さだけ内側(図11の左側)へ寄った所に位置している。他方の引出し部53bとターン部52Nとの間には、固定子巻線40の軸方向端面上で固定子コア30の径方向外方へ折り曲げられて配置される渡り部59が設けられている。
【0044】
ターン部52の略中央部には、第1スロット収容部51A、第2スロット収容部51B、第3スロット収容部51C、・・・、第12スロット収容部51Lを導線50の長手方向およびスロット収容部51の長手方向に直交する方向に順次段差が生じるようにクランク部54(図12参照)が形成されている。その結果、導線50は図11(A)に示すように階段状の形状を有することになる。
【0045】
図12に、図11に示す導線50を用いて円筒形状の固定子巻線40を形成した場合のターン部52の形状を示す斜視図を示す。図12(A)に示すように、ターン部52は、固定子コア30の径方向に変位して固定子コア30の端面30aに沿って延びるクランク部54を有する。クランク部54のクランク形状によるずれ量(径方向への変位量)は、ターン部52の径方向厚み分である。これにより、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、ターン部52の径方向厚み分だけ変位している。このようにクランク部54がターン部52に設けられていることにより、図12(B)に示すように周方向に隣接している導線50のターン部52同士を密に巻回できる。また、図12(B)に示すように周方向に隣接するターン部52は互いに同じ形状であり、ターン部52同士が干渉するのを防止している。
【0046】
また、スロット31から固定子コア30の外に突出するターン部52の突出箇所に、導線50がまたがって設置されているスロット同士に向けて固定子コア30の軸方向両側の端面30aに沿って段部55が形成されている。これにより、スロット31から突出している導線50のターン部52の突出箇所の間隔、言い換えればターン部52が形成する三角形状部分の底辺の長さは、導線50がまたがって設置されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンド部42の高さが低くなる。ターン部52の突出箇所(スロット収容部51の延長線上の部位)に形成された段部55は、スロット収容部51に対して略直角に屈曲されており、その屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部57が設けられている。
【0047】
また、固定子コア30の端面30aに沿った段部55の長さをd1、周方向に隣接するスロット同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、導線50の段部55が周方向に隣り合うスロットから突出する導線50と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロットから突出する導線50同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンド部42の高さが高くなったり、あるいはコイルエンド部42の径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、コイルエンド部42の高さが低くなる。さらに、コイルエンド部42の径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。
【0048】
さらに、導線50には、ターン部52の略中央部のクランク部54と、ターン部52の突出箇所に形成した段部55との間に、それぞれ2個の段部56が形成されている。つまり、固定子コア30の一方の軸方向の端面30a側の導線50のターン部52には、1個のクランク部54と合計6個の段部55、56が形成されている。これにより、クランク部54や段部55、56を形成しない三角形状のターン部の高さに比べ、ターン部52の高さが低くなる。クランク部54のクランク形状も、段部55、56と同様に、固定子コア30の端面30aに沿って形成されている。したがって、導線50のターン部52は、クランク部54を挟んで両側が階段状に形成されている。また、ターン部52の階段部において、4個の段部56により形成されるそれぞれの屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部58が設けられている。
【0049】
固定子巻線40は、図11に示した導線50を48本用いて形成されている。ただし、固定子巻線40に出力線や中性点などを設けるために、渡り部59を設けていない導線50を適宜混在させても良い。したがって、本実施形態では、48本の導線50の全ては、各導線50の両端部に形成された引出し部53a、53bの間において同じ形状に成形されている。
【0050】
この固定子巻線40を構成する導線50は、ターン部52の略中央部に、ターン部52の径方向厚み分だけ径方向にずれたクランク部54が設けられていることにより、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、固定子コア30の中心軸線からの半径距離が、スロット収容部51の径方向厚み分だけ異なっている。また、導線50は、隣り合うスロット収容部51同士の離間距離Xが、導線50の第1スロット収容部51A側から第12スロット収容部51L側に向かうにつれて、徐々に短くなるようにされており、全ての箇所で実質的に異なっている(図8参照)。これらのことから、固定子巻線40は、径方向に重なり合うスロット収容部51が、周方向に位置ずれすることなく径方向一列にストレートな状態に整列するようになるので、真円筒形状により近い形状にすることができる(図6および図7参照)。
【0051】
この固定子巻線40は、複数の導線の第1スロット収容部51A同士、第2スロット収容部51B同士、・・・、第12スロット収容部51L同士をそれぞれ周方向に連続するスロットに配置するとともに、第1スロット収容部51A同士、第2スロット収容部51B同士、・・・、第12スロット収容部51L同士の固定子コアの中心軸線Oからの半径距離がそれぞれ等しくなるよう配置されているので、固定子巻線40の外径寸法および内径寸法を周方向で均一化することができる。この固定子巻線40は、図13に示すように、それぞれの相が16本の導線50を直列に接続した各相巻線43(U、V、W)をY結線した三相巻線として形成されている。
【0052】
図14において、各導線50のスロット収容部51は、12個の破線円と放射方向に延びる破線とが交差する位置に配置されており、最外径側と最内径側のみが矩形断面形状で表されている。また、放射方向に1列に並んだスロット収容部51の外側には、それぞれ対応する1〜48のスロット番号が付されている(以後、図15においても同じ)。また、スロット番号の外側には、それぞれのスロットの最外径側(第12層)に、巻回の始端側となる第1スロット収容部51Aが配置される導線の番号が付されている。
【0053】
各相の巻線を構成する16本の導線50は、8個の同一のスロット31にスロット収容部51が収容される8本の導線50と、それら8個のスロット31とは別の8個の同一のスロット31にスロット収容部51が収容される8本の導線50とに分かれている。例えばU相の場合には、8本の導線(U1−1)〜(U1−4)および(U1−1’)〜(U1−4’)は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回されて、それぞれのスロット収容部51が、1番スロット、7番スロット、13番スロット、19番スロット、25番スロット、31番スロット、37番スロットおよび43番スロットに収容される。また、他の8本の導線(U2−1)〜(U2−4)および(U2−1’)〜(U2−4’)は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回されて、それぞれのスロット収容部51が、2番スロット、8番スロット、14番スロット、20番スロット、26番スロット、32番スロット、38番スロットおよび44番スロットに収容される。
【0054】
なお、図14には、代表として導線(U1−1)の軌跡が示されている。図14において、黒四角で示された部分は導線(U1−1)のスロット収容部51が配置されていることを示し、導線(U1−1)の周方向に延びる太線は、固定子コア30の軸方向一方側(図14の紙面手前側)に位置するターン部52を示し、導線(U1−1)の周方向に延びる二点鎖線は、固定子コア30の軸方向他方側(図14の紙面後側)に位置するターン部52を示す(以後、図15においても同じ)。
【0055】
この固定子巻線40は、図14に示すように、各スロット31において、8本の導線50のスロット収容部51が径方向に12層、積層された状態になっている。導線(U1−1)は、始端側の第1スロット収容部51Aが1番スロットの最外層(第12層)に位置し、終端側の第12スロット収容部51Lが19番スロットの最内層(第1層)に位置している。
【0056】
また、固定子巻線40を構成する48本の導線50は、長手方向(周方向)に1スロットピッチずつずれて配置されているので、各導線50の始端側となる第1スロット収容部51Aが、48個の各スロット31の最外層(第12層)に順に収容されている。下記の表1は、1番〜48番の各スロット31において、最外層に位置する導線の番号と、最内層に位置する導線の番号をまとめたものである。
【0057】
【表1】
【0058】
固定子巻線40を構成する導線50は、各導線50の一端側(第1スロット収容部51A側)から他端側(第12スロット収容部51L側)に向かうにつれて、スロット収容部51の固定子コア30の中心軸線Oからの半径距離が順次小さくなっている。本実施形態の場合、各導線50は、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士の固定子コア30の中心軸線Oからの半径方向距離がスロット収容部51の径方向厚み分異なっている。
【0059】
図15は、固定子巻線40を図14の裏側から見た場合の、1本の導線(U1−4’)の軌跡を示す図である。この導線(U1−4’)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが43番スロットの第12層(最外層)に配置され、第2スロット収容部51Bが1番スロットの第11層に配置され、第3スロット収容部51Cが7番スロットの第10層に配置され、第4スロット収容部51Dが13番スロットの第9層に配置され、最終の第12スロット収容部51Lが13番スロットの第1層(最内層)に配置されている。即ち、導線(U1−4’)は、始端側(外径側)から終端側(内径側)に向かうにつれて、スロット収容部51の固定子コア30の中心軸線Oからの半径距離が順次小さくなっている。
【0060】
よって、固定子コア30の中心軸線Oから、第1スロット収容部51Aまでの半径距離r43と、第2スロット収容部51Bまでの半径距離r1と、第3スロット収容部51Cまでの半径距離r7と、第4スロット収容部51Dまでの半径距離r13は、順次スロット収容部51の径方向厚み分小さくなっており、以後同様に、第12スロット収容部51Lに至るまで、半径距離が順次スロット収容部51の径方向厚み分小さくなっている。すなわち、第1スロット収容部51Aから第12スロット収容部51Lに至るまで、半径距離が順次小さくなるのみで、途中で半径距離が大きくなることはない。
【0061】
次に、16本の導線50を直列に接続してなる各相巻線43(U、V、W)のうち、代表としてV相の各相巻線43の接続状態を、図13、図16および上記の表1を参照して説明する。なお、U相、W相の各相巻線もV相と同様の接続となっている。
【0062】
図13において出力線Vの始端に位置する導線(V1−1)は、表1および図16に示すように、始端側の第1スロット収容部51Aが5番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが23番スロットの最内層(第1層)に配置されている。導線(V1−1)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが17番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが35番スロットの第1層に配置された導線(V1−2)の始端側が接続されている。
【0063】
導線(V1−2)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが29番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが47番スロットの第1層に配置された導線(V1−3)の始端側が接続されている。導線(V1−3)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが41番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが11番スロットの第1層に配置された導線(V1−4)の始端側が接続されている。導線(V1−4)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが6番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが24番スロットの第1層に配置された導線(V2−1)の始端側が接続されている。
【0064】
導線(V2−1)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが18番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが36番スロットの第1層に配置された導線(V2−2)の始端側が接続されている。導線(V2−2)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが30番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが48番スロットの第1層に配置された導線(V2−3)の始端側が接続されている。導線(V2−3)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが42番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが12番スロットの第1層に配置された導線(V2−4)の始端側が接続されている。
【0065】
導線(V2−4)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが48番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが18番スロットの第1層に配置された導線(V2−4’)の終端側が接続されている。導線(V2−4’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが36番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが6番スロットの第1層に配置された導線(V2−3’)の終端側が接続されている。導線(V2−3’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが24番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが42番スロットの第1層に配置された導線(V2−2’)の終端側が接続されている。導線(V2−2’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが12番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが30番スロットの第1層に配置された導線(V2−1’)の終端側が接続されている。
【0066】
導線(V2−1’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが47番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが17番スロットの第1層に配置された導線(V1−4’)の終端側が接続されている。導線(V1−4’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが35番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが5番スロットの第1層に配置された導線(V1−3’)の終端側が接続されている。導線(V1−3’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが23番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが41番スロットの第1層に配置された導線(V1−2’)の終端側が接続されている。導線(V1−2’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが11番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが29番スロットの第1層に配置された導線(V1−1’)の終端側が接続されている。なお、導線(V1−1’)の始端側は、中性点Vに接続されている。
【0067】
次に、表1、図11および図16を参照して各導線50の接続状態を説明する。ここでは、代表として2本の導線(V1−1)(V1−2)の接続状態を説明する。一方の導線(V1−1)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが5番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側となる第12スロット収容部51Lが23番スロットの最内層(第1層)に配置されている。この導線(V1−1)の終端側に設けられた引出し部53b(内周側端部)は、第12スロット収容部51Lが配置されている23番スロットからターン部52Nの長さ分だけ戻った所(20番スロット付近)に位置している。
【0068】
そして、他方の導線(V1−2)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが17番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側となる第12スロット収容部51Lが35番スロットの最内層(第1層)に配置されている。この導線(V1−2)の始端側に設けられた引出し部53a(外周側端部)は、第1スロット収容部51Aが配置されている17番スロットからターン部52Mの長さ分だけ戻った所(20番スロット付近)に位置している。図6〜図9に示すように、この導線(V1−1)の引出し部53b(内周側端部)は、径方向外方側へ略直角に折り曲げられた後、その先端が、固定子巻線40の外周端部に位置する導線(V1−2)の引出し部53a(外周側端部)の先端部に溶接接合されることにより接続されている。
【0069】
この溶接接合は、固定子巻線40の最も外径側に位置するターン部52よりも外径側において溶接により接続されている。この場合、導線(V1−1)の引出し部53b(内周側端部)の折り曲げ部は、固定子巻線40の軸方向端面(ターン部52の軸方向外面)上を通る渡り部59を形成しており、2本の導線(V1−1)(V1−2)は、渡り部59を介して接続されている。これにより、内径側に位置するス第12ロット収容部51Lの径方向内方への膨出をより効果的に防止することができるので、内径側に位置する回転子との干渉を回避することが可能となる。
【0070】
なお、渡り部59は、図2および図8に示すように、渡り部59の径方向両端部が、固定子コア30(固定子巻線40)の中心軸線Oから放射方向に延びる直線に沿って延びるように形成されている。渡り部59の形状をこのようにすることによって、導線の折り曲げを容易にするとともに、溶接接合を容易にすることができる。
【0071】
また、この渡り部59は、図2および図8に示すように、固定子巻線40の軸方向端面上において、周方向に略3/4周する範囲の領域に設けられている。そして、固定子巻線40の軸方向端面上の残り1/4周する範囲の領域には、中性点V、出力線W、中性点U、出力線V、中性点Wおよび出力線Uの引出し部が順番に並んで設けられている。即ち、固定子巻線40の軸方向端面において、中性点U、V、Wの引出し部と同じ領域に出力線U、V、Wの引出し部が設けられているとともに、渡り部59が設けられる領域と中性点U、V、Wおよび出力線U、V、Wの引出し部が設けられる領域が分離されている。
【0072】
上記のように構成された固定子巻線40は、外周側から分割コア32が挿入されることによって固定子コア30と組み付けられている(図1〜図3参照)。これにより、固定子巻線40を構成する導線50は、固定子コア30の内周側で周方向に沿って波巻きされた状態に組み付けられている。導線50のターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、所定のスロットピッチ(本実施形態では、3相×2個=6スロットピッチ)だけ離間したスロット31に収容されている。隣り合うスロット収容部51同士を接続するターン部52は、固定子コア30の軸方向の両端面からそれぞれ突出し、その突出している部分(ターン部52の集合体)によりコイルエンド部42が形成されている。
【0073】
次に、本実施形態の固定子巻線40の製造方法について説明する。本実施形態の固定子巻線40の製造方法は、図17に示すように、導線形成工程101と、巻回体形成工程102と、組付工程103とからなる。
【0074】
<導線形成工程101>
最初の導線形成工程101では、図18および図19に示すように、治具を用いて、線材50aに対して、スロット31に収容されるスロット収容部51と、周方向に異なるスロット31に収容されるスロット収容部51同士を接続するターン部52とを形成し、図11に示す導線50を作製する。ここで用いられる治具は、線材50aの幅に相当する距離を隔てて対向配置された第1および第2固定治具81、82と、支軸83aに回転可能に取着され、第1および第2固定治具81、82の間に挟持された線材50aを第1固定治具81側へ屈曲させる回転治具83とを備えている。第1固定治具81は、線材50aが屈曲される際に屈曲部が当接する略直角のコーナ部81aを有する。コーナ部81aは、所定の大きさのアール形状とされている。
【0075】
この治具により、ターン部52を形成するには、図19(A)に示すように、第1および第2固定治具81、82の間に、線材50aのスロット収容部51となる部分を挟持させて、支軸83aを中心にして回転治具83を第1固定治具81側へ回転させる。なお、第1固定治具81と第2固定治具82の対向方向は、固定子コア30の周方向に相当する(図18参照)。これにより、図19(B)に示すように、回転治具83が線材50aを第1固定治具81のコーナ部81aに押し付け、コーナ部81aのアール形状に沿って屈曲させる。
【0076】
これにより、スロット31から突出するターン部52の突出箇所(スロット収容部51の延長線上の部位)が、スロット収容部51に対して略直角に屈曲され、ターン部52の突出箇所に、固定子コア30の端面に沿った段部55が形成される。このとき形成された屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部57(図12(A)参照)が形成される。なお、屈曲部の肉厚tは、屈曲部に膨出部57が形成されるのに伴って、線材50aの初期の肉厚Tよりも小さくなっている。
【0077】
そして、上記の治具を上記と同様に操作して、各ターン部52に、固定子コア30の端面に平行な合計4個の段部56からなる階段部を形成することにより、その階段部の屈曲部の内側部分に、固定子コア30の径方向に膨出する膨出部58(図12(A)参照)を形成する。また、成形装置(図示せず)を用いて、各ターン部52の中央部に、固定子巻線40の径方向に位置ずれするクランク部54を形成する。なお、このクランク部54は、後に行われる巻回体形成工程において、ターン部52を円弧状に成形する際に形成するようにしてもよい。
【0078】
以上のように導線形成工程101を行って、固定子巻線40の1個あたり48本の導線50を準備する。
【0079】
<巻回体形成工程102>
巻回体形成工程102では、導線形成工程101で作製した導線50の各ターン部52を、成形装置(図示せず)などを用いて円弧形状に塑性変形させて、導線50が渦巻き状に巻回された巻回体60を形成する。本実施形態では、図20および図21に示すように、導線50が周方向に11/8周する渦巻き状の巻回体60を形成する。この場合、巻回体60の両端部の径方向に重なった部分(3/8周部分)においては、隣り合うスロット収容部51同士の周方向の離間距離Xの短い側の端部が径方向内側に位置し、離間距離Xの長い側の端部が径方向外側に位置している。そして、スロット収容部51は、51Aと51I、51Bと51J、51Cと51K、51Dと51Lのスロット収容部同士が径方向に対向して並んでいる。なお、巻回体60の周回数(11/8周=1.375周)は、固定子巻線40の仕様に応じて適宜設定される。
【0080】
<組付工程103>
組付工程103では、巻回体形成工程102で渦巻き状に形成した48個の巻回体60を組付装置(図示せず)により組み付けて、最終的に、図28に示す円筒状の最終組付体64を形成する。この組付工程103は、図23に示すように、第1〜第4ステップを行って、組み付けられる側の被組付巻回体61と組み付ける側の組付巻回体62の双方を、径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けることにより、複数の巻回体60よりなる組付体63を形成する。
【0081】
本実施形態では、被組付巻回体61および組付巻回体62をそれぞれ径方向に弾性変形させる治具として、図22(A)(B)に示す渦形状治具85が用いられる。この渦形状治具85は、周方向に略2.5周する渦巻き形状に形成されており、径方向に対向する対向面間の隙間に巻回体60が軸方向に挿入可能とされている。そして、この渦形状治具85は、内周側端部を拡縮径させずに外周側端部を拡径させることにより全体的に拡径するように構成されている。なお、内周側端部は、拡縮径させることなく周方向に移動させるようにしてもよい。
【0082】
このように渦形状治具85を拡径させることで、渦形状治具85の径方向に対向する対向面間の隙間に挿入された巻回体60を所定の大きさに拡径可能とされている。渦形状治具85の拡径動作および拡径量等は、第1制御部(図示せず)により制御される。なお、この渦形状治具85は、外周側端部を拡縮径させずに内周側端部を縮径させることにより全体的に縮径させるようにしてもよい。
【0083】
また、渦形状治具85の周方向の4個所には、径方向に貫通し軸方向に長い矩形の窓部86が設けられている。この窓部86は、渦形状治具85の径方向に対向する対向面間の隙間に挿入された巻回体60の周方向位置を位置決めする通し矢(位置決め部材)90が径方向に挿通可能となるように設けられている。この場合、通し矢90は、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれの周方向の同一位置に複数配置されており、第2制御部(図示せず)によりそれぞれが独立して径方向に進退動可能に設けられている。
【0084】
本実施形態では、組付巻回体62用の第1渦形状治具85Aに対して、第1および第2通し矢90a、90bが軸方向に所定距離を隔てて配設されていると共に、被組付巻回体61用の第2渦形状治具85Bに対して、第3〜第6通し矢90c〜90fが軸方向に所定距離を隔てて配設されている(図24〜図27参照)。これら第1〜第6通し矢90a〜90fは、第1および第2渦形状治具85A、85Bの窓部86と対応して、それぞれ周方向の複数箇所(本実施形態では4箇所)に配設されている。
【0085】
なお、被組付巻回体62用の第2渦形状治具85Bは、径方向の肉厚が、組付巻回体62の組付層数の積層距離に1層分以上の積層距離が付加された距離に設定されている。これにより、本実施形態の巻回体60のように、ターン部52に層変わり部となる変曲点(クランク部54)が設けられている場合でも、被組付巻回体61と組付巻回体62とを組み付ける際に、干渉を回避するために必要な組付巻回体62のスペースが確実に確保される。
【0086】
本実施形態の組付工程103では、最初に、1個の巻回体60よりなる被組付巻回体61と1個の巻回体60よりなる組付巻回体62とを組み付けて、2個の巻回体60よりなる第1の組付体63を24束形成する。次いで、24束のうちの16束の第1の組付体63を用いて、2束の第1の組付体63を組み付けて、4個の巻回体60よりなる第2の組付体63を8束形成する。次いで、第1の組付体63と第2の組付体63とを組み付けて、6個の巻回体60よりなる第3の組付体63を8束形成する。次いで、2束の第3の組付体63を組み付けて、12個の巻回体60よりなる第4の組付体63を4束形成する。次いで、2束の第4の組付体63を組み付けて、24個の巻回体60よりなる第5の組付体63を2束形成する。最後に、2束の第5の組付体63を組み付けて、48個の巻回体60よりなる第6の組付体63(最終組付体64)を1個形成する。
【0087】
ここでは、2束の第3の組付体63を組み付けて、12個の巻回体60よりなる第4の組付体63を形成する場合について、図23〜図27を参照して説明する。本実施形態の組付工程103は、図23(A)〜(D)に示すように、第1〜第4ステップを行うことによって、被組付巻回体61(一方の第3の組付体63)と組付巻回体62(他方の第3の組付体63)との組付けを行う。なお、組付工程103の第1〜第4ステップは、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれの周方向位置を第1〜第6通し矢90a〜90fで位置決めしながら行われる。
【0088】
先ず、第1ステップ(図23(A))では、被組付側の第2渦形状治具85Bの上方に配置された組付側の第1渦形状治具85Aに対して、第1渦形状治具85Aの径方向に対向する対向面間の隙間に被組付巻回体61を挿入してセットする。このとき、第1渦形状治具85Aは、第1制御部により第2渦形状治具85Bと同じ所定の大きさに拡径されて、周方向の位相が同一となる状態にされている。これにより、第1渦形状治具85Aの拡径に伴って被組付巻回体61も所定の大きさに拡径されている。
【0089】
そして、図24(A)に示すように、第2制御部により第1および第2通し矢90a、90bを径方向に進出させて、第1渦形状治具85Aの窓部86からその被組付巻回体61の所定のスロット収容部同士の間に、第1および第2通し矢90a、90bの先端部を挿入し、その被組付巻回体61の周方向の位置決めをする。
【0090】
次の第2ステップ(図23(B))では、第1渦形状治具85Aに保持されている被組付巻回体61を、第1〜第6通し矢90a〜90fで位置決めしながら軸方向にスライドさせて被組付側の第2渦形状治具85B内へ移動させる。即ち、第1ステップ終了後(図24(A))の状態から、第2制御部により第1通し矢90aを後退させて、第1通し矢90aによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図24(B))。その状態で、第1渦形状治具85Aに保持されている被組付巻回体61を、第2通し矢90bのみで周方向の位置決めをしつつ、第1押圧部材89Aにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図24(C))。これにより、被組付巻回体61の下方側の一部が、第2渦形状治具85Bの径方向に対向する対向面間の隙間に挿入される。
【0091】
次いで、第2制御部により第3通し矢90cを進出させて、第3通し矢90cと第2通し矢90bとで被組付巻回体61の周方向の位置決めをした後(図24(D))、第2制御部により第2通し矢90bを後退させて、第2通し矢90bによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図24(E))。その状態で、第1および第2渦形状治具85A、85Bに保持されている被組付巻回体61を、第3通し矢90cのみで周方向の位置決めをしつつ、第1押圧部材89Aにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図24(F))。
【0092】
次いで、第2制御部により第4通し矢90dを進出させて、第4通し矢90dと第3通し矢90cとで被組付巻回体61の周方向の位置決めをした後(図24(G))、第2制御部により第3通し矢90cを後退させて、第3通し矢90cによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図24(H))。その状態で、第1および第2渦形状治具85A、85Bに保持されている被組付巻回体61を、第4通し矢90dのみで周方向の位置決めをしつつ、第1押圧部材89Aにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図25(A))。これにより、被組付巻回体61は、全体が第2渦形状治具85B側へ移動した状態となる。
【0093】
次いで、第2制御部により第5通し矢90eを進出させて、第5通し矢90eと第4通し矢90dとで被組付巻回体61の周方向の位置決めをした後(図25(B))、第2制御部により第4通し矢90dを後退させて、第4通し矢90dによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図25(C))。その状態で、第2渦形状治具85Bに保持されている被組付巻回体61を、第5通し矢90eのみで周方向の位置決めをしつつ、第1押圧部材89Aにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図25(D))。
【0094】
その後、第2制御部により第6通し矢90fを進出させて、第6通し矢90fと第5通し矢90eとで被組付巻回体61の周方向の位置決めをし、被組付巻回体61を第2渦形状治具85Bに保持させた状態で第2ステップ(図23(B))を終了する(図25(E))。
【0095】
次の第3ステップ(図23(C))では、被組付側の第2渦形状治具85Bの上方に配置された組付側の第1渦形状治具85Aに対して、第1渦形状治具85Aの径方向に対向する対向面間の隙間に組付巻回体62を挿入してセットする。このとき、第1渦形状治具85Aは、第1制御部により所定の大きさに拡径されて、周方向の位相が第2渦形状治具85Bと180°異なる状態にされている。これにより、第1渦形状治具85Aの外周面に沿って拡径された状態で保持されている組付巻回体62は、第2渦形状治具85B自体と軸方向に重複する所に位置している。即ち、第1渦形状治具85Aと第2渦形状治具85Bは、軸方向において互いに重複しない所に位置している。
【0096】
そして、図26(A)に示すように、第2制御部により第1および第2通し矢90a、90bを径方向に進出させて、第1渦形状治具85Aの窓部86からその組付巻回体62の所定のスロット収容部同士の間に、第1および第2通し矢90a、90bの先端部を挿入し、その組付巻回体62の周方向の位置決めをする。
【0097】
次の第4ステップ(図23(D))では、第1渦形状治具85Aに保持されている組付巻回体62を、第1〜第6通し矢90a〜90fで位置決めしながら軸方向にスライドさせて被組付側の第2渦形状治具85B内へ移動させる。即ち、第3ステップ終了後(図26(A))の状態から、第2制御部により第1通し矢90aを後退させて、第1通し矢90aによる組付巻回体62の周方向の位置決めを解除する(図26(B))。その状態で、第1渦形状治具85Aに保持されている組付巻回体62を、第2通し矢90bのみで周方向の位置決めをしつつ、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図26(C))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。
【0098】
次いで、第2制御部により第3通し矢90cを進出させて、第3通し矢90cと第2通し矢90bとで組付巻回体62の周方向の位置決めをした後(図26(D))、第2制御部により第2通し矢90bを後退させて、第2通し矢90bによる組付巻回体62の周方向の位置決めを解除する(図26(E))。その状態で、第1渦形状治具85Aに保持されている組付巻回体62を、第3通し矢90cのみで周方向の位置決めをしつつ、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図26(F))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。これにより、組付巻回体62の軸方向下端部と被組付巻回体61の軸方向上端部とが径方向に重複し、部分的に組み付けられた状態になる。
【0099】
次いで、第2制御部により第4通し矢90dを進出させて、第4通し矢90dと第3通し矢90cとで組付巻回体62の周方向の位置決めをした後(図26(G))、第2制御部により第5通し矢90eを後退させて、第5通し矢90eによる被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図26(H))。その後、第2制御部により第3通し矢90cを後退させて、第3通し矢90cによる組付巻回体62の周方向の位置決めを解除する(図27(A))。その状態で、第1渦形状治具85Aに保持されている組付巻回体62を、第4通し矢90dのみで周方向の位置決めをしつつ、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図27(B))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。これにより、組付巻回体62の軸方向下端部と被組付巻回体61の軸方向上端部との径方向の重複が増大し、組付巻回体62と被組付巻回体61との組み付けが更に進行する。
【0100】
次いで、第2制御部により第5通し矢90eを進出させて、第5通し矢90eと第4通し矢90dとで組付巻回体62の周方向の位置決めをした後(図27(C))、第2制御部により第4および第6通し矢90d、90fを後退させて、第4および第6通し矢90d、90fによる組付巻回体62および被組付巻回体61の周方向の位置決めを解除する(図27(D))。これにより、組付巻回体62および被組付巻回体61は、第5通し矢90eのみで周方向の位置決めがなされた状態になっている。
【0101】
その状態で、組付巻回体62を、第5通し矢90eで周方向の位置決めをしつつ、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へ所定距離スライドさせる(図27(E))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。これにより、組付巻回体62と被組付巻回体61が軸方向全長に亘って径方向に重複した状態になる。その後、第2制御部により第6通し矢90fを進出させて、第6通し矢90fと第5通し矢90eとで組付巻回体62および被組付巻回体61の周方向の位置決めをし(図27(F))、第4ステップ(図23(D))を終了する。
【0102】
これにより、図23(D)に示すように、被組付巻回体61(一方の第3の組付体63)と組付巻回体62(他方の第3の組付体63)とが組み付けられて、12個の巻回体60よりなる第4の組付体63が形成される。
【0103】
その後、2束の第4の組付体63同士を上記の第1〜第4ステップと同様の方法で組み付けて、24個の巻回体60よりなる第5の組付体63を形成する。最後に、2束の第5の組付体63同士を上記の第1〜第4ステップと同様の方法で組み付けて、図28に示す48個の巻回体60よりなる第6の組付体63(最終組付体64)を形成して、組付工程103を終了する。
【0104】
そして、以上のようにして組付工程103を行った後、最終組付体64に対して所定の導線50の引出し部53a、53bを溶接で接続するなどの必要な処理を施すことにより、図6〜図9に示す固定子巻線40が完成する。
【0105】
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程103において、被組付巻回体61と組付巻回体62の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けるようにしている。そのため、被組付巻回体61と組付巻回体62との干渉を回避して、両巻回体61、62を円滑且つ容易に軸方向へ相対移動させることができるので、両巻回体61、62の組付けを簡易に行うことができる。これにより、導線50の絶縁皮膜68へのダメージを少なくして、固定子巻線40を簡易に製造することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態の製造方法は、被組付巻回体61と組付巻回体62とを軸方向に相対移動させて組み付けるようにしているため、それら巻回体61、62の1本の長さを短く設定することができる。そのため、製造時のハンドリングが極めて良好になり、製造効率を大幅に高めることができるので、製造コストの低減が可能となる。
【0107】
また、本実施形態の組付工程103は、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれの周方向位置を通し矢(位置決め部材)90で位置決めしながら行うようにしている。そのため、組付工程103において、被組付巻回体61と組付巻回体62の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付ける際に、それぞれの巻回体61、62の周方向位置が位置決めされた状態で軸方向に相対移動する。これにより、被組付巻回体61と組付巻回体62のスロット収容部51を径方向に精度良く整列させることができるので、スロット収容部51の整列精度を向上させることができる。
【0108】
また、通し矢(位置決め部材)90は、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれの周方向の同一位置に複数配置されてそれぞれ径方向に進退動可能に設けられており、組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62を軸方向に相対移動させる際に、周方向の同一位置に配置された複数の通し矢90のうちの少なくとも1つの通し矢90で常時位置決めするようにしている。そのため、通し矢90を制御する第2制御部の良好な静的精度(取付け精度)を確保することができるので、被組付巻回体61および組付巻回体62の位置精度を良好にすることができる。
【0109】
さらに、組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62は、渦形状治具85により径方向に弾性変形した状態で位置決めされるようにしている。これにより、渦形状治具85の内周面または外周面の全面で被組付巻回体61および組付巻回体62を位置決めするため、被組付巻回体61および組付巻回体62を精度良く位置決めすることができる。そのため、被組付巻回体61と組付巻回体62とを、干渉しないようにして容易に組み付けることができる。これにより、導線50の絶縁皮膜68へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線40を製造することが可能となる。
【0110】
また、被組付巻回体61側の渦形状治具85の径方向の肉厚は、組付巻回体62の組付層数の積層距離に1層分以上の積層距離が付加された距離に設定されている。そのため、巻回体60のターン部52に層変わり部となる変曲点(クランク部54)が設けられている場合でも、被組付巻回体61と組付巻回体62とを組み付ける際に必要な組付巻回体62のスペースを確実に確保することができる。これにより、被組付巻回体61と組付巻回体62とを、干渉しないようにして容易に組み付けることが可能となる。
【0111】
また、本実施形態の製造方法は、導線形成工程101において、ターン部52に固定子巻線40の径方向に位置ずれするクランク部54を形成するようにしている。そのため、導線50のターン部52にクランク部54が形成されていても、組付工程103で被組付巻回体61と組付巻回体62とを組付ける際に、組付巻回体62を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させるので、被組付巻回体61と組付巻回体62とのクランク部54での干渉を回避することができる。よって、ターン部52にクランク部54を有する導線50を用いて固定子巻線40を製造する場合でも、本実施形態の製造方法を有効に適用することができる。
【0112】
〔実施形態2〕
図29(A)〜(D)は、実施形態2に係る製造方法の組付工程の一部を示す説明図であって、実施形態1の組付工程103における第3および第4ステップに対応している。
【0113】
本実施形態は、組付巻回体62の位置決めをする通し矢(位置決め部材)90が、被組付巻回体61と組付巻回体62を軸方向に相対移動させて組み付ける際に、組付巻回体62と共に軸方向に移動しつつ位置決めするようにされている点で、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0114】
実施形態2では、被組付巻回体61用の第2渦形状治具85Bは、実施形態1と同じものが用いられているが、組付巻回体62用の第1渦形状治具85Aは、窓部86を有しないものが用いられている。そして、図29(A)〜(D)に示すように、第1渦形状治具85Aの径方向に対向する対向面間の隙間に挿入された被組付巻回体61に対して、所定のスロット収容部51同士の間に先端部が挿入されて被組付巻回体61の周方向の位置決めをする第1通し矢90aが設けられている。この第1通し矢90aは、被組付巻回体61と組付巻回体62とを軸方向に相対移動させて組み付ける際に、第2制御部(図示せず)により組付巻回体62と共に軸方向に移動可能に設けられている。この第1通し矢90aは、周方向の複数箇所(本実施形態では4箇所)に配設されている。
【0115】
また、図29(A)〜(D)に示すように、被組付巻回体61用の第2渦形状治具85Bに対して、第2および第3通し矢90b、90cが軸方向に所定距離を隔てて配設されている図29(A)〜(D)。これら第2および第3通し矢90b、90cは、第2渦形状治具85Bの窓部86と対応して、それぞれ周方向の複数箇所(本実施形態では4箇所)に配設されている。
【0116】
本実施形態の組付工程103において、被組付巻回体61と組付巻回体62を軸方向に相対移動させて組み付ける際には、図29(A)(図26の(A)に対応)に示すように、組付装置(図示せず)の下方側に配置された被組付側の第2渦形状治具85Bに被組付巻回体61をセットし、その第2渦形状治具85Bの上方に配置された組付側の第1渦形状治具85Aに組付巻回体62をセットする。このとき、第1渦形状治具85Aは、第1制御部により所定の大きさに拡径されて、周方向の位相が第2渦形状治具85Bと180°異なる状態にされている。これにより、第1渦形状治具85Aの外周面に沿って拡径された状態で保持されている組付巻回体62は、第2渦形状治具85B自体と軸方向に重複する所に位置している。即ち、第1渦形状治具85Aと第2渦形状治具85Bは、軸方向において互いに重複しない所に位置している。
【0117】
そして、第2渦形状治具85Bにセットされた被組付巻回体61は、第2制御部により径方向に進出させた第2通し矢90bによって周方向の位置決めがなされていると共に、第1押圧部材89Aにより軸方向下方へ押圧されて軸方向の位置決めがなされている。また、第1渦形状治具85Aにセットされた組付巻回体62は、第2制御部により径方向に進出させた第1通し矢90aによって周方向の位置決めがなされている。
【0118】
図29(A)に示す状態から、第1渦形状治具85Aに保持された組付巻回体62を、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へスライドさせると同時に、組付巻回体62の周方向の位置決めをしている第1通し矢90aを、第2制御部により組付巻回体62と共に軸方向に移動させる(図29(B))。このとき、組付巻回体62の軸方向下方側へのスライドに伴って、第2渦形状治具85Bも軸方向下方側へ組付巻回体62と同じ距離だけスライドする。
【0119】
次いで、第2押圧部材89Bにより軸方向下方側へスライドした組付巻回体62の軸方向下方側のターン部52が第2通し矢90bの位置を通過して、組付巻回体62と被組付巻回体61の軸方向の略半分が径方向に重複した状態になったときに、第2制御部により第2通し矢90bを径方向に進出させて、第2通し矢90bで組付巻回体62および被組付巻回体61の両方の周方向の位置決めをする(図29(C))。
【0120】
そして、組付巻回体62と共に軸方向下方に移動させた第1通し矢90aを、第2制御部により径方向に後退させて、第1通し矢90aによる組付巻回体62の周方向の位置決めを解除する(図29(D))。その後、組付巻回体62と被組付巻回体61が軸方向全長に亘って径方向に重複した状態になるまで、第2押圧部材89Bにより組付巻回体62を更に軸方向下方へスライドさせる。これにより、組付巻回体62と被組付巻回体61とを組み付ける組付工程103を終了する。
【0121】
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程103において、被組付巻回体61と組付巻回体62の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けるようにしているため、導線50の絶縁皮膜68へのダメージを少なくして簡易に製造することができ、且つ製造効率を高めて低コスト化を図ることができるなど、実施形態1と同様の作用および効果を奏する。
【0122】
特に、本実施形態では、組付巻回体62の位置決めをする第1通し矢90aが、被組付巻回体61と組付巻回体62を軸方向に相対移動させる際に、組付巻回体62と共に軸方向に移動しつつ位置決めするようにしている。そのため、第1通し矢90aを組付巻回体62と共に軸方向に連続して移動させることができるので、組付工程のサイクルタイムを短縮することができる。また、組付巻回体62の周方向同一位置に位置決め部材(通し矢90)を1つ設ければよいことから、位置決め部材の数を低減することが可能となるため、設備コストの低減化を図ることができる。
【0123】
〔実施形態3〕
図30は、実施形態3において用いられる第1可動治具の作動状態を示す説明図であって、(A)は第1可動治具で巻回体を径方向に弾性変形させる前の状態を示し、(B)は第1可動治具で巻回体を径方向に弾性変形させた後の状態を示す。
【0124】
本実施形態は、実施形態1の組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62を径方向に弾性変形させる治具として用いられていた渦形状治具85に代えて、図30に示すように、渦巻き状に配備された複数の回転板87を備えた第1可動治具を用いる点で、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0125】
本実施形態で用いられる第1可動治具は、図30(A)に示すように、断面が細長い楕円形状で長尺状に形成された複数の回転板87を備えており、これら回転板87は、被組付巻回体61および組付巻回体62の渦巻き形状に合わせて渦巻き状に配備されている。即ち、複数の回転板87は、それぞれの巻回体61、62の径方向に対向する対向面間に形成される渦巻き状の隙間に沿って、周方向に距離を隔てて渦巻き状に配置されている。本実施形態では、11個の回転板87が用いられている。
【0126】
各回転板87は、長手方向に延びる軸線が巻回体61、62の軸方向と平行となるように配置されており、それぞれの軸線を中心に時計回り方向および反時計回り方向へ略90°回転するように、制御部(図示せず)により制御される。この場合、各回転板87は、通常時(待機時)には長径側が巻回体61、62の周方向両側に位置する状態にされ(図30(A))、所定方向へ90°回転時(作動時)には長径側が巻回体61、62の径方向両側に位置する状態にされる(図30(B))。
【0127】
なお、各回転板87の回転軸線は、長径方向において必ずしも中心に位置するようには設定されていない。即ち、各回転板87の回転軸線から一方の長径部外周端までの半径長さと、回転軸線から他方の長径部外周端までの半径長さは、各回転板87により巻回体61、62を径方向に弾性変形させる変形量に応じて適宜設定される。また、各回転板87の長径部の半径長さは、各回転板87の配設位置、或いは第1可動治具により弾性変形させられる巻回体61、62の大きさや個数によって適宜設定される。
【0128】
以上のように構成された第1可動治具は、組付工程103を行うに際して、本実施形態では、被組付巻回体61用と組付巻回体62用の2つが準備される。そして、先ず、被組付巻回体61用の待機状態の第1可動治具に対して、各回転板87を径方向両側で挟むようにして被組付巻回体61をセットする(図30(A))。即ち、被組付巻回体61の径方向に対向する対向面間の隙間内に、全ての回転板87が収容されるように被組付巻回体61をセットする。
【0129】
その後、制御部(図示せず)により各回転板87を所定方向(例えば時計回り方向)へ90°回転させると、各回転板87の長径側が、被組付巻回体61の径方向両側を向く状態になって(図30(B))、各回転板87の長径部外周端で被組付巻回体61を径方向に押圧する。これにより、各回転板87の径方向外方側にある被組付巻回体61を拡径するように弾性変形させると同時に、各回転板87の径方向内方側にある被組付巻回体61を縮径するように弾性変形させる。
【0130】
次いで、組付巻回体62用の第1可動治具に対して組付巻回体62をセットし、上記と同様の方法で、各回転板87により、各回転板87の径方向内方側にある組付巻回体62を拡径するように弾性変形させると同時に、各回転板87の径方向内方側にある被組付巻回体62を縮径するように弾性変形させる。その後、第1可動治具によりそれぞれ径方向に弾性変形させた被組付巻回体61と被組付巻回体62は、軸方向に相対移動させて組み付けられる。
【0131】
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62は、渦巻き状に配備された複数の回転板87を備えた第1可動治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めするようにされている。そのため、回転板87による被組付巻回体61および組付巻回体62の径方向への弾性変形量を任意に設定することが可能であるため、被組付巻回体61および組付巻回体62を任意の形状に制御することができる。
【0132】
また、被組付巻回体61および組付巻回体62のそれぞれに対して、第1可動治具により、内周側への縮径と外周側への拡径とを同時に行うことができる。本実施形態では、複数の回転板87を備えた第1可動治具により、組被組付巻回体61および付巻回体62を縮径および拡径の双方向に弾性変形させるようにしていることから、被組付巻回体61と組付巻回体62とを組み付けた際に、各巻回体61、62のスロット収容部51を適切な位置に揃えることができるため、スロット収容部51の位置を揃える工程が不要となる。これにより、製造工程を簡略化することができるので、製造効率を高めて低コスト化を図ることができる。
【0133】
ここで、それぞれ24個の巻回体60よりなる被組付巻回体61(系列1〜系列4)と組付巻回体62(系列5〜系列8)の双方を、径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けて、48個の巻回体60よりなる最終組付体64を形成した場合の、スロット収容部51の位置ずれについて考察する。
【0134】
図31は、実施形態1のように、巻回体60を径方向に弾性変形させるに際して巻回体60の内周側端部を縮拡径させずに外周側端部を拡径させた場合の説明図である。また、図32は、実施形態3のように、巻回体60を径方向に弾性変形させるに際して巻回体60の内周側端部を縮径させ且つ外周側端部を拡径させた場合の説明図である。なお、図31および図32において、最終組付体64を構成する48個の巻回体60は、6個ずつの巻回体60からなる8個の系列1〜系列8に分類されている。各系列1〜8に付された●、▲、■、×、*などの印はスロット収容部51の位置を示している。
【0135】
図31に示すように、巻回体60の内周側端部を縮拡径させずに外周側端部を拡径させた場合には、組付直後の最終組付体64にスロット収容部51の周方向への位置ずれが発生する。即ち、例えば系列4および系列8についてみれば、最外周端のスロット収容部51の位置と周方向に1周して同位置にあるべきスロット収容部51が周方向に位置ずれしている。そのため、組付工程終了後に、スロット収容部51の位置を揃えるための工程が別途必要となる。
【0136】
これに対して、図32に示すように、巻回体60の内周側端部を縮径させ且つ外周側端部を拡径させた場合には、スロット収容部51の周方向位置を揃えることが可能となる。即ち、各巻回体60の内周側端部と外周側端部の中間部には、縮径に伴う周方向への位置ずれも拡径に伴う周方向への位置ずれもしない中立位置が存在するため、その中立位置のスロット収容部51を通し矢(位置決め部材)90で位置決めすることによって、スロット収容部51の周方向位置を揃えることが可能となる。そのため、この場合には、組付工程終了後に、スロット収容部51の位置を揃えるための工程を必要としなくなる。
【0137】
なお、本実施形態では、被組付巻回体61と組付巻回体62の両方に第1可動治具を用いるようにしているが、例えば被組付巻回体61および組付巻回体62の何れか一方に第1可動治具を用い、それらの何れか他方に渦形状治具85を用いるようにしてもよい。
【0138】
〔実施形態4〕
図33は、実施形態4において用いられる第2可動治具の作動状態を示す説明図である。
【0139】
本実施形態は、実施形態1の組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62を径方向に弾性変形させる治具として用いられていた渦形状治具85に代えて、図30に示すように、渦巻き状に配備された複数の移動板88を備えた第2可動治具を用いる点で、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0140】
本実施形態で用いられる第2可動治具は、図33に示すように、断面が湾曲した矩形状で長尺状に形成された複数の移動板88を備えており、これら移動板88は、被組付巻回体61および組付巻回体62の渦巻き形状に合わせて渦巻き状に配備されている。即ち、本実施形態では、被組付巻回体61または組付巻回体62の径方向内方側に配設された拡径用移動板88aと、被組付巻回体61または組付巻回体62の径方向外方側に配設された縮径用移動板88bとを有する。拡径用移動板88aおよび縮径用移動板88bは、それらの長手方向が被組付巻回体61または組付巻回体62の軸方向と平行となるように配置されている。
【0141】
拡径用移動板88aは、制御部(図示せず)により径方向に進退移動可能に設けられており、通常時(待機時)には径方向内方側へ後退移動し、径方向外方側へ進出移動したときに被組付巻回体61または組付巻回体62を拡径させる。一方、縮径用移動板88bは、制御部(図示せず)により径方向に進退移動可能に設けられており、通常時(待機時)には径方向内方側へ後退移動し、径方向内方側へ進出移動したときに被組付巻回体61または組付巻回体62を縮径させる。
【0142】
以上のように構成された第2可動治具は、組付工程103を行うに際して、本実施形態では、被組付巻回体61用と組付巻回体62用の2つが準備される。そして、先ず、図33に示すように、被組付巻回体61用の待機状態の第2可動治具に対して被組付巻回体61をセットする。即ち、被組付巻回体61の径方向内方側に拡径用移動板88aが位置し、被組付巻回体61の径方向外方側に縮径用移動板88bが位置するように被組付巻回体61をセットする。
【0143】
その後、制御部(図示せず)により、拡径用移動板88aを径方向外方側に進出移動させて被組付巻回体61を押圧するとともに、縮径用移動板88bを径方向内方側に進出移動させて被組付巻回体61を押圧する。これにより、被組付巻回体61の外周側の略1周部分を拡径するように弾性変形させると同時に、内周側の略3/4周部分を縮径するように弾性変形させる。
【0144】
次いで、組付巻回体62用の第2可動治具に対して組付巻回体62をセットし、上記と同様の方法で、拡径用移動板88aにより被組付巻回体61の外周側の略1周部分を拡径するように弾性変形させると同時に、縮径用移動板88bにより被組付巻回体61の内周側の略3/4周部分を縮径するように弾性変形させる。その後、第2可動治具によりそれぞれ径方向に弾性変形させた被組付巻回体61と組付巻回体62は、軸方向に相対移動させて組み付けられる。
【0145】
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程103において、被組付巻回体61および組付巻回体62は、渦巻き状に配備された複数の移動板88を備えた第2可動治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めするようにされている。そのため、移動板88による被組付巻回体61および組付巻回体62の径方向への弾性変形量を任意に設定することが可能であるため、被組付巻回体61および組付巻回体62を任意の形状に制御することができる。
【0146】
また、本実施形態では、複数の移動板88を備えた第2可動治具により、被組付巻回体61および組付巻回体62を縮径および拡径の双方向に弾性変形させようにしていることから、被組付巻回体61と組付巻回体62とを組み付けた際に、各巻回体61、62のスロット収容部51を適切な位置に揃えることができるため、スロット収容部51の位置を揃える工程が不要となる。これにより、製造工程を簡略化することができるので、製造効率を高めて低コスト化を図ることができるなど、上記実施形態3と同様の作用および効果を奏する。
【0147】
なお、図34は、実施形態4において第2可動治具の移動板で押圧される巻回体の層変わりのない箇所を示す説明図である。本実施形態において、組み付けられる被組付巻回体61と組付巻回体62がそれぞれ複数の巻回体60よりなる場合には、移動板88は、被組付巻回体61および組付巻回体62の層変わりのない箇所(図34のA部)に対して配設するのが望ましい。即ち、図34において、A部とB部のどちらに移動板88を配設しても組付けは可能であるが、組付け安定性を考慮するとA部の方がB部よりも望ましい。この場合、A部においては、スロット収容部51およびターン部52が共に同一層であるため、移動板88による拘束力が強くなる。しかし、B部においては、スロット収容部51とターン部52が異なる層となるため、移動板88による拘束力が弱くなる。
【0148】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態1〜4に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0149】
例えば、実施形態1の組付工程103では、2個の巻回体60よりなる第1の組付体63と、4個の巻回体60よりなる第2の組付体63と、6個の巻回体60よりなる第3の組付体63と、12個の巻回体60よりなる第4の組付体63と、24個の巻回体60よりなる第5の組付体63とを、順番に形成し、最終的に、2束の第5の組付体63を組み付けて、48個の巻回体60よりなる第6の組付体63(最終組付体64)を形成するようにしていたが、その他の方法で組み付けることも可能である。
【0150】
例えば、48個の巻回体60よりなる組付体63を形成する場合に、1個の巻回体60よりなる被組付巻回体61に対して、1個の巻回体60よりなる47個の組付巻回体62を1個ずつ順番に組み付けて、最終的に48個の巻回体60よりなる最終組付体64を形成するようにしてもよい。また、2個の巻回体60よりなる組付体63を24個形成して、それらを順番に組み付けて48個の巻回体60よりなる最終組付体64を形成するようにしてもよい。さらに、3個の巻回体60よりなる組付体63を16個形成して、それらを順番に組み付けて48個の巻回体60よりなる最終組付体64を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0151】
20…固定子、 30…固定子コア、 30a…端面、 31…スロット、 40…固定子巻線、 43…各相巻線、 50…導線、 51…スロット収容部、 52…ターン部、 53a…引出し部、 53b…引出し部、 54…クランク部、 55,56…段部、 57,58…膨出部、 59…渡り部、 60…巻回体、 61…被組付巻回体、 62…組付巻回体、 63…組付体、 64…最終組付体、 67…導体、 68…絶縁皮膜、 81…第1固定治具、 82…第2固定治具、 83…回転治具、 85…渦形状治具、 85A…第1渦形状治具、 85B…第2渦形状治具、 86…窓部、 87…可動板、 88…移動板、 88a…拡径用移動板、 88b…縮径用移動板、 90…通し矢(位置決め部材)、 90a〜90f…第1〜第6通し矢。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロット収容部と隣り合う該スロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線を組み付けてなる回転電機用固定子巻線の製造方法であって、
前記スロット収容部と前記ターン部とを有する所定形状の前記導線を形成する導線形成工程と、
前記導線の前記ターン部を円弧状に成形して渦巻き状に巻回された巻回体を形成する巻回体形成工程と、
被組付巻回体と組付巻回体の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付け、複数の前記巻回体よりなる組付体を形成する組付工程と、
を有することを特徴とする回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項2】
前記組付工程は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のそれぞれの周方向位置を位置決め部材で位置決めしながら行うことを特徴とする請求項1に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のそれぞれの周方向の同一位置に複数配置されてそれぞれ径方向に進退動可能に設けられており、
前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体を軸方向に相対移動させる際に、周方向の同一位置に配置された複数の前記位置決め部材のうちの少なくとも1つの前記位置決め部材で常時位置決めすることを特徴とする請求項2に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項4】
前記組付巻回体の位置決めをする前記位置決め部材は、前記被組付巻回体と前記組付巻回体を軸方向に相対移動させる際に、前記組付巻回体と共に軸方向に移動しつつ位置決めすることを特徴とする請求項2に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項5】
前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のうちの少なくとも一方は、所定の渦巻き形状に形成された渦形状治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項6】
前記被組付巻回体用の前記渦形状治具の径方向の肉厚は、前記組付巻回体の組付層数の積層距離に1層分以上の積層距離が付加された距離に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項7】
前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のうちの少なくとも一方は、渦巻き状に配備された複数の回転板または移動板を備えた可動治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項8】
前記被組付巻回体および前記組付巻回体は、前記可動治具により縮径および拡径の双方向に弾性変形させられることを特徴とする請求項7に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項9】
前記導線形成工程または前記巻回体形成工程において、前記ターン部に前記固定子巻線の径方向に位置ずれするクランク部を形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項1】
複数のスロット収容部と隣り合う該スロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線を組み付けてなる回転電機用固定子巻線の製造方法であって、
前記スロット収容部と前記ターン部とを有する所定形状の前記導線を形成する導線形成工程と、
前記導線の前記ターン部を円弧状に成形して渦巻き状に巻回された巻回体を形成する巻回体形成工程と、
被組付巻回体と組付巻回体の双方を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付け、複数の前記巻回体よりなる組付体を形成する組付工程と、
を有することを特徴とする回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項2】
前記組付工程は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のそれぞれの周方向位置を位置決め部材で位置決めしながら行うことを特徴とする請求項1に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のそれぞれの周方向の同一位置に複数配置されてそれぞれ径方向に進退動可能に設けられており、
前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体を軸方向に相対移動させる際に、周方向の同一位置に配置された複数の前記位置決め部材のうちの少なくとも1つの前記位置決め部材で常時位置決めすることを特徴とする請求項2に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項4】
前記組付巻回体の位置決めをする前記位置決め部材は、前記被組付巻回体と前記組付巻回体を軸方向に相対移動させる際に、前記組付巻回体と共に軸方向に移動しつつ位置決めすることを特徴とする請求項2に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項5】
前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のうちの少なくとも一方は、所定の渦巻き形状に形成された渦形状治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項6】
前記被組付巻回体用の前記渦形状治具の径方向の肉厚は、前記組付巻回体の組付層数の積層距離に1層分以上の積層距離が付加された距離に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項7】
前記組付工程において、前記被組付巻回体および前記組付巻回体のうちの少なくとも一方は、渦巻き状に配備された複数の回転板または移動板を備えた可動治具により径方向に弾性変形した状態で位置決めされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項8】
前記被組付巻回体および前記組付巻回体は、前記可動治具により縮径および拡径の双方向に弾性変形させられることを特徴とする請求項7に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【請求項9】
前記導線形成工程または前記巻回体形成工程において、前記ターン部に前記固定子巻線の径方向に位置ずれするクランク部を形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2013−21859(P2013−21859A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154717(P2011−154717)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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